加賀美幸子さんと知事とのトーク&トーク

公開日 2007年12月06日

更新日 2014年03月16日

加賀美幸子さんと知事とのトーク&トーク

平成13年11月15日 全国女性会館協議会第45回全国大会 「加賀美幸子さんと知事とのトーク&トーク」 (女性総合センター「ソーレ」にて)

(司会)
 それでは、ただ今から、千葉市女性センター館長の加賀美幸子さんと、橋本大二郎高知県知事とのトーク&トークを始めさせていただきます。

 加賀美さんは、皆様ご承知のようにNHKのアナウンサーとして長年に渡ってご活躍されまして、平成9年に女性で初の理事待遇、エグゼクティブアナウンサーになられております。昨年、NHKを退職されましたが、退職後もNHKのお仕事を続けながら、昨年の7月から千葉市女性センターの館長に就任されておられます。
 今日は、大変お忙しい日程の中をぬってお越し下さいました。著書には「心を動かす言葉」「言葉の心に耳を澄ませば」「やわらか色の烈風」などがございます。

 橋本知事は、加賀美さんと同じくNHKで記者として勤務をされました後に、縁もゆかりもない高知県においでいただきまして、平成3年、高知県知事に初当選以来、現在3期目でございます。高知県のために、大変ご尽力いただいております。
 著書は、ここに載せてあります他にも「政治家無用論」「土佐発情報維新」「未来日本の構図」など、いつの間に書かれるのだろうかと思うくらい多数ございます。

 お2人とも、大変お忙しい中をおいでいただきましたので、打ち合わせもほとんどしておりませんが、NHK時代からのお知り合いでもございますので、お話がはずむのではないかと思っております。
 今日のテーマは「男女共同参画時代の拠点としての女性関連施設、地域と繋がる、支える、広がる」でございますが、テーマにとらわれずに、幅広いお話をお伺いできるのではないか、と期待をしております。
 それでは、加賀美さん、知事さん、よろしくお願いいたします。

(加賀美さん)
 私は、今日は司会という立場ではないんですけれども、つい仕事柄ですね、やはり知事にお話を伺うという立場に、どうしてもなりがちですので、どうかよろしくお願いいたします。
 そして、今日は本当に、先ほど久しぶりですねっていうご挨拶を済ませましたけれども、改めて、どうかよろしくお願いいたします。

 ほとんど打ち合わせ無しっておっしゃって下さいましたが、ほとんどじゃなくて、全然しておりませんので、それがまたとても楽しみでもあります。
 本当に今日は久しぶりに、個人的にもお目にかかることが楽しみでしたし、そして、ここにいらっしゃる皆様も、知事にお会いしてお話を伺うことを本当に楽しみにしておりますので、どうかよろしくお願いいたします。

 本題に入る前にですね、お手元の紹介メモにもありますけれども、すぐに入局年代とか書いてありますから、年齢とかですね、すぐお分かりだと思いますけれども、でも、皆様の中には、同じNHKであるけれども、NHK時代、仕事としても接点があったのかどうかとか、そういう事を思ってらっしゃる事があるかも知れません。そういう疑問がありますと、なかなかその疑問がずっとついて離れないと思いますので、冒頭に、本題に入る前に、ちょっと紹介させていただきます。

 NHKというのは、本当に大きな組織でありまして、万の単位の大大組織でありますから、同じ時期に、同じ時代に仕事をする事になりましても、定年まで1度も会った事がない、1度も仕事をした事がないという人がほとんどであります。そしてなおかつ、記者とアナウンサーは仕事が近いのでありますけども、それでも一緒に仕事をするという事は滅多にない。

 その中で、私は橋本知事と接点がありまして、それは、知事が様々な仕事をこなしてらっしゃる敏腕、辣腕の記者でありますけども、特に皇室関係においては右に出る人はいないわけです。そして、あの昭和天皇御崩御の時に、特別番組が何本も何本も、何日も何日もに渡って放送されましたけれども、その中で、私はこれからの皇室ご家族のお話を橋本知事がなさった時、その時お相手をさせていただきました。

 そしてまた、橋本知事はその特別番組全てに関わってらっしゃいましたけども、私自身もNHKスペシャル、当時は「NHK特集と言っておりましたけども、皇居という番組を担当したり、あるいは昭和天皇のお歌ということで、日本を代表する歌人の方達に昭和天皇のお歌を、ご紹介したり、お歌についてお話を伺うという番組を担当したりいたしました。その全てに、全部目を通されていたのが橋本さんであります。

 そんなことで、御崩御ですから、それから平成13年という事は13年経ちまして、実際には13年ぶりという事になるんです。でも、私達は知事のお仕事ぶりは常日頃からですね、遠くからでありますけども拝見しておりますので、久しぶりという感じはないんですが、実際お目にかかりますと、真っ黒だったお髪がですね、だいぶ白くなって、あのいつ頃からですかと伺ったら、段々にとおっしゃって、それが、この積み重なってるんだなあ、という事を思いました。

 それで、私が何を言いたいかというと、そういう接点があったというその事と、そして、その時に私は、本当にそのお話ぶりが、誠に明確で熱くて、もうその時の事が焼き付いております。で、その後のお仕事ぶりもずっと拝見してきましたので、そのエネルギーというか、そのお仕事の心というか、今日はそれをですね、是非伺って、私達へのメッセージとしていただきたいと考えております。
 で、本当にどんなお話が出るか私もドキドキしながら伺いますので、どうかよろしくお願いいたします。
 本題に入る前に、何かお話がありますでしょうか。

(橋本知事)
 ええ、ドキドキしてるのはですね、私の方がドキドキしてるので、実は、何か打ち合わせぐらいあるかなと思いましたら、全く打ち合わせ無しでありますから、どんな質問が来て、どこで行き詰まってしまうか分かりませんけれども、そこら辺は、是非お許しを願いたいと思います。

 あと加賀美さんって言うと、今お聞きになっても分かりますように、非常に、こう、独特のテンポでお話をされますのでですね、私はどちらかというと早口ではないですけれども、トントン、トントンと話す方でございますので、この加賀美さんのテンポに乗せられると、また難しいなあ、と思ったりしながらですね、質問が飛んでくるのを楽しみにしております。はい。

・・・省略・・・

(加賀美さん)
 今日はですね、「地域を支える」「地域での活動」そして「地域の活動の広がり」、「地域」がテーマでありますけども、今や、この21世紀、地域がそのまま地域だけの問題ではなくて、もう日本国中、世界、そして地球規模で広がっているという事を、みんな実感してると思うんですね。

 ですから、その中で、今21世紀、同時多発テロもありましたし、狂牛病もありましたし、じゃなくて、過去ではなくて続いていますし、そういう中で21世紀、これから私達がどうしていったらいいのか、人間が問われる21世紀だと思いますので、その辺を知事がどのように考えてらっしゃるか、そこからですね、まずお話をいただきたいと思います。

(橋本知事)
 まず、と言っても、こんな難しい質問をまずされても困るのですけどもね、20世紀と21世紀って、2001年の1月1日からですから、人間が勝手に作ったようなもんで、それで何が変わるんだろうというふうにも思います。

 けれども、やっぱりなんか大きく変わる節目なんじゃないか、という事を思うんですね。で、堅苦しい話で恐縮ですが、ひとつ経済の面から見てみますと、20世紀というのは、大量生産という技術が産業革命以後できてきてですね、それが一旦大恐慌で、供給過剰でダメになったんですけれども、そこで資本主義がダメにならずに、その大量生産した物を大量に消費をしていこうという仕組みを作って、経済をドンドン拡大をしたというのが20世紀だったと思います。

 その意味は、大量に生産した物を、やっぱりドンドンドンドン使っていかないと経済が回らないと。その使っていく中には、勿論必要な物もいっぱいあっただろうと思いますし、便利な物もいっぱいあっただろうと思いますが、やがて必要かどうか分かんないけれども、とにかくちょっと便利だから買ってみようとか、ちょっと面白いから買ってみようという、使い捨てがひとつの文化になって、それで経済が拡大をしてきました。

 そういう大量生産、大量消費が、最初のうちは、例えば、公害問題。水俣だとか、イタイイタイ病だとかいう、今の「地域」という言葉で言えば、地域の中での問題として出て来たわけですよね。ところが、それが今度はもう地域ではなくて地球全体の問題になってきた。

 例えば、熱帯雨林を切って、それによって地球全体の天気が、気象が変わってきたと。異常気象になってきたというふうな事もありますし、また、炭酸ガスだとかフロントだか、そういう便利さの中から吐き出される物で地球の温暖化が進み、地球環境全体の環境が侵されてきたというような、地域の問題から地球全体の問題になってきた。これがその大量生産・大量消費を見直す大きな、今きっかけになってきてるんではないかと思います。

 で、その中から、その資源循環型の社会づくりっていう事が言われるわけですけれども、今度は、その地域の問題から、地球全体の問題になった地球環境というものを、改めて地域の中から資源循環という物をひとつづつ考えていって、自分達にできる事は何か、ということを考えていくことによって、地球全体の資源環境に繋げていくという時代になってきてるんじゃないかなと、そこら辺がひとつ21世紀の大きな20世紀との変化かな、ということを思います。

 それから、アフガンの戦争のお話が出ましたけれども、その事などからも思うんですが、そのテロという問題、そしてそれにどう戦うか、という個別の問題はありますが、その一番の背景の所にはずーっと20世紀続いてきたグローバル化という現象の中で、世界を同じ文化で均質化していこうという、そういう流れに対してですね、やはり地域、地域のアイデンティティーだとか、文化だとか、まあ宗教もそうですね、というものがあって、そのぶつかり合いが、そのテロという少し異常な形で出て来てるんではないか、ということを思います。

 ですから、そのテロに対して、きちんとどう戦うかという事、こういう政治的な姿勢というものも勿論必要だと思いますけれども、その根底にあるグローバル化と、地域のアイデンティティーや宗教や文化とのぶつかり合いというものを、どう考えていくのかという事も、僕はやっぱり21世紀の大きな課題として突きつけられてるんじゃないかなと。

 それはアフガンでの空爆が良いか、悪いか、というふうな議論はまた別にして、それを良いと考える人も、悪いと考える人も合わせて、その地域のアイデンティティーとグローバル化の問題というのは考えていかないと、様々な、またそこから新しい衝突が出て来るんじゃないかと思うんです。

 そのイスラムの文化のぶつかり合いという事じゃなくて、私達の地域を考えてみてもですね、ずーっと農業や林業、漁業というものを中心に生計を立ててきた県でもございますし、今もそういう方々がいっぱいいらっしゃいます。
 しかし、グローバル化の中で、この間WTOに中国が加盟をしたという大きな流れもありますように、世界的に、農産物でも、林産物でも、水産物でも、同じような価格で、ドンドンドンドン安い価格で流れるようになってくる。

 そういう中で、地域の、うちの県の場合には農業とか、水産業というものですけれども、他の地域であれば色んな地場産業があります。この四国の中でもタオルの産業だとか、様々、そういう輸入をされる安い物とどう戦っていくのか、どう競い合っていくのか、そういうグローバル化と地域との問題というのも出て来てるんではないかなという事を思いますので、少し堅苦しい話ですが、21世紀へという事で言えば、その大量生産・大量消費を見直していく資源循環というものを、どう地域からもう1度作り出していくかというふうな事と、後このグローバル化と地域の文化とかアイデンティティー、産業というものとどう整合性をとっていくのかというが、大きな、今問題点ではないかな、というふうに感じます。

(加賀美さん)
 はい。その辺の、その勉強をしていくというその事が、いかに大事かということになりますですよね。

・・・省略・・・

(橋本知事)
 高知というと、太平洋に向けて坂本龍馬の銅像があったりしてですね、非常に海の県というイメージもあろうと思いますし、また、四万十という川もありますので、そういう川のイメージもあると思いますけれども、84%が森林で、全国1番の森林率の高い県なんです。

 ですから、県としてもですね、こういう森林をどう活かしていくか、また、切った後の木材をどう活かしていくか、というのは大きな課題です。先ほどの資源循環という事で言いますと、木というのは使った後で捨てるという事で言えば、燃やしても燃えてしまいます。土にでも同化をしてしまいますので、コンクリートだとか、また石油化学製品に比べれば、はるかに資源循環型、資源リサイクル型の素材だというふうに言えると思うんですね。

 ところが、その木を使って何か物を作るという事を考えてみますと、今ある木に代わる代替の競争・競合の商品に比べますと、非常に金額が高いという問題があります。

 1例を挙げますとですね、うちの県でも「木の文化県」ということで、木の色んな製品を県庁にも購入をしましょうという運動をしてるんですけれども、その中で県内の森林組合が作った事務机があるんです。これは集成材と言いまして、間伐材を薄く切ってですね、それを組み合わせて、「集めて成る」と書く集成材なんですけれども、その集成材の事務机がありますが、これが県庁で買う時には1つが9万1,350円という値段なんです。これがですね、スチール製の従来の事務机、コクヨさんなんかが作っておられる、あれだと2万3,100円が購入価格。つまり、4倍ぐらいの開きがあるんですね。

 また、全く別の例ですけれども、県内に馬路村という村がありまして、そこが、間伐材を非常に薄く切って3枚、タテ・ヨコ・タテと、こう目を強くするように張り合わせて、これをまたプレス加工をして、スーパーマーケットなどで生鮮食料品を乗せるトレーだとか、それからパーティーなんかに使うお皿を、その間伐材で作っているという第3セクターの会社があります。

 これもですね、できた時に、そういうスーパーのトレーなんかを間伐材のトレーに全部換えてしまえば、ものすごく情報発信の効果もあるし、その資源循環型の地域からの一歩という事で、大きな意味があるんじゃないかと。ただ、勿論価格の差はあるだろうから、一定の部分はスーパーなどにも宣伝、PR料として飲み込んでもらって、足りないところを何か公的な補助ができないかな、というふうに思いました。

 ところが、値段を聞きますと、発泡スチロールで作ってるトレーはですね、1つが2円ぐらいでできてますね。これに対して、その「エコアス」という会社なんですけれども、馬路の第3セクターの作ってる間伐材のトレーは、まだ作り始めて1年ぐらいで、マーケットも狭いという事もあって1枚30円ぐらいかかるんです。つまり10倍ぐらいの開きがあるという事で、まあとても今の段階では太刀打ちできないなという話になりました。

 ちょっと長くなって恐縮なんですけれども、そういう価格の差という事が、その資源循環だとか、リサイクルという時には必ず出て来ると思います。そんな価格の差をどうしていくかという時に、勿論、技術開発によってそのコストを下げていくという事も必要なんですけれども、一方で、やはり市場を広げることによって、買う人を増やすことによって大量生産に繋げて、コストを下げていくということもあると思うんです。

 その時にはですね、4倍だ、10倍だということだとなかなかいかないわけですけれども、その一定の努力によって価格差が縮まった時、なお、それを消費者が買ってくれるか、また、消費者として、消費者となる企業が買ってくれるか、また買う意識を、やっぱり作っていかなきゃいけないというふうな事を思って、今、色んな取り組みをしてるんですけれども、要は、その資源循環という事を、先ほどの地球環境を考える上で、地域から何かを始めなきゃいけない。

 だけど、地域から始める時に、少し、やっぱりみんなの意識も変わっていかないと、また、その意識が変わるだけじゃなくて、それがひとつの運動として、取り組みとして広がっていかないと、その一歩を踏み出せないんじゃないかな、そこが踏み出していけるかどうかっていうのが、大きなひとつはポイントではないかというふうに思いますね。

(加賀美さん)
 そうですね。もう、そのためには徹底的に、徹底的にその足元を見つめるという、その事だと思うのでありますけど、ただ、その一方で、今の環境問題も含めて、色んな事が20世紀のツケが今押し寄せているわけで、もう人間の存続に関わるような、これからの100年、問われていると思うんですね。

 ですから、もう環境問題も含めて、公害も含めて、戦争も含めて、また一方で良い事もあって、ガンをはじめ、色々な病も治すことができるかもしれないとか、それから、今世界が、言葉が全く違うために誤解も生じているけれども、瞬時に世界の言葉を訳せる機械も、たぶん登場するに違いないとか。

 こちらでは工科大学が新しくできて、今沢山の発信をしていますけれども、例えばロボットなども、この間ニュースを見ていましたらロボットの補助機械をつければエベレストだって簡単に登れるようになるとか、オリンピックの選手と同じぐらいに走れるかもしれないと、色んな事があって。

 で、本当にもうこれからどうなっていくのか、放送自体にしましても、今までと違って双方向の利用の仕方になるし、もう色んな事を取り混ぜて、クローンもあるし、生命倫理もあるし、色んな事が次から次へと押し寄せて、もう全ておっしゃるように21世紀は20世紀のツケとか20世紀の延長で、公害なんかみんなそうですけども、でもやっぱり、今区切っておっしゃいました、本当に今、今私達は何かを考えなければ、もう存続に関わるような大変な時期だという、そういう認識は皆さん持ってらっしゃる。

 みんなどうにかしたい。それを地域からどうにか、もう地域から発信するしかないわけですから、いくらものを考えても。でもみんな、分かってるけれども、憂いてるけれども、心配しているけれども、案じているけれども、でもどうして良いか分からないっていう状況だと思うんですね。

 そういう中で、こちらにお集まりの方達は皆、女性センターあるいは女性共生センター、婦人会館、名称は様々ですけれども、そういう中で、本当にもう歴戦の女性達、プロなんですね。で、みんな真剣に考えてる中で、まあ人間として、女性としてという事は、女性の問題というのは深く男性に関わってるし、人間の問題であるし、まあ、どうすれば良いかという、その辺の具体的な事は、この後の分科会あるいは個人でお考えだと思うんですが、その辺の、その何て言うんでしょうか、ええ、ところをですね、伺いたいと思って、はい。

(橋本知事)
 はい。まず、その直接的な答えじゃなくて、お話を聞いてるうちに、もうひとつ思い出した事があるんですが、やっぱり科学技術の進歩とか、それによる生命倫理の問題なんていうのも、女性にと言うとまた失礼になって、人間にと言った方が良いのかも知れませんけど、特に子供を生むという立場にある女性にとって、大変大きな意味を持ったその科学技術というか、生命倫理に関わる事がいっぱいあるわけですね。

 先ほど申し上げた環境や何かの事というのも、やはり地域を支える人材としての女性に、是非考えていただきたいし、そういう運動の担い手になっていただきたいと思いますけれども、あわせて、この生命倫理の問題などもですね、やや小難しい話になりますけれども、僕は、とってもこれからの時代大切になるのではないかという事を思います。

 例えばですね、その少子化が進む中で、一方で不妊に悩む女性も数多くいて、そしてそういう不妊に対する様々な治療法というのが開発をされて来ました。これはもう、僕がまだNHKの社会部にいた頃ですけれども、その頃から凍結受精卵といってですね、単に体外受精をするというだけではなくて、女性の体内から取り出した卵を受精をさせてですね、それを一旦冷凍保存をしてしまうと。

 こういう技術が、もう既に私がNHKにいた頃ですから、もう十数年前から確立をされております。で、その取材をした時に、なるほどと思ったんですけれども、そうやって凍結受精卵という物を作って、何十年も保存ができるという事になりますと、例えば、全然突飛な言い方ですけれども、独裁者の人がいてですね、自分の子どもにずーっといつまでもそこを統治をさせようとすれば、その受精卵を使って何代も何代も、というような事も、同じような人が出てくるという事ができます。

 また、全然違った事で言いますと、お姉さんが、じゃなくてもお母さんでもいいですが、お母さんとお父さんが作って残した受精卵で、その実際の娘さんが不妊になって、その受精卵を体内に入れて子供を生んだとしますと、本来ならば自分の兄弟に当たる人を自分の子どもとして産むというようなことも、もう物理的には可能になってるわけですね。

 今は、そういう事は勿論、産婦人科学会や何かの規約によって、倫理規則によって禁じられてるわけですけれども、物理的にはそういうような事も可能になります。こういう問題は、やっぱりどう考えていくかというのも、とても大切な事だと思います。

(加賀美さん)
 そうですね。

(橋本知事)
 それから、ヒトゲノムと言いまして、人間のDNAという、自分達の性格だとか、様々な遺伝子を乗せてる物があるわけですけれども、そのDNAのどこにどういう遺伝子が乗っかってるかというのを、全部解析をするというヒトゲノムというのが、もう既にほぼ完成をしてきております。
 そうするとですね、そのDNAを見ただけで、その内、この人はここの部分が欠落しているから、やがて何十年後にこういう病気になるのではないか、というのが分かると思うんですね。

(加賀美さん)
 そうなんですね。

(橋本知事)
 その話を聞いてですね、僕は、昔童話でですね、なんという題名の童話だか忘れたんですけれども、自分の命のロウソクがあって、何か、泥棒か何かがですね、たまたまそのロウソクの部屋を見に行ったら、自分のロウソクが、何かもう残り少なくなってたと。それで聞いたら、あれは命のロウソクで、あなたのロウソクはもう間もなく消えますよと。

(加賀美さん)
 ええ、怖いですね。

(橋本知事)
 ええ。言うのでですね、それで、そのあれが慌ててですね、その泥棒がそのロウソクをとって、自分のロウソクを人の所に継ぎ足して伸ばしたと。で、伸ばしてホッとしたら、その時パタッと倒してロウソクが消えたというような話だったと思うんですが、まさにその命のロウソクと同じようにですね、遺伝性のガンなどというのも、ごく限られたガンですけれどもあります。

 で、そういうものを持ってる方々、また一定の病気を抑制する遺伝子が無い方とかいうものは、たぶんそれを見ただけで、もう生まれた時に、この子はいつこうなる、というようなことが分かると思うんですね。
 その分かるということで言えば、昔は分からなかった男の子が産まれるか、女の子が産まれるかも分かるようになりましたし、それから、先天性の異常がある場合に、それをどう処理をするかということが、今、もう既にそれは大きな問題になってるわけですね。
 等々の、こういう、やっぱり生命倫理と私達人間の生き方というものをどう折り合いをつけていくのか。

(加賀美さん)
 そうですね。

(橋本知事)
 で、折り合いということで言えば、先ほどのグローバル化と地域のアイデンティティーという、全く文化的、社会的な経済的な問題と、こういう、やっぱり科学的、倫理的な問題と、やっぱり20世紀、もうずーっと右肩上がりで、科学の面でも、経済の面でも、伸びてきた、もう伸ばしきってきたものを、もう1度自分達の足元とか、人としての生き方とかいうものと、折り合いをつけるのかというのも、まあ大きな課題なんじゃないかと思いますね。

(加賀美さん)
 本当にそうですね。折り合いが、まさにその判断を迫られているということですけれども、でも、本当にその病気が未然に防げたり、あるいは戦争・戦いがない世の中というのは、これはみんなが望んでる世の中でありますけれども、それによって、本当に人間とは何かという、今まで人間はこうだったという、その人間が違ってくる可能性だってあるわけですね。

(橋本知事)
 そうですね。

(加賀美さん)
 やっぱり、本当にそれは怖い。で、それをどう判断し、もう人間ですから判断し間違うこともあるし、本当にそれがこれから突きつけられている事だと思うんですけども、でも、その生命倫理などについては、私達は母体を使って生み出してるわけですから、子どもたちを。本当にある意味で、女性というか、人間の役割ですけども、女性が大変近いという意味では、近い所にいるという。

 しかも、その、ちょっと進み過ぎる、人間っていうのはやっぱり進む人間ですから、これではないか、こうじゃないかって、ドンドンドンドン発展を続けていくわけですけど、それに対してちょっとこれ怖いよと、ちょっとブレーキをかける、ちょっと違うんじゃないか。

 で、戦争だって、今まで本当に決定したのは男性であったし、女性というのは、夫や子供を失って悲しかったけれども、そういうブレーキをかける力も無かったという事において、徹底的に弱かったと思うんですね。

 そういう意味では、本来女性は強いけれども、色んな決定的な所で、いつもいつも悲しい目に遭ってきたわけですけれども、でも、これから、今おっしゃったようなブレーキですか、ブレーキをかける強さ。ブレーキというのはよほど強くないとかけられませんから、一緒に進んで行く方が易しいけれども、でもちょっと危ないなと思った時に、本当に説得力を持って、よほど説得力と力がなければブレーキってかかりませんから、そういうブレーキをどう持てるか、持つか。それが何か、女性の力というか、女性だけじゃありませんけども。

 ですから、今、女性、男女共同参画で男性と一緒に走ろう、走ろうとみんなしていますけど、走るのは逆に簡単であって、走り過ぎると怖い事になるんで、ちょっと走るのを止めたらとか、そのブレーキをかける強さですか、そういう事も私は強さだと思ってるんですけども、女性の強さ、あるいは人間の強さですか、その事については知事はどのようにお考えでしょうか。

(橋本知事)
 そうですね。この間のアメリカの大統領選で負けたリチャード・ゴアですね、ゴアという前の副大統領がいましたけれども、彼が書いた「地球の掟」という本があってですね、僕は、もう最近ほとんど本を読まないんですが、まあパラパラっと、何かの用があって読んだ時に、その中に「積み木を積む時に、男の子と女の子で積み方が違う」という話が出ておりました。本当かどうか知りませんし、私自身の持論だという意味ではないんですけれども、男の子はやはり積み木を上へ、上へと積んでいくと。

(加賀美さん)
 ああ、やっぱりそうですか。

(橋本知事)
 ええ。それで、女の子はそうではなくて、こう少し広めに、色んな形を作っていくというような話が出ててですね、私は女性と男性に、その役割分担をつけることには勿論反対ですけれども、それぞれに持ってる力というのには、違うものというか、補い合うものは必ずあるだろうというふうに思うんですね。
 という事から言えば、さっきの平和とか戦争という事で言えば、女性が起こした戦争っていうのは無かったんではないかと。

(加賀美さん)
 無い、無いですね。

(橋本知事)
 思いますし、絶えず、日本の国内で言えば、二二六の妻達の話であれ、太平洋戦争であれですね、その影で被害を受けてきたのは女性達です。
 という事から考えても、やっぱり女性の目線というものがもっと社会の中に入っていけば、必ずそういう抑止力というかですね、それを抑える、ブレーキをかける力には、僕はなっていくだろうという事を思います。

 で、先ほどの、生命倫理の問題などは、特に、その産む側、産みたい側の女性と、それをどう考えるかという事に、何か物申す側の女性。女性の中で議論はもっとされても良いかなということも思いますし、また、そのグローバル化と地域の経済とか文化という事もですね、これまでは、どっちかというと、やっぱり男社会の中で経済の問題として捉えられてきた事が中心ですけれども、

 そういうものを、やっぱり女性の立場でと言うと、またお叱りを受ける方もいると思いますけれども、やはり、女性の立場、女性の目線で見ていくという事は、僕はとても大切な事ではないかなと。そういう所からですね、男の議論だけではなかなか糸口が見つからなかった、先ほどの折り合いというもの。何か新しい視点が、僕は出て来るんではないかな、という事を感じます。

 これまでの地域社会を僕が見てきても、なかなかやっぱり女性の視点が生かされる仕組みにはなってきてませんね。本県の農村部だとか、中山間地域に行っても、おじさん達はみんな、もうドンドンドンドン過疎化も進み、少子化も進んでですね、若いお嫁さんも残ってくれないと、こう文句をおっしゃるわけです。

 であればですね、やはり嫁として来て苦労をした自分の奥さんだとか、そういう人達の声が地域で反映をされているんですかと訊くと、決してそうではないですね。そういう女性の声が地域に反映をされないような仕組みを続けながら、そこにお嫁さんが来ないとか、若い人が残ってくれないっていうのも、当然の事なんではないかなと。そういうような仕組みがずーっと続いてきた所に、地域でも大きな問題がある。

 そして、地球全体で考えた時の戦争の問題だとか、先ほどのグローバル化と地域の文化とのぶつかり合いだとか、生命倫理のことだとか、そういうこと全てにもっともっと女性の視点というのが入っていけばですね、良い意味での抑止の効果にもなる。

 また、もっともっとこれまで議論になっていなかった、論点になってなかった所がきちんと論点として浮き彫りになってくるっていう事が、具体的にこういう事があるんじゃないか、というのが言えないんですけれども、僕は漠然とあるんではないかなというふうに思いますね。

(加賀美さん)
 今、そういう事についてみんなで議論しつくさなくてはいけない、という事を今おっしゃいましたけども、本当に、その議論していく、色んな事、あの、話しているうちに見えてくるんですね。みんな心の中で思ってるんですけど、出さないと止まってしまうんですね。出すと、相乗作用でドンドンドンドン見えてきたり、大きくなったり、力になったりするんで、それが女性センターの役割であったり、女性会館の役割であったり。

 ですから、物・空間っていうのはとても大事だと思うんですね。で、為政者達が本当に力のある人をみんな分散させるのが為政者ですけども、ですから、それが寄り集まったら大きな力になるんじゃないかという事で、そういう役目があるような気がするんですね。

・・・省略・・・

(橋本知事)
 もう少し古い事例で恐縮なんですけれども、かなり前に、高知の市内の都市計画道路を造る時ですね、県が担当をする道路を造る時に、女性の皆さんに、自分達が道を設計して造るんだったらば、どういう物を造るかという、まあ女性の造る道づくりというふうなテーマで、いわゆるワークショップをやった事があります。

 その時、それはもうすでに出来上がってるんですけれども、出て来た1つのアイディアとしては、なぜ歩道が車道よりも高いんだろうかと。この歩道を車道と同じにすれば、そもそも段差もなくなるじゃないか、というようなお話とかですね、それから電信柱を何とか地中に埋めていこうとか、様々な議論が出ました。

 その結果、歩道と車道の差がなくなっています。コンセプトとしては「卵の割れない道」というので、お買い物に行って自転車に乗っても、卵が割れないような道、というのをコンセプトにして造ったんですけれども、その歩道と車道の差がなくなっているために、非常に見た目も広々としてます。勿論、それをガードするロープは張ってるわけなんですけれども、非常に見た目も広々としています。

 これは1例として上げたんですけれども、そういう形で地域の色んなものを考えていく、そういうテーマを、行政としても次々と提供していって、そこに女性に参加をしてもらって、その女性の取り組みというものに多くの人に関心を持ってもらう。なかなかそれも、それだけでは広がらない難しさがあるんですけれども、そういうことの積み重ねがこれから必要なんじゃないかなと。

 女性センターの機能の中で、色々ここで勉強し自らを高めるということもとても大切な事ですが、これは、まあ女性センターだけじゃなくて、一般的な生涯教育全てに言える事だと思いますけれども、そこで得たものをいかに地域で使ってもらうかという事だと思うんですね。で、その使ってもらうチャンスを行政が作っていけるかどうか?という事が、ひいてはまた回りまわって多くの人をセンターの活動に呼び寄せることになりはしないかなと思うんですけどね。

・・・省略・・・

(加賀美さん)
 今の女性の活動は、行政にこうして欲しい。ああして欲しい、とお願いする事が今まで多かったし、多くの人々がそうなんですけども、やっぱり、もうこれから行政ができる範囲って、もうちょっと見えてきてますよね。色んな意味で。勿論、橋本知事の所は違うと思うんですけども。

 ですから、行政の方で、何て言うんでしょうか、人々の意見を訊くという事じゃなくて、もう発信して何が大事かという事をですね、行政の方からみんなにもっともっと、今よりももっと積極的な意味で発信していくということも大事だと思うし、私達の姿勢もそうですし、もう一人ひとりがやっぱり問われていると思うのであります。

 それで、もう本当に一人ひとりが自分の事として、誰に頼るんじゃなくて、自分が何ができるか、という事も徹底的に考えて、担っていく事が大事かなあと思ってるんです。で、しかもそれは、みんなで伝え合い、聞き合いやっていくという事は、私は今、これから一番大事かなと思ってるんです。あんまり、色んな所に期待したりね、お願いしたりするのではなくて、と思っております。

(橋本知事)
 あの、行政だけでできない、という事にはですね、もう色んな意味が含まれているだろうと思います。
 従来はですね、例えば県ならば県の行政っていうのは、やっぱり公共事業というのが大きなウエイトを占めていましたね。

 道を造るとか、河川を直すとか、港を造るとか、そういうような事に代表される公共事業。で、これはですね、一定予算をつけていけば、仕事が進んでいくという分野でした。これからは、その予算をつけただけで果たして仕事が進むか、という事を考えていかなきゃいけない。行政としても時代だと思うんです。

 というのは、その公共事業さえですね、予算をつけても、例えば用地の提供をいただかなければ、そういう市民・住民の協力がなければ進まなかったということですけれども、これからやってかなきゃいけない仕事というのは、まあ協力というか、その住民・地域の方々が主体的に取り組んでいただかなければ進まない事が、もう主になってくるだろうと思います。

 例えば、最初に言いました資源循環の一番の基本になりますゴミの問題でもですね、ゴミの、例えば、分別を進めましょうとか、ゴミの量を減らしましょうと、削減をしましょうと、これで高知県が例えば5億円の予算を組んだとしたって、それでは何も変わるわけではないわけです。

 やはり、地域の中で、それぞれ分別の取り組みをしていく、またゴミを減らしていく、そしてそれを様々な形で資源循環の仕組みを自分達で作っていかれる。そういう取り組みがあって、それを何らかの形で支援をしていこうという事で、初めて予算というのはこの分野では生きてくるわけですよね。

(加賀美さん)
 そうですね。

(橋本知事)
 その様に、もう県が、行政が予算を組んだから、それで仕事が進むという時代では、もうなくなってきてるだろうと思います。
 それから、教育の問題でも、勿論学校の教員の確保とか、そういう事は私達の仕事になるわけですし、他にも施設整備の面なんかも私達の仕事です。

 しかし、それを本当にどう動かしていくかというのは、先ほど言いましたように、やっぱり家庭の教育力だとか、地域の教育力、地域での子育て支援の機能の強化ということになりますので、これは、もう行政がお金をいくら予算を組んだからといってできるもんではありませんよね。

(加賀美さん)
 そうですね。

(橋本知事)
 その時ですね、さっき言いましたように、例えばワークショップなどの場の提供というのも、1つの、やはり行政が関わっていって、その地域活動に繋げていく1つのパターンだと思いますし、もう1つ、やっぱり人材の育成だと思うんですね、これからは。全ての面で。

 で、地域の、まあリーダーって言うと、少しもう手垢の付いた言い方になりますけれども、これからは、その子育て支援でも何でも、そういうことを行政の役人や、またその周辺の人がやるのではなくて、地域の方がもう担っていっていただかなきゃいけないと。

(加賀美さん)
 そうだと思います。はい。

(橋本知事)
 で、そういう方々をどうやって育てていくかという事が、まあ私達の1つの仕事じゃないかと。それを育てるのもですね、何も、行政が行政の仕組みとしてやるんじゃなくて、本当は、もうそういう事を、そういう育てる仕組みを民間の方々が、今流に言えばNPO的な活動としてやっていただいて、行政がそれを支援をしていくというふうな関係ができていくと、僕は地方の自治というものが大きく変わっていくだろうという事を思います。

(加賀美さん)
 リーダーの質が問われますよね。

(橋本知事)
 それをやっぱり担っていけるのは、今女性なんじゃないかな、という事を思うんです。色んな意味で。
 と言うのは、男女共同参画と言っても、やはり、いわゆる時間を制約されて仕事をしてるのは、男性の方が中心になってしまっています。ということから言っても、その女性の力を生かす部分というのは、まだまだ残されているんじゃないかと思いますし。

(加賀美さん)
 その時間があったらという、あるからという事なんですけども、時間があることについてですね、不満を持ったり不平等感を持ってる人がいるんですけども、私はそれもそうだと思うんですが、今おっしゃったように、時間がある、というその事をプラスに考えれば、そのある時間でね、おっしゃるように、何かができないかという、そちらに、こう窓を移していくしか、ユートピアはないんですから。ある状況をプラスに、本当に、こう思考していくしかないと思うんですね。とりあえずは。

(橋本知事)
 自分がこうしたいのにできない、という不平等感はよく分かりますね。

(加賀美さん)
 ええ。

(橋本知事)
 そうでない方々もいっぱいいるだろうと思うんです。少し今の不平等感の話で、またひらめいてしまったので、話がやや横に行ってしまいますけれども、僕、今の男女の共同参画社会というもので、目指していく事はですね、女性の場合に、まあ男性の場合でもそうなんですけれども、仕事をしなきゃいけない、という事じゃ僕はないだろうと思うんです。

 要は、自分達のやりたい、そのライフスタイルを選べるかどうかと、その選択肢をやっぱり広げて、そういう色んな選択肢に対応できる仕組みを作っていくのが、私達行政の今の役割ではないか、ということを思うんですね。

 何十年前は、「良妻賢母」という事が1つのパターンとしてあってですね、女子大学でさえ、そういう人材を育てるんだ、という事を標榜していた時代があったわけですね。

 それに対して、女性の社会進出、女性も仕事をしよう、という動きが出て来て、それはとても素晴らしい事だと思います。けれども、だと言って「良妻賢母」と言うような生き方をする人が、また軽蔑をされるべきでもないと思うんですね。全ての人が仕事をしなければいけないという事でもないだろうと思うんです。

 やっぱり、その中で、それぞれの女性、それぞれの男性が、自分はこういう生き方をした。女性で言えば、家にいて、亭主を送り出して、自分は子どもを育てる、そういう人生を送りたいという人だっているでしょうし、また、子供は作らずに2人でとも働きで、という人もいるでしょうし、一方で、一緒に共働きしながら子どもを育ててるという、様々なパターンの人生が選べる時代になってきて、その選択肢をどう整備をしていくかという事が、今行政の役割だということを思うんです。

(加賀美さん)
 そうですね、はい。

(橋本知事)
 ですから、そういう中で、自分は共働きをして子どもを育てたい、だけど、こういう事情でできないということは、僕は不平等感としてあるだろうと思いますし、そういうことは解消していかなければいけないと思いますけれども、一方、今の、やはり現実の中では、そういう不平等感とは別にですね、色んな時間を持っている、時間のゆとりのある人が女性の中にはいらっしゃるんではないかなという事を思いますので、そう言うとまた叱られるのかも知れませんが。

(加賀美さん)
 いえ、良いと思います。はい。

(橋本知事)
 と思いますので、そういう力を、やっぱりもっともっとこれから活用させてもらわないといけないし。

(加賀美さん)
 そうですね。

(橋本知事)
 出してもらわないとけないという事を思うんです。で、それによって、僕は大きく地域社会そのものを変えていくことができるんではないかということを思います。

(加賀美さん)
 そうですね、時間のある人は、そのある時間を利用して、プラスに動いてもらいたい。で、色んな在り方があると思うんですね。色んな力があると思うんです。


(橋本知事)
 話は、またピョンピョン飛ぶんですが、その地域社会という時にですね、従来で言えば民主主義社会の中で、県で言えば県議会があり、市町村で議会があり、そこの議員がいてということで、本来は、そういう場面にも女性がもっともっと出ていくと良いと思います。

 また、それを保障するようなものも僕はできた方が良いと、今の段階でできた方が良いと思います。けれども、そういう事が無くてもですね、今申し上げたような形で、地域でまだ余力を持つ、また何かをしたいという女性に参加をしてもらって、地域でのテーマでの地域づくりだとか、人づくりだとかいう事に関わって下さる。

 そういう仕組み、取り組みができていけばですね、自然にそんな議会だ何だ、という公的なものとは別の所で、力が蓄えられてくるだろうと思いますし、それがむしろ、議会や何かとは別に、議会は議会で僕は必要なものだと思いますけれども、そういうものとは別の所で、新しい地域をつくる、地域を変える存在になってくるんではないかな、という事を思うんです。

(加賀美さん)
 よく分かります。そうですね。そういう大きな捉え方をすればですね、色んな事がうまくいくような気がするんですが、大きな捉え方をしながら、なおかつ、小さな意味でもね、やっぱり私達は積み重ねていかなくてはならないと思うんですね。

 でも、今、仕事=人生。まあ、人生をどう生きるか、という事だと思うんですけど、仕事だってユートピアはいつもないわけですから、仕事は種類とか内容じゃなくて、もう仕事の中に自分の役割をつくっていくと言うんですか、これはもう自分で自在にできますから、これはどんなことだって役割をつくれるわけですから、何て言うんでしょうか、役割見つけろとか、それも、でも、力がないとですね、頼るんですよ、やっぱり。

 自分に力がある人はね、どんな小さな事の中にも意味を見つけることができるんですけど、そうじゃないケースもあるんです。見つけることができなくって。そうするとやっぱり頼って、私は差別してるわ、仕事がダメだわ、認められないわっていうふうに、どうしても頼りがちになって、そうするとそっちに向かって、どうにかして欲しいっていう、運動に走るケースも無きにしも有らずなんですね。

 ですから、本当の力って何なんだろうかという、その辺をやっぱり見つめていくという、その見つめることが大事だというメッセージ、発信も、やっぱりここにいらっしゃる方達のお役目でもあると思うんですね。

(橋本知事)
 うん。

(加賀美さん)
 それもあるし、それから私もう1つ伺いたいのは、高知の女性達なんですけども、私は高知がとても好きで、もう伺う度に、会う度に、高知の女性に会う度に、何かとっても気持ちの良いものを感じるんです。
 それは何なんでしょうか、働き者だし、しかも真面目だし、真面目さと働き者と、しかもそれが積極的っていう。県によって、風土によって随分やっぱり地域で違うんですね。

 これは、私やっぱりいただきたいぐらい、その力を感じるわけです。その力というのは、戦う力もあるけれども、そのマイナスの状況の中をどう乗り越えるか、乗り越えることができるかという、その力がとても大事だと思うんですね。

 で、それも大事な力と思うので、高知の人達、女性のですね、高知とか、あるいは私は上州で、実はかかあ天下で、あれも力です。沖縄のお母さん達もまたとっても力が強くて、私は仕事柄全国を回りますが、知事と同じように、やっぱり、そのどこも女性が強いんですけども、目立つのが高知、それから沖縄のお母さん、群馬のお母さん、他もみんなそうなんですけど、せっかく高知に今日伺ったので、もう高知の女性の強さが何かという事を、ちょっと、地域の問題としても伺いたいと思ってるんですが、お願いします。

(橋本知事)
 最初にですね、先ほど、今、高知の女性の強さは何か、というのが最終の質問でしたけれども、そのお話に至る過程の中でですね、仕事というものを、それぞれの自分の仕事をどう捉えるか、というお話があったと思います。

 で、これはもう女性に限ったことではない、男性でもそうですけれども、もう自分自身もですね、NHKの記者って言うと、大変世間から羨ましがられる仕事だと思いますし、NHKのアナウンサーでもそうだと思います。しかし、みんながみんな満足してやってるわけでは勿論無いわけですね。

 そういう言い方をするといけませんけれども、NHKのアナウンサーでも、加賀美さんのように東京にいて大きな番組をずーっとという方は数少ないのであってですね、本当に、そのローカルを回って、地道にそれぞれの地域の放送を支えてるアナウンサーが、全体から言うとほとんどの数になるだろうと思います。

 記者でもそうですね。全国に何十という放送局があって、そこで地道に地域のニュースを拾って書いてるという記者もいるわけですし、一方でアフガンに行ってリポートをしてるというふうな、まあ花形的に見える記者もいる。それぞれがやっぱり仕事をいかに自分自身が大切なものとして理解をして、仕事をしているかという事は、とても重要なことではないかと思うんです。

 非常につまらん例なんですけれども、僕も社会部にいた時ですね、社会部にはもう毎日のように色んな資料や封書が送られて来ます。今だと炭疽菌の問題があって危なかったかも知れませんけれども、僕は、そういう送られてくる封書を開けるという仕事をですね、率先してやっておりました。

 というのはですね、ほとんどはですね、企業や団体等の広報のものでですね、もう単なるお役所の宣伝だとか、企業の宣伝だとかいうものが大半なんですけれども、やっぱりそういう中から面白い、そうした中に、フッと、こう面白いものが拾えるという事もあります。

 また、全く馬鹿馬鹿しい事なんですけれども、封筒を、こう切る中でですね、ヨコに切りやすい封筒と、タテに切りやすい封筒。これ、繊維があるもんですからね、あるんです。で、その内、何度もやってるとですね、清水建設の封筒が来たらヨコに切ったら切り易いとかね、それで竹中組が来たらタテにやったら。

 それは、そうだったかどうか忘れたんですけど、というようなことを、自分で覚えてってですね、ああ、熟練てのはこんなことかな、と自分で思ったことがあります。

 というように、どんな馬鹿馬鹿しいことでもですね、自分がそれなりに熟練したなと思うのはですね、結構楽しいものなんです。で、要は、先ほど加賀美さんが言われたように、物の見方とか、意識の持ち方であってですね、それぞれの自分の与えられた仕事というのを、いかにやっぱり楽しくしていくかという事は、とても大切な事だと思います。

 よく、「何で私これだけやってるのに、その歯車みたいな仕事しなきゃいけないの」こういう言い方をされます。でも、僕はですね、やはり組織の歯車として、歯車の1つも回せない人が、その歯車全体を設計したりすることは、僕はできないんじゃないかと思います。

 やはり、歯車を回す経験、また回す力というものがあって初めてですね、そういう歯車を全体としてどういうふうに配置をしてどう動かすか、という事が思い浮かんでくるのではないかなという事を思いますので、仕事をそれぞれつまらない仕事、面白い仕事というイメージはあると思いますけれども、やる中で、必ず面白みっていうのを僕は出て来るということを、自分の体験として思いましたので、是非、そういう意識は女性も男性も限りませんけれども、持ってもらいたいなということを思います。

(加賀美さん)
 ええ、そうですね。はい。

(橋本知事)
 それで、高知の女性は、という事ですけれども、私もなぜ高知の女性が特に活発なのか、という理由までは分かりません。けれども、自分の実感としてもですね、他の県でも、もう男性に比べれば女性の方がはるかに、どこでも頼りになりますけれども、高知は特にそうではないかというと、高知の男性もおられると思いますので、怒られるといけませんけれども、そういう気がいたします。

(加賀美さん)
 そうですね、ええ。

(橋本知事)
 やっぱり何か歴史的な風土としてもそういうことがあったんだろうと思うんですね。で、よく言われますけれども、楠瀬喜多さんという、婦人参政権をですね、強く要求した事だとかですね、全てにその様な女性の活躍というものが、歴史的な過程でも見られますので、たぶん、そういう積み重ねの風土なんだと思いますけどね、特段、何が原因か、というのはよく分かりません。
 沖縄と高知だったら、同じ黒潮文化なんですけれども、上州が入りますと、上州は若干、若干どころか全然違う所でございますので。

(加賀美さん)
 でも、「働き者」という点では共通している、どこでも女性は、もう働いてきましたけれど、でも、私はその質問をしたのは、やっぱりなんか理由があるのかなと思ったんです。
 そう、どんなこともね、乗り越えていく力っていうんですか、足元を見つめながら、とにかくやってしまうという、そういう所が、高知の中の風土の中にあったのかな、と思っていたんですね、それで今質問をぶつけてみたんですけれども。

(橋本知事)
 それは、多分そうだとは思うんですけれども、それはこうだという、何か理屈をもって説明するものがありませんね。

(加賀美さん)
 「はちきん」という言葉がね、本当はあまり良い言葉ではないかも知れませんが、そういう言葉が全国的に聞こえるということですからね、やっぱりそれは何かあるんですね。

(橋本知事)
 そうですね。やはりそれは、農業でも、水産でも、林業でも、かと言って、それじゃあ、高知県以外の同じような地理的条件の地域はどうか、と言うと同じかも知れないんですけれども、そういう産業の中で、やっぱり女性が占めてきた地位っていうのは非常に大きい、役割は非常に大きいと思いますし、今、本県でも、農業においてももう、農業の労働力の50%、半分以上は女性の力で支えられていますので、そういう、仕事の面での女性の果たす役割というのがですね、一定女性の活動、活発さにも繋がっていることは間違いないと思いますね。

(加賀美さん)
 でも考えてみると、女性が弱かった時代って、実はなくて、女性って本当に昔から強かったですよね。

(橋本知事)
 うん。

(加賀美さん)
 例えば、天皇陛下を思い浮かべても、奈良時代は持統天皇をはじめ、天皇の半数が女帝であったり、そしてなおかつ封建時代になって女性は表に出なくても、春日局のようにですね、後ろで結局は牛耳ってるとか、色んな強さがあるわけですけれども、私はその堪える力っていうのも、女性は男性よりはるかに強いと思うんですね。

 堪えさせられたから、鍛えられて強くなったとも言えますけど、色んな力を私達は持ってるわけで、マイナスのエネルギーだってこれは力になるわけですね。あんまりマイナスのエネルギー欲しくないっていう方もいらっしゃるし、楽なエネルギーの方が良いっていう方もいらっしゃるかもしれませんけど、それだけでは人生やっていけないので、いかにマイナスのエネルギーを、どんな事も力にしていくという、そんなことがとっても今求められていて、その力を寄せ合わないと、私は21世紀、これからですね、やっていけないんだと思うんですね。

 ですから、その力を共に、男女共同参画の共同って、みんな言葉だけにみんなですね、最近、言葉、言葉なんですね。みんな言葉というのは魔力を持っていますから、そりゃそうよ、当たり前よって、みんな言うんですけど、じゃあ、本当の共に力を合わせる、ということは一体どういう事なのかって、男女共同参画っていう、その言葉を込めてですね、その本当の意味というのを、私達は今もう1度ですね、考えなくてはいけないと私は思ってるんですね。

 で、今女性センターでも、そういう意味でいつもいつも考えているんですけれども、共に力を合わせるという、これについてはどんなふうにお思いでしょうか、男女共同参画という、本当の意味っていうか。

(橋本知事)
 私も耐える力は強いと思ってますので、その点は、女性的かなと思いました。
 それはともかくとしてですね、男女共同参画という時に、やはりこれまでは、どちらかというとその言葉そのものが、まあ法律の中にもあるように、行政が主導型だったんじゃないかという気がします。

 やっぱり行政の役割としてですね、一定法律などで雇用機会の均等を保障していくとか、また色んな場面での女性差別、女性問題を無くしていく、そのための担保をする、保障をするということが必要になりますので、その制度作り、法律作りなどが1つは先行したという面があると思います。

 一方に、その、まあ単純なと言うといけませんけれども、ともかく男女共同参画を、という思いと運動とがあってですね、それがこう、双方行政主導型と、一方ではその運動論型とという事が先行してしまって、うーん、男女共同参画って一体なんでしょうね、どうやって本当にお互いの力が助け合う男女共同参画になるんでしょうねっていう所が、なかなかまだ煮詰まってはいないだろという事を思います。

(加賀美さん)
 そうですね、はい。

(橋本知事)
 ただ、それはこう時代の流からいってもですね、一定やむを得ないことなんじゃないかなと。先ほどの、その女性センターというものが誕生していって、そこで女性の皆さんが色んな事を、ただそこに男性も入ってですね、女性センターといっても男性も含めて色んな活動ができるようには、まだなっていかないという、その時代の経過と同じだと思うんです。

 男女共同参画というのも、当然、やはりその制度作りから入り、また色んな運動が様々な思いを持って取り組まれるというのが、今の現状だと思いますが、そこから、本当にその男女共同参画とは何かという事が、次のステップとして出て来るんだろうと思います。

 そこはですね、むしろ行政が、またこうあるべきだとか、そのプランを紙に書き込んでですね、スローガンとして掲げるという事よりも、それぞれのやっぱり取り組みの中で、皆さん方が考えて下さるべき事なんじゃないかなということを、僕は思いますけれども。

 男女という時に、やはり明らかに色んな力の差があるということは、これはどちらが上だとか下だとかいうことではなくて、質的な違いがあるということは、もう間違いのない事だと思うんです。

 ですから、全く同レベルという言葉もいけないのかも知れないですけれども、そういうような形での共同参画というものではなくて、やはり、お互いが色んな特質を出し合って、力を増していく、社会全体の力を増していく、そういう作用を起こすのが、男女共同参画ではないかなと、まあ僕は思いますけれど。

(加賀美さん)
 その特質を出し合うというその事が、まさにそうだと思うんですけど、その特質って何なんだろうかと。
 ただ、何でも出し合えばいいってもんじゃなくて、収集つかなくなりますし、それが何なんだろうっていう事、結局は一人ひとりという事になるんですかね。

(橋本知事)
 特質は何か、ということはですね、分からないと思いますね。

(加賀美さん)
 分からないです。

(橋本知事)
 分からないです。分からないですし、果たして、全ての分野で男女の特質があるかどうかも分かりません。まあ、運動能力だとかいうことで、男女の特質がハッキリ分かるようなものもあると思いますし、全くそうでないものもあると思います。

 男女の特質云々、というのはですね、結局これまでは男性優位の社会であり、また、男性はこういう仕事、女性はこういう仕事という、いわゆる役割分担意識が固定観念としてあったために、なかなか女性が進出をできない部署だとか、文化だとかいうものがあったと思います。

 で、それを無くしていくことによって、女性も色んな場面に登場する。その事によって、自然に従来、やっぱり女性が入っていなかったのとは違う何かが必ず僕は起きるんじゃないかということを思います。
 それが、それぞれの力なのであって、今から女性の力はこの分野では何とか、男性の力はこの分野では何、ということを決めてかかるものでもないと思います。

 また、それぞれ一人ひとりの個人ということで言えば、一般的には男性の能力、男性の方がその分野では、運動能力などで優れていると言われていても、個別の女性はそれを上回る力を持った女性もいるかも知れません。

 というようなことがありますので、やっぱり、従来、充分活用されていなかった女性の力があると思います。これまでの社会の仕組みの中では。それが発揮できるようなチャンスを作っていけばですね、そこから自然に何らかの新しい動きが出て来るのであって、今の段階から、こういう女性の力が眠ってるから、それを起こそう、とかいう事じゃないんだと、僕は思うんですね。

(加賀美さん)
 そうですね。もうでも、長い歴史の中でね、それが大体歴史の営みがもう既に伝え続けてくれて、大体こう見えてはいますけど、でもやっぱり自然に、そう自然にとおっしゃった自然に。でも、やっとこの今、時代の風が吹いて来て、ここに来るまで本当に長い間、もうずーっとなかなか時代の風が吹かなかったのがやっと吹いてきたという。

 それで、おっしゃるように、まず自然になるためには数ですか、数の力って多いですよね。私が、NHKに入っても、NHKっていうのは男女平等ですから、放送局を発信していくと所ですから、不平等があったら発信できないわけで、仕事そのものには不平等はないんですね。

 でも、入局の時すでに、数においてすでに差別があって、男性は何百人、女性は本当にもう何人しか入れないで、もう既にそこで実はあって、もう中ではありませんけれども、ですから、数の力っていうのは本当に大事ですから、基本的にはおっしゃったように段々自然な形で、女性が色んな組織の色んな所に入っていく中で、中で段々段々自然に力を出していけば、そこで本当に見えてくるんだと思うんですが、

 ただあんまり時間がかかるので、もう21世紀だと100年、1世紀なんて100年なんて本当に短いですね。私だってもう60年生きてますから、おまけしていただければ、もう10年ぐらい、1世紀ぐらい生きられるという。
 ですから、本当に100年なんて短いわけですから、やっぱり、この21世紀は人間の在り方が問われる世紀ですから、あんまりゆっくりもですね、実はしてられ無いという気が実はするんですね。ですから、本当に、行政の立場で。

(橋本知事)
 ええ。数で言うとですね、確かにおっしゃるとおりで、少数の中ではなかなか、その少数であっても、多数と少数の間に差別が無くてもですね、やはりその数が少なければなかなか全体としての力が出ないということがありますね。

 一方で、その数のことでフッとまた思い出したんですけれども、小学校、中学校の先生は、今はもう女性の先生が圧倒的に多くなってきております。で、ちょっと今の正しい数字を覚えていませんけれども、本県ではもう小学校の先生は70%女性だと思います。

 そういう中で、お母さん方、その小学校に通わす母さんからも、あんまりにも女性の先生が多くて、何か子どもが女性っぽくなるんではないか、というようなことをおっしゃる方があります。
 現実に、不安として言われる方がいますし、もう少しやはり男女のバランスを考えたらいいんじゃないかと、逆の意味でですね、というようなご指摘を受けることがあります。

 で、僕はこれは、正解は何かとか、どういう方向に進むべきか、という持論を持ってる分けじゃないんですけれども、こういうような事もですね、僕は是非考えてみて、議論してみていただけたらなということを思うんです。

 これまでは、女性の社会進出が非常に少なくて、その割合を増やしていきましょう、という事が主な運動論でもあったし、取り組みでもあったと思います。また、加賀美さんが言われたNHKのアナウンサーの中での立場というのも同じ事であったと思います。

 これはもう段々段々とどの分野でも、どうにか解消されつつある。方向としてはあると思うんですけれども、一方で、それでは50/50を超えた時に、女性が8で男性が2というふうなことになっていった時にはどうなのかというようなことも、議論としてはしていただいたらいいんじゃないかと思うんですね。

(加賀美さん)
 ええ、そうです、議論としては、そうですね、はい。

(橋本知事)
 あまり大きな声では言えませんけれども、警察の職員の採用などもですね、これはもうペーパーテストだけだと女性の方がワッと増えるんですよね。

(加賀美さん)
 ええ、何かNHKもそうだそうですけど。

(橋本知事)
 それで、それではなかなか色んな問題があるという事で、それで実技テストでですね、体力の実技テストで一定そこのバランスをとるというふうなことを、まあお聞きをしたことがあります。
 というような色んな課題がですね、これから、やっぱり逆に出て来るだろうと。そこら辺も1つの数という事から言えばですね、課題ではないかなということを今お話を伺いながら思いました。

(加賀美さん)
 今日は12時までというお時間をいただいてるんですけれども、「トーク&トーク」というのは講演とか講義とは違いまして、本当に今のように投げ合いながら、ひらめきでドンドンドンドン、それが本当のトークなんですね。

 そうじゃない一問一答で、これこれこうについてはどうですか、はい、はい、こうですって、それだったらちっともトークになってない。今日は本当に次から次へと、本当にひらめいて、私はもっと前に戻りたいなと思っても、もうドンドン進んでいて、それがまたとってもね、新鮮なんですね。

 今日は、もう実は、本当にそういうトークをしたいなという事を、坂本さんにもお伝えし、OKということを言われていてですね、今日は嬉しいんですけども、その中から私達が、今知事からいただいた中から、私達がカギを探していく、生きるカギを探していく、これからの活動にあたってのカギを探していくということで、幾つも今までカギをいただきましたけれども、私達は本当に、本当の意味で、やっぱり弱さ、柔らかさも含めて本当に強く生きたいと思ってるんですね。

 で、ひとつ、これは男性もそうですし、女性もそうですし、子どもたちも、本当に子どもたちが次の世代を担っていく子どもたちが、本当に強く生きて欲しい。これは頑張ってという意味じゃないんですけど、いきいきと生きてもらいたい。

 そのための、何て言うんでしょうか、政治だって、経済だって、教育だって、社会だって、みんなそのためのものではないかと、元々、難しいことを言いますけども、本当は人がイキイキと生きていけるかどうか、そのためのものという事を考えれば、もう本当は易しいことなんですよね。難しいものじゃないような気がして。

 だから、私達はすぐ問題を難しくしてしまって、男女共同参画の話もそうですけど、本当はもっと易しくって、お互いがお互いを案じたり、心配したり、思ったりっていう、それが何か根本ではないかな、と思うんですね。

 今日は、私自身はその様に思ってるんですが、後もう10分ぐらいしかありませんけども、これから知事が地域でどんなお仕事をされていらっしゃるのか、そして、また地域で活動していく私達に、どんなメッセージを下さるか、もう全国からみんな来てますので、もう沢山メッセージをいただきましたけれどもですね、最後にその辺のお話も熱く深く色々していただきたいと思います。
 よろしくお願いします。

(橋本知事)
 はい。僕はですね、これからの地域づくりの中で、やっぱり行政と住民との関係というのを大きく変えていきたいということを思い続けて、これまでも言ってきましたし、そういうことを、是非実行していきたいということを思うんです。

 それは、先ほど加賀美さんのお話にもありましたように、人任せじゃなくて、やっぱり自分達でやっていくんだ、という住民であっていただきたいし、県民であっていただきたい。また、それを支えて一緒にやっていける行政であっていきたいなという思いです。

 従来はですね、公共的なサービスというのは、県ならば県、市町村ならば市町村、そういう行政が担ってやっていくということが、県民にとっても、行政にとっても常識ではなかったかと思います。
 そういう中で、もう公共サービスは県の立場で言えば、私達の専門領域なんだから、もうお任せ下さいねと、こういう意識で、先ほど例に挙げた公共事業なんかもドンドンドンドン進めてきたわけです。

 しかし、出来上がってみると、なぜあんなものがあんな所にできたんだとか、どうせ作るのであればもうちょっとこうしてくれれば良かったのに、というような思いが積もり積もってですね、今公共事業にやっぱり無駄が多いんじゃないかという、大きな逆風が吹いていると思います。

 これはですね、せっかく大変な予算を使って、皆さんの税金を使って社会資本を整備してきたのに、とても勿体ないことだな。やはり、そういう所の計画から実施に至までの仕組みを変えていかなきゃいけない時に来てるんではないかということを思うんです。

 一方で、住民の方々もですね、県民の方々も、これまで行政を見る目というのは、何か要望や陳情をするか、こういうものを作ってくれ、こうしてくれという事を言うか、なぜこんな事をしたんだと言って批判をし、けちを付けるかという存在であって、お互いが一緒になって何かを作っていくという意識ではなかったと思います。

 これを、これからは変えていく、計画の段階からみんなが一緒に入って考えていく。そして、実施も一緒に考えていく。そういう地域社会になっていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですね。
 そう言うとですね、そんな事したら、もう、色んなお話聞いて、もう予算もドンドンドンドン膨らむし、時間もかかるしという事は、必ず行政の側からは出て来るだろうと思います。

 けれども、予算というのはですね、やはり言ったものをなんでも聞いてしまうというこれまでの、そういう対応だったから、そんな事になるのであって、やはり、この限られた予算でこの事業をやっていかなきゃいけない、その時にどうしたらいいか、という事を前提に、やっぱり議論をしていく。

 そういう立場を分かっていただきながら、住民にも声を出していただくという、そういう訓練が1つは必要だと思いますし、時間はきっと今まで以上にかかるだろうと思います。
 しかしですね、これまでのように、全てを県ならば県、行政が計画をして作っていって、途中でなぜあんなと言って、また議論が逆戻りして一旦凍結をしてということを繰り返すよりも、早くできるということになるだろうと思います。

 かつて「環境アセスメント」というものが出て来た時にも、環境影響評価をやりましょうという事が出て来た時にも、公共事業の担当者は、そんなことをしたら、もう時間がかかって1つも事業なんか進まない、ということを声高に言ってきたと思います。

 けれども、もうこういう環境への環境影響の評価というものが常識になって、そういうものが県でそれぞれ要望なり、指針なり、条例なり、ついには法律としてもできましたというような事で、やっぱり、今申し上げたような、住民と行政が一緒になって、まあワークショップやなんかの形で物事を進めていく、こういうやり方もですね、将来は、それこそ、それぞれの指針、要綱になり、条例になっていく時代があるだろうと思います。

 その時必要なことは、やっぱり情報公開ということだと思うんです。というのは、従来の情報公開というのは、県の職員が何か食糧費で美味しいものを食べたんじゃないかとか、カラ出張したんじゃないかというふうな、行政の中にある色んな問題点を暴き出していくという機能でした。

 こういうチェック監視の機能というのは、今後も情報公開の機能として残ると思いますが、もっと重要な情報公開の機能というのは、今申し上げたように、行政と地域の住民の方が一緒になって計画を立て、また一緒になって色んな事を行動をしていく。その時に、行政だけが情報を囲い込んでいたのでは、同じ舞台の上での議論になりません。

 つまり、住民の皆さん方と情報を共有をし、同じ情報を共有をして、それを基に議論をしていくような仕組みにならなきゃいけない。この役割を果たすのが、情報公開だと思います。

 と同時にですね、この情報も、ただ単に役所の持ってる生のデータが出てっても一般の方には分かりません。それを、このテーマで話し合うのであれば、やはりこういうような分野が皆さん方の知りたい分野だし、それをどう分かり易く説明をしていくかという能力、その資料を少しバージョンアップをして説明をしていく力というのが必要になってくるだろうと思います。

 こういうことは、行政の側が全てできれば良いですけど、なかなかできない。で、その役割をしていくグループ、NPOのような活動がですね、これから大変重要になっていくのではないかということを思って、そういうような運動体を、もう女性を中心にあちこちに立ち上げていただければ、僕は地方の自治というのは大きく変わるんではないかと、そういうことを是非やっていきたいなということを思います。

(加賀美さん)
 私はついですね、今日はですね、インタビュアの形ではなかったんですけど、どうしても仕事柄ですね、どうしてもインタビューしてしまうんですね。そして、私ですね、今、知事としてはですね、高知の女性センター「ソーレ」に、いつもね、どんなお話をなさっていらっしゃるのか、その辺の所をですね、期待度も含めてお伺いしたかったことです。

(橋本知事)
 これまではですね、やはり数々の女性の運動体があり、そういう皆さん方が勉強したり議論したりする場であったと思います。で、先ほどの話の繰り返しになりますけれども、もう少しその周辺にいる幅広い層が来てくれて、色んな活動に参加していただくきっかけづくりの拠点に、僕は女性センターが、これは高知だけの問題ではないと思いますけれども、全国でなっていけばですね、大きく、その地域に貢献できるセンターになっていくのではないかなと。

 今でも、もう充分な仕事はしていただいてると思いますけれども、いかに、やっぱりその幅を広げていくかということが、これからの大きなテーマだと思います。

(加賀美さん)
 そうですね。色んな事を受け止めたり、行動していくためには、自らがゆとりの気持ちがないと、なかなかせっぱ詰まってると物が見えなくなりますけども、私達は色んな物を受けたり、カギを探したり、色んな事をしていく上で、何か自分自身が本当にゆとりを持って、生きていきたいなというふうに思ってるんですね。

 そのゆとりの心をつけるためにもですね、何でしょうか、その力もですね、私達は女性として、これは観念論じゃなくて、精神論ではなくて、これは実践論としてですね、大事にしていきたいなというふうに思って。

 結局は、人間がどんなことだって、21世紀をどう生きるかというのは、結局、人間が人間らしくゆとりを持って生きていけるかどうか、そのための政治であり、経済で全てだと私は思うんですね。
 その事もやっぱり精神論と捉えないで、考えていきたいなというふうに思ってるんですが。

(橋本知事)
 そうですね。女性センターといって色んな活動に取り組むとすると、その女性問題だとか、男女共同参画型社会で、その問題についての専門家を呼んでですね、議論してということになりがちだと思いますし、その事は僕はとても大切だと思います。

 が、それだけではなくて、いかに先ほど言ったような一般的な地域での活動、NPO的な活動とかいうことに幅を広げていけるか、ということと同時に、ゆとりという事で言いましたけれども、色んなつまらん雑学だとか、発想だとかいうことをがですね、様々な運動の、また新しい方向性を見つけるきっかけになったりいたしますので、そういう雑学的なゆとりを、何か楽しめる場にもなっていけば良いんじゃないかなということを思うんです。

 女性センターだから女性問題や、男女共同参画でシンポジウムや、そういう話し合いをするだけではなくて、もっと一般的な、何か面白い雑学的なですね、事もやり、そこからなんかゆとりを見つけるということも必要かな、というふうに思います。

(加賀美さん)
 雑学って、「雑」っていう意味じゃなくても、色んな、広く、もう全てのことが生きることに繋がってるわけですから、それを捉えていくという、そうですね。広く生きていくことですね。

(橋本知事)
 はい、はい。

(加賀美さん)
 いつもそうしてらっしゃるんでしょうか。

(橋本知事)
 いや、自分は全然実行できていないのです。人様に言うだけで。自分は、雑学というと大変失礼ですけれども、やっぱり毎日、毎日多くの方に会ってですね、色んなお話を伺います。それが、その自分の勉強と同じだと思います。

(加賀美さん)
 なるほど、人からいただくという。自分自分にこだわると、もう自分止まりですけど、人からいただくとその分だけ本当に沢山のことが経験できるわけですから、私自身もいつもそう思ってるんです。

 いただくっていうの嬉しくて、嬉しくて、もうどんな機会にも、どんな人に会っても、生きるカギというか、カギ探しといいましょうか、いつもいつもカギ探ししてるんですが、今日はですね、沢山のカギをですねいただきまして、私はとても嬉しかったし、会場の皆さんもたぶん同じ思いだと思うんです。

 で、この後はですね、これは分科会じゃありませんから、この後、分科会でまた厳しい議論をですね、重ねていただきたいと思います。

 今日は、12時までというお約束で、お忙しい知事ですから、これで終わらせていただきます。今日は本当にありがとうございました。

(橋本知事)
 どうもありがとうございました。
 


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