高知県における個人情報保護制度のあり方について(提言)

公開日 2009年03月17日

更新日 2014年03月16日

高知県における個人情報保護制度のあり方について(提言)

はじめに


  個人情報の保護を考える懇話会は、高知県における個人情報保護のあり方を検討するため、知事から委嘱された12名の委員をもって、平成12年6月に発足しました。
  当懇話会では、県から示された個人情報保護制度要綱を基に、県が保有する個人情報の取扱いに関する基本的なルールや、民間事業者における個人情報保護のあり方について検討を進めました。
  21世紀を目前にして、情報化の進展はめざましいものがあり、通信技術の発展により電子化された情報が大量に流通するようになってきました。それと同時に、自分の知らないところで、個人情報が利用されるなど、プライバシーの侵害に対する不安感も生じています。
  審議の過程においては、民間事業者の個人情報の取扱いの問題、高齢化社会における介護の現場での個人情報の取扱いなど、広範多岐にわたる課題について活発な議論が交わされ、各委員の熱意と協力を得て、ここに提言としてまとめることができました。
  県においては、この提言の趣旨を踏まえ、高知県における個人情報の保護制度が速やかに確立されるよう期待します。
   
個人情報の保護を考える懇話会
座長 岡村 直彦

1 個人情報保護の必要性

  高度情報化社会の進展に伴い、電子化された情報の大量かつ迅速な流通が可能となり、公的部門、民間部門を問わず大量の個人情報が収集され、利用されることとなってきた。
  このような情報の流通は、県民の日常生活に様々な利便をもたらす反面、取扱いによっては、プライバシーが侵害される事例も生じ、県民の個人情報保護への関心が高まっている。
  プライバシーに関しては、これまでは「私生活をじゃまされたくない、知られたくない」といった消極的、受動的な権利と受けとめられていたが、現在では「自己に関する情報をコントロールする」といった積極的、能動的な権利としての側面が強調されるようになっている。
  本年10月、個人情報保護法制化専門委員会から国に提出された「個人情報保護基本法制に関する大綱」では、個人情報の適正な取扱いの基本となる原則や個人情報取扱事業者の義務等の基本的事項が示され、国においては、この大綱を基に、個人情報保護の法制化に向けての検討が進められているところである。
  本県においても、情報化社会の進展と県民の権利意識の高まりから、プライバシー保護について積極的な対応が必要であり、県の保有する個人情報についての取扱いの基本的事項を定めるとともに、自己の個人情報について開示・訂正等を求める権利を明らかにすることや、民間事業者の個人情報の取扱いに関する基準を示すことを内容とした、個人情報保護制度の条例化が急がれるところである。

2 個人情報保護の基本的なあり方

(1)目的
  個人情報保護制度は、個人のプライバシー保護の重要性を踏まえ、個人情報の保護に関する基本的な事項を定め、県が保有する個人情報の開示・訂正等を求める権利を明らかにするとともに、個人情報の取扱いにともなう個人の権利利益の侵害の防止を図ることにより、基本的人権の擁護及び公正で民主的な県政の推進に寄与することを目的とすべきである。
 プライバシーの保護は、個人の尊厳を保つ上で重要であることから、個人情報の保護に関する基本的な事項を定め、県が保有する個人情報の開示・訂正等を求める権利を県民に明らかにするとともに、民間事業者が取り扱う個人情報についても、その取扱いにともなう個人の権利利益の侵害を防止するための基本的ルールを定める必要がある。
 また、このような制度を確立することにより、県民の「知る権利」を保障した情報公開制度とあいまって、公正で民主的な県政の推進が図られるものと考える。

(2)対象とする個人情報
  個人情報の保護対象は、公的部門だけでなく民間部門も含めることが適当である。 
  対象とする個人情報は、特定の個人が識別され、又は識別され得るものとする。 
  また、死者に関する個人情報についても、対象とすべきである。
 個人情報は、公的部門、民間部門において広範囲に利用されておりその保護対策の重要性は、本質的に異なるものではないので、民間部門において取り扱われる個人情報についても制度の対象とすることが適当である。
 保護の対象とする個人情報は、原則として、生存する自然人の情報を対象とすることとするが、死者の名誉やプライバシーも尊重されるべきであり、死者に関する個人情報についても制度の対象とすることが適当である。

(3)実施機関の責務
  実施機関は、個人情報保護の重要性を認識し、あらゆる事務事業を通じて個人情報の保護を図るとともに、個人情報の保護の重要性について県民及び事業者の意識啓発に努めなければならない。 
  また、県は市町村等との協力・連携の基に、個人情報保護制度の充実を図ることが望ましい。
  実施機関(個人情報保護制度を実施する県の機関をいう。)は、この制度の目的を達成するために、あらゆる事務事業を通じて個人情報の保護を図るとともに、個人情報保護の重要性について県民及び事業者の意識啓発に努める必要がある。
 また、市町村は直接個人情報を取り扱う事務事業が多いことから、県の行う個人情報保護制度に協力することが望ましい。
 なお県は、市町村及び一部事務組合に対して、個人情報保護の制度化を働きかける必要がある。
 
(4)県が出資する法人の責務
  県が出資金その他これに準ずるものを出資している法人等のうち、県との関係が密接な法人については、県の個人情報保護制度の趣旨にのっとり、県に準じた個人情報保護のための必要な措置を講ずるべきである。
  県が出資する法人の中には、県との関係が極めて密接で、その行う事務事業についても県の補完的な役割を担っている法人もあり、当該法人の設立目的、事業内容から判断して、必要な範囲内で実施機関に準じた個人情報の保護措置を講ずるように努める責務を課すことが適当である。
 
  【その他の意見】
  3公社については、「情報公開条例の実施機関としたとしても法律的問題はない。」との国の見解が示されたことから、個人情報保護制度においても実施機関とすべきであるという意見もあった。
  3公社とは「高知県土地開発公社」、「高知県道路公社」、「高知県住宅供給公社」をいう。
 
(5)事業者の責務
  事業者は、個人情報保護の重要性を認識し、個人情報の取扱いに当たっては、個人の権利利益を侵害することのないよう自ら努めるとともに、個人情報の保護に関して県が行う事務事業に協力することが望まれる。
  個人情報保護対策の重要性は、公的部門と民間部門とで異なるものでなく、事業者(法人その他の団体(国及び地方公共団体を除く。)及び事業を営む個人をいう。)においても広くその必要性が認識され、個人情報保護の自主的な取組がなされることが望まれる。
 
(6)県民の責務
  県民は、個人情報の保護の重要性を認識し、自らの個人情報の適切な管理に努めるとともに、他人の個人情報の取扱いに当たっては、その権利利益を侵害することがないように努めるべきである。
  県民一人ひとりが個人情報保護の重要性を認識し、自分の情報は自分で守る姿勢を持つとともに、日常生活においても、他人の権利利益を侵害することのないよう、県民の責務を明らかにすべきである。

3 実施機関が取り扱う個人情報の保護

(1)実施機関の範囲
  実施機関は、原則としてすべての県の機関とすることが望ましい。 
  なお、議会については、その自主性を尊重すべきであるが、保有する個人情報について県民に明らかにする必要があることから、情報公開条例と同様に、個人情報保護条例においても実施機関に加わることを期待する。 
  公安委員会(警察本部)については、国の法整備を待って実施機関に加わることを検討すべきである。
  県の機関については、すべての機関が実施機関となることが望ましい。
  議会については、その自主性を尊重すべきであるが、情報公開制度では、議会は実施機関となっており、個人情報保護制度と情報公開制度は車の両輪であることから、個人情報保護制度においても実施機関に加わることを期待する。
  公安委員会(警察本部)の実施機関入りについては、国や他の都道府県警察相互の協力関係があることから、国の法律の整備において、国家公安委員会(警察庁)の取扱いが明らかになった上で検討する必要がある。
 
(2)個人情報取扱事務の登録等
  実施機関は、個人情報の内容や所在を県民に明らかにするために、個人情報取扱事務の登録簿を作成し、閲覧に供することが必要である。
  県民が自己情報のコントロールを適切に行使できるようにするためには、まず、実施機関はどのような個人情報を保有しているか県民に明らかにする必要がある。
  このことにより、県民が自己情報の存在を確認し、開示・訂正等の請求を適切に行うことができることになる。
  登録簿には、全ての個人情報取扱事務を登録することが望ましいが、県の職員又は職員であった者の人事、給与、福利厚生等の内部管理事項は除外することができるものとする。
  登録簿に登録する事項は、以下のような項目が考えられる。
 
  個人情報取扱事務を所管する組織の名称。
  個人情報取扱事務の名称。
  個人情報を収集する目的及び理由。
  個人情報を収集する根拠法令等。
  個人情報の対象者の範囲。
  個人情報の項目。
  個人情報の収集先。
 
  【その他の意見】
  登録簿の作成は、県がどのような情報を保有しているかを県民に明らかにする意味も持つものであり、全ての個人情報取扱事務を登録簿に登録すべきであるとする強い意見があった。
 
(3) 収集の制限
  実施機関が個人情報を収集する場合は、その目的を明確にし、必要な範囲内で適法かつ公正な手段で、本人からの直接収集を原則とすべきである。 
  思想、信条及び信教に関する個人情報や社会的差別の原因となるお それのある個人情報の収集は、原則として禁止することが適当である。 
  しかしながら、本人からの直接収集のみでは行政目的の達成に支障が生じたり、円滑な事務事業の執行が困難となることも考えられることから、あらかじめ例外規定を定めておく必要がある。
  実施機関が個人情報を収集する場合は、収集する目的をあらかじめ明確にし、必要な範囲内で適法かつ公正な手段により行うことはもちろん、原則として本人から直接収集することが必要である。
  思想、信条及び信教など内心に関する個人情報の収集や病歴、犯罪歴など社会的差別の原因となるおそれがある個人情報などのいわゆる「センシティブ情報」の収集は、原則として禁止することが適当である。
  ただし、事務の執行上必要であり、欠くことができないと認められる場合は、第三者機関の意見を聴いた上で、例外的に収集できることとする。
  また、現在、県が保有している思想、信条等の情報についても、制度の実施に当たっては、その保有の適否について、第三者機関の意見を聴くことが必要である。
  なお、本人以外から収集する場合は、以下のような場合が考えられる。
 
  本人の同意があるとき。
  法令等に基づくとき。
  他の実施機関から提供を受けるとき。
  出版、報道等により公にされているとき。
  個人の生命、身体又は財産の保護のため、緊急かつやむを得ないと認められるとき。
  本人から収集したのでは個人情報を取り扱う事務の性質上その目的の達成に支障が生じるなど、本人以外のものから収集することに相当の理由がある場合。この場合は、第三者機関の意見を聴くこと。
 
(4)利用の制限
  実施機関は、原則として収集した個人情報を個人情報取扱事務の目的以外の目的のために利用してはならない。しかしながら、行政の事務執行の必要性や効率性から一定の範囲に限定された例外規定を設けることも必要である。
  適正に収集された個人情報であっても、その利用方法によっては個人の権利利益を侵害するおそれがあることから、個人情報の利用については、収集目的に沿った制限を設ける必要がある。
  なお、例外規定を定める場合は、以下のような場合が考えられる。
 
  本人の同意があるとき。
  法令等に基づくとき。
  出版、報道等により公にされているとき。
  個人の生命、身体又は財産の保護のため、緊急かつやむを得ないと認められるとき。
  やむを得ず目的以外の目的のために利用する相当な理由があるとき。この場合、第三者機関の意見を聴くこと。
 
  【その他の意見】
  個人情報を個人情報取扱事務の目的以外の目的のために利用及び提供した場合は、記録に残す必要があるとの意見もあった。
 
(5)提供の制限
  実施機関は、収集した個人情報を個人情報取扱事務の目的以外の目的のために外部提供を行ってはならない。しかしながら、行政の事務執行の必要性や効率性から一定の範囲に限定された例外規定を設けることも必要である。 
  また、個人情報の外部提供を行う場合は、個人の権利利益を侵害することのないよう、必要に応じ提供先に保護措置を求めることができる旨の規定を設けることが適当である。
  適正に収集された個人情報であっても、その提供方法によっては個人の権利利益を侵害するおそれがあることから、個人情報の外部提供については、収集目的に沿った制限を設ける必要がある。
  なお、例外規定を定める場合は、利用の制限と同様に限定的に規定する必要がある。
  また、個人情報を実施機関以外のものに提供する場合において、必要があると認めるときは、実施機関は提供先に対し、個人情報保護のための必要な措置を講ずるよう求めることが適当である。
 
(6)オンライン結合による提供の制限
  オンライン結合による実施機関以外への情報提供は、公益上必要であり、かつ、個人の権利利益を侵害するおそれがないと認められる場合を除き、原則禁止とすることが適当である。 
  なお、オンライン結合によって外部提供を行う場合は、判断の公正さを確保するため、第三者機関の意見を聴くことが適当である。 
  
  「オンライン結合」とは、通信回線を用いた電子計算機その他の情報機器の結合(実施機関が管理する個人情報を実施機関以外のものがいつでも入手し得る状態にするものに限る。)により、実施機関以外のものに対して個人情報を提供する方法をいう。
  オンライン結合は、外部から容易にアクセスできることから、その取扱いによっては個人の権利利益を侵害するおそれがあるため原則禁止すべきである。
  しかしながら、電子計算機による処理は事務の効率化や行政サービスの向上に大きな効果をもたらすものであり、また、通信回線による情報のネットワーク化はこれからの高度情報通信社会の構築には不可欠であることから、これを一律に禁止することは適当でないと考える。
  したがって、公益上の必要があり、個人の権利利益を侵害するおそれがないと認められ、オンライン結合による情報の提供を行おうとする場合は、あらかじめ第三者機関の意見を聴くことが適当である。
 
  【その他の意見】
  オンライン結合による情報の提供を行う場合には、個人情報の適正管理を図るため、実施機関内部に管理責任者を置くことなど、運用面で検討が必要であるとの意見もあった。
 
(7)適正管理
  実施機関は、その保有する個人情報の適正な取扱いのため、正確かつ最新の情報の確保に努める責務がある。 
  また、保有する必要がなくなった個人情報については、確実な方法により、速やかに廃棄すべきである。
  個人情報が漏えい、改ざんされたり、誤ったデータや不完全なデータが利用されると、個人の権利利益が不当に侵害されるおそれがあるため、実施機関は、その保有する個人情報について正確かつ最新の情報の確保に努める必要がある。
  また、不要となった個人情報は確実な方法により速やかに廃棄されることが必要である。
 
(8)職員の責務
  実施機関の職員及び職員であった者に対しては、職務に関して知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使ってはならない旨の責務を課すことが適当である。
  実施機関の職員及び職員であった者は、その職務に関して知り得た個人情報をみだりに他人に知らせ、又は不当な目的に使用してはならない旨の責務を課すことが必要である。
  また、退職後であっても、その責務を有することを明らかにしておく必要がある。
 
(9)委託に伴う措置
  実施機関は、個人情報取扱事務を外部委託する場合は、個人情報の保護のため必要な措置を講ずるべきである。 
  また、委託を受けたものは、実施機関が講じた措置に従い、個人情報を適正に管理しなければならない。
  実施機関は、個人情報取扱事務を外部に委託する場合は、個人の権利利益の侵害を未然に防止するため、受託者が遵守すべき事項を示した委託基準を定めるなど、個人情報の漏えいの防止等を図る必要がある。
  また、受託者は実施機関が定めた保護措置を遵守し個人情報を適正に管理するとともに、受託事務に従事する者には、実施機関の職員と同様に、守秘義務を課すことが適当である。
 
  【その他の意見】
  受託者及び受託事務に従事する者に対しても、業務に関して知り得た個人情報を漏らした場合の罰則規定を設けるべきとする意見もあった。
 
(10)自己情報の開示請求権
  実施機関は、何人に対しても、自己の個人情報の開示を求める権利を認める必要がある。 
  死者に関する個人情報については、一定範囲の者に開示請求を認めることが望ましい。開示請求を認める範囲は、第三者機関の意見を聴き、あらかじめ定めることが適当である。 
  未成年者又は成年被後見人については、法定代理人による開示請求も認める必要がある。
  実施機関が保有する個人情報について、自己の個人情報がどのように取り扱われているか明らかにするため、何人に対しても、自己の個人情報について開示請求することを権利として認めることが必要である。
  死者の名誉やプライバシーを尊重するため、死者に関する個人情報についても、遺族など一定範囲の者に開示請求を認める必要がある。その場合、開示請求を認める者の範囲は、第三者機関の意見を聴き、あらかじめ定めておくことが適当である。
  また、未成年者又は成年被後見人に対しても、法定代理人による開示請求も認める必要がある。
 
  【その他の意見】
  これからの高齢化社会を考えると、第三者機関の意見を聴いた上で配偶者や一定範囲の親族に任意の代理人としての請求を認めるべきであるとする意見があった。
 
(11) 開示をしてはならない個人情報
  実施機関が保有する個人情報については、開示請求があった場合、原則として開示をすべきであるが、第三者の権利利益の保護や県又は国等の行う事務事業の適正な執行に支障が生じる情報は、非開示情報として定めるべきである。 
  なお、非開示情報は限定的に規定することが適当である。
  開示請求された個人情報は、原則としてすべて開示すべきである。
  しかしながら、開示することにより、第三者の正当な利益を害したり、行政の適正な運営を阻害するなど公共の利益を損なう場合には、開示しないこともできるものとする。その場合、原則開示の例外としてあらかじめ非開示情報を明らかにしておく必要がある。
  なお、非開示情報としては以下のようなものが考えられる。
 
  法令等の規定により、明らかに開示することができない情報。
  開示請求を行った者の個人情報の中に、第三者に関する個人情報が含まれている場合、開示することにより、当該第三者の正当な利益を害すると認められるもの。
  法定代理人による開示請求であって、法定代理人に開示することが本人の利益を害すると認められる個人情報。
  法人等又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって、開示することにより、法人等又は事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他正当な利益を害すると認められるもの。
 なお、開示することに公益上の相当の理由があるものを除く。
  開示することにより、人の生命、身体、財産等の保護、犯罪の予防、犯罪の捜査その他の公共の安全と秩序の維持に支障を生ずるおそれのある情報。
  県又は国若しくは他の地方公共団体その他の公共団体(以下「国等」という。)の機関が行う事務事業に関する情報であって、開示することにより次のいずれかに該当するとき。
 
(ア)  指導、診断、評価、選考等に関する情報であって、開示することにより、当該指導、診断、評価、選考等の事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれがあると認められるもの。
(イ)  監査、検査、取締り、交渉、渉外、争訟その他の事務事業若しくは将来の同種の事務事業の実施の目的が失われ、又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な執行に著しい支障が生ずるおそれがあると認められるもの。
(ウ)  機関内部又は機関相互間における審議、検討、協議、調査研究等に関する意思決定が不当に阻害されるおそれがあると認められるもの。
(エ)  法律又はこれに基づく政令の規定により主務大臣その他国の機関が行う指示等で公表してはならない旨が明示されているもの、国等からの委託による調査等で、公表してはならない旨の条件が付されているもの等、県と国等との協力関係又は信頼関係が著しく損なわれるもの。
 
(12)部分開示
  開示をしてはならない個人情報が含まれる場合でも、その部分を容易に、かつ、請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときには、開示をしてはならない部分を除いて開示すべきである。
  個人の権利利益の保護を図るため、開示請求に係る個人情報の一部に開示をしてはならない個人情報が含まれる場合であっても、全てを非開示とするのではなく、請求の趣旨を損なわない程度に分離できるときには、非開示部分を除いて開示をすることが適当である。
 
(13)開示請求の方法
  開示請求は、書面により行うことが適当である。 
  その際には、本人確認のため、本人であることを確実に証明できる書類の提出や提示を求めることが必要である。 
  各種試験結果等定型的な対応が可能な事務については、開示請求者の利便を図るため、口頭による開示請求を認めることが望ましい 。
  開示請求は、請求に関する事実関係や手続きの正確を期すため、本人又は法定代理人が書面により行うことが適当である。
  この場合、本人等の確認を厳格に行う必要があり、本人確認のため、運転免許証、健康保険証などの書類の提出や提示を求める必要がある。
  開示請求者の負担の軽減や実施機関の事務の効率化を図るため、資格試験の結果などのように、その内容が定型的で、即時の開示に対応できる個人情報は、口頭による開示請求を認めることが望ましい。
 
(14)開示請求に対する決定等
  開示請求に対する決定は、速やかに書面で行う必要がある。 
  請求に係る個人情報の特定に時間がかかるなど特別な理由がある場合は、当該決定期間を延長することもやむを得ないが、その場合には、延長理由、期間を明示すべきである。 
  開示請求に対する決定に当たって、全部若しくは一部を開示しない場合や当該個人情報が存在しない場合は、その理由を明示すべきである。 
  開示請求に係る個人情報に第三者に関する個人情報が記録されている場合は、あらかじめ当該第三者の意見を聴く機会を与えるなど、第三者に関する保護手続きを定めることが適当である。
  開示・非開示の決定は定められた期間内に書面により請求者に通知する必要がある。
  特別な理由により一定期間内に開示等の決定ができない場合は、必要最小限の決定期間の延長はやむを得ないものであるが、その理由、期間を明らかにする必要がある。
  また、非開示決定(部分開示を含む。)を行う場合又は請求に係る個人情報が存在しない場合においても、具体的な理由を示す必要がある。
  開示請求に係る個人情報に、開示請求者以外の第三者に関する情報が記録されている場合、その情報を開示すると当該第三者の権利利益を侵害するおそれがあることから、開示するかどうかの決定を行う前に、当該第三者から意見を聴くなどの保護を図る必要がある。
 
(15)訂正請求
  開示を受けた個人情報が事実と異なる場合は、開示を受けた者に、その訂正を求める権利を認める必要がある。 
  訂正請求に対する決定は、書面で行う必要がある。 
  また、死者に関する個人情報についても、訂正請求を認めることが適当である。
  開示を受けた自己の個人情報に事実の誤りがある場合には、開示を受けた者に、その訂正を求めることができる権利を認めることが必要である。
  訂正請求があった場合は、実施機関は必要な調査を行うとともに、訂正請求に対する処理を行い、その内容を書面により請求者に通知する必要がある。
  また、死者に関する個人情報についても、開示を受けた者に対して、同様に訂正請求を認めることが必要である。
 
(16)是正請求
  自己に関する個人情報について、実施機関が不適正な取扱いを行っていると認めるときは、その実施機関に対し取扱いの是正(当該個人情報の削除を含む。)を求める権利を何人にも認める必要がある。 
  是正請求に対する決定は、書面で行う必要がある。 
  また、死者に関する個人情報についても、是正請求を認めることが適当である。
  実施機関が保有する自己の個人情報が、不適正に取扱われていると認められる場合には、当該個人情報の削除や利用・提供の中止等を請求する権利を何人にも認める必要がある。
  是正請求があった場合は、実施機関は必要な調査を行うとともに、是正請求に対する処理を行い、その内容を書面により請求者に通知する必要がある。
  また、死者に関する個人情報についても、是正請求を認めることが必要である。
 
(17)不服申立て
  開示請求、訂正請求及び是正請求に対する実施機関の処分に対し不服がある者は、実施機関に不服申立てをすることができるようにすべきである。 
  実施機関は、不服申立てがあった場合は、第三者機関に意見を聴いた上で不服申立てに対する裁決又は決定を行うことが適当である。
  開示請求、訂正請求及び是正請求に対する実施機関の処分に不服がある場合は、不服申立てを行うことができることを認めるべきである。
  不服申立てに対する裁決又は決定を行う場合は、公正かつ客観的な判断が必要とされるため、第三者機関に諮問し、その答申を最大限に尊重すべきである。

4 事業者が取り扱う個人情報の保護対策

(1)事業者が取り扱う個人情報の保護
  個人情報の保護の必要性は、公的部門と民間部門とで基本的に異なるものではないことから、事業者が取り扱う個人情報についても、保護対策を講ずることが適当である。 
  保護対策を講ずる際には、事業者の自主的な取組を尊重することが適当である。
  個人情報の保護の必要性は、公的部門と民間部門とで異なるものではなく、個人の権利利益を保護する上においては、民間事業者も自らが保有する個人情報の保護に関する責務を負う必要がある。
  しかしながら、民間事業者における個人情報の取扱いは、自由な事業活動などの一環として行われるものであり、業務形態が多様な民間事業者に、個人情報の保護対策を一律的に適用することは適当でない。
  したがって、民間事業者における個人情報の保護対策は、事業者の自主的な取組を尊重しつつ、県としての対応策を講ずることが必要である。
  特に、報道、宗教、学術、政治の分野については、各事業活動の自由と密接に関係する問題であることから、より慎重な取扱いが求められる。
 
(2)事業者に対する指導及び助言
  知事は、第三者機関の意見を聴いた上で、事業者が行う個人情報の保護に関する指針を作成のうえ公表し、事業者に対して個人情報保護の取組の普及啓発を図り、自主的に保護措置を講ずるよう指導、助言を行うことが適当である。
  知事は、個人情報を取り扱う事業者が自主的に個人情報の保護措置を講ずることを促すため、そのよりどころとなる指針を作成し、公表することが適当であり、事業者は、公表された指針を基に自主的に個人情報の保護措置を講ずることが望まれる。
  指針の作成には、その内容の公正さを確保することが必要であり、第三者機関の意見を聴いた上で作成することが適当である。
 
(3)説明又は資料の提出等
  知事は、事業者が個人情報を不適正に取り扱っている疑いがあると認めるときは、当該事業者に対し、次のような措置を講ずるべきである。 
  説明又は資料の提出を求めること 
  不適正な取扱いに対する、是正の勧告 
  正当な理由がなく、説明・資料の提出要求又は是正の勧告に従わなかったときは、その事実の公表 
  なお、公表する場合は、当該事業者に弁明の機会を与える必要がある。 
  是正の勧告及び公表を行う場合は、あらかじめ第三者機関の意見を聴くことが適当である。
  事業者が個人情報を不適正に取り扱っている疑いがある場合は、個人の権利利益を保護する観点から、事実を明らかにするために事業者に説明を求めたり、必要な資料の提出を求め、事実の確認を行う必要がある。
  その結果、不適正な取扱いの事実が認められた場合は、その取扱いの是正について勧告することが適当である。
  また、事業者が正当な理由がなく説明・資料の提出要求や是正の勧告に従わなかったときは、その事実を公表することも必要である。
  なお、是正の勧告及び公表を行う場合には、公正さの確保、厳格性、事業活動に与える影響等を考慮し、あらかじめ第三者機関の意見を聴くことが適当である。
 
(4)苦情の処理
  事業者は、個人情報の取扱いに関して苦情があった場合は、適切かつ迅速な処理に努める必要がある。 
  知事は、事業者の個人情報の取扱いに関して苦情の相談があったときは、速やかに処理する必要がある。
  民間事業者は、個人情報の取扱いに関する本人からの苦情に対して、適切かつ迅速な処理に努める必要がある。
  民間事業者の個人情報の取扱いに関して問題が生じた場合、基本的には民間事業者がその問題の解決に当たるべきであるが、知事は、当事者間で問題が解決しないなど苦情の相談があった場合には、関係機関と連携し、迅速な処理に努める必要がある。
 
(5)国又は他の地方公共団体との協力
  知事は、事業者の個人情報の取扱いに関して個人の権利利益を保護するため必要があるときは、国又は他の地方公共団体と協力することが適当である。
  事業者の事業活動は県内のみならず広域的、全国的に行われており、県だけで対応することには限界があることから、県を越えて活動する事業者の個人情報の取扱いに関しては、国又は他の地方公共団体と協力し、個人情報の保護を図る必要がある。

5 第三者機関の設置

  個人情報保護制度に関する重要事項について調査審議する審議会と、不服申立てを審査する審査会を個別に知事の附属機関として設けることが適当である。
  個人情報の保護を図るためには、収集、利用、提供等の制度の運用 に当たって第三者機関の意見を聴いた上で判断を要する場合と、開示、訂正、是正の各請求に対する処分についての行政不服審査法の規定による不服申立てに対する決定を行う場合がある。
  それぞれ、果たす機能に違いがあることから、制度の運用に関する重要事項について調査審議を行う審議会と、実施機関に対し不服申立てがあった場合、知事の諮問に応じて審査を行う審査会の二つの機関を設置することが適当である。
 

 

個人情報の保護を考える懇話会設置要綱

 (設置目的)
第1条  高知県における個人情報保護の制度化に当たり、広く有識者や県民の意見を聴き、県民的なコンセンサスの形成を図るため、「個人情報の保護を考える懇話会」(以下「懇話会」という。)を設置する
  (委員)
第2条  懇話会は、委員12人以内で構成する。
  委員は、学識経験者等の中から知事が委嘱する。
  (座長及び副座長)
第3条  懇話会に座長及び副座長を置く。
  座長は、委員の互選によって定め、副座長は、委員のうちから座長が指名する者をもって充てる。
  副座長は、座長を補佐し、座長に事故があるときは、その職務を代理する。
  (会議)
第4条  懇話会は、座長が招集し、座長が議長となる。
  懇話会は、委員の過半数の出席がなければ、会議を開くことができない。
  座長は、必要があると認めるときは、懇話会に委員以外の者の出席を求めることができる。
  会議は、公開とする。ただし、委員の全員が同意し、座長が特に必要と認めるときは、この限りでない。
  (議事録の作成等)
第5条  懇話会は、議事録を作成し、総務部文書学事課において閲覧に供するものとする。ただし、前条第4項のただし書の会議に係るものを除く。
  議事録は、座長の確認により確定するものとする。
  (庶務)
第6条  懇話会の庶務は、総務部文書学事課において処理する。
  (その他)
第7条  この要綱に定めるもののほか、懇話会の運営に関し必要な事項は、座長が別に定める。
  附 則
  この要綱は、平成12年5月25日から施行する。
  第1回の懇話会は、第4条第1項の規定にかかわらず、知事が招集する。

個人情報の保護を考える懇話会委員名簿(敬称略・50音順)
氏名 職名等 備考
稲田 知江子 弁護士(高知県公文書開示審査会委員)
大久保 鉱 高知新聞社論説委員長
岡村 直彦 弁護士(高知県公文書開示審査会会長) 座長
田所 辨蒔 高知県民情報公開センター理事
恒石 静男 高知県医師会常任理事
徳弘 朋子 高知市布師田地区民生委員
中澤 秀夫 高知県社会福祉協議会会長(高知県公文書開示審査会委員)
橋本 基弘 高知女子大学文化学部文化学科助教授(高知県公文書開示審査会委員) 副座長
山首 尚子 土佐町社会福祉協議会(ボランティアコーディネーター)
山本 昌男 司法書士
行定 良友 NTT西日本高知支店副支店長
和田 高明 弁護士(高知県人事委員会委員)


高知県個人情報の保護を考える懇話会審議日程
区分 開催年月日 会場 主な審議事項
第1回 平成12年6月12日(月曜日) 高知会館   個人情報保護条例の制定状況及び概要説明
  個人情報実態調査の概要説明
第2回 平成12年7月21日(金曜日) 高知グリーン会館   制度の目的 
  対象とする個人情報 
  実施機関(公安委員会、議会、3公社) 
  実施機関、県出資法人、事業者、県民の責務
第3回 平成12年8月31日(木曜日) 高知グリーン会館   3公社、議会の取扱い 
  個人情報取扱事務登録簿 
  収集の制限 
  利用・提供の制限
第4回 平成12年9月21日(木曜日) 高知グリーン会館   3公社の取扱い 
  オンライン結合 
  委託に伴う措置 
  自己情報の開示請求権 
  開示をしてはならない個人情報
第5回 平成12年10月19日(木曜日) 高知グリーン会館   開示請求に対する決定、開示の方法 
  口頭による開示請求 
  費用負担 
  訂正・是正請求 
  不服申立て 
  他制度との調整 
  第三者機関(審議会・審査会)の設置
第6回 平成12年11月2日(木曜日) 高知グリーン会館   事業者が取り扱う個人情報の保護
第7回 平成12年11月15日(水曜日) 高知グリーン会館   提言(案)の検討
第8回 平成12年12月1日(金曜日) 高知グリーン会館   提言(案)の検討

この記事に関するお問い合わせ

高知県 総務部 法務文書課

所在地: 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号
電話: 法令担当 088-823-9329
法人指導・行政不服審査担当 088-823-9160
訴訟担当 088-823-9619
公文書担当 088-823-9045
情報公開・個人情報担当 088-823-9156
ファックス: 法令、法人指導・行政不服審査、訴訟 088-823-9128
公文書、情報公開・個人情報 088-823-9250
メール: 110201@ken.pref.kochi.lg.jp
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