平成12年高知県部課長・出先機関長会知事挨拶

公開日 2007年12月06日

更新日 2014年03月16日

高知県部課長・出先機関長会知事挨拶(平成12年4月13日)

 皆さんおはようございます。
 皆様方の中には、今年からこの会に参加をしていただく方もいらっしゃれば、また、昨年度から引き続きの方もおられるわけでございますが、それぞれ、またこれからの一年間、どうかよろしくお願いを致します。
 で、僕はこの2期8年の間、意識改革をはじめ県庁の改革ということを訴え続けてきました。そのことは、一定の成果はあったと思います。が一方で、ご承知のとおり、このところ県民の皆さんの不信を招くような様々な出来事が相次いで起きています。このことはとても残念なことですし、また結果として、この組織を預かる私の力不足もあったというふうに反省をしています。
 けれどもそれと同時に、私はこうした出来事は、県を良くしていくために自分にしかできない仕事を与えてもらっている、そういう風に前向きにとらえていきたいと思いますし、そのような思いで再発防止ということに取り組んでいくことこそが、県民の皆さんの期待に応えることにつながると思っています。
 で、突然何の話かと思われるかもしれませんけれども、僕は、NHKの記者時代にあの御巣鷹山に墜落をした日航のジャンボ機の事故の取材をし、その後の経過の取材をしたことがあります。その時の経験で、こうした事故が起きた時の日本とアメリカの対応の違いというのを非常に印象深く感じたことがありました。というのはどういうことかと言いますと、あの事故は、ご記憶の方もいるかもしれませんけれども、墜落をした飛行機が、それ以前に大阪空港でしりもち事故を起こしていました。その修理のためにアメリカのボーイング社の工場に機体が送られて、そこで後部座席の隔壁の修理をしたわけですが、この修理のミスが原因であの墜落事故が起きました。
 このため、日本側では遺族の方々を中心に、民事責任の追及はもちろんですけれども、その修理をした工場の、会社の、また個人の刑事責任を追及をしようという声が起きました。日本の考え方としては当然のことだったと思いますが、結果として刑事責任の追及には至りませんでした。
 その理由は何かと言うと、こうした事故の後処理に対する日本とアメリカの考え方の差、文化の違いがそこにあったからです。というのは、日本では刑事責任を追及をする、そのことによって一罰百戒ということが考えられるわけですけれども、アメリカではそうした一罰百戒の手法をとるよりも、むしろこうしたことを二度と起こさせないために、再発の防止をどうしていけばいいかということに重点が置かれます。このために、刑事責任の追求はしないということを条件にすべての資料を出させ、そしてすべてのことを証言をさせる、そのことをもとに再発防止の対策を立てていくというのがアメリカのやり方でした。私はこの事件の不起訴の処分の取材をし、そのことを報道する中で、こうした日本とアメリカの文化というか考え方の違いということを印象深く感じましたし、またそのことを報道のコメントの中でも強調したことを今も覚えております。
 ただもちろん、これはどちらがいいとか、どちらが悪いということではありませんし、また、オールオアナッシングで決められることではありませんので、すべての場面で刑事責任が不問に付されていいというわけではありません。けれども、自分はこうした取材の経験を通じて、様々な事故や事件が起きたときに、まず再発の防止のために何をすればいいかということを考えるべきだなということを感じました。
 ですから、知事になりましてからも、出張旅費の問題、また食糧費の問題等々が指摘をされたときに、それぞれの問題に関わった職員の個人的な責任を追及し、一罰百戒の手法をとるのではなくて、組織として二度とこうしたことの起きない体制をとっていく、再発防止の体制づくりということに力を入れて取り組んできました。ですから、今指摘をされている様々な問題に対しても、私はこれを県庁の仕事の仕方を変えていく、県庁の改革のいいきっかけだと前向きに捉えていきたいと思っています。
 もちろん、反省すべきはきちんと反省をしていかなければいけません。しかし、今回指摘をされたようなことに対しても、情報公開の徹底であるとか、制度融資の見直しだとか、更に言えば、同和対策事業という名前で行われてきたことが本当に人権問題に対応することだったのかどうか、こういうことをきちんと見直して、再発の防止の対策をとっていくことこそが、県民の皆さんの期待に応えていくことではないかと私は思っています。
 一方、先日判決のございました、元県の幹部職員の事件等々に端を発して、県でもこの4月から県の倫理条例が施行をされました。このことは、大変重く受け止めなければいけませんし、また、こうした事件の過程であった県の組織管理上の問題点というものも併せて重く受け止めなければいけません。が、それと同時に、これからの行政というのは、この行政の枠の中だけで、職場の中だけで閉じこもっていいというものではありません。むしろ、積極的に仕事をしようとすればするだけ関係の住民の方々と、また関係の業界、産業界の方々と連携をとり交流をし、意思の疎通を図るということが必要になります。
 こうした意味で、前向きにそのような仕事に取り組んでいこう、また、県民のために汗をかいていこう、そんな職員が仕事がしにくくなるような、今後ルールづくりに、規則づくりになってはならないということを感じますし、またそのことが、県民の皆さんのためにむしろ結果的にはなる、というふうに思います。
 併せて言えば、悪いことをしないだけが、県民の皆さんの信頼の回復につながるわけではありません。むしろ、プラスの仕事をもっともっとしていけるような条件を作ることが必要であろうと思います。そういう意味で、これからこの倫理条例の規則作りが始まるわけですけれども、そのことに我関せずでいて、できあがってからなぜこんなルールになったの、と言うのではなくて、これからの住民や、また、それぞれの関係の団体や企業との連携、交流の中で、どういうルールが望ましいかということを考えて、事前に提案をしていく、そのような積極的な姿勢が欲しいと思いますし、そうした形で、この倫理条例の議論というものも前向きにつながっていけばな、というふうに思っています。
 それと同時に、何かこうした問題が出た時に、内部の管理を強化をしてそれを押さえ込んでいくという、管理型の発想だけで本当にことが根本的に解決できるだろうかということを思います。そこで、私が3期目の課題として掲げた「内政を重視する」ということを思い出していただきたいと思いますが、このことの意味は、私自身の2期8年の経験と反省ということを踏まえて、この県庁という組織の組織経営の在り方を抜本的に見直していきたい、そういう意味合いを込めたものだと受け止めていただきたいと思います。この組織運営を抜本的に変えていく、このことこそ、一見遠回りに見えても、県民の皆さんの信頼を回復していくための、私は、早道ではないかと思っています。
 で、具体的には、こうした県の組織運営を変えていく、そのための手段として、行政の経営品質の向上システムというものが取り入れられています。今日も、この後、この行政の経営品質向上システムについての報告、また講演があるというふうに聞いていますし、また、このことは、昨年も1年間試行しましたので、皆さん方の頭の中に入っているかとも思いますけれども、ここでもう一度復習をさせてもらいたいと思います。
 このシステムは、自分たちの仕事の、つまりサービスの相手は誰か、そしてそのサービスの相手のニーズ、求めているものは何か、一方、組織の運営のビジョンはどうなっているのか、そのリーダーシップはどのようになっているか、その中で職員の人材をどのように育成をしようとしているか、そのための学習環境は整っているのか、さらに、仕事を進めていく時のスピード、費用対効果をどのように計り、その成果はどうか、このような組織経営のために必要な、基本的な7つの事柄で35の質問を設けています。この35問のシートをもとにして、それぞれの所属の中で議論をしていただき、そしてその中で、自分たちの弱いところ強いところを見つけて、それを改善につなげていく、というのがこの行政の経営品質の向上システムです。
 このシステムを更に外にも公表をしていくことによって、ああ、他の所ではこういうことをやっているのか、ということを学びお互いが伸びていく、お互いがこの改革を進めていくということにもつながるであろうと思います。それだけに、昨年1年間の試行を通じて、外部の審査を受けるということに積極的に手を挙げてくださった所属が6つあった、出先の事務所2つと、本庁の中の4つの組織ですけれども、6つあったということは、大変嬉しいことでしたし、私は、こうした各所属のリーダーの方々の積極的な姿勢というものを評価したいと思います。
 ですから、この後、そうしたことの報告、また講演があるわけですけれども、皆さん方にも是非、漫然とまたこの話かという意味で聞くのではなくて、このことが自分たちの職場にどう活用していけるか、そういう前向きの姿勢で、是非話を聞いていただきたいと思います。
 一方、この行政の経営品質の向上システムを試行し、内部点検をするという作業をした後でアンケート調査をしました。このアンケートを見ますと、労力をかけた割にあまり効用はなかったという否定派、マイナス評価のグループと、労力をかけただけ一定の効果があったという肯定派、プラス評価のグループがほぼ相半ば、半々になっています。が、このようなアンケートをしますと、大体あまり効果はなかったけれども、まあ、効果があった方に丸をしておこうかという人も多いと思いますので、実際には肯定派、プラス評価というのはもっともっと少ないのではないかと思います。ですから、この経営品質ということをもっと真剣に受け止め、前向きに進めていただくためにも、先ほど申し上げたシートの内容などを改善をしていかなければいけないと思っています。
 が、従来、お互いが目標を設け、それに向けて切磋琢磨していくいい意味での競争という概念もなかった、また、自分たちの仕事のサービスの質は何かということを考える環境もなかった、そういう行政の中にこのようなシステムが広がってきつつあるということは、私はとても大切なことだと思っています。
 もう一つ、このアンケートで興味深いことがありました。それは何かと言いますと、本庁といわゆる出先との間で、先ほど言った肯定、否定が随分違っていた、むしろ逆転をしていたという点です。というのは、労力をかけた割にあまり効用がなかったという否定派、マイナス評価は、本庁の場合には3分の2以上になっています。けれども逆に、いわゆる出先の事務所、出先の機関の場合には、労力をかけただけ一定の効用があったという肯定派、プラス評価が3分の2近くになっています。このことは、やはり出先の事務所の方々の方が、県民の皆さんと近い距離にいるだけに、県民サービスとか顧客満足ということを明確に認識しやすいそのことの現れではないかと思います。また、そうした中に、従来本庁の仕事というものを重視をし、そのことによって、県民サービスとか顧客満足ということから視点が離れてしまった管理型の人材を登用してきた人事の評価の在り方の問題点も垣間見えるのではないか、というふうに私は思います。
 この行政システム改革の中の行政の経営品質の向上システム、これは、今年度からは全庁的に取り組むことになっていきます。ですから、経営品質の意味は何か、また、そこでの設問の意図は何かということも、もう一度きちんと研修をしていかなければいけないと思っていますが、管理職の皆さん方には、この経営品質の向上ということは本県の管理職にとっては基本だ、必須の要件だということを是非この場で知っておいていただきたいと思います。
 また、こうした経営品質の向上と同時に、私は、この春の人事異動の発表の際に、メールで、こうした行政システムの改革ということも含め県庁の改革ということを人事評価の基準、座標軸にしていきたいということを申し上げました。
 と言いますのも、冒頭言いましたように、この2期8年の間、私は意識改革をはじめ県庁の改革ということを訴え続けてきました。そのことは、一定の成果は上がっていると思います。けれども、組織全体の流れになっているかというと、まだまだ決してそうではないということを思います。では何故、組織全体の流れにならないのかということを考えました時に、先ほども言っておりますような改革への志、また改革への取り組みというものが、人事的にきちんと評価をされていなかった、そして従来型の管理的な人事評価ということだけが基準として残ってきた、このために大きな流れにならなかったのではないかと思いますし、また併せて、改革ということを期待をして、ある意味では「出る杭」になって頑張ってきた、また発言をしてきた人にとってはやや挫折感を味わうような現状になっているのではないかと思います。
 こうしたことから、私は、今後この人事評価の在り方というものを、抜本的に見直していく必要があると思います。が、そういうことをいいますと、皆さん方は現在の人事評価によって管理職になった方々ですから、内心やや穏やかならぬことがあるのではないかと思います。ですから、誤解のないようにもう一度申し上げておきたいと思いますけれども、それは、皆様方がこれまでそうした時代、またそうした環境の中で育ち、評価をされてきたということであって、だからそれがだめだということを言っているわけではありません。また当然そんなことを思っているわけでもありません。しかし、これからはこうしたこれまでの基準、座標軸というものを一度捨てて、違う座標軸をそれぞれの管理職の皆さん方に見つけていただく、そういう努力をしていただきたいと思うんです。などと言うと、なんかまた、小難しいことだな、と堅苦しく受け止められるかと思いますけれども、そうではなくて、そんな難しいことではなくて、ちょっと見方を変えてみる、そういうふうに捉えてもらえたらと思います。
 例えば、一人の子どもを見た時にも、その子どもを算数の点で評価をしていくのか、それとも足の速さで評価をしていくのかで、その子どもの評価は変わってきます。このように、目の付け所、視点によって見方も評価も変わってきます。
 また、どこからものを見るか、そのものを見る位置、場所、視座によってもその見える形は変わってきます。例えば、円錐形は、上から見れば丸ですけれども、横から見れば三角形です。同様に、行政の立場でものを見るのか、県民の立場でものを見るのかで見える形は違ってくるだろうと思います。どちらがいいという意味ではありません。それぞれ違った見方というものを、知っておかなければいけないと思います。
 もう一つ、「視野」という言葉もあります。見る範囲でありますけれども、こうした視野を広げていくこと、見る範囲を広げていくことによっても見えるものは違ってくるだろうと思います。このように、目の付け所・視点、見る場所・視座、そしてその範囲・視野というものをちょっと変えていくだけで、これまで非常に苦しいなと思っていることが楽しくなったり、また、そうか、こういうやり方があったのか、という別の発想が生まれてきたりすると思います。
 また併せて、そのようにちょっと見方を変えることによって、ご自分たちの部下の評価というものもきっと変わってくるだろうと思いますし、そういうふうな柔軟な評価をしていくことによって、また幅の広い人材が育っていく、また育てていける管理職になっていただけるのではないかと思います。
 もちろん、こういうことを進めていきますためには、人事の申告書などにもきちんとその改革ということを項目として書き込むとか、また、人事行政の仕組みを変えていくということも必要でございます。が、そうした事務的なことだけではなくて、それぞれの所属を預かる管理職の皆さん方が、ものの見方を変えていただく、そのことによってはじめて組織全体の大きな流れになっていくのではないかと思います。
 繰り返しになりますけれども、そういう意味で皆さん方には、是非少し、これまでの座標軸とは違ったものの見方をしてみるということを積極的に取り組んでいただきたいと思います。

 積極的に取り組むということで言えば、今回の人事に当たっては、初めて課長の公募ということを試みてみました。これも私の舌足らずのメールのために、いろんな誤解を与えた向きはあろうかと思いますが、結果的に40人を超える方々からこれに関するメールやお手紙を頂きました。もちろん、このことに関しても、従来の年功序列の組織の中では、こうした形で手を挙げることは組織に軋轢を起こすということことになりますし、このようなやり方は組織の運営としてどうか、という疑問をお持ちの方も、多分大勢いらっしゃることだと思います。
 確かに、これまでの行政であれば、法律の枠の中で、また予算の枠の中で、大過なくことを動かしていく、このことでこと足りました。ですから、それぞれの所属長が個性を出す、価値観を表に出すということは、むしろ差し控えるべきだという文化があっただろうと思います。そうしたことを一面、否定するわけではありません。しかし、これからはそれだけではなくて、それぞれの所属の長の方、リーダーの方が、自分たちは自分たちの組織を、仕事を、こういう価値観で運営をしていくんだというリーダーシップを示していくことが求められる時代ではないかと思います。是非そのように、また前向きにリーダーシップを発揮できるような管理職に皆様方になっていっていただきたいと思います。
 と、改革改革ということを申し上げましたが、今年度は更に、財政構造改革、第二次の改革の最終の取りまとめもしなければなりません。また、全庁的にこの県庁の組織機構の改革ということにも取り組んでいかなければいけません。このうち、財政構造改革ということに関して言えば、第一次の財政構造改革で皆さんに大変なご努力を頂いた結果、県債依存度は10.1パーセントまで落ちましたし、また財源不足額も35億まで押し込むことができました。しかし一方で、県債残高は7,470億円と増加をしておりますし、また、財政調整のための基金もおよそ160億円程度に減少をすることが見込まれております。
 ですから、このままいきますと、平成15年度には財政調整の基金が底をついて、予算が組めなくなってしまうという厳しい現状にあることに変わりはありません。また、今のままこれ以上の経費の節減をせずに支出を続けていきますと、財源不足の額は、平成14年度には92億円になり、平成19年度には231億円に膨れあがり、その後10年間そういう状況が続いていくといった厳しい予測がなされております。
 こうした中で、今年度この第二次の財政構造改革の最終の取りまとめをしていくわけでございます。で、これまでにも切り詰め切り詰めをお願いをしてきましたから、大変難しい課題がいっぱいあろうと思います。けれども、このことは、将来の高知県のためには避けて通れないことだと思いますので、是非前向きの議論をしていただきたいと思いますし、そうした中で、サービスが落ちたと言われないような工夫をどういうふうにしていけばいいのか、また、弱者の切り捨てと言われないような工夫をどのようにしていけばいいのか、そういう心配りも是非お願いをしたいと思います。

 と同時に、予算ということに関連をして、二つのことを申し上げてみたいと思います。
 一つは事業評価のシステムということです。従来、事業評価のシステムと言いますと、その事業の良し悪しを客観的に評価をしていく、ランク付けをしていくための基準、システムだというふうに受け止められていましたし、私も高知県でもそういうシステムを作っていくんだなあ、というおぼろげな思いがありました。しかし、今年度の特別枠に関係して、事業評価のシステムを取り入れ、そのことを議論をする中で、高知県庁で目指している事業評価のシステムは、ただ単に事業の良し悪しの評価をする、ランク付けの基準なのではなくて、別の視点があるということに気付きました。
 それは何かというと、県民の皆さんに理解をしてもらうための説明が上手くできているかどうかという視点です。と言いますのも、県民の財産、生命を守るためには絶対に必要だというふうに、行政のプロが良心を持ち自信を持って提示をした事業であっても、そのことが地域の住民の皆さんの理解を得られなければ、住民投票にまで発展をしていくという時代でございます。ですから、その事業はいい事業だということに自信を持てば持つだけ、そういうことを感じれば感じるだけ、そのことをきちんと住民の皆さんに説明ができなければいけません。そういう意味で、高知県庁が目指している事業評価のシステムは、県庁の立場、行政の立場のニーズではなくて、県民のニーズは何だろうかというようなこと、またその事業は、他の同じような大体の事業と比べてどういう点に有利さがあるんだろうか、また、その事業を進めていく時の費用対効果はどうか、成功の見通しはどうかというようなことを、県民の皆さんから見て理解が得られるような説明ができているかどうか、このことに力点を置いているということを、是非感じ取っておいていただきたいと思います。
 今年からは、この事業評価システムの大きな柱の一つでございますタイムリミット制というものも取り入れられてまいります。ので、この高知県庁の事業評価のシステムというものが、県民参加型の行政を進めていくための大変大きな武器として育っていくように、是非皆さん方にもお考えをいただきたいと思います。
 もう一つ、予算ということに絡めて申し上げておきたいのは、予算の使い方、運用の仕方にもっともっと知恵を絞ってはどうかということです。と言うのは、これまでもこうした会でも申し上げたことがございますが、従来の行政というのは、予算づくりということに膨大な労力と時間をかけてきました。これは当然一面必要なことです。けれども、できあがってしまうと、もう後は使い切るだけという文化が続いてきました。しかし、高知県庁では、従来からの財政課を中心とした予算づくりを、各部局に予算調整の責任者を作りそこで一定まとめていただくという形に改めてきました。であるからには、今後、財政課にも、もちろん予算づくりに目を配っていただくことは当然のことですけれども、それだけではなくて、できあがった予算の運営、その資産運用のマネージメントということにもっと目を配っていただく、そういう仕事を是非していっていただきたいと思います。そのことによって、予算はもう使い切ればいいというのではなくて、もし、途中でだめだと分かれば、もう転用を考えていく、またもっと上手い使い方があるのではないかというようなアドバイスをしていく、更に途中で足りないと思ったら、もうここで、年度の途中でも更に追加をしていった方が事業が効果的なのではないか、というようなことを議論をしていく、そんな予算運用に変わっていくべきではないかと思っています。
 以上が、財政構造改革の話でございますが、もう一つ、来年度に向けましては、国の省庁再編の動きへの対応、また地方分権の動きへの対応ということを含めまして、この県庁の機構、組織というものを改革をしていく、抜本的に見直していくという仕事をしなければいけません。その時には、是非、先ほどの経営品質向上のことでも申し上げましたけれども、また、事業評価のことでも申し上げましたけれども、県民の皆さんから見て分かり易い組織は何か、ということも一つの視点として取り入れていっていただきたいと思います。

 以上、行政システム改革のこと、また、人事の改革のこと、財政の改革のこと、組織、機構の改革のことについて述べました。けれども、今年度はそれだけではなく、私が3期目の大きな課題として掲げました産業構造をはじめとする各分野の構造転換という仕事、また、先ほども言いました地方分権への対応といった仕事もあります。

 一方、ISOの14001を取得をしました。この取得の後を受けて、環境基本計画に盛り込まれた事業へこのISO14001をどのように普及をさせていくのかというようなこと、また、よさこい高知国体もいよいよ秒読みの段階に入ってきました。県庁全体で取り組んでいかなければいけない時期にきています。
 さらに、教育改革を更に一層進めていくという仕事、そして情報化の2001プラン、この2001年度の後を受けたポスト2001のプランづくり、その中で、行政の中での情報化をどう進めていくか、例えば情報公開、届け出、申請の電子化、また、庁内の決裁システムの電子化、このようなことをどのように進めていくかなどなど、課題としてあることはもう山積をしております。ですから、冒頭にも申し上げましたように、いろんなことがあります。ありますが、そのことを後ろ向きに捉えるのではなくて、是非前向きに捉えて、積極的にいろんな改革のきっかけにつなげていっていただきたいと思います。
 そういう意味で皆さん方には、年度当初に当たって、是非、気力を充実、気合いを入れてこれからの一年間の仕事に取り組んでいっていただければと思います。

 と、いささか、重い話ばかりを致しましたので、少し、軽い話題になるかどうかは分かりませんけれども、軽い話題に触れておきたいと思います。
 我が県庁にも、他の県から交流の職員としてきてくださっている方がいます。先月の末、そのうち愛媛県、広島県、岡山県、岐阜県の4県からきてくださっている職員の方々と懇談の場を持ちました。その中で、高知県庁の仕事の仕方、高知県庁の文化と、それぞれの県庁の仕事の仕方、文化にどんな違いがあるだろうという話が出てきました。そうしましたら、4県の県庁の職員の方々が口を揃えて、高知県庁は職員の上下の風通しが非常にいい、そのために非常に仕事に機動性があるのにびっくりをしたということを言っていました。そこで詳しく聞いてみますと、それぞれの県、どこでも県庁の一般の職員が、日中職場で課長と直接話をするということはもう一年中ほとんどない、仕事はいつも係長との対話で、係長が課長と話をし、課長が部長と話をするという縦のヒエラルキーがしっかりできあがっている。その点、高知県庁は、課長と一般の職員が自由に議論をしていく、こういう風通しの良さ、またその中からいろんな仕事が動いていく、機動力、機動性ということにびっくりしたという話をしていました。
 また、ある県庁の職員の方は、その県庁の仕事の仕方と、高知県庁の仕事の仕方を野球に例えて比較をしてくれました。で、その職員の方は、ご自分の県庁の仕事の仕方は、野球に例えれば高校野球だということを言われました。その心は何かと言うと、すべて監督、コーチのサインどおり動いている、だから、好きな球がきても、見送りのサインが出ていたらその球を振りたくても振れない、見送らなくちゃいけない。これに対して、高知県庁は大リーグと、その方は言いましたけれども、大リーグだ。で、好きな球が来れば少々高めのボール球でも思いっきり振っている。だから、当たれば怖いな、ということを思った。自分の県庁は確かにマイナスは少ない、ミスは少ないかもしれないけれども、それだけぐんと伸びるということは今の仕事の仕方ではないんじゃないか、ということを思ったという話をされていました。
 この話をある人にしたら、それは大リーグではなくて早朝早起き野球と同じではないかというお話もございました。けれども、それはともかくとして、こうした話というのは、私は目から鱗が落ちる気が致しましたし、そういう評価を受けているということも是非多くの県庁の職員にも知っていただきたい、と同時に、せっかく、やはり機動性、機動力があるというふうに評価をされ、風通しがいいと評価をされた組織の良さというものを生かしていくことを、やはり考えなければいけないんじゃないか、ということを思いました。
 また、機動力、機動性ということに関して言えば、機動性の悪い仕事をしているととんでもないことになる、という意味で、中国の言葉に「轍鮒の急」という言葉があります。「てつ」は轍、「ぷ」は魚の鮒、「きゅう」は急ぐという字を書きます。その意味は、車が通った後の轍に水たまりができて、そこに鮒が取り残された。その鮒を救い出すために、そこからわざわざ川まで水路を引こうとした。そしたら当然、その仕事は間に合わなくて、その間に鮒は干上がって死んでしまった。そのことから、何を今しなければいけないか、ということを考えずに漫然と仕事をしていると、せっかくやらなければいけないことができなくなってしまう、という意味に使われる言葉でございます。
 今年は、先ほど申し上げた様々なことに加えて、中山間地域の直接所得保障の制度も始まります。また、その中山間地域の一つである大川村では、再び人口が大台を切りました。こうした中で、轍鮒の急と言われるような仕事にならないように、議論は議論として必要ですけれども、今何を為すべきか、ということを考え、そして、そのことにスピード感覚を持って当たっていくような、是非、職場になっていただきたいと思いますし、そうした職員を人材として養成をしていただくことを管理職の皆さん方に重ねてお願いをして、私の話を終わらしていただきます。
 どうもありがとうございました。

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