NHK四国スペシャル“地方の時代”をどう生きる−4県知事対談−

公開日 2007年12月06日

更新日 2014年03月16日

NHK四国スペシャル“地方の時代”をどう生きる−4県知事対談−

放映日時:平成14年2月2日(土曜日)

 (司会:NHK松山放送局 金野正人アナウンサー・正延知行ニュースデスク)
 先行きの見えない景気の低迷、それに加えて小泉内閣の掲げる「聖域なき構造改革」が地方の暮らしに大きな影響を与えています。同時に今、地方は強く自立を求められております。
 今日のこの時間はNHK徳島放送局の第一スタジオに、四国4県の知事の皆さんにお集まりいただきました。

 難しい舵取りを迫られる、この「地方の時代」をどう生きようとするのか、四国がさらに発展・飛躍するためにはどういった知恵を出す必要があるのかを話し合っていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 早速ですが、皆さんに「地方の自立」に向けて、今年をどんな年にしたいかを伺っていきたいと思います。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 お話にありましたように、わが国全体の社会経済状況というのは極めて厳しいし、その中で国も地方も財政状況が非常に厳しい。こういう中で、ただ、そういう時代だからじっとしている、そういった縮小均衡的な考えでは駄目だと思うのです。
 やはり、未来志向の改革によって、本県の魅力や活力というものを大いに伸ばしていく。そのためには限られた財源しかありませんから、キーワードは「選択と集中」だと思います。

 「あれもこれも」というのではなくて、やはり重点主義で、本県の得意とする分野、長所を大いに伸ばしていきたい。得意とする分野は何かといいますと、ボランティア、ベンチャー、環境、この三つを挙げたいと思います。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 今年は新世紀も2年目ということで、香川県が創った「新世紀基本構想」も2年目に入ります。やはり、地方の時代ですから、香川県の独自性というものを政策面でしっかりやっていきたい。ということで、この4月から組織改正をして、政策部というものをつくります。それと、条例などを専門的に作れるような法務担当の課をつくることで、条例とか独自の政策を検討できるような組織を整え、特に「水」と「みどり」の新しい2本の条例を今年是非成立させて、環境保護に取り組みたいと思います。

 また、教育問題では、香川型の指導体制ということで、一つのクラスに複数担任制みたいなことをやっていますが、そういうものをさらに拡充して、香川型の指導体制にする。
 また、東山魁夷美術館とか、文化面にも力を入れていきたいと思っています。やはり新世紀らしい、少し価値観を転換して、新しい独自の政策を展開していきたいと思っております。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 去年、21世紀は人間尊重の世紀であってほしいと願ったのですが、「えひめ丸」の事故があって、そういう意味で命の大切さを再確認した。人間尊重の世紀が、実質的に今年から始まる、そんな思いがあります。
 当面の問題は、何と言っても景気・雇用対策ですから、これを最重点の課題として取り組むと同時に、環境や福祉にアクセントを置いた形で、重点的に新しいキャッチフレーズでもつくって推進したいと思っております。また、市町村の合併に対する支援を強化して、足腰の強い基礎体自治体をつくり上げていきたいと思っております。

  同時に、今のこういう状況の中で「救い」がほしい、そんな意味で、県民がつくりあげる県民オペラということで、3月には「フィガロの結婚」を上演します。また今、県が主体になって、民間企業の協力を得ながら、愛媛の映画を製作中です。一山当てるというわけではないのですが、盛り上げていきたい。また、秋には、全国童謡唱歌サミットが開催されるということで、文化の薫りというのを少し浮かび上がらせていきたい、そんな思いです。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 去年から今年にかけては国際的にも、また国内でも県内でも、非常に暗い話題が続きましたので、みんなの気持ちが沈んでいるのではないかと思います。今年の仕事始めの時にも、県の職員の人たちに、「みんなが沈んだ気持ちを少しでも盛り上げるために、空元気でも良いから元気を出そう。」ということを言いました。明るさと笑顔を忘れずに元気を出していく、というのが僕は今年のモットーではないかと思っています。

 空元気、ということとはちょっと違いますけれども、今ちょうど近畿地方のほうで、高知県の野菜のコマーシャルが流れております。実は自分自身が出演をさせてもらって、なるべく笑顔を振り撒いたコマーシャルになっているのです。そういうことをしていこうと思ったのも、農業・園芸も非常に価格も落ち込んで皆さん気分が沈んでいる、そういうときに少しでも元気を出していただこうという思いでした。空元気でも元気を、というのが今年1年、自分で頑張っていきたいモットーです。
 

(司会)
 地方の自立を踏まえた今年の抱負・思い、そのようなものをお話しいただいたのですけれども、早速、話し合いに入っていきたいと思います。
 実は四国には課題が山積しています。「聖域なき構造改革」の中で、四国に影響を与えそうなものを三つほど挙げました。

 「本州四国連絡橋公団の民営化の方針」、平成17年度までに民営化しよう、そうすることで、公団の抱えている債務を関係する自治体にも負担してもらおうという処理案が出ている、という問題です。
 二つ目に、高速道路整備計画の見直しです。年間3,000億円の国費が打ち切られることになってしまいました。

 そして、公共投資の大幅削減です。国全体として10.7%の削減を、ということです。
 地方の自立に向けて進みたいこの1年ですが、こういった課題にどういうふうに向かっていくのか、まず伺っていきたいと思います。中でも、「本四連絡橋公団の民営化の方針」について、今の段階でどういうふうに受け止めていらっしゃるのか、そして、基本的な考え方について伺っていこうと思います。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 今お話にございましたように、政府のほうで、民営化と地方負担のような決定をしたということで、我々非常に驚くと同時に怒っているわけです。この問題、香川県も含めまして、地方公共団体が出資をして、今までやってきている状況ですので、そういう決定をするについては、やはり地方公共団体の意見をちゃんと聞いてほしい。それから、また新たな負担を求めないようにしてほしい、ということを早速昨年の末に、関係の大臣はじめ、いろいろなところに申し入れているわけです。是非、我々の意見がちゃんと反映されるように努力をしていきたい。

  また、もう一つは料金の問題、せっかく造った瀬戸大橋、あるいは3橋が利用されないというのではいけないので、やはりもう少し使いやすい料金にしてもらう、高速道路並みの料金で。ということで、実は香川県では経済界中心に署名運動が起こっております。これを受けまして是非、4県の知事さんにも連携をお願いして、またもっと広い地方公共団体はじめ関係の皆様方にも御協力いただいて、これらのことを是非実現したいと思っております。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 突如として、本四公団の民営化にあたって、国の道路予算と地方負担をもってこの債務の処理に充てる、というような方針が示されたわけです。私どもに何らの相談もなかった。

 実は、もともとこの債務処理をどうするかということにつきましては、平成9年にスキームが決められた。もともとあったものを平成9年に改定したわけです。それによって、国と地方が2対1で負担をする、平成24年まで毎年800億円を国と地方で負担をし、そして58年度にはこの債務も全部償還が終わるというようにしましょう、全体で1.6兆円、地方負担が大体5,300億円くらいだ、と。

多いか少ないかという議論はあると思いますが、徳島県でも277億円を平成13年度までに出資ということで負担をしてきているわけです。県の規模からいうと非常に大きな負担を強いられてきている。これに上乗せして、さらに新たな負担ということになると、実際問題として到底耐えられないと思います。また、県民の皆さんとか議会を説得するといってもなかなか難しいと言わざるを得ません。

 通行料金も真鍋知事がおっしゃったように、道路公団と比べますと非常に割高になっているわけです。神戸西インターから鳴門インターまでの間でいいますと、道路公団の料金の2.5倍ということになっています。特別料金でだいぶん安くしてもらって、なおかつ2.5倍高い、そういう負担を強いられている。

 ところが、青函トンネルにしても関門トンネルにしても、国家プロジェクトとして造ったので、そういう特別の料金を取っていない。清水トンネルも大変長いトンネルだけれども、特別料金は取っていない。この本四3橋も国家プロジェクトとして始まったものである。四国が海で隔てられているという地理的な不利条件を国として克服しなければいけない、こういうことで始まったわけですから、あまりにも高い料金を課すとか、地方公共団体にあまりにも負担をかけるというのは、当初の趣旨からいっておかしいのではないかと思います。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 圓藤知事がおっしゃったことに尽きるのですが、しまなみ海道に関して、愛媛も既に300億円近い出資をしています。目検討ですけど、あと500億円程度は今後出資していかなければいけないという状況の中で、こんな形になりますと、800億円を想定していたのが、一体2,000億円になるのか3,000億円になるのか、もう「ない袖は振れない」というのが基本にあるのです。

 何か四国のために造ったような観点での議論というのは極めて残念です。古事記の話ですが、出雲の国が「国引き」というのをしました。新羅とか北陸地方の余った土地を引っ張ってきて出雲の国にしたと同じように、四国のために造ったのではなくて、本州が少し面積が足りないから、四国という部分を「国引き」で引っ張ってつけたのがこの3橋ではないか。そんな意味で、四国ではなくて、日本列島全体の問題として考えていただきたいということを申し上げたいと思っています。

そういう意味で財政負担の話ですが、金目の問題をめぐって、高知県は若干負担が小さいとしても、四国4県連合軍と中央政府との激しい対決になるのかな、ということを思っています。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 思いは全く、他の3県の知事さんと同じです。負担ということになりますと、あまりお金の話をするのもどうかと思いますけど、高知県でもこれまでに110億円を出しておりますし、今後もそういうことが予想されるわけです。

 もちろん、地域の強い要望でできたという経過はあったと思いますが、国のプロジェクトとしてきちんと位置付けられて、国土計画の中で造ってこられた橋です。また、地域の要望といっても、それから何十年という年月が経っている中で、さらに地方への負担を、しかも地方への相談もなく求めようというのは、少しやり方が乱暴ではないかと思っています。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 もう一つ言わせていただきますと、株式会社であるならば、4県は共同出資者です。普通は有限責任です。ところが、出資額を上回って、赤字が出るからといって、これは無限責任を追及されるのと同じではないかな、そんな意識もあります。
 

(司会)
 皆さんの今のお話を伺っておりますと、やはり橋の通行料金が高いのでもう少し抑えてほしい、これからの地方の負担もなるべく勘弁していただきたい、という話が共通して出てきたように思うのです。

  しかし、これだけ国と地方の財政が厳しくなる中で、大都会の納税者とか、橋からより遠くに住んでいる人たちからは、「本当に橋の料金を下げて通行量が増えるのでしょうか。これだけ公団の債務が膨大になっている中で、いちばん恩恵を受けているのはやはり周辺自治体ですから、債務の返済のためにもう少し負担していただいても良いのではないか。」という声が将来的に出てくると思います。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 それは先ほど圓藤知事が「国家的プロジェクト」とおっしゃったけれども、費用対効果とか、そろばん勘定で言うのならば、山の中にも郵便局があり、小学校があり、都市部の教育、交番の問題にしても全てそうですが、都市部以外はそろばん勘定が成り立たないから何もなくても良い、というのと同じではないですか。日本人が健康で文化的な最低限度の生活を営む権利といった場合の基本要件は何ですか、という中の一つは、今の時代は「高速道路」というのが最低要件ではないか、と思います。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 加戸知事がおっしゃったとおりで、今、経済合理性とか費用対効果ばかりを言い過ぎる。日本のどこに住んでいてもある一定レベル以上の生活ができることを担保する、そういったミニマム水準もあわせて考えていく、ということが日本の良いところではないかと思って
いるのです。

 そういう意味からいうと、「国土の均衡ある発展」ということをずっと言い続けてきたわけですが、いつの間にか「国土の均衡ある発展」ということを言わなくなってしまった。田舎に公共投資をするとか、お金を投資するということが、無駄であるかのごとく、そういう風潮が広まっていったというのは非常に残念に思っております。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 全て採算性で計っていこう、という合意の下に日本の国づくりが始まったのならば、それは理解できると思います。しかし、ある時期から突然、採算性の話が出てきて、「もう四国はいらないのではないか。」云々という話は、ちょっと筋が違うのではないかと思います。

  やはり、国の方針として立てたものは、途中で採算性という別の基準を持ち出すのではなくて、それはそれでまた別途議論すれば良いと思いますが、計画としてはきちんとやりあげて国の責任を果たしていただく、ということが筋ではないかと思います。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 計画を立てた、あるいはつくったときとでは状況が変わっていると思うのです。
当時は高度成長で物価も上がる状況の中で考えられたわけです。今やデフレ、モノが下がっている段階、そういう状況の中で、非常に日本の国は高コスト構造になっていると思うのです。これを少しコストダウンしないとどうにもならない。そのいちばんの大きなものは、道路とかそういうものを、ある意味全部料金に跳ね返して、非常に高いものになっている。
  やはり、国の財政をつぎ込んで、安くできるところは安くする。ヨーロッパとかアメリカにしても、高速道路とかそういう公共投資というのはそういうものだ、ということでやっている。その辺、日本は、あまりにも高度成長期でどんどんまだ物価が上がっていく、そういう構造の中で、そこに居る人の負担だけで借金を利子まで付けて返せるようなことで計画したことが破綻しているわけです。

  これから考えるとしたら、放っておいても何年か経てば橋は使えなくなるわけですから、せっかく造ったものをもっともっと使ってもらえるように、また、使いやすいようなものにしていただくのが大事だと思うのです。
 

(司会)
 債務をどのように分担することになるのかというのは、これからの四国の知事の皆さんのいろいろな動きにかかってくるとも思うのです。けれども、実際問題として、この橋をもっと料金を下げてもらって使いやすくして、本当に活用しないと損だという気がするのです。 
 3橋をどのように活かしていったら良いのかということなのですが。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 徳島の場合には橋ができて、交通体系がまるで変わってしまった。大阪との飛行機がまるで駄目になった、海上交通が全滅、という状況がございます。
 その代わり、橋を利用した高速バスがものすごい勢いで増えている。1日に117往復で、年間で180万人がこの高速バスを利用して、神戸・大阪・京都に行っている。これはもちろん、ショッピングとかビジネスとか、物流とか観光とか、いろいろな面で利用して、生活者の利便性の向上にはすごく意味があることだと思っております。

 ただ、消費の流出ということから言いますと、確かに神戸や大阪にショッピングに行くという行動が定着しておりますので、非常に困った面もあります。しかし、それは我々が努力しなければいけない。先ほどもちょっと議論しておりましたが、「渦の道」とか「あすたむらんど」とか、こういったところにも神戸・大阪・京都のほうからも、あるいは香川県からもたくさん来ていただいているということです。

 それで、これからどうすれば良いかというのは、一つは、四国島内の高速道路ネットワークが全然不十分、これをきちんとすることによって、橋にもっともっとお客さんが利用しやすい条件ができるだろう、ということがあります。

  それから、先ほど言った「通行しやすい料金の設定」ということ。一つ、例として申しますと、「関西パスポート」というのがあります。京都、大阪、神戸などで関西広域連携協議会というのがあり、そこに外国人が来て、いくらバスを使おうと地下鉄を使おうと、いくらでも自由に乗り降りできます。それも徳島まで延ばしていただきましたので、それに高速バスの料金を加えたら徳島までも行けます。

  例えばこれを四国で、四国パスポートみたいなものができないか。そして、各地の観光地を結ぶネットワークをつくって、料金を少し安く下げる、施設の利用料というか、いろいろな所に入る料金を少しずつ割引するというような格好で集客を図るとか、もっともっと橋を利用しようとする条件を我々もつくっていかなければいけない。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 しまなみ海道の場合は、本当はまだ完成はしていない。大島と生口島の島内道路が未整備ですから。早くこれが開通して、実質的に他の2橋と同じような形での利用ができるということが必要です。

 基本的に橋は全てそうなのでしょうけど、産業の道路であり、生活の道路であり、あるいは観光の道路である。私は、長い目で見たときに例えば、75年後、100年後、ああ良かったな、成果が上がったな、ペイしたな、ということに必ずなると思って、いつまでもこんな不況が続くわけではないですから、そんな点でも将来に望みを繋いでいます。

  申し上げたいのは、要するに、国鉄の民営化のときに26兆円の債務を国が肩代わりをした。橋だけは地元だよ、というのはおかしいのではないのでしょうか。極端なことを言えば、国鉄民営化のとき赤字路線が出たときに、自治体から負担させたのですか、今回だけ今までの歴史の中のバランスを欠いて、四国4県いじめにだけはなってほしくない。
 

(司会)
 この橋をどう活用するかは、後ほどまた時間がありましたらいろいろと御意見を伺いたいと思います。
今、圓藤さんから高速道路の整備も大事だというお話がありましたけれども、これからは、4県の整備・発展に大きく関わります、高速道路整備計画の見直し、それから公共投資の大幅削減について、お話を進めていきたいと思います。

 四国の高速道路網の、現在の整備状況は、今開通しているところが393km、また、その高速道路に繋がる自動車専用道路があります。高速道路整備計画の中で示された残り部分というのはおよそ129kmあります。この残された部分、これが中止になるか、あるいは建設されるのかというのは、その見直しが構造改革の中で大きく取り上げられているということです。

 もう一つ、県民総生産に占める公共事業関連費の割合です。香川県が5~6%ですが、これが大体全国平均です。高知がやはりちょっと高く、公共事業に依存している度合いが大きいという状況になっています。

 この中で、徳島の圓藤さん、去年、徳島の板野と高松中央の間が繋がるなど、相当便利になったと実感されていると思います。この後の整備の見直し、これについてはどう思われますか。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 まず、徳島県に関連する部分で言いますと、板野まで開通して大変利用率も高いわけです。板野から鳴門までが完成しますと、一つのネットワークといいますか、高松とも連携して橋を渡れるということになります。これは、今年の夏までには何とかできると思います。

 ところが、それからあと、この横断道は、鳴門から、徳島、小松島、阿南といちばん人口が多いところなのです。徳島は4つしか市がありませんが、市部を連結する高速道路というのが全然できていない。しかも、県都からも明石海峡大橋と繋がっていない、というような状況にあるわけです。これを一刻も早く整備をしていかなければいけないと思っております。

 ただ、第三者機関ということでこれから議論されるわけですけど、私は是非声を大にして言いたいのは、第三者機関の人選に東京の学者・先生だけが議論するというのでは困る。やはり、地方の立場も充分に理解している人が是非第三者機関に入ってほしい、ということをいつも申し上げているわけです。
 

(司会)
 高知の橋本さん、高速道路の延伸がちょっと危うい感じになってきている。それから、公共事業に関わる比重が非常に高知は高いのですけれども、これから先の「自立」という意味でも非常に厳しい状況ですよね。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 高速道路の問題と他のいろいろな公共事業とはちょっとレベルの違う話だと思うのですが、高速道路というのは、やはり国が責任を持ってやり遂げていただく仕事だと思うのです。

 前に、知事会と総理との懇談会があったときに、総理が「自分の進める改革は、民間にできることは民間に任せ、地方にできることは地方に任せる。こういう考え方なのだ。」ということをおっしゃいました。それはそのとおりだと思うのです。誰も反対しません。

 けれども、日本の国づくりというのは民間と地方だけでできているわけではなくて、そこにはやはり、国の役割、国がやるべきことは何かということがきちんと定まって、そこから、そうでないことは民間と地方でどうやっていくか、ということになると思います。

 そうすると、高速道路というのはあくまでも国でやっていくべきもので、これをどういう手法でやるか、つまり道路公団でやっていくかどうかというような特殊法人の見直しの話とは全然レベルの違う話なので、その辺が一緒くたになっているのがおかしいと思います。

 それから、公共事業に関しては、これだけ国も地方も財政が厳しくなってきているときだから、それぞれにやはり努力をしていかなければいけないと思います。本県も本県なりに努力をしております。そういう中で、公共事業に依存する率が本県は非常に高いわけですから、
それをどう構造転換をしていくか、また、その構造転換をするときにどうやってソフトランディングをしていくか、また、これまで建設業などに携わっていた方に別のことを研修していただくか、そういう仕組みがこれからは大切だと思っています。
 

(司会)
 いろいろな四国の抱えた問題に対して、4県に知事皆さんが一緒になって訴えたりしていると思うのですが、真鍋さん、その効果をどんなニュアンスでつかんでいらっしゃいますか。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 やはり、いろいろな方と話をしますと、四国は道路を含めまして、公共投資が遅れているということを、ある程度は理解していただいていると思います。

 今お話にありましたように、高速道路は全国繋がって、四国は特に8の字で繋がってはじめていろいろな効果が出てくると思いますので、是非これは仕上げなければいけないということで、4県連携し要望しております。

 それから、他の公共事業についても、特に四国では水の処理、公共下水道とか合併浄化槽とか、水をきれいにして流すという生活関連の公共事業が、香川県は特に遅れているのですが、4県とも遅れております。これは、瀬戸内海という閉鎖性水域を抱えていまして、この整備率を上げるというのは、我々非常に大事なことだと思いますので、特に生活関連、そういうものについては、環境問題とも関連して、是非これからまだどんどんやらなければいけない。また、治山とか治水にしましても、特に香川県はまだ水が足りないものですから、ダムを造らなければいけないというような状況です。

 したがって、もう公共事業はこれ以上いらない、ということが一般に言われるのですが、それは認識不足で、橋本知事からお話ありましたように、選択はしながらも必要なものはきちんと造っていくということが大事だと思います。是非、4県連携しまして、我々の主張が通るように頑張っていきたいと思います。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 愛媛県も深刻な気持ちでいます。大洲まで道路が通じたのですが、今、大洲から宇和まで工事展開中で、これは大丈夫だろう。ただ、宇和から宇和島までの部分が未着工ですので、今回国費投入を3,000億円廃止するということになって、来年度の事業量が前年度比77%、この傾向が続くと思うと、切り捨てられてはいけない。

 私は基本的には、四国を人間に例えてみれば、高速道路は人間の大動脈であって、8の字ルートが完成していないまだ不完全な、血液が充分に通わない人間であると思っています。
 ただ、国の事情も良く分かります。3県の知事とややスタンスが違うかも知れませんが、今の道路公団に対しての自治体の負担は法律上認められておりませんけれども、このような状況ならば、宇和から宇和島までの路線が費用対効果があわないというならば、若干地元負担としても、愛媛は負担を覚悟のうえででもこれは完成させてもらいたい、そんな気持ちです。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 それは、高知県も同じ気持ちです。要は、計画は計画として実現をしていただきたい。その手法をどうしていくかとか、財源負担をどうしていくかというのは、充分議論の余地があると思うのです。ただ、ここで計画を止めてしまうというのは、道路はネットワークをつくってはじめて意味があるわけですから、問題があるのではないかなと思っています。
 

(司会)
 公共投資に頼らざるを得ない、という状況もあるかと思うのですけれども、そういった体質を脱却する妙案が何か特にないでしょうか。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 それは、短期的な妙案というのはなかなかありません。公共投資は公共投資で、先ほど真鍋さんが言われたように、選択をして重点を絞っていって、少しでも倹約できるものを、先ほど言いましたような産業の構造転換に使っていくということが、予算の使い方の知恵だと思います。

 そうした中で、それぞれに情報化を使うとか、「環境」というキーワードを使うとか、また、様々な大学などとの連携を使うとか、いろいろな工夫を今しているところではないかと思います。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 予算の問題としては、大きな金額を占めるのは今、日本では公共投資と保健福祉なのです。ただ、保健福祉を切れないとするならば、限られたパイの中では、公共投資を縮減していかなければいけない。それで、ぎりぎりの努力をしたうえで、きめ細かく、他のところは、いろいろな事業が展開できる。

 ですから、どの程度のスピードダウンをし、どの程度で我慢するのか、その中でウェイトは何が高いのかといえば、公共事業の中で愛媛県にとっては高速道路がいちばんウェイトが高い、ということを申し上げています。
 

(司会)
 県が負担をしてでも高速道路を延ばしたい、というお話があったのですけれでも、真鍋さん、香川の場合はどうでしょうか。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 香川の高速道路、今計画をしているのは一応14年度で大体でき上がる、こういう状況になっております。ただ、つながることによって効果が出てきますので、是非・・。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 徳島の場合には、人口がいちばん多い密集地帯に、全然高速道路ができていないというところがいちばんの大きな問題です。そういうことで、地元負担というお話もありましたけれども、地元負担を当然これからもやっていかないといけない。

徳島の場合は、海の上に埋め立てをして、そこに高速道路のインターを造るという計画になっていまして、埋め立てというのは、かなり県が負担して埋立地を造るということで考えているわけです。
 

(司会)
 ここまでは、「聖域なき構造改革」の中で四国の各県が様々な課題にどういうふうに向かうのかということを話し合ってきました。

 さて、「地方の自立」に向けて、4県がどのような協力ができて、何をしていこう、と思うのかということを話し合っていきたいのですが。

 今週、総務省から、去年12月現在の完全失業率が発表されました。右肩上がりになっておりまして、去年の3月までは4%台だったこの完全失業率が、4月以降の3ヶ月ごとは5%台に突入して、去年12月までの3ヶ月は全国と同じ5.6%、過去最悪の結果ということになっているのです。

 この他、四国各県の有効求人倍率も去年の夏以降、だんだん減少傾向にある。さらには高卒の、新しく職を求める人たちの就職先、これもなかなか厳しい、就職難ということがいえると思います。こういった状況をどう認識して、雇用対策にどう臨むのかを伺っていきたいと思います。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 高知県の場合、有効求人倍率は0.45とか0.44という非常に厳しい率になっています。こういう中で、景気というとやはり国の施策が大きく関わりますので、雇用ということに私たちの関心が集中すると思います。高知県では、県庁が人数的にも非常に多くおりますし、県庁が県内の経済に果たす役割は非常に大きなものですので、よくいわれる「ワークシェアリング」、仕事の分け合いということで、県庁でいろいろやっている事務なり現業なり、そういう仕事をアウトソーシング、外注するということも含めて、いかにワークシェアリングをできるかということを検討しております。

 今度の予算でもそれほど大きな額にはなかなかなりませんでしたけれども、職員にいろいろ知恵を出してもらって、ワークシェアリングを進めていこうと思っております。是非、各県でもそういうことをやっていただいて、お互いこういうことができるということが分かってくると、県庁の仕事のワークシェアリングという形で一定の雇用が創っていける面があるのではないかと思います。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 もちろん、今の緊急雇用対策その他で、例えば学校の補助員であるとか、あるいは森林補助員、あるいは警察相談員とか、いろいろな形での短期的雇用、セーフティネットをやろうとしています。けれども、これも6ヶ月とか1年間の雇用ですから、そういう意味でワークシェアリングも一つの方法なのでしょうけど、この問題は抜本的に考えないと基本の病気が治らないので、薬を塗っていてもそれは短期的な話ではないのか。最後はどうしても、雇用を満たすための産業の創出しかあり得ない。

 これは愛媛県だけの事情かも分かりませんが、平成8年が県民所得のピークだったのですけれども、毎年1,200億円ずつ減っていって、一方、預金の残高は毎年1,200億ずつ増えていっている。ということは、前の年に比べて10万円収入が落ちると、20万円生活費を切り詰めて、10万円貯金している。ということを毎年毎年、平成9年以降繰り返している。ですから、そのお金が需要にまわるようなこと、これは情報通信もあるでしょうし、環境産業もあるでしょうし、あるいは福祉産業もあって、県民が求めている需要というのをつくり上げていただかないと、この問題は基本的に解決しないと思っています。これは、根本的な治療です。

 ただ、そうはいっても、当面どうするかということがありますから、今のワークシェアリングの問題も含め、県内での失業がたくさん出ないように、あるいは当面どうやって生活していくのかという視点で、ありとあらゆる知恵と工夫をしなければいけないだろう。ということで、第2次補正予算では68億円の対策を講じましたけれども、充分とも思いません。

 今、橋本知事がおっしゃったように、各県でこのような工夫をやっている、というのがあれば、4県がそれを全部取り入れて、思いつく限り、当面しのいでいかなければいけないだろうと思います。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 基本的には、加戸知事がおっしゃったように、長期的にベンチャー企業を育成するとか、あるいは、農業とか水産業とか、そういうものを振興して、あるいは地場産業を活かして雇用の場をどうやって確保していくかということだと思います。

 香川県は、有効求人倍率は比較的高いのですけれども、全国的にも割と高い水準なのですけれども、やはり同じように企業倒産とか工場閉鎖とか、いろいろなものがございまして、雇用情勢は深刻な状況なのです。したがって何とか、長期は別にしまして当面、企業倒産の防止とか、あるいは緊急雇用対策ということをやっていかなければいけないということで、中小企業対策、金融面とかいろいろなことでやっておりますけれども、それと同時に、雇用対策としてはセーフティネットということで、国からの交付金の事業も大いに活用して、いろいろな事業をやっているのです。

 特に、県独自で、讃岐うどんの職人を養成するのを始めてみた。結構たくさん来て、全員採用できないくらいの、あるいは県外からも応募があったりして、「県外の人はちょっと待ってくれ。緊急雇用対策だから、とりあえず香川の人に。」ということでやっているような状況です。そういう、ありとあらゆる、小さいことでもやっていかないと間に合わないと思いますので、そのようないろいろな知恵を出して取り組んでいるような状況なのです。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 各県と状況は同じで、徳島も非常に経済の状況も悪いし、雇用も非常に困っております。
そういう中で、緊急的な雇用対策は各県ともやっている、私どももやっております。そういった中で私どもは、県庁の職員に企業訪問をしてもらって、実態がどうなのかということをずっと調査をしてまいりました。

 そういうことの中から、いろいろな知恵をいただいたり、あるいは緊急経済雇用対策会議という格好で、経済界、労働界、あるいは学識経験者の方、みんなに集まっていただいて、いろいろ知恵を出していただいて、これからの緊急対策はもちろん、中長期的にどういう対策を講じていけば良いのかということをいろいろお伺いしたわけです。

 そうした中でいろいろ意見が出てきたわけですが、一つは、ITとかSOHOということで、そんな仰々しいことでなくて、例えば子育て支援ということで、ちょっと子どもの面倒を見てほしいというようなお母さん方の事情を全部インターネットに登録する。それから、そういうお手伝いができるお母さん方を、また登録する。それをマッチングするというような、そういうことを商売にするような企業を起ち上げる、それは誰でもできると思うのです。

 そういうSOHOとかITを利用した創業支援とか、既存の企業の経営革新とか、新しいビジネスプランを持って「このようにこの企業を再生したい。」とか「新事業をこのように展開したい。」ということに対して、ある程度無担保でも是非支援しようではないか、というようなことまで、来年度の予算で考えたいと思っております。
 

(司会) 
 四国4県で一緒になって取り組めるような雇用の対策といったアイデアは、どなたかありませんか。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 あまり前向きなアイデアではないのですけれども、今、緊急雇用創出の基金にいろいろな要綱上の縛りがあるわけです。例えば、4人のうち3人は、失業してハローワークを通っている方を採用しなければいけない。

 例えば高知県の場合に、間伐を是非この機会に進めたいと思ったのです。ところが、継ぎ足しの補助になるような仕事はできませんので、これまで国の事業に乗っかっていない8齢級、9齢級という、ものすごい太い、ちゃんとした木を間伐で切っていくという仕事をするときに、1人がプロの方で、3人が失業されている素人の方だと、とても危険があってできないわけです。そういうような縛りがあるためになかなか、この際一気に大きな木の間伐を進められないという問題が一例としてあります。

 多分他にも、この緊急雇用創出基金の、いろいろな要綱の縛りがあるために、やりたくてもできないということも一部にはあるのではないか。そういうことを持ち寄って、国に「もうせっかくこれだけ差し迫っての雇用を創ろうというための基金ですから、もう少し緩やかに使えないか。」というような要望をするということも、一つはあるのではないかと感じています。
 

(司会)
 「地方の自立」のためにといいますと、実はもう一つ課題があると思いますので、そちらに話を進めていきましょう。

 今、お話にあったように、景気も厳しい、雇用も厳しい、さらには地方の財政も厳しい。四国の市町村のなかには40%も村長さんの給与をカットするというような自治体も出てきています。一方で、行財政の効率化のために、市町村合併も進めていかなければならない。
 いろいろな改革、自立の時代に県民を引っ張っていくためには、行政自ら襟を正して情報も公開し、公平で透明感のある行政を進めていかなければいけないと思うのですが、この辺について、各県の皆さんの御意見を伺いたいと思うのですが。

 まず香川県の真鍋知事、今、香川県では、県の警察本部とか教育委員会で不正経理の疑惑が出まして、非常に大きな問題になっていると思うのですが、こういうことを踏まえまして、公務員倫理とか情報公開、これについてはどういうお考えをお持ちでしょうか。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 香川県では今御指摘ございましたように、県庁生協を通じた物品購入に関して、管理監督の立場にある職員が不正、あるいは不適切な経理を行って、昨年末に懲戒処分を行ったわけです。職員に対しては、公費の大切さや適正執行ということを、今までも随分、機会あるごとに喚起してきたのですが、このような事件が起こって、県民の皆さんの信頼を損なうような事件が起こったということは、本当に県民に対して申し訳なく思っておりまして、県民に心からお詫び申し上げたいと思います。

 今、他にないか、ということで調査をしておりますので、できるだけ急いで調査を終えて調査結果を公表し、また、それに応じて厳正に処分なり対処していきたいと思っております。できるだけ情報公開をしながら、そういう適正化に努めていきたいと思っております。
 

(司会)
 高知県の橋本知事、高知県でも去年、副知事らによる巨額の不正融資事件があって、県を揺るがす大きな事態となったのですが、この経験を踏まえて、情報公開と公務員倫理のあり方についてはどうお考えでしょうか。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 事件の内容について詳しく触れる時間がありませんけれども、反省点はいくつかあったと思うのです。一つは、特定の個人や特定の団体、そういう力に非常に弱い役所の体質、またもう一つは、そういう仕事の中で、若い職員がちょっとおかしいな、と現場の職員が感じても、なかなか上の方に言えずに、そのままどんどん仕事が進んでいってしまうというようなこと。もう一つは、今お話のあった、情報公開が徹底していなかったということです。

 若手の職員と話をしました。そうすると、いろいろそういう不安や不満が出てまいります。そうした中で、別の事業で「こういう事業もやっぱり少しおかしいのではないか。」とか「こういう点を少し変えたら良いのではないか。」という意見がいろいろ出てくるようになって、ちょうど今、知事査定をしているところですけれども、来年度予算に向けた中でも、そういう若手の職員からの忠告や進言で方向を転換した、というような事例もあります。

 また、情報公開のほうは、情報公開条例を改めてもっと明確なものに、もっと公開ということを原則にしたものに変えて、その改正した条例案を提出したいと思っています。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 愛媛県でも去年、県ではないのですが、松山市のほうで職員の不祥事等々がございました。基本的には私は、公務員とか行政組織のこのようないろいろな問題は原点で考えなければいけないので、古い言葉を使いますが、中国の范仲淹の岳陽楼記の中で「天下の憂いに先んじて憂い、天下の楽しみに後れて楽しむ」というこの原点が、職員にあり、組織の中に気構えが共通していれば、起こり得るはずがないことだと思います。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 私どもの県でも県庁の爆破事件が起こりまして、これは県民の皆さんに本当に申し訳ないと思っております。ただこれは、構造的、組織的なものではなくて、個人の問題だと思いますけれども、やはりそういう個人個人の悩みとか、生活行動でどこかおかしいところがないかというのは、常にチェックできるような体制を整備するということが大事ではないかと日ごろ考えております。

 情報公開ということにつきましては、情報公開条例も改正をいたしまして、かなり対象範囲も拡大をし、県民の皆さんの知る権利と、あるいは説明責任ということも明記をさせていただいたわけですけれども、単に、情報公開というのが求められれば公開をするというのではなくて、積極的に県が県民の皆さんにこういう情報を提供するという姿勢が大事だと思います。

 それとともに、もう一つは「パブリックコメント制度」ということで、いろいろな行政側の計画に対しまして、県民の皆さんから御意見をいただいて、それを積極的に採用していくという姿勢が求められているということで、これから大いにそういう方向で頑張っていきたいと思っております。
 

(司会)
 では、これからは、今後、中期的・長期的に四国をより良くしていくために、4県が協力して何をしていったら良いのか、ということを話し合っていきたいと思います。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 さっき、ちょっと、間伐の話をいたしました。それから、真鍋知事からも「水」と「みどり」の条例を是非、というお話がございました。都市部と山間部とではやはり、いろいろな思いの違いがありますけれども、何とか都市部と山間部をつないで、森林の保全とか森林の大切さを考えるきっかけづくりができないかなと思っています。

 地方分権が進む中で、法定外の普通税・目的税が地方でも非常につくりやすくなりました。そうした中で、税金を取るための税金をつくるところがいっぱいあって、やや、地方分権から見るとどうかな、と思うこともありますが、それは別にいたしまして、本県で考えたときに、森林を保全するための水源を涵養する新しい税を、街で水道を使っている方、またもう少し幅広い県民でも良いのですけれども、薄く広く負担をしていただいて、森林の維持管理に充てる、という仕組みが採れないかなということを考えています。

 ただ、香川県さんのように、都市というか、街の多いところで、特に早明浦周辺であれば直接恩恵をこうむっているというふうに思われるでしょうけれども、これが室戸とか、四万十の流域の森林に使われると、なかなか理解が得られないという問題点はあると思うのです。 

 けれども、こういう水源涵養税的な考え方を是非4県で、全部が一緒のものになればいちばん良いのですけれども、例えそうならなくても考えていければ、四国という島のなかで、緑をどう守るかということで全国に情報発信できるのではないかなと思います。
 

(司会)
 今のこの水源税の話は、水の大切さを県の皆さんに知ってもらいたい気持ちがあって構想を立てられていると思うのです。水といえば、香川県とか愛媛県ではよく問題になるのですけれども、この水源税の考え方について、加戸知事はいかがお考えですか。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 私は賛成でして、去年も言いましたが、「橋本知事、トップバッターになってください。」と。こちらは2番バッターか3番バッターか分かりませんがついていきますよ、ということを申し上げているのです。

 実は昨年、愛媛県は「森林蘇生元年」とちょっと仰々しく銘打ちまして、肱川といういちばん大きい河川流域の水源の森づくりという事業で、5ヵ年で72億円投入して事業をスタートさせたのです。
 それを全県下的に広げていきたい。ただ、今度は特に放置林の問題をどうするかということになりますから、森林所有者の理解が得られれば、これも特に下流域の自治体からも賛辞を得ながらやっていきたいと考えております。当面は今の制度にリンクした中で、精一杯やろうとしていますけれども、税源的にいえば、今の森林税、あるいは水源税というものの仕組みが将来なければ、なかなか進度が進まないのだろうと考えております。

 正直言って、高知県よりはまだ、愛媛県の財政状況はやや良いので、苦しいほうからスタートしていただいた後、それを参考として後に続いていこう、そんな考え方でおります。とても必要なことだと思っております。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 私は個人的に、林野庁にいる頃、国のほうで水源税を担当しておりまして、あのときには実現できなかったのです。それはやはり、いろいろな税を取られる人の意見がございました。あのときはちょっと時機尚早だったのかな、と思いますけれども、しかし、だんだんと森林の大切さとかが理解を得られてくるようになったと思うのです。そういう意味で、必要性というか、その趣旨は非常によく分かるのです。

 今年度中の3月に、水資源大綱というのを香川県は持っているのですけれども、香川県は水が足りないものですから、大綱を作ってダムを造ったり、あるいは節水型の生活をするとか、緊急時・渇水時の対策とかいろいろなものを盛り込んで作ろうとしているのです。

 水源地域、早明浦ダムのところに、今まで子どもたちが行って木を植えたり、地元の方と交流するとか、バスを仕立ててそんな事業もやってきたのですけれども、そろそろ思い切って今お話があった水源林整備、それに対し金額は大したことはないのですが、少し他県の水源地にもお金を出したらどうか、と。
実は今、私の段階で予算調整が始まっているのですが、その中で、そういうことをやってみたらどうかということを検討中なのです。そんなことで、早ければもう来年度からそういうものを予算化したい、ということで取り組んでおります。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 本県も水源税というのは将来的にどうしても必要になってくるのではないか。間伐は非常に遅れているので、間伐をきちんとやって森を守っていくということが大変大事になってくるわけで、そのためにも、この水源税というか、森林税というか、そういったものはやはり大事なことだと思っています。

 ただ、これは県民の意識を無視して、無理矢理に税を設けますと、また非常にリアクションがあるということで、昨年の暮れに意識調査をかなりのアンケート数でやっております。その集計を今、やっているという最中でございまして、そういう県民の理解度、あるいは意識を充分踏まえたうえで、どうするかというようなことの方向性を出していきたい、と思います。

  けれども、基本的にはやはり、間伐を進めて森を守っていくということは非常に大事なテーマでございますから、そのための財源を生み出す努力をしたい。できれば、四国4県共通で一緒にできれば良いわけですけれども、高知が先行する、あるいは徳島が先行した後、そういったある程度の状況が、地ならしができて「4県共同でやろう。」ということになっても、もちろん良いと思います。それは後で調整できることだと思います。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 これは、4県でやるのにふさわしい事業だと思っています。愛媛県の場合、肱川流域、重信川流域というのは県内に水源があって、県民が受益者ですけれども、四万十川の上流、あるいは仁淀川の上流、吉野川の支流の銅山川というような形で、ある意味では、4県が総合的に考えて仕組みを作り上げていって、自分のところのためだけではない、四国の山のため、四国全体の水という視点での取り組みにいちばんふさわしい事業だと思っています。
 

(司会)
 四国は自然、環境を大切にする地域ですということを全国に発信する、それは一つ四国の顔になるかも知れませんね。前回の知事対談の中で、四国の顔を持ってくださいという話があったのですが、それも良いかも知れませんね。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 徳島で「リサイクルネット徳島」というのを立ち上げて、実は廃棄物とか、廃棄物の再生品を出す人と、それを受け入れたいという人を、インターネットに事業者を全部登録するわけです。どういうものを出したいか、その方はどこに住んでいるか、どういう事業をやっているか、とお互いにマッチングをするということをやっと立ち上げたのです。

 これは、徳島だけでやるのではなくて、四国中で廃棄物の循環型社会を構築するためにも、四国中でやったほうがもっと効果が大きいと思うのです。徳島でやっても30件とか40件とか出てきますけど、もっとたくさん出てくる。

 例えばどういうことをやっているかと言いますと、農業用の廃ビニールがありますが、これはどうしようもないので、昔は埋め立てたり、焼却してダイオキシンがたくさん出るということで、大変困ったものだったのです。
 これを再生処理する工場で全部回収して再生処理し、同じように農業用のシートにしたり、電線の被覆のためのビニールにしたりという、そういった再生をするということもやっています。いろいろなことでアイデアを出していって、四国全体が循環型社会になって廃棄物が減るように、ということを考えていくことは大事なことだと思います。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 廃棄物の問題は、愛媛も今このような問題があります。企業にお願いして、ペットボトルの再生でワイシャツであるとか、いろいろな部品の原料としてもらっているのですけれども、実はペットボトルの集まりが悪く、採算に乗らない。だから、四国のペットボトルを全部持って来ればペイする、と。ですから、そういう再生工場と、そこへゴミを分別収集して供給するシステムとをリンクさせなければいけない。

 例えば、愛媛県では、ビニールハウスのビニールの処理に困っています。仮に徳島でやっていただくならば、県内ではそれを集めて徳島に持って行きますという形で、これも4県が廃棄物の資源供給側と再生処理側とリンクさせる。それは、4県で効率的にできることではないかなと思います。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 やはり1県だけではなかなか、原料として採算ベースに乗らないということもあると思いますので、是非そういう連携をしてやっていく。四国というのは、自然に恵まれて非常に美しい所なのですけれども、お遍路さんが来て、「缶とか瓶とかが捨てられている。」とかいう指摘も再々いただくものですから、そういうリサイクルがうまく確立すれば、きれいな自然が非常に良い四国になると思いますので、是非一緒になってやっていきたいと思います。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 今のペットボトルで言いますと、高知県の、元々は紙を作っている会社ですけれども、その繊維を扱う技術を活かして、ペットボトルを粉砕して、繊維状にして、そして水切り袋を作るというリサイクル商品を出している会社があります。

 ところが、ペットボトルの粉砕をする企業がこれまで四国にありませんでしたので、中国地方のほうの会社に出して、また持ち帰って作るということをしています。愛媛のその企業がどういうところまで、どういうことをやってくださるかは分からないのですけれども、それは是非、そういう組み合わせができると思います。
 それから、本県で言えば、深層水などでいろいろ、ペットボトルを相当使っておりますので、そういうことでも、ペットボトルの再生なんていうのも一つ良いことかなと思います。
 

(司会)
 今までの話し合いをもとに、改めて四国をどういう国に育てていきたいかということを一言ずついただければと思うのですが。
 

(圓藤寿穂 徳島県知事)
 どういう国に、というイメージはなかなか分かりにくいのですけれども、私はイメージとしては、それぞれの地域、それぞれの企業が切磋琢磨して大いに競争する。お互いに個性を磨いて魅力を増していく、競争力をつけていく、これが大事なことなのです。

 ただ、全体として、相互に連携協力をするということも非常に大事なので、四国全体で競争するだけではなくてお互いに調和を図っていく、ということがこれからの四国の地域づくりにとって大事なテーマではないかなと思います。弦楽四重奏で言うと、バイオリンとビオラとチェロです。これが非常に調和がとれているということが、非常に大事なことなので、4県共同していろいろな協調の精神で、調和ということを一つのテーマにしていきたいなと思っております。
 

(真鍋武紀 香川県知事)
 先ほども言いましたけれども、四国というのは自然に恵まれていると思うのです。この自然を大事にして、「みどり」とか「水」とかをきれいにして本当に良いところに、また、人々にたくさん来てもらえるような魅力のある、そういう意味では、先ほどの話にも関係するのですが、観光面でもう少し具体的な協力を、連携を強めていきたいと思います。
 

(加戸守行 愛媛県知事)
 やはり四国は八十八ヶ所を持つ「いやしのくに」であり、ある意味では「安らぎ」、これが基本的なコンセプトだと思います。そういう意味で、真鍋知事がおっしゃったような、観光では4県ではスクラムが組める、また、たまたま「K」がつきますけど、同じく交通ネットワークという点では、四国の8の字ルートをはじめとして協調精神で進めること、お互いの交流、そして効率的な四国、いうなれば四国州を目指してできることからやっていく、それが四国の未来だと思っています。
 

(橋本大二郎 高知県知事)
 同じことの繰り返しになりますけれども、さっきの雇用の緊急対策という意味からも、観光というのはかなり効き目のある経済政策だと思いますので、是非4県連携をしたいと思います。
 さっき圓藤知事のおっしゃった「四国パスポート」というのを、また番組が終わった後によく話を聞いて、実現に向けて取り組めればと思いました。
 

(司会)
 厳しい時代ですけれども、各県それぞれ個性を出しながら、また、協力をしながら、本当に住み良い豊かな四国をつくるための舵取り役を4人の知事の皆さんにはお願いしたいと思いますし、また次の機会に、さらに深めた話をしていっていただければと思います。(終)
 


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