日本記者クラブでの知事講演

公開日 2007年12月07日

更新日 2014年03月16日

日本記者クラブでの知事講演

平成15年1月15日(日本プレスセンター)

挨拶

(講演)
 ・平成3年の最初の知事選挙
 ・小泉内閣への思い
 ・高速道路をめぐる議論
 ・国と地方との関係
 ・知事グループの連携
 ・1.5車線的な道路整備
 ・森林環境税

(質疑応答)
 ・小泉内閣の地方行革への期待
 ・小泉内閣の情報公開と地方分権
 ・橋本知事の四選出馬
 ・多選問題への思い
 ・北川知事への思い
 ・議会との関係
 ・市町村合併
 ・四国の連携
 ・本四架橋の効果
 ・自由貿易と農業問題
 ・多選の弊害
 ・国体後の取り組み
 ・選挙での候補者推薦



(挨拶)
 皆様、こんにちは。ご紹介いただきました、高知県の知事の橋本でございます。実は昨日、今司会をしておられます、和田さんの局フジテレビの「クイズミリオネア」という番組に出演をして収録をいたしました。

 結果は30日の放送日を楽しみにしていただきたいと思いますが、それがありましたために、この4、5日夜も眠れない気が気でない毎日でございましたし、昨日は昨日で収録が終わっても後ぐっすり寝てしまいましたので、あまり準備をしてきておりません。

 さらにこうやって会場を見渡してみますと、かつての直属の上司から、同僚から、いろんな方がおられて大変緊張をしておりますので十分なお話をできないかも知れませんが、後の質疑応答を楽しみにしておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。ありがとうございます。



(講演)
 皆様、こんにちは。改めまして本日はお招きをいただきまして、誠にありがとうございます。先ほど、冒頭のご挨拶でも申しあげましたけれども、かつての同僚や先輩どころか、大先輩が数多くおられますので、いささか緊張もしております。

 また、日頃はいつも立って話をするほうでございますので、座って話をすることに慣れておりませんので、話が整わないかも知れませんけれども、後ほどの質疑応答のほうが重要ではないかという思いで参りました。また、皆様方のご関心も多様にわたると思いますので、ぜひ、その質疑応答を楽しみに、ということでわたくしの話は前ぶれとしてお聞き願えればと思います。
(平成3年の最初の知事選挙)
 わたくしも早いもので知事になりまして11年が過ぎて、3期目の最後の年を今迎えております。その最初の選挙、平成3年暮れの選挙のことを考えますと、当時わたくし44歳でございました。現役としては一番若い知事でございましたし、また初めての戦後生まれの知事でございました。今はもう下から数えて何番目か分からなくなりましたし、戦後生まれの知事さんも間違いなく十数人という数にのぼっております。それだけ月日の経つのは早いな、ということを感じます。

 また、先ほど言いました平成3年暮れの最初の選挙の構図を考えてみますと、自由民主党が推す、そして県内の百を超える諸団体がこぞって推薦をされる元の副知事さんと、無党派、草の根のわたくしとの事実上の一騎打ちというかたちでございました。ですから、2000年の秋の長野県の田中さんの最初の知事の構図を見て、かつて高知で起きたことがまた同じような現象として長野で起きているんだなあということを感じました。

 また、その後、小泉さんがいわば自由民主党のなかでの草の根のようなかたちで大勢が推しておりました橋本龍太郎さんを破ったという流れを見ておりまして、わたくしの身内のことですのであまり外に向いて大きな声では言いにくい面もございましたが、10年前に高知という地方で起きた波がようやく中央にも届いてきたのかな、ということを密やかな自負として感じたこともございました。
(小泉内閣への思い)
 しかし、その後の小泉内閣また小泉さんをリーダーとする体制の流れというものを見てみますと、改革ということでひとつに区切れない、何か二重構造的なねじれ、しっくりこないものを感じざるを得ません。それを最初に感じましたのは、一昨年の参議院選挙の頃のことでございました。

 と言いますのも、小泉さんが進めようとされている構造改革がそのままストレートに進んでいけば公共事業の見直し、削減ですとか、地方交付税の見直しですとか、地方にとっては当然厳しい環境が予想されておりました。

 それにも関わらず、日頃県に対して、公共事業をもっともっとたくさん受けこめと、地方交付税も特交も含めてもっといっぱい取って来いと、こういう要求をされている方々が、一方では小泉さんの人気を生かして「小泉改革を進めましょうね」と訴えていく、そういう二重構造、ねじれということを感じたからでございます。

 さらに具体的な選挙戦というものに目を向けましても、建設業にかかわる業界の方々、また特定郵便局に代表される方々、そういうまさに従来からの方々が応援をする候補者の方が、一方で郵政改革、そして公共事業の見直し削減ということを掲げておられる小泉さんの人気の追い風に乗って自由民主党の基盤を広げようとされる。

 そういうねじれを感じましたし、また、そうした構造というものを地元で地域で熱心に活動されている方々がどれだけ認識をしているのかな、ということも疑問として感じざるを得ませんでした。

 その後、小泉さんが自由民主党の解党ということを言葉としてはおっしゃりながら、そのきざしさえも見えないという流れを見ておりますと、いわゆる守旧派と呼ばれる方々と小泉さんとの間に暗黙のと言うか、以心伝心のと言うか、そういう了解の上に書かれたシナリオを読まされているんではないかなと、そんな感じもしないではございません。

 また、こうしたねじれということとは別に、小泉さんの構造改革に対する基本的な理念考え方ということを聞いた時にも、ひとつの疑問が浮かびました。と言うのは、小泉さんは知事との会などで、「地方にできることは地方に任せる。民間にできることは民間に任せる。これが自分の進める構造改革の基本的な理念だ」ということをおっしゃいます。

 それを聞いてわたくしは、確かに地方にできることは地方に任せる、民間にできることは民間に任せるということは、その言葉の限りでは全くその通りですし、反対をする人もいないだろうと思います。ただ、世の中は「地方」と「民間」というセクターだけで成り立っているわけではなくて、もうひとつ重要なセクターとして国の役割、国の位置づけというものがあろうと思います。

 にもかかわらず小泉さんのお話のなかには、敢えてそうされているのかどうかは分かりませんけれども、国の果たすべき役割責任は何か、どこまでやるかということが全く抜け落ちているのではないか、ということを疑問として感じました。
(高速道路をめぐる議論)
 こうした疑問は、その後の高速道路をめぐる議論でも、引き続いて同じ現象として自分には映っていきました。と言いますのも、今日本の競争力を弱めているひとつの大きな原因でございます物流のコストという視点に立った時に、高速道路の料金の問題をこの機会にどう国として考えていくかというような、国の役割、位置づけという視点。

 また、有事ということは挙げなくても、東海、東南海、南海という地震の広域的な震災の被害ということが近い将来予測をされている現在、国の安全安心ということから基幹的なネットワークづくりを国の責任でどこまでどうやるかというような視点。そういう視点が全く抜け落ちたままの議論になっていったのではないかと思ったからでございます。

 こうしたことに対して現実面では、民営化ありきということで話が進んでいきました。このために一方では、地方分権とか地方の自由度を増していく、それを応援をしていくということを言われながら、その一方で地方にとっての固有の財源である固定資産税を払わない会社を作っていこうかというようなことが、また地方の手の届かないところで議論をされるというような状況。さらにはこれと同じようなことになっていきますけれども、大きなスーパーが二兆円ほどの負債でギブアップをするという時に、その十数倍の負債を抱えて民間企業を作っていこうというような流れ。

 経済原則から言っても制度から言っても、いささか無理があるんではないかというような話の進め方が、あたかも正義の使者の啓示であるかのように、詳しい分析がなされないまま進んでいった面があるんではないかということを感じております。

 このため、本来道路というものは、高速道路であっても一般道と同じように無料であるべきだ、とわたくしは思いますし、わたくしは構造改革という事を言うんであれば今こそ高速道路の無料化を考える、政治的に知恵を出していく、ということが経済活動という面からも国民生活という面からも抜本的な改革になっていくのではないかと、自分自身は思いました。

 けれども、民営化ありきということで話が進みましたから、会社は当然料金収入を得なければいけないということで、有料化が長期的な将来にわたる固定化する現象につながっていったのではないかと思います。

 このことによって、少し細かいことになりますけれども、ETCの設置ですとか、それに関わる自己負担といった新たな出資も今後ずっとしていかなければいかないということになります。しかも、あくまでも民営化であって組織の解体ではございませんので、その組織の名前が変わったとしても、実質的には組織や人材の実態もあまり変わらないままに会社というものが発足し進んでいきはしないかなということも感じます。

 と言いましても、わたくしはそのことが全面的に悪いというような趣旨で申しあげているわけではありません。けれども、今申しあげているようなことを、国民の皆さんが気づいておられるかどうか、また気づかれたらどう思われるんだろうな、ということを疑問として感じる、ということでございます。

 ただ、こうした疑問を前面に出して議論をしていきますと、今小泉改革対守旧派という、きわめて図式化された議論が進みますなかで、守旧派の方々からも「うん。おまえはいいことを言ってくれた。おまえは仲間だ」と言われそうな気がいたしますし、また、一方マスコミをはじめとします外の目からも、「おまえも守旧派か」と十把ひとからげに片づけれられそうな、そんな悩みがございます。

 要するに、今進められている改革の手法なり、方向性なりが国のためにいいというきちんとした判断ができるのであれば、どんなに二重構造があってもねじれがあっても矛盾があっても、それはわたくしは進めていけばいいと思います。

 しかし、そこに疑問がある、方向性に疑問があるということであれば、今のうちにその点はきちんと整理をしておかないと、一方で水戸黄門や暴れん坊将軍が悪い代官を懲らしめ、お灸を据え、一方で幕府の官僚体制はそのまましっかり続くというような、日本的な勧善懲悪の図式がまた続いていくのではないかなということを感じざるを得ません。
(国と地方との関係)
 また、今日の日程なんですけれども、実はこの後、直接高知にわたしは帰るわけではなくて、高松に寄って、国の出先官庁で公共事業に関する要望をすることになっております。

 そのことにも象徴されますように、わたくしは小泉さんのもとでの改革が、かなり中途半端なかたちで進んでいるために、本人たちの意識がそうであるかどうかは別にして、現実の問題としては中央官庁、中央のお役所の力がますます強まってきているのではないかということを感じざるを得ません。

 と言いましても、僕自身は、もうバランス感覚と現実というものを重視をするタイプでございますので、そのこと自身を悪いとか嫌だという意味で申しあげているわけではございません。むしろ、県民のためにプラスになるのであればどんなことでもやっていくのが知事の立場だと思っています。

 けれども、こうした現実にも目を向けていただかないと、小泉改革が進めてきたもの、そこに起こしてきた現象というもの、変化というものを公正に、またバランス感覚をもって評価をすることはできないのではないかというようなことを、自分は感じます。
 ということで、今、中途半端ということを申しあげましたが、地方をあずかる立場で申しあげますと、いっそのこともう引導を渡してくれるのであれば早く引導を渡してくれれば受入体制もつくりやすいがなあと思うのが、本音としてございます。

 と言いますのも、例えば、義務教育の人件費の国庫負担を削減、廃止をしようという議論が進んできております。このことも、今の現実の仕組みとの比較で言えば、本県のように児童生徒の数が少なく小規模な学級や学校が多い県にとっては、決して「はい。よろしゅうございます、ぜひやってください」とは言いにくい面がございます。

 が、一方で、その分教員の配置ですとか、地方の自由度が高まるということは決して全て否定されるべきものではございません。ですから、最初から引導を渡すかたちで議論が進み、エイヤッとそれが結果として出てくるのであれば、そのための体制、受け皿を作るということは十分可能なことだろうと思います。

 しかし、現実にはきわめて中途半端なかたちで議論が進みますから、一方の側からは「もっと地方から思い切った改革支援の声をあげろ」というようなことを言われ、もう一方の側からは「今のこの体制の必要性を現場から声としてあげてくれ」というその狭間に挟まれるということになります。

 結果的に見ましても、結局は教員の皆さん方の年金、その部分だけを削減をしていくという、地方の教員配置の自由などとは関わらない、わりと手のつけやすいところを先食いをしていく、先取りをしていくというかたちで始まりましたので、そういう流れを見てみますと、今申しあげた部分は全体で3兆円くらいの規模の予算でございますが、3兆円という金額の魅力に惹かれたお役所の考え方に引きずられて出てきた議論なんじゃないかな。その後、地方の自由度ということが付け足しで出てきたんじゃないか、というようなことも疑わざるを得なくなってきます。

 また、今申しあげたような個別な議題だけではなくて、総体的なことを考えてみましても、国の補助金、地方交付税というものが本当に国のくびきから国の関与というものから解き放されるのであれば、地方に来る額が大幅に減額をされても地域のためにそれをプラスに使っていく、メリットとして生かす道は数多くあるんじゃないかと思います。

 と申しますのも、今の地方の県の仕事の仕方を見ていますと、国との調整、国の関わる仕事の書類作りということに膨大な時間、労力、人件費を費やしておりますので、この部分の関与がなくなるということであれば、人の面でもお金の面でもそれを十分、またこれまでになかった地方のサービス、住民のサービスに使っていくということが可能だと思うからです。

 ということを言いますと「そうならばもっと地方からそのことをもっと強く主張して国と争っていけばいいじゃないか」とこういうご議論が当然出てくるだろうと思います。

 ただ、今置かれている国との力関係ということを考えました時に、そのことを正面立って今争っていく、その争いに時間を費やすということが果たして県民生活のここ数年の動きということでプラスになるか、メリットになるかどうかということは正直迷わざるを得ません。要するに、もしこのような状況が続いていくのであれば、なかなか地方としてはやりにくいなあという思いを感じざるを得ません。

 今、補助金、また地方交付税のことも申しあげましたけれども、わたしの立場からすれば今の現状で言えば、やがて地方交付税も補助金も当然減額されてくるだろう。だけど、その分国の関与は間違いなく減ってくる、そしてこれまでの縦割りとは違ったいろんな地方独自の行政ができるようになるだろう、その時に備えて組織も意識も変えていこうということを県に職員に言っていくのが精一杯ということになってまいります。
(知事グループの連携)
 こうした状況を考えました時に、これをどう変えていくのか、また、このことにどう国に対して情報発信をしていくか、これはなかなか評論家的な議論だけではすみません。さらに、地方の知事がひとり遠吠えをしてもそれが届くわけでもありません。ということから言いますと、従来息の合った知事と作ってきたグループの連携を強めていくということも、今こうした時だからこそ必要なことではないかということを感じています。

 具体的には、慶応大学の榊原さんが中心になって作っております地方分権の研究会がございますし、もうひとつ今は総務省の審議官をされている月尾さんが中心になっております「地域からかわる日本」というグループがございます。

 このうち榊原さんの分権の研究会のほうは、わたくしはまだ名前を連ねただけで具体的な勉強会に入ってはおりませんので、詳しいことを申しあげることができませんが、もう一方の、この分野ではもうかなり老舗になりました「地域からかわる日本」のほうは、そこに参加する知事の地元での持ち回りのシンポジウムというものもほぼ一周をいたしましたので、そろそろこれからの活動、その内容も含めて見直しと言うかバージョンアップが必要ではないかということを議論をしております。

 その具体的な内容につきましては、もう少しお互いでの議論を深めた上、統一地方選挙が終わった頃を目指して、外に向けても打ち出しても行きたいということを思っていますが、そのなかで僕が個人的にこういうこともやってみたいなという思いで提案をしていることは、地方の議会なり首長なりの選挙に出たいという方を自分たちのグループで推薦をしていくといった政治的な活動ができないだろうかということでございます。

 と言いますのも、今既成の政党に入ったり、既成の政党の推薦を受けたりする、そのことはあまり自分の思いとは合わないけれども地方議会だとか首長だとか、地方の政治行政に強い関心と意欲を持っているという方は相当の数、特に若い方でもいらっしゃるということを実感として思います。

 が、そういう方がただ単に自分本位の思い入れや思いこみの政治マニアであっては困りますし、その一方でこういう人こそぜひやって欲しいなと思う人に限って全く何のバックもありませんので、実際に選挙に出た時には泡沫候補扱いでどうにもならないという現状がございます。

 そこで、わたくしたち知事のグループ、またこれからは知事だけではなく全国でいろんな独自の取り組みをしておられる市町村長さんにも入っていただきたいということを思っておりますので、そういう知事や市町村長で委員会と言うか、ひとつのかたちを作ってそこで地方の議会なり首長選挙に挑戦をしていきたいという方の面接をして、この人ならと思う人を推薦をしていく、というようなことができたらいいなというのが、わたくしの個人的な思いでございます。

 このことに関しては松下政経塾のOBの方々もそのようなことをしようかという動きがある、という記事を先日拝見をいたしましたけれども、知事のグループというのは松下政経塾とはまた生い立ちももちろん違います。また考え方、感覚も少し違うところがございますので、こうした取り組みをしていくことも、地方からの情報発信として意義のあることなのではないかということを感じています。

 その時にやはりキーマンとして考えなければいけないのは、現在三重県の知事をされている北川さんのことでございます。北川さんが三選出馬をしませんと、見送りますということを言われました後、わたくしのところにも直接お電話を下さいましてその理由について縷々お話をうかがいました。

 正直なところ、何故三選出馬をしなかったのかなということが十分自分には飲み込めませんでしたし、今も理解できていないというのが本音でざいます。しかし、北川さんも今後ともグループの仲間が了解をしてくれるのであれば、榊原さんの研究会も、また「地域からかわる日本」も同じくグループの一員として入って発言もし、活動もし、行動もしていきたいということを言われております。

 ということは、先ほどからわたくしは現職の知事として現実とのバランス感覚の中で、なかなかそれ以上踏み切れないことがあるという煮えきれない話をいっぱいいたしましたけれども、そうした重荷から解放され、知事という肩書きを持たなくなって自由に発言もでき、行動もできる北川さんの位置づけというのは大変大きなものがあるのではないかとわたくしは思いますし、そういう活動のほうが今の時代単純に永田町に戻って活動されることよりも、はるかに政治的なインパクトを持つようになるんではないか。ぜひ、そういう時代になって欲しいなということを思っております。

 ということで今日はこれまで小泉内閣に対する思い、並びに地方の知事のグループとしての取り組みということをちょっと雑ぱくに申し述べました。が、もう少し時間がございますので、今の国のいろんな動きとも関わる高知県としての独自の取り組みをふたつほどご紹介をさせていただきたいと思います。
(1.5車線的な道路整備)
 そのひとつは、もう県独自の取り組みという域を越えつつございますが、道路整備に関わる1.5車線的な整備の提案ということでございます。と申しましても、ご存知無い方は何のことかと思われるかも知れませんが、道路整備というものは従来は2車線を整備をして初めて改良という位置づけがございました。

 しかし、本県のように急峻な中山間地域を多く抱える県では、従来の二車線で初めて改良だという基準でございますと、道路の改良をすますのにまだこれから90年くらいかかる計算になります。これに対して地域からは「なにも二車線、特に歩道つきなどという道路を整備してくれなくても1.5車線の幅で車が行き交うことができれば、またカーブの見通しがよくなればそれで十分だ」という声がいっぱいございました。

 そこで、国に対してこの1.5車線の幅の整備も道路改良整備として基準として認めてくれということをずっと提案をしてきました。その提案は認められて道路改良の整備として位置づけられることになりました。けれども、「それは高知県さんの独自な事情でなさることだから、この高知県の独自の事情でやることは県の単独の費用でなさってくださいよ」というのが従来の国の考え方でした。

 つまり、国の補助事業ではありませんよ、ということでした。ところが、こういう流れをお知りになった多くの県から同じような要望が出ましたために、15年度、来年度この4月からは国の道路の補助事業の重要な柱として、この1.5車線的な道路整備というものが位置づけられるようになりました。

 このように、昨年の高知国体ではございませんけれども、地域の実情にあった、身の丈に合った仕事ということが、これからはますます必要になってくるのではないかということを思いますし、またこれも先ほど言いましたように、早く引導をきちんと渡すならば渡してくれるのであれば地方から、今申しあげたこと以上に身の丈に合った、地方の実情に合ったいろんな独自な取り組みが次々と出てくるんではないかということを感じます。
(森林環境税)
 もうひとつご紹介をしようと思うのは、この2月の県議会に上提をし、新年度から実施をしようと考えております、森林環境税という新しい税についてでございます。このことを考えることになりましたきっかけは、2000年の4月に地方分権一括法が制定をされまして、法定外の普通税、法定外の目的税が従来よりもずっと制定しやすくなったということが発端でございました。

 このため県でも、何か新しい税を、ということで検討しましたけれども、地方分権になって法定外の普通税、目的税が作りやすくなった、だから次から次へと増税になったというのであれば、県民の皆さんにとっては地方分権というのは自分たちのために何だったんだろうという議論になりかねません。

 そこで、単に財源の補充という視点ではなくて、広く薄く負担をしていただく新しい税をきっかけに、これまで気づかなかったことに気づいていただく、そういうことを行動につなげていただく、そんな政策的な意味合いを持った税が考えられないか、というところから出てきたのが森林環境税というものでございます。

 と言いますのも、我が高知県は県の面積の84%が森林。日本一森林の面積の広い県だからでございますが、ご承知のとおり外材の輸入などによりまして木材の価格は低迷どころか、下落の一途を遂げております。このために森林の手入れも行き届きません。

 その結果、従来降った雨を根っこに、山に溜めてそしてじわじわと川に送り出して下流の大都市部に飲み水を供給をしていた、また炭酸ガスを吸い込んで酸素を供給をしていた、といった森林の果たしてきた公益的な役割機能というものがどんどん失われていっております。これに対して従来もっていた財源で何らかの環境的な手当をすることは、当然可能でございます。

 が、そういう手法を取りますと、県民の皆さんには目に見えないところで新しい事業が始まっていくということになりますので、また県が何か業者のために新しい仕事を作ろうと言って事業を始めたかなというような視点でとられかねません。

 そこで、そうではなく、広く薄く、この税の場合には1世帯あたり年間500円を県民税に上乗せをするということを考えておりますが、そういう広く薄い負担をいただくことによって都市部を含めた県民の皆さん方に森林の果たしている役割の大切さに気づいていただく、そういうきっかけになる税になればな、と思っております。

 あわせまして今、7月20日の海の日、9月20日の空の日というのがございますので、あわせて山の日というものを県独自で制定をし、この日だけではなく、この日を挟んだ期間には県の職員はもちろんですけれども、都市部の方々も山に行って間伐などのボランティア活動をしていただく。また、山の荒れぐあいを見ていただく、逆に山の果たす環境的な役割を知っていただく。そうしたことによって森づくりの大切さに気づいていただく、そんな取り組みができないかということを思っております。

 このことに関しましては四国の他の3県、たとえば愛媛県は加戸知事が、高知県が一歩踏み出せば必ず愛媛県もそれについていきますということを言われておりますし、徳島県も同じことを条例化すべく検討をされております。また、香川県も当然、早明浦ダムという本県のダムに水源を頼るという事情から、森林のことには関心をもっておられますので、高知県が先鞭をつけるというかたちでも、必ず他の3県も四国4県もいっしょになってこうした森林環境税の取り組みができるのではないか、と思っています。

 このことは単に高知、四国だけではなくて、日本全体で地球環境にも関わる森林の問題を考えていくきっかけになるのではないかな、とそういう情報発信というものをこれからも地方からどしどししていければな、ということを思っております。

 ということで今日は、最初にも申しあげましたように、やや緊張したなかでお話をいたしましたので、十分意が伝わりましたかどうか分かりませんけれども、ほぼわたくしのいただいた時間を終わりましたので、この程度で話は終わらせていただきます。後の質疑応答を楽しみにしておりますので、どうかよろしくお願いいたします。
 とりあえずご静聴ありがとうございました。



(質疑応答)

(小泉内閣の地方行革への期待)
(毎日新聞:山田氏)
 概括的なお話がございましたので、まず私のほうからいくつか、会場から回ってきましたカードも参考にしながら、させていただきます。

 小泉内閣の地方行革に対する姿勢に不満を今おっしゃいましたけれども、一方で榊原さんの地方分権研究会にご参加になり、これから活動していくというところですけれども、榊原さんは明確に小泉政権では地方行革は進まないということをおっしゃっているわけですけれども、そのへんの小泉内閣の地方行革に対する、取組みに対する絶望の度合いというものをもう少し、あるいはどの程度まだ期待していらっしゃるのか、そのへんをおっしゃっていただきたいと思います。

(知事)
 わたくしは先ほども言いましたように、現実とバランスのなかで仕事をしていくというタイプでございますので、本音は、今のままの仕組みが続けばそれは楽でいいなと思います。しかし、さらに奥の本音では、この体制がいつまでも続くわけがないと思います。

 ですから、先ほども言いましたけれども、引導を渡すならばもっと思い切ってスパッと渡して欲しいし、そのほうが地方の意識も思い切り変わっていくことにつながるのではないかと思います。ということから言えば、絶望度というものは特に持っておりません。まだどうなるか分からない、それに対してどう対応していこうかと間合いを計っているというのが私の今のスタンスでございます。
 

(小泉内閣の情報公開と地方分権)
(毎日新聞:山田氏)
 片山知事や北川知事は、非常に小泉政権というのは情報公開と地方分権に対する認識が弱い、薄い、ということをご指摘になっていらっしゃいますけれども、橋本さんはいかがですか。そういうふうにお感じになりますか。

(知事)
 小泉政権として、情報公開のほうはちょっとよく分かりませんけれども、地方分権への認識が薄いのか深いのか、そのことそのものが僕にはよく伝わってきません。

 特に小泉総理は、非常に短い言葉でいろんなことを表現するということを得意とされ、それが今の時代にうけているという面がありますけれども、これは地方分権のことだけではありませんが、特に地方分権について、小泉さんとして何をどう考えておられるかということは、全くつたわってきません。

 僕が直接聞いた、または新聞の記事やテレビのニュースなどで知ったことは、先ほど言いました「地方にできることは地方に任せろ。民間にできることは民間に任せろ」という、この2行しかございませんので、他にどういうことを具体的に考えておられるかということは私には十分つたわってきません。
 

(橋本知事の四選出馬)
(毎日新聞:山田氏)
 改革をさらに進めようと、意欲十分というふうに拝察いたしましたけれども、ズバリ12月の知事選の4選出馬のご意志ありやなしや、ズバリうかがいたいと思います。いかがでしょう。

(知事)
 ズバリ訊かれても、なかなか言いにくいのでございます。と言うのは、やはり地元を大切にしないといけないので、どういう立場でどういうかたちで言うにしろ、なかなか日本記者クラブにお招きをいただいたからそこでしゃべってしまったというのでは、またまたご地元の様々な方々のお怒りを買うことになるんじゃないかと思うからです。

 私としては従来から言っておりますように、まだ56歳になったばかりで元気一杯でもございますので、ぜひ続けるという気持ちで仕事はしていきたいと思っております。ただ、もし出るということになれば、4期目ということになりますので、ただ4期目に出る出ないということを発表する、決意表明をするということではなくて4期目に何をしていくか、

またその次につながるようなかたちで何を自分で考えていくかということを、やはり明確に説明をする、それだけの資料を集め、自分の考え方をまとめた上で言わないと、4期目というのはおかしいんではないかなということを思いますので、その4期目に向けての考え方、仕事ということをまとめた上で、今のご質問に対してはきちんとお答えをする時期がでてくるんではないかということを思います。
 

(多選問題への思い)
(毎日新聞:山田氏)
 ごもっともだと思いますが、北川知事が2期8年でお辞めになる。あるいは長野県の田中知事が、多選自粛条例を、これは継続審議になりましたけれどもご提案になったと、これは3期12年ということでご提案になったのですけれども、このへんのことは意識されますか。

(知事)
 意識いたしません。わたくしは知事になりました時から、たまたまお近くで、またご縁のある岡山県に長く知事をなさっていた方があって、その方の応援もしにいかなきゃいけないという現実がございましたので、知事の任期について、多選について特段批判をした発言をしてはおりませんでしたし、自分自身も多選というのはやはり選ぶ側の方が判断をされることであって、自分がおかしいと思えばそれは辞められればいいですけれども、自分がおかしいとか権力のなかに埋没をするという心配もないのに、敢えてそのことだけを意識をする必要はないということは申しあげてまいりました。

 ただ、体力的に5期も6期もするということはわたくしには、これまでの経験から言っても、とても続かないだろうということは思います。ということから言いますと、私は知事、または首長という仕事は何選目かということよりも、年齢として、それは五十何歳という物理年齢だけでなくて精神年齢もあるのかも知れませんけれども、年齢としての若さとやる気があるかどうかということに関わると思いますので、今お話しにあった北川さんや田中さんのことは特段意識はいたしません。
 

(北川知事への思い)
(毎日新聞:山田氏)
 北川知事のことにふれましてお話しになったそうですけれども、知事の場を離れて今の動きをエンカレッジしていくような話を、ということをでしたけれども、あるいは、最新の『中央公論』に、民主党の岡田幹事長は「三重県の出身でもあるし、彼はいずれ民主党内閣の閣僚だ」とか、そういうことを言っておられますけれども、そのへんの橋本知事の展望される北川知事の役割というものをもう少し詳しくお聞かせいただけますか。

(知事)
 去年、不出馬表明をされた時に、北川さんが本音で何を考えていたかというのは分かりません。その時からの状況の変化で何か違いがあったのかどうかも分かりません。そういうことも可能性としてはなくはないのではないかということを思います。

 けれども、今の時点では、私は北川さんには、自分の期待もこめてですけれども、今のあのスタンスで中央うんぬんということではなくて、知事の連合というか、知事の活動をまとめていくひとつのキーマンとして動き、また発言をされるということであって欲しいと思いますし、そのことのほうが私は時代の流れから言って、絶対に政治的な発言力を持っていけるだろうなということを、自分は僭越ながら思います。
 

(毎日新聞:山田氏)
 国政復帰の可能性はないとご覧になっているわけですね。

(知事)
 そうあって欲しくないなというのが私の思いでございます。
 

(議会との関係)
(毎日新聞:山田氏)
 橋本知事がパイオニアとなって、91年に政党推薦拒否ということで当選をされまして、今日この年の地方選でも、そういう知事候補がどんどん広がっておりますけれども、いろいろ続くランナーが出てきたなかで、しかしいろいろアプローチが違う。

 例えば、長野県における田中知事と議会の関係、鳥取県における片山知事と議会の関係、かなりへだたりがありますけれども、議会と知事の関係ということについて片山さんと田中さんのアプローチの違いをどういうふうにご覧になるか、あるいは橋本知事としてはどういうふうに議会とつきあっていらっしゃるのか、そのへんをお聞かせいただきませんか。

(知事)
 田中さんと議会、片山さんと議会との関係を正しく理解をしているわけではございませんので、きちんとした答えができないと思いますけれども、傍目から見る限り、田中さんのやり方というものは、正直言ってしっくりこないところがあります。もうちょっと折り合いと言うか、裏技を使うということがあってもいいんではないかなということを思って、もし田中さんと腹を割って話す機会があればそういうことも訊いてみたいなと思っています。

 一方で、片山さんも頑なさということでは、かなりのものがあろうと思います。けれども、田中さんよりも、どちらかと言うと明るさがあるんではないかと、議会との関係では。ご本人の声だけを聞いているせいかも知れません。議会の方に聞くとそうじゃないかも知れませんけれども。というような色合いのイメージの違いというものを感じます。

 で、自分自身はどうかと言うと、あんまり明るい関係ではございません。かと言って暗い関係でもない、とは思いますが、私は先ほどから繰り返しますように、現実とバランスのなかで生きておりますので、自分自身も少しは変えていかなければいかんだろうと思います。

 けれども、一方でやはり無党派草の根という本来の一線を譲ってしまったのでは、存在意義もなくなるだろうと思いますので、その範囲でやり合いをしております。私は、議会の側、政党の側にももっと柔軟に、これは高知県議会だけでありませんけれども、柔軟に変わっていく姿勢がもっともっとあっていいんじゃないかと思うんです。

 というのは、最初に前ぶれに言われました政党推薦の拒否ということも、私はもちろん政党政治を批判をしているわけではありません。そういうかたちの知事なり首長なりが、ポンポン出てくるということで、政党の側にももっと違った動き、活動をして欲しいなというのが正直な思いでございますけれども、なかなかそうならない。そうならないことが議会との関係に反映をしてきているのではないか。

 それをさらにつきつめれば、知事とか市長村長の選挙であれば、相当の方が関心を払って投票所まで足を運ぶようになって下さった。だけど、議会まではなかなか関心を払う人がまだまだ少ないということもその背景にあるんではないかと思います。だからこそ、さっき申しあげたような、知事のグループでの推薦のようなかたちでもう少し関心を広げることができればな、ということを思います。
 

(市町村合併)
(毎日新聞:山田氏)
 ありがとうございました。今話題の市町村合併についてお尋ねをいたしますけれども、市町村合併の現況についてどういうふうにご覧になっているか。特に合併しない小規模市町村の権限剥奪論、これは地方制度調査会の西尾試案なんですよね、中間報告に盛られるんでしょうか、このへんのことについてどういうふうにご覧になっているか、ご所見をお聞かせいただきたいと思います。

(知事)
 私は従来から市町村合併というのは、国や県が無理やり押しつけてできるものでもないし、またやるべきものではないと思いますし、あくまでも地域の住民の方々が公開された情報のもと、自分たちの自治体はどうなっていくか、どうすべきか、そしてどういう町を作っていくかという議論のなかで判断をされるべきではないかという筋論というか、きれい事をずっと述べてまいりました。

 で、現実にそういうスタンスできましたので、地元の政党の方々とか総務省などからは、もっと合併に力を入れるようにという声をいただいておりますけれども、私は最後の最後まであくまで地域の住民の議論に任すべきだと思います。しかし、現実に今申しあげたような情報が住民ひとりひとりに下りて、議論がかみあっているかと言うと、決してそういう状況ではありません。

 やはり、お互いの首長どうしの関係だとか議会の思惑だとかということと過去のいきさつということから、ともかく特例交付金の期限もあるからやろうねという流れになっているのではないかな。なんとかそのところにそこに身を入れるというか、内容をこめていかないといけないなという悩みでおります。

 もうひとつお話のございました、西尾先生の言われた、合併をしない市町村、町村の権限剥奪論でございますけれども、これは、これも西尾先生と直接議論したことがございませんので、本音としてどういう落としどころを考えて言われているかということは私にはよく分かりません。多分、小泉改革でもそうですけれども、一定過激なことを言わないと、今の仕組みを変えるということはできませんので、そういう思いが、西尾先生ほどの方だからあるんではないかと、一方思います。

 しかし、その現実論ということであれば、ただ単に合併をしないからもし剥奪をしてしまいますよということであれば、それはいささか行き過ぎではないか、と。そこは地方のいろんな議論、独自の議論のなかでこういう権限についてはもう剥奪というか、それを放棄してもいい、だからこの部分だけはやっていこうという議論がもう少し下から煮詰まって、というのが実際の地方自治にとっては望ましいのではないかと思います。

 ですから、西尾さんの議論に対してはそのことがそのまま、単に政策として進められるのであれば、いささか暴論と思いますけれども、実際はそうではなくて何か過激なことを言わないと世の中変わらないという、そういう現実論から出てきた考えではないかと思います。
 

(四国の連携)
(毎日新聞:山田氏)
 地方の再編に関しては北東北3県の合併論というのがありますけれども、もうひとつはやはり四国が注目されているんですけれども、そのへんの問題というのはどういう現状にあるのか、展望はどうかというところをお触れいただきたい。

(知事)
 僕が最初に知事になりました頃も、大分の平松さんを始め、道州制ということがさかんに言われ、私も新進の知事としてどう考えるかと言うことを訊かれました。その時は道州制と言っても、それは法律の改正、さまざまなことがあるので、そのことの議論に参加して現実の仕事の時間を割かれるのは、自分としては自分の本意ではないというようなことから、議論を逃げてきました。

 けれども、今10年経ってこの時点になれば、道州制と言うかどうかは別にして、例えば四国であれば四国4県の連携ということは具体的な課題として考える時期にきていると思います。

 ただ、その時ひとつ考えなければいけないのは、今ある都道府県というものがまさに中二階的な存在、先ほどのお話しのなかにもありましたけれども、国との関係との調整だとか書類づくりにも膨大な時間と労力を費やしている、そういう存在でいつまでも存在していけるかどうかということです。私はしていけないし、すべきでもないと思います。

 将来的には、都道府県という存在をもっともっと分解をしていって、結果的に統合をしていく基礎自治体、そこにもっと人が出て行って地域と一緒に仕事をしていくような地方自治に変わっていくのではないかと思います。

 その時に、四国というものが道なり州なりとして残っていく、位置づけとして何があるかということがもうひとつ見えませんので、そこまで踏み込んだ議論ができませんけれども、今の仕組みのなかで言えば、道州にあたる四国連携というものはもう少し具体的な課題として議論してもいい時ではないかと思いますし、特に四国のなかであれば愛媛の加戸知事などは積極的な四国4県統合論者でございますので、そうした意味で四国4県の広域連携から統合に向けた動きというものは、もうちょっと具体的な話をしてみたいな、と。

 間もなく地元のテレビ局がやっております4県の知事の毎年の座談会というのがございますので、そのなかでもそういう議論をしてみたいなと思っております。

(毎日新聞:山田氏)
 ありがとうございました。では、代表質問はこれで終わります。
 

(本四架橋の効果)
(質問)
 個人会員の大谷でございます。本州と四国の間に3つの橋が非常に早くできましたが、橋が四国経済の、観光とか商業とか発展に果たして役立ったのかどうか。特に高知なんかは観光客が増えているとかプラスの効果ができているんでしょうか。我々は東京におりますが、四国に行く時は飛行機で行くほうが早くて、一生のうち一回くらいは本四架橋を車で行ってみようかということはありますが、ともかく高知県の・・に対してプラスになっているのかどうか、お聞かせ願いたいと思います。

(知事)
 なっているのかどうかと言えば、なっております。観光ということで言えば、本四架橋が開通をする前は、いろんな統計の出し方はありますが本県がずっと毎年やっている統計の出し方から言えば、観光の入り込み客というのは四百万人台でございましたけれども、瀬戸大橋開通後はいろんな浮き沈みはありますが、五百万人を超えるという数字になっておりますので、それは間違いなくプラスの効果があったと思います。

 また、今大谷さんは一生のうち一度通るかどうかということをおっしゃいました。個人個人はそうだと思います。しかし、皆さん方が毎日口にされる野菜や魚というものも、この橋を通って来ているものが数多くあります。そういう食生活なり消費生活を支えている側面というものも、ぜひ考えていただかなくてはいけない。つまり四国への経済効果ということのために、道路というものができるものではございません。

 道路というのはネットワークでございますので、お互いの行き来というものを考えなくてはいけないものだと思います。合わせて、私が先ほども申しあげましたけれども、今のような中途半端な改革のため、この橋の料金にしろ高速道路の料金にしろ高いままになっていることが、せっかく作った社会インフラ、これは本四架橋だけではございませんけれども、全国にある空港もそうです。使用料を払っている空港もそうですし、港もそう。また道路もそうでございます。

 こういうものの活用を十分にできないネックを作っているのではないか、その意味から私は本当の意味での構造改革ということであれば、ぜひこの機会にこの高速道路なり橋の料金を無料化をする新しい思い切ったかたちというものをぜひ考えていただきたかったなということを思います。

 にも関わらず、先ほど申しあげたようなかたちで有料化が固定化ということになり、そのなかで本四架橋をどうするかという議論で、あまり詳しいことは申しあげませんけれども、やはり国の知恵者、または中央官庁の知恵者がいかにも知恵があるなあという案を出してこられて地方もそれで納得してしまう、それで橋の料金も固定化をされていくという流れができつつあります。そういうことにもぜひ、目を向けていただきたいなと思います。
 

(自由貿易と農業問題)
(質問)
 個人会員の大崎です。外に目を向けますと、アジアは自由貿易制度へどんどん流れがうつっております。あと十年もすると中国はASEANと自由貿易協定を結ぶでしょう。日本の場合はどうかと言いますと、日本は農業問題がネックになっておりまして、なかなか中に入っていけない状態です。地方のリーダーとして、また農業県としての知事のお考えをお聞かせください。

(知事)
 私は従来から輸入農産物を全面的に止めるということは、日本のおかれた経済構造からいって無理であると、しかもそれを地方1県独自で何かをできるというものではない、ということから考えれば、農産物の輸入ということを前提にどうやって地域地域の農業を体系づけていくか、生き残りを考えていくかということをぜひ考えよう、ということをJAにも投げかけてきましたが、理解は得られておりませんし、三年前の私の選挙はそういうことがきっかけになってJAの高知県の中央会の会長を争うというかたちになりました。今もJAの基本的な考え方は違っていないと思います。

 ここからは地元の高知新聞社もおられますので、少し言い過ぎでまた書かれる面もあるかも知れませんけれども、最近香美農協という本県のJAで、輸入をしたショウガをそのまま県産だと言って販売をした、表示を偽ったという事件がございました。このことも私は輸入をしたJAの担当者と直接に話をしたわけではございませんので、裏を取った話ではございません。

 けれども、私自身が感覚的に感じることは、その人はやはり輸入農産物の必要性ということを考え、経済のあり方というものの一定の意識のあった人ではないかと思うんです。ただ、JAがかたちとして絶対にJAとしての輸入はしない、という大前提を立てておられるので、なかなかそのことが言えないまま、そういう結果になったのではないかなということを考え、僕はこうしたことをきっかけにしてJAの方々にもどうあるべきかということを、もう一度本当は考えて欲しいなあと。

 単に表示の偽りということではなくて、その背景にある、輸入農産物をどう受け入れてどうそれを自らの販売体制のなかに取り入れていくかということを、生き残り戦略として考えるということを、ぜひお考えをお願いいたします。けれども、なかなかその理解は得られていないというのが現状でございます。
 

(多選の弊害)
(質問)
 個人会員の三宅でございます。私は橋本さんを初めて知ったのは、NHKの下血報道でありまして、大変よく勉強しておられるし、NHKにもこんな上品な人がいるのかと、目を開かれる思いでありました。知事になられた時も、大変心から拍手を送ったわけでございます。

 しかし、先ほどの多選問題に対するご意見については、釈然としないと言うか、胸にすとんと落ちないものがありますので、重ねてお尋ねいたします。確かに知事の多選というのは、憲法違反ではありません。昭和30年代の始めに、朝日新聞のOBで自民党の代議士をしておりました篠田弘作という人がおりまして、首長の多選禁止法案の倫理立法に取り組んだことがございますけれども、憲法違反の疑いが濃いという法制局の見解で断念したことがございます。その時の篠田試案は、3期12年を上限とする、というものでありました。

 その後、各自治体などで、先ほどお話しがありましたように条例で規制をするというのがありますけれども、そうでなくても鹿児島県のように大体2期8年でころがしていくというようなことがルール化されているところもあります。○○1年総理2年というのも大変弊害がございますけれども、しかし、多選は確実に弊害があります。あなたもNHK時代に地方支局などを回られたらお感じになったと思いますけれども、多選でいいことは絶対にありません。

 これは周りには必ず茶坊主がはびこり、汚職が起きるもとになります。これはどんなに開明派の首長でも例外はないんです。今の日本の知事にやや近いと言われている、権限の集中している民主国家の大統領制の任期について非常に厳しい制限があるのも、だからでございます。開明派であるとかないとか関係がなくなってしまう、ということです。

 私はそういう点で、3期12年やっても尚やり残したことがあるということはひるがえってみれば、無能の証明なんですよ。12年やってもやれなかったことが16年やってやれるか。また、余人をもって替えがたいというのは、これはうぬぼれの証明であるし、いずれも精神の老化現象を証明するものであります。重ねてお尋ねして、ご見解を承りたいと思います。

(知事)
 ありがとうございます。私、3期12年でやり残したことがある、とは申しあげておりません。決して自分以外に務める人がいないとも思いません。

 私は多選ということは、県民があくまでも判断をされることであって、三宅さんの判断と三宅さんのご忠告は十分承りますけれども、「絶対と言ってもそういうことはないんだ」というふうに三宅さんはおっしゃるわけですけれども、私は、もしこれまで例外がなかったんだったら例外を作る知事にぜひなりたいなというふうに思います。
 

(国体後の取り組み)
(質問)
 テレビ朝日OBの加藤と申します。この前の国体の件では、橋本さんの英断ではなかったかなと思います。国民体育大会というのは、非常にスポーツをある部分、国のひとつの管理のなかに置いてしまっているという、これはやはり基本を取り戻すというのは高知県が初めてやったということで、大変意義のあるものではないかなと思っております。

 ただし、それをそのままにしてしまうということでなくて、例えば、県民がそれから自分でスポーツをするようになるとか、あるいはスポーツを通じてコミュニケーションを作っていくとかいうようなところにお金を回して、そういうクラブなり公共施設を民間に任せ、あるいは市民に任せてスポーツをやる雰囲気を作っていくというようなことを、おやりになっているのか。国体をそういうふうなかたちにした決意と、具体的にNPOを使って運動をやっている具体的な例がもしありましたら、お聞かせいただきたいと思います。

(知事)
 スポーツという点に限っては、今のご質問に明確にお答えをするようなものをもっておりません。ただ、国体全体で言えば、8800人の規模で民泊、外から来られた方を一般のご家庭に泊めるということをいたしました。このことが、過疎だ高齢だというマイナスイメージでしか語られない地域の方々に「やればできる」という非常に大きな自信を与えましたし、また県外から来られた方々との後あとまでつながる交流という大きな財産を残しました。

 こうした力を、例えば、やがてくる南海地震への備えだとか地域のいろんな取組みだとか、そういうことにつなげていけないかと。そのために、その財産を力を残していく、使っていくということはぜひ考えたいと思います。

 あわせてスポーツの面でも、これまでも国体で単に成績を上げて終わりではなくて、その後につながることをぜひやっていきましょう、そのために整備された競技場もそこで終わりではなくて、例えば県外の大学のチームなどが来てくれる交流人口の増加につなげていきましょうということを言ってきましたので、その言ってきたことを実現をするようにぜひ取り組んでいきたいとは思いますけれども、具体的にNPOなどで立ち上がってこういう事例がありますということを申しあげるまでには至っておりません。
 

(選挙での候補者推薦)
(質問)
 一点だけフォローさせていただきたいのですが、永田町でどうしてもこういうことが関心事項になってしまうのですが、北川さんに知事が期待をされているグループの性格など、地元でNPO的なグループというようなこともおっしゃっているようなんですが、グループの性格と、実際にどんな政治理念ですとか政策ですとか旗を掲げて首長選挙などの時に推薦をしていくのか、現実の政治活動と言いますか活動はどんなものを念頭に置いておられるのか、それと国政との関係を、端的に結構でございますが。

(知事)
 まず、グループで推薦ができたら、というのは、先ほどもお断りをしたように、私の今は個人的な思いで、皆さん方に提案をしたという段階ですから、グループとしてそれをやろうということがまとまっているわけではございません。

 それから、そのなかでどういう取組みをしていこうかということは、いくつか具体的な内容の話をいたしましたけれども、これも先ほど申しあげましたように、4月の統一地方選挙が終わった段階でグループで言えば増田さんと片山さんの選挙等がございますので、それが終わった段階で一定まとめて外向けにお話しをしていきたいなと思っておりますので、私が個人的にこうこうだとまとめて申しあげるものがございません。
 

(質問)
 国政選挙との絡みというものは。

(知事)
 国政選挙との絡みでは特段のものを考えているわけではございません。地方を少しでも変えていくということが、やがて何年かかかって国政そのものを変えていくことにつながるのではないかという意味で、直接国政に対して何らかの行動を、ということを私個人ももちろん考えていることではございませんし、いわんやグループとして考えているということでもございません。


Topへ