1−5 定額残業制

公開日 2014年07月08日

更新日 2014年07月09日

【相談内容】 (徳島県労働委員会) 


 4月から今の会社に転職し、営業職として働いていますが、入社後に「我が社は定額残業制で、残業代については営業手当として毎月固定額(○○時間分)を支給しています。」と説明されました。
 以前の会社では毎月残業時間を計算して、残業した時間分について残業手当が支払われていたのですが、定額残業制だと残業をいくらしても残業代は予定額以上支払われないのでしょうか。

 

【お答え】


 残業手当は、通常残業をした時間に応じて支払われるものですが、基本給や営業手当等の各手当に○○時間分の残業手当を含めて支払う、「定額残業制」(固定残業手当ともいう。)を導入している会社があります。
 判例では、「その支払額が法所定の計算方法による割増賃金額を上回る以上、割増賃金として一定額を支払うことも許される(関西ソニー販売事件大阪地判S63.10.26)」とされており、違法なものではありません。別の判例では、「その基本給のうち割増賃金に当たる部分が明確に区分されて合意がされ、かつ労基法所定の計算方法による額がその額を上回るときはその差額を当該賃金の支払期に支払うことが合意されている(小里機材事件東京地判S62.1.30)」ことが求められていますので、「定額残業制」が認められるためには、
1.定額残業代部分が、それ以外の賃金と明確に区分されていること
2.定額残業代部分に何時間分の残業代が含まれているのか明確にされていること
3.労基法に基づき実際の残業時間を基に計算した割増賃金の額が定額部分を超える場合は、その差額を当該賃金の支払期に支払うこと

が就業規則等に定められ、職員に周知されている必要があります。
 このように、たとえ会社が「定額残業制」と言っても、実際の残業時間を基に算定された額が予定額を上回っている場合は、会社はその差額分を支払わなければなりません。
 なお、労働基準法には、労働時間を把握することが困難である場合、「事業場外労働」及び「裁量労働」についての「みなし労働時間制」が定められています。
 そして、「みなし労働時間制」の適用が認められた場合は、実際の労働時間にかかわらず残業代を定額支給することが許されますが、これは労基法第38条の2から第38条の4までの規定に基づく手続を経て認められる限定されたものですので、一度あなたの会社の就業規則、賃金規定や、労働契約書に明文化されていたかどうか等を確認し、担当者の方に詳しい説明を求めてはいかがでしょうか。
 もし説明に納得がいかないときは、労働基準監督署へ相談することをお勧めします。

 

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この記事に関するお問い合わせ

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所在地: 〒780-0850 高知県高知市丸ノ内2丁目4番1号(高知県庁北庁舎4階)
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ファックス: 088-821-4589
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