高知県公文書開示審査会答申第89号

公開日 2009年02月27日

更新日 2014年03月16日

高知県公文書開示審査会答申第89号

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諮問第89号


第1 審査会の結論

警察本部長は、部分開示とした「表彰月報(平成12年度、13年度)」について、非開示とした部分のうち、別表1の「審査会の判断」の欄に「開示」と記載された部分は、開示すべきである。

第2 審査請求の趣旨

本件審査請求は、審査請求人が平成14年5月13日付けで高知県情報公開条例(平成2年高知県条例第1号。以下「条例」という。)に基づき行った「警察職員表彰者リスト(資料)12年度、13年度分(被表彰者の所属、職種、表彰理由、表彰の種類(内容)、同上表彰に関する内部規定、基準表、審査体制)が判る資料」の開示請求に対し、警察本部長(以下「実施機関」という。)が行った「表彰月報(平成12年度、13年度)」(以下「本件公文書」という。)の部分開示決定を不服として、審査請求人が実施機関の上級庁である公安委員会に対して行ったものであり、当該決定を取り消し、非開示部分の開示を求めるというものである。

第3 実施機関の部分開示決定理由等

実施機関が、決定理由説明書、意見陳述及び補足説明で主張している部分開示決定の理由等の主な内容は、次のように要約できる。

 1 本件公文書について

本件公文書は、平成12年度及び平成13年度中に県警察で表彰された部内表彰を取りまとめた文書であり、被表彰者の所属、階級、氏名、表彰年月日、表彰事由及び表彰種別が記載されている。

警察の部内表彰は、職員の功労を称えるとともに、士気の高揚を図ることを目的として警察内部に限定して被表彰者を明らかにする運用がなされているほか、表彰の結果は、人事評価につながる性格を有するなど特殊な制度であり、県など他機関の表彰とは性格を異にするものである。

 2 条例第6条第1項第2号該当性について
  (1) 氏名欄について
氏名欄の非開示部分(別表1の区分【1】の情報)には、被表彰者である警察職員の氏名が記載されており、特定の個人を識別することができる情報である。警察の部内表彰は、部内に限定して被表彰者を明らかにしており、本件公文書は公表を目的として作成したものではない。また、表彰の原因となった行為は、職務の遂行に付随し、あるいは職務の結果などとして発生する性質のものであるが、当該職務の内容は別として、表彰を受けたこと自体は、個人が受ける評価であって「職務の遂行に係る情報」には該当しない。

したがって、被表彰者の氏名は、特定の個人を識別できる情報であり、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

  (2) 所属欄について
所属欄の非開示部分のうち、刑事事件検挙の端緒等の功労に係る部分(別表1の区分【2】の情報)は、氏名を非開示としても、所属名を開示すれば、当該所属における限られた階級を開示していることから、他の情報と結び付けることにより間接的に被表彰者である個人を識別することができると認められる情報であり、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

  (3) 表彰事由の一部を非開示とした部分について
事件名が記載された表彰事由の一部を非開示とした部分のうち、通常他人に知られたくない犯罪被害事件の罪名や被害者及び事件関係者に関する情報が記載された部分(別表1の区分【4】【5】【6】【7】の情報)は、いずれも発生件数が少ない特異な事件であり、非開示部分を開示すれば、既に開示している所属名及び表彰年月日等から当該事件が特定され、これらの情報と他の情報を照合することにより間接的に当該事件の被害者や事件関係者である個人が識別されると認められる情報であり、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

特に、通常他人に知られたくない犯罪被害に関する情報は、被害者のプライバシー保護の観点からも最大限の配慮が求められるものである。

 3 条例第6条第1項第3号該当性について
事件名が記載された表彰事由の一部を非開示とした部分のうち、特定の団体名が記載された部分(別表1の区分【8】の情報)は、開示すれば、特定の団体が識別され、当該団体が事件を敢行したことが明らかになることから、当該団体の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害する情報であり、本号に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

 4 条例第6条第1項第4号該当性について
  (1) 所属欄について
警備警察は、警察の責務を果たすため過激派やオウム真理教等に対する情報収集や犯罪の取締りを行っており、日常の活動によって得られた情報を集約及び分析し犯罪の予防や事件捜査等に活用している。

所属欄を非開示とした部分のうち、警備警察活動に関する功労に関する部分(別表1の区分【3】の情報)は、「警備情報収集成績優秀」等の表彰事由を開示していることから、所属名を開示すれば、各所属ごとの情報収集能力が高い又は低いといった警備警察活動の動向が明らかとなり、テロ行為等の不法行為を敢行しようとする勢力が、防衛措置を強化するなど各種活動を潜在化・巧妙化させることなどにより、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあることから本号に該当する。

  (2) 表彰事由欄について
   ア 表彰事由の一部を非開示とした部分について
表彰事由の一部を非開示とした部分のうち、捜査対象に関する情報が記載された部分(別表1の区分【9】の情報)は、既に所属名及び表彰年月日を開示していることから、当該情報を開示すれば、他の情報と照合することにより、特定の団体が捜査対象となっているか否かの事実や捜査対象となる基準が明らかとなり、捜査対象が各種活動を潜在化・巧妙化するなどの対抗措置を講じることなどにより、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあることから本号に該当する。

   イ 表彰事由を非開示とした部分について
非開示部分(別表1の区分【10】の情報)は、警察活動の動向又は公にされていない手法が記載されており、開示すれば、当該所属の警察活動の具体的動向等が明らかとなり、不法行為を敢行しようとする者に資する情報を提供することとなり、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあることから本号に該当する。

   ウ 表彰事由及び所属名を非開示とした部分について
表彰事由と併せて所属名を非開示とした部分(別表1の区分【11】の情報)は、警察活動の具体的動向等が記載されており、開示すれば、当該所属が警察活動において何を活動重点とし、何を対象としているか等の具体的動向が明らかとなって、不法行為を敢行しようとする者に資する情報を提供することとなり、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあることから、本号に該当する。

第4 審査請求人の主張

審査請求人が審査請求書、意見書及び意見陳述で主張している審査請求の主な内容は、次のように要約できる。

 1 審査請求の意義
本件処分の誤りを正すことの意義は、県警の誤った秘密主義を克服し、県民の立場に立ち、不法行為や暴力、詐取行為から県民の権利を守るという本来の「警察行為」の正常化に大きな役割を果たすところにある。

警察組織だけが情報公開の聖域であるかのような態度は、県警への県民の信頼を自ら失墜させるものである。

したがって、被表彰者の氏名、所属、理由等はすべて公開されるべきである。

 2 氏名欄について
本件公文書は、善行に対する表彰であり、何ら当該職員の個人の権利に害を及ぼすとか利益に反するという事例には当たらない。表彰は広報等でオープンにする性格のもので、むしろ県民に祝福されるべきであり、本人にとっては公にされても誇りになるもので、「都合が悪い」情報ではあり得ない。

刑事事件等で被疑者に恨まれる事例は別として、スポーツ大会入賞者、永年勤続や交通安全等に寄与した職員の表彰を県民に隠して何の意味があるのか。

また、表彰は、公務執行に係る情報であることは明らかである。県職員の表彰も「功労を称え、士気高揚を図ること」で差異はない。また、警察本部の表彰には、公金が副賞として付けられており、公金を給付するのであるなら、なおさら表彰の実態はより詳しく県民に説明する義務が生じる。

また、警察庁の基準では、氏名を慣行として公にしている職員の範囲を、警視又は同相当職以上の者としているが、本件では、階級欄に警視とある氏名まで非開示とするなど自らの定めた基準さえ無視している。

 3 所属欄について
所属が非開示とされたものの大部分は、警備警察に関する表彰であり、その他は表彰事由も非開示とされた特異なものである。

表彰事由は抽象的であり、所属が明らかになることで警察活動に支障を及ぼすとは常識では考えられない。所属のみを隠すことが条例上非開示の特例として認められる項目でないことは反論するまでもない。

また、所属名を開示すれば他の情報と結び付けることにより間接的に特定の個人を識別することができるとして条例第6条第1項第2号を適用しているが、各階級の職員は、各署に複数配置されており、この記録で個人を特定できるのは警察関係者以外には存在せず、理由にならない。

 4 表彰事由欄について
表彰事由は数文字の理由付記であり、そこから警察活動を阻害する事態に陥ることはあり得ない。被疑者と関係のある団体・法人を非開示とすることは理解できるが、本件記録は、簡単な事例の短い記録であり、そこから捜査活動や、その方針が明らかになり警察活動に支障を生ずるとの見解は具体性がなく、おそれという抽象的な言葉だけである。処分庁には、警察活動の何が、どのように阻害されるのか立証する義務があり、主観的な主張だけでは条例上の処分理由としては認められない。

なお、所属とともに表彰事由まで非開示としている事例もあるが、理由を非開示とすることに根拠があれば所属を消す必要は存在しない。

第5 審査会の判断

1 本件公文書について

  (1) 警察における表彰制度は、「警察表彰規則(国家公安委員会規則)」、「高知県警察表彰取扱規程」及び「高知県警察表彰取扱要領について(例規)」等に定められている。    

このうち、実施機関が行う職員に対する部内表彰には、勤務年数、勤務成績、功労の内容等により、警察功績賞、賞詞、賞誉、部長賞、所属長賞がある。

また、高知県警察表彰取扱規程第13条の規定に基づき、所属長は、各所属で行った表彰及び当該所属の職員が警察部外から受けた表彰を警察本部長に報告することとなっている。

(2) 本件公文書は、平成12年度及び平成13年度に警察本部長及び各部長が行った表彰並びに上記(1)の所属長より報告された表彰のうち、部外の功労者に対する表彰を除いたものを実施機関が取りまとめた文書であり、所属欄、階級欄、氏名欄、表彰年月日欄、表彰事由欄及び種別欄で構成されており、それぞれ被表彰者の所属、階級、氏名、表彰年月日、表彰事由及び表彰種別が記載されている。 

(3) なお、本件公文書には、ページ番号が付されていないため、当審査会において便宜的にページ番号を付し、別表1の中で「頁」として示した。

 2 条例第6条第1項第2号該当性について
  (1) 氏名欄について
ア 本号は、条例第3条後段の個人に関する情報が十分に保護されるように最大限の配慮をしなければならないとの規定を受け、原則公開の情報公開制度の下にあっても、特定の個人を識別することができると認められる情報は、非開示とすることを定めている。

これは、個人のプライバシーを最大限保護するため、プライバシーであるか否か不明確な個人に関する情報も含めて、特定の個人を識別することができる情報は、本号ただし書ア、イ及びウに該当する情報を除き非開示とするものである。

イ 実施機関は、氏名欄の非開示部分(別表1の区分【1】の情報)には被表彰者である警察職員の氏名が記載されており、特定の個人を識別することができる情報である。警察の部内表彰は、部内に限定して被表彰者を明らかにしており、本件公文書は公表を目的として作成したものではない。また、表彰の原因となった行為は、職務の遂行に付随し、あるいは職務の結果などとして発生する性質のものであるが、当該職務の内容は別として、表彰を受けたこと自体は、個人が受ける評価であって「職務の遂行に係る情報」には該当しないと主張している。

一方、審査請求人は、表彰は広報等でオープンにされるべき性格のものであり、また、職務の遂行に係る情報であるから、階級欄に警視とある氏名は開示すべきであると主張している。

ウ 氏名欄の警察職員の氏名は、特定の個人を識別することができる情報であると認められるので、以下、本号ただし書の該当性について検討する。

本件公文書に係る実施機関の表彰は、法令等により何人も閲覧することができると定められた個人情報でないことから、本号ただし書アにいう何人も閲覧できるとされている情報に該当しない。

また、実施機関の部内表彰は、警備警察部門を除いて部内機関誌に特定の表彰以上を掲載する運用がなされているものの、一般に公表しているという事実は認められないから、本号ただし書イにいう公表を目的として作成し、又は取得した情報に該当しない。

さらに、表彰の原因となった行為が職務に関係するか否かにかかわらず、表彰を受けたこと自体は、個人の評価に関する情報であって、被表彰者個人の固有の情報というべきものであると認められ、職務の遂行に係る情報であるとは言えない。したがって、被表彰者の職が警部以上であるか否かにかかわらず、氏名は本号ただし書ウに該当しない。

以上により、被表彰者の氏名は、個人に関する情報であって、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しないと認められる。

  (2) 所属欄について
実施機関は、本号に該当するとして所属名を非開示とした部分(別表1の区分【2】の情報)について、氏名を非開示としても、所属名を開示すれば、当該所属における限られた階級を開示していることから、他の情報と結びつけることにより、間接的に特定の個人を識別することができる情報であると主張している。

しかしながら、被表彰者の所属の階級構成をみれば、被表彰者と同一階級者は、いずれも限られた人数であることは認められるものの、複数の中で、それがだれであるかを特定できないことから、本号にいう他の情報と照合しても間接的に特定の個人を識別できる情報には該当しない。

  (3) 表彰事由を非開示とした部分について
ア 非開示とした部分(別表1の区分【4】【5】【6】【7】の情報)には、通常他人に知られたくない犯罪被害事件や特別法犯の事件の罪名や被害者及び被疑者の身分等に関する情報が記載されている。

実施機関は、発生件数の少ない特異な事件であり、これらの情報は、既に開示されている所属名及び表彰年月日と他の情報と照合することにより、被害者あるいは事件関係者が特定されると認められる情報であり、特に、通常他人に知られたくない犯罪被害事件については、被害者のプライバシー保護の観点から非開示とすべきであると主張している。

イ 事件検挙に係る表彰は、実施機関の説明によれば、事件検挙からおおむね1か月以内に行われることが通例であるとのことから、非開示部分を開示すれば、既に開示されている所属名と表彰年月日等から当該表彰に係る事件がある程度特定されることが認められる。

一般的に、社会的反響の高い特別な事件を除き、事件の被害者を知り得る者は事件関係者や事件発生現場近隣者など限られた者であり、その他の者は、仮に事件が特定されても被害者を特定することは困難である。

しかしながら、狭い範囲の者に識別される可能性があるのであれば、被害者に関する非開示部分(別表1の区分【4】【5】【6】)のうち、通常他人に知られたくない犯罪被害事件については、個人のプライバシーを侵害するおそれがあると認められる情報(別表1の区分【4】の情報及び【5】のうち非開示と判断した情報)であるから、個人に関する情報に最大限配慮し、本号本文に該当する情報として非開示とすることが妥当である。

ウ 次に、被疑者に関する情報(別表1の区分【7】の情報)については、被疑者が勤務していた職場に関する情報が記載されていることから、既に開示している所属及び表彰年月日や、新聞報道と照合することにより、特定の個人を識別することができる情報であり、かつ、ただし書のいずれにも該当しないことから、本号本文に該当すると認められる。

 3 条例第6条第1項第3号該当性について
本号は、法人等又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められる情報は、非開示とすることを定めたものである。

また、本号ただし書は、人の生命、身体等を保護するため必要がある情報は開示することとしたものである。

実施機関は、表彰事由の一部を非開示とした部分のうち、表彰に係る事件名に特定の団体名が記載された情報(別表1の区分【8】の情報)について、開示すれば、特定の団体が識別され、当該団体が事件を敢行したことが明らかになることから、当該団体の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害する情報であると主張している。

一般的に特定の団体が道交法違反を起こしたことが明らかになれば、その団体が道交法違反を組織的に行っているとみられ、団体の社会的評価を低下させることとなり、本件情報を開示すれば、当該団体の正当な利益を害すると認められることから、本号本文に該当し、かつ、ただし書のいずれにも該当しない。

 4 条例第6条第1項第4号該当性について
本号は、開示することにより、公共の安全と秩序の維持に支障を生ずるおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報は、非開示とすることを定めたものである。

本号の審査については、その性質上、開示又は非開示の判断に当たっては、犯罪等に関する将来予測としての専門的、技術的判断を要することなどから、相当な理由があるとする実施機関の判断が合理性を持つものとして許容される限度内のものであるか否かという観点から審理することが適当であることから、相当な理由の合理性について判断するものである。

なお、当該判断については、実施機関の裁量を無制限に認めるものではなく、合理性を持つものとして許容される限度内のものでなければならないのは当然である。

  (1) 所属欄について
実施機関は、所属欄を非開示とした部分のうち、警備警察活動に関する功労に関する部分(別表1の区分【3】の情報)については、「警備情報収集成績優秀」等の表彰事由を開示していることから、所属名を開示すれば、各所属ごとの情報収集能力が高い又は低いといった警備警察活動の動向が明らかとなり、テロ行為等の不法行為を敢行しようとする勢力において、防衛措置を強化するなど各種活動を潜在化・巧妙化させることなどにより、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあると主張している。

一方、審査請求人は、表彰事由は抽象的であり、所属を開示しても警察活動に支障を生じることは常識では考えられない。所属のみを隠すことが条例上の非開示の特例として認められる項目でないことは反論するまでもないなどと主張している。

確かに、表彰事由は、「警備情報活動成績優秀」等抽象的な表現であるが、所属名を開示すれば、当該所属における情報収集能力が高いということが推測され、これらの情報を基に、犯罪を企図する者や団体が警察の捜査に対する警戒心を高め、捜査の網をかいくぐってテロ行為等を起こしたり、自らに対する捜査を察知すれば、逃走や証拠を隠滅することも考えられることから、犯罪の予防や捜査活動に支障が生じるおそれがあると認められ、実施機関の主張には合理性がある。

  (2) 表彰事由を非開示とした部分について
表彰事由を非開示とした部分(別表1の区分【9】【10】の情報)には、実施機関の捜査対象に関する情報や警察活動の動向が記載されている。

実施機関は、非開示部分を開示すれば、他の情報と照合することにより、特定の団体が捜査対象となっているか否かの事実や捜査対象となる基準、更には警察活動の具体的動向等が明らかとなり、捜査対象になっている個人や団体が各種活動を潜在化、巧妙化させるなどの対抗措置を講じることなどから、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあると主張している。

一方、審査請求人は、表彰事由は数文字の理由付記であり、そこから警察活動を阻害する事態に陥ることはあり得ないなどと主張している。

非開示部分を当審査会で見分したところ、実施機関が主張するように、捜査対象になっているか否かという情報や、警察活動の具体的動向等を推測できる情報が記載されている。

さらに、実施機関が意見陳述の際に具体的な事例を挙げて行った説明から判断すると、捜査対象となっている個人や団体が、本件公文書の情報を知ることになれば、当該情報を基に、警察の捜査に対する警戒心を高め、自らの所在を隠したり、表だった行動を控えるなど警察の捜査を逃れるための行為に出たり、逃走や証拠を隠滅することも考えられることから、犯罪の予防や捜査活動に支障が生じるおそれがあると認められ、実施機関の主張には合理性がある。

  (3) 所属名及び表彰事由を非開示とした部分について
実施機関は、所属名及び表彰事由を非開示とした部分(別表1の区分【11】の情報)については、開示することによって警察活動の具体的動向、活動重点としている地域又は対象等が明らかとなり不法行為を敢行しようとする者に資する情報を提供することとなり、今後の警察活動に支障を及ぼすおそれがあると主張している。

一方、審査請求人は、所属とともに表彰事由まで非開示としている事例もあるが理由を非開示とすることに根拠があれば所属を消す必要は存在しないと主張している。

表彰事由の非開示部分には、当審査会で見分したところ、特定の団体に対する犯罪の予防や捜査に関する手法及び結果に係る情報が記載されている。さらに、実施機関が具体的事例を挙げて行った説明から判断すると、所属又は表彰事由のいずれが開示されても、どの所属でどのような犯罪の予防や捜査がどの程度まで行われているかといった警察活動の具体的動向が推測され、犯罪を企図する個人や団体が本件公文書の情報を知ることになれば、警察の捜査に対する警戒心を高め、警察活動の進展状況に応じた対抗措置を講じるなど捜査を逃れる行為に出ることが予想されるので、犯罪の予防や捜査活動に支障が生じるおそれがあると認められ、実施機関の主張には合理性がある。

第6 結論

当審査会は、本件公文書を具体的に検討し、最終的には高知県公文書開示審査会規則第4条第3項の規定による多数決により、冒頭の「第1 審査会の結論」のとおり判断した。

第7 審査会の処理経過

別表1

種別 区分 実施機関が非開示とした情報 審査会
の判断
条例第6条
第1項該当性
氏名欄   【1】 被表彰者の氏名 非開示 第2号
所属欄   【2】
           
  【3】   
           
           
           
                      
2頁66、53頁70

1頁2,38、3頁10、4頁22、6頁51,52、8頁24,27、12頁25、14頁2,3,25、17頁41、20頁48、23頁35,36、25頁53、26頁1、27頁50、29頁40、38頁14、40頁25、42頁45、44頁2、45頁48,49、50頁11、52頁11,12,13,14,15,16、53頁51,52,53、56頁26,27,28,60、57頁50、59頁34,72
開示        

非開示    
                
                
                
                
               
               
             
第4号
         
          
           
            
           

表彰
事由欄

   【4】   
            
 
            
            
   【5】   

          
              
   【6】  


   【7】  
           
   【8】  
           
   【9】  

  【10】 
           
4頁1,2、14頁63,64,65、26頁38,39,40,41,48,49,50,51,52、32頁31,32,33,34、45頁63、46頁38,39,40、47頁17,18、50頁22,23,24、55頁61、58頁12,13

31頁28,29




6頁37、8頁56、17頁31,32,33、23頁63、45頁17,18、46頁25,60、50頁17、55頁36,37

19頁4、38頁24、43頁48,49,50

22頁65,66,67,68

4頁36,37

8頁2、29頁43,44、30頁2、42頁5,59,60、47頁14,47、55頁49,50、56頁5、61頁27

非開示    
                
               


各10文字目までを非開示、その余は開示
                
開示        
                
                
非開示   

非開示   

非開示
                
非開示 
                  

第2号

                     
                     
                      
第2号


                       
                  
                     
                      
第2号
                       
第3号
                       
第4号
                       
第4号
                  

所属欄及び表彰事由欄   【11】
           
          
17頁38、42頁35,36,37,38,39,40,41,42,43,44、46頁69,71、47頁54、50頁63,64、56頁61、57頁75、58頁1

非開示
                

第4号
                

            ※ 注意 標題、項目欄及び罫線は行数に数えない。
         頁の後の数字は行数を表す。

当審査会の処理経過は、別表2のとおり。

別表2

年月日 処理内容
平成14年7月22日 ・ 実施機関から諮問を受けた。
平成14年8月7日 ・ 実施機関から決定理由説明書を受理した。
平成14年9月3日 ・ 異議申立人から決定理由説明書に対する意見書を受理した。
平成15年5月12日
(平成15年度第2回第二小委員会)
・ 実施機関からの意見聴取及び諮問の審議を行った。
平成15年6月10日
(平成15年度第3回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年7月15日  
(平成15年度第4回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年8月20日      
(平成15年度第5回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年9月22日
(平成15年度第6回第二小委員会)
・ 実施機関の職員から非開示理由の補足説明を聴取し、諮問の審議を行った。
平成15年11月10日
(平成15年度第7回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成15年12月8日
(平成15年度第8回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成16年1月27日
(平成15年度第9回第二小委員会)
・   諮問の審議を行った。
平成16年2月19日
(平成15年度第8回公文書開示審査会)
・   諮問の審議を行った。
平成16年3月15日 ・ 答申を行った。

この記事に関するお問い合わせ

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