第4回高知県ユニバーサルデザインシンポジウム「都市再生とその手法」

公開日 2007年12月07日

更新日 2014年03月16日

第4回高知県ユニバーサルデザインシンポジウム「都市再生とその手法」

平成14年12月5日(木曜日)13時00分から16時30分(高知新阪急ホテル 花の間)

●日時 平成14年12月5日(木曜日)13時00分から16時30分
●場所 高知新阪急ホテル 花の間
●主催 (財)高知県政策総合研究所、高知県、高知市
●後援 高知新聞社、RKC高知放送、KUTVさんさんテレビ、NHK高知放送局、土佐電気鉄道(株)、ユニバーサルデザイン・コンソーシアム
●協力 土佐電鉄の電車とまちを愛する会

●開催主旨
 高知県では1999年に、ユニバーサルデザインの基本的な考え方を主眼に置いた第1回高知県ユニバーサルデザインシンポジウム「高知でのユニバーサルデザインとは」を開催いたしました。このシリーズ第4回目に当たる今回のシンポジウムでは、これからの都市づくりとその開発手法をユニバーサルデザインの視点で模索するために、「都市再生とその手法」をテーマに掲げ、高知での都市再生の未来を探りました。

プログラム
 13時00分 開会 
 13時00分 基調講演 ユニバーサルデザインのまちづくり
      バレリー・フレッチャー アダプティブ・エンバイロメンツセンター所長 
 14時00分 コメント
      羽藤英二 愛媛大学 工学部環境建設工学科 助教授
 14時30分 パネルディスカッション

●パネリスト(50音順) 
 入交明子(主婦)
 橋本大二郎(高知県知事) 
 原 雅弘(高知県立障害者スポーツセンター スポーツ指導員)
 福井照(衆議院議員)  
 松尾徹人(高知市長) 

●コーディネータ
 谷本 信(財団法人 高知県政策総合研究所 理事・研究部長) 



パネルディスカッション「21世紀の都市像と開発手法をユニバーサルデザインで考える」
 

[パネラー発言概要] 

ストラスブールに学ぶ人間回復のまちづくり

(松尾)
 昨年高知城が築城400年を迎えた際、歴史的な節目のなかで、高知市は城下町らしい風情や賑わいを回復すべきであるという強い気持ちが沸々と沸き起こり、今、新土佐城下町づくりを進めているところです。具体化に当たって、来年度から都市計画課に町並デザイン室を設け、人間回復のまちづくりを基本コンセプトとして、総合的な戦略を練っていきたいと思っています。

 そのモデル都市といえるのが、フランスのストラスブール市です。同市はご存知のように、LRTの活用により、中心市街地がクルマから歩行者中心へと変身を遂げたまちです。本当に素晴らしいまちだなと、高知がこんなまちになればいいなと、感銘を受けて帰ってきたことです。

 同市は独仏国境地帯に位置し、ドイツ風の町並が世界遺産にも指定をされているまちです。クルマではなく歩く人で賑わう、そういうまちにするためには、高知市はどうあるべきか。それを少し学んできたところです。 

 スローライフという言葉がちょうど当てはまるような感じがします。今までは物の豊かさを求める効率至上の社会でしたが、これからは人の心や生活を大切にする、あるいは文化とか環境とか、伝統とか、歴史とかを大切にする、そういった価値が見直されています。

 これからは、そのような価値を政策に盛り込んでいかなければなりません。よさこいピック高知の開催期間には、このまちに全国の障害者があふれていました。車椅子に乗った人、車椅子を介助している人、杖をついている人、いろんな方がこのまちのなかで動いている。その姿を見て、ああ、やっぱりこれからのまちはこうでなければならないと痛感したわけです。

 このユニバーサルデザインのシンポジウムには、たいへん刺激を受けています。昨年市役所の内部で、外部の方のアドバイスをいただきながら、ユニバーサルデザインによるまちづくり推進ハンドブックを作成しました。関係職員、医師、理学療法士、高知女子大の先生のアドバイスもいただきながら、立派なものができあがりました。入門書としては、非常に素晴らしくまとまっていると思うので、これを使って、まずは職員の意識啓発を図っていこうと思います。

 建築部門の職員に、十分なユニバーサルデザインの認識が深まっていない実態があり、一方、障害者部門の人が設計図を見てもよくわからない面もあります。直接インフラ部門にタッチする職員がしっかり認識しなければ、ユニバーサルデザインを実現することはむずかしい。そのためには、民間業者の方々、コンサルタントの方々についても、ユニバーサルデザインの認識を持ってもらうような、指導体制を確立していかなければというふうに思いました。

 県の「ひとにやさしいまちづくり条例」の内容を見ますと、たとえばスロープの場合、12分の1以下という幅を持たせた規定があります。高知市の「かるぽーと」は、12分の1以下(8%)の傾斜ですが、実際に車椅子に乗って動いてみると、やはり高齢者や障害のある方にはたいへんな傾斜と感じます。

 少なくとも公共施設については、その限度ぎりぎりではなくて、理想的な姿に、できるだけ近づけるような努力をしていかなければならないと思います。まずは職員の意識、そして市民、企業の意識をどう改めていくか、そのためにどう認識を深めていくか、そこから始めたいと思います。
 

障害の理解を深めるための教育的なシステムが必要です

(原)
 車椅子利用者の目で、日頃感じたものをお話します。この頃、歩道はずいぶん改善されて走りやすくなっていますが、裏通りに入るとでこぼこがあって、通りやすいと言えない面もあります。

 低床バスも運行を開始し、私が勤務する障害者スポーツセンターにもそのバスが来ていますが、障害者が乗る場合には予約をしないと乗れない難点があります。しかし、今までに比べれば、低床バスや低床電車などの導入で、活動の幅が確実に拡大しているのは事実です。

 それから先ほど市長さんからお話がありましたが、公共施設等を建てるときに、当事者の意見を聞いてくださるようになり、われわれの意見がかなり反映されるようになってきています。

 高齢者が自宅で転倒する事故がよくあります。1センチの段差であっても、躓いて転び、それで寝たきりになることもありますが、車椅子も同じです。1センチの段差は、段差に見えないことがあります。それで、段がないという意識でいると、キャスターが引っ掛かって前に転びかける。

 ただ、視覚障害は、白い杖を使って、車道と歩道の段差を杖で感じて、車道と歩道を認識しているわけです。そういう意味では、段差が全くないという場合、かえって危なくなるという場合もあります。このへんのところをうまく考えてデザインしなければいけないと思うわけです。

 私はよく量販店に買い物に行きますが、車椅子用の駐車スペースに一般の方が車を置いている場合があります。車椅子の場合、車に乗るときにドアを大きく開かないと乗降できないのですが、真横に駐車されたためにドアが開ききらないので乗れないこともあります。でも、車椅子用の駐車スペースができただけでも改善されてきているということでしょう。車椅子対応のトイレもできてきて、なおかつそれが、障害者だけじゃなくて、妊婦さんとか子どもも使えるスペースに変わってきています。

 私が勤めている春野の障害者スポーツセンターは市内から離れています。スポーツに限らず、公共施設を使って楽しみたいという方が移動するとき、移動手段がなかなかないので、市内にそういう施設があればいいのではと考えます。ちょうどシキボウの跡地なんかは最適ではないでしょうか。そういうところに障害者の施設だけでなく、スーパーや住宅もあれば、地域も活性化していくでしょう。

 歩道の点字ブロックに自転車を駐輪している場合があります。車椅子が通っても邪魔になりますね。商店街に高知工科大にあるような駐輪場があれば、改善されると思います。アメリカでは車椅子用のマークのところに車を駐車すると罰則があるそうです。日本でも、罰則規定を条例で考えてみる必要があるのではないでしょうか。

 障害を取り除くのも人だし、障害をつくっていくのも人です。いくら環境が整備されても、バリアフリーの心がなければ同じだと思います。そういう意味では、地域の人たちが住みやすい、そういう社会にしていくために、みんなの意識というものも変えていかなければなりません。障害に対する理解、そしてモラルを含めた教育的なシステムを考えていかなければと思います。
 

子どもが生き生きと暮らせるまちを

(入交)
 まず子育て中の主婦の視点から、高知のまちがこうあって欲しいと思うことを3つお話しさせていただきます。まず、交通面では、安全なまちにするための歩道の確保です。子供を持つ前は、歩道のあるなしは気にならなかったのですが、子供を連れて歩くというのは、女性の方はご存知だと思いますけがかなり緊張します。

 手をぎゅっと握って、危ない!を連発して、最後には顔がこう鬼のようになってしまいます。大きな道やまちの中心部はかなり歩道が整備されてきていますが、そこに行くまでの道に歩道がなかったりします。日常に通行する道も、細い道ですが大切だと思います。

 最近お年寄りの方がシニアカーで移動されているお姿を見受けますが、歩車区分ということで歩道の確保は子どもだけでなく、お年寄りにも必要になってくると思います。狭くて歩道がつくれない場合は、一方通行にして歩道を確保するぐらいの思い切った政策をしていただきたいと思います。

 私もクルマを運転しますし、運転する方からしても歩道があると安心です。歩行者を厄介者扱いしてほしくないと思います。皆さんも車を降りれば歩行者になるわけですし、そのため、厄介者扱いしないためにもクルマ社会には歩道というものは切り離せないと感じております。

 第2点目に、子供の遊び場、兼世代間の交流の場となるような屋内の施設があったらいいなと思います。東京・渋谷の児童館は入場料無料、自由に楽器に触れるスペースがあって、牛乳パックやリサイクルしたもので自由に工作もできる。粘土やお絵かきもできるところですね。あとは本も読める。最上階は図書室で、屋上はプレイグラウンドです。

 高知の場合は、何も子供のための施設というふうに特化する必要はないと思います。たとえば、子供が自分で行けるし、公共機関も便利、そんな場所にたとえば子供が遊べるフロアがあって、病院の代わりにお年寄りが気軽に立ち寄れるサロンのようなフロアもある、そしてその一角にはお手玉とか囲碁、昔遊びの達人たちが子供に教えてくれるそんな場所があったら素晴らしいと思います。

 都市の再生はソフト面から考えればきっとコミュニティの再生でもあると思います。世代間の交流がそのイベントではなくて、日常生活に組み込まれていけば核家族という問題からも大きな意味を持つのではないでしょうか。

 第3点目は、自然をとり入れた美しいまちづくりの推進です。東京の友人からいつも、高知は自然がたくさんあっていいわね、子供を育てるにはぴったりねとよく言われます。高知は自然豊かなところだというイメージがあります。その高知でそこに住んでる子供たちが、自然に飢えている、自然と触れ合いたいと思っているならば、それは悲しいことだと思います。

 そこでこれも勝手に提案してるんですが、日常の生活シーンに自然を取り入れるために、子供たちが自分たちで行ける場所、お母さんの買物のついでに、買物に付き合った見返りというか、付き合ってそのあと連れていけるような、まちのなかに自然と触れあえる場所があったら素晴らしいのではないかと思います。

 これもたとえば、お城の下あたりの丸の内緑地ですとか、県庁ですとか、三の丸のあたりに、お城の公園ではなくて、遊具の代わりに丘や崖や木登りや洞穴があって、そしてザリガニ、おたまじゃくし、カエル、いろんなそういったものを捕って遊んだり、ヤマモモの実を採って食べたり、きれいな花壇がいつも整備されてるんではなくて、その成長がちょっとずつわかる畑があったりといった、小さな体験でいいので、そういった小さな体験をできるところがまちのなかにあれば、それは情操教育上も非常に大きな意味を持つと思います。
 

ユニバーサルデザインの基本は1人ひとりのライフデザイン

(福井)
 ヒートアイランド現象により、歩行者空間が不快になるという現実があります。建設省の東京国道工事事務所の前で測った実測値では、犬の高さでは気温が48度、乳母車に乗った赤ちゃんは45度、150センチのところでも43度ありました。

 上からは暑い太陽、下からは地表60度の太陽、2つの太陽に囲まれている現象が私たちの都市内の居住状況です。これまでの環境アセスメントは都市レベル、マクロレベルのものでしたが、これからはこのようなミクロな微気候にも対応していかなければなりません。

 まちを見わたせば、新木場駅や伊丹駅には音声誘導システムがありますが、静岡県掛川市では都市全体のシステムが模索されています。IDカードを持っていただくと、表示装置から、「今赤だから渡ってはいけません」とか、「もう少しでお城です」とか、いろいろな情報が出てきます。

 車椅子利用の方や視覚障害者の方にもご利用いただけますし、聴覚障害者の方には手話イメージの画像も出てきますし、もちろん外国語による緊急通報もできます。究極は一人ひとりに合わせて、ご案内できるようにしたいと思っています。セキュリティポールを設けて、センターの人と会話できるようにも考えています。

 このようにユニバーサルに活動できるためのさまざまな試みがなされていますが、実は今日2つの提案があります。一点目は食です。離乳食、スープ、かぼちゃや芋のやわらか煮、おじや、うどん、雑炊…。日本人は、そういうユニバーサルデザインズ食というのを非常に得意にしておりますし、いろいろな高齢者施設に行きましても、スプーンとかレンゲとか、食器の工夫が非常に素晴らしいわけです。食べるという行為を通じて、ユニバーサルデザインが実現されています。

 二点目は、打ち水とか、能面を打つという言葉がありますが、「ユニバーサルデザインを打つ」という言葉を広めたいということです。打ち水というのは、神様がお通りになるところからは、埃は絶対に立たせないということで、水をまくのではなく、打つわけです。

 能面を打つと言うのは、心を打つ、魂を打つ、その木のなかにもともと埋まっているその能面の形を掘り出すということ。この打つという言葉をぜひユニバーサルデザインについても使いたい。人間に溶けるように優しいというのが、ユニバーサルデザインの根本ではないかと思うからです。

 ボストンに見られるようなユニバーサルデザイン化された都市再生の前提として、人間一人ひとりの夢の再生があって、一人ひとりのキャリアプランがある。つまりユニバーサルデザインというのは、それぞれのユニバーサルな人生、ライフデザインが基本となっている。
 では国家、県、市がそれを守ってくれているかというと、一人ひとりの人生を支援するという絶対に揺るがない意志というものがそこに存在する。それこそ、ユニバーサルデザインの根本ではないかと思っております。

 この構造を前提として戦略とか戦術とか、プライオリティの検討をしなければならない。羽藤先生がおっしゃったバリューイコール美というのもこのなかにあるわけで、何がバリューかというのが根本になければ、ユニバーサルデザインは存在しません。
 

路面電車を活用した五感にやさしいまちを

(橋本)
 フレッチャーさんが午前中知事室にお見えになったときに、いろいろとご質問をしました。昔NHKで記者をしておりましたので、昔取った杵柄ではないですが、インタビュアになった気持ちで、さまざまなご質問をしました。そのお答えを聞いて、うん、やっぱりそうだなと思ったこと、こういうようなユニバーサルデザインの切り口があるのかと思ったことがございました。

 まちづくりに関しては、自分たちには直接関係ないという人たちや、自分たちがどう関わっていったらよいのかわからない人が多い。そういう人たちに、ユニバーサルデザインは車椅子の方やお年寄りだけではなくて、あなた方自身のことですよと説明して、納得してもらってまちづくりに参加してもらう。

 その仕組み、仕掛けをつくるのが難しかったというお話を聞いて、これからユニバーサルデザインを高知でやっていくときにも、そのことが一番の課題だろうなと思いました。

 もうひとつフレッチャーさんのお話で頷いたことは、1週間仕事をして、よいアイデアが出る時間が15分だったとする、その15分間を30分間にしていくための環境を整えていく、これもユニバーサルデザインの考え方であるというお話です。

 ただ単にバリアをなくすだけではなくて、より快適な、また別の切り口で言えば、よいアイデアの出る職場、よいアイデアの出るまちをつくっていくということが、ユニバーサルデザインの考え方、説明の仕方、メッセージとして成り立つのかなということを思いました。

 人間には5つの感覚があります。目で見る視覚、耳で聞く聴覚、鼻から入ってくる嗅覚、また物を食べて味わう舌の味覚、そして肌触り、手などの触覚、そういう5つの感覚、五感に優しいまちをつくっていったらどうかということをずいぶん前から言ってきました。

 というのは、人間の体に入る視覚というのは全部この五感を通じて入ってきますので、その五感に優しいまち、五感をひとつの中心にしたまちというものを考えていけば、当然快適なまちになり、よいアイデアが浮かんでくる、そういうまちになっていくのではと思ったからです。

 もう少し具体的な話を一例だけあげますと、市内の桟橋通りで路面電車の線路と線路の間、軌道敷きのところに芝生を敷いてみるという、モデル的な事業をやりました。たいへん視覚的にもきれいですし、住民の皆さん方の評判もいいので、来年度はできればもう少し目抜き通りの県庁前の電車通りでもっと長い区間をとって、緑の芝生にしていくということをやってみたいと思います。

 道路特定財源を軌道内の緑化などにも使っていくことを国土交通省にも提案いたしました。先程、福井さんからヒートアイランド現象のお話が出ましたが、そういうことを積み重ねることによって地面の温度を下げていくなにがしかの効果があるのではないかと思っています。

 このユニバーサルデザインのシンポジウムでも、昨年、一昨年にも話が出てきたと思いますが、わが高知県、高知市を走っている土佐電鉄の路面電車は今残っている路面電車のなかでは全国で一番古い、もう間もなく100年の歴史を持つものです。現在、全国で19の都市に路面電車が残っていますが、総延長距離の約1割が土佐電鉄の路面電車です。

 この路面電車をどう使っていくか、路面電車を使ったまちの見せ方というのは、この高知でのユニバーサルデザインを考えるうえで、とても大切なことだと思います。路面電車が道路の真ん中を走るのではなくて、歩道のすぐ横を走っている外国のまちもあります。そうすればわざわざ電停をつくらなくてもよくて、歩道からそのまま乗れるので、みんなに使いやすい。

 将来は、軌道の間を緑化すると同時に路面電車の走る場所を道路側に移したらどうでしょう。高知の電車通りでは、自転車道をつくるのは難しいですが、軌道を道路の端に寄せてしまえば、道路の逆側に自転車道を設けることも可能です。道路特定財源の使い方が議論されていますが、ユニバーサルデザインの視点で使い方を広げていくことが望まれます。



■参加者との質疑応答

(谷本)
 会場の皆様から、さまざまなご質問をいただいております。まずはNPOに何を期待し、どのように活用し、いかなる支援策を考えているかを、橋本さん、宜しくお願いいたします。

(橋本)
 NPOの大切さは、多くの自治体が認識をして、さまざまな支援策を打ち出している時だと思います。たまたま12月の議会で、NPOが支払う税負担を軽減する新しい条例を提出することにしております。こうした税負担の軽減策はこれまでもすでに数県でとられておりますが、いずれも創設後3年間とか、赤字法人に限って納めなくてよいというような限定が付くものばかりです。

 これに対して本県が新しく提案をいたします条例は期限がなく、赤字法人に限らない、つまり立ち上がりの支援だけではなくて、その後の長い間のNPOの運営を支援していこうという視点です。これは全国のこの分野の支援策のなかでは秀でており、自慢できるものではないかと思います。

 NPOの役割は、官と民、役所と住民の間のつなぎ役という役割がたいへん大きいと思います。たとえば日本では今、公共事業に対するご批判、風当たりが非常に強い、だから何か新しいタイプのことを、ユニバーサルデザインにしろ、そういう事業を考えて行政が一方的に打ち出したとしても、従来型の公共事業ではいろいろ批判が多いからまた別の形の公共事業をつくっているのではというような疑いの目で見る方もいらっしゃるのではないかと思います。

住民の側、民間の側から事業提案があり、それを行政が受けて一緒にやっていくということがまだまだ必要ではないか、その打ち出していく、提案をしていくグループとしてNPOがあると思います。

(谷本)
 それでは福井さん、先程、国の制度として、使うべき、お勧めの制度があれば教えてください。

(福井)
 障害の疑似体験をするバリアフリー教室というのを昨年から国で始めておりまして、昨年は10ヶ所でしたが、今年は26ヶ所でやっております。ぜひ高知でも誘致していただきたい。

 しかし、われわれが直面する本当の課題は、国、あるいは県、あるいは市のリードにより、ユニバーサルデザインが広がっていくことに期待しないことです。一般市民として、われわれ全体として共通認識にしなければ駄目なんだという、そんな切羽詰まった時期に来ていると思います。子供がデザインする公園とか、母親が直接デザインする公園とか街路とかベンチというものが、イギリスではグランドワーク運動としてすでにあります。

 国も県も市も、市民も、NPOもみんなでいっしょに考えるとことが重要だと思います。景観材メーカーなどが一般市民として、現場も知っている目で発案者になっていただくということもあろうかと思います。是非皆さん方のご見識を、世の中に生かしていただきたいと切にご要望申し上げます。

(谷本)
 市民の立場から、原さんいかがですか。

(原)
 高知国体、よさこいピック高知等が成功に終わって本当に嬉しく思っています。障害のある人もない人も、障害というものを忘れて、純粋にスポーツをいっしょに楽しんでいる、感動を共有している輪がありました。

 環境がバリアフリーで、全然障害を感じなかった面もありましたが、それ以上に、本当にバリアフリーの心を持ったボランティアの人が集まってきて、一生懸命お互いに成功しようという思いがあったからこそ、障害をあんまり感じなかったのではと思うわけです。そういうふうに地域社会のなかでも同じ心があれば、お互いの理解が深められ、こういうふうにすれば楽なんだなということが分かり合えると思うわけです。

 私が望むというか、提案したいのは障害を持つ人がいつでも、どこでもだれでも自分の意志で外に出られるようにしていく、そんなまちづくりです。

(谷本)
 それでは松尾さんよろしくお願いいたします。

(松尾)
 私たち、やっぱり行政としてNPOに期待するものといいますと、行政とNPOというのは当然やり方も守備範囲も違うと思うんですね。同じことをやってるんではそれはあまり意味がないわけで、やっぱり基本的によく言われますように、行政はどうしても制度とか、予算だとかですね、あるいは公平性だとかといろんな原則のなかで、枠のなかにはめられて仕事をしておりますので、どうしても機動性に欠けるとか、暖かみがないとか、そういうような批判が出てくるように限界があるわけです。

 けれども、NPOの方々は機動性を持っているし、柔軟な立場にあるわけなので、そんなところを私たちは期待しています。できるだけNPOの方々に行政としてもお願いできるような、そういう仕事をこれからつくっていかなければならないと思いますし、そういうアピールもぜひNPOの方々にもしていただければ有難い。

 私たちが気づいていない分野、行政の守備範囲ではないけれど必要な分野、そういうものがあろうかと思うんですね、そんなものをお互いに披瀝しあうということも必要じゃないかなと思います。
(谷本)
 開発が遅れた四国、どん詰まりの高知の良さを生かすユニバーサルデザインを考えて欲しいなど、他にもいろいろな質問をいただいております。松尾さん、いかがですか。

(松尾)
 30万都市のユニバーサル化ということでは、高知市にはお城と川、そして、もてなしの心の3つの資源があると思います。四国八十八ヶ所、お遍路さんのこの癒しの道がこの四国にはあるわけですが、お接待の心と言いますか、それが私は育っていると思います。それを今回の国体でも、よさこいピックでも痛感しました。

(谷本)
 橋本さん、知事としてひとこと何かありましたら最後にお願いいたしたいですが。

(橋本)
 この間の国体で、みんなやればできると思ったはずです。高知はよく、熱しやすく冷めやすいと言いますが、いざとなると素材を生かして、みんなの力をユニバーサルデザインに結集することができるのではないでしょうか。

 もうひとつ思ったのは、次回からはこの会に警察を入れるべきだということです。ユニバーサルデザインを考えるのに県と市だけじゃなくて、警察行政もどうしても必要だと思いました。入交さんから、裏道を一方通行にしたらいいのではないかという話がありましたが、それは警察がいっしょになって考えてくれないとできない。

 ソフトという意味では、警察行政が持っているソフトは、まちづくりにたいへん大きなウエイトがあると思います。ぜひ警察の方にも、来年度からはどんどん出て来ていただいて、いっしょに議論していただきたい。私たちの思いつかないユニバーサルのソフトを警察が持っているのではないかと思いましたので、それを最後に付け加えておきます。

(谷本)
 ボストンから始まって、ユニバーサルデザインによる都市再生の手法が少しは見えてきたと思います。私ども高知県政策総合研究所のホームページで、この会議の実録が見られるようにセッティングいたしますので、ご覧になっていただければ幸いです。


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