平成13年 年頭所感

公開日 2007年12月06日

更新日 2014年03月16日

新年に寄せる思い(平成13年1月1日)

 今年は、21世紀のスタートの年となる。
 20世紀を振り返ると、欧米に追い付け、追い越せを目標に、近代国家の建設に向けて懸命に取り組んできた。特に、戦後は驚異的な経済発展を遂げ、世界第2位の経済大国になった。
 しかし、大量生産を大量消費で支えるという経済活動は、地球規模での環境の問題を生み出したし、近年のバブル崩壊以降は、政治、経済、社会のさまざまな分野で、行き詰まりをみせている。
 こうした状況を打破して、新しい時代を切り開いていくためにも、各方面での新しい枠組みづくりに果敢に挑戦していかなければならない。
 そうした意味からも、21世紀の到来は単に西暦の節目というだけではなく、歴史の転換点だと思う。
 こうした中、本県では、高速道路の延伸や高知空港の拡張、高知新港や高知工科大学など、新しい世紀に飛躍するための社会資本の整備の他、全国に先駆けて取り組んできた情報化や資源循環型の社会への構造転換などを推し進めている。
 あわせて、社会福祉の分野や新しい産業の創出による雇用の場の確保をはじめ、豊かな自然を生かした交流人口の拡大、さらには海洋深層水など地域の資源を活用した地域づくりを進めることで、公共投資や公共事業に依存した県から、自らの財源で生きていける自立した県になることを目指している。
 こうしたことに産官学民が力を合わせて取り組んでいけるようにしたいと思う。

◆ これからの100年を考える(ローマクラブの発想で)

 昨年秋に、公約の一つだった「こうち100年クラブ」を設置した。
 かつて、開発中心の時代に、環境やエネルギーといった制約要因に目を向けて、「成長の限界」という有名なレポートを出した、ローマクラブという賢人会議があった。そこで、新しい100年のスタートを前に、このローマクラブの様な考え方で、これからの100年を見通してみたいというのが発想のきっかけだった。
 5年先、10年先もなかなか分からない時代だが、これからの100年を見通す志と勇気を持って、例えば、環境との共生、情報化の可能性とその活用、少子・高齢化への対応、公益的機能などを踏まえた中山間地域のあり方といった重要なテーマについて議論をすることは、21世紀の高知県づくりにとって意義のあることだ。さらに、これからの日本を考えるうえで、地方からの発信になればとも考えた。
 各分野で活躍されている県内外の有識者に、自由に議論を進めていただくことにしているが、県民に広く開かれた議論の場にすることによって、ともに高知県の将来を考えていきたい。

◆ 新しい住民自治(住民投票の位置づけを明確に)

 その100年を支える地方自治は、住民自治の原点を見つめ直したものになるべきだと考えている。
 このため、昨年庁内にプロジェクトチームを作って、その基本的なルールを定める自治基本条例を検討してきたが素案がまとまった段階で、あえて差し戻しにした。
 というのも、条例の素案を示して、それに対して意見を聞くという従来のやり方では、本来の意味での県民参加にはつながらない、と感じたからだ。
 これからの地方自治は、それぞれの地域の住民が行政との新しいパートナーシップ、つまりは役割分担のもと、ともに公を支えていく形に変わらないといけないと思う。
 そのための手続きや仕組みづくりを一緒に考えていただきたい。
 また、その際には、住民の意思表明の一手段となる住民投票の位置づけも明確にできたらと思い続けている。
 日頃は県行政に関心のない方々にも、是非議論に参加をしてほしい。

◆ インターネット博覧会(県庁知事室は人のゆきかう“市”)

 大晦日から、「インターネット博覧会(通称:インパク)」が始まった。 本県は、“市”をメインテーマに、街路市、よさこい祭り、まんが、路面電車など、高知ならではの素材を集めて、全国へ、世界へと情報発信していく。
 情報化の取り組みでは、一歩先を行くと自負してはいるが、多くの県民が情報化を活用しているかといえば、決してそうではない。
 そこで、このインパクをきっかけに、インターネットの楽しみ方などを、是非知ってもらいたいと思う。
 そのためには、まずインパクに対して一人でも多くの方に関心を持っていただかないといけないので、そのきっかけづくりの一つとして、知事室をインターネットカメラで24時間公開することにした。
 知事室は人のゆきかう“市”というのが一応の理屈だが、県庁の情報公開の一環という意味づけもある。
 それはともかく、マスメディアを通じてのインパクのPRを、是非ともお願いしたい。

◆ NPOへの期待(県庁職員をNPOに派遣)

 これまで行政の仕事とされてきた、公共的なサービスの担い手として、NPOが注目されている。
 従来のボランティア活動は、高齢者の介護や生活支援、さらには河川や道路の美化などがほとんどだったが、このところ図書館の運営やまちづくりの分野でもNPOがその力を発揮している。
 先ほどの自治基本条例ともかかわるが、これからは、住民とともに地域のあり方や新しい事業について考えていくためにも、情報の提供と説明責任が大切になる。
 その時に、例えば、住民の側に立って、わかりやすく情報をまとめて説明するとか、逆に地域の要望を取りまとめて、行政側に橋渡しをするといったNPOがあれば、住民の満足度も高められるし、事業もスムーズに進むのではないかと思う。
 さらに、行政や関係機関との調整とかさまざまな許認可など、一般の方が行政とかかわる時には、大変な思いをすることが数多くある。
 それに対しては、行政側もワンストップサービスといった体制づくりを進めていかなくてはならないが、一方では、そのノウハウを持った団体が、事務手続きの手助けや助言をする、そんなNPOがあってもよいと思う。
 今年は、こうした官民協働のあり方を学ぶため、先進的な活動をされているNPOに職員を派遣することにした。

◆ グリーン購入(県庁のグリーン購入リストづくり)

 最近「グリーン購入」という言葉が、よく使われるようになった。
 これは、商品などを購入するときに、価格や品質だけでなく、環境への視点を重視して、環境への負荷が少ないものを選んで優先的に購入することを意味している。
 これによって、環境に配慮した商品の開発や供給を促すことになるし、それが資源循環型の社会づくりにもつながっていく。
 すでに国では、いわゆるグリーン購入法によって、今年4月から官庁でのグリーン購入が義務づけられるし、地方でもすでに取り組みを進めている所もある。
 やや出遅れた感もあるが、まずは県が使う物品のすべてがグリーン購入になることを目指して、率先してリストづくりに取り組んでいきたい。 昨年立ち上がったエコデザイン協議会の実をあげるためにも必要な課題だと受けとめている。

◆ よさこい祭りへの思い(お城と電車通りを競演場に)

 土佐の夏に彩りをそえる一大イベントとなった「よさこい祭り」は、年々盛んになり、全国各地にも広がっている。
 一昨年からは、全国大会が開催され、県外からたくさんのチームをお迎えしているし、よさこい祭りの期間はもとより、その時期以外にも、県外客に踊りを披露する取り組みなど、観光面でも大きな効果をもたらしている。
 その意味でさらなる脱皮へのターニングポイントではないかと感じている。
 そのため、電車通りの利用を提案して、関係の方々には努力をしていただいているが、交通渋滞の課題などから、なかなか実現をしない。
 ただ、ここまで育ったイベントなのだから、できるだけの対策をしたうえで、きちんと説明をしていけば、十分に理解も得られると思う。
 知事に就任して10年目の節目となる今年こそは、電車通りで思いっきり踊ってみたい。
 あわせて、高知城の築城400年を機会に、お城の中での競演を関係者に検討していただいている。

◆ これからの県立大学(県立大学のエージェンシー化)

 国立大学の独立行政法人化に向けて、検討が進められているが、高知女子大学、高知短期大学という県立大学も、そのあり方を見直していく時期にきている。
 というのも、これだけ変化の激しい時代にもかかわらず、公立の大学では教員の登用などに制約があって、採用などの面で柔軟な対応がとれないと、企業との共同研究や民間からの資金提供も容易にはいかないからだ。
 これでは学内の良い意味での競争意識が芽生えないし、教員もその環境の中に安住しがちになる。
 ただ、かといって公的な支援なしには地方の教育水準を維持することは難しい。
 そう考えると、国立大学に準じた独立行政法人化は有力な選択肢の一つになる。あわせて県内はもとより四国内の大学との連携による総合大学化など、より大きな枠組みを模索する必要がある。
 少なくとも県内大学の大学院での相互乗り入れは、早急に進めていきたい課題だ。

◆ 自立のための財源(“水源税”の実施を中心に)

 地方自治体が自立した行財政運営を進めていくうえで、自主財源の確保はますます重要な課題だ。
 そのためには、企業の誘致や新しい産業の創出によって、税収を増やすことに取り組んで行かなければならないし、国から地方への税源の移譲も大きなテーマだ。
 一方、地方分権が進む中で、課税自主権の活用によって、新たな目的税の創設を、各県でもいろいろと考えているし、本県でも環境や自然を守るための目的税の勉強を行っている。
 その中には、例えば、水源地域の森林を整備し守る費用に充てるため、その水の利用者から少しずつ負担をいただく、水源涵養のための税といったものがある。
 環境の保全や災害の予防ということから考えても、意義のあることだと思うので、4月以降、専門家や県民の意見をいただきながら、具体的に取り組んでみたい。
 こうした新たな課税への取り組みは、その必要性などを徹底して説明しなければならないし、その使い道には厳しい目が向けられることになる。
 そうした経験が、県の政策立案の能力や説明責任の向上につながっていくと思う。

◆ 人権、プライバシーと情報公開(情報公開課の検討)

 人権の分野では、すでに議会でも表明をしたように従来の同和対策の、抜本的な見直しが大きな課題だ。
 あわせて、団体との話し合いも、今後はマスコミに入っていただくなどオープンなものにしていきたい。
 また、広い意味での人権問題として、情報公開や表現の自由とプライバシー保護とのかかわりがある。
 このうちプライバシー保護の条例は、今年中の施行を目指して取りまとめていきたいが、その際、マスコミを、表現の自由をたてに例外扱いすることが、合理的かどうかは議論のあるところだ。
 例外といえば、情報公開条例の適用に公安委員会を含める件でも、なるべく例外を少なくする方向で協議を進めている。
 あわせて、情報の公開と提供を専門に扱う課の創設も新しい課題だ。

◆ 公的な事業での用地買収(新しい時代の補償を考える)

 県が道路や施設を造る場合に、その財源はもちろんであるが、建設に必要となる用地の取得も大きな課題の一つだ。
 この場合は、県が決めた計画に基づいて県民の財産である土地や建物を提供してもらうので、民間同士の取引と違って、意に添わない場合も出てくるし、強制的な土地収用の手続きもできることになっている。
 そこで、買収にあたっては、公平さを期すために、全国的な基準に、四国やそれぞれの地域の特性を加味した補償基準を定めて、所有者との交渉にのぞんできた。
 これに対して、昨年の12月県議会では、この手法による買収金額が、高すぎるのではないかといった指摘をはじめ、土地や建物の補償のあり方について、いろいろな議論が出た。また、私自身は、今の手法は時代にあわないと感じている。
 この補償のあり方は、全国的に統一したものだし、電力会社のような公共的な企業でも使われているものだが、今後は、その算出の根拠はもちろんのこと、補償に関する情報公開のあり方なども含めて、議論が必要だ。

◆ 予算偏重から人材活用へ(事業予算のない仕事を考える)

 来年度の予算編成を通じて感じたことだが、県の職員の中には、まだまだ「予算をとらないと仕事にならない」という意識が強い。
 だが実際には、予算ではなく、職員がわが身を使うことによって動かせる仕事が数多くあるし、財政が厳しくなる時代には、そうした発想の切り替えをしないと、県民サービスの低下にもつながりかねない。
 といった視点から、新しい年には、役所の中で動かす予算だけではなく、役所の外で、自ら動くことによって何かを変えようという職員の提案を期待したい。

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