イノシシの生態と被害対策について

公開日 2024年01月31日

生態や特徴

 イノシシは、里山を中心に生息し、鼻の力が強く、ジャンプも得意で、狭い隙間に潜り込むのも得意です。
たとえば、成獣だと助走をつけないで1m以上の高さを飛び越え、鼻では50kg以上の石を動かすことができます。大きさは頭胴長120から150cmくらい、体重70から140kgくらいで、走る速さも早く、突進したときの破壊力は凄まじいものです。一方でその体格には似合わず20cmの狭い隙間でもくぐり抜けることができます。また、弾丸型の体型はやぶ山の移動に適しています。

 繁殖力も旺盛で、普通、春(4から6月)に1度、1回に4から5頭ほどを出産し、そのうちの半数ほどが育つといわれています。ちなみに、イノシシは一夫多妻制で、晩秋から冬にかけて交尾し、約4か月の妊娠期間を経て、耕作放棄地などの繁みで出産をします。

 イノシシの性格は臆病です。したがって、おもに人のいない夜間に活動しています。また、イノシシの学習能力は想像以上に高いともいわれています。

 イノシシは雑食性で、地面を掘り起こしては地中にある動植物(植物の根茎やタケノコ、ミミズなど)を食べたり、ドングリなどの果実や昆虫のほか、カエルやヘビ、カニなどを食べます。最近ではコメや野菜などの味を覚え、柑橘や飼料作物にいたるまで、多くの農作物に被害を及ぼしています。季節でみると、おもに春はタケノコ、夏はイネ(乳熟期の米)、秋はドングリ、冬はクズの根などを食べています。特に、食べ物の少ない時期に乳熟期を迎えるイネは多大な被害を被ることになります。

 

 

被害状況(被害作物など)

 人間の生活域とイノシシの生息域とが重なる地域で農作物に大きな被害が出ます。
特に、乳熟期のイネや、イモ類、野菜やタケノコなどの食害が顕著ですが、雑食性ゆえにあらゆる作物に加害します。
 イノシシの被害かどうかは、足跡やヌタ場、糞や体毛などで確認することができます。田んぼではモミを食べて吐きだした籾殻などからもイノシシの被害を確認できます。

 

 

被害対策

 対策については、野生鳥獣全般にいえることですが、あきらめない姿勢が大切です。考えられることはいろいろと試してみましょう。

 
1.まず、できることから・・・・農地のまわりを見回してみましょう。

 
B級品や野菜クズなどの生ゴミを、イノシシのエサとなるような場所に廃棄しないようにします。
隠れ場所であり、クズの根やミミズなどのエサが豊富な耕作放棄地は思い切って刈り払いをしましょう。
農地の周囲を刈り払い、侵入しやすい繁みを無くして、見晴らしを良くしましょう。
田んぼや畑は頻繁に見回り、人の存在を意識づけましょう。
あくまで一時的ですが、臭いや音や光(たとえば花火やラジオ、木酢液など)もある程度の効果は期待できます。急場しのぎには使用を検討してみましょう。

 
2.本格的に・・・・イノシシの侵入を防ぐ柵を設置してみましょう。

  
現在普及しているトタンと電気柵について、長所と短所をみてみましょう。
トタンには目隠し効果がありますが、風通しが悪く、強風などによる補修やメンテナンスが必要です。
電気柵は、電気ショックでイノシシを撃退できるので学習効果などが期待できます。しかし、電線に草木などが触れると電圧が低下するので、頻繁に草刈りをしておかなければなりません。
最近では強度面や通風性に優れ、設置やメンテナンスも比較的容易なワイヤーメッシュ(10cm格子の溶接金網)が普及してきました。
しかし、目隠し効果はないので1m程度の高さでは飛び越えられてしまいます。
そこで、1mほどの比較的低い柵でもイノシシの飛び越えを防止できる「金網忍び返し柵」が開発されました。
これは高さ1mのワイヤーメッシュ柵の上部30cmを外側に25度くらい折り返して「忍び返し」を付けます。
これで、高さ120cm以上を飛び越えるといわれるイノシシも、その踏み切り場所を誤って、飛び越せなくなるという仕掛けです。設置コストは1m単価500円と、トタンや電気柵とほぼ同額ですが、通風性や管理面で有利です。これから新たに防止柵を設置しようと思われる方にはおすすめです。
なお、現在、トタンや電気柵、ネットなどの柵を設置している場合はそれを取り除かないで、2重3重に取り囲むことをおすすめします。防止柵は、複合して奥行きをもたせることで効果を増幅させることができます。なお、防止柵についてはいずれの場合でもいえることですが、くぐり抜け防止のために、地際は隙間なくしっかりとおおっておく必要があります。

 

「忍び返し柵」の施工例と、トタンと組み合わせた設置例(ともに島根県)
防止柵については市町村から補助のある地域もあります。詳しくは最寄りの市町村にお尋ねください。

 
3.集落ぐるみで・・・・里山管理をしましょう。

 
野生鳥獣との共存(棲み分け)に向けた里山管理も考えてみましょう。
田畑と林との間に羊や牛などのゾーニング域(人と野生動物との生活の緩衝地帯)を設けて、イノシシの侵入を防ぐ方法も有効だと報告されています。
この場合は比較的簡易な柵でも侵入されにくく、羊や牛、あるいは山羊などを放牧することで雑草の管理が容易になります。
農村で子供たちが羊や山羊と触れあう事業を企画したり、嶺北牛や窪川牛などのブランド牛と組み合わせることで、話題性も生まれます。
こうした取り組みにはある程度まとまった規模も必要ですが、地域ぐるみで防止柵を設置したり、緩衝帯を設けることで設置コストを低く抑えることも可能です。なにより、地域住民の協力関係が深まり、「三人寄れば文殊の知恵」で、イノシシ被害への対策に大きな進化が期待できます。

水田と林との間に設けられた羊のゾーニング域 (*滋賀県)

 
4.イノシシの捕獲も・・・・検討してみましょう。


防除だけでは効果が得られないと思ったときには、被害を与えている個体を捕獲することも考えてみましょう。県内には有害鳥獣の捕獲許可を得て設置した「箱ワナ」で効果をあげている事例もあります。有害鳥獣の捕獲については最寄りの市町村にご相談ください。
なお、高知県ではイノシシの特定鳥獣保護管理計画を策定し、狩猟による猟期を延長するなど、繁殖力旺盛なイノシシの個体数管理に取り組んでいます。

イノシシの通り道に設置した箱ワナの例 
 

 

この記事に関するお問い合わせ

高知県 中山間振興・交通部 鳥獣対策課

所在地: 〒780-8570 高知県高知市丸ノ内1丁目2番20号(本庁舎3階)
電話: 088-823-9039(被害対策担当)
088-823-9042(狩猟行政担当)
088-823-9622(生活支援担当)
ファックス: 088-823-9258
メール: 070201@ken.pref.kochi.lg.jp
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