平成13年高知県部課長・出先機関長会知事挨拶

公開日 2007年12月06日

更新日 2014年03月16日

平成13年高知県部課長・出先機関長会知事挨拶

平成13年4月10日

みなさんおはようございます。
 何か講演会の講師に呼ばれたような感じで、いささかやりにくい面もございますが、新しく部課長・出先機関長になられた皆さん、また、引き続きお願いをする皆さん、それぞれにこれからの一年間どうかよろしくお願いいたします。
 というように新年度始めに部課長・出先機関長の皆さん方にお話をするのもこれで10回目ということになります。この間、多くの先輩の皆様方が退職をされましたので、こうして壇上から見てみますと、私も最初のうちは若い部類に入っていましたが、もう今はほぼ同世代の中にあるということを実感をして10年という歳月を感じます。と同時に過去9回、何の話をしてきたかということを振り返ってみますと、テーマや表現の仕方に違いはあっても、行き着くところは意識改革の話ばかりしてきたんじゃないかと思います。よく飽きずに言い続けたものだと思いますし、お聞きになる方もかなりくたびれたのではないかと思いますが、そんなことを思いやれるようになったのも10年の歳月かなということを思います。
 ということで同世代の皆さんの中に立っている自分に気付く、また同じ事を耳にたこができるくらい繰り返しお話をしてかなり皆さん方がくたびれたんじゃないかと思いやっている自分に気付くということで、二つの「気付き」についてお話をしましたので、今日はこの「気付き」ということを一つのキーワードとしてお話をさせて頂きたいと思います。

 今、県庁をとりまく大きな課題の一つは、あの一連の融資をめぐる事件でございます。けれども、この一連の出来事を振り返ってみましても、いくつか気づく点がございます。その一つは、同和団体をはじめとする特定の団体、また、別件の融資の事件という形で取り上げられました特定の個人と県政との間の癒着、しがらみといった関係でございます。と言いましても、もちろん同和対策そのものを否定するつもりは全くありませんし、また、人権対策の必要性ということは、人一倍認識しているつもりでございます。が、過去の同和運動の歴史というものを振り返って見ますと、水平社の運動以来の初期の段階においは、高知市の長浜における教科書無償の闘争のように数々の人権上の成果をあげてこられたと思います。が、これが昭和40年代の半ば同和対策の特別措置法ということで特別対策が打ち出され、予算上のハードの事業と運動とがからみ合うようになった時点からかなりその質に変化が見られたのではないかと思います。そうした流れの中にあって、本来ならば弱い立場の方々のための運動であったはずのものが、あたかも強者の強い立場の運動かのように見間違う、そんな動きが出てきましたし、それを受ける行政の側にもその強さにだんだんと押し流されてきてしまったというような歴史が見て取れるのではないかと思います。
 こうした反省から同和対策本部というものを廃止し、また、今年度からは同和対策課も廃止をして人権課の中に位置づけることにしました。こうしたことによって団体対策になりがちだったのではないか、という同和対策を思い切って本来の意味での人権対策に切り替えていきたい、見直していきたいと思っています。
 次に気付いた点、これが一番大切なことでございますが、それは、情報公開がなされていなかったという点です。この一連の事件を振り返ってみます時に、事務手続きの問題等々、様々な問題が指摘をされると思いますが、そうした中にあって、県庁全体に、県の職員全員に県民の皆様に知らすことができないような、何かそれをちゅうちょするような仕事は絶対にしてはいけないという意識がきちんと確立をされていれば、このような事態には至らなかったのではないか。それが悔やまれてなりません。

 過去を振り返ってみますと、一昔前に役所で公務員が情報という言葉で思い浮かべたことは、情報の管理とか守秘義務という言葉ではなかったかと思います。が、これからは守秘義務というのは、あくまでも例外中の例外であって、原則は、情報の公開なんだ、ということをこの場で肝に銘じておいていただきたいと思います。ですから、審議会や委員会などでも、これを公開するかどうか、などということは、もうこれからは議論の対象にならない事だと思いますし、「公開の場での議論はいやだ」などと言うような方は、こうした委員会の委員になる資格はもはや無くなったと思います。あわせて、このような委員会が開かれる時、よく、冒頭の5分だけ取材をというような「あたま撮り」と言った言葉がこれまで使われてきましたが、このような言葉も今後死語にしていかなければいけないと思っています。
 また、何かやった後まとまった結果を公表していくという情報公開だけではなく、その動きの過程プロセスというものもリアルタイムで公表していくような情報公開になっていかなくてはいけないと思っています。ですから、例えば公的な性格を持つ団体であるとか、市町村長さんであるとか、議員さんであるとか、そうした方々からご要望やご提言を頂いた時には、何月何日、誰それさんから、こういうテーマで、こんな要望を受けたという事をホームページに逐次公表していくというようなことも今後は検討していかなければいけないのではないか思っています。
 既に知事室では、24時間インターネットでその内容を公表していくということをしていますが、これからは、「ここまでやるのか」と言われるくらいの透明性を是非、県庁の中に実現したいと思っています。

 また、この透明性ということに関連して、別件の融資で問題視をされました念書や覚書といったものを提出をして頂いて、県民の皆さんに公表するという事を約束をしています。もちろん念書や覚書といったものは、全てが不明瞭、不適切なものばかりではないことは、言うまでもございません。けれどもこうしたものを公表することによって、県民の皆様方が県政に抱いておられる疑念、不信感というものを少しでも打ち払って行きたいと思いますので、勝手に思い込んで、「これは公表しなくても」というふうに決め込んでしまうのではなく、「原則は全て公表していくのだ」ということを前提にこの問題に当たっていただきたいと思います。
 また、こうしていくことが、議会でもその旨申し上げましたけれども、これからの時代を担っていく若い県庁の職員の皆さんにとって、仕事のしやすい県庁をつくることにつながると確信をしています。

 もう一つ、一連の事件について、気付いたことがございます。それは、公益性の認定、また、それに基づく裁量権というものが、どこまで行政に任されているのだろうか、ということでございます。
 と言いますのも、先程も言いましたように、一連の事件を振り返ってみれば、その事務手続きなど、様々な問題点が指摘をされると思います。けれども一連の流れの中で手続きは行われ、そして400人いた雇用を守っていかなければいけないといった、公益性の認定の下に判断が下されております。
 こうした行政の事務が背任に問われるといった状況を想定してまいりますと、今後、行政がこれまで県民の目に見えないところで、ブラックボックスで行っていた公益性の認定というものを引き続き目の届かない所で進めて良いのかどうか、むしろいけないのではないか、ということを感じざるを得ません。例えば千葉県の我孫子市では、補助金をいったん全てゼロにして補助金を公募制にした上で、5人の市民による公益性の認定委員会を設け、そこで一定の基準を作って、補助金の申請を受付け、その公益性の認定委員会を通ったものを交付するというシステムを導入しております。
 いきなりこういくかどうか、ということは別にしましても、ただ、融資に関してとか、補助に関してという分野別ではなくて、もう行政全体にこの公益性認定の委員会のようなものが必要な時代になってきたのではないかと、いうことを感じます。
 このように言いますと、「ますます仕事がしにくくなってきたな」というように感じられる方も数多くいらっしゃると思います。が、私はこれも新しい時代に向けた未知への挑戦だと思って前向きに取り組んでいきたいと思っています。
 このような様々な出来事をこの一連の事件の中で感じましたが、今申し上げました、公益性の認定委員会というものを別の視点から考えてみれば、従来申し上げてきた県民参加、住民参加ということの延長線上に位置付けられるのではないかとも思います。

 そこで改めて県民参加、住民参加の意義は何だったのだろうという事をもう一度振り返ってみたいと思いますが、行政にとっては私達の仕事を県民の皆さんの視線でもう一度見直してみるというのが、まさに県民参加の行政の一つの意義ではなかったかと思います。
 例えば、ここ数年続けております県民参加の予算づくりのモデル事業の中でも、県の職員の方々から「こんな事業はもうやっている」という話がいっぱい出てきました。しかし、その内容を一つ一つ見てみますと、また、参加をした県民のみなさんの声を聞いてみますと、仕事の重点の置き所、また、その仕事を進めていくプロセスのあり方などで、県の職員の考え方とはずい分違う点があることに気付きます。このように、これまで気付かなかったことに気付く場というのが、この県民参加の行政の一つの目的、意義ではないかと思っています。と同時に、行政が気付く、ということだけではなく、県民の皆様方も、こうした県民参加、住民参加の場を通じて、様々な事に気付いていただくのではないかと思います。というのは、先程も例にあげました県民参加の予算づくりのモデル事業の中でも、参加を頂いた県民の方々からは、「予算というのはただ単に要求するだけではなくて、それを実施する時に自分たちが何をしなければいけないか」、そこまで考えられるようになった、という気付きの話を聞くこともできました。

 このように県民参加、住民参加というものは、お互いが気付いていく良いきっかけづくりになるのではないかと思っています。また、先程、念書や覚書を公表していくという話をしましたが、この覚書の中には、いろんな事業を進める時に、それぞれの地区にお約束をしたといった文書も数多く含まれています。ですから、こういったものを次から次へと公表していったら、「あそこでこんな約束をしているのであれば、うちでもこれをやってくれ」というような要求が次から次へと出てきて、収拾がつかなくなるのではないか、という思いを持っておられる、現場の事務所の管理職などは特にそうではないかと思いますが、そういう職員の方も多いと思います。確かにその通りだと思いますし、こういう文書が次から次へと表に出て行けば、一時的に事業がストップするかもしれません。しかし、私達の仕事というのは、「お上」の意識を持って上から下に何か事業を押し付けるのではなくて、県民の皆さん、住民の皆さんの代表として、その代わりに道をつくったり、河川を改修したりという仕事をしております。にもかかわらず、近くでこういう事業が行われるのならば、「これもやって欲しい、あれもやって欲しい」と言って次から次へと要求をされるというような意識も、行政の側が意識を改めるのと同時に県民の皆様方にも改めていただく時期に来たのではないかと思います。ですから今申し上げたような、地区、地域へのお約束事を書いた覚書も次々と公表していき、そして、「このような事業にこんなことまで要求があったのか」という事を多くの県民の皆様方に、知り、気付いていただくことも、これからの新しい公共の形、新しい自治というものを作っていくために、避けては通れない課題ではないかということを感じております。

 このように情報公開にしろ、また、県民参加、住民参加の行政にしろ、大変時間もかかる手間もかかることばかりでございます。しかし、こうした手間、時間というものをいとわずに新しい行政の仕組みを作っていく中で、本当の意味で、効率的で効果的な公共の形が作っていけるのではないかという意味合いで、先程、例に出しました公益性の認定委員会などということも含めて、これからも積極的に県民参加の行政というものを押し進めていきたいと考えています。

 といったことで、もう一度この10年を振り返ってみたいと思いますけれども、10年前、私が初めて知事に選ばれました時に、県民の皆さんが私に寄せられた期待、託された事、それは県政の流れを変えるという改革への思い、願いではなかったかと思います。私はそうした県民の皆さんの思いというものを一身に受け止めて、これまで様々な改革を手がけてまいりました。
 その一つに県の職員団体との間の関係の見直しがございます。その中で、人事諮問制度ですとか、「わたり」と言った制度など県民の視線から見れば許されるはずのない制度を思い切り見直してまいりました。
 そうした中で一定の関係の改善は見られたと思いますが、まだまだお互いがもたれあっていくという古くからの関係も数多く続いているように思います。その代表的なものが、組合費を給料から天引きをしていく「チェックオフ」の取り決めではないかと思いますが、この大きな変革の時に、このような事も思い切り見直しをしていくことによって、本当の意味で自立した労使の関係がつくっていけないかということを思います。

 例えば、先日、ご提言を頂きました県の組織改革の検討委員会の中でも、これからはその時々の状況に応じて病院をフレキシブルに配置できるような組織にならなくてはいけないというご提言を頂いております。が、このような事も病院、また定数ということで、膨大な書類を作り、そして膨大な時間を費やして、やりとりをするといったような過去からのしがらみを引き継いでいたのでは、決して実現することは出来ません。今回、人事企画監という新しいポストをつくりましたが、これもただ単に新たな人事上の施策を企画するといった小手先のことに対応するためではなくて、人事や組織のあり方、システムそのものを大きく見直していきたい、その第一歩にしたい、という思いを込めておりますことを是非、皆様方にも知っていただきたいと思います。

 このような形で様々な改革を進めてまいりました。これから、まだまだ大きな改革が待っています。今、システムの改革という事を言いましたけれども、この後、報告会がございます行政経営品質向上システムというものも、まさに今日テーマにしてまいりました「気付き」の場をつくるシステムとして導入したものでございます。このシステムの内容は今更申し上げるまでもございませんが、県庁の組織の細胞に当たります課室や事務所単位に職員の皆さん方自身で議論し、その職場の強みや、弱みを考え、そして気付いていただく、そんなセルフアセスメント、自己点検ということを中心に組み立てております。これに対して、外部の方に審査していただき、そして、改善を指示していただくといういわば、西洋医学的な外科手術の手法も当然あっただろうと思います。けれども体質が十分改善されていないのにただ単に外科手術をしても、また、どこかに新しい病変が出来てくるということになってしまいます。そこで少々時間はかかっても、東洋医学的な手法で、まず、体質を十分に改善させていこう、そんな考えで取り組みましたのが、セルフアセスメントを中心にした行政経営品質向上システムというものでございました。
 これを始めて2年目が経ちました。まだまだ温度差はありますけれども、このことに理解を持ち、積極的に取り組んでくださる職員や職場も増えてまいりました。また、公募によって研修を受けていただいた17人の推進チームも誕生しました。今後、こうした推進チームを中心に県庁全体でのアセスメントが進んで行くことを心から期待しておりますが、今年度はさらに、職場同士のつながりがどうか、ということを見ていきますためにも、是非、部局長さん方にも、このセルフアセスメントに参加をしていただきたいと思っております。
 また、この行政経営品質のテーマとしても重要な項目としてとりあげられておりますことに、ビジョンとリーダーシップがございますが、こうしたビジョンとリーダーシップをもって様々な業績をあげておられます方の行動の特性には、共通のものがあると言われております。こうした実績をあげた方の行動の特性のことをコンピテンシーと申します。そこで、県庁では当面、改革、変革ということをベースに行動特性のモデルを作り、これを基に研修、能力開発と新しい登用制度の仕組みを作っていきたいと思っています。こうすることによって今後、ビジョンを持って若い職員をリードしていく幹部職員の方々が育っていくと思いますし、また、そのことが、県庁全体がダイナミックに変革していくことにつながっていくのではないかと思います。

 少し内向きな話ばかりをしましたが、今年度は21世紀スタートの、ある意味では大きな節目の年度の部課長・出先機関長会議でございます。そこで、少し外向けの話題も、お話ししてみたいと思います。
 その一つは水源税への取り組みでございます。この内容、また詳しい方向性については、今後立ち上がったばかりのプロジェクトチームで検討していただくことになりますが、一つ少なくとも言えることは、これは、新しい税源、税収を増やすための施策、新税ではないということでございます。そうではなくて、その形はともかく、多くの県民の方々に広く、薄く負担をしていただくことによって、森林の保全の大切さということを多くの方々に気付いていただく、そのための仕組みとして導入をしていきたいと思っています。
 
 また、こうしたことが高知県にとどまらず、四国全体に広がり、また、全国に広がっていけば、そのことは大きな全国への情報発信になっていくのではないかと思っています。

 また、この水源税も資源循環型の社会づくりの一つの取り組みですが、同じく資源循環型への仕組みとして今月から国ではグリーン購入ということが始まりました。つまり、環境にやさしい、自然にやさしい、そういう品物を公共で調達していこうという考え方でございます。そこで高知県でも是非、このグリーン購入ということを積極的に取り入れていきたいと考えています。が、もちろんこうした製品は普通の製品に比べてコストが高くなります。ですからこの財政構造改革の時期にどこまでやるのかといった議論は当然出てくるかと思います。けれども公共が調達することによって、こうしたグリーンな環境にやさしい製品を引き上げていくということは、今後21世紀に向かって環境ということを一つの大きなテーマにしていこうという我が高知県政にとって避けては通れない課題ではないかと思っています。
 
 一方、私が知事になってから力を入れて取り組んできた仕事の一つに高知工科大学がございます。この高知工科大学も、もうひとふんばりで目鼻立ちが付くという所まで来たのではないかと感じています。先日も入学式の時に少し時間がございましたので、校内にございます連携研究センターをのぞいてみました。その中では、情報化とか深層水さらに様々な先端的な研究、またローテクの部類の研究も進んでいて、大変たのしいひとときを過ごしましたし、また、そうした中から次の時代の高知を背負う新しいビジネスの芽が誕生するのではないかということを期待いたしました。
 
 また、海洋深層水も様々な事件がございましたけれども、しかし、これも大きくステップアップしてこれたと思います。もちろん他の県との競争もございますからこれからが正念場ではございますけれども、かなり他の県と比べてもブランド性を持って今後取り組む体制は出来上がったのではないかと思っています。と同時に今回のアサヒビールの件で感じたことですが、これからは県の職員も、単に書類や法律の制度がうまく運用できる、もちろんそういう職員の方々も数多く必要でございますが、それだけではなくて企業とも対等に渡り合っていけるだけの力と知識を持った職員、こうした人材も育てていかなければいけない時期に来たということを痛感しました。
 
 この他にも本県の基盤をなすハードの事業、また一次産業への支援をはじめ、土佐の教育改革や病院統合に代表される保健医療のシステム作り、さらには情報化やNPOへの支援等々、我が県は全国に先駆けて様々な挑戦をしてきたということを自負しております。今は事件の渦中にございますので、その目先のこと、また身の回りのことに気を奪われて少し気持ちが沈みがち、またシュリンクしがちなのではないかということを思います。けれどもいったん県という枠を越えて全国の視点から高知県を見てみますと、高知県は様々な分野で全国をリードする改革や取組に取り組んできましたし、そのことは多くの方々に評価を受けていると思います。是非、皆さん方には、この機会にそのことに自身と誇りを持ち、また夢を持ってこの21世紀のスタートを切っていただきたい。そのことを最後に皆さん方にお伝えをし、お願いをして私からの話を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。

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