令和7年月6月13日 令和7年6月県議会での知事提案説明

公開日 2025年06月13日

令和7年6月13日 令和7年6月県議会での知事提案説明

1 県政運営の基本姿勢
2 人口減少対策
3 いきいきと仕事ができる高知
(1)地産外商の取り組み
(2)イノベーションの取り組み
4 いきいきと生活ができる高知
(1)日本一の健康長寿県づくり
(2)教育の充実
(3)文化芸術とスポーツの振興
5 安全・安心な高知
(1)南海トラフ地震対策
(2)インフラの充実
6 議案

 本日、議員各位のご出席をいただき、令和7年6月県議会定例会が開かれますことに厚くお礼申し上げます。

 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ち、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員各位並びに県民の皆さんのご理解とご協力をお願いしたいと考えます。

1 県政運営の基本姿勢
 現下の県経済は、堅調な個人消費などによる持ち直しの動きが続いています。特に観光は、先のゴールデンウィークには、物価高による出控えや日並びの悪さが懸念されたにもかかわらず多くの観光客が県内各地を訪れるなど、好調を維持しています。
 こうした県経済の回復軌道をより確かなものとし、人口減少下にあっても持続的な成長を実現するためには、県外や海外の市場に打って出て「外貨」の獲得を目指す「地産外商」の取り組みを一層強化する必要があります。
 今年度は、3月末から連続テレビ小説「あんぱん」が放送され、4月には大阪・関西万博も開幕するなど、本県にとってはチャンスの年です。こうした機会を最大限に生かし、インバウンドを含む観光誘客や県産品の外商活動のさらなる拡大を図り、県民所得の向上につなげます。
 県政の最重要課題である人口減少問題については、昨年度の本県への移住者数が過去最多を記録した一方、県外への転出超過数が前年度を大幅に上回ったほか、出生数の減少にも歯止めがかからないなど、依然として厳しい状況が続いています。
 こうした傾向を早期に食い止めるため、「若者の所得向上」や「共働き・共育て」の生活スタイルの普及をはじめとする取り組みを一層強化します。
 あわせて、効率的で持続可能な公共サービスの提供体制の確立を目指して、いわゆる4Sプロジェクトを推進します。
 加えて、南海トラフ地震対策については、新たに策定した第6期行動計画を着実に実施すると同時に、国の新たな被害想定を踏まえて、防災・減災対策を絶えず進化させるべく、全力で取り組みます。
 今後も私自身が先頭に立って、こうした前例のない課題の解決に全力で取り組み、人口減少下にあっても「活力にあふれる高知」、南海トラフ地震が切迫する中にあっても「安心して暮らせる高知」の実現を目指します。

(「共感と前進」の県政)
 県政運営にあたっては、引き続き「共感と前進」を基本姿勢に、県民の皆さんとの対話を通じて県政に対する共感を得ながら、様々な課題の解決に取り組みます。
 昨年度から「濵田にお聞かせください」と題し、若者や女性など、県内で活躍される方々を知事公邸にお招きして、「女性が活躍できる高知県になるために必要なこと」など、様々なテーマでの意見交換を行っています。
 先月には、本年度第1弾として、若手消防職員の方々からご意見を伺いました。今後も、市町村や企業への訪問、県民の皆さんとの対話を通じてその声に真摯に耳を傾け、県政に反映してまいります。

2 人口減少対策
 次に、県政の最重要かつ喫緊の課題である人口減少対策について、ご説明申し上げます。

(元気な未来創造戦略に基づく取り組み)
 本年4月の推計人口では、本県の人口は65万人を割り込む結果となりました。また、先日公表された昨年の出生数は3,108人と過去最少を更新したほか、依然として若年層を中心とした転出超過が続いています。
 人口減少対策のマスタープランである「元気な未来創造戦略」による取り組みの初年度の結果としては、大変厳しい船出になったと受け止めていますが、婚姻数は増加に転じるなど、明るい兆しも見え始めています。
 もとより、人口減少対策は1年や2年で成果が得られるものではなく、施策をさらに強化しながら、粘り強く取り組みを続けていくことが必要です。
 このため、本年度は、若者の所得向上に向けてもう一段踏み込んだ取り組みを進めるとともに、「共働き・共育て」の輪をさらに拡大すべく、官民協働による取り組みを新たに展開します。
 まず、「若者の所得向上の推進」です。本年4月、一次産業や製造業、サービス業、医療、福祉など15の業種ごとに、官民協働による「若者所得向上検討チーム」を設置しました。
 この検討チームでは、業種ごとの現状や課題を踏まえ、新技術による製品・サービスの開発や非正規雇用労働者の正規化といった経営改革モデルをとりまとめることとしており、今後県の施策に反映させていきます。
 また、県が設置する公共施設においても、より高い付加価値を生み出すサービスを提供しながら、職員の所得向上を目指す取り組みが期待されます。
 このため、一定規模の集客が見込まれる県有施設については、管理者となっている県の公社等外郭団体の管理運営に対する県の関与を縮小し、団体の自律性を向上させるための改革を進めます。
 次に、「共働き・共育て」の生活スタイルのさらなる普及については、男性の育児休業取得率の向上に向けた取り組みを原動力に、女性の負担軽減と社会の意識改革を加速化します。8月には、県内企業の育児休業取得者数や取得率等を広く公表する特設サイトを開設し、各企業に自主的な公表を促すことを通じて、県民運動としての裾野の拡大を目指します。
 また、若者が活躍することができる、魅力ある高知県を実現するためには、県や市町村、民間事業者の皆さんを含めた「オール高知」でともに知恵を出し合い、取り組みを進めていくことが不可欠です。
 このため、9月を目途に県・市町村、高等教育機関及び各産業団体により、「若者応援産学官フォーラム」を設け、「産業人材の育成と県内就職の促進」、「若者に魅力ある仕事の創出」、さらには「若者と地域の交流促進」へ向けた取り組みを一体となって推進します。
 このフォーラムには医療、福祉、商工業といった分野別の分科会を設け、業界ごとの実情に応じた取り組みを協議するほか、若者世代の「出会い」をテーマにした分科会も設けたいと考えます。

(中山間地域再興ビジョンに基づく取り組み)
 「中山間地域再興ビジョン」に基づく取り組みのうち、移住促進については、昨年度の本県への移住者数が2,241人と、過去最多を記録しました。
 特に、20代を中心とした若年層の移住者が多くなっており、デジタルマーケティングを活用した情報発信の強化や新たな移住プロモーションの展開など、若者へのアプローチの拡大が効果を発揮したものと考えます。
 一方、こうした移住者数の増加を織り込んでも、昨年度の県外からの転入者総数は8,394人にとどまっており、前年度比で305人の減少となっています。これは、県や市町村の移住窓口を通らずに転入する方々の数が大幅に減少していることを示すものです。
 この春、県外からの転入者を対象に行ったアンケートの結果によれば、移住以外の理由で県外から転入したケースとしては、例えば企業や行政機関における「転勤」、大学等への「入学」、新卒での「就職」などが考えられます。こうした層の減少が転入減につながったものと推測されますので、今後は、その要因についてさらなる調査分析を進め、対策を検討します。
 このほか、関係人口の創出に向けた新たな施策として、集落活動センターなどが主体となった地域活動への参加を通じて、中山間地域と都市部の若者をつなぐ仕組みを構築し、来月からスタートさせます。
 この取り組みを契機に、県内の各地域において、地域住民と都市部の若者や移住者などの多様な人材が交わり、人口減少下においても賑わう「にぎやかな過疎」の創出を目指します。

(人口減少対策総合交付金)
 昨年度に創設した人口減少対策総合交付金については、全ての市町村で事業計画の策定が完了し、本年度から地域の実情に応じた人口減少対策が本格的に展開されています。
 例えば、一次産業やフリーランスなど国民健康保険の加入者には、産前産後休業期間の手当制度がありません。本山町では、これらの方々を対象に、手当に準ずる応援金を支給することで、誰もが安心して出産、子育てできる環境整備を目指す先進的な取り組みが行われています。
 先日行った国への政策提言の中では、こうした先駆的な取り組みを参考に、国において自営業者等を対象とした全国的な支援制度を創設するよう提案してまいりました。
 さらに、市町村間でお互いの新たな施策について情報交換する場を設けたほか、この秋には有識者をお招きし、昨年度から先行して実施している事業を中心に、市町村に対するフォローアップを行うこととしています。こうした取り組みにより、交付金を活用した事業の改善や優良事例の普及を図り、着実な成果につなげます。

(消防広域化)
 人口減少が全国に先駆けて進行する本県において、真に必要な公共サービスを持続的に提供できる体制への改革を進めることを目的として、「集合」「伸長」「縮小」「創造」の4つのSにより「賢く縮む」プロジェクトを推進しています。
 このうち消防の広域化については、有識者や県内全ての市町村長、消防本部の消防長による検討会を4月に初めて開催し、県の試案として示した基本構想を基に議論を開始しました。
 その中では、「広域化による財政負担や組織体制の変化に関する定量的なシミュレーションの結果を早期に提示すべき」、「地元出身の職員を優先的に配置できる仕組みを設けるべき」といった様々なご意見をいただきました。先月からは総務、財務、消防業務、通信・システムの4つの専門部会を設けてテーマごとの議論も始めており、こうした意見も踏まえて具体的な検討作業を加速した上で、引き続き、市町村や消防本部と丁寧に協議を進めます。
 今回の消防広域化は、管理部門の整理統合で生じる余力を現場力の強化に振り向けること、そして消防職員を志す若者たちに選ばれる、魅力のある職場づくりを通じて人材確保を図ることを旨とするものです。
 今後、こうした広域化の基本的な姿について市町村のコンセンサスを得た上で、新たな「基本計画」をとりまとめ、年度内を目途に、各市町村議会及び県議会における議決を得て法定協議会を設置し、次のステップに進むことを目指します。

(公共交通の維持確保)
 中央地域の公共交通を担うとさでん交通においては、近年、乗務員の不足等により路線バスや路面電車の減便を余儀なくされる一方、コロナ禍における収入の減少により債務残高が発足時と同水準まで増大しています。
 この結果、新たな資金調達により前向きな投資や人材確保に向けた処遇改善を行う余地が極めて乏しくなっています。
 このため、中央地域の公共交通の担い手として必要な役割を果たせるよう、同社の財務基盤の強化を図るため、県と沿線市町が協調して財政上の支援策を講じることとし、先般、その基本方針について合意しました。
 具体的には、コロナ禍で増大した約12億円の債務の解消を目指し、そのうち公共交通部門の約8億円は、設立時の出資比率に鑑み県と市町で折半し、高速バスなどの収益部門の約4億円については、県が全額支援することとしました。
 この合意に基づき、債務償還のための県からの支援に要する経費として、約8億円の補正予算案を今議会に提出しております。
 あわせて、持続可能な中央地域の公共交通ネットワークの構築に向け、5年後、10年後の中長期的な姿を見据えた公共交通の将来像について、県、沿線市町、事業者による具体的な検討を進めます。

(国への政策提言) 
 バブル経済崩壊後の「失われた30年」は、設備・人・債務が過剰なデフレ経済の下、組織が一枚岩となってコストカットを追求して利益を生み出すビジネスモデルが一般的でした。このため、非正規雇用の拡大などにより人件費の削減が進められ、「人への投資」が軽んじられた時代でした。
 職場では、男性中心の長時間労働が前提とされ、とりわけ東京をはじめとする大都市圏では、長時間の労働や通勤、狭隘な住環境の下で消耗型の生活スタイルを余儀なくされてきました。こうした「人が大事にされない」潮流の中で、人口減少が加速化し、現在、あらゆる分野で人手不足が深刻化しています。このため、企業や組織の人材確保のためにはもちろんのこと、社会全体で少子化対策を進める上でも、働き方改革を進め、仕事と家庭の両立ができる環境を整備することが不可欠となっています。
 経済運営の面でも、「人」を大事にし、多様な価値観を尊重することにより、高付加価値の製品やサービスを生み出す経済への転換を図らなければ、我が国の持続的な成長は見込めず、若者の所得向上も実現できません。
 したがって、我が国が人口減少を克服するためには、国政の力で、こうした「働き方」や「経済構造」の転換を進めることが不可欠だと考えます。
 そのためにも、「国土政策」の局面で、一極集中を是正し、企業や大学、政府機関などの大都市機能を地方に分散することが欠かせません。それによって、地方部の豊かな自然の中で、ゆとりを持って働き、個性が尊重され、高付加価値創造型の仕事ができる環境を整えることができるからです。
 このような考え方に立って、本年度の国への政策提言においては、人口減少問題の解決に向け、国において「働き方」「経済構造」「国土政策」の3つの構造転換を一体的かつ強力に推進するよう訴えてまいりました。
 来年度に向けた国の「骨太の方針」には、「多様で柔軟な働き方の推進」、「人中心の国づくり」のほか、付加価値創出型の地方経済の創生や、人や企業の地方分散を掲げる「地方創生2.0の推進」などが盛り込まれる見込みです。こうした国の考え方は、これまで政策提言で本県が訴えてきた趣旨と軌を一にするものだと考えます。
 本県としては、国がこうした方向に沿って、特に大都市機能の地方分散の実現に向けて真摯に取り組むことを求めるとともに、国の施策に呼応して、関係人口の量的拡大や質的向上などの取り組みを積極的に進めます。
 引き続き、我が国全体の人口減少の克服に向けて、大都市部には「ゆとり」を、地方部には「活力」を創出できるよう、全国知事会とも連携しながら、子育て支援の全国一律での充実や地方税源の偏在是正なども含め、積極的に政策提言を行います。

3 いきいきと仕事ができる高知
 次に、目指すべき3つの高知県像のうち、「いきいきと仕事ができる高知」に向けた取り組みについて申し上げます。
 人口減少が加速する中、経済を活性化させ、高知県の元気な未来を切り開くためには、「本県経済の持続的な成長に向けた挑戦」と「若者の定着・増加」の好循環を生み出していくことが不可欠です。
 2年目となる第5期産業振興計画では、地産外商とイノベーションの取り組みを一層強化し、高付加価値型経済への移行、デジタル化による生産性の向上などにより、企業の稼ぐ力を高め、県民所得の向上につなげます。
 加えて、エネルギーや食料品の「地消地産」の取り組みを推進し、県際収支の改善と県民所得の向上を一体的に実現することを目指します。

(1)地産外商の取り組み
(関西圏との経済連携の強化)
 関西圏との経済連携については、昨年度開設したアンテナショップ「SUPER LOCAL SHOP とさとさ」を拠点に、「極上の田舎」高知の魅力を広くPRしてきました。その結果、昨年7月オープン以降の来客数は約164万人、店舗売上げは2億5千万円を超えるなど、当初の計画をはるかに上回る順調な滑り出しとなりました。
 国内外から2千8百万人以上が訪れると見込まれる大阪・関西万博という好機を生かし、万博会場でのイベントへの参画や「とさとさ」とも連動した企画を展開することで、本県の魅力を積極的に発信しています。
 先月には「森林」をテーマとしたシンポジウムに私自らが出席し、「大屋根リング」への県産材の活用や、木造の商業ビルなどを「高知県環境不動産」として認定する本県独自の制度などについてPRしました。
 さらに、先月末から今月始めにかけてはIoPクラウドによる先進的な施設園芸農業などのPRブースを出展し、5日間で約8千7百人の来場者に対し、VR(仮想現実)による疑似体験なども含め、本県の先端技術を広く発信しました。
 今後は、8月開催の「よさこい祭り」と「街路市」をテーマとしたイベントに向け、県内市町村や事業者の皆さんと連携し、準備を進めます。

(輸出拡大の取り組み)
 今後、人口減少などにより国内市場の縮小が見込まれる中、県経済が持続的に成長していくためには、活力ある海外市場に積極的に打って出る必要があります。
 このため、防災関連製品をはじめとするものづくりの分野では、本県と同様に自然災害の多い台湾や東南アジアへの輸出拡大に取り組んでいます。
 先月には、台湾とタイで開催された国際見本市に出展し、本県製品や技術の売り込みを行いました。また、フィリピンにおいても、昨年の防災セミナーで築いた政府機関とのネットワークを生かし、商談の場を拡大します。
 アメリカの関税措置については、引き続きその影響を見極めていくと同時に、事業者の資金繰りを支援するため、国による新たな特別保証制度に呼応した県の制度融資を創設する補正予算案を、今議会に提出しています。

(観光振興の取り組み)
 観光分野では、昨年の観光総消費額が過去最高の1,308億円となり、県外からの観光客数も過去2番目の445万人を記録しました。
 また、3月から開始した連続テレビ小説「あんぱん」は、やなせさんの名言を思わせる言葉や土佐弁がちりばめられ、「やなせたかしのふるさと高知」を全国に強く印象付ける番組となっており、大変うれしく思っています。
 今後も、この「あんぱん」の追い風を最大限に生かせるよう、ドラマの出演者を招いたイベントやドラマの巡回展などの事業を切れ目なく展開することで、さらなる誘客の拡大、県内周遊の促進を図ります。
 あわせて、本県のインバウンド観光の要となる高知龍馬空港新ターミナルビルについては、来年秋の一部先行供用開始に向け、着実に整備を進めます。

(地消地産の推進)
 本県においては、地理的条件や産業構造上の理由から、原材料や製品の多くを県外からの調達に頼らざるを得ず、結果として、いわゆる県際収支が大幅な赤字の状態が長年続いています。
 こうした状況を改善し、県民所得の向上を図るため、今年度から新たに「地消地産」を産業振興計画に位置付け、木製品や土佐黒牛などについて、「地消」の拡大と「地産」の強化が一体となった取り組みを進めています。
 今後は、県の公共調達の場面においても、県産品の採用及び県内事業者の育成を全庁的に推進することとし、そのための基本方針として「公共調達による地消地産推進戦略」を策定したいと考えています。
 この戦略に基づく取り組みは、単に県内事業者の受注拡大にとどまらず、「地産」の強化と県内市場における評価の確立を通じて、最終的には地産外商の強化を目指すものと位置付け、産業振興計画と一体的に取り組みます。
 今後、骨子案についてパブリックコメントを実施し、事業者や県民の皆さんの声をお聞きしながら、本年度上半期を目途に戦略を取りまとめます。

(2)イノベーションの取り組み
 商工業分野では、県内企業の生産性向上や事業構造の変革につなげるため、デジタル化に取り組む事業者の量的拡大と質的向上を図ります。
 量的拡大に向けては、デジタル技術の導入コストの負担軽減のため、補助対象となる製品やサービスを限定しない県独自の制度を設けて支援しており、4月から行った第1次募集に、1カ月間で123件の申請がありました。
 質的向上に向けては、これまで実施したモデル事業において、ロボットの導入による製造工程の自動化や、物流の「2024年問題」に対応した配車表のデジタル化による作業量削減など、先進的な好事例が生まれています。
10月には、デジタル化で他の模範となる取り組みを表彰するイベントを開催し、優良事例を広く発信することで、県内事業者に広げていきます。
 農業分野では、これまで、IoPクラウド「SAWACHI」を活用したデータ駆動型農業について、ハウス内環境を制御しやすい施設栽培を中心に普及が進んできましたが、最近では露地栽培でも成果が見え始めています。
 例えば、中芸地域のオクラ生産グループでは、気象と土壌水分データに基づき、水や肥料を適切に与えることで、前年と比べて収量がおよそ2割増加するといった結果が出ています。
 本年度は、これまで利用の少なかった露地野菜や花き、果樹などの生産者に対する取り組みを強化し、さらなる利用の拡大を図ります。
 林業分野では、森林クラウド「Clowood」を活用し、森林資源や地形のデジタルデータを基に林業適地の選定を進め、その面積は本年3月末までに約10万ヘクタールまで拡大しました。
 本年度は、この林業適地の中でモデル地区を設定し、先端機械の活用などにより皆伐から再造林までの低コスト化を実践し、その成果を横展開することで、さらなる再造林の推進につなげます。
 水産業分野では、土佐清水地域において市場スマート化のモデルケースの構築に取り組んでおり、4月には、メジカ漁を取り扱う3つの市場全てにおいて、スマートフォンやタブレットで入札を行う電子入札へと移行しました。
 こうした取り組みを着実に進め、市場関係者にデジタル技術導入による業務効率化の効果を実感していただき、メジカ漁以外においても、電子入札や自動計量の導入を進めます。さらに、この土佐清水地域のモデルケースを他の地域へ横展開することにより、市場のスマート化を加速します。

(新たな産業の創出)
 産学官民が連携し、本県の柱となり得る新しい産業の創出にも引き続き取り組みます。
 アニメ産業の集積を目指すアニメプロジェクトでは、4月に開催された「高知アニクリ祭2025」に、大手アニメ制作会社の役員や業界を牽引するアニメクリエイターなどを含め2万4千人を超える方々が来場されました。
今後は、高知市中心部で整備が進む拠点施設「GEAR」の完成が見込まれる令和9年度を見据え、人材育成の取り組みや関連業界とのネットワークをさらに強化し、クリエイターや関連企業の集積につなげます。
 このほか、グリーン化関連産業では、これまで県と事業者が共同で開発を進めてきた、竹繊維を配合したプラスチック代替素材について、来月からの生産開始と、本年度中の量産化を目指して準備が進められています。
 今後は、自動車部材をはじめ多くの分野での利用が見込まれ、産業面はもちろん、森林環境の保全やCO2削減といった多面的な効果が期待されます。
 引き続き、本県から独自性と付加価値の高い製品や技術をより多く生み出せるよう、製品開発に対する補助制度や関係機関による技術支援を通じて、事業者の取り組みを後押しします。

4 いきいきと生活ができる高知
 次に、「いきいきと生活ができる高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。

(1)日本一の健康長寿県づくり
 日本一の健康長寿県づくりでは、中山間地域における担い手不足の深刻化などの厳しい現状を踏まえ、4つの柱に基づき、取り組みを進めています。
 このうち、「地域で支え合う医療・福祉・介護サービス提供体制の確立とネットワークの強化」では、中山間地域を中心に、住み慣れた地域でサービスを受けられる体制の整備を進めます。
 医療分野では、中山間地域等における看護職員確保の費用負担を軽減するため、短期就労人材とのマッチング支援を強化する看護職員応援システムを4月からスタートさせています。
 介護分野では、昨年度の報酬改定により訪問介護の基本報酬が引き下げられたことを受け、中山間地域の利用者にサービスを提供する訪問介護事業者に対し、遠距離の派遣について県独自で加算する仕組みを拡充しました。
 あわせて、国に対しては、在宅介護サービスの提供体制確保に向けた適切な介護報酬の設定について政策提言を行ったところです。
 このほか、県内全域を対象とした周産期医療体制の確保については、無痛分娩の導入に向けて、本年3月に高知大学と協定を締結し、「県内で無痛分娩を希望する全ての妊婦に対応できる環境」の実現を目指して取り組みます。

(2)教育の充実
 教育の充実については、本年3月に第3期教育大綱を改訂し、子どもたちが今後の予測困難な社会を生き抜く力を身につけることができるよう、様々な施策を進めています。
 まず、学力の向上に向けては、対話型AIを活用した学習支援アプリを中学校23校に新たに導入しました。学校だけでなく家庭においてもデジタル技術を効率的に活用することで、学習習慣の定着と学力向上につなげます。
 また、県内すべての小学校で安全安心な水泳授業が実施されるよう、本年4月に県独自の安全管理指針を策定し、5月には指針に基づく実践形式の研修会を行うなど、安全対策を強化しています。
 次に、キャリア教育では、「新しい学校のリーダー研修」を8月に開催し、高校生が県内の魅力ある産業や文化に触れると同時に、県内の先導的な企業のリーダーから知見を得て、地域の課題解決策を探る機会を設けます。
 さらに、不登校対策については、地域の保育所や幼稚園と小中学校との連携に取り組むモデル事業の対象に、新たに四万十市を追加しました。また、本年度から新たに、いわゆるメタバースを活用したオンラインによる学習支援やフリースクールへの運営支援に取り組んでいます。

(3)文化芸術とスポーツの振興
(よさこい高知文化祭2026の開催)
 来年10月から開催される「よさこい高知文化祭2026」に向けては、4月に開催した実行委員会総会において、開・閉会式や伝統芸能など地域の文化資源を生かした事業を盛り込んだ実施計画が承認されました。
 神楽などの地域の文化資源は、中山間地域における観光コンテンツとしても大きな可能性を有しています。今回の文化祭を契機に、観光客を含む多くの方に触れていただくことで、その継承と発展につなげたいと考えています。
 今後は、市町村や関係団体の皆さんとともに、観光分野とも連携した広報活動による機運の醸成やプレイベントの実施などを通じて、大会の開催に向けた準備を加速します。

(スポーツの振興)
 今シーズンからJ3参入を果たした高知ユナイテッドSCは、平均観客動員数が3千人を超え、昨シーズンを大幅に上回っており、県民の皆さんの期待の表れだと受け止めています。
 先日は約1年ぶり、Jリーグ参入後は初となるホーム戦での勝利を逆転で勝ち取り、期待に応える活躍を見せてくれました。
 4月25日からは、チームの活動を支援するクラウドファンディング型ふるさと納税もスタートしました。県としましても、既に高知市と協調して実施した出資に加え、クラウドファンディング型ふるさと納税と連動した追加出資を通じて、チームの経営基盤の強化をしっかりと後押しします。

5 安全・安心な高知
(1)南海トラフ地震対策
 第6期となる南海トラフ地震対策行動計画が、本年度からスタートしました。この計画では、津波避難タワーの整備など、これまでの取り組みの成果を踏まえ、本年3月末時点の想定死者数が7千8百人程度まで減少するものと見込んでいたところです。
 一方、国が3月末に公表した新たな被害想定では、県内の想定死者数は依然として最大4万6千人に上るものとされました。
 これは、平成24年の前回想定と比べ、厳しい前提条件を設定して試算が行われたことによるものです。具体的には、例えば、高齢者などの要配慮者の避難速度を前回よりも3割から5割遅く見込むほか、本県の意識調査では7割程度に達している早期避難意識率を2割に据え置いていることなどが挙げられます。
 今回の国の試算には、被害想定の算出をあえて厳しい条件下で行うことで防災関係者の油断を戒め、国民への注意喚起を図ろうという意図もあったのではないかと受け止めています。防災・減災対策の強化には終わりはないと心得て、対策の強化に向け、絶えず挑戦を続けなければなりません。
 現在、本県では、国の新たな被害想定をベースに、県内の詳細なデータなどを加味して、より精緻な高知県版の被害想定を算出する作業を進めており、今年度末の公表を予定しています。
 この県版の新たな被害想定を踏まえて、令和8年度における第6期行動計画のバージョンアップの作業の中で、必要となる対策の見直しを行います。その際には、災害関連死の防止といった新たな課題への対応も含め、被害の軽減に向けた取り組みをさらに進めます。

(国への政策提言など)
 南海トラフ地震の切迫度が年々高まっていることや能登半島地震の教訓を踏まえると、道路や上下水道施設をはじめとして、災害に強いインフラ整備を加速し、「事前の備え」をさらに強力に推進していく必要があります。
 そのためには、今般、国が策定した「第1次国土強靱化実施中期計画」に位置付けられた「令和8年度以降の5年間で20兆円強」という事業規模を最低限の水準としたうえで、必要な予算は、通常とは別枠で確保することが重要です。先月には、関係省庁にこうした趣旨の政策提言を行いました。
 また、国が来年度中の設置を目指す「防災庁」に関し、事前復興を一元的に推進する組織を設けること、また、その組織、あるいは中国四国ブロックの地方分局を本県に設置することについても、国に求めてまいりました。
 引き続き国の動向に目を配り、必要な働きかけをタイムリーに行うとともに、国の力強い後押しを得ながら、災害に強い県土づくりを進め、安全・安心な高知の実現に向けて取り組みます。

(2)インフラの充実
 県民の皆さんの命と暮らしを守るインフラ整備の中でも、四国8の字ネットワークは、地域の経済活動を支え、南海トラフ地震等の大規模災害への備えを高める上での重要な社会基盤です。
 本年2月には阿南安芸自動車道「北川道路」の一部区間、3月には高知東部自動車道の「高知龍馬空港~香南のいち」間が相次いで開通したことで、整備率は63パーセントとなりました。
 迫り来る南海トラフ地震等に備え、信頼性の高い緊急輸送道路の確保を図るため、引き続き関係市町村や他県とも連携し、国に対して積極的に政策提言を行います。

6 議案
 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
 まず予算案は、令和7年度高知県一般会計補正予算が2件です。
 このうち第1号議案は、とさでん交通への支援や、国の予算修正で措置された高校授業料の無償化などに要する経費として、総額18億5千万円余りの歳入歳出予算の補正並びに総額5億円余りの債務負担行為の追加及び変更を含む補正予算案です。
 また、第14号議案は、国から追加で措置された交付金を活用した物価高騰対策に要する経費として、総額5億6千万円余りの一般会計補正予算を追加しようとするものであります。
 条例議案は、職員の育児休業等に関する条例の一部を改正する条例議案など11件です。
 その他の議案は、高知県立県民体育館多目的グラウンド及びテニスコートの指定管理者の指定に関する議案の1件です。
 報告議案は、令和6年度高知県一般会計補正予算の専決処分報告など2件であります。

 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

お問い合わせ

総合企画部 広報広聴課
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FAX:088-872-5494
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