森林づくり会議勉強会知事講演

公開日 2007年12月06日

森林づくり会議勉強会知事講演(平成13年2月17日)

 皆さんこんにちは。
 本日は、檮原町の森林づくり会議の講師として、お招きをいただきまして誠にありがとうございます。今、本県の山村を取り巻く状況は大変厳しいわけですけれども、そうした中で檮原町は大変いろんな意味で元気さを発揮してくださっている町の代表のひとつでございますので、いつも梼原にくるたびに元気さのお裾分けをいただいているような気がいたします。そのことにも心からお礼を申し上げたいと思います。

 御礼を言った後にいつものように言い訳がましい話で恐縮でございますが、皆様方もご承知のとおり、今、県庁を取り巻くというか、県政をとりまく、さまざまな問題が噴出をしておりますので、せっかくこういった講演の機会をいただきましても、なかなかゆっくりと話の内容を考えたりまとめたりするゆとりがございません。
 このため、たまたま、おとといでしたか、家地川ダムの関係で中越町長さんが、県庁の知事室におみえになったときにもまだ何も考えてないんだけどとこういう話をしましたら、町長さんが、いや、それでいいんだと、とにかく町に来て気軽に話をしてくれればいいんだからと、こういうありがたい言葉をかけていただきましたので、気軽に話をさせていただきたいと思います。ですから、あまりまとまった話にならないかもしれませんけれども、その点はお許しを願いたいと思います。

 言い訳をいたしますと、すぐ気が楽になる性分でございますので、そろそろ、本題にはいらせていただきますが、今日、いただきました題はなんでしたっけ、「21世紀の森林づくり」というものでございました。森づくり、森づくりなんていいますと、今、いろんな意味で話題の総理大臣の名前だと思いますけれども、決してそっちの関係の話題ではございません。そういう話に逸れずに正しい森作りの話をしていきたいと思います。
 森づくりといいますと、当然、川上、川下でいえば、川上の側の話ということになりますけれども、川上と川下というのは切っても切れない関係でございますので、今日は、川下と限定はできないのですけれども、木を使ったいろいろ新しい試みというものを3つほど紹介をし、そのことを背景にまた川上の森作りというものを考えていく、そんな筋立てでお話をさせていただければと思っています。本県を取り巻く森林の状況、本当に厳しい状況が続いておりますけれども、そうした厳しい状況の中で、ふたたび森林や林業、木材というものが見直される、その価値が評価をされるそういう流れが明らかにでてきていると思います。
 そのキーワードは何かといいますと環境にやさしいとか、21世紀必ずやってくる資源循環型の社会づくりのためにとても役に立つ、こういうような切り口、視点ではないかと思います。今申し上げました、環境にやさしい、資源循環型の社会作りに役に立つということは、川上にも川下にも通じることでございますので、まずは、その川下の木を使ったいろんなもの作りの例というのをちょっとご紹介をしてみたいと思います。

 といって、最初にご紹介する例は県産材を使ったものではないのですけれども、南国市のほうにミロクというライフル銃などを作って主にアメリカなどに輸出をしている企業がございます。ご承知の通りライフル銃というのは、こう撃つときに肩のところにあてる台座のところに木を使いますので、この企業は長いことこの木を使う技術、独自のノウハウ・技術というものを積み重ねてこられました。
 そこで、この木の持つ環境へのやさしさ、木のぬくもり、そういう時代の流れに合わせて、何か新しい商品開発ができないだろうかということを長く研究をしてこられましたし、県の工業技術センターも協力をしていろんな商品開発に取り組みました。その中で、最近実用化をされたものが一つございます。
 それは何かといいますと、自動車のハンドル、木で作ったハンドルでございます。これは既にトヨタ自動車の関連の会社とミロクさんが提携をされて、新しい工場も立ち上げられておりまして、去年、僕もその工場も見学をさせていただきました。
 が、ま、自動車の部品でございますから、なんといってもその安全性ということが一番大切なポイントとなります。そのために、ただ単に木で作ったというものではなくて、相当手の込んだ、込み入った過程をたどって作られております。ですから、普通のハンドルよりも割高になるんですけれども、木の持つ環境への優しさ、木のぬくもり、また木のもっているファッション性だとか、高級感、そういうものがうけて、注文のほうも順調だということですし、工場の雇用も100人以上の雇用が、という状況になっておりました。

 このように、知恵をしぼり、また、新しい技術を結集をしていけば、従来の木を使った製品とまた違った、付加価値の高いもの作りも考えられるのではないかと思うのですが、あと2つほど、県産材を使ったもの作りの例をご紹介してみたいと思います。
 一つは、あのごっくん馬路村ですっかり有名になりました馬路村が立ち上げましたエコアスという会社でございます。エコアスというとなんだろうと思いますが、その名前のゆかりは、環境のことを英語でエコロジーといいますのでその頭をとってエコ、あとアスというところは明日を夢見てというその明日をアスといってくっつけたというだけのごく単純なというかわかりやすい名前でございますが、このエコアスでは、広島の企業が開発をした技術を使いまして、間伐材で木のお皿といっても、スーパーや商店などで商品を載せるトレイという下敷きがございます、ああいう木のトレイを作ったり、また柄の部分を取り外しできる木の団扇で、取り外したその丸い間伐材の薄板のところは、取り外せば、こういうお水だとか土瓶だとかを置く敷物にも使える、そういったアイデア商品などもつくっております。

 この企業の会社の、僕は、いいところは、馬路村の関係者だけではない、つまり出身者ではない若い人たちを、営業とか企画の担当に雇っているというところで、その彼らがあちこちに出かけて、営業活動をしています。たまたま、この数週間に、3回も、その営業マン、営業ウーマンに会うという機会がありました。1回目は高知市で開かれたあるパーティでその席でも会社の女の子が、間伐材を使ったそのトレイの宣伝を盛んにしておりましたし、2度目は安芸市でキャンプをはっておりますタイガースのキャンプの近くの露店でございました。
 そして3回目はつい最近でごすが、大阪のホテルで県産品の展示が開かれましたが、その時もコーナーを作ってその人たちが盛んに売込みをしておりましたが、例えば、その阪神タイガースの安芸の近くの露店では、さっき申し上げました柄の取り外しのできる団扇を売っておりまして、選手にサインを書いてもらうその色紙を忘れた人に色紙代わりに使えますよといって、1枚500円かなんかで売ってました。そういうアイデアと発想に若い人たちの柔軟な発想の面白さということをかんじましたけれども、こういうふうに、営業に非常に力をいれておられるせいか、先日、十和村の村内のケーブルテレビの開所式があったとき、その懇親会にでましたら、地域の伯母ちゃんたちが作ってくださったお寿司やなんかを運ぶ、木のお皿に全部そのエコアスのトレイが使われておりました。このように山村同士がお互い作ったものを使いあうそれによって市場をひろげていく、また、情報を広げあっていくということもこれから大切な交流の一つではないかなということを感じました。

 少し話が横にそれてしまいましたが、もう一つご紹介をしたい木を使ったもの作りは、大正町の森林組合がつくっております、木、修正材を使った、事務机でございます。ご承知の通り高知県も木の文化県ということを標榜しておりますので、まず隗よりはじめよということで、秘書室にもこの大正町の森林組合の作りました修正材の木の事務机をいれております。問題点はですね、あとで少しゆっくり説明いたします、値段の高さ、コスト、価格の問題なんですが、そういう問題があっても、今この木を使ったさまざまの製品には、かなりの追い風が吹いていると思います。
 というのは、ご承知かどうかわかりませんけれども、この4月から通称グリーン購入法という、グリーンというのは環境に優しいというのを表現する意味で使われております、そういう法律が施行されます。これによって、国は政府としていろんなものを調達をする、ものを買うには、環境に優しい商品を、法律用語では環境物品とこう書いてありますので、なんかききますと環境に優しくないような、小難しい言い方になってますが、つまりは、環境に優しい商品を選んで買わなきゃいけませんよ、ということを義務付ける法律でございます。

 当然県でも、こうした時代の流れにあわせて、これからものを買っていくときには、環境にやさしいものを選んで買っていく、そのためのリスト作りをしなければいけないんですけれども、当然、大手の企業がこのような時代の流れを見過ごすわけはありません。大阪にあるある大手の事務用品、事務機器の会社では、早速この大正町の森林組合のほうに話をして、一緒にグリーン購入に合うような商品作りをすすめていかないか、そのパートナーにならないかという呼びかけをされているという話をききます。
 また、この大手の事務機器の会社では、檮原町の森林組合が取得されました持続可能な森林経営のための国際認証、FSCという横文字のものでございますが、このFSCの認証を受けた木材、これは、非常に環境に優しい製造工程をたどってきたということで、付加価値がつきますので、この木材に関心を持っておられるというお話も聴きました。このように、今、この木材を使った製品には、グリーン購入といったような大きな時代の風が吹いているのではないかと思います。そのために、知恵をしぼればいろんな活路が開けるのではないかと思います。

 けれども、一方で、こうした木の製品には大きな壁がございます。それは、価格、コスト、価格が高いということですし、また、その原因にもなります、生産量がなかなか伸びない、そのために、まとまった量をきちっと安定的に供給する、出荷をすることができない、といったような問題点でございます。
 たとえば、価格ということでいいますと、先ほどお話をしました大正町でつくっておられますその修正材の事務机は一つが91,350円でございます。これが、従来型のスチールを使った、鉄材を使った事務机でございますと、23,100円でございます。
 つまり、4倍近い開きがあるということになります。このために、その木の文化県構想を進めている森林局が、県庁の中でその木の文化県を具体的に勧めていくための計画をつくる、その中で県庁で使っている事務机をもっともっと、木製のものに変えていきましょうという計画をだしましたら、それはとってもいいことだ、いいことだけれども、4倍近くも価格の開きがあるのだと、これだけ財政も厳しいといって、いろんなサービスも切り詰めていって、そんなときに、かえって無駄づかいじゃないのかというようなご批判を県民から受けるのではないかというような声もありました。

 また、キャビネットという引出しの部分があります。あそこまで全部木で作ってしまうのではなくて、そういうものは従来のスチールを使って、上のこういう鉄板、板のとこだとか、枠組みだけ木でつくるというふうなそういう知恵も必要じゃないか、という意見もでました。結局、少しでも生産を伸ばしていけば、どれだけコストが下がるだろうか、価格が下がるだろうか、例えば、先ほど一つが91,350円といいましたけれども、これを量産をしていって5万円台にするにはどうすればいいか、そういうことを戦略として一方でもっていきましょうね、ということを条件に今いった行動計画というものを具体的にすすめていくことにしました。
 実施の目標といたしましては、今の県庁の中には、昔から持ってきた古い木の机がございますので、747木の机があります、全体の14%ほどになります。これを平成16年度には、1,100台、全体の20%木の机にする、ということを目標に進めていこう、そういうふうにしています。

 この価格の問題とともに、先ほどもいいました遠因になっておりますなかなか生産量を増やしていけない、そのために安定的な出荷をすることができないという、古くて新しい課題がございます。けれども、繰り返し申し上げておりますように、そのグリーン購入というふうな大きな変化、新しい時代の風が吹いておりますので、そういうことに対応しておもいっきり、あらたなチャレンジをしていこう、そういう方々を重点的に支援をしていくような仕組み作りというものもこれから必要なことではないかと思っています。
 ということで、ちょっとまた、話を価格にほうにもどしますと、先ほどご紹介をしました馬路村のエコアスという会社で作っております、その間伐材の木のお皿、これも価格の問題を抱えています。といいいますのは、その間伐材で木のお皿、トレイを作るという話をきいて、僕はもう、とってもすばらしい話だなと思うと同時に、それならば、県内のスーパーなどでは発泡スチロールのトレイなどに変わって、全部木のトレイになるといいなあということを思いました。
 当然価格差はあるだろうから、それでも、そのスーパーの方々には、自分のところは、その環境に優しい木のトレイを使ってるんですよということを消費者向けの宣伝材料にしてもらう、その宣伝費と思って少しの価格差を飲み込んでもらう、さらに、足りないところは、こうした環境に優しい商品を県内に市場として伸ばしていくために、なんらかの法的な支援を考える、そんなことによって高知の県内では、スーパーでも店でもどこでもこの間伐材をトレイが使われているというふうにならないかなと思いました。

 ところがですね、その価格をきいてみましたら、普通の皆さん方がお店で買われる発泡スチロールのトレイこれは、価格が1枚が2円せいぜい数円でできております。ところが、このエコアスの間伐材を使った木のお皿、トレイは1枚が30円いたします。つまり、先ほどの事務机のように4倍近いどころか、10倍くらいの価格の差がございます。これでは、いくら環境に優しい、環境への協力だといっても、そのスーパーの皆さん方に、その分をのみこんでいただくことをお願いするのは無理だなということを思いました。
 ただそれでも、こういう毎日毎日大量に使っていくそういう商品で対抗していくと、コスト競争にのみこまれてしまうことになりますけれども、そうではなくて、時々使うというようなところに切り込んでいく、たとえば、少し意識の高いかたがたに、おうちでパーティなどを開く、会社でパーティなどを開く、そのときに、この間伐材の木のお皿を使っていただくということができないだろうか、それが、今の環境に優しい時代のファッションだ、流行だ、これを使うことがファッショナブルだとされているんだというようなことを、イメージとして作っていく戦略は取れないかなということを思いました。

 つまり、大量生産の商品と同じコスト競争をしたのでは、もうなかなかその先行きは難しいと思います。ですから、今申し上げたような形で、なんらか、ファッション性がある、その環境にやさしいという流行に合ったものだというようなところに付加価値を見出して売っていく、それによって少しでも生産を伸ばしていって、そのことによってやがてコストも下げていって競争力も高める、そんな長期的な戦略が大切ではないかなということを、今、思っております。
 このようないろいろ木を使ったもの作りということを進めますと、そこから、当然いろんなごみがでてまいります、廃棄物が出てまいります。けれども、今は、そういった木屑などを使って、それをまた新しい時代のエネルギーに変えていこうという、これをまた難しい言葉で、バイオマスというのですけれども、そういう仕組みがとてもまた注目をされております。
 このバイオマスという仕組みは、その木をさまざま加工する過程で出てまいります木屑、おが屑だとか、剥いでしまう木の皮だとか、そういうものを集め、それに若干の油を混ぜて焚いて、その熱で発電、電気をおこしたり、また地域の熱の供給をしたりという仕組みでございまして、これは、石炭だとか石油を焚いて発電をするというような仕組みに比べますと、ずっと炭酸ガスの排出だとかいう地球に与える影響が少ない、環境に優しいエネルギーということで、ヨーロッパなどでは幾つかの国で、かなりこの実用化されているものでございます。

 このため、高知県でもこのバイオマスの研究というものをこれまで進めてきましたが、この4月から、来年度からは大正町と物部川の流域2ヶ所でかなりつっこんだ実験をしていきたいと思っています。
 というと、せっかくやるのならばどっか一ヶ所でまとめてやれば、もっとまとまった研究ができるのにと皆さんおもわれると思いますが、これは、国でこのバイオマスというものを担当している省庁が、林野庁と資源エネルギー庁と、もとの通産省にあったエネ庁ですが、資源エネルギー庁にわかれている、そういった国の縦割りの補助金の結果ですので、その点はやむをえません。
 しかし、その両方もらってきた高知県としては、実験が重なり合って、無駄にならないように、大正町のほうでは、その木屑とか木の皮を如何に効率的に集めてこれるかという森林局の視点にたった実験を、また物部川筋では、企業局が実際にそれを焚いて熱を供給をしていくそのエネルギーのコスト、価格だとか効率性、そういうものを研究をして、それを一緒に連携をして具体的なプロジェクトとして育てていきたい、そんなふうに思っております。

 今、申し上げたバイオマスというのは、もともと、その素材生産をするときの剥いた木の皮だとか、また工場生産の中で出てくる木屑というのは産業廃棄物でございますから、本来であれば、有料で引き取っていただくということになります。
 これは、廃棄物ではなくて、今度は新たな発電だとか熱供給の、原材料にかえていくということになりますので、文字通り資源循環につながることになります。その意味では、全国一の森林県でございます高知県にとって、その資源循環をしていく森林資源の活用ということを考えていく上で、とても興味のある、また、魅力的な題材ではないかということを思っております。

 ということで、いよいよ今度は、川上の森づくりの話に移っていきたいとおもっておりますけれども、本県の森林は、林業の長引く不振をきっかけといたしまして、今、森林の管理そのものがなかなかうまくいかないという時代になっております。ふりかえってみますと、なかなか、長い間返す刀もなく、その結果だらだらだらだらと、坂道を降りて地盤沈下が進んできました。
 その中で、間伐だとか除伐だとか必要な手立てもなかなかできず、手遅れ手遅れになってきたうち、ついに、そのつけがどっとまわって、森林が持っているさまざまの機能そのものが駄目になってしまうんじゃないか、そんな危機感、漠然とした危機感が、広がってきている時代じゃないかと思います。
 ここからはやや、やせがまん的な、跳ね返った言い方に聞こえるかもしれませんけれども、フルスピードで一直線に走っているとき、そのときは、ちょっと方向がおかしいかなと思っても、なかなかハンドルを切って方向転換をすることはできません。
 しかし、ブレーキがかかって、スピードが落ちてきますと容易に方向転換しやすいということになります。その意味では、これまでの森林の政策、森林への考え方というものを思い切って切り替えていく、転換をしていく、ある意味では今はいいチャンスなのではないかということ思います。

 その一つが、森林会議のあり方ということでございますけれども、これまで県はどの山でもどの山でも、林業ということを前提にして、その林業ができるように、経済効果が出るように、そういう森林の管理をしてきました。 それに対して、これからは数多くある森林を、指定、ゾーニング、つまり、区分けをしていって、大雑把にいえば、環境を保全をするための環境林というようなものと、それから林業のような経済活動をしていけるような経済林というもの、そういうような区分けをしていって、それぞれの目的に応じた森林管理のあり方を考えていくような必要があるのではないかと、そういうよう方向転換というか、考え方をはじめています。
 具体的には、7つの区分、ゾーニングを考えておりますけれども、その中で、林業に適した地域、つまり、作業効率でございますとか生産性から、十分経済性の確保の見通しがつくような、そういう地域はそのようなゾーニング、指定というものをして、その中で、さまざまな取り組みをしていく方が、集約的な林業ができるような支援をしていく、そういうことを考えています。
 もう一方、山のお世話はもうとてもできないわという方が所有をしている森林でありますとか、地理的な条件から作業効率、生産性の面からもとても林業として経済的に成り立っていく地域ではない、そういうところは、先ほど申し上げた経済林というような考え方ではなくて、むしろ、環境林、つまり、森林が果たしている水源を涵養するとか、二酸化炭素を吸い込んで地球環境のために役に立っている、そういう公益的な機能を管理していく、そういう場所として指定をしていく、また、それに見合った管理の手法をとっていく、そういうことに改めていければなと、思います。

 また、従来ですとこういう切り替えというのは、県庁が県庁の中で、計画を全部作り、それに基づく予算をとり、そして要領や要綱を作って、さあ指導する、進めるというやり方でございましたが、今回はそういうやり方ではなくて、最初から県民の皆さん、地域の皆さんにも入っていただいて、そういう皆さん方の理解とご協力のものとに、県民みんなでこの森づくりをすすめる、こういう流れをつくっていきたい、それをさきほど、最初にもご紹介のあった、森づくり条例というようなものに是非つなげていきたいというようなことを思っておりますので、これから県として取り組んでいく森づくり条例というものに是非、多くの人に関心をもっていただき、参加もしていただきたいなということを思います。
 今、全国の都道府県を見てみますと、この森づくり条例、今、高知県が目指しているような森林管理の森づくり条例をもっているような県はまだひとつもございません。また、市町村の単位では、68の市町村でこれにあたる名前をもった条例がございます。
 けれども、その内容をみてみますと、市町村のもっておられる森林、市町村有林の管理でございますとか、森林公園の管理といったことを目的としたそういう内容の条例がほとんどでございまして、本当の意味で、民有林も含めて森づくりを考えていく条例は、この檮原町の森づくりの条例ただ一つでございます。ですから、これから県としていろんな県民の皆さんがたの参加、ご意見をいただきながら、森づくりの条例の骨格をつくり、そして、そのなかで具体的な作業にとりかかるときには、是非、梼原の皆さん方にも、これまで感じたことを、これまで培ってきたノウハウを、県のほうにも教えていただきたい、指導もしていただきたいと思いますし、そのように町から県に対していろんなノウハウをつたえていくというのも、まさに地方分権にふさわしい新しい流れではないか、ということを思っています。

 また、こうした森づくりの条例ということを背景として、県民をあげてみんなで森を守っていこうということを考えていく、一つの手段として考えているのが水源税というもの、いわゆるをつけたほうがいいと思いますが、水源税というものでございます。
 なぜ、いわゆるという言葉をつけたかといいますと、厳密にいえば、ここで考えている税は、森林の維持管理をするために、みんなでお金を出しあいましょうという趣旨でございますので、水源地域だけに限るとか、水を使っておられる方々だけに限るということではございません。
 けれども、一般に、水源税という言葉がどんどん使われて、また、人々の口にもそれなりになじんでおりますので、ここでは、水源税という言葉をつかわせていただきますが、そもそも、なぜ、こうした考え方が出てきたかといいますと、その理由の一つは、昨年4月に地方自治法が改正をされまして、地方分権推進の一つの手法として、自治体に課税自主権というもの、独自の税金を作っていくということが認められました。このことが、一つの発端になっております。

 このために、県でも、なにかこの、課税自主権を使って新しい自主財源、新しい税金が作れないかなということを検討しました。その中で、たとえば、産業廃棄物を捨てるとき、その埋め立てに課税をするとか、プレジャーボート、ヨットなどですね、ああいうプレジャーボートを持っておられる方々に課税をするとか、いろんな案が出ました。
 けれども、そもそもなかなか捕捉が、課税対象者をつかまえにくい、それをやっていくとかえって事務作業が煩雑になってしまうとか、または対象が少なくて、結局そんな自主財源といわれるほどではないといったようなさまざまな課題が出てきました。また、私自身、課税自主権というものは、地方分権を進めていく上で、いろんな政策を実現していくという意味でとても大切な権限だとは思います。
 けれども、地方分権が進むことによっていろいろ新しい税ができて、増税になっていったとしたら、国民は、県民は、地方分権っていったいなんだろうと、逆に疑問を持つのではないかな、ということも思いましたので、課税自主権は自主財源だといっても、なかなか難しいなということを思いました。
 そういうなかでいろいろ検討の結果、残ってきたものの一つがこの水源税でございます。といいますのも、高知県はご承知の通り、県土の84%が森林という全国一の森林県でございます。
 ですから、県民の皆さんの森林に対する意識、思い、関心というものは、他の県よりもはるかにすすんでいるだろうと思います。実際に、県民の声ネットワークという県政のいろんなモニターをしていただいている方々にアンケートをいたしましたら、70%以上の方々が、この水源税に賛成だというお答えをいただきました。

 つまり、水源税という考え方は、もっとも県民の皆様方の賛成を得やすいというか、これこれこういう理由でいただいて、こういうふうに使うんですよという、その話の筋立てを説明しやすい、ご理解を得やすい税金なのではないかというふうに思っていまして、けれども、だれも、税金が増えて喜ぶ人はいませんし、実際に、その作業を具体化をしていこうとすると、さまざまな課題でございます。
 といいますのも、誰からどの範囲で税金をいただくかというとき、広く薄くいただくのか、それとも水源税という言葉の通り、水道を利用している方からのみいただくのか、という課題もございます。
 また、いただいたご家庭を税金をどう使っていくかというときに、従来森林整備のために使っております、そういう林業の補助金とどう仕分けをしていくのかという問題もありますし、先ほどもいいましたように、税金が増えて喜ぶ人はいません。
 かといって、そのために特別な手立てを最初から考えてしまうと却ってうまくいかない、ということもあります。といいますのも、かつてといってもこれは昭和60年のことでございますが、林野庁が同じように水源税というものを考えたことがありました。

 ところが、このときには、同じく農林水産省が管轄をしております農地を減税の対象、税金の対象から除いてしまいました。このために、当時の通産省だとか運輸省だとか厚生省といったほかのお役所から総スカン、猛反発をくらって、結局この計画は日の目を見ずに終わってしまうということになりました。
 こうした経験からも最初からいろんな思いのずれをそのままにせずに、きちっとこうつめておかなければいけないということを思いますが、今回、県としてこの水源税ということを打ち出しましたら、山村、地域の方を中心に、また、林業関係の方を中心に、よういってくれたというお褒めの言葉、また、励ましの言葉をいただきましたが、よく考えてみますと、そうした方々の大半の方は、都市部からお金をいただいて、山村のほうにお金を還元するというふうにだけ、受けとめられているのではないか、また、さらには、高知県という県の中ではなくて、早明浦ダムの恩恵を受けている高松市や徳島、そういう地域からお金をいただいて、それを高知の山に戻すんだというふうに受けとめられたかたもいるのではないかということを思います。  

 が、先ほどの森づくり条例も同じですけれども、この水源税というものも県民をあげて森を守っていくというようなその機運を盛り上げたいということが一つの大きな目的でございますので、できれば、山村に住んでおられる方々も、実施に森林の管理にあたっている方々からも広く、薄くご負担をいただければなということを思います。また、そのことが、ほんとの意味で森林を守っていく、国土を守っていくという意識を高めることにもつながっていくのではないかというようなことを思っております。
 このことを発表した後、いろんな県民の方からもお声をいただいたということを今、いいましたけれども、それだけではなくて、年頭の所感でこのことが報道されますと、四国の他の3県はもちろんですし、10を越える県から県庁のほうに問い合わせがきました。

 また、実際に高知のほうに足を運んでくださったほかの県の職員の方、また、県議会議員の方もいらっしゃいます。けれども、そういう方々にお話を伺いますと、そうした県でも水源税ということをもちろんいろんな面で考えてみた、だけれども詰めていくと、なかなか表に出すまで煮詰まらないんだと、こういうことでございました。たしかに、従来型の手法で、すべてきちんと役所のほうで詰めきってから外のほうに出していこうとすると、この水源税という問題はさまざまな問題が絡んで、結局日の目を見ないということになってしまうのではないかと思います。
 これに対して、県では、あえて検討のまったく途中というか、検討の最初の段階で公表していくという手法をとりました。これは、そうすることによって、県民の皆さんの間にいろんな議論をまきおこしていただく、また、県民の皆さん方にも、そもそも水源税って何だろう、またみんなで森を守っていくというのはどういうことだろう、ということを考えていただく、その投げかけをしたいという思いがあったからでございます。
 ただ、それをやるからには、県の側もこれまですすめてきた森林政策というものはどういうものだったか、それで、どういう成果があったか、またなかったのか、それで今足りないところはなんだろう、またその足りないところを埋めるためにどれくらいのお金をいただいてどんなことをしようとしているのかを、きちんと説明をしていかなければいけない責任が生じてまいります。

 ですから、県の職員、とりわけ、森林局の職員の人にとっては、大変厳しいというか、ハードな仕事になっていくのではないかと思いますが、それだけに、是非、山村に住む皆さん方からも、山村地域に住むことの大変さ、また山を守ることの大変さということを、県が用意をします土俵の中で一生懸命また、訴えていただければということを思います。
 また、この水源税の行方というのは、これからの議論の盛り上がり次第といってしまうと、ちょっと第三者的な言い方になりますので、盛り上がりにかかっているのではないかということを思います。
 ぜひ、いい形で、実現をしていただきたいと思いますので、多くの方に関心を持っていただいて、この水源税の議論をもっともっと高めていっていただければということを思います。
 とはいいましても、担当の者に聞きましても、そんなに多くの自主財源が確保されるわけではないですよ、とこういう話をききます。

 それもそのはずで、たとえば一世帯あたり、年間1,000円負担をしていただきますとしますと、30万世帯あったとしても、3億円ということになります。また、水源税という言葉の通り、その水道を利用している方々からだけいただくとしますと、年間平均400万トンくらいお使いになるということをもとに計算をしても、だいたい1億2千万ぐらいかなというような試算になります。
 これに対して、県が森林整備のためにやっております事業、この予算はだいたい年間およそ16億円ぐらいでございますので、それならば、1億円くらいのお金は国に陳情しにいって、政治力でもぎ取ってくれるんじゃないのと、こういうご意見も出てくるのではないかと思います。

 けれども、そうやって国に陳情して政治力で取ってくる1億円と、県民の皆様方に広く薄く負担をいただいて集めた1億円と、その重みはまったく違うのではないかと思いますし、現実に、その納税をしていただいた、年間千円なら千円でも、納めてくださったお一人お一人の県民の皆様にとって、自分の納めたお金がどこでどのように使われているのか、その手ごたえを感じられるということは、大きな違いではないかというふうに思います。実際、私は、この水源税というものを考えるときに、大きなポイント、重要なポイントはこの点にあるのではないか、この手ごたえという点にあるのではないかと思うんです。
 というのは、これまでの税、税制というのは、自分たちの払ったお金がどこでどう使われているのか、よくわからない構造になっております。このため、今、大都市部の方々からは、自分の払った税金が、何か地方で無駄に使われているのではないか、もう公共事業はやめたらいいんじゃないか、という議論につながっています。

 これに対して、お一人お一人が納めてくださった税金というものが、その地域の中で目に見えるような形で使われているとすれば、その手ごたえ、実感というものは、まったく違います。また、そのことが税を納めてくださる皆さん方の、税ということに対する意識を変えていく、そのきっかけにもなるのではないかと思います。
 逆に、その税をいただいて使わせていただく私たちにとって、国からもらう1億と、皆さん方にとっては千円ずつだけ負担していただく1億とではまったくその重み、現実感、リアリティというものが違います。
 そのことが今後県庁の中で仕事をしていく多くの職員にとって、税金を使うということの意味、意識というものを、また切り替えていくきっかけにもなっていくのではないかということを思います。
 さらにそうやって水源税ということを納めてくださった都市部の方々が、せっかくだから自分の納めたものがどういうふうに使われているのかな、たまの休みに見に行ってみようといって、山にでかけられるとしたら、それはもう、しめたもので、そういうことによって、最初にご紹介したような川下での木材を使ったいろんな製品を見る眼、価値観というものも変わってくる、また関心も変わってくる、それが、私は、森林や林業を取り巻く環境を変えていくきっかけにもなるのではないかと思います。

 また、それが、高知県1県だけにとどまらず、やがて四国という島、4県に全域に広がっていけば、そしてそれが全国に広がっていけば、この日本の森林を取り巻く状況も変わっていく、そのきっかけがつくれるのではないかと期待をしております。ということで、少し夢が膨らむあまり、話が大きくなりすぎたかもしれませんけれども、森づくりの条例と水源税というものは、それだけの大きな、僕は可能性を秘めたものではないかと思います。それだけ、県としても総力をあげてこの問題に取り組んでいきたいと思います。
 ぜひ、山村の地域の皆様方も、このことに関心をもっていただいて、積極的に参加していただいて、森づくり、また、水源税の議論もある意味では楽しんでいただければ、というふうに思います。

 というわけで、今日は、風下からはじめて、川上の森づくり、水源税のお話をさせていただきました。今日、ここでお話をするのをきっかけに、あらためて、森という言葉を使った、ことわざだとか、昔話、童話というものをかんがえてみました。すぐ思い浮かぶのは、木をみて森を見ないという言葉でございますが、ことわざ辞典を引きましたら、これは英語のことわざを翻訳したもので、日本のことわざではないということがわかりました。
 また、昔話だとか童話というものを考えてみますと、あのウィリアムテルがいたシャーウッドの森だとか、ヘンゼルとグレーテルが迷い込んでお菓子の家にぶつかった森だとか、西欧の童話とか昔話には森の話がいっぱいでてきます。けれども、日本の話にでてくる森はいわゆるお社の森、鎮守の森であって、こうした山村の森は、昔話にも登場しないのではないか、森という言葉、森林という言葉では登場しないんじゃないかというふうに思います。
 それだけ、西欧と日本では、森林のおかれた地理的な条件が違う、また、そのことがひいては、外材との価格差などにもつながってきてるんだなということを、ふっと思いました。
 それはともかくといたしまして、やはりもうちょっと、森と、山村の森林と、私たちとの間の距離を身近なものにしていかないといけないというふうに思いますし、そういうことによって、その木をみて森をみないという英語のことわざを訳すのではなくて、日本独自の森とか山ということを使ったことわざができれば、たとえば、山を笑うものは水に泣くというようなことわざができて、それが日本から発信をされていくようになれば素晴らしいんじゃないかなということを思いました。
 もう一つ、ついでにこの機会に、森林、森という言葉をひいてみました。そうしてみましたら、木が多く茂っているところと書いてありました。
 つまり、木が多くたっているだけでは森ではない、森林ではないということを、改めてその辞書から知ったということを、皆さん方にお伝えをして、少し長くなりましたけれども、私の講演を終わらせていただきます。どうも、ありがとうございました。

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