高知県地域人権運動連合会との話し合いの概要

公開日 2009年12月22日

更新日 2014年03月16日

高知県地域人権運動連合会との話し合いの概要

1 日 時 平成17年4月26日 火曜日 10時~11時15分

2 場 所 議題(1)(3)県庁本庁舎2階 第二応接室
      
      議題(2)   県議会1階 応接室

3 出席者 議題(1)(3)高知県地域人権運動連合会 竹下議長  ほか全体で8名
              高知県 橋本知事、十河企画振興部長  ほか全体で7名
      
      議題(2)   高知県地域人権運動連合会 竹下会長  ほか全体で7名
              高知県 秋元商工労働部副部長、田岡雇用労働政策課長、
                   中澤企画振興部副部長、黒田人権課長  ほか全体で9名

4 話し合いの概要

(1)部落問題解決の現状と行政の啓発活動について
<申し入れ(※)の趣旨>
 県の同和問題は、闇融資事件の反省のうえに立って、改革にも大きく乗り出している。特に、確認学習会に参加しないということで、団体に対しても主体性をもってきちっとやっておられるという印象を持っている。国の意見具申で言う「新たな差別意識を生む要因」、その一番の柱が「糾弾」だったわけだが、そこに高知県ではメスを入れたということで、非常に大きいものがあったというように思っている。
 ただ、部落問題、同和問題については、まだ率直に言って、大事なところが我々の認識と違う。特に、部落問題の現状認識に大きな違いがある。
 我々は、社会問題としての部落問題は基本的に解決したと考えている。まだ差別は起こるし、起こり得るが、社会問題として大きく取り上げないといけない状況は、もう基本的には解決したと判断している。そこのところが、率直に言って、知事の認識と違う。
 最近、連続差別落書きが起きたが、これは、以前からずっと全県的に書きまわっている人である。また、差別事象として子どもたちの言動が非常に多いが、これは、学校で教えるからである。わざわざ賤称語が載っている教科書や資料を使って教えている、学校のそういう教育が問題だと思う。県民の差別性が原因で起こるという差別事象というのは、非常に少なくなっている。
 「部落問題が解決された状態」として我々が持っている4つの指標の中の1つ、「部落問題に対する非科学的認識や偏見に基づく言動がその地域社会で受け入れられない状況がつくりだされること」という指標に照らせば、もうそうした状況が基本的には達成されており、同和啓発の根拠は基本的にはなくなったというように思っている。
 啓発をしなくても、社会的な常識あるいは普通の人権感覚で部落問題は解決できる、そういう力を県民は身につけているし、そういう段階にきていると思う。
 だから、同和啓発はもうやめていただいて、非常に財政が困難な状況なので、県民の生活を守る方向に振り向けていただきたい。
<県:知事>
 全体的に部落問題が解決の方向に向かっているという認識は、私も持っている。
 限りなくそういう差別をなくしていくということは当然必要なことだが、全ての意味でゼロにならないと完全解決でないというような考え方はとらない。
 差別落書きなどをお書きになってる方は明らかに特異な事例であり、一般的な意味での差別意識を起こしている落書きというふうには受け止められない。
 中にはそういうものが幾つかあるかも知れないけれども、もうそれは限りなくゼロになっているのと同じ状況であろうと思うので、「差別落書きや書簡があるから、まだ根強く差別が残っているんだ」という表現をとることは、既に、時代の認識としては、誤りではないかなと思う。
 ただ、3割余りの方が、結婚の際に、(相手が)どういう地区のご出身の方かということを意識をされるという実態があるときに、3分の1まで減ったからといって、全くそれに何も触れずにそのままにしていると、また、いろんな形、口伝えで、そういう差別を広げていこうという意識がある人もおられるのではないかと思う。だから、何らかのかたちの啓発というものは必要だと思う。ただ、その啓発のしかたが従来のようなやり方でいいか、同和教育のあり方も従来のままでいいか、今、「賤称語を教科書の中に載せるのはどうか」というお話があったが、そういうことがもうすでに今の時代に合うかどうか、ということは議論が必要だと思う。
<意見交換の概要>
(団体)
 県民の意識を行政が取り上げて、それを啓発の対象にしていくということは、(内心の自由を掲げている)憲法にも抵触する。ある意識が存在するとすれば、その意識が生まれる要因が必ずあるはずである。その要因にメスを入れて解決していくのが行政の課題である。
(県:知事)
 「意識ではなくて要因にきちっとメスを入れるべきではないか」ということはおっしゃるとおり。ただ、意識に対して理性で訴えていくということも一方では必要だろうと思う。要因を取り除いていくということは必要だが、意識に対して、理性ということを高めるという働きかけというのもあり得る。
(団体)
 啓発で部落差別を知ることのほうが最近多い。そういう中で、県民の中にそういう意識が持たされたという側面が非常に強いと思う。
(県:知事)
 これまで続けてきた啓発が、逆に差別をつくり出す要因になっているんじゃないかということをきちんとやっぱり検証していく必要はあるだろうと思う。
(団体)
 知事は「啓発を一斉にやめていいとは思わない」と言われたが、やめても大丈夫だと思う。
(県:知事)
 もう啓発をやめてしまっても大丈夫だとおっしゃるが、今の段階で、それを「捨てきれます」とは、僕はちょっと自信をもって言い切れない。やり方を変えていくとかということは、僕は、必要な時期だと思う。
(団体)
 県がこの3月に出した冊子(実態の公表の普及版)に、「同和地区」あるいは「同和地区の人」ということが設問として出てくる。既に特別措置法が終了して、行政上の線引きは当然なくなっているのに、地域や人の特定を行政が行なうということは不適当だと思う。今日なお存在してるという意識を見る人に与えるので、適当でない。
(県:企画振興部長)
 「同和地区」や「同和地区の人」というふうに特定をした設問については、これまでやってきた教育・啓発というのが年度を追ってどんなふうに効果をあげているか、県民の意識がどう変わっているか、それを時系列的に把握したいということで、あえて同じ設問を使っている。時代に合わない部分があるかも知れないが、時系列的に調べたい、あるいは、全国の中で高知県というような比較をしたいという意図があってやっている。

(2)県民の働く場の確保について
<申し入れ(※)の趣旨>
 最近の雇用情勢は大変厳しい状況にある。県の取り組みと対応について聞く。
<県:商工労働部副部長>
 雇用あるいは就業の場の確保ということにつきましては、皆さん同様、今日的な大きな課題と認識している。17年度の予算編成にあたっても、「産業の振興と雇用の拡大による経済の基盤づくり」を県政の4柱の一つ、最重点課題として掲げ、県をあげて取り組むこととしている。
 基本的には、産業の振興をはかり、県の経済を底上げをする。そのことによって、雇用の拡大、雇用の場というものを確保していこうとしている。
 例えば農業分野では、新たな農業振興のための、新規に参入する農業生産法人を支援をしていく事業、あるいは、「食の安全」を求める流れの中で、有機農業の実践者といった方々の育成を支援をする事業、また、商工部門では、企業の誘致の推進と、特に本年度からは、頑張る企業総合支援事業という事業を新たに創設をして、県下の頑張っておられる中小企業者の皆さんに対して積極的に支援をしていこうとしている。そして、それに加えて、観光、あるいは海洋深層水、また流通関係といったようなものを振興する事業を行うとともに、県としても積極的に県内のものを調達をしていこうという公的調達の促進、それから、県の事務事業を見直しをすることによって、できるものは民間の方にお任せする、いわゆる外部発注、アウトソーシングの促進といったことを実施をすることとしている。
 県としては、こういったような様々な取り組みによって、できるだけ多くの成果、雇用の拡大につなげていきたいというふうに考えている。
 一方、雇用に対する取り組みについては、国と県とがお互いに連携をしながら進めているところであり、県では、より地域に密着をした雇用対策ということで、雇用問題が深刻な若者、いわゆる若年者への対策、あるいはまた、せっかく就職してもなかなかうまく噛み合わないといったミスマッチ解消と、そういうようなことのための仕事体験事業、といった諸事業を行うとともに、ハローワークの協力を得て、それぞれ地域で企業の面談会を行っている。
<意見交換の概要>
(団体)
 ご存知のとおり、旧同和地区でいえば、非常に失業者が多い。土木建設業が多いが、仕事がない。非常に深刻である。緊急雇用開発基金事業が今年度から止まるというようなことで、何とかしてもらいたい。
(県:商工労働部副部長)
 県の構造そのものが、公共工事に依存する体質があるので、何とか建設業の部分を対応していかなければいけないということで、業界の皆さん方と連携をとりながら、研究会を立ち上げ、協議を進めてきた。そして、頑張る企業総合支援事業の中でも、建設業の方々への対応というものもメニューとして入れている。
(団体)
 南国市が緊急雇用の事業を市独自で単独でやっている。
(県:商工労働部副部長)
 南国市は、基金事業でやっていた事業の中で、基金がなくなっても、どうしてもやらないといけない公園の維持管理とかいった必要な部分について、市として単独でやることにしたと聞いている。
(団体)
 社団法人「高知雇用開発センター」というのをつくっているが、仕事がない。このセンターは儲けが目的ではなく、部落問題解決のための働く場を自分らで開拓していこうということ。何か支援をしていただけるものはないか。
(県:商工労働部副部長)
 「ここありき」というかたちで仕事をおまわしすることは難しい。

(3)その他 ―「南海大震災誌」復刻版の件について―
(団体)
 南海大震災誌の復刻版の件については、基本的には県の対応を支持する。それでいいと思う。ただ、不適切な表現、それがそのまま載ったという点では残念に思う。
 二つ目の修正箇所(○○は衛生状態が悪いことにも原因がある)については、ちょっと県が気を回しすぎじゃないかなと思う。
(県:知事)
 二つ目の箇所に関しては、「やはりそういう地区だから衛生状態が悪いんだな」ということで、差別意識を持つ人がまたそこから出てくる危険性を否定できないんじゃないか、そういうものを削除していくということも行政の判断としてあっていいんじゃないか、ということで、私が判断をした。

参考

※ 平成17年3月7日付け申し入れ[PDFファイル/68KB]

この記事に関するお問い合わせ

高知県 子ども・福祉政策部 人権・男女共同参画課

所在地: 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号(本庁舎5階中央北側)
電話: 人権担当 088-823-9804
女性の活躍推進室 088-823-9651
ファックス: 088-823-9807
メール: 060901@ken.pref.kochi.lg.jp

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