平成13年6月県議会定例会知事提案説明(一連の融資問題に関連して、処分、改革の取り組み)

公開日 2007年12月06日

更新日 2014年03月16日

平成13年6月県議会定例会知事提案説明(一連の融資問題に関連して、処分、改革の取り組み)

平成13年6月25日

 本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成13年6月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
今月21日に、このたびの一連の融資問題に関しまして、県民の皆様に、私自身の身の処し方と今後の県としての対応の方針について、思うところを申し上げさせていただきました。
 ここに至りますまでには、県議会をはじめ、多くの県民の皆様から厳しい叱責のお言葉をいただきましたし、その一方で、暖かい励ましのお言葉もいただきました。また、今月の初めからは、私とともに県庁を支えてくれております職員の忌憚のない意見を聞く機会も得ました。
こうした様々な声を真摯に受け止め、熟慮いたしました結果、県政に対します県民の皆様の信頼を一日も早く回復いたしますため、持てる限りの力を傾けてまいりますことが、多くの県民の皆様の思いにお応えできる道ではないか、との思いを強くいたしました。
 と同時に、今回の一連の問題に関します知事としての責任を重く受け止めまして、この任期中、給料を10分の2減額することにいたしました。また、出納長に関しましても、給料を5カ月の間、10分の1減額することにいたしまして、これらに関連します条例議案を提出いたしております。
 さらに、一連の問題に関わっておりました職員に関しましては、その職責に応じて厳正に処分を行いましたほか、既に退職しております元職員に関しましても、処分の対象にはなりませんが、今回の問題に関わったことへの責任を十分に受け止めてもらえますよう対応してまいります。
 併せて、このたび、副知事から、これまでに同和対策や商工政策の業務を通じて、団体との対応や融資に関わってきたことを考えると、この際、一定のけじめを付けたいとの理由で、辞意の表明がございました。
 昨年4月の就任以来、職員の先頭に立って県庁の改革に取り組んでいただきましたし、まさにこれからが、県庁が一丸となって新たなスタートを切るために改革に取り組んでいかなければならない大変重要な時期でもございます。そのため強く慰留をいたしましたが、本人の決意が大変固いことから、その意を尊重したいと考えております。
今回の一連の問題で失われました県政への信頼の回復が、容易でないことは十分に承知しておりますが、逆に、今こそ、過去のしがらみに決別し、長年、県政が抱えてまいりました様々な問題を解決するまたとないときでもございます。県議会、そして県民の皆様のご理解とご協力を賜りながら、職員と一丸となって、県庁の改革に取り組んでまいりたいと考えております。
そのための課題はたくさんございますが、その第一は、なお一層の開かれた県政の実現でございます。
 今回の問題での最大の反省点は、県議会や県民の皆様にお知らせすることなく事務を執行してきたこと、つまり説明責任が徹底されていなかった点にございます。こうした反省に立ちまして、このたび、県が所有します、およそ800件の念書や覚書などを公開いたしました。
 また、今後は、現在非開示としております情報の取り扱いの見直しをはじめ、情報公開条例の改正などに向けまして、具体的な検討を進めてまいりたいと思います。
 併せまして、意思決定のプロセスを明らかにする取り組みが、県政の透明性を高める上で是非とも必要だと思いますので、結論に至ります前の段階でも、積極的に情報の提供を行いますよう努めてまいります。こうした取り組みは、特定の団体などによります不当な圧力を排除することにもつながると考えております。
 さらに、このように情報公開を徹底してまいりますためには、職員一人ひとりが仕事を進めてまいります上で、情報の公開を当然のこととして受け止め、進んで県民の皆様への情報の提供に努めますような心構えを持つことが何よりも重要でございます。
 このため、県民の皆様の視点から県政の情報がどの程度公開されているかを評価していただき、その結果をフィードバックして、さらなる情報の公開につなげてまいりますような仕組みづくりも、併せて検討してまいります。
課題の第二は、庁内での情報の共有と意思決定のあり方の見直しでございます。
 この点では、まず、職員が仕事を進めるに当たって感じました不安や疑問が、意思決定のプロセスに反映されることが必要です。そのため、事業を計画し、立案していく段階で疑問に感じた点などを、文書の中に残しやすいように改善を行いますとともに、そうした思いを職員が日頃から相談できますような体制や、県民の皆様の目線から公益性の判断を行えますような仕組みづくりを検討してまいります。
また、今後二度と同じような過ちを繰り返さないためには、これまでは当たり前と思ってきたことの中に潜む問題点に気付くことが、何よりも出発点になります。
 そこで、今後、改革を志す職員を育てていくことができますよう、人事の仕組みの抜本的な見直しに取り組んでまいります。さらに、私を含む県庁の全ての職員が、毎年一定の時期に、今回の一連の問題を振り返って、仕事の進め方を再点検しますような、継続的な取り組みを行ってみてはどうかとも考えております。
 第三に、今回の事件で直接の問題となりました融資制度の見直しに関しましては、調査特別委員会のご報告などを踏まえまして、大幅な見直しを行うことにいたしました。
 このうち高度化資金制度に関しましては、企業の診断や貸し付けの審査をする際に外部の専門家の力をお借りいたしますことや、貸付審査会で疑義が生じました場合には、事業の妥当性の評価を行いました検討会議に差し戻すといった内容を盛り込みました規則や要綱などの改正作業を行っております。
 また、今後は、県が独自に企業に直接資金を貸し付けるようなことはしないことにいたしておりますし、併せて、回収が困難になりました貸付金などの債権の管理を強化してまいりますような取り組みを進めてまいります。
 最後に、今回の問題は、同和行政のあり方とも深く関わっておりますため、これまでの取り組みへの反省を踏まえまして、来年度からの一般対策への移行を待たずに、運動団体との関係をはじめ大幅な見直しに取り組んでまいりました。
 その一環といたしまして、今議会には、これまでの同和対策審議会を廃止するための条例議案を提出しております。今後は、人権尊重の社会づくり協議会で意見をお聞きしながら、人権問題の一つとして同和問題に取り組むことによりまして、主体性を持った取り組みを進めてまいります。併せまして、運動団体との話し合いはマスコミに公開し、その内容もホームページで公表いたしますなど、よりオープンなものにしてまいります。
さて、政府に設けられました経済財政諮問会議で、先日、日本経済の再生を目指して聖域なき構造改革を進めますための、基本方針の最終案が公表されました。
 それによりますと、弾力的な予算の配分や地方の自立と活性化など、改革の七つのプログラムが掲げられておりまして、可能なものは、来年度の予算編成に反映していく予定だと聞いております。
 ただ、とりわけ地方の行財政運営への影響が大きいと思われます、地方交付税や道路特定財源をめぐります議論の中には、国の財政の帳尻合わせのような削減論や、地方の自立という名目でのあからさまな格差是認論など、疑問を感じさせるものが少なくありません。
 このうち地方交付税は、税源の少ない団体でも適正な水準の公共サービスが提供できますよう、その財源を保障する制度ですが、国による義務付けが多数存在いたしますため、その多くの部分が、地方の判断の余地が少ない歳出に充てられているのが実態でございます。こうした国の関与をそのままにして、金額の削減のみが独り歩きすることになれば、残された余地の中で地方が独自に行ってまいりました、教育や医療、福祉といった様々な分野での取り組みは、真っ先にあきらめざるを得ないことになってしまいます。
 一方、道路特定財源にいたしましても、本格的な地域間競争の時代が訪れておりますこと、あるいは高齢化の進展とともに医療機関などとの時間距離の短縮が切実な課題となっておりますことを考えますとき、いまだにそれを支える基盤の整備が極めて不十分な地域があるという現実を直視した議論がなされなければ、地方の自立の芽は摘まれてしまいます。
また、こうした地方の財源をめぐります問題は、一連の地方分権改革の成功の鍵を握る重要な問題でありながら、その具体策は、これまで先送りにされてまいりました。
 ですから、今回の構造改革の議論の中で、地方財政の課題が正面から議論されますことは、その意味では大切なことでございます。
しかし、国が目先の収支の改善にとらわれるあまり、地方分権改革の本来の趣旨、つまり権限と財源を地方に思い切って移譲することが意思決定の際の無駄を省き、国と地方を通じた本当の意味での改革につながるという視点を見失うことがないように、強く国に訴えかけてまいります。
 よさこい高知国体の開会まで残すところ450日余りとなりましたが、選手団の宿泊や輸送などの面で大きな課題を抱えております。中でも、秋季大会の開催時には、県の中央部で宿舎の不足が深刻な状況になりますことから、その対応策を検討してまいりました。
こうした中で、日本陸上競技連盟から、国体の簡素化の流れや宿泊する選手のコンディションの調整などに配慮して、特例的に陸上競技の開催の時期を動かしてはどうかというご提案をいただきました。
 今後とも、こうしたご提案に沿いまして、関係団体のご理解をいただきながら、早急に具体案の検討を進めてまいります。
 本県では、情報生活維新を理念に掲げまして、行政サービスをはじめ、防災や教育、産業の振興など様々な分野で、情報化への取り組みを進めてまいりました。
 しかし、情報化をめぐります環境の変化がめざましいことから、これまでの予定を前倒しいたしまして、このたび新たに、こうち情報化戦略2001を策定いたしました。
 今後は、全国に先駆けた取り組みを進めてまいりました本県の優位性を活かしますとともに、この新しい戦略に沿いまして、県民の皆様と行政とが情報を共有できますような仕組みづくりや暮らしの基盤の充実など、七つの分野を柱といたしまして、情報化の利便性を実感できますような取り組みを推進してまいります。
先月、熊本地方裁判所でのハンセン病訴訟で、原告勝訴の判決が確定をいたしました。
 長年にわたって行われてきましたハンセン病の患者に対します国の隔離政策は、様々な人権上の制限や、いわれのない差別や偏見をもたらしましたし、患者さん方に多くの苦痛と苦難を強いてまいりました。
本県もこうした隔離政策に関与しまして、差別や偏見の土壌をつくってきたという過ちを深く反省いたしますとともに、患者さんや、既に治癒されている療養所の入所者の方々に心からお詫びを申し上げます。こうした過去の誤った歴史を教訓に、二度と同じ過ちを繰り返さないことが、これからの行政としての責務でございます。
 こうしたことから、県といたしましては、県民の皆様にハンセン病を正しく理解していただくための啓発活動など、差別や偏見をなくしていく取り組みを積極的に進めてまいります。
 県立中央病院と高知市立市民病院との統合によります新病院、高知医療センターの整備に関しましては、より質の高い医療サービスを効率的に提供することを目指しまして、民間の資金とノウハウを幅広く活用いたします、PFIの手法の導入を検討しております。
 この2月には、事業者に対します説明会を開催いたしますなど、その取り組みを進めてまいりましたが、全国的にも病院事業にこの手法を導入した事例がございませんことから、PFI事業の主体となります特定目的会社への地元企業の参入の方法や、特定事業の範囲の確定などに関しまして、より詰めた検討が必要だと考えております。
 そこで、このたび、PFIや自治体病院に関します6名の有識者に参加をいただきまして、高知医療センターPFI事業化検討委員会を設置して、検討を進めることにいたしました。
 このため、当初5月に予定しておりました特定事業の選定と、その公表の時期が遅れることになりますが、検討委員会からのご提言などを踏まえまして、事業が効果的かつ着実に推進できますよう、病院組合や高知市と連携して取り組んでまいります。
また、PFIに関します検討のほか、病院の本体工事や運営システムの整備など、開院に向けました具体的な取り組みが本格化してまいります。そこで、病院組合の管理体制の強化を図りますため、現在、副知事が兼務しております管理者を専任の管理者に改めることにいたしました。
中土佐町での採石場の開発に関しましては、昨年5月に採石法及び森林法に基づきます許認可の申請を受理しまして以来、申請した企業をはじめ、町長や町議会、また、住民の皆様からも、賛成、反対それぞれの立場からご意見をいただいてまいりました。
 こうした中、民意をできる限り正確に把握いたしますため、町が地域住民1,200人を対象としましたアンケート調査を実施いたしました。
 その結果、およそ3分の2の住民がこの開発計画に反対し、自然環境の破壊や水産業への影響などを危惧していることが明らかになりました。
長年にわたって蓄積されてまいりました法律の運用を変えますことは、決して容易なことではございませんが、これらの事務が地方分権一括法によって新たに自治事務として位置付けられましたことや、今回のアンケートの結果から明らかになりました地域住民の声を重く受け止めまして、引き続き検討を進めてまいります。
 これまで、農業分野の人材育成の面で中心的な役割を担ってまいりました県立実践農業大学校に関しましては、昨年9月にいただきました検討会からのご提言を踏まえまして、見直しを行うことにいたしました。
 具体的には、現在、伊野町と窪川町にそれぞれ設置しております後継者の養成部門を、平成15年4月からは伊野町に集中しまして、教育環境の改善を図りますことで、学習効果を高めてまいります。併せまして、現在の窪川校を農業者の生涯学習の拠点としてはもとより、就農を希望する方の実践的な研修や広く県民に開かれた農業教育の場として活用してまいります。
一方、産業としての林業が極めて厳しい状況に置かれております中で、県土の84%を占めます森林の適正な管理は、県政上の重要な課題になっております。
このため、この3月には、「こうちの森づくりと木の産業づくりプラン」を策定いたしましたが、このプランでは、これまでの木材生産を主体とする従来の森林管理の進め方を転換しまして、森林の持つ多様な機能に応じた適正な森林管理を、県民の皆様が主人公になって推進していくという方向を明らかにいたしました。
 また、こうした考え方を具体化いたしますため、先般、こうちの森づくり推進委員会を発足させまして、新たな森づくりに向けた仕組みを検討することにいたしました。
 今後、この委員会で、守るべき森林の指定や県民参加の手法などに関しまして議論をいただきますとともに、年度内を目途に、それを踏まえました具体的な対応策の骨子を取りまとめて行きたいと考えております。
 これと並行いたしまして、水源地域の森林の保全を目的といたします、いわゆる水源かん養税に関しましても、去る4月に、新税検討のためのプロジェクトチームを庁内に設置いたしまして、新しい税の役割や制度の基本的な仕組みなどの検討を進めております。こちらの方も、できるだけ早い時期に素案を県民の皆様にお示ししまして、ご意見をいただいてまいりたいと考えております。
 今月から、海洋深層水に関しますアサヒビール株式会社との共同研究を、工業技術センターでスタートいたしました。
 この研究は、海洋深層水がビールや清酒に使う酵母を活性化させるメカニズムや、乳酸菌などの有用な微生物に及ぼす影響などを研究しようとするものでございますので、同社の持つ最先端のテクノロジーと本県の技術やノウハウがうまく結び付きまして、海洋深層水の活用に新たな展望が開かれますことを期待しております。
 高知市八反町の県営住宅の建設予定地で検出されました高濃度のダイオキシン類を含む土壌の処理に関しましては、先月7日から、市内のセメント工場で焼却処理を進めてまいりましたが、このたび汚染された土壌の処理を完了いたしました。
 周辺の住民の皆様はもとより、県民の皆様には大変ご心配をおかけいたしましたが、今後は、県営住宅への入居を希望される方々が年度内に入居できますよう、全力で取り組んでまいります。 
この4月に、連携型の中高一貫教育校が、嶺北、津野山、大正・十和の
三つの地域でスタートいたしまして、関係する中学校から高校へ、およそ
160名の新入生が入学をいたしました。   
 今後は、6年間を通じました計画的で継続的な教育を行うことによりまして、土佐の教育改革の目標の一つでございます基礎学力の向上をはじめ、環境教育や伝統文化の継承など特色ある教育にも取り組んでまいります。
一方、併設型の中高一貫教育の導入を予定しております安芸、高知南、中村の三つの県立高校では、入学者の決定の方法や学校生活などについての疑問にお答えいたしますため、地元での説明会を続けてまいりましたが、保護者の皆様や学校関係者のご理解も深めることができたと考えられますことから、今回、これら三つの高校に県立の中学校を設置いたしますための条例議案を提出しております。
 今後は、来年4月の円滑なスタートに向けまして、校内の組織の検討や学習環境の整備など開設の準備を着実に進めてまいります。
 今月8日、大阪府池田市の小学校で、多くの子どもたちが犠牲になるという、大変痛ましい事件が発生いたしました。
 亡くなられたお子さま方のご冥福を、心からお祈り申し上げますとともに、体と心に数多くの傷を負った方々の一日も早い回復を願っております。
 各学校では、子どもたちの安全の確保に向けました再点検を行いまして、当面緊急に講じるべき対策に取り組んでおります。
子どもたちが安心して学べる場所であるはずの学校で、こうした事件が二度と繰り返されてはなりませんので、今回の事件を教訓に、本県でも、関係者が全力を挙げて子どもたちの安全の確保に取り組んでまいります。
続きまして、今回、提案いたしました議案をご説明いたします。
 まず、条例議案は、高知県高齢者円滑入居賃貸住宅登録手数料徴収条例議案など9件です。
その他の議案は、高知県が当事者である訴えの提起に関する議案など5件です。
 以上をもちまして、議案に関しましての私からの説明を終わります。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

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