公開日 2025年09月19日
更新日 2025年09月19日
令和7年9月19日 令和7年9月県議会での知事提案説明
1 県政運営の基本姿勢
2 人口減少対策
(1)多様な人材が活躍できる柔軟な「働き方」への転換
(2)多様な価値観に基づく価値創造型の「経済構造」への転換
(3)多極分散型社会を目指す「国土政策」の転換
(4)元気な未来創造戦略に基づく取り組み
(5)中山間地域再興ビジョンに基づく取り組み
(6)消防の広域化
3 いきいきと仕事ができる高知
(1)地産外商の取り組み
(2)イノベーションの取り組み
4 いきいきと生活ができる高知
(1)日本一の健康長寿県づくり
(2)教育の充実
(3)文化芸術の振興
5 安全・安心な高知
(1)南海トラフ地震対策
(2)インフラの充実
6 第78回全国植樹祭
7 議案
本日、議員各位のご出席をいただき、令和7年9月県議会定例会が開かれますことに厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ち、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員各位並びに県民の皆さんのご理解とご協力をお願いしたいと考えます。
1 県政運営の基本姿勢
今月7日、石破首相が退陣の意向を表明されました。
石破首相は、初代地方創生担当大臣の経験を踏まえ、東京一極集中の是正に情熱を注がれ、防災庁の新設といった防災対策の抜本強化にもリーダーシップを発揮されていました。こうした中、志半ばで辞任を表明されたことについては、私自身、大変残念な思いです。
現在、国政では、物価高騰対策を始めとする経済再生政策、人口減少問題や国土強靭化など、先送りできない重要課題が山積しています。
その一方で、昨年来の少数与党体制下にあって、政治への信頼の基本にかかわる政治資金制度改革を含めて、与野党が具体的な改革の中身について折り合えず、結果として現状維持が続くという停滞した状況が続いています。
後継総裁を選出する自民党総裁選挙においては、活発な論戦を展開する中で、少数与党下での与野党間の合意形成と課題解決を図る道筋を明らかにしていただきたいと思います。
新総裁選出後は速やかに新政権の体制を整えた上で、与野党双方が真摯に議論を重ね、国政を着実に前進させていただくことを強く期待します。
また、7月の参議院議員選挙は、通算5回目となる合区での選挙でした。
合区制度は、いわゆる一票の格差の是正策として導入されましたが、人口比例の原則を徹底していく限り、対象地域がさらに拡大され、今年の国勢調査の結果次第では、新たな合区が設けられる可能性も否定できません。
先月には、全国知事会として、与野党の国会議員に対し、合区の確実な解消を求める要請活動を行い、私自身も、その一員として県民の思いを訴えてまいりました。
さらに、今月3日に全国知事会の新会長に就任された長野県の阿部知事が、合区の問題点を議論する研究会を新設する意向を表明されるなど、合区解消へ向けた機運は高まっています。
合区選挙の固定化や拡大は断じて容認できません。今後もあらゆる機会を通じ、国に対し一刻も早い解消を求めていきます。
(「共感と前進」の県政)
県政の課題に正面から向き合い、解決していくためには、県民の皆さんの声に耳を傾け、施策の磨き上げを図っていくことが欠かせません。
私自身が様々な取り組みの現場を視察し、県民の皆さんとの率直な対話を重ねる「濵田が参りました」は、昨年度から3巡目がスタートしています。
また、県内で活躍される方々を知事公邸にお招きして意見交換を行う「濵田にお聞かせください」では、去る7月、育児休業を取得した男性の方々からお話を伺いました。
今後も、こうした対話を通じて県政に対する「共感」をいただくと同時に、いただいたご意見を政策立案に生かし、着実に「前進」していくことを県政運営の基本姿勢とし、元気な高知の実現に向けて全力を尽くします。
2 人口減少対策
人口減少問題の解決に向けては、国において、「働き方」「経済構造」「国土政策」の3つの構造転換を、一体的かつ強力に推進していくことが必要です。
本県としても、そうした国の施策に呼応しながら、人口減少対策のマスタープランである「元気な未来創造戦略」に基づき、働き方改革の推進や、価値創造型の経済社会への転換を全力で進めます。
(1)多様な人材が活躍できる柔軟な「働き方」への転換
人口減少、特に少子化問題の克服に向け、まず必要となるのが、男性中心の長時間労働を前提とした働き方を改め、柔軟な働き方の下で多様な人材が活躍し、仕事と子育ての両立が可能となる「働き方」の構造転換です。
その実現に向け、男性育休の取得促進を原動力に、男女が分担して家事や育児を行う「共働き・共育て」の県民運動をさらに進めます。
具体的には、県内企業における男性の育児休業取得者数や取得率等について、法的な公表義務のない従業員数300人以下の企業にも自主的な公表を呼びかけ、今月開設した県の特設サイトには、650社を超える企業の状況を掲載しました。
また、今月11日には、経済団体、業界団体、行政の代表者など29団体により設立した「共働き・共育て推進会議」の初会合を開催し、県内企業における男性育休取得の現状と、今後の目標達成に向けた決意を共有しました。
こうした取り組みをオール高知の県民運動として広げていくことで、社会全体で子育てを支える機運を高め、女性の負担軽減による出生率の向上と社会の意識改革を通じた若年人口の増加につなげます。
(県庁の働き方改革)
仕事と家庭を余裕を持って両立できる社会を実現し、価値創造型のクリエイティブな仕事で所得を向上させる新しい経済社会構造に移行するためには、社会全体で長時間労働の是正に取り組むことが不可欠です。
本県では全国に先行して人口減少が進行する一方で、豊かな自然の下でゆとりある生活スタイルを実現することができます。そうした本県こそ、現在求められている新しい働き方の確立に向けた先導役にふさわしいと考えます。
このため、今月10日に株式会社ワーク・ライフバランスと協定を締結し、職員の長時間労働の是正、時間外勤務の縮減に向けて、高知県庁が一種の社会実験ともいうべき新たな取り組みに踏み出すこととしました。
具体的には、多様な人材を確保するための「短時間勤務職員採用枠の新設」や、時間外勤務に対する職員の意識の変化を促す「時間外勤務手当の割増率の時限的な引き上げ」など、自治体としては全国初となる制度を導入すべく、関連の条例議案を今議会に提出しています。
働き方改革の新たなモデルとなるこうした取り組みで成果を挙げ、それを県内はもとより全国に波及させること、そして人口減少の克服に向けた一つの道筋を示すことが、本県に課せられた責務でもあると考えます。
そのためには、こうした仕組みづくりに加えて、職員一人ひとりが意識的に日常の働き方を見直すことにより、長時間労働の是正に向けて自律的に機能するような県庁組織へと生まれ変わらなければなりません。
私自身、このプロジェクトに全力を挙げてコミットし、新たな時代を切り開く先頭に立つ気概で、精力的に取り組みます。
(2)多様な価値観に基づく価値創造型の「経済構造」への転換
我が国では、「失われた30年」ともいわれるデフレ経済下で、コストカットにより利益を生み出すビジネスモデルが広がりました。
その流れの中で若年層の人件費が削減の標的とされた結果、若者が抱える経済的不安により未婚化、晩婚化が進み、少子化傾向に拍車をかける一因となっていると考えます。
したがって、人口減少の克服のためには、我が国の経済構造のあり方として、組織が一枚岩となってコストカットを目指す経済モデルから転換し、多様な価値観を尊重しながら新しい高付加価値の創造を志向する経済モデルへと舵を切ることが必要です。加えて、各地域において若者の転出超過に歯止めをかけるためにも、地域における若者の所得向上を図ることが不可欠となっています。
このような状況を踏まえて、本県では、16の業種ごとに官民協働による検討チームを設置し、来月を目途に、若者の所得向上につながる経営改革モデルを取りまとめることとしています。
モデル事例の中には、例えば、捕鯨船の新造をきっかけに、コンテナ運搬用としては世界初となる船内クレーンの開発に成功するといった、自社の独自技術を生かし、収益性の高い新分野に進出した取り組みなど、高付加価値型の経営の実現につながる手法が示されています。
今後、こうしたモデル事例を横展開することにより、若者の所得向上に向けた県内事業者の取り組みを後押しします。
また、若者がいきいきと活躍することができる高知県を実現するための産学官による協議の場として、新たに「若者応援産学官フォーラム」を設置し、今月、第1回目の会議を開催いたしました。
この場では、産学官のそれぞれの立場から「産業人材の育成と県内就職の促進」、「若者が魅力を感じる仕事の創出」、「地域と若者の交流促進」の3つのテーマについて、より効果的な取り組みを展開するために、産学官の連携をどう強化するかについて、議論を深めました。
例えば、産業界から教育機関に対して「経済学やマーケティング、統計学などに加えて、データサイエンスも学んだ学生が、本県産業の起爆剤になることを期待している」というご意見がありました。また、教育機関から産業界に対しては、「大学院を修了した学生については、専門性を評価した賃金体系を導入してほしい」といったご意見をいただきました。
今後はこうしたご意見も踏まえ、医療、福祉、企業の3分野と「出会いの促進」をテーマにした4つの分科会において議論を深め、「若者に選ばれる高知県」を実現する取り組みに生かしてまいります。
(公社等外郭団体のあり方見直し)
人口減少の克服に向け、県民所得の向上を目指す民間事業者の取り組みを先導するためには、県立文化施設等においても、より付加価値の高いサービスを提供し、職員の所得向上を図ることが期待されます。
しかしながら、現在、美術館、博物館などの県立文化施設等の管理者として、公募を経ずに県から直接指定された財団等の運営には、職員給与の上限や剰余金の県への納付など、県による厳しい制約が課せられています。
その結果、運営努力により増収となった場合でも、財団等の判断でこれを職員の処遇改善に充てることができないほか、そもそも財団等に、自主事業により増収を図ろうとするインセンティブが働かない仕組みとなっています。
この制約は、財団等が無競争で県立施設の運営権を付与されるという、いわば特権的な地位を利用して、県が直営で運営する場合以上の報酬や利益を享受することは適当でないという考え方に立って課せられてきたものです。
今回、こうしたあり方を見直し、財団等の運営に関する自由度の向上と直指定から公募への切り替えを一体として行うことにより、財団等が付加価値の高い自主事業の展開により増収を図ることを通じて、職員の所得向上を実現することができる道を開くこととしました。
なお、今回の見直しは、指定管理業務の基本部分は主として県からの管理代行料収入で賄い、県民や利用者の皆さんに低廉な負担で良質な文化に親しんでいただく機会を保障する、という考え方を変更するものではありません。
見直しの目的は、自主事業の実施と利益処分に関する自由度を増し、財団等の創意工夫を促そうとすることにあります。したがって、利益処分の際に財団等の判断により、職員の処遇改善だけではなく、自主事業の拡大といった使途に充てることを何ら妨げるものではありません。
また、公募により指定管理者が変更となる場合、施設運営の専門性や継続性を確保するための措置が必要ではないかとのご意見もいただきました。この点については、公募に当たり現在勤務している職員の雇用の継続を条件付けるなどの手法により、各施設等の実情に応じて対応することとします。
本年度末で現行の指定管理期間が満了となる高知城歴史博物館については、山内家から県への宝物、資料の寄贈等が行われた際の経緯を踏まえ、指定管理者の業務から宝物、資料の管理等に係る業務を除外した上で公募を行うことが適切であると判断し、今議会に関連の条例議案を提出しております。
今後、県において、有識者による懇談会を新たに設け、各団体がより付加価値の高いサービスを企画立案することを含めて、自律性向上のための計画を策定し、実行するための支援を行います。
こうした一連の見直しにより、県立文化施設等が県民や利用者の皆さんに、より良質で満足度の高いサービスを提供することにつなげたいと考えます。
(3)多極分散型社会を目指す「国土政策」の転換
我が国の人口減少の克服に向けては、国民がどの地域に住んでいても、仕事と家庭を余裕を持って両立することができ、価値創造型の魅力ある仕事を通じて、所得の向上を図ることができる社会を目指さなければなりません。その際には、大都市には「ゆとり」が、地方には「活力」が必要です。
したがって、国においては「国土政策」を抜本的に転換し、企業や大学、政府関係機関等の東京一極集中を是正し、これらを地方移転することにより、多極分散型社会を実現することが欠かせません。
このうち、政府関係機関の地方分散に関しては、本県としては、現在国が議論を進めている「防災庁」の設置に際して、「庁」の組織全体ではなく、事前復興や研究開発といった部門単位での誘致を提言しています。
本県の強みや特色を生かしたユニークな提案だと考えますので、その実現に向け、引き続き様々な機会を捉えて国への提言活動を行います。
(4)元気な未来創造戦略に基づく取り組み
次に、「元気な未来創造戦略」に基づく取り組みのうち、人口の転出超過の解消に向けた施策について申し上げます。
若者に高知に残っていただく、あるいは将来戻ってきていただくためには、若いうちから地域の企業や人を知ることで、郷土への愛着を醸成していくことが重要です。
先月には、県内高校生を対象とした「新しい学校のリーダー研修」を開催し、34校から参加した74名が県内の魅力ある産業や文化に触れた後、地域の課題解決策について議論しました。
参加した高校生からは「自分が知らなかった高知の現状を知ることができた」、「自分たちが同世代の人に本県の魅力を広めて高知県を活性化していくことが大切」といった声もありました。
こうした学びの場を提供することで、小中高の各段階において、地域への理解と愛着を育むキャリア教育を推進していきます。
次に、「結婚の希望をかなえる」施策としては、スポーツイベントの運営や伝統芸能の継承活動などに若者の参加を促す「若者交流促進事業」を7月からスタートしました。この事業を通じて、より多くの若者に地域活動の担い手として貢献していただくと同時に、若者同士のつながりや出会いのきっかけづくりにつなげたいと考えています。
加えて、インターネット上の仮想空間、いわゆるメタバースを活用した交流の場づくりに取り組んでおり、先月9日には、高知市の花火大会に合わせて第1回目となるイベントを開催しました。
このイベントでは、仮想空間でお互いの内面を知った上で、実際に会って花火に出かけ交流を深めるという形を取り、複数組のカップルが成立しました。引き続き、こうした多様な出会いの機会を創出することで、婚姻数の増加と、その先にある出生数の増加へとつなげます。
(5)中山間地域再興ビジョンに基づく取り組み
次に、「中山間地域再興ビジョン」に基づく取り組みについてです。
関係人口の創出に向けた施策として、集落活動センターと県内の大学との連携促進に加え、都市部の若者に中山間地域での祭りや農作業といった集落活動に参加いただく「いこうち!」の取り組みを6月から開始しました。
8月末時点で、24のプログラムに対し、県内外から約100名に参加をいただいています。
今後は、大阪のアンテナショップ「とさとさ」やSNSで動画によるプロモーションを展開し、多くの方々に中山間地域に足を運んでいただくことで、人口減少下においても賑わう「にぎやかな過疎」の創出を目指します。
(6)消防の広域化
次に、消防の広域化について申し上げます。
人口減少下にあっても将来にわたって持続可能な消防サービスを提供するためには、現在、県内15の消防本部に分立している常備消防組織を一つに統合し、管理部門の人員を現場力の強化に振り向けるのが最も望ましい手法であると考えます。
こうした考えの下、消防広域化の基本計画の策定に向けて、本年4月、県内すべての市町村長と消防長などで構成する検討会を立ち上げ、4つの専門部会を設けて議論を重ねております。
この基本計画の骨格案においては、119番通報を受けて部隊を出動させる指令業務の統合により、所要人員数を半減することが可能となると見込み、その余力を振り向けることによって、現行の県内40消防署所体制の維持と救急隊の増強などの現場力強化を図ることとしております。また、本部組織の集約により、例えば、特別高度救助隊の創設やドローン、デジタル技術等を活用した最新鋭の装備の導入など、消防力の高度化を進めます。
さらに、中山間地域を含む各地域の消防署所に、将来にわたって必要な人員を配置できる体制が欠かせません。このため、県全域での一括採用への移行や新たな本部組織における監察機能の強化によりパワーハラスメントのない魅力ある職場づくりを進めることで、若くて優秀な人材をしっかり確保します。
このほか、骨格案では、市町村から要望のあった職員配置や財政負担の暫定的試算の結果を提示しました。職員処遇や装備水準の統一に係る論点については、県としては、消防指令システムの共同化等による経費節減効果の範囲内で、まずは若手職員の処遇改善を図った後、各市町村の自主性を尊重しながら段階的に進めていくという方針を提案しております。
今後は、現在作業中の各種業務関連システムの整備費等に関する試算を含め、財政負担の全体像などを明らかにした上で、今秋開催予定の次回検討会において、基本計画の骨格をお示ししたいと考えます。
その上で、来年度からは次のステップである法定協議会における実施計画の検討に進むことを想定しております。
このため、まずは基本計画の骨格に基づいて市町村のコンセンサスが得られるよう、関係者の間で丁寧な説明と議論を重ねてまいります。
3 いきいきと仕事ができる高知
「元気な未来創造戦略」に沿って、若年人口の早期回復を図るためには、産業振興計画に掲げた取り組みを通じて、若者に魅力ある仕事を県内に創り出し、UIターンを含めて若年層の流入・定着を図ることが不可欠です。
この観点から、次に、私が思い描く目指すべき3つの高知県像のうち、まず「いきいきと仕事ができる高知」に向けた取り組みについて申し上げます。
(1)地産外商の取り組み
(関西圏との経済連携の強化)
関西圏との経済連携については、大阪市梅田のアンテナショップ「SUPER LOCAL SHOP とさとさ」が、7月31日で1周年を迎えました。年間の来客数は約180万人、店舗売上げは2.7億円を超えるなど、関西における本県の拠点として、大きな成果を上げています。
また、大阪・関西万博の会場には、私自身もたびたび足を運び、本県とゆかりのある国々との関係を深めるとともに、本県が世界に誇るIoPの先端技術や伝統文化の情報発信に、最大限活用させていただいています。
そして、先月には本県にとって一番の山場となる「よさこい」と「街路市」を柱としたイベント「WORLD YOSAKOI DAY」を開催し、2日間で5万4千人を超える来場者にお越しいただきました。
会場では、国内外17のチームが多彩な演舞を披露し、1970年の大阪万博を機に世界に広がり、国籍や世代を超え自由に進化し続ける「よさこい」の魅力を広く発信しました。
あわせて、300年以上の歴史を誇る街路市の趣を再現し、県内全市町村や広域観光組織、日曜市の出店事業者などと協力して、県内各地の食や文化の魅力をPRしました。
会場には国内外の多くのメディアが訪れ、イベントの様子を伝えるなど、「SUPER LOCAL」な高知の魅力を、全世界に向けて発信することができたのではないかと考えています。
今後は、2030年、万博会場の隣接地に開業が予定される「大阪IR」の整備や運営を好機と捉え、外商のさらなる拡大とインバウンドを含めた観光誘客を目指します。あわせて、こうした取り組みを関西圏での情報発信の核となる「とさとさ」も含めたオール高知の体制で進めます。
(輸出拡大の取り組み)
食品分野の輸出拡大に向けた取り組みについては、基幹品目であるユズ、土佐酒及び水産物を中心に、アメリカやヨーロッパ、東南アジアなどで外商活動を展開してきました。
その結果、令和6年の食品の輸出額は、前年と比較して約15パーセント増となる30億3千万円と、30億円の大台を初めて突破し、過去最高を記録しました。
引き続き、海外事務所や食品海外ビジネスサポーターと連携し、現地での外商活動の取り組みに加え、輸出に取り組む県内事業者の新規参入や設備投資を促進し、さらなる輸出拡大につなげます。
また、6月に中国が日本産水産物の輸入再開を表明しました。
現在、県内4事業者が輸出再開に向け手続きを進めています。県としても、再開後の販売ルートの回復、拡大に向け、中国での見本市への出展や賞味会の開催などの準備を進めます。
(観光振興の取り組み)
観光分野では、連続テレビ小説「あんぱん」の人気を追い風に、全国から多くの観光客にお越しいただいています。また、先月には東京都新宿区と連携協定を締結するなど、将来につながる交流も生まれています。
こうした勢いをドラマの放送終了後も持続させるため、引き続き県内各地で「あんぱん」関連の催しを行うなど、「やなせたかしの故郷(ふるさと)・高知」を強く印象づける取り組みを進めます。
インバウンド誘客においては、台湾からの定期チャーター便が9割を超える搭乗率を維持しており、来年3月までの継続運航が決定しました。
今後はインバウンドのみならず、本県から台湾へのアウトバウンドも含めた需要を喚起し、路線の定期便化につなげます。
加えて、今月には韓国の旅行会社を招へいした視察ツアーを行うなど、新たな航路の誘致にも積極的に取り組んでいます。
こうした国際観光の要となる高知龍馬空港新ターミナルビルについては、現在、来年秋の一部先行供用開始に向けた整備を着実に進めています。
関係の皆さんからいただいたご意見も踏まえ、森林率日本一の本県が誇る土佐材や、千年以上の伝統を持つ土佐和紙などを念頭に、「高知らしさ」を演出する室内装飾を施すための補正予算案を、今議会に提出しています。
(公共調達による地消地産推進戦略)
今年度から新たに産業振興計画に位置付けた「地消地産」の取り組みについては、公共調達の場面においても、県内総生産の拡大に貢献する観点から、県産品の採用及び県内事業者の育成を推進することとしています。
先の6月議会では、「公共調達による地消地産推進戦略」の骨子案についてご報告させていただき、その後、パブリックコメントでいただいたご意見も踏まえ、このたび戦略案を取りまとめました。
具体的には、県産品の採用拡大策として、県有施設への太陽光発電設備の導入のほか、竹製品などを県主催のイベントや来客時の記念品に採用するといった取り組みを進めます。
また、県内事業者の育成については、情報通信サービスや建設工事などの重点分野について、県内事業者への優先発注などにより受注機会の拡大を図るほか、技術力の向上支援や価格転嫁の受け入れを推進します。
今議会でのご意見を踏まえて本戦略を決定し、速やかに具体的な取り組みを開始します。あわせて、県内市町村にも、本戦略の趣旨に沿った取り組みへの協力を要請してまいります。
(2)イノベーションの取り組み
人口減少や高齢化の急速な進行により、県内各地域で日常生活に必要な社会的な機能やサービスの低下が深刻化する中、全国の企業などが持つ新しい技術やサービスを活用して地域課題を解決に導くことが期待されます。
このため、本県では、本年6月、地域と企業などとを橋渡しする「ローカル・イノベーション・プラットフォーム」を立ち上げました。
この場を通じて、県内外の企業などから新たな解決策の提案を募集し、その事業化を支援することで、課題解決と新事業の創出を促します。
7月に開催した県内の地域課題を紹介するオンライン説明会には、県内外から100社以上の企業が参加し、高い関心を集めています。
現在、スタートアップ企業などから、課題解決策の提案を募集しており、今後、市町村や地元企業などとのマッチングを進め、新たな事業の創出につなげます。
(海藻イノベーション)
海藻をはじめとする藻類は、近年ではその優れた増殖力や炭素の固定能力、バイオマスエネルギー生成の可能性など、イノベーション分野での注目が高まっています。
高知大学の萩野恭子さんらによる海中の藻「ビゲロイ」に関する研究が本年2月、アメリカ科学振興協会の年間最優秀論文に選出されました。また、四万十川では5年ぶりに天然スジアオノリが収穫・出荷されるといった明るいニュースも届いています。
県内では昨年から、四万十川での海藻生産の再生と、海藻を素材とする新産業の創出を目指し、県と高知大学、四万十市等の連携による「しまんと海藻エコイノベーション共創拠点」のプロジェクトがスタートしています。
四万十川では、既に陸上養殖によるスジアオノリの生産を開始しており、今後、その商品開発や販路開拓、また、事業化に向けた県内外の企業とのマッチングなど、プロジェクトの各段階に応じた支援を行ってまいります。
また、本県では、令和4年度から早稲田大学や高知大学と連携し、県産のバイオマス資源からLPガスを生成し県内での供給を目指す「グリーンLPガスプロジェクト」を進めています。その研究の中では、海藻類についても原材料としての利用可能性が期待されております。
これらの取り組みは、他県に例のない本県ならではのイノベーションへとつながる可能性を秘めた大変ユニークなものであり、所期の目的の達成に向け、引き続きプロジェクトを後押ししてまいります。
(外国人材の受け入れ促進)
本県産業の供給力を高め、持続的な成長を実現していくためには、あらゆる産業分野で深刻化する担い手不足の解消が急務であり、その一環として、優秀な外国人材の受け入れと定着を図ることが必要です。
このため、県では県内事業者のニーズなどを踏まえ、優秀な人材の送り出し国の開拓を行っており、本年7月には、インド北東部にあるナガランド州と人材交流に関する覚書を締結しました。
ナガランド州が海外の自治体と人材交流に関する覚書を締結するのは、本県が初めてとなります。各産業の担い手を確保するため、今後も引き続き、優秀な人材の送り出し国の開拓に取り組んでいきます。
また、外国人材の受け入れと定着の促進に向けた施策を両輪で推進していくため、多文化共生社会の実現を目指す新たなプランを今年度中に策定したいと考えており、現在、有識者を交えた検討を進めております。
来年度以降は、このプランに基づく取り組みを進め、外国人と地域住民との交流や相互理解が進み、地域の仲間として共に働き、共に暮らすことができる高知県の実現を目指します。
4 いきいきと生活ができる高知
次に、「いきいきと生活ができる高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。
(1)日本一の健康長寿県づくり
中山間地域などを中心として、人口減少や高齢化に伴い、患者数の著しい減少や医療需要の変化が続いており、医療機関の経営が厳しい要因の一つとなっています。そうした中で健全な経営を保つためには、医療提供体制の見直しや近隣の医療機関との間での役割分担の明確化を図ることが重要です。
こうした点を踏まえた新たな地域医療構想については、今年度中に出される国のガイドラインに基づき、来年度中に策定することとしています。
これに先立って、本県では、医療を取り巻く厳しい環境を考慮し、できることから速やかに着手していくため、医療機関や市町村なども加わる協議会において、次期地域医療構想の策定に向けた議論を進めています。
地域での医療需要の現状及び将来予測に関する情報提供や経営シミュレーションへの支援などを通じ、各地域で守るべき医療を明確化し、関係者の合意を図りながら、持続可能な形での医療提供体制の確保を目指します。
介護分野では、担い手不足が深刻化しており、特に中山間地域におけるサービス提供体制を維持していくためには、職員の業務負担の軽減にもつながる介護現場の一層の生産性向上が必要です。こうしたことから、県では介護ロボットなどの導入に対する助成や「こうち介護生産性向上総合支援センター」による介護現場へのアドバイザー派遣を行っています。
今後もこうした取り組みを通じて介護事業所の生産性向上や人材確保につなげます。
全国に先駆けて少子高齢化が進行する本県では、就業人口に占める医療や福祉・介護分野の割合が高くなっており、人口減少対策としても、そうした分野における担い手の確保を図る必要性が高いと考えます。
このため、産業別の若者所得向上検討チームにおける議論なども踏まえ、さらなる生産性向上や職員の処遇改善を図り、医療や福祉・介護の各分野を通じた若者の所得向上に取り組みます。
(2)教育の充実
教育の充実については、第3期教育大綱に基づき、子どもたちの確かな学力、健やかな体、豊かな心の育成に向けて取り組んでいます。
7月末に公表された本年度の全国学力・学習状況調査では、小学校は全教科で全国平均を上回るなど改善が見られた一方、中学校では全教科で全国平均に届かず、特に数学は昨年度より全国との差が開く結果となりました。
また、家庭学習について「全くしない」と答えた中学生の割合が年々増加しており、速やかに対策を講じる必要があると考えています。
このため、今月、児童生徒の家庭学習の状況や生活習慣について、県独自の新たなアンケート調査を行っています。今後、結果を詳しく分析した上で、1人1台端末とデジタル教材の活用なども含め、児童生徒一人ひとりの学力などに応じた学びを促進し、学習習慣の定着につなげます。
あわせて、学校と家庭が共同で、家庭でのゲームやSNS等の利用に係るルールづくりに積極的に取り組むことを促し、子どもたちの学びと健全な成長を支えていきます。
私立高校の授業料実質無償化を来年度に控える中、公立高校、とりわけ生徒数の減少が著しい中山間地域等の小規模校の魅力化は喫緊の課題です。
現在、中山間地域等の小規模校13校のうち11校において、学校と地元市町村などが参画した地域コンソーシアムが構築されています。
その場では、各高等学校の魅力化に向けた議論が行われ、例えば、ジオパークを活用した室戸高校の取り組みをはじめ、特色ある探究活動や部活動が展開されています。
また、県外からの生徒募集の取り組みでは、「地域みらい留学」の全国合同説明会において、東京・大阪会場の本県ブースに昨年度の4倍を超える1,000人近くの来場がありました。あわせて、オンラインでの学校説明会や現地での体験入学なども実施しています。さらに、県外の生徒も受験しやすくなるよう、入学試験の時期を従来よりも早めた「こうちフロンティア募集」を実施します。
(3)文化芸術の振興
次に、文化芸術の振興については、来年開催する「よさこい高知文化祭2026」において、観光客を含む多くの方々に、神楽をはじめとする地域の文化資源に触れていただきたいと考えます。
そのため、地元の方々との連携のもと、昨年度から、いざなぎ流舞(まい)神楽(かぐら)の鑑賞プランをはじめ、地域の魅力をより深く体感できる観光商品づくりにも取り組んでいます。
この文化祭が、県外からのお客様に楽しんでいただき、本県が誇る伝統文化の継承と発展につながる有意義な催しとなるよう、開催に向けた準備を進めていきます。
5 安全・安心な高知
次に「安全・安心な高知」に向けた取り組みについてご説明申し上げます。
(1)南海トラフ地震対策
南海トラフ地震対策については、現在、国の新たな被害想定をベースに、県内の詳細なデータを加味して、より精緻な高知県版の被害想定を算出する作業を進めています。
来月中には、地震動と津波浸水の予測結果を公表し、それを基に、今年度末には、死者数や建物被害などの想定を公表する予定です。
その上で来年度には、この新たな被害想定に基づく対策を第6期南海トラフ地震対策行動計画に反映し、災害関連死などの新たな課題に対応するため、避難環境の整備などの取り組みをさらに強化します。
南海トラフ地震臨時情報については、昨年夏に「巨大地震注意」の情報が初めて発表されましたが、それから約1年が経過した先月、国のガイドラインが改訂されました。
その中では、昨年の経験も踏まえ、イベントなどの開催について「適切な防災対応を実施した上で、できる限り事業を継続することが望ましい」といった方向性が示されました。
今後は、県が市町村向けに作成している手引きを年内に改訂し、臨時情報発表時における市町村の対応について、見直しが進むよう支援していきます。
(2)インフラの充実
本県は地理的要因などから、社会インフラ整備の立ち後れが目立ち、県民の暮らしを支え、地域経済を活性化する観点、また、自然災害への備えを高める観点から、その整備促進が急務です。
中でも、四国8の字ネットワークについては、県内における整備率はようやく6割を超えたにとどまっており、引き続き、他県の知事とも連携し、国に対してミッシングリンクの早期解消を訴えてまいります。
その一方で、四国内の暫定2車線区間では、近年繰り返し死亡事故が発生するなど、開通済区間の安全性の向上も課題となっています。
このため、先月には、四国4県知事が暫定2車線区間における安全性の向上に関する共同宣言を行い、国土交通省に対し合同で要望活動を行いました。早期の4車線化やセンターブロック設置などの緊急的な安全対策の実現に向け、引き続き関係市町村や他県とも連携し、国に対して積極的に政策提言を行っていきます。
(四国の新幹線の整備促進)
先月開催された四国新幹線整備促進期成会の東京大会には、過去最大となる約700名が参加したほか、昨年から取り組んできた署名活動では約45万筆もの署名をいただくなど、整備に向けた機運が着実に高まっています。
南海トラフ地震発生時における緊急輸送路確保の必要性を踏まえれば、一刻も早い整備が必要です。整備計画路線への格上げの第一歩となる法定調査の実施といった目に見える進捗を目指し、引き続き官民一体で国への働きかけを行います。
6 第78回全国植樹祭
令和10年春の第78回全国植樹祭の本県での開催が、正式に決定しました。本県での開催は、県民一人ひとりが森林の役割を理解し守る行動を促し、中山間地域の基幹産業である林業の発展を後押しする契機となります。
今月には、各界の代表者による実行委員会を立ち上げたところであり、今後、大会運営に関する基本計画の策定を行い、開催に向けた準備を進めます。
7 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、令和7年度高知県一般会計補正予算など4件です。
条例議案は、短時間勤務制度に関する条例議案など7件です。
その他の議案は、県有財産の取得に関する議案など5件です。
報告議案は、令和6年度高知県一般会計歳入歳出決算など23件です。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。