公開日 2007年12月05日
更新日 2014年03月16日
仕事始め式知事挨拶(平成12年1月4日)
仕事始め式
●私はこの近くの県内の温泉に行って、久しぶりにのんびり、ゆったりとした年末年始を過ごさせてもらいました。元旦も北山の方に登って、初めて土佐湾から昇る初日の出を拝むことができました。ちょうど水平線にうっすらと雲がでておりましたので、雲の中から太陽が出てくる感じが、最初はオレンジ色のちっちゃな環っかのような感じで、まるで土佐ジローの卵の黄身が出てくるような、おいしそうな初日の出でございました。
また2日は、この高知に来て初めて初詣をいたしました。せっかく初詣をするからには少しでも御利益があるようにと、3つの神社をまわってみました。
どれかに御利益があるのではないかと思っております。
そのようなことで、2000年という大きな節目の年ですが、新しい気持ちでこの新年をスタートさせたいと思っております。
●この2000年は私にとりまして三期目のスタートの年という意味も持っております。このことはこれまでもあちこちで申し上げたことの繰り返しでございますが、これまで高知工科大学ですとか、情報化の戦略、さらには高知新港や、また、高速道路をはじめとする交通基盤の整備など、この高知県が自立をしていくための種を蒔いてまいりました。こうして蒔いてきた種、そこから出てきた芽をいかにしてきちんと育て上げていくかということが自分の三期目の大きな課題だと思っております。
しかし、これらの仕事はいずれも簡単にいくものではございません。むしろ失敗も絶えず念頭におきながら、悪戦苦闘をしていかなければいけない課題ばかりではないかと思っております。
ただ、その一方でこれまでの延長線上で確実・安全ということだけを考えていたのでは、とても今の世の中を渡りきってはいけない、そういう時代になってきておりますので、今申し上げた「悪戦苦闘」ということを、むしろ日々の楽しみに変えていく、それぐらいの開き直った気持ちでこれらの課題に立ち向かっていきたいと思っております。
●さて、皆様方は2000年という大きな節目をどのように実感されたでしょうか。
実は私は毎年の年明けと同じで、特に2000年だからというような実感も気負いも特段ございませんでした。新聞やテレビを見て、あぁそうかな、と思うくらいでした。また、今年はコンピューターの西暦2000年問題がございましたので、その点では2000年という節目を感じることはできました。幸いこれまでのところ、全国的にも、また、高知県でも大きな問題は起きていないようですが、今日が仕事始めということで様々な分野で一斉に活動がスタートします。様々な不具合が出てくるかも知れません。そんな意味で担当の皆様方はこれからも気を緩めずにこの問題に対応をしていただきたいと思います。が、このことを除きますと、2000年だからという特段の気負い、新しさを感じないまま年明けを迎えてしまいました。
●しかし、私たちが考える以上に、時代というものは大きく変わってきておりますし、また、それに合わせた体制づくりというものを急がなくてはいけない時に来ていると思います。この点、我が高知県ではこれまでも、ISO14001の取得を目指して取組をすすめてまいりましたし、また、行政システム改革など、様々な改革を手がけてまいりました。このうちISOはもう間もなく認証を得られるというような状況になってきていますし、行政システムの改革もいよいよ本番を迎えようとしています。
これに対して、まだまだ職員の皆様の間での意識の高まりが少ないのではないか、自分の問題として取り組んでいこうという盛り上がりに欠けているのではないか、こんなご指摘も受けますし、それも事実かも知れません。しかし、この2000年の1月という大きな節目というものをきっかけに、もう一度、職員一人ひとりの皆様方にこの行政システム改革をはじめとする新しい時代への取組の必要性というものをかみしめていただくとともに、併せて、それへの取組、自分たちが何をすれば良いかということをぜひとも考えてみていただきたいと思います。
●2000年ということでいいますと、もう一つ感じたことがございました。それは何かといいますと、1900年代に出来上がってきた、また、戦後50年続いてきた様々な仕組み、組織というものが、ここ数年いろいろな形で社会の批判の目にさらされてまいりました。私たち公務員の仕事もそうですし、労働組合の在り方もそうでした。また、公共事業とゼネコンの問題、さらには、大手の銀行や証券会社の問題等々、数え上げればきりがないと思います。しかし、そうした中で、まだまだ社会の目にさらされないままに来ている、いろんな組織、団体もあるのではないかと感じています。
誤解を恐れずに言わせていただければ、例えば農業協同組合、またマスコミというものもその中の一つではないかと思います。
このうち農業協同組合は、たまたま昨年の選挙でその中央会の会長と私が戦うという構図になりました。ですからこのようなことを言いますと、また、遺恨ではないかと言ってはしゃぐ方がおられるのではないかと思いますけれど、決してそんなことはありませんし、私はそれほど小さな男でもありません。
ただ一方でこの選挙戦を通じて各地を回る中、農業協同組合の活動の実態というようなこと、また、農業の分野を離れて様々な分野で活動されているというようなこと、そのような実態を垣間見ることができました。さらにそうした農業協同組合の在り方について多くの農業者の方々が不満や批判を持っていらっしゃることも実感として感じました。
それと同時に、多くの補助金の受け皿として活動している、公益的な団体として、もっともっと情報公開の目にさらされても良い存在ではないか、そういうことも併せて感じました。ただ、もちろん農業協同組合というのは、これからも本県の農業政策を進めていくうえでの大切なパートナーシップでございます。それだけに、もっともっと農業者と密着した、農業者に信頼される組織、団体になっていただかなくてはいけませんし、また、多くの補助金の受け皿として、さらにガラス張りの組織運営になっていただかなくてはいけないと思います。
そのような意味から、県民の目線でこうした団体の在り方、農業協同組合のこれからのあるべき姿というものを考えていくこと、これも2000年のスタートに当たってやっていかなければいけないことではないかと感じました。
●もう一つのマスコミは、私も20年間マスコミで仕事をしておりましたので、マスコミが何者にも縛られずに自由に議論をしていくこと、自由に様々な批判や論調を張っていくことの必要性、そのことは十分に認識しております。が、その一方で地域の中で、地域にとっての世論の形成力、そういうことを考えたときに、様々な面で、マスコミの方々にもバランス感覚ということをもっと身につけていただきたいと感じることがあります。
この点で、今回選挙戦だけではなくて、この1年余りの間、県内各地を回る中で、多くの県民の方々がそうしたマスコミの論調の在り方に疑問や、また、批判の目を持っていらっしゃる、ということを感じました。このことは、高知の将来にとって、決して良いことではない、ということを私は思いました。
ただ、これまで一般の県民の方ももちろん、また、県や企業なども広報紙といったような特別なメディアを除けば特段、双方向で議論をしていくメディアを持ち得ませんでした。しかし、この情報化の時代になって、ホームページ等々、新しく広く世間に訴えていける、また、双方向で議論できる、そのようなメディアを多くの県民も、私たちも持つことができるようになりました。このことは将来、マスコミの在り方も大きく変えていく、そういう可能性をはらんでいると思いますが、そのこととは別に、これから様々なマスコミの論調に対して、それを鵜呑みにし、そのまま受け取るのではなくて、もし考えるところがあり、疑問を感じるのであれば、その担当の部長なり編集者の方々と話し合いをし、そのインタビューをホームページに載せていく、そのような双方向の関係というのもこれから考えていかなくてはいけないのではないかと思います。そんなこともこの2000年の初頭に当たって思いました。
●このことを年末年始、ある方に申し上げましたら、農業協同組合のことにしろ、マスコミのことにしろ、敢えてそんな火中の栗を拾うことはないではないか、というアドバイスを受けました。けれども、私は高知県で知事をしている以上、ただ平々凡々と知事の仕事を努めていきたいとは思いません。高知県の知事である以上、敢えて辛い、また、苦しいそういう場面に直面していきたいと思いますし、先程申し上げましたように悪戦苦闘を日々楽しむような、そういう仕事ぶりで自分はありたいと思っております。
●正月早々少し重苦しい話になったかも知れませんし、また、このようなことを言いますと、皆様方の仕事にもいろんな火の粉がかかってくるかも知れません。
けれども、高知県の将来のためと思って、ぜひ皆様方の力を合わせていただきたいと思います。これからも1年間頑張っていきます。どうかよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。