部課長・出先機関長会議での知事、副知事、出納長の話

公開日 2007年12月07日

更新日 2014年03月16日

部課長・出先機関長会議での知事、副知事、出納長の話

平成14年4月8日

【知事の話】

 皆さん、この1年、誠にお疲れさまでございました。また、これからの1年も、県庁を取り巻く環境、大変厳しいものがありますけれども、どうかよろしくお願いを申し上げます。

 そこで、これからの1年、また来年度を目指してということで、何のお話をしようかと思いましたけれども、あんまりあれこれ詰め込んで話をしても、お聞きになっていてくたびれてしまうのではないかというふうに思いましたので、来年度に向け、またこれからの1年ということで、大まかな課題について手短かにお話をした後に、私たちを取り巻く環境の変化、また自分たちの仕事のあり方の問題点にどのように気づいていったらいいのか、またそれをどう活用していくかという“気づき”ということをテーマにお話をさせてもらいたいと思います。

 まず、これからの1年ということですが、今年は、何といっても高知国体、並びに全国障害者スポーツ大会が開かれる年です。ですから、これらの大会を無事成功させることが、まず最大の課題です。また、その際には、多くの職員の方々に、この両大会に関わっていただくということになりますけれども、それに当たっては、自分自身が誰の指示を受けてどんな仕事をするのか、また、誰に対してどういう指示をしていく責任を負っているのか、つまり、指揮・命令系統の中で自分の位置づけというものをきちんと確認をしておいていただきたいと思います。

 また、これだけの大会ですと、予想外のこと、計画外のことが必ず起こります。そんな時にどう対応していくのか、また自分の持っている範囲ではどんな計画外のことが起こりうるのかということも、本番を前にきちんと確認をしておいていただきたいと思います。
 つまり、国体と、全国障害者スポーツ大会に関しては、指揮・命令系統の中での自分の位置づけの確認ということと、危機管理に対する対応ということを頭の中にきちんと置いておいていただきたいと思います。

 次に、来年度に向けての取り組みということでも2点お話をしたいと思いますが、一つは、組織の改革ということでございます。
 が、これも従来のように、組織の名前を変える、また切り張りをするということよりも、仕事の進め方や仕事の流れを変える、ということに重点を置いていきたいと思います。と言いましても、従来からの行政改革といえば、組織の名前を変えたり、切り張りをするということが、頭にすぐ浮かぶ方々には、なかなか馴染みにくい点かもしれません。

 けれども、そういう組織の、単なる切り張りということではなくて、これまでの仕事のやり方を考え直してみる。例えば、決裁の流れだとか、定数管理の権限の場所だとか、またプロジェクトチームの活用、そんなことから本庁と出先との関係、県と市町村との関係、そういう権限の見直しに至るまで、そのような仕事のあり方、流れの見直しということに、是非、重点を置いた行政改革を進めてみたいと思っています。

 もう一つは、予算のことですが、これだけ環境が厳しい時ですから、シーリングという手法は、やはりこれからも避けて通れないと思います。しかし、これまでのように、ただ一律にシーリングをかぶせていく、当てはめていくというだけでは、なかなか県全体としての政策的な方向が出しにくくなります。そこで、タイムリミット方式と言われるようなやり方を、より広く、より積極的に使っていく、そのことによって財源を浮かして、それを政策的な投資に使っていく、そのような取り組みを是非進めていきたいと思います。

 と同時に、県庁の中の仕事で、民間にはできない、また民間には任せられない仕事は何だろうかというような視点で、県の仕事を総点検をしていく。そのことによって、民間に任せられることは、民間のサービスを買っていく。そのようなことも是非積極的に取り組んでいきたいと思っています。

 ということで、これからの1年と、そして、来年度に向けてということの大まかな課題をお話をいたしましたので、次に、私たちを取り巻く環境の変化や、仕事の上での問題点にどう気づくか、ということにお話を移したいと思いますが、今年の春は、どこに行っても決まり文句のように、また、あいさつ代わりのように交わされた会話があります。それは「今年は、桜の花がずいぶん早く咲いたね」というやり取りでした。

 確かに、一昔前ならば、入学式には桜が付き物でしたけれども、この5日に山田で開かれた高知工科大学の入学式も、ほとんど葉桜の中での入学式でした。ただ、調べてみますと、毎年、桜が大体いつ頃咲いて、いつ頃満開になるのかという、いわゆる平年値は、平年値の記録が変えられるたびに段々段々早まってきていて、高知の場合は、桜の満開の平年値は今は4月1日になっています。ですから、もう既に入学式には桜が満開といったイメージそのものが、こうした時代環境の変化とズレを生じているのかもしれません。

 が、このことをもう一つ裏返して考えてみますと、今年のように、東京で平年より12日も早く桜が咲いたといった、際立った、極端な変化ならば、みんな「あ、これは何かおかしいな」と変化に気づきます。けれども、平年値がその度に段々早まってきているという、徐々に来る変化にはなかなか気づきにくいという点が指摘できるんじゃないかと思います。

 同じような話に、ゆでガエルという寓話があります。これは、カエルをいきなり熱いお湯につけたら、カエルはビックリして外に飛び出しますけれども、ぬるいお湯につけて、段々段々そのお湯を熱くしていくと、カエルはぬるま湯の中で気持ち良くなって外に飛び出せなくなって、やがて煮えガエルになってしまうという例え話です。

 このことを、私たち公務員に当てはめてみますと、県・市町村との関係、国・県・市町村の関係、また補助金といったような制度、さらには公務員の身分保障といったように、ずっと変わらないできた制度の枠組みの中に、ある意味では安住をしてきました。ですから、いきなり熱湯の中に入るということはありませんでした。けれども、確実に私たちの入っているお湯の温度は上がってきてるのではないかと思います。

 そのことに気がついて、これは何かしなきゃいけないなと思っておられる職員も数多くいらっしゃると思いますが、その一方で、こうした温度の変化、お湯の変化になかなか気づかない職員の方もかなりいらっしゃるんではないかと思います。

 一方、このように言っています自分自身、10年間、この県庁という組織の中に、漬かると言うと表現が悪いですけれども、いた。それだけで、自分自身の温度の体感が、段々、少し狂ってきてるのではないかな、というような不安も感じます。ですから、皆さんのことだけではなくて、自分自身も周囲の環境の変化をどう感じていくのか、また、自分のものの見方、考え方、仕事の進め方、そこでの問題点にどう気づいていくか、今、とても大切な課題だなと感じています。

 では、こうした環境の変化だとか、仕事の上での問題点にどうやって気づいていったらいいかということですが、これが一人一人の職員、個人であれば本を読んだり、また研修会に参加をしたりしていろんな気づきを得ることができます。が、これが、○○課だとか、○○事務所という組織であれば、組織全体が本を読んだり、また研修を受けたりすることができません。それに代わって、組織全体で考えて、そしてその組織の持っている問題点、また目指すべき方向というものを見出していく、そのための道具、手引書として用意されたのが、行政経営品質という仕組みです。

 と言いますと、またその話かと、こう思われる方もいらっしゃると思いますし、私自身も少々くどいかな、と思わないではありませんでした。けれども、今、高知県庁だけではなくて、役所、行政というものにとって、こういう仕組みを通じて新しい出発をすることがどうしても必要な時だ、と確信をしております。だからこそ、今年も、また去年ああいう事件が起きた後の今年だからこそ、改めてこのことをもう一度申し上げたいと思いました。

 行政経営品質ということを言いますと、皆さんの中に「ああ、そういえば」と、こう思った方がいらっしゃるんじゃないかと思います。というのは、ここ数年、行政経営品質で外部評価を受けて、一定の賞を受けた職場を、この部課長・出先機関長会議の中で表彰をするという式典を開いておりました。

 が、まだ県庁の職員の皆さんの中に、このシステムがきちんと理解をされていない、そういう状況の中でセレモニー的なことだけを重ねていくと、行政経営品質というものの見方、また、その存在が組織から浮き上がってしまうのではないか、遊離してしまうのではないか、ということを考えて、今年はセレモニーは止めました。それに代わって、外部評価を受けて、優秀取組賞を受けた須崎林業事務所、また取組激励賞を受けた高知土木事務所、職員能力開発センターの職員の皆さん方を呼んで意見交換をするということをやってみました。

 と言っても、そうした表彰を受けた職場と、皆さん方の職場との間にそんなに大きな違いがあるということではないと思います。では何が違うのかといえば、その表彰を受けた職場の人たちは、行政経営品質ということを食わず嫌いに終わらさずに、まずそれを食べてみる、取り組んでみる、その中でみんなで議論し合って、「顧客、お客さんは誰だろう」つまり「自分たちは誰のために仕事をしてるんだろう」ということを真剣に考え始めた。ここに僕は大きな違いがあるのではないかと思います。

 この中で、例えば、須崎林業事務所は、「自分たちの顧客・お客さんは、山林の所有者だ。山村に住む生活者だ」という共通認識を打ち立てました。その上に立って、そういうお客さんの所得向上対策を図る必要がある。ということから、例えば、特用林産の栽培などをチームを組んで取り組んでいくというやり方を進めました。

 といった話をしますと、「そんなことはうちでもやってるぞ。当たり前のことじゃないか」という声も聞こえてくるんではないかと思います。けれども、それを個人や班の仕事としてやっていくのではなくて、組織全体の共通認識としてまとめ、そして、組織全体の方向として取り組んでいく、というところに、僕は大きな違いがあるのではないかと思いました。

 もう一つ、高知土木事務所の若い技術の職員からは、顧客満足度とか顧客のニーズということに関連をして、「県民の皆さんからの苦情の件数を、例えば100件から50件に減らしたといって、それが県民の顧客満足度に繋がるだろうかということを考えると、この顧客満足度をどうやって図ったらいいのだろうということに迷う」という話とか、また、「顧客のニーズ、県民のニーズに応えるためにワークショップを開くと、どんどんどんどん枠が広がっていってしまって、なかなか予定の中で仕事が収まらなくなってしまう」こんな疑問や悩みの声が出ました。

 こうしたことは、住民の皆さんの側の意識にも関わりがありますし、また、行政の側にそれに対応するマニュアルが成熟化をしていないということもありますから、一つの答えだけで片付けられる問題ではないと思います。けれども、これまでの行政であれば、いろんな手練手管を使って、そういう苦情をなるべく抑え込み、少なくして、そして予定された期間に、予定された内容で仕事を済ましてしまう。

 それが、腕立ちだというふうに評価をされてきたと思います。そうした中で、住民の皆さんと、県民の皆さんと私たちのニーズの違い、考え方の違いというものに悩み、そういう悩みをまた若手の職員がどんどん声として出し、それを職場全体で話し合っていく。そういうことそのものに、僕は大きな変化の兆しがあるのではないかと思いました。

 といっても、まだまだこの行政経営品質ということに対しての受け止め方は、全体的には冷たいものがあるんじゃないかと思いますし、それを食わず嫌いのままで終わらしてる人、また、もっと言えば毛嫌いをしている人もかなりいるんではないかと思います。では、なぜこうした抵抗感が出てくるんだろう、ということを考えてみますと、その一つは、「そもそも企業で始まった考え方だから、行政にはなかなか馴染まない」というような言葉に代表される抵抗感ではないかと思います。

 確かに、企業と私達行政では、営利という言葉を中心にすれば、その最終の目標は違っています。しかし、最終の目的は違っていても、お客様のためにより良いサービスを、より効率的に提供をしていくという目的では、変わりはないはずです。だとすれば、そうした目的を達成し、その質を高めるために編み出されたシステムが、企業から始まったものであっても、それを行政に当てはめられないわけはないと僕は思います。

 例えば、企業から始まった言葉として、先ほどもちょっと挙げた顧客満足度とか、顧客ニーズ、顧客という考え方がありますが、ある福祉事務所に「あなたの事務所の顧客は何ですか」という投げかけをした時に、生活保護の事業を念頭に置いて、「顧客はいないなあ。顧客という言葉はなかなか当てはまらないなあ」という答えが返ってきました。

 それはなぜかと言いますと、まず顧客であるからには、顧客の要望には全部応えなきゃいけないだろうという意識が一つありました。そのことを前提に、生活保護を受ける人を顧客と捉え、そして保護費の支給をニーズと捉えると、なかなかニーズに全て応えることはできない。だから、「顧客という言葉は、なかなか自分たちの仕事には馴染まない」こういう答えになっていました。

 しかし、議論をする中で、顧客といっても、何もその人の言うことに全部従わなければいけないということはないんじゃないかと、段々頭が切り替わってきました。また、顧客のニーズという点でも、保護費の支給ということだけではなくて、自立の支援をして欲しい、というニーズもあるんじゃないか、という共通認識ができてきました。その結果、自分たちの主たるサービスは、保護費の支給ということだけではなくて、自立の支援なんだ。そういうふうに考え方を切り替えていったという例もあります。

 このように、企業から始まった言葉であっても、それを自分たちに当てはめれば、どういうことに気づき、どういうことに使っていけるか、そういう直感力を働かせる、想像力を働かせるだけで様々な気づきが出てくる。また様々な新しい仕事の仕組みが生まれてくるのではないかと思っています。
 で、今「外の出来事を自分たちに当てはめてみる」ということを言ってみましたけれども、このいろんな出来事を自分たちに当てはめて考えるということが、気づきということでは大変重要なポイントになると思っています。

 で、これから申し上げることは、新聞の記事にもなったことですので、目を通された方もいらっしゃるかもしれませんけれども、3年間、包括外部監査をお願いをした武田さんという公認会計士の方に「3年間外部監査をして、どういう印象を持ちましたか、感想はなんですか」という質問をした時に、まさに今申し上げた「気づき」、自分のことに当てはめて気づくという点で、大変重要なご指摘を受けました。

 それはどういうことかと言いますと、「個別の課題に対して外部監査で報告をすれば、その指摘を受けた部署からのそれなりの答えは返ってくる。だけど、指摘をしたことはその部署だけではなくて、他の部署でも同じようなことがいっぱいあるはずなのに、それを“あ、自分の所だったらこうだな”というふうに受け止めて考える力がなかなかない。

 言い方を変えれば、そうした外部監査の行間を読んで、それを自分たちに当てはめる想像力、そこから気づいていく力というものに欠けているのではないか。そんな想像力や力があれば、外部監査というものも、もっともっと有効に働くのにね」というお話でした。そのお話を聞いて、「うーん、なるほど、そうだろうな」と感じたことがあります。

 と言いますのも、去年の、あの、いわゆるやみ融資の事件に関連をしても、あれは商工労働部の出来事、また一部の幹部が関わった出来事であって、自分たちにはあんまり関係のないことだと、こういう受け止め方の職員の方もいっぱいおられるだろうと思います。また、今問題になっている預け金に関しても、そうした捉え方をしてる方も少なくないのではないかと思います。

 確かに、直接の責任ということで言えば、自分には直接の関わりはないということは言えると思います。しかし、そういう外で起きたことを、自分たちに当てはめた時に、という考え方をした時、その問題の根っこにあることは、意外と共通の問題である、ということがいっぱいあるんではないかと思います。

 と言いますのも、あの、いわゆるやみ融資事件では、特定の個人や特定の団体との関係ということが問題になりました。そういうことを自分たちに当てはめてみた時に、それは商工労働部だけの問題ではなくて、補助金なり、箇所付けなりという時に、同じような経験をされた方もいらっしゃるのではないかと思います。

 また、この間の議会では、同じ事件に関連をして、担保の差し替え、抵当権の差し替えということが問題点として指摘を受けました。これは、そのことそのものも、もちろん問題ですが、そのことを知っていてなかなか報告しなかった、報告できなかったということの問題点もご指摘を受けました。という時に、それを自分に当てはめてみて、「うーん、そういえば自分もなかなか都合が悪くて言えないことを抱えているなあ」とか、「自分がもしその立場にいたら、どういうふうにしただろうな」というふうに考えた方が、どれだけいらっしゃるだろうかということです。

 ただ、これからは、そうした外で起きたこと、自分が直接関わっていないことでも、そこから何を学び取るか、感じ取るか、ということができないと、いつまでも他人事で終わってしまうし、いくら改革案というものを作っても、それは定着をしていかない、やがて形骸化をしてしまうのではないかと思います。

 ですから、これからの職員の皆さんは、特に若い職員を引っ張っていく幹部職員の立場にある皆さん方は、外の出来事であれ、県庁内の出来事であれ、それを自分に当てはめてみて、そこから何を気づくか、何を感じるか、この力を是非大切にしてもらいたいと思いますし、そういう「気づき」ということを進めていくための道具、いわば手引書が行政経営品質なんだということを、是非頭の中に置いておいていただきたいと思います。

 と言っても、積極的になかなかそこまで踏み込めないな、という人もいるかもしれませんが、少なくとも、行政経営品質というのは、ただそのシートに書き込めばいい、また点数をつければいいというものではない。そのことを感じていただき、先ほどの高知土木事務所の話ではありませんけれども、若い職員を交えていろんな議論をしていく、そういう頭の体操、連想ゲームというようなつもりで、是非とも取り組んでいただけたらと思うんです。

 と言っても、やはり「あのシートのことはなかなか難しいね。しかも組織の概要から始まって35項目もあると、なかなか時間もかかるし、負担感も大きいね」という声も非常に強いと思います。確かに、やはり表現というものは、もっともっと分かりやすいものにしなければいけないし、また、負担感を減らすような改良というものも、僕は考えていかなければいけないとは思います。

 しかし、少なくとも、とにかく誰か一人が仕事のようにしてそのシートに数字を埋め込んで、そして、こういう物で良いでしょうか、と上司にお伺いを立てる。そんな物ではないんだということだけは、是非、知っておいていただきたいと思います。

 では、そうして得た気づきだとか、想像力というものが、次にどういう形で活かされていくのか、ということですけれども、それは、仕事の面では好奇心とか、チャレンジ精神という形で成果として現れていくのではないか、と思います。

 例えば、海洋深層水の取り組みも、僕はその一つではないかと思いますが、これも関係者の人たちの好奇心、またチャレンジ精神というもので、ここまで大きくなってきました。もしこれが従来型の法律や制度を運用していくというような行政の考え方、また課題に対して、問題に対して対応していくというだけの行政の仕事であれば、ここまでは来なかったんじゃないかと思います。

 ただ、こうしたことを、ただ単に個人の職員や研究者の好奇心やチャレンジ精神ということに終わらさずに、これを組織全体での好奇心、チャレンジ精神に変えていけば、どれだけ大きな成果が得られるだろうかということを思います。

 と同時に、こういうようにして、頭を軟らかくということをやっていけば、一つのことを、一つの施策を立てても、そのことにこだわらずにどんどん軌道修正をしていく、現実に合わせた新しいアイディアを出していくという行政に変わっていくのではないかと思います。

 例えば、今、市町村ではほとんどの所で取り入れられている高齢者の緊急通報のサービスがありますが、このサービスを最初に編み出した経営者の方のお話を伺いますと、当初は98%が実際には緊急ではなかった。つまり、いわゆる誤報だったと言います。で、これが行政であれば、98%が誤報だとなると、「これは何か補助金の要綱に違反をしてる」とか、「もうちょと厳しくしなきゃいけない」とか言って、使いにくい方向を考えてしまうんじゃないかと思います。

 けれども、この経営者の方は98%が誤報だということを聞いて「そうか、やっぱりお年寄りはコミュニケーションが欲しいんだ。このコミュニケーションがやっぱり安心の基本になるんだ」ということを考えて、緊急通報のサービスだけではなくて、日常何もない時にも連絡をする、いわゆる「お元気コール」のサービスを始めたと言います。まあ、このように、柔軟に軌道修正ができるような行政であって欲しいなあということを思いますし、こういう行政を目指していくのが、行政経営品質の本当の目標なんだということを、是非、心の中に留めておいていただきたいと思います。

 このように、これまでの行政経営品質というのにはいろんな問題があったと思いますが、そういうものを少しでもやさしく、分かりやすくしていくということは必要なことですが、これを生かしていけば、今のように軌道修正も自由にできるような、そういう県庁になっていくだろうと思います。

 また、併せて軌道修正ということで言えば、これまで行政の中には、行政には間違いはない、間違いはしてはいけない、というふうな、少しトラウマに似たようなものがあったんではないかと思います。そうしたことから、一度始めたことはなかなかそれを軌道修正をしない、止めないということになりますし、そうなると、都合の悪い情報を蒸しこんでしまおう、という悪い体質にも繋がってきました。

 これからはそうではなくて、いろんな仕事をしていて、問題が多いなと思ったら、そのことをハッキリと、早く表に出していく、そして軌道修正がしていける、また、ある時には勇気のある撤退ができる。そういう行政にならなければいけないと思いますし、また、そのことを評価できる行政、組織でありたいなと思っています。

 さて、この10年間を振り返ってみますと、自分は知事になってから、意識改革、意識改革ということを言い続けてきました。今日は、実は意識して、意識改革という言葉そのものはほとんど使いませんでしたけれども、その内容は改革に絡むことでした。が、もちろん改革というのは県民のサービスの向上を図るための手段であって、決してそれ自体が目的ではありません。

 けれども、意識改革だ、県政改革だと、改革、改革ということを言い続けてきたために、何か上からの押しつけの改革だ、という受け止め方がされてしまったんじゃないか。そのために、県の職員の皆さん方が一人一人「自分たちも変わらなきゃいけないな」という思いをそいでしまった面があるんではないかと、正直反省をしています。

 また、これまで、あまりパッとしなかった企業がかなり良い成績を上げた。そういう企業が変化をした、変貌をした要因を分析をした本というものを見てみますと、その改革に当たって、そのための取り組みに特別の名前を付けていなかったという所がほとんどです。つまり、あまりそんな意識をしないままに自然に変わっていった所が成功したという指摘でした。そういう指摘を見て「うーん、そうか。学ぶべき点は多いな」と思いましたし、「県庁の改革というのも、そういう感じになっていかなきゃいけないのかな」ということも感じました。

 もう一つ、ある雑誌のコラムを見ていましたら、漫才師の内海桂子さんが「“自分が笑えば鏡も笑う”という言葉を人生哲学にしている」ということを言われていました。内海さんは漫才師ですから、人を笑わすことが仕事です。人を笑わすためには自分自身がお腹の底から笑えなければいけないということで、努力をした、稽古もした、というお話でした。

 そのお話を読んで、このお正月の仕事始めの時に、「空元気でも良いから元気を出そう」と言った自分の言葉を思い出しました。というのは、空元気も、やはりお腹の底から出た空元気じゃないと人には伝わっていかないと思います。そういう意味で、自分自身、空元気であってもお腹の底から元気が出てくるような、またお腹の底から笑顔が出てくるような自分自身でありたいなと思いました。

 と同時に、幹部職員の皆さん方も、同僚に対して、また若い職員に対して、お腹の底から爽やかな笑顔の出てくる、そういう管理職で、幹部職員であっていただきたいと思います。せめて、今日お家に帰ったら、鏡の前でバカバカしくても一度笑ってみて、自分が笑ったら鏡が笑っているかどうか確かめてみていただきたいと思います。
 ということで、話を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
 
 
 

【副知事の話】

 吉良でございます。私からは、本年度重点的に取り組まなければならない課題のうち、6つの課題についてを申し上げたいと思います。

 まず「県政改革への取り組み」であります。昨年の9月に庁議調整会議メンバーによる県政改革に向けての決意表明の後、調整会議メンバーを中心にいたしまして、6つの項目について具体的な検討が進められてまいりました。ご承知のこととは思いますが、改めて6つの項目を申し上げますと、

 1つには、「特定の個人や団体などへの毅然とした対応を評価する。」
 2つには、「外部との話し合いをオープンにする取り組みを推進する。」
 3つには、「課題意識を持ち行動する職員を養成する。」
 4つには、「庁内の情報共有を徹底し、多面的な議論を確保する。」
 5つには、「意思形成の過程を県民に明らかにする。」
 そして、「情報公開を徹底する。」
以上の6項目でございます。

 この6つの項目の具体化に向けた検討案が示されましたら、皆さん方には、各部局の課室長会や、出先機関長の会議などで議論をしていただき、また、それぞれの職場に持ち帰り、職場全体での議論を通して熟度を高め、職員とともにしっかりと地に足をつけた取り組みを進めていただきたいというように思います。

 次に、2点目といたしまして「預け金」についてでありますが、この預け金につきましては、取引関係のある、約1万4千社に照会をし、約1万社から回答をいただきました。現在、集計中でありますが、4月の17日からの県議会常任委員会で途中経過の報告を行う予定であります。判明した内容によりましては、職員の聞き取り調査を行う必要があると考えておりますし、県民の皆様に調査の過程を明らかにするとともに、不適切な処理については、厳正な処分も含めた対応を考えなければなりません。職員に痛みを伴うことも想定をされますが、この種の問題を根絶するためにも、是非ご協力を賜わりたいと思います。

 3つ目の課題は、「組織改革」でございます。組織改革にあっては、従来は課・室の組み合わせといった、単なる形の変更と整理に終わってしまう傾向がありましたが、新しい組織は職員の意識改革を促し、県政改革につながるものとなる必要がございます。この度の改革に当たっては、県民に分かりやすく、そして職員が仕事をしやすいという視点から、組織の運営のあり方についても検討を進めてまいりたいと考えております。また、これと並行いたしまして、平成15年度を目標に、県民からの届出や申請手続をインターネットにより行う、いわゆる「電子自治体」の実現に向けた取り組みを進めています。このことは、今までの紙による手続きを、単に電子に切り替えるということではなくて、県民サービスの充実という視点に立って、手続きの簡素化や、業務の効率化につながるように見直しをしていく必要があるというよう考えています。

 そして4つ目の課題につきましては、「情報公開条例の改正」でございます。県政改革の決意表明の項目にもありますが、情報公開の徹底を進める一つの取り組みとしまして、2月定例議会におきまして情報公開条例を改正いたしました。これまでは、「特定の公文書について開示をしてはならない規定」でありましたが、改正によりまして「特定の公文書を除いて開示しなければならない規定」といたしました。基本的に、全ての書類や、審議会などでの話し合いは公開されるべきであると思っていますし、開示請求されて渋々出すといった形ではなくて、県民の皆様へ積極的に情報提供ができるような仕組みを作っていく必要があると思っております。

 5つ目の課題は、「市町村合併」でございます。市町村合併につきましては、本年度中に一定の方向付けを行わなければならないという状況にございます。県民の皆様に、少子・高齢化の進展や財政状況の厳しさなど、地域を取り巻く状況をよくご理解いただき、地域での議論を活発に行っていただくことが、将来に悔いを残さないためにも重要であると思います。また、このことは担当の企画振興部だけの課題ではなく、県庁をあげての取り組みが求められておりますが、特に、出先機関で県民と直接接する機会の多い職員の皆さんは、市町村職員や地域の方々と積極的に話し合いをしていただき、どのような支援ができるかを市町村職員や、地域の方々の目線に立って考えていただきたいと思います。

 最後に、「中山間地域の振興について」でございます。私は、「高知県の80%以上を占める中山間地域が元気にならなければ、高知県の発展はない。」という思いを持っております。これまでの仕事を通じて感じました、中山間地域の人々の声や思いを、関係部局の職員の皆様方に投げ掛け、新たな知恵を引き出し、より効果のある中山間対策にしていくことが、役割の一つだと思っております。そのためにも、地域の方々の主体的な活動を促し、また、地域の方々の声が十分反映できる中山間対策となるよう、県職員と市町村職員が、ともに手を携えた取り組みを進めてまいりたいと思っております。

 以上、当面の課題について申し上げました。私は、行政、とりわけ地方自治に携わる者にとっては、対話と現場主義ということが大切だと思っています。県民の皆様との対話、職員の皆様との対話なくして共通の理解は生まれませんし、現場にある真実、情報なくして正しい判断は下せません。皆様にも、こうした考え方を共有していただき、「県政の主役は県民である」ということを常に念頭に、より良い高知県づくりにご尽力をいただきますよう、よろしくお願いを申し上げます。
 ありがとうございました。
 
 
 

【出納長の話】

 出納長の島田でございます。お時間をいただきましたので、3点、お願いかたがたお話をいたしたいと思います。

 まず1点目は、「ペイオフ対策と資金管理について」でございます。
 この4月に定期預金、それから来年4月に普通預金がペイオフ解禁になります。県としましてはペイオフ対応への基本は「リスクを回避する」というのが1点。それから「リスクを管理する」ということが2点目ですが、その2つの柱を中心に対応を検討してまいりました。

 「リスク回避」という考え方は、できるだけリスクのない状態で資金を管理していくということでございまして、当面、この4月からはこの方法によることといたしておりまして、これまで、定期預金等で預託してきました、商工労働部を中心とします制度金融などにつきましても、同じ効果を表すように利子補給制度や保証料補給方式に改めます。それから、主として定期預金で運用してまいりました基金につきましては、全ての基金を一括管理・運用することといたしまして、それぞれの基金の運用の可能期間を見込みまして、順次、国債等の債券に移行していくという考え方に立っております。移行までの間は、県の借金との相殺を考えていくということを基本にいたしております。

 今日、1枚紙のペーパーをお渡ししてございますが、3月31日現在で県の基金は846億円ございます。この内、左の山ですが、従来から四国電力の株式とか、県の県債で運用しておりました133億円を除きます710億円が、今回検討の対象となった基金でございます。内109億円は、この1月から3月にかけまして1年もの、5年もの、10年ものといった種類の国債等へ移行したものでございます。で、あと600億円が預金の形で残っておりますが、右側に「相殺枠」として558億円ございます。

 これは、県の発行してます起債、約7,000億ぐらいございますが、その内、地元金融機関に引き受けてもらっております縁故債が2,400億か2,500億ございますが、その内で相殺の対象になりますのは、流通性のある証券ではなくて、借用証書を入れて借りておる県債ということで、現在、4つの金融機関に558億円の相殺の枠があるということでございまして、左側の「定期預金439億円」は、その内に収まっておる。あと160億円ぐらいを普通預金で運用しておるというのが実態でございます。

 これから、15年の4月には、下の図にございますが、歳計現金がこれに加算をされてまいります。歳計現金は、このゼロの線を境にしまして、上に線が出ておりますのは、現金が手元にある状態。下に線がいっておりますのは、一時借入金が発生しておる状態ということでございまして、12、13年度掲げてございますが、14年度につきましては、13年度よりは若干、資金状況が良くなる。現金が多くある状況に振れるのではないかと私どもは見ております。

 この表からお分かりのように、4月には170億から300億、それから6月では630億から640億程度、それから12月には500億から370億程度の現金が手元にあるということになります。で、これに来年の4月からは企業局とか、病院局が持っております現金も加わりまして、それを全体として考える必要がございますので、現状では上の相殺枠に入らないという事態が予想されまして、リスクをどうやって管理していくか、ということになってまいります。

 地方自治法、それから地方財政法によりまして、「現金、基金は安全確実、かつ有利に」ということが謳われておりますので、それに則り、また地域の経済に対しまして、地元の金融機関は大変大きい役割を果たして下さっておりますので、地元金融機関の資金事情の状況等々も踏まえまして、これから1年をかけて検討していきたいと考えております。
 また、併せまして、外郭団体の中には、当面、来年の4月までは普通預金にしておこうという所もあるようにお聞きしておりますので、それらも併せまして関係部局と検討していきたいと考えております。

 で、こうしたリスクを管理する検討をする際に、その基は、やはり各課・室、各出先機関からいただく収支計画が適正かどうか、ということに関わってまいります。ここ2年間の実績で見ますと、月平均で、その資金計画が実績と比較しますと60億ぐらい毎月毎月違っております。で、月平均でございますので、これを日々の額で追いますと、たぶん100億とか、200億とかいう数字で違っておる事例が出ております。ですから、こういった状態でポッと100億、200億の現金がきた時に、リスクを管理しながら果たして有利な運用はどうやったら良いのか?なかなかに難しい問題になってくると思います。

 一方で、先ほどの表にございましたが、この一時借入金につきましても、これから難しい問題が生じてまいります。と言いますのは、定期預金が少なくなってまいりますので、これまでは、一時借入金は定期預金と同じ利率で借りる、パーレートで借りるという方式で運用してまいりましたので、低い利率で一時借入金を借りることができましたが、先ほど申し上げましたように、定期預金がこれから漸減していくということで、一借りの方式をこの2月に改めまして、高い金利で調達するしか方法がなくなりました。

 ですから、前もって正確な金額が分かっておりましたら、例えば、余裕資金があります時には、現先で現金を債券に替えるとか、あるいは一時借入の場合は、逆に債券を運用して現金を調達するとか、現先の問題などもこれから一緒に検討していくことになろうかと思いますが、それにしましても、前提はあくまで収支計画がきちんとしておるということが大事でございますので、私どもとしましても、これから精度をより良くするためのシステムの開発などにも取り組んでいくつもりでございますが、まあ、いろいろとお願いもするかも分かりませんが、是非、よろしくお願いしたいと思います。
 それから、今現在の資金の各課室、出先機関のかい離状況につきましては、私どもの出納室の掲示板に載せてございますので、是非、1度お目を通していただきたいと思います。

 それから、お話の2点目は、決算の調製のことでございます。昨年、12年度の決算で、議会提出資料に2つの誤りがございまして、議長さんから「厳重注意」という異例の措置を受けました。これは決算の書類に限りませんが、この際、チェック体制、チェックの責任をきちんと見直していただきまして、適正な処理をお願いしたいと思いますし、今年は国体の関係で9月、10月の決算審査ができないということで、若干、前倒しで行われる可能性がありますので、そこら辺りも踏まえての対応をお願いしたいと思います。

 それから、最後の3点目は、私どもが行います出先機関の会計検査の件でございます。約180あります出先機関の内、80%ぐらいを毎年検査をさせていただいておりますが、13年度の例ですと、「適正」「概ね適正」を合わせまして約85%でございました。12年度は、それが75%。11年度は65%程度でしたから、毎年、改善をされておりますし、この間のご努力には感謝も申し上げますが、中に、やはり請求金額と違ったお金を払っておるとか、それから、入札すべき所を随契しておるとか、基本的な誤りもありますし、出納員がいないのに、支出命令が確認されておる、いわば、昔でありましたら、「小切手が誰の責任で振り出されたか分からん」といったような事例もありますので、是非、お帰りになったらチェック体制をしっかりとしていただきたいと思いますし、私どもが出先機関を回っておりまして、若い職員の中からは「所属長さんも、もうちょっと会計事務に精通していただきたい。」という声もございますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。

 それから、13年度、行連で各地にお伺いしました際に、事務改善のご提言を受けまして、現在、検討中のものもございます。今決められた条例規則に則って仕事をするのは当然でございますが、現場から見て「おかしい、こうやったら良い」という意見があれば、また、いろいろの場を通じて、是非、積極的にお話を上げていただきたいと思います。現場では、いろいろとご事情もあり、またご苦労も多いと思いますが、是非、そこら辺りきちんとした対応をお願いをいたしまして、話を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。


Topへ