シンポジウム三重「分権時代の自治体変革−自らの手でどう壁を破るか−」(知事熱論)

公開日 2007年12月07日

更新日 2014年03月16日

シンポジウム三重「分権時代の自治体変革−自らの手でどう壁を破るか−」(知事熱論)

平成15年1月26日14時45分から(三重県四日市市(ザ・プラトンホテル))

(コーディネーター)
 千葉大学教授  新藤宗幸
(パネリスト)
 宮城県知事 浅野史郎
 鳥取県知事 片山善博
 和歌山県知事 木村良樹
 高知県知事 橋本大二郎
 岩手県知事 増田寛也
 三重県知事 北川正恭

(録音テープに聞き取れないところがありましたので、正確でない部分がありますが、ご了承ください。)



(司会)
 進行役を務めさせていただきます、三重県職員のくぼちあきと申します。どうぞよろしくお願いいたします。それでは、早速「知事熱論」を始めさせていただきましょう。ご参加いただきました皆様をご紹介させていただきます。皆様から向かって左から2人目、
宮城県知事 浅野史郎様です。
鳥取県知事 片山善博様です。
和歌山県知事 木村良樹様です。
高知県知事 橋本大二郎様です。
岩手県知事 増田寛也様です。
そして、三重県知事 北川正恭でございます。

 この知事熱論のコーディネーターは、千葉大学教授で、今回このシンポジウムにご協賛いただきました自治体学会の代表運営委員を務めていらっしゃいます、新藤宗幸様にお願いをいたしております。
 それでは、新藤先生にマイクをお渡しすることにいたします。新藤先生、どうぞよろしくお願いいたします。

(新藤教授)
 はい。すごい入りで、会場だけでは入りきれないんで、テレビでスクリーンに映してやるそうなんですが、おそらく、今日お集まりの皆様方が、色んな観点からここにお集まりだと思うんです。けれども、特に報道関係の多いのは、多分、北川知事の動向についてということの一点に限られてるからなのか。一番最後に「やっぱりあの話はやめだ」と、「もう1回出る」ということがあるかもしれません。

 いずれにしましても、これから分権改革、そして、それをベースにした政治改革ということをご審議しながら、2時間半の、まさに熱論を繰り広げていきたいと思っております。

 で、それぞれ私の方から質問状を出せというお話もございましたけれども、これだけのメンバーを集めて、私が議会答弁であるまいし、前もって質問状を出す必要もございません。ほとんど何の細かい打ち合わせもしておりませんので、話がどこへどう飛んで行くのかは、全く私自身が想像をできていない状態でございます。とは言え、まあ、皆様方のご期待に添うように何かを引き出していきたいと、そのように思っております。

 まず最初に、2000年4月、いわゆる地方分権一括法の施行から、もう2年が経過しております。この2年間に政権も今の小泉政権へと代わってもおりますし、そういう中で小泉政権が、果たして分権改革に熱心なのかどうか、この辺の議論も色々分かれる所だと思います。

 で、まずは導入として、一体この2年間に分権改革は進んだんだろうか。あるいは、それがネックとなっているとすれば何がネックなのかこうしたことをそれぞれの知事の方々に、まあせいぜい5分程度の所で総括をしていただきながら、この話を進めていきたいと思います。
 まず、私に近い所で申し訳ないんですが、浅野さんから、よろしくお願いします。

(浅野宮城県知事)
 どうせアイウエオ順だから最初になると思いましたが、すごい熱論って、本当に、こんなに沢山集められて。2000年の4月にですね、分権推進、あの一括法が通って、新しい時代が来るというふうに思ったんですね。ところが、これは不幸な出発をしました。

 実は、2000年4月にもう1つ大きな制度が始まったわけです。これは介護保険ですよね。初めて福祉、介護というのが恩恵から権利になると。だって、保険料を払って、それの対価というか、として介護を受けることになる。これは画期的な制度であったわけです。

 もう一つですね、介護保険で画期的だっていうのは、この実施主体は市町村です。当時、3,252あった市・区・町・村が実施主体です。ですから、保険料もそれぞれの市区町村ごとに条例で決めます。ですから、これは宮城県が、全部、71の市町村の保険料を決めるわけじゃない。一つ一つの町が、一つ一つの村が、自分達で条例で決める。現に、2,500円という所もあったし、3,200円というのもありましたし、秋田県鷹巣町では3,840円というのを決めたりしたわけですね。

 ところが、不幸な出発というのは、その始まる半年ぐらい前、10月ぐらいですかね。亀井静香、当時の政調会長が、「亀の一声」と言われましたけれども、「保険料を取らなくて良い」ということを言い出したわけですよ。

 これは、もうガッカリっていうか、私は怒りましてですね、宮城県は、介護保険制度の解説というのを、大変珍しいんですが、知事自身がやります。私が県内に行って説明をして、「こりゃあ保険料をこうやって払って、恩恵から権利になるんですよ」確かに、新たに保険料を取るというのは色々難しい事はあるんだけど、それは、その実施主体の市町村長も本気になって、じゃあ、これだけの保険料を取るんだから、何とか制度を分かってもらおうと思って、汗流してやってたわけですね。担当者もそうでした。

 ところがですね、突然、「いや、まだまだ介護保険なんていうのはこの日本に馴染んでない。まだ、これは家族がやるもんだ。介護は。とても保険料3,000円なんか取れない」というんで、「半年間は無料。それからの1年は半額」と、とんでもないことをやって、私もすぐに首相官邸まで文句を言いに行ったんですけども・・・。

 で、これはですね、まさに介護保険というような分権の試金石というふうに言われた、それが象徴的に同じ日に始まろうとした。こういう不幸な出発をした。やっぱり分権改革、言葉なり、あれは大変華々しかったけど、ちょっと、これは出発からして不幸なことになるなという予感は、残念ながらまだ今、続いてます。

 で、分権の時に、その権限ということよりも、やっぱり財源ごと来ないと、金目にかかってる部分が非常に大きいですから、とても、本当の意味の分権というのに繋がっていかないという事は前からありましたけども、その財源の部分がまだでした。

 で、実はですね、今日、この場で緊急アピールをすることにしました。打ち合わせの時にですね、居並ぶ知事さん方に提案をいたしまして、実はこの4月から始まろうとしてる障害者の支援費問題について、とんでもない、とんでもないっていうのは、支援費制度を始めることがとんでもないんじゃなくて、内容がとんでもないということで、数々の問題点がありますので、それをこの6県知事で共同してアピールをしようということを提案させてもらって、ご同意をいただきましたので、ちょっとそれを少しお話ししたいと思いますが、これは単に、福祉の分野で文句を言うというのではありません。

 今の文脈で分権という観点からも大いに問題です。個別の問題についてはですね、あまり申し上げません。ただ、支援費制度というのは大体どんなものかというのが分からないと、概念がつかめないと思うんですが、これは障害者福祉の内容で、二つ大きな所があって大きく期待したんです。

 一つはですね、今までの障害福祉は、障害者に対してですね、行政が福祉の措置ということで、こういうサービスを分け与えますという形でやられてきました。これはちょっと、障害者の自主性という事から言って問題だというので、選べる福祉にしたんですね。

 障害者が、いわばお店に行って買ってきます。ショートステイ、ホームヘルプサービス、グループホームに入るというようなことを、自分で選んでそれを買ってきます。買ってきますという、そのお金はですね、市町村からそのサービスを提供する側に渡るということ。これは支援費という形で渡る。で、そういう制度にする。これが一つです。

 で、もう一つはですね、施設から在宅へという流れですね。もう、やっぱり地域の中で障害者も暮らすべきだということで、地域で生活をする支援をするために支援費というのが使われるように、重点をそちらに置きましょうと。こういう二つの、非常に良い、まさに望ましい方向性が出されました。しかし、この二つとも絵に描いたモチになりつつあります。

 前者は、まあ、我々の問題ではあるんですね。それはやっぱり、それぞれの市町村がまだ、そのお店に行って買って、何でも買い物して良いですよというんだけど、実はお店に行ったら商品がないということなんですね。ということがまだあって、これは市町村の、そういう福祉サービスの供給体制の問題ですから、我々というか、こちら側が早期にやらなければなりません。これはあんまり、国・厚生労働省はそれほど、今、責任者出て来いという話ではないのかもしれません。

 問題は、後者です。在宅福祉へということなんですけども、その在宅福祉サービスについて、色々な、むしろ後ろ向きな事がされてます。「ホームヘルプサービスの上限を月120時間にしろ」補助金の制限をですね。ということは、1日4時間以上はダメだということです。4時間以上のホームヘルプがないと地域で生活できないっていう障害者の人はどうしたら良いんだろうかというので、今、連日、厚生労働省に車椅子で陳情に行ってます。

 それから、地域で生活するために、知的障害を持ってる方には、グループホームというのはですね、大変大きな力と。実は、これは私が厚生省の時に作った制度なんですね。だから、個人的にもこの野郎という思いがあるんですけども、それをですね、それを伸ばしていくというのではなくて、今までと同じペースでやっていきます。

 ですから、国の、いわゆる補助対象になるようなものというのには限度があって、宮城県はドンドンこれを増やしていこうと思ってもですね、それが補助対象にならないということ。これは一体どうしたことなんだと。

 それから、コーディネーター事業ですね。ケアマネージメント事業 障害児(者)地域療育支援事業というのがあるんですけども、施設なり市町村にコーディネーターを配置をして、それが地域で暮らしてる障害者のために色んな相談事業とかするという事に応じる。これをですね一般財源化するということなんですね。補助金を止めるってことを言ったんです。

 で、これに反対してますが、その、今の部分については「なんだ、この知事連中は補助金なんて廃止しろと言ってるじゃないか」と揚げ足を取られるようですが、一般財源化するというのであれば、ちゃんとそれに見あった交付税措置というか、それをちゃんとやんなさいと。これがですね、全然やられないままに補助金を止めますということは、結局、・・・・・・・・、まさに言ってることとやってることが違うじゃないかということなんです。

 で、これは個別の問題ですが、この文脈で言うとですね、さらに言えば、ハッキリ言うとですね、たまたまこの仕事を、大事な仕事を始める時に、国の政策決定に当たる行政官の中に、責任感というか、感受性というか、想像力とか、そういうものが大変欠乏している人がいるがためにこういうふうになったという、そういう時の被害というものを地域が全部受けていいもんでしょうか。

 例えば、宮城県は、本当に在宅福祉を進めていきたいと思ってますというんであれば、それに合うようなやり方を宮城県がやれるようにというふうにするのが、むしろこれからの在り方でしょう。ということなんで、この文脈の中で言えばですね、やはり、そういった障害福祉の仕事を、これは地域で住む障害者がどう暮らしていくというのが問題だから、国はもう良いから、そういうような金をどう出すとか、何とかっていうような、そういうこととかメニューを作るのもいいです。

 我々がやりますということにしていかなければならないだろうということで、ちょっと細かい、個別の話になってしまいますけれども、今、目の前ですね、この4月から起ころうとしている画期的な支援費制度の内容は、こんなふうになってしまったという時に、その政策決定権を、これは我々が持つべきであったのではないかという、まあケーススタディな見出しで、ちょっと問題提起をさせていただきました。

(新藤教授)  はい、ありがとうございます。
 この「障害者支援費制度に関する緊急アピール」これ、議題のコピーは、後ほどお渡しいただく、皆さんの所へ手に入るようにしたいと思っております。

 今、福祉、とりわけ障害者支援費制度の問題でお話がありましたけれども、いわゆる政策決定の人間がないがしろにされてるというのは、まあ、分権改革の今現在に対する評価であるかというふうにお聞きいたしました。
 続きまして、同じように片山さん、よろしくお願いします。

(片山鳥取県知事)  はい。地方分権推進一括法ができまして何が変わったか、それからネックは何かということですけれども、やっぱり、法律ができまして、それが一つの基本づくりといいますか、意識改革のきっかけになったと私は思います。実態は、本当にその法律で何かが変わったということはありませんけれども、やはり、地方分権に向けて新しい法律ができて、みんなで分権改革をやっていきましょうという、まあ基本づくりになりましたから。

 私は、ちょうど知事になってからですと、その1年後だったでしょうか、その法律ができたものですから、じゃあ、鳥取県は分権改革の最先進県にしようということで、職員の意識改革に取り組みましたし、それから県と市町村との関係も見直しをして、できる限り国・県・市町村が、本当に対等になるように、法律に書いてある対等の関係になるように改善をしようということを進めたり、国に対しても、おかしいと思うことはもうハッキリと言っていこうと。

 長いものに巻かれろとか、あと後難が降りかかるから遠慮しとこうとかっていうことがついつい出て来るんですけども、国に対しておかしい事はおかしいということを、一定、国にも改善を求めようと、こういうことを実践してますから、意識改革の一つの礎になっていると思います。

 それじゃあ、そのネックはないのかっていうと、もうそこらネックだらけでありまして、一番の障害は、やっぱり中央政府であります。何よりも中央政府に、地方分権をすベしという意識がほとんどありません。まあ、全くと言っていいほどありません。

 分権をすることが、それぞれの地域、日本全体にとって良いことだという、そういう評価というか、認識が中央政府の人には、私は、ほとんどないんではないかと思っています。むしろ地方分権というのは、各省が自分達の権益を侵されるというか、権限を取られるという、そういう文脈でしか考えてない人が多いんではないかという気がしてなりません。

 例えば、具体例を挙げるとですね、もう色んな事があるんですけども、例えばさっき浅野さんも言われましたけれども、分権というのは財源の委譲って言うか、財源が自主的にならなきゃいけないと、これは勿論なんですけども、その点でもですね、全く分権改革ができてません。

 総理は、三位一体の改革をするということを堂々とおっしゃられて、私も去年の10月8日の首相官邸、総理官邸での全国知事会の時にあえて発言をしたんです。自主性を損なう補助金というのは、できる限り縮小させて、そして自主的に財政運営ができる一般財源の方に振り替えて下さい。

 それは、税というものが基本になるし、しかし税だけで財源委譲すると不均衡が生じるので、東京都なんかの一人勝ちになるので、そこは調整手段としての交付税というものを活用しながら、一般財源に振り替えると。こういうことをやって下さいという話もしました。

 それから、税制も国の方で勝手に地方税を改正するわけです。年末に案を作ってこれからの国会で審議するんですけども、この4月から新しい年度が始まる。その税制についても、今、国会で審議中なんですね。で、そういう地方税を勝手にいじって、しかも、あたふたと4月から施行しなきゃいけないというのは、そういうのは分権時代っていうのに反しますから、そういうことももうやめて下さいっていう話もあえてしたんです。

 で、そうしましたら全く反論はありませんで、「そらその通りだ。これからは分権時代なんだから、そういう自主的に税財政の運営ができるようにしたい」こう総理がおっしゃったんで、私なんかは本当に、もう心の中で拍手をしたものでありますけれども、現実は全く違うんですね。全く、その総理がおっしゃってることと、現実に行われてることとは違うんですね。

 例えば、税制は例年通りでありまして、この4月から始まる新しい年度の税はこれから決まるという。で、もう、全国の地方団体はハラハラ、ハラハラしながら、どうなるの、いつ地方税法が国会で可決されるんだろうかと思ってみてなきゃいけない現状ですよね。

 それから、一番我々の財政面にとって重要な交付税もですね、トータルでいくら減ったというのは、これも年末に分かるわけですけども、じゃあ、自分の所の県とか市町村に一体いくら交付税が来るのか、これは非常に重要なんですね。予算を編成する時に。ところが、これが分からないわけです。

 分かるのは、7月頃分かるんですね。年度が始まってから。まあ、その前に色々、色々詮索をしたり、推測をしたりですね、訊いたりしながら何とか目途をつけるわけですけどもね、それも本当はおかしいわけですよね。やっぱり、分権時代の財政運営というのは、ちゃんとルールが決まって、あらかじめ透明性があって、その中で自分の所へいくら来るというのを判断をして、その上で、じゃあどういう予算編成をしようかということを決められる。

 それが分権時代に相応しい財政なんですけども、事実は全く逆でありまして、交付税が当該年度であっても分からないという、こういうことなんですね。で、これでは全く改善の気運もありませんし、道筋もつけられていませんから、分権時代の財政運営、財政改革に向けての動きはないと思った方が良いと思います。

 しかもですね、もっとタチが悪いのは、義務教育費の国庫負担金を、今度減らすんですね。それで、これもですね、分権型の財政改革への芽立ちだっていうか、芽を出すんだって言うんですね。何で、何でそれが分権時代の財政になるものかと。というのは、義務教育費の国庫負担金の内の、先生の、教職員の年金の共済金の掛け金を一般財源化するというわけですね。

 で、一般財源にするということは、自主的に処理して良いですよという事であるべきなんです。今までは、国が負担金を出して、それをそのままちゃんと使い道通りに使いなさいということですけども、それを一般財源に移すということは、今度は自主的な判断ができるということですから、歳出しても良いし、歳出しなくても良いということになるべきなんですけども、教職員の共済金の掛け金を一般財源してもらって、じゃあうちは掛けるの止めようかということは、選択としてはあり得ないわけです。

 そうでしょう、そういうものをですね、平気で「じゃあ、これ分権時代の自主的な財政運営を」と言ってですね、そういう説明で国の負担金を減らして、要するに、それは財務省と文部科学省が助かるわけですけども、そうやって自分達の所をちょっと小綺麗にして、あとはツケを地方に回して、しかも綺麗事で分権改革ですよって言いながらですね、こういうまやかしもあるわけです。

 こういうのはもう、分権にかこつけた、その、どう言うんでしょうかね、本当にまやかしだと私は思いますけど、そういうことが、もう堂々とまかり通ってる。こういうことを見てもですね、地方分権というものを政府が真剣に考えてない。全く理念を理解してない、むしろ悪用すらしているという、そういうことを私は本当に、もう、怒りに絶えないんですけど、ということです。

 それで、あとは、例えばですね、分権時代の受け皿づくりっていうので今、市町村合併というのをずいぶん政府のあおりの下で進めてますけどね、私はその合併に必ずしも全面的に反対ではありません。やっぱり小さい町村では、これからの地方分権時代の色々な重要な仕事を、教育とか、ITとか、環境とか、防災とかですね、文化行政とか、色んな事をこなしていくには、小さい町村では無理だと思いますから、

ある程度の力量、規模を備えなきゃいけないということの認識はあるんですけれども、しかし、今の政府がやってる、本当に、こう、押しつけ的なですね、しかも合併特例債だとか、交付税の特例だとかと言って、金で誘導するようなですね、ああいうやり方っていうのは、決して私は分権時代の自主的な市町村づくりではないと思うんですね。こういう事からしても、何か、本当の地方分権というのと、その地方分権という名の下に行われていることとずいぶん違うんだなあという認識を持ってます。

 それからですね、悪口ばっかりなんでちょっと恐縮ですけど、今日はもう良い機会ですから言いますけどもね。私の所で去年ですね、機構改革をやったんです。これは、都道府県の組織というのは、もう、明治以来、明治の太政官官制以来、中央省庁に対応した組織になってるわけですね。縦割りで。ところが、現場で仕事をしている時にはちょっと色々不都合があるんで、ちょっと内容を直そうというんで、現場対応型に変えていってるんです。

 例えば、道路なんかは特にそうですね。県道は土木部の道路課、農道は農林水産部の耕地課と、こういうふうに分かれてるんですね。それはなぜかと言うと、補助金で出て来る所が縦割りで中央省庁が違いますから、それぞれに対応して補助金をもらいやすいようになってるんですけど、現場でやることっていうのは、やっぱり農道であっても県道であっても道路を造るわけですね。

 若干の色んな基準の違いなんかはあったとしても、やっぱり同じような人が同じような道路を造るわけです。それだったら、道路を造る課を一緒にしたら良いじゃないかというんで、もう全部一緒にしたんです。農道も、県道も。それから漁港と港湾も一緒にしたんです。それから治山と砂防も一緒にしたんです。そうすると、現場に有効に人員を配置できて仕事ができるわけですね。

 そうしますとね、ものすごいあれがあるわけです。あの、執拗なアドバイスがあるんです。中央官庁から。それだと行政がうまくいかないぞとかですね。本当に、もうしつこいほどのアドバイスがあるんですね。もう、ほとほと、まあ困ったわけでもないんですけど、まあ、全部張り合ってましたけども、そういうことを、どうしてそんなことを一々ですね、小さい鳥取県の県庁の組織、課の編成にまでですね、中央官庁があれこれ、あれこれ、心を砕いて心配してくれて、注文してくれるんだろうかと思って、こういうのを見てもですね、やっぱり地方分権というのは中央官庁では本当に理解されてないなという気がします。

 もう一つはですね、今度は県と市町村の関係があるんですけども、私は、ある意味では国と県との関係と同じような関係が県と市町村にあるんじゃないかと思うんです。市町村にとっては県がバリアになってるんではないか。県が市町村の地方分権を進める上でのネックになってるんではないか。

 私の県でもやっぱり無いわけではないと思って、今点検してますけども、やっぱり県が市町村の分権改革のネックになってはいけない。県が県単位で護送船団やってないだろうかということ。これは国とは関係ない話ですから、県のレベルで考えてみることは必要ではないだろうかなと思っております。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございます。片山知事のですね、こういうお話とか、それから、まあ週刊東洋経済、どっちが先だったか1日遅れで同じ欄に書いているんですが、それを拝見すると、私、いつも思うんです。鳥取県民は偉いと。つまり、今のお話、逆に、前のお仕事を続けていられたら、逆に批判の対象になるような立場にいらっしゃったかもしれなですけれども、そういう方を、まさに地域に呼び寄せた。これは鳥取県民の最大の成果であり、これからの分権改革の大きい成果だと思います。
 それでは、木村さん、お願いします。

(木村和歌山県知事)
 私は、ちょっと違った観点からこの問題を考えてみたいと思うんだけども、実は、分権一括法を考えていた時代の分権というのは、「ゆとりの時代の地方自治の改革」ということだったと思うんですね。

 僕は、今日集まってる方はどっちかというと、まあリベラルな人が多いんだろうと思うんだけども、僕自身もものすごくリベラルなんだけど、この頃なんか、もう“国”という事をものすごく考えるように、ここ1年ほどなってきた。

 と言うのは、どういった事かと言うと、21世紀になるとね、僕らはもう正直言ったら、あんまり国なんていうのは表に出て来ないで、地域間競争とか、それぞれの地域で頑張って発信していくような世界になってくるんだろうなって思ってたんですよね。ところが、ここへ来て、何かもう、色んな事、きな臭い事が起こってくるし、それからまた、日本の国の外交とか、防衛とか、色んな問題を見てると、何か、その、一本筋が通ってない。こういうような事でやっていけるのかなというような気持ちが、ものすごく強くなってきた。

 で、分権一括法を考えていた時の地方分権というのは、やっぱりこう調和した社会の中で、国から地方へある程度権限を委ねながらやっていくのが市民生活にプラスになるんじゃないかなっていうぐらいの感じだったと思うんだけども、僕はやっぱり、国がここまで、ある意味では断崖絶壁に来ている時にはですね、

この分権の問題というのを、国の形をどういうふうにしていくのかというふうなコンセプトで考えていかなければならないし、今の、その例えば機関委任事務を自治事務にする、これは非常に良い事だし、また、そういう過程の中で、例えば僕らだって色んな事を、ものが言えるようになってきているという大きな変化はあると思うんです。

 だけど、それはね、ある意味で言えば、今までの連続線上の変化であって、この21世紀はもうちょっとそこを不連続にしてものを考えないといかんし、そしてまた、時間軸というのが非常に短くなってきている。ゆっくり考えてるというヒマがない時代に、僕はなってきていると思うんで、

もうこの地方制度の改革というのも、今まで、例えば三位一体で内容をどうするかという、まあこういうのも若干やっていかなきゃいかんのだけど、それと併せて、本当にどういう形のものを国からの主体じゃなくて、地方の方からの気持ちでつくっていくかというような議論を、もう高めていかないと、これは大変な事になるなというような感じなんですね。

 ある意味、どういうことが言いたいかというと、日本の国は、やっぱり戦後60年、みんなが一生懸命頑張ってきて、非常にリベラルで良い市民層ができる国になってきた。だけど一方では、非常に無責任にもなってきている。そういうふうな市民層の盛り上がりみたいなことを一方で大事にしながら、国としての責任ある立場をとっていくということの中で、地方分権というものをどういう形で位置づけていくのかなというようなことを、ものすごく考えてるんです。

 僕らも、お正月には色んな所で挨拶することがあって、「昔は、和歌山県ではこういうふうな改革をしました」と、「これは、今までの地方自治の中では無いようなことです」とか、それから、国の方にこういうふうなことでは今、地方発の公共事業の在り方なんていうので提言したりしてるんだけど、こういうふうなことはやっぱり、どちらかというと連続線上の話で、これも僕はしていかないといかんと思うんだけども、もっと大きな理念の中で、国と地方をどうしていくかという事を、国民的な議論として盛り上げていかないと。

 どうしても住民の人から見たらね、「何か国がやってくれてる方がまだ便利な面もあるし、何も権限を移したって大したことは変わらんし」というようなことで、この間、榊原先生とお話ししてたら、榊原先生は「自分は為替の本と、それから地方分権の本を2冊書いたんだけども、分権の方の本はあんまり売れん。為替の本は、もう出した途端にものすごく売れた」と、まあ、それは分権ということに対する国民の意識という問題もあるんだろうけど、やっぱり、今の世の中の雰囲気を反映してる。

 そして、それは根本としてのこの国の形をどうしていくか、21世紀、日本が責任ある国家、そしてまた地方としてどんな形で生きていくのかという議論が成されてこなかった所に、僕はやっぱり地方分権とか、地方主権とかいうことに対する国民の関心の薄さがあるような気がして仕方がない。

 まあ、私も知事をしてるから、ある意味ではね、国の補助制度なんかもできるだけ有利にするような働きかけを相変わらずしてます。それから、交付税の制度なんかについても、やっぱり和歌山県にできるだけお金が来るようなことも、議員の人なんかを通じて色んな事をやります。

 だけど、やっぱりそれだけではいかん。もっとやっぱり、大きなものを考えていく、今年はきっかけの年にならないといかん。日本の国は、もう、本当にギリギリの所まで不良債権の処理の問題とか、何せもうギリギリの所まで来てるわけです。

 ということは、自治だって同じような形でギリギリの所まで来てるんです。今まで幾多の先生とか、色んな人の努力によって、だいぶ良い所まで来てるんだけど、繰り返しになるけど、これは連続線上の変革であって、その先には大きな国の形を変えるというふうなものは見えない。

 そうすると、これはやっぱりある意味では、カエルがお風呂の中で段々、段々とお湯が熱くなっていっても、いつ飛び出したら良いか分からないで、そのまま茹で上がってしまうというという話がありますが、ちょっとずつ変えながら、なんか、ええ所までいってるなと思ってて、だけどいつか死んでしまったというふうな形に、どうもね、なりそうな気持ちがして。

 そして、こういうふうな閉塞状況を打破するような発信というのは、やっぱり国からじゃなくてね・・・。やっぱり、その、国も大事なんですよ、やっぱり国会議員の人が最終的には憲法の問題なり、地方分権だって本格的に変えようと思ったら憲法の問題になってくるわけだし、法律の問題にもなってくるんで、国会議員ということになるんだろうけども、

最初は、色んな意見を地方の方から出て来るという形にしないと、まあ、前の分権改革法なんていうのは、地方から色んなアンケートをとったり、意見をとりながらしましたけど、結局は、旧自治省と各省の間でせめぎ合いをして、こっからここまでは事務をこういうふうに変えていこうかという事の、まあ、技術的な改革だったわけですね。

今度は、やっぱり地方からの大きな盛り上がりによって、国の形を変えるというぐらいの発想、そしてまた、それを、もう今すぐからでも進めていかないといかんし、まあ、あんまり言ったらいけませんけど、北川知事なんかには、そういうことの、もう本当のリーダーとなって皆を唱導していくようなね、役割を果たしていただいたら、本当に僕は有難いなというふうな気持ちを持っています。簡単ですけど、私からは以上です。

(新藤教授)  あの、この国の形を変えるために、6人のみならず、他の知事にも働きかけてどうするかというのは、もうちょっと経ってから、特にその討論をしたいと、そう思います。
 それでは、橋本さんにお願いします。

(橋本高知県知事)
 はい。地方分権一括法が制定をされ、その後、地方分権が進んだか、進んでないとすれば何がネックかというご質問でした。進み方も、私は中途半端だと思いますし、進んでない理由も、その中途半端さに一つはあるんではないかと思います。

 1例を挙げますと、高知県の中土佐という町で、採石、石を採る事業の申請をめぐる問題がありました。ある業者の方が石を採る、採石事業の申請を出されました。この申請に関わる森林を開発をする森林法の許可ですとか、採石を認める採石法の認可、こういう事務、これは従来は機関委任事務という名前で、国の下請的に県がその仕事をしていました。ところが、地方分権一括法によって機関委任事務ではなくなって、地方の独自の仕事だ。自治事務だという位置づけになりました。

 自治事務ならば、本来もう少し従来よりはその許容範囲が広がって、その県なら県、責任を持って判断をする部署が一定の地域事情を反映をした判断ができるようにならなければいけないはずだと思います。ところが、法律そのものは昔の機関委任事務の時のまま変わっておりません。

 ですから、採石法という法律を例にとってみれば、その事業がその周辺にある公共の施設に損害を与えないとか、地域の産業というのは、まあ農林水産業を指していますけれども、そういう産業に影響を与えないというような三つの限定的な例示が示されていて、それに当たらない限りは認可をしなければいけないという法になっています。

 では、地元の受け止め方はどうかと言いますと、長い経過がありましたけれども、その中で、なかなか事業者の方の説明が納得できないということで、町長の意見書も反対の意見書。議会も圧倒的多数で反対の決議をされている。また、町が行われたアンケート調査でも、3つの地区がありますが、当該企業が実施をされる地域も、それより外れた地域も含めて、住民のおよそ7割が反対をされてるという現状でした。

 この町は、実は本県にある53の市町村の内では、新しい形の町づくりを目指している。つまり、従来の農林水産業、また建設業などの公共事業に頼らずに、少しでも外から人を呼んで来る。まあ、昔の言葉で言えば観光ですし、今流で言えば交流人口を増やしてる。それで町を運営をしていきたいという思いを持っている町でした。それだけに、採石業という事への環境上の問題、またそれによってトラックが1日何台も行き交うということの問題点を、町民の方が意識をされたのではないかと思います。

 けれども、先ほども申し上げましたように、自治事務になっても法律は全く変わっていません。つまり、県としては国とも何度も協議をしましたけれども、従来からのこの3つの解釈に当たらない限りは、もう認可をしなければいけないという国の解釈が変わらないまま、まあ色んな形で引き延ばしというか、その地元での話が進むような時間も作りましたけれども、結局、前に進まないまま許認可、いずれもせざるを得ないという現状になりました。

 で、これをすべきか、すべきじゃないかということではなくて、やはり自治事務になったからには、法律の内容ももっと自治事務に相応しいものに変わらないと、私は中途半端なままになって、その間に立たされた、私の立場もそうですけれども、県の判断というのが非常にしにくくなってくる。以前にも増して、仕事はその意味ではやりにくさを増したなということを一つ思いました。

 また、全然別の話でございますけれども、高速道路に関して、私達の知事が会を作って、色んな意見を申し述べました。このことに対して、日頃、改革派の知事も高速道路では地元優先の守旧派だという議論がありました。色んなものの見方がありますから、そういう見方をされることも否定はしません。

 けれども、私達は少なくとも、自分達の県に高速道路を造れ。だから、今の制度を変えろ、変えるなというような事を言ったつもりはありません。もっと国の立場として、行政の長い期間に渡る公平性だとか、国際競争力だとか、国の在り方としてこれで良いかという事を言ってきました。

 そうした中で、僕自身はですね、本当の意味で高速道路をめぐる構造改革をするのであれば、あれだけ高い料金をゼロにする、高速道路を、本来、道路というものの在り方の通り無料にするということを考えるのが、私は政治の仕事ではないかというふうに思います。

 にもかかわらず、民営化ということが前提になって話は進みました。その背景には、これまでの公団なり、国や県が関わった仕事の仕方が、あまりに国民の皆さんから見て、おかしいなという点が多かった。だから、民営化という言葉に多くの国民の皆さんが飛びついて、そこに支持をされたということが、私は背景にあったと思います。

 しかし、民営化ということで議論が進んだために、例えば地方分権との関わりで言えば、地方が全く固有の財源である固定資産税を払わないで良いようにしよう。というような議論が、地方とは全く関係のない委員会で平気でされるというような現象が起きました。

 また、大変失礼な言い方ですけれども、大手のスーパーが2兆円ぐらいの規模で経営が行き詰まる。負債の規模で経営が行き詰まるという中で、その十数倍の負債を抱えていると言われる組織を民営化、つまり会社化していこうというような、まあ常識的な、経済の常識で考えてもおかしいんじゃないかと思うようなことが、なんの具体的な、そういう疑問に対する議論もないまま、私は進んできたのではないかと思います。

 その結果、民営化ありきですので、今ある公団なり、何なりの解体云々という議論は全くなくて、それをこのまま運営していく、組織そのものが温存をされて民営化をされていくという方向に進むのではないか。

 つまり色んな意味で、私は構造改革と言いながら中途半端なやり方が進んできている。そこからは、私ども地方にも勿論責任はありますけれども、そうなれば、やはり地方として「これまでの行政の公平性から、もう少しこういうことが必要だ」という意見を申し述べる。そうすると、様々な力関係から、これまでは国幹道というですね、高速道路を造るための委員会があって、政府で総理を筆頭に一本で決められ、進められてきた仕事が、別の2本だての仕事になりつつあります。

 その2本だてになるために、もう1本の方に、また地方の分捕り合戦が始まるという事は、私は容易に想像ができる。そういうような事態を、今、起こしてるのではないかなと。中途半端な改革というのが、私は思い切ってやってくれれば、それは地方にとって大変な痛みにもなるし、その地方交付税や税金が減額をされれば、仕事のやり方も全部変えなきゃいけないという大変さはあります。

 しかし、それはもう近い将来か、遠い将来かは別にして、どっかでやらなきゃいけない。だとすれば、もっと思い切って引導を渡すということをすれば、こちらの側も十分その受け皿を作ることができるんじゃないか。

 それをやらないために、先ほど片山知事もお話になりましたけれども、例えば三位一体の議論の中でも、つまみ食いをしやすい所だけつまみ食いをして、2,300億でしたかその補助金を止めていく。国庫負担を止めていくというような形を取るために、その少なくなったパイを結局は、地方が色んな形で、国会議員の方などが入って取り合うという、旧来の構造が私は益々強まってしまうのではないかなということを恐れています。恐れていますと言っても、そう多分なっていくだろうと思います。

 私は、結論から言えば、地方分権というのは極めて中途半端に、制度的にも、また実体的にも中途半端に進んでいるし、その中途半端さが、これまであった古い構造をさらに強めていくようなことにもなりかねないのではないかと。まあ、この中途半端さというものを、どっかの時点でキチッと振り切っていかないと、そのことはなかなか。

 しかし、地方からもですね、地方の立場からすれば、現状でやっていけてる、まあ現状の方が、その厳しい将来よりも、より楽だという現実はあります。ですから、なかなか地方から、それを踏み出して言いにくいという、そういうバランスの中でですね、益々、何か仕事がしにくくなってるんじゃないかというのが、自分の実感です。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございます。道路問題については、知事からまた後で若干私の方から議論をさせていただこうと思います。それでは、増田さん、お願いいたします。

(増田岩手県知事)  はい。岩手県知事の増田です。私も、全国一律で、中央集権で今まで行政が行われてきましたが、そういう形ではなくて、地方の独自性を最大限発揮できるような制度に、体制に変えていくということが、その地域を、その地方を良くするだけでなくて、それが引いては国全体を、我が国全体を良くするんだという、これは、地域が良くなっても、国全体がその事にバラバラになって弱くなればダメなんで、地方分権することが国全体になって強くなる。

 こういう前提でおりますし、そういう思いでできるだけ地方に権限が移るようにということでやってきたわけでございますが、やはりネックはと問われますと、そういう地方分権を進めていく時に、私は3つの要素があると思ってます。一つは、前回の法律である程度解決されたと言われておりますけれども、一つはやっぱり権限、そうした権限が地方に渡されるという事が一つ。

 それからニつ目は、財源です。これは、甚だ不充分であります。財源の問題です。
 そして三つ目は、そうした仕事を執行していく上での人の問題、体制の問題。まあ、端的に言いますと人の問題でございますが、この三つが、要素が兼ね備わって初めて、こうしたことが可能になるというふうに思っておりまして、今まで何人かの知事さん方のお話を聞いてまして、実は私、申し上げたいことを既にお話しされた知事さんがおりますので、今までの方で触れてない、この人の問題で三つだけのことでお話をさせていただきたいと思います。

 で、国から地方へということで、小泉総理が高らかに宣言をされたのが、一昨年の5月ですか。だったんでございますけれども、その時に、やはり私は、こういった国家公務員が非常に多くて、その人達が中央集権の形で、それぞれ各省で縦割りで仕事をしてるわけですが、この問題に、やはりメスを入れないと、真の意味での国の立場で地方分権はできないというふうに思っておりましたんですが、その後、この問題には全く実は手がつけられてない。

 一つは、やはり中央省庁は大変抵抗が大きいわけですけれども、自分達の身分に関わる話ですから、できるだけ先送りしたいということなんです。

 それからもう一つはやはり、それぞれに当然の事ながら国家公務員の組合とか、そういった所があるわけですが、そちらも組織が弱体化するわけであります。このことについては触れないという問題でございます。

 将来ずーっと先に渡ってですね、緩やかに、徐々に、徐々に、そうした分権を、分権国家を進めていくという、そういうタイムスケジュールがあれば、人が自然に変わっていく中で、その中で段々に身分を移すとか、そういう悠長なことでも良いのかもしれませんが、やっぱり今問われてるのは、

2年とか、3年とか、極めて集中、限られた期間の中で体制を変えていかなければならないということなんで、やはり現実の生身の人ではありますけれども、人をやっぱり国から地方に本気で移すようなですね、制度改築をやっぱり考えていくべきだろうと。これは国全体の大変大きな問題でありますけれども。

 で、私は、中央省庁、色々な弊害を抱えておりますけれども、逆に一方で、我が国が誇りうるべきシンクタンクでもあるわけでありますから、そこの有為な人材を、その仕事と同時に地方で活用していくといったようなことをですね、やはり真剣に考えていくべきだろう。そのために、この問題をやっぱり取り上げていくべきではないかというふうに思うものでございます。

 で、身分の誘導化をしていくということは、実は、全く例がないわけではなくて、非常に難しいとは言われておりますけども、まあ、私、まだ詳しくは調べておりません。もっといずれ調べようと思ってますが、確か1999年だったと思いますけれども、スコットランドで、やはり地方に大きく権限を委譲された。確かそれまでは、正式な名前は分かりませんが、スコットランド自治庁というですね、やっぱり国なんです。

 スコットランドの行政を司ってるわけですけれど、そこが分権、大幅に自治を獲得する中でスコットランド自治政府というのができて、身分はもうそのまま中央政府の役人は移ってるはずです。もう少し詳しく調べてみようと思ってます。

 で、これは、やっぱり私自身はですね、国全体でやっぱり議論する。それで、今ですね、人が見ればやっぱり仕事を作るわけですよね。役人というのは真面目ですから。中央政府で、その何十万人という人がいるわけですから、そうすると彼らは必ず仕事を作る。まあ、ここにいる官僚OBが非常に多いわけですが、私も中央省庁におりましたので、金もらっててブラブラ遊んでるというのは、一番苦痛でありますので・・・。

 金もらって、それで机に座ってればですね、やっぱり筆走らせてですね、現場に行かないで机の上で色々制度を考えるとかですね、やっぱりそういう、まあ、逆に言ったら訓練受けてるわけですから。

 で、私は、こういう地方分権を現実に進める時に、確かに権限、それから財源が地方に移ればかなり進む部分はあると思いますけれども、それが進む部分はあると思いますけれども、分権がそれで成り立つという事ではなく、本当に分権を動かしていく、分権の突破口を切り開いて動かしていくために、やっぱり人も合わせて先に動かすという発想でですね、それで考えていかないとダメではないかということではないかということでございます。

 これは大変大きなネックにこれからなって来るだろう。たまたまですね、やっぱりこの問題は非常に大きな問題だろう。で、先ほど片山先生が言ってましたけどもね、やっぱり県と市町村の関係でですね、補助金の問題にしても、何にしても、県も色々市町村に対して頭を抑えつけてますから、

やっぱり、私も県から市町村にだいぶ仕事を移したいということでですね、市町村長さん方と色々話をしておりましたんですけれども、案の定やはり市長村長さん方は、やっぱり「その根拠となる権限がない。知事はそう言ったって、現場に行けば色々職員の皆さんから抵抗されるんだ」と、「じゃあ、その抵抗を無くしましょう」と、

で、「知事が号令掛けて移すようにしましょう」と、「でも財源がありません」、「じゃあ、財源をできるだけつけてですね、それで首長さん支障ないようにしましょう」で、最後にはやっぱり人がいないということですね。それは、人的に足りないという、その行政改革をずいぶんやってますから、人的に足りないという部分もありますし、それから難しい、まあ、最近の新しいテーマになれば、専門家がやっぱり育っていない。技術者がいないという問題もございます。

 市町村役場はご承知の通り、1人何役で仕事をしておりますので、ですから、そういった新しいことにはなかなかかかれない。やっぱり、そこを補わなければならない。で、昨年から岩手県では、市町村に仕事を色々と県から移す時にですね、財源だけでなくて人も一緒に、あわせて移して、それで仕事をしてもらうというようなことを、幾つかの所で始めております。

 今年の4月から、またその数を増やすことにしてますけれども、で、そういう形で実際に市町村でやっぱりそういう人的な部分も補った上で、トータルとして市町村にですね、一番身近な所で仕事をしてもらう。こういうことをやっているわけでございます。

 これをやってみて思いますのは、市町村の方もだいぶ、逆に抵抗感がございます。県から人が来るということにですね。やっぱり組織として異質なものが入って来るみたいな、実際には、最初の頃はだいぶ市町村から蹴り返されましたけれども、現実にそういう形で人が移った市町村は、結果としては「大変良かった」ということを言ってくれます。

 それから、県の職員だと勿論、その県で仕事をするために入ってきてますから、その町で仕事をするために入ってきているわけではないので、職員にも当然抵抗感があります。で、それは、ずーっとその人が終身そちらの町に行くわけではなくて、そこはローテンションでですね、変えていこうと思ってますけれども、やっぱりそうやって、県と市町村がどこまでやれるか。

 それから、どういうふうにやってもらえるか、これからもっと研究しようと思ってますけれども、やはりこの問題をもっと我々の間でも整理をしてですね、やっぱり論点をキチッと明確にしていきたい。

 で、ぜひ、国全体、国レベルで国民の皆さん全体にも、やっぱりこの問題に関心を持ってもらってですね、それで、これからのやっぱり問題提起というのをお願いしてという形になればというふうにも思ってます。まあ、他の皆様方と重なる部分もありますので、そちらは全部省略いたします。私自身も、全体としては、今はまだ非常にちょっと中途半端な所でございまして、解決すべき面が大変多いというふうに思っています。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございます。今のお話を聞いてまして、ちょうど98年の今頃、雪の中だったと思うんですけれども、盛岡の県民会館ホールで私、喋ってたんですけど、うっかりと「農業改良普及指導員なんかに指導されたら、農協はダメになる」って言ってね、「お前、その言葉取り消せ」という会場から職員の方からすごいお叱りの言葉をいただいた事が鮮明に思い出します。それでは、北川知事、お願いいたします。

(北川三重県知事)
 今日はお世話になってありがとうございます。私はですね、一括法は非常に大きな効果があったと思うんです。で、人の意識を変えていくという努力とですね、制度が変えると人の意識が変わるという見本例になっていると、こう思うんです。

 例えばですね、まず執行部も議会の側もですね、条例を作ろうという、そういうインセンティブが働いて、一気にですね、これは全く自立という事で、国の方に説明責任を果たすという事ではなしに、条例を作って県民にチェックをいただいてというふうに、いわゆる主権在民の県民の方に向いてきたということで、これはすごく大きな変化だと、私はそのように受け止めておりまして、

これがドンドンと自分達で条例を作って責任を取るという事になることがですね、いわゆる地方政府という樹立した所へなっていくと、こういうふうに考えまして、説明の方向が、国から主権者である県民へと変わっていった。ということは、実は、議会も執行部も大変大きな変化であって、こういった件がですね、やがて本物になっていく、その責任は我々にあるというのが一つでございます。

 もう一つはですね、今、増田さんのお話の中にありました、一国多制度ということで、動き始めました。例えば、私ども三重県で、産業廃棄物税を法定外目的税でできるとなった途端に職員の意識が変わりまして、そして、いかに徴収するかというだけの税体系からですね、税をどうやっていただこうという、自発的な事になって、そしてですね、今までは国からいただいていたという感じがですね、企業の方にもお話しをしたところ、

大変なしっぺ返しを食らってですね、この不景気に増税とは何ぞやということになって、県の職員の意識は、「ああ1円のお金をいただくのは、これほど大変なことか。よって、出す時には、やっぱり気をつけなければいけないなというふうにですね、見事に変わってきたというのは、実は、この一括法のお陰でございます。

 そうしますと、段々この中の知事さんも産廃税はやろうということになります。そして、それを発展させてですね、橋本さんは環境税でいこう。ということで、この議会で取り上げられるというふうに変化をし、そして増田さんや片山さんなんかも、地域全体にですね、ドンドン変化をしてきたということになり、それによってですね、いわゆる規制改革と経済特区ということで、一国多制度です。

 それで我々が出したところ、国の縦割りでですね、あれはしてはいけない、これはしていかなければいけないという、国のですね、哀れな規制法を徹底的にやるというね、これに対して我々が立ち向かうという所まで来たわけでございまして、立ち向かうというですね、

いかに縦割りがこの国の閉塞感をもたらしてるかという事を、見事に表してきているというのは、実は背景に私は一括法があったと、こういうことでございますから、私どもはですね、これを本当に生かすことによって、今後のですね、いわゆる税財源が、我々がきちんとですね、どうするかという所までいく、一歩一歩進むべきだと、こういうふうに考えて良いのではないかと思います。

 林野庁の仕事で、林業なんかは生産林としてですね、どうして扱うかというだけの発想でございました。そして、できるだけ高率の良い補助金をどうやって取ってこうかという考え方でございましたけれども、この一括法ができて自立をしてまいりますと、いわゆる生産林だけではなしに、山を公共財としてですね、これを環境林に、あるいは生活林にということからですね、

川下の予算を山に上げて、そして今年の10億が10年先100億かかってもできないというようなことになってですね、和歌山県の木村知事さんなんかと一緒に緑の雇用事業というのは、明らかに生産林から離れて、地方自治体が自発的に考えて実行したと、こういうインセンティブが起こっている。

 これが即ち、一括法の私はすごさだと、このように思うところでございまして、補助金をいかに取るか、いかに高率の補助金を取るかという発想から、自立してですね、自分達が政策を立案し、自己決定をして、責任も取りましょうという、そういうことになってきたということを、私は大変喜んでおります。

 もう一つ、形から変わる決定的なことは、私は農林水産部をですね、産業経済部に直そうと、こう提案したわけですね。農林省のキャリアの皆さんがですね、「そういうバカなことをしたら、補助金はやらんぞ」と、平気で言いました。市長村長さんや、農林の団体のおる所で平気で言いました。

 もう、何と情けない。自分達のお金と思っているこの哀れさ。いや、本当にですね、「予算をつけないぞ」と平気で言えるね、このことが日本を悪くしていると僕は思います。したがってですね、私ども難儀をしまして、産業経済部が負けて、現在「農林水産商工部」という名前に、変わってきたということをでございますが、その私の辛さ、痛さを十分見た上で、やっと落ち着いた時にですね、産業経済部にすっと直した宮城県の浅野さんは、・・・。

 こういうことでですね、人の轍をですね、ちゃんと見てスッと変わっていくというのが、実はこれがお互いが、それぞれが自立して、総務省中心の、いわゆる知事会議中心の会議からそれぞれが自立していると。こういうふうに変化してきたのは、私はこの2年少々のですね、一括法の成果で、それを生かすか、殺すかが我々であってですね、

今回のシンポジウムのタイトルを見て下さい「自らの手でどう壁を破るか」“自らの手で”やっぱり内発的にやらなければ、国から言ってきたからとか、県に言われたからとか、そういうことでないという変化が、ここ2年、3年で生まれてきたことを、実は私は喜んでいる所でございまして、戦後57年間作り上げてきた制度は、良きにつけ、悪しきにつけですね、非常に重たいものがあると思います。

 重たいからこそ、みんなが難儀しているわけですから、我々が立ち上がってですね、本当に新しい価値創造ができればなと、そんなことを思っております。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございます。色んな論点が出てまいりましたけれども、それぞれ実際に現場を預かっていらっしゃるわけですから、一方で制度改革を論じながら、他方で個々の具体的に答えていかなくてはならないという、まあ悩みがあることはよく分かっています。

 その上で、ちょっと申し上げたいというか、お訊きしたのが、まあ、権限、財源、さらには人の移管というお話もございますが、新しい環境税等々の創造の部分はともかく、大きな権限の移管要求ということがかなり弱いんじゃないか。例えば、これが分権委員会の勧告の前に、国道であるとか、あるいは重要港湾であるとか言っていません。

 こういうふうにですね、河川局や道路局が反対派、俗に言えば一体になって反対をするのは当然なんだけれども、あの時に、別にここに今日いらっしゃってる6人の知事ではないんですが、知事の側も「そんなもの要らない」と、こういうことを平然とおっしゃった知事がかなりいらっしゃった。

 で、その後のデータを見てると、「財源が来なくてはけしからん」というのがあるが、例えば、国道の問題であるとか、あるいは1級河川・2級河川水系への移管問題。こういうことになると、どうも発言があまり元気良くないなあという感じがするんですが、そのあたりはいかがでございますか。

(片山鳥取県知事)
 はい。あのね、それは、確かにそういう傾向はあるかもしれませんね。好んで、例えば河川の問題なんかでも変更してっていう声が・・・・。「ああせえ、こうせえ」と言ってきたり、それから自主性を発揮しようとする時に、まあ、イチャモンをつけたり、妨害をしたりするんですね。最低限ね、それを止めてもらったら、私、第一歩だと思うんですね。それで実はものすごく迷惑してるんです。

 今、国の権限でされていることで、県がもう喉から手が出るほど欲しいというのが、まあ、場合によってはあるかもしれませんけどね、一番難渋をしてるのは、自分達で本来決められることすら、国の方が、あれこれ、あれこれ言ってきて、そこの所を突破するのにものすごくエネルギーを費やしてしまう。そこの方が実は切実なんです。

 例えばですね、うちで言いますとね、私の所は、今年度、去年の4月から小学校の1年生の30人学級をやったんです。これは、今40人学級が基準ですから、40人学級に相当する教員については、半分がさっきの義務教育費、国庫負担金で来るわけですね。

 ところが30人学級にしますと、教員が余分に要りますが、その教員の給料を1銭もくれないわけです。これはいいです。かってにやっている訳ですからね。ただし、その財源が私の所もありませんから、県職員の給料を5%カットしたんです、4月から。

 結果的には、さらに人勧があったりして2%上乗せしましたから、今は7%カットになってるんですけど、まあその5%カット分をそういう教職員とかの人件費に充てようということでやってるんですけどね。市町村の小中学校の教員の上乗せをする時に、県職員の5%を充てるというのは、やっぱりちょっとですね、何となくうちの県の職員にしてみたらちょっと何か変だなというのもあるもんですからね、「市町村も協力して下さいよ。その代わり任意性です。嫌だったらいいです。30人学級にする所は、ちょっと環境を良くして下さい」と、こういう話をしたんですね。その話はまとまったんですけどね。

 「そういうことはまかりならん」と言ってくるわけです、文部省は。1円もくれないわけです。どうしてね、自分達で工夫して、何とか地域の小学校の教育環境を良くしようと思って、県と市町村が相談して、職員の人件費までカットして、それで協力体制を作ったのに、「いけない、県が全部払え」とかって言うわけですね。国は1銭も払わないくせに。

 で、実はそういうことがね、もう一番困るんです。厄介なんですね。ですから、まずは、そういう所を取っ払ってもらいたい。そういう変な所にもう興味と関心持たないでもらいたいというのが、本音でして。

 で、実はね、そんなに1級河川の管理が苦になるから、我々が非常に困ってるとかですね、いうのはないです。例えば、その辺は結構国も大らかで、我々が頼んで「その河川の管理だけど、こうしてくれ、ああしてくれ」という話をすると、こっちも直轄の負担金出しますからね、そんなのは相談すればかなりスムーズにいくんですね。

 だから、国は自分で持ってる権限については、そんなに嫌がらせをしたりすることはないです、自分の権限ですから。一番困るのは、我々の権限について嫌がらせをしたり、押しつけをしたり、足を引っ張ったり、手は引っ張ってくれませんけども、そういうことが一番困るというのが実態です。

(新藤教授)
 はい、どうぞ。

(木村和歌山県知事)  今の片山さんの話でね、一つの論点が、例に出されたのが30人学級でしょう。まあ、そこの根っこにですね、文部科学省として口を出したくなるという思いがあるっていう、その根っこにですね、多分、教育の機会均等という絶対に譲れない線が文部科学省にあるっていうことだと思うんです。

 で、結局、この議論の中でも、それを無くすのかどうかという事から、本当は始めなくちゃいけないんですね。
これ、何となく独自に入りやすいでしょう、「教育の機会均等、同じ日本人なんだから、沖縄であっても、鳥取であっても、東京であっても、北海道であっても、宮城であっても、過疎地であっても、都会部であっても、ともかく教育を受けるんだとすれば、みんな同じ条件で」何となく美しい言葉ですけども、

こんな事ありっこないじゃないですかと言うか、それは、本当に国としてですね、一歩も譲れない線なのかどうかということを改めて考えていかなくちゃいけないということも、実はこの中で問われてるんですね。

 で、それほど機会均等と言ってる、まあ、個別にだいぶそこに突っ込むようですけども、これは供給側の方ですよ、教育を、そのサービスをする側の方で同じように店はっときますという話なんだけど、だけど、そこで抜けてるのは、教育を受ける側にどんなニーズがあるかなんですよ。

 例えば、不登校ってまず言う人がおる。それから障害児だってどこで教育するんですかっていうのもあるでしょう。学習指導要領っていうのは、みんな同じで良いんでしょうか、地域によってとかですね、先生方の創意工夫、学校の個性ってどうなんでしょうかっていうような、そういう部分についてですね、

教育の機会均等っていうことでザーッと翻弄されて流してしまって、何か、こう、葵の御紋ですか、こういうのを見せられてね「教育の機会均等」こうやって鳥取県も、多分、文部科学省から言われたんじゃなくて、その裏に教育の機会均等法の御紋が見えないかっていじめられるんでしょうね。

(片山鳥取県知事)
 いや、それはね、結局ね、少なくとも鳥取県外は「機会均等にするべきだ」とこう言うんですね。で、私のやったのは、市町村から「教育費に下さい」と、「任意ですよ」と、だから、「30人学級を1年生でやろうという所は協力して下さい。それをやりたくないという所は良いです」と、今まで40人学級ですから、ちゃんと基準どおり満たしてるわけですからね。そうやって、できる所から県と協力しながら教育環境を改善していきましょうという、こういう同意ができたわけです。

 そうすると、実際に「うちはいいです」と、「35人の学級になってるから、もう。あえて30人学級にすることはないですよ」当然出て来るんですね。そうすると、県内で30人学級の所と、そうでない所と斑が出て来ますよね。それがやっぱりけしからんということですね。何でそんなことを一々ね、文部科学省に心配してもらわなきゃいけないのか。

 少なくても、最低限の40人学級にはなってるんですから、後は、それぞれの努力で教育環境を良くするっていう、そういう試みを何でそうやって一々するのかなあという、そういうことなんです。

(北川三重県知事)  今の議論をもうちょっと一般化するとですね、やっぱり、実は、その国民側の方も甘く、甘く見られてるのか、堅く見られてるのか分かりませんけど、つまり、国民の側の方が、鳥取県民もね、みんな平等を望んでるだろうっていうことで、そうすると、結構県民って言うか、国民も、よく私が言うんですけども、足らざるを嘆くにあらずして、等からざるを嘆くと。

 何で、あそこだけ良いんだ。何でうちだけって、必ず比べてですよ、自分の足らざるっていうんじゃなくて、等しくないのがおかしい。政治なり、県政なりとしても、全て平等っていうのを貫徹すべきだっていうのがある限り、分権なんていうのは、成り立つことないんじゃないかというですね、こっち側っていうか、どっち側だか分かりませんけど、こっち側ですか。

 こっち側の方の、ねえ、その何て言うか、そういうセンチメントが、そういう信条があって、それを願って文部科学省が「ほら、そうだろう。国民もそう言ってるだろう。鳥取県内でこっちの町と、そっちの町と、こっちが30人だって、そっちが35人だって言ったら、35人学級の方が怒るだろう。どうだ片山知事」こう言ってる所があるとすると、県民がやっぱり「そんなことない。うちの町は、うちの町だ」ということを、ちゃんと言ってくれてる事も前提なんですね。

(片山鳥取県知事)
 そうですね、一つ。ちょっとずれるかもしれません。今回、そういうやり方をしたときに、一番ね、まあ、文部科学省からもそういう反対があったんですけどね、県内の市長村長さんからもやっぱり異論がありましたね。

 「困る」と。「いや、任意性だから良いじゃないか」と言うとですね、「いや、だから困るんです」と、「やらないと言った途端に住民からですね、『うちは何でやらないんだ』と言って責められるから困るんです」という、そういうちょっと面白い話がありましたがね、結果的には全然問題なく、県内の方は全然問題なく納まりましたし、だから、結果的に文部科学省が色々言ってきましたけども、我々はやるということになって、これからの問題もないから良いんですけどね。
 でも、途中段階が、本当に、もう厄介です。あれこれ、あれこれ言われましても。

(新藤教授)
 よく分かります。ただですね、先ほど県がバリアになってないかというふうに片山さんはおっしゃいましたが、逆に県のそれぞれの部局がですね、市町村にこの部分があるやないかとやってきた部分というのは、ずいぶんあるんじゃないですか。

(片山鳥取県知事)  それはあると思いますね。やっぱり特にね、教育行政なんかはそうですね。ですから、今、ちょっと私、知りませんでしたけども、30人学級をやるという事についても、任意性ですよといった所が、うちの県の教育委員会はまず理解できなかったですね。「なぜ、差がついても良いんでしょうか」と。「いや、任意性なんだ」と言って、そっから先が面白いですよね。任意性だけでやりなさいって電話かけるんですね、市町村に。だから、そういうことは止めなさいと。

 だから、やっぱりですね、県の方が市町村に対して、護送船団を、これまで言ってるのと同じ事やってるなと思って、まあ、でもそういう事例が出て来ましたから、そこで県の教育委員会の意識改革もできるという、もう今ケーススタディになってることです。

(新藤教授)
 あの、橋本知事ね、先ほど「全てが中途半端だ」とおっしゃったんですが、この中途半端から脱するために、県内の、とりわけ県庁機構の改革というのはかなり問われてると思うんですけれども、どういうふうに今取り組んでらっしゃいますか。

(橋本高知県知事)
 なかなか難しいですね。というのは、僕が知事なって間もない頃、新藤さんと話をした時にも自分のスタンスとして言ったと思いますが、それが正しいかどうかはまたご判断をいただけたら良いけれども、僕は今与えられてる国と地方の枠組みというか、制度の中で、県民の生活向上のために最大限の仕事をしていくというのは、一方では、やっぱり知事に与えられてる任務だと思うんです。

 ですから、全ての制度、これを変えろ、あれを変えろということを主張し、それを実現をさせていくのは、あくまでも、やっぱり国に関わる政治家の仕事ではないかなと、一方では。で、地方の立場というのは、今申し上げたような立場あるんではないかと思う。

 最初のですね、先生が言われた「もっと大きな提言の要求が弱いのではないか」というご質問がありました。それに対する僕の答はですね、一つは、やはり今の枠組みの中で、やっぱり最大限の県民への仕事、サービスということをしていかなきゃいけない。

 その時に、今言われたような事例のものに、あえて手を挙げてドンドン主張をしていく。そのために、国との軋轢を深めて議論をしていくことが、果たして高知県のここ2、3年、4、5年のために有利かどうかという事は、自分の選挙という意味ではなくて、県民のサービスという事で、自分はやっぱり考えなきゃいけない立場だと思います。

 と同時にですね、最初申し上げたように、中途半端でつまみ食いをされる、今状況にあります。で、その時にですね、今言われたような大きな提言についても、地方からこれは地方にということを言った時に、必ず僕は、つまみ食いをしてくるだろう。良い所だけを国としてとって、そうでない所をというつまみ食いを必ずしてくるだろうと。そのつまみ食いを防ぐ手立てを持たない中で、その声を挙げていくことは、なかなか難しいなというのが、僕の正直な思いです。

 そういう中で、しかし、やはり地方としてどういう意識を持っていかなきゃいけないかということはおっしゃる通りですし、私は、地方分権一括法を全て否定をして申し上げたわけでは勿論ありません。北川さんが言われたように、それによって県の職員が自分なりに新しいことを考えようという動きは、色々出てきました。

 今日は、宣伝の場ではないので、そういうことを一つずつご説明をしませんけれども、じゃあ、次に何をするかということで言えばですね、私は、先ほども言いましたように、今は中途半端だけれども、やがて、やっぱりドラスティックな改革というのを、国も財政の事情がありますから、せざるを得ないだろう。それに備えた体制をとれるか、どうかという所だと思います。

 県の職員には、最近いつも言ってるんですけれども、今、例えば高知県が国から地方交付税や、国庫支出金、補助金という形でもらってるものの総額が、例えば1千億だったとします。それが色んな三位一体の見直しの中で、750億になり、700億になったとしても、現在は国のメニューで決められている事がいっぱいあるわけで、そのために、本当は必要なくても、その仕事を取ってくるとやらなきゃいけないというような無駄もあります。

 また、国との交渉、そして書面づくりということでも、膨大な労力をとられている部局も数多くあります。で、そういうものが一つは解消されます。そして、今、国が良い所取りというか、つまみ食いをしているのではなくて、本当の意味で地方の自由度を広げるために補助金というものを、国庫負担金というものを解消していくということであれば、そういう規制緩和に基づいて、権限の委譲に基づいて、地方がやってる方がより地域の実状にあったサービスができるという面があります。

 そういう時代に備えた意識というものを持ってるということが、今、県の職員に求められてる事ではないかなと。片山さんが1例を挙げられましたけれども、その道路に関する国土交通省関係のもの、農水省関係のもの、林野庁関係のもの、水産庁関係のものとか、これは生活排水に対してもあるわけですね。公共下水ですとか、農業集落排水だとか、合併処理浄化槽だとかもあります。

 で、こういうものを、やはり地方で一つの課にまとめていくことによって、補助金それぞれが無くなり、その縦割りが無くなり、その分来る財源が少なくなっても、それを有効に生かしていくような仕組みを、いかに、やっぱり早く、単に組織として作っていくかという事だけではなくて、仕事の実として作っていけるかどうかだと思うんです。

 うちも遅ればせながら、この4月から、今片山さんが言われたような形の統合というものとしていきたいと思います。最初は、そうであっても課の中に、従来農水省の事業を持っている耕地課の班ができですね、そして国土交通省が持ってる事業の班ができということになろうと思いますけれども、

やがて、やっぱり同じ場所で仕事をしていれば、それが1つの地域の中にどうやって事業を、その事業、生活排水の事業なら生活排水、海岸の事業なら海岸の事業、また砂防地滑りなら砂防地滑りということを、その地域にどういう事業をしていけば良いかという意識に変わってくるんではないかな、そういうことを今しとかなきゃいけないのではないかと思ってます。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございます。まあ、時間も限られておりますので、少し先に進めたいと思うんですが、先ほどのですね、国の形と言いますか、中央と自治体との関係をどういうふうに位置づけるかという事が問われてるなというお話もございました。

 で、前日にも、現在の27次の地方制度調査会、分権制度の問題については、ご審議されているようでありますし、まさに今日、増田知事、ご出席なんですが、東北3県の合併というか、そういう構想も具体化してきたんです。

 で、一方において、今日お集まりの皆さん方も、それなりに日々、まあ頭を悩ませている問題であろうかとも思うんですが、市町村合併の進行という問題がございます。

 こういう中でですね、この都道府県制度の再編、あるいは一国多制度といったようなことも睨みながら、少し制度論の話へ移したいと思うんですが、まず東北3県合併構想と言いますか、その具体的内容と、進捗状況といいますか、それについてご説明いただけますか。

(増田岩手県知事)
 はい。今のこの問題はですね、まず基本的な前提条件は、市町村を中心とした行政体を築き上げていく、と。で、多くの仕事が一番住民の目に見えやすい市町村で、私は十分にやり遂げられれば、また住民の関心も引きますし、受益者負担も非常に良く、ハッキリと分かると。

 ですから、この国の、まあ今ご承知の通り、大きくいうと三層制、即ち国と地方があって、地方の中は県・市町村と分かれてますが、これから市町村重視の行政改革、または仕事配分というものを作りたいんですが、真の民主主義というか、やっぱり行政が何かする、住民の税金の負担によって何かサービスを提供して、その是非を問うという仕掛けだったら、本当に、そういう原則に全部一番近い形にしてということが、やっぱりこの問題の大前提であると思います。

 そういう市町村中心の行政を分解し、したがって、今の県民配分、受益者負担の中で、かなりのものが、市町村が行えるだけの実力をつけ、そして、また実際に行えるように。ただ、そういうことを前提にしながら、私は、今の都道府県制というものも、これから大きく議論し、そして、もっと変えていかなければならないんじゃないかと。

 で、そういう思いで北東北の、岩手のみならず、青森、秋田の知事さん方と認識を共有化してますので、今、かなりの事業を3県共同で進めております。

 私、知事になりましたのは平成7年の4月でございますけれども、実はなりまして、ちょっと経ちましてからですが、やっぱり特に経済政策、産業政策などですね、そういった分野で各県単位でできる形、あれはやっぱり限界かなあという思いを強くしていました。

 で、そんな事があったんですが、実は、当時はまだ財政の、だけどバブルは崩壊したとはいえですね、従来通りですね、少し前年よりも右肩上がりで増えていくような主張でございましたし、まあ、何とか行政としては、施策を実行できるという状況だったんですけれども、ある時期ですね、まあちょっとローカルなあれですが、岩手が福岡の博多にですね、観光宣伝と、それからアンテナショップ、県産品の販売のためにですね、博多にやっぱりどうしても拠点が欲しい、それまで大阪の方だったんですが。

 で、九州全域を見ながらですね、場合によっては韓国だとか、そっちの方にも足がかりを作るための、やっぱり拠点は欲しいなと思っておりましたんですが、まずやっぱり議論をした時に、岩手から見ると大変これは距離も遠い所ですし、財政力の問題もあったんで、せいぜい年間に5千万ぐらいしか金が出せないなとか、それから職員もあんまり多くさけないんで、2人ぐらいの県職員を派遣できるぐらいだなということだったんですけれども、それですとですね、博多の、まあ天神にどっか場所を構えようかと思ったんですが、裏通りのビルの7階か8階ぐらいしか借りられないんですよね。

 で、実は、青森県がちょっと前に博多に事務所を出してたんですが、やっぱり同じように裏通りの7階だとか、8階なんです。で、もうほとんど目立たない所ですし、それでも職員をもう少し出してもったんですけれども、やっぱり効果が非常に薄いということで、ここは物産品も非常に似通ってますし、

それから、やっぱり同じような状況であるんでですね、いままであまり、こう、北東北3県というのが、最近はお互いを意識してますけど、当時はみんな東京ばっかり見てましたから。我々が北の青森なんかを気にするなんていうのは、まずほとんどありませんでしたし、横の秋田の方を見るなんていうこともありませんから、だから宮城の方を見るか、東京ばっかり向いてたんですよね。

 で、ここはぜひ共同して良い物をやりたいなと思ってて、それで青森の知事さんと秋田の知事さんにすぐ電話をしましてですね、まあ、秋田もちょうど博多の方に何か出したいなと思っておられるという話を聞いておりましたんで、それで3県共同でやりましょうと。

 で、そうすると、実は近場でやるとお互いにライバルだと思って、競争意識が出て来るんですが、博多ぐらいになるとですね、博多の人達も北東北って、その、事前に調査したら、青森とか、秋田とか、岩手の位置すらよく分からないんですね。あの辺りっていうぐらいなんです。

 で、岩手の、何か一番半島の先っぽみたいな感じでですね、偉くなった担当者はプライドを傷つけられちゃいました。
 あんな、青森と一緒じゃありませんよとかいうぐらいの、青森と秋田との関係でしたから、本当にお互い同士、手の内を隠して、何か、一つの県としてやるというぐらいだったんですね。

 で、まあ、電話してすぐやっぱりそうだと、どうしようもない、こらダメだということで、すぐにですね、良い場所を物色して、それで結局、今は天神の1階の角っこの岩田屋さんから50mぐらいですかね、非常に賑わってる、町の繁華の一等地にお店を構えることができました。

 それと併せて、観光の商品をですね、色々開発をしてもらってます。大体、高いもんですから、北海道は大型機が出るんで、博多から行っても安いんですが、北東北って高いんですよね。で、だから、大体来る人は、北海道なんかももう行き尽くした人が、最後に北東北に来るんですが・・・。

 あれなんです、絶対仙台とか、花巻の所に来て、平泉の中尊寺とかあの辺りに行ってから、今度は十和田湖の方に行くんです。大体2県とか3県一緒にまたがってですね、それで帰るということで、岩手だけ来る人なんかほとんどいないわけです。ですから、まあ、そういうこともあって、旅行商品も色々出したもんですよ。

 それから、私が行ってもなかなか物産品、最初は色々あって、まあ最近何回か行ってると慣れてきちゃったのかこんなもんかと思うんですが、やっぱり3県のお酒だとか、それから海産品だと、今は青森のリンゴもあるし、秋田のきりたんぽだとか、色々とあるわけですけどね、稲庭うどんとか、大体今は3県の物が揃ってると、非常にやっぱり福岡の人達にもアピール効果があるので、私は非常にやっぱり出して良かったなと。

 で、そんなことをきっかけにして、我々、成功事例だけ特に積み重ねようといって、そうすると観光が非常にやりやすいし、あと、環境問題ですね、そういう分野のはやっぱり各県で共同でやった方が、例えば中国から飛んでくる酸性雨だとか、黄砂をですね、観測するなんていうのは1県単位でやってたってしょうがありませんから、

やっぱり、そういう問題について共同でやろうという事から始まって、今は予算上事業例の20数事業を3県で一緒にやってます。子供サミットなんかは、毎年県で持ち回りでやったり、文化・芸能の発表会も一緒にやると、それぞれ良い物が来るもんですから、とっても喜ぶということがございます。

 で、福岡で味しめたもんですから、札幌なんかは各県が事務所出してたんですが、そろそろ近いし、もう、こういうご時世だから閉じようかと思ってたんですが、「じゃあ、3県一緒にしましょう」ということで、去年4月に一緒にして、で、今年の4月に大阪・名古屋、やっぱりこれも3県それぞれ出してたのを全部一緒にして、

それでまた担当の局も作ってですね、うちの良い物を売ろうかなと、そんなことで北東北3県でやっていて、ソウルにも去年の秋、これは北海道が入っての4道県で出して、北海道が入ると非常にやっぱりアピール効果が大きくてですね、これも大変だったと思いますし、今年シンガポールも4道県でやろうかなと、こんな事を考えてます。

 それで、今、そういうことをですね、もうずっと後、先ほどちょっと産廃税の話がありましたんですが、東京から非常にやっぱり産廃の廃棄場所として狙われていると。で、うちだけそれに対しての経済的負担を強化してもですね、隣に行くだけだから、それだったら、やっぱり北東北3県でやりましょうということで、

産廃税と、それで域外から入ってくる物に対して、いわゆる重量規制を図ろうということで、搬入課徴金のような形で協力金をいただくことにしたんですが、全く3県が同じ条例で去年の12月、ひと月ほど前ですね、条例を成立させて来年の4月1日からそれを施行させることになってます。

 まあ、青森との間で日本一の産廃の不法投棄地があることもあるんですが、そういう形で、勿論全体の量を抑制すると同時に、リサイクル産業、それで3県でこれから、育てていこうと。

 今日、浅野知事さんとちょっと先ほどお話ししたんですが、できれば、そういうものは東北でこのリサイクル産業を全体で完結できるような形にしてですね、関東地域からいっぱいまた入ってくると大変困るもんですから、関東は関東で色々工夫してもらうことにして、我々はやっぱり、このきちんとしたリサイクル産業を一つの体系で確立していくと、まあ、やっぱりこれは地域でやると効果が出てくるだろうというふうに思ってます。

 地方債発行もして3県共通にするように財源を立てると。そうすると、財源の、これからの色々な資金調達のブーインは非常に豊富になってきます。まあ、そんなことになる。

 で、実は、今、色々と申し上げましたけれども、我々のやり方は制度論があまりですね、議論しないで後回しにしたんです。この問題は都道府県制の問題については道州制の議論ですとか色々あったんですが、やっぱり基本は、まず我々がやってるのは県民生活が安定とかですね、安全を実現していくということでして、具体の事業でどういう効果を出していくのか、その積み重ねがやっぱり大事であると。

 今、急に市町村合併ということが言われ始めましたけど、やっぱりお互いにですね、今までほとんど一緒に事業をしたことがないものが、町村が一緒になれと言ってもですね、かつての歴史的な繋がりがある所は別にして、やっぱり話なんですね。そうすると非常に空虚な話になっちゃうということで、どうもやっぱり本当についつい議論にならない。ですから、住民との間での議論をよく行うわけです。

 で、私らは、少し時間掛けても、やっぱり具体の事業で自主的にそういう役割を知った上で、制度は後から作れば良いんやというぐらいのつもりで、この問題を考えています。

 ただ、私は、国からのそういった、3県なら3県のまとめて、大きな権限委譲のような形がないとただ単に3県一緒にしただけではですね、あんまり効果はないんじゃないかと。かえって、色々混乱を持ってくるんじゃないかと気持ちもあったんですが、最近はやっぱり3県が単純に一緒になるだけでも、非常にスケールから言ったら大きいな。それでも非常に意味があるなという事が一つと。

 それから、前提にありますように、市町村に、やっぱり中心的な役割を果たしてもらう。市町村が中心で行政を構築するというのが大前提であってですね、このことによって実は今の県民の皆さん方、国民の皆さん方がですね、県に対して期待してる、あるいは県が果たしてる役割というのが大きく変わってくると。それを前提に、やっぱりこの問題をぜひ冷静に考えていただきたいなと。

 そうすると、やっぱり私は今の産業施策なんかでも、従来は宮城県であり、山形県であり、秋田県であり、青森県との間で企業誘致、こっちだ、こっちだとやっていたわけですが、そうではなくてそれは、中国がやっぱりこの問題ではライバルでありますし、あそこの安い人件費のコストなんかは、どうやって凌駕していくか。だから、ちょっと作業工程を色々変えていかなくちゃいけない。

 そして、むしろ、受け身じゃなくて向こうをマーケットとして、これからも意識していかなくちゃいけないという事になれば、やっぱり各県がまとまって対中国のですね、産業政策をどういうふうに分担をしていくかということを考えなければいけない。で、それは沿った形でインフラ整備のですね、強い港湾をどうするか、強い空港をどうするかという事を考えていかなきゃいけない。

 そういうことから考えると、ちょっと長くなりますが、私は、そういう事だけでも、やっぱり大変大きな意味合いがあるので、都道府県をですね、ブロックごとにまとめて、それで大きな国家図を再編していくと。そして大いに効果を増やしていく。そのことをですね、やっぱり真剣に考えていくべきだと。

 そうすると、47で交付税を色々分けて、その他の調整をどうするなんていう事のなしに、やっぱり大括りにすれば、そういったことが非常にたやすくなってきますから、ですから私は、制度論はあんまり私は言わないことにしてますが、それを言い出しちゃうとみんなそっちの方ばかり言ってですね、空虚な議論になっちゃうんで、

私は少し、実績を積み重ねる今は期間だと思ってますので、少しブレーキもかけながらも、とにかく実績を出そう、出そうということを言ってますけれども、それが少し、もう少し実績が積み重なってくれば、その時に一番良い体制、まあ広域連合のもう少し強い姿勢の形になるのか、道州制の形になるか、その辺りの制度のあらまし的に出していけるかなと、こんなふうに思ってます。

(新藤教授)
 はい。北川さん、それから木村さん、ちょっと時代的に文脈は全然違うんですが、逆に今おっしゃったような環境問題、あるいは地域での経済的自立というと、かつて東海3県、ちょっと文脈は違うんですが、今の文脈の中で、どういう周りの自治体、県、とりわけ県の環境をお考えでしょうか。

(北川三重県知事)
 あの、和歌山県の木村知事がいらっしゃいますので、お話しますと、紀伊半島3県の連絡会議というのを、県の議会議長さんも別途やられているわけです。それで、大体紀伊半島というのは3県にまたがる唯一の半島でございまして、日本一大きくて、95市町村ございます。ほとんどが過疎、こういうことになります。

 したがって、吉宗の時代は紀伊の国で一つだったんですが、行政の都合で勝手に3つに分けたということから一緒になろうよと、こういうことで、和歌山県の高野山なり、熊野三山に行く道なんかをですね、世界遺産に登録をしようというので3県で力を合わせてやったら、何と暫定リストに載ってしまったんですね。

 そして、来年は、ほぼ、文化庁がですね、ユネスコの方へ出してくれましたから、8、9割は世界遺産になるということは、この3県が連携した驚異だと思います。それでみんながですね、一緒に紀伊半島全体を盛り上げていこうと、こういう気運が段々できてきました。

 そうしたらですね、今度は和歌山がですねドクターヘリを持ってみえたわけですね。で、奈良県と三重県は無かった部分ですから、木村さん、少し出すから貸してよと、こういうことで、3県で一つのヘリコプターを使い分けるということが、もう現在、稼動して、この間、三重県は助けていただきました。

 こんな防災拠点をどうするかというのは大きな課題で、地震三兄弟、我々最大の課題なんですが・・・。
 東海地震、東南海、南海地震というですね、これは本当に津波がですね、9m、10mの高さで来る可能性が非常に高いと。
こういうことですから、だから防災拠点を作るのは、三重県が作ったら今度は和歌山さんよ。一緒にあなた方がやってくれれば、経費は済むわねという、今、例えば相談をですね、しております。

 あるいはですね、熊野川という川が流れてますがね、今まではケンカばっかりしてた、和歌山と三重県で。和歌山が東の方にちょうど橋架けたいんですね。三重県は上の方へ架けたいわけですね。もう、全然その担当の部局で話が合いませんから、そういう無駄なことは止めておこうというので、大体県境でですね、道路が曲がったり行き詰まったりしてるんです。市町村の境もそうなんですね。

 だから、総合的に知事とか県会議長は、総合行政で「ああ、橋はじゃあ和歌山県に譲ろう。しかし、学校の通学区域は三重県に譲っていただこう」こういう話がですね、ドンドンできてですね、そういう交流が始まりますと、実はソフトの面でですね「ああ、和歌山県というのは、こういう所がすごいね」「三重県はこういう所が至らないね」と、心の中は反対を思ってますが・・・。

 そういうですね、感じになってきてですね。それで、ドンドン、ドンドンと進んでいくんですね。それで、今、東北の3県がですね、合併かと言ったら合体だって言ってたから、どっちでも良いじゃないかという話にはなるんですが、紀伊半島の3県、あるいはですね日本まんなか共和国というのを勝手に作ってましてね、・・・・、三重県だけではバカにされるから、4県で一緒になって力合わそうということでですね、最初、8つの課題でですね、政策をやってます。

 私どもは県立病院をですね、赤字をやっと黒字化することができました。なかなか至難の業でございましたが、そのノウハウ、テクニックを各県に持っていきます。そして、みんなが一緒に一番高い所で合わしていくわけです。こういうことで、まずここで始まったのはヒヤリハットという、ヒヤリとするとかハッとするという医療事故の問題をですね、三重県だけで205例があれば、4県合わしたら1,000ぐらいの例があるとですね、よく分かるというようなことになります。

 滋賀県は琵琶湖がございましたから、非常にですね、グリーン購入が日本一だったんですね。私はそれを真似してですね、グリーン購入大賞を取りました。去年ですね、福井県が取りました。来年は多分岐阜県が取ると思います。4県取らないとみんなが言い合いますから、取らざるを得なくなるわけですね。

 こういうふうにですね、お互いが連携してるというのは、紀伊半島でも始まっているところでございまして、そういうお互いが機能分担し合うということは、とってもお互いがベンチマーキングしたって、刺激し合うということ、あるいは、経費的に非常に落ちてきた、そういったことは良いと思いますから、紀伊半島がですね、世界遺産登録で大きく生まれ変わって、従来の開発発展型から、本当に世界遺産に耐えうる、残そうという文化は、きっと生まれると思います。ほとんどの利益は和歌山県に行くと思われます。

(新藤教授)
 木村さんいかがですか。

(木村和歌山県知事)
 実は、僕はもうちょっと、さっきの増田さんが「制度論からというのは反対や」という話があったんだけど、これは昔から正しいことだとは思うんだけども、実際問題として、今、和歌山県と三重県は、もう僕はもっぱら兄弟分みたいなもので、色んなことで助けてもらってるんです。それで和歌山がものすごい助かってることも沢山あるんだけど、これはどっちかと言うと、今までの広域市町村圏であるとか、そういうようなレベルの助け合いの話だと思うんですがね。

 それで、これを幾つ、沢山やっていっても、それがやっぱり国の形を変えるという方向へは行かないと思う。この間、僕が一番感心したのは、塩野七生さんの本を読んでたら、EU、ヨーロッパはEU、これうまいこといって、ヨーロッパは去年通貨統合して、ここのところ上手くいってます。そういうふうなものを、この東アジアで日本ができるかどうかというふうな観点があるんですね。

 そうすると、今やっぱり中国ともなかなか、そう仲良くは、あっちも結構覇権主義だから上手くいかん。北朝鮮はああいう状況、韓国もかなり日本には複雑な気持ちを持ってる。それで、後の小さな、小さい国って言って悪いけど、アジアの国々では、なかなか日本とそういうものを組んでいくような形にはならんだろう。

 そしたらやっぱり、日本の国の中で幾つかそういうふうな区域に分けて、それで、それぞれが東京へ向かって何もかも発信するんじゃなくて、外へ出す。空港なら地方空港で行けるでよ、それぞれが色んな所へ結びつくような形でものを考えていくようなことを考えていかないと、どうも日本の国はずっと中央集権で明治以来きて、それで伸びてきたわけですが、ちょっと弱いような感じがやっぱりするんですよね。

 それで、そういうふうな中で、例えば、そしたら1都1道2府43県が良いのかということを考えた時にね、今、国・地方合わせて借金が740兆円と言われますけども、その、何と言うのかな、そのナショナルの部分が生んだ意地ということから、やっぱりこういうふうな借金がでてきた面もあるわけ。

 ところがね、今、僕らが考えてるとね、1都1道2府43県あるんでね、横を見て横並びと、色々考える。だから、国の方が有難いことに、「全国、この基準でやって下さいよ」と言って補助金の基準を決めてくれたことまで、「隣の県がこうしてるから」と言って、またちょっと上げてみたり、こういうふうなことをやってるわけですよね。ただ、これ、今の仕組みだったらどうしてもそうなってしまう。

 例えば和歌山だったら、大阪から引っ越してきた人が「大阪におった時は、こんだけ余分にお金もろうてたんですが、和歌山へ行った途端に、そのお金がもらえようになったんやけど、どうしたら良いでしょうか」と言ってこられると、「そら気の毒ですなあ」ということで、またその土台の上にもう一個上を足すようなことになって、やはり、その何と言うか、自己決定と自己責任という所に非常に弱くなってきている。そして、これは本当の意味での分権では無いというふうな感じが、実はしてるんです。

 そういう意味では、今、三位一体の税財政の改革というようなことが言われてるけども、今の制度を前提にして、金持ちというか、人が沢山集まってるような地域と、全く違う地域を一緒の土俵の中で税制改革とか、財源の問題を考えても、これはできなくはないけど、やっぱり限度があるんですよね。

 だから、やっぱり相当大きな括りで、そして人口が稠密な所も、そして過疎な所も入れて物事を考えると。そして、その、もう国の、さっきの話にあったけど、分権一括法ができて、色々法律も変わったような感じやけど、何もかも相当細かいところまで国が決めて、それで相変わらず事業官庁がこちょこちょ、こちょこちょ、その農道のことにまで口を入れてくるような仕組みは変わってないんです。

 僕はむしろやっぱり、もう国は教育基本法が今問題になってるけども、基本法的なところに留めて、後はもう皆、州法というか、もう少し生活に関係あるとか、そういうものは決めていくような形を、やっぱりもうそろそろ模索し始めないといけない。

 これは、もう、だから、僕はもう都道府県合併という言葉もあまり好きじゃないし、それから道州制なんて言うのは、まさに昔の、何ですか、国の出先機関を集めて、それで経済をもっともっとやり易くするようなというような、そういうようなものが残ってる言葉なんであんまり好きじゃないんですよね。

 だから、まあ州制度とか、地方制度とかいうようなこと、色々言葉はあると思うんだけど、そういうようなものを、もうそろそろね、一方ではですね、一方では今の改革、今の、さっきにも言ったけど、連続線上の改革を進めていきながら、一方ではもっと大きな仕組みを変えるというようなことを議論していく時が来ていると思うんです。

 それで、やっぱりね、そういう議論の中からしか、本当に自治は生まれないんですよね。僕なんかの所へ和歌山県の市長村長さんがよく参ってね、言うんですよね。それで来はったら「補助金ありがとうございました」って言って、僕に言うわけです。

 だから僕は普段「関係あらへんですよ。これは税金ですよ。何も僕が自分のお金、自分の家でも売ってお宅らに投げ返すやったら『ありがとうございます』って言ってもらった良いけど、これはたまたま、来たらやっとこういうふうに出してるだけやから、そんな『ありがとうございます』なんて言ってもらう必要は無い」そしたらみんなキョトンとしはる。そういう意識すらまだないわけです。

 だから、やっぱりね、これからそういうふうな大きな地方の制度を考えていく中で、何て言うのかな、そういうような自治の意識、それとまた、今度は州というものは何か、そして本当の意味の基礎的な自治体である、まあ市になってくると思うけど、市というものは何かと言うようなことはやっぱり、本気で、知事なんかも考えていかないといかんし、市町村長も考えていかないといかんし、住民も考える。

 そして国も、もうハッキリ言って国の頭のえい人は、東京で企画的なこととか、外交とか、防衛とか、そんなことをやってもろうて、後、今ごちょごちょ、ごちょごちょしてきたもんが、さっきの、あの、職員の委譲ということがあったけど、地方の方で持ってもらってね、それで能力を発揮してもらったら良いんですよ。

 もう、そんな形にしていかなかったらね、この閉塞状況はうち破れないし、そしてまた、他へ、その、中国に関しては色んなことを言う人がいます。非常に危機的な感じを言う人もいるし、それから販路を言う人もいるけど、だけど、大きな存在になってくることは間違いないんですね。その時に日本がどんな形で対応するかというような観点から、地方制度も考えないといかんし、もうこれは、本当にそういう意味では、ただ単に3つの県を一つにするとか、そういうふうなレベルのことじゃなくてね。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございました。じゃあ、そうするために、この6人の知事が核になって何をするかという、まあ、テレビカメラがさっきから帰らないのは、今日はまだ何か飛び出してくるんだろうというふうに思っているはずでございます。したがいまして、そちらに話を移そうと思うんですが、その前にですね、ごく簡単にお訊きしたい。

 とりわけ、橋本さんにお訊きしたいんですけれども、間もなくもう1度審議される有事法制、それから、まあそれは法案にまでコンプリートになってないんだけれども、例の国民保護法制、その中でですね、知事に対する、まあ命令ということかな、逆に今度は知事が各施設等々の、あるいは緊急物質の徴用権というような権限がある。そういういう上書きになってる。で、例の、その港湾の条例の時にですね、色々議論がございましたけれども、今出ているあれについて、どういうふうにお考えになりますか。

(橋本高知県知事)  うん、今出ているというのはどれのことを。

(新藤教授)
 いわゆる知事に対する命令権ですね。逆にまた知事の住民に対する注意したり、・・・に対する命令権ですね。

(橋本高知県知事)
 僕は、命令権のことだけを切り取ってということよりも、やっぱり国と地方との関係の中で、外交・防衛の問題をどう考えるかということ。また、国民の安全をどのことに重点をおいて取り組むかという視点ではないかと、私は思います。で、そういう視点から言いますと、ちょっと話が長くなりますから、もう省きますけれども、私は、日本の外務省というのは、日本の国民のためにある省ではないし、仕事をしている省ではないと思います。

 私は、日本の外務省の仕事の仕方が変わらない中で、あたかもアメリカに追随をしているような形での色んな法整備というのには、自分は基本的に反対です。それぞれの、個別の制度が云々は別にして。

 で、私は国民の安全ということを考えた時、さっき北川さんで地震の話が出ました。木村さんも同じ地域ですけれども、私は、東海地震と、東南海、南海地震が連動して来るということさえ、今言われている時にですね、その有事ということを言って何を想定しているか分からないような有事を考えるよりも、確実に向こう何十年の内に来るこの地震に備える国民保護の法案、それは住宅の問題もそうですし、津波に対する避難もそうです。

 そういう事をきちんと考える。そのために、高速道路や何かをはじめとする基幹のネットワークをどうしていくかということを考えるのが、僕は国の責任であるというふうに思います。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございました。浅野さんいかがですか、この事を。

(浅野宮城県知事)
 私はね、今の橋本さんの半分賛成、半分ちょっと反対というわけじゃないんですけども、批判するあまり、ちょっと言い過ぎの部分もあるかなというのは、米国追随のような中で有事法制があるというのはその通りなんで、これは分けて考えるべきで、米国追随しているようなことで、今の日本の国家戦略・安全保障が考えられることが良いかと言えば、これは答はNOなんですね。

 米国追随ではなくて、日本の国益のために、まあイラクの問題も、北朝鮮の問題も、その他、今、有事の問題もしっかりと考えて、アメリカにNOと言うべきはNOと言う、これは当たり前のこと。これは国家戦略の問題だと思います。

 それで、有事法制について言えばですね、どういうふうになるか分からないようなことを考えるよりも、地震とか、そういう災害対策の有事を考えれるか、これもその通りなんですが、私は両方必要だということです。災害対策も必要ですが、やっぱり有事ということに備えていくという法制は、やっぱり本当に遅きに失してるようなもんだと私は思ってるわけです。

 ある党派は、「いや、有事法制を作ることは、戦争を誘発する」とかっていう議論なんですが、これは全く私は理解できないんですね。そのルールを作らないで、もし有事があったらどうなるかということになれば、むしろ国なり、国家権力なりがですね、それはやりたい放題というか、そういうルールがないんですから。

 ルールを作るということは、これだけのことは国民に対してできますよということと、逆にそれ以上はできませんよということを決めるわけですから、そのルールは、やはりなければならない。今、そういうものが無い中でですね、その災害にしてもですよ、それから軍事にしても、あったらどうなるかって、空恐ろしい問題だと思います。

 で、この時にはですね、国だ、地方だって、あんまり私は角突き合わせるつもりはないというか、まさに、一番大事なのは、知事として一番大事なのは地域の県民の生命、財産を守るという事ですから、そのために必要な事を、国と、その他の機関と、力を合わせてどういうふうにやっていくかという事が、最も必要なんで、その知恵って、これは本当に急がないとですね、冗談じゃない話になってるわけですね。

 宮城県の沖を越えてテポドンというのが2年前に飛んできたんですから。
 これはでも、荒唐無稽の話じゃないんですよ、これ。いうことでですね、私は、まあ、何でもいいから作れというわけじゃありませんけども、今急がなくちゃいかん。だから、橋本さんと対立してるんではないですよね。

(新藤教授)
 おそらく、私が聞いていても対立しているわけではない。

(浅野宮城県知事)
 分かりました。安心しました。

(新藤教授)
 まあ、こういう論争があることが、ベストな共通で、まあ、論争がある事が結構なことだと。
 で、まあ、90年代初頭からですね、政治改革という事が言われてきて、要するに、日本の一国主義的な、そういう、あるいは自由民主党の、まあ一党優位体制から生み出したまま、こういう事にどう対応するかという時に思います。

 当然その選挙制度問題というのがあるでしょうし、政治資金問題もあったでしょうが、私どもは、地方分権改革というのは、まさにその政治改革の一つの全体のパッケージとして考えるべきだというふうに、まあ、そうされたし、この6人の知事の皆さんも、今日、尚その事の重要性が増してるというふうに認識されているはずでございます。

 ですから、この6名の方々に加えて、他の知事さんとも一緒になって、様々な連合を組まれてきたし、そしてご承知の通り、この4月には11の知事選挙もございます。さらには衆議院選挙もあるのではないだろうか。

 また、私、今日、名古屋から電車に乗ったら、来週の日曜日にはちゃんと選挙に行きましょうという車掌のあれがございましたが、JRも変わったもんだというふうに思ってたんですけども、まあ、こういうなかでですね、一体この政治改革として地方分権改革、あるいは政治改革と地方分権改革をどういうふうにリンクするかということで、一つご提案が、画期的なご提案があるようです。そのことについて、まず北川さんからご提案いただきたいと思います。

(北川三重県知事)
 もう昨日も言ってますから、全然画期的な事じゃない。マニフェストのことでございますが、実はですね、今、頑張っていらっしゃる民間の企業の皆さんは、マネージメントを本当に徹底されて、ビジョンに基づいて戦略が立ってですね、そしてマネージメントしていくという、そういうことが徹底してるんですね。

 それで、実は政治の世界、まあ僕は官僚の世界もそうだと思いますが、まだ親分、子分の世界が多すぎるのではないか。本来の内閣が、圧倒的な、明確に選ばれた責任者でありますから、権限を持たなければいけないのにも関わらず、実は責任の無い党の幹部の方の方が力がある。もっと責任の無い派閥の親分がいる。こんな事でですね、内閣と与党が不一致で、これは問題を解決してないということに、もうまるきり証明されているというような気がするわけですね。

 したがって、私は内閣の仕事とですね、与党の仕事がスッと一致して、そして素晴らしい政策が出れば、政権は継続。そしてですね、行き詰まったら交代というようなことが、マネージメントされてこないと、私はいけないだろうと、そんなことを考えてます。

 で、私はですね、そういう中で、何でそんなことを言うかというと、地方分権の必要性というものを訴えたいからでございまして、私もこの4月に11人の知事がですね、立候補されると。

 そうすると、今までの公約は、昨日も少し申し上げましたけども、スローガンを掲げるわけですよね。この道を通しますから、北川を通して下さいとかですね、そんなことでWish Listという、いわゆるおねだりリストを作ってですね、そしてやると。そこで財源はほとんど見えてこない。そして、それを財源を作り、政策を実行していく期間とかですね、予算の配分とか、財源とかのプロセスもほとんど見えてこないわけです。

 まあ、こんな事からですね、昨日、私は勝手に増田さんと、片山さんがこの4月に立候補されますから、彼らはきっとマニフェストを作って、やられるだろうと、皆さんに宣言しておきましたので、彼らが今日、作らないと言ったら、これはもう早速大批判の的になるだろうと。

 まあ、そう思って、まずですね、我々知事がですね、完全論ではなしに、いっぺん、政党が本来作られるべきマニフェストをですね、県知事の立場でぜひお作りをいただきたいということを提案をするわけでございます。

 それはやっぱりスローガンではなしに税源をつけますと、あれかこれかの予算で・・・。あれもこれもじゃないですから、例えば、福祉予算をつけるならば、公共事業は削りますとか、そういうきちんとしたですね、事をぜひしていただきたいと思うんです。

 出馬をしないとこんな楽な事がいっぱい言えると、こういうことになるわけでございまして、厳しく監視をしていきたいと、そのように思って、ぜひこの場で宣言をしていただければと、そう思います。

 そしてですね、ここに来てる知事さんに要望もしていきたいなということを考えてます。そして、この次の総選挙でですね、政党の方が本当に財源もカチッとし、そして選択もキチッと国民の方に示してですね、まあ、政策綱領と言いますか、マニフェストというようなことになっていけばですね、私は政治に緊張感が走ると思うんです。

 それはですね、従来はもうコンセンサス政治といいますか、みんなでやろうということになれば、コンセンサスということは一番低い議論につくわけで、談合と言います。したがってですね、やっぱり多数決政治ということで、国民に真意を問う、あるいは県民に真意を問うた、これのですね、主権在民の民主主義というのは、それを実行するという事がですね、とても重要な事だと思うんです。

 まだ総理になって、まだ大臣になって3ヶ月しか経ってないから、何にもできないと、そんなんあるかということになるんじゃないでしょうか。ということがですね、本当に思うんです。

 だから、やっぱりキチッと約束をして、個人じゃなしにですね、この政策をここから出す、これによってどうですかということがハッキリ言われてこないとですね、私は緊張感が走らないし、先ほどのですね、有事法制なんかを含めた、国論を二分するようなですね、憲法改正なんかは、今の政治状況ではとてもできないと思いますね。

 なぜならば、本当に国民に明確なですね、メッセージが伝わって、そのメッセージの下で選挙してないからだと、私はそう思います。したがいましてですね、そういったことで選挙が争われてですね、そして一国の総理が決まって、そして堂々と今の閉塞感を打破する。

 あるいは世界に通用できるですね、国を創っていくという事になれば、私は、閉塞感がとれると、こんな事を考えているところでございまして、昨日ですね、西尾先生の基調講演の中に、従属と陳情の中の中央依存体質というのを、本当に打破しなければ、何で地方の時代が来ますかと。あの補助金を貰うのに、あの局長さんに顔がきくからという人が尊敬されていて、本当に地方の時代が来るか。ぼつぼつ我々自身が問われている。自らが壁を破らない限り、地方の時代なんて絶対来ない。私はそう思います。

 したがって、今度の4月に出られる2人の知事さんが、必ず率先実行して、見事なマニフェストを作られると思いますので、皆さんご期待をいただきたいと。
ただ今からお2人の固い決意をどうぞ。

(新藤教授)
 じゃあ、増田さんから。

(増田岩手県知事)  いや、私の選挙まで色々ご心配をおかけして・・・。
 大変、感謝と本音を申し上げたいと思うんですが。で、実は、今のマニフェスト、言葉はどういうふうにするかというと、まだあまり馴染み無い言葉なんでですね、政策綱領というふうに言い換えるのか、何かあるんですが、昨年から実は、北川、まだ知事さんですから、北川知事さんとですね、ご相談、ご相談というか、ちょっと話というか、連絡をして、

私も従来、今まで2回選挙を戦ってますけれども、公約というような形でですね、こんな事をしますということを言ったんですが、やっぱり、その辺りを少し問題意識として持ちながら、県民の皆さんにどういうふうな形で言おうかなとふうに思っていまして、去年の暮れに、実はそもそも出ると言ったんですけど、その時はあえてそういった政策めいたことは発表しないで、2月の下旬ぐらいに出そうかということで、

今、まあ大体従来通りの公約のような形のは、全部、前から整理したんですが、どういうふうにしようかなと思ってですね、考えてまして、ですから、その時期ですとか、それから税的な数量ですとかですね、やっぱり財源とか、やっぱりそういうのをキチッと出して、責任ある形で、本当に、もう備えないかんなというふうに思ってます。

 で、多分一番難しいのは財源だと思います。というのは、分からない所があるんですよね。実は明日、今日、盛岡に戻って明日、来年度予算、知事査定を私がやることになってるんですが、もう査定という言葉を使ってますが、来年からは財政課も無くなるんで、もうそんなのは無くなっちゃうんですけど、

今年はそういうことをやるんですが、確か1月20日か21日に、例の総務省の全国財政担当課長会議か何かあって、交付税の数字なんか確かにお伝えしてることを聞いてるんですけれども、現実のその財政の姿はですね、今後の何年かの間にどうなるかというのを、本当に見極めづらいところがあって。

 ですから、本当にそういうマニフェストな形にしようと思えばしようと思うほど、そこの所を真面目に考えれば真面目に考えるほど、何も書けなくなってきてしまうというですね。そんな所があるんで、むしろ、今最初の方でお話ししてましたけれども、真面目に何か指針があってマニフェストを考えようとすれば考えようとするほど、

やっぱりそういった財源の問題も含めて地方に移さないと、本来の意味でのマニフェストが地方では作れないんだということも、県民の皆さん、そして県民の皆さんを通じて国民の皆さんにご理解いただいた上で、まあ、私なりに、やっぱりできるだけ具体的に県民の皆さんにお示しをしてですね、それで色々ご判断していただくと。こういう形にしようと、今思ってます。

(新藤教授)
 はい、片山さん、ご決意のほどを。

(片山鳥取県知事)
 はい、やっぱりあれですね、もう辞められるとなると非常に、我々のことでご心配をかけまして、大変恐縮です。
 北川さんが言われたことは大事なことでして、私は2つポイントがあったと思うんですね。一つは、これはもっぱら国政が中心になると思いますけれども、政党というものが本当の機能を発揮してるんだろうかという事で、私も実は、その点を非常に、日本の政治を見てまして危惧してます。

 と言いますのは、政治というのは、やはり国民の中でどういうことを国政としてやろうかという、その課題をまとめるわけですね、政党が本来は。政策としてまとめて、そこでその政策に賛同する人は政党の党員になったり、政党を支援したりする。そこで、その政策を掲げて選挙をやって、代表を出して、そして多数派を形成して、内閣を構成して、その内閣でもってその政党が作った内閣、したがって政党と内閣が一体となって政策を実現をする。

 それで国民の願いが叶えられるわけですね。で、それがダメだったら、また別の政党に代わっていく。別の政策を掲げる政党に代わっていく。非常にそれが分かりやすいし、それから責任という問題も明確になるわけですね。

 ところが日本の場合は、その政党が、まあ全部の政党とは言いませんけれども、政権を構成するような政党が必ずしも明確な政策を掲げない。むしろ、選挙の前には政策を掲げない方が良いと、選挙が終わるまではこの問題については去就を明らかにしないとかですね、そういう困った・・・・・、

 ・・・・、そして、信任を得たら、それを政治的に着実に履行していくということ、このプロセスが日本で私は絶対に必要だろうと思ってます。

 ですから、今、選挙になると無党派だとか、政党離れとか言いますけどね、本当は違うと思うんです。本当は、政党がしっかりしなきゃいけない。そして政党中心のクリアな政治にしていかなきゃいけないと私は思ってるもんですから、政党がマニフェストと言うのか、まあ、どういう呼び名が良いのか、それをちゃんとつくっていくということは、絶対に必要だろうと思うし、そういう政党をちゃんと支援していくという、まあ良い意味での監視を有権者はしなきゃいけないと思ってます。

 で、もう一つは、地方団体の選挙であっても、やっぱりマニフェスト的なものをちゃんと掲げてやるべきではないかというのは、これは、従来から公約のようなものは出してるわけですけども、この公約はやっぱり、どう言うんでしょうか、整合性が無いというか、つじつまが合わないという、あれもやります、これもやります。

 もう、この建設業の関係者の人がいる時には、もうドンドン、あの事業も、この事業も、ハード事業をいっぱいやりますと言って、今度は教育・福祉の方に行くと、もうハードからソフトへです、と言う。そういう事をですね、平気でそういう事があり得るわけですね。

 で、それは、断片的にはウケは良いかもしれないけども、トータルとして見たら、その公約全体をトータルとして見たら、どうもつじつまが合わないし、整合性がとれない。どうやってそれを全部実現するのだろうかということ、そういう無責任なことではいけないという、北川さんの提言だろうと思います。私もそれは大賛成であります。

 実は、私は、知事に就任してからですね、県の総合計画というのをやめたんです。結局、総合計画というのもですね、さっき言った、あれもやります、これもやりますという事の、一種の官庁が作った、役所が作った集大成みたいなもんでして、全部あわせて吟味してみると、どうも整合性が合わないというのが多いんですね。

 で、合わないから、結局、最初の所でも出て来る財政推計っていう事から誤魔化してというか、膨らまして、ふくらし粉を相当入れてですね、人口も戻ります、税収も伸びますと言って、財政推計をしてあれもこれも全部できますという、そういうスタイルにしてあるんですけど、それはやっぱり嘘なんですね。じゃあ、シビアに人口は増えません、財政も伸びません、交付税も減りますということで総合計画を作ったら、総合計画は作れないわけですね。

 で、私はもうやめました、それを全部。それで、まあ、何もないかっていうと、そうじゃなくて、重要なテーマについて一つのアクションプログラムのようなものを順次出していくという、それを着実にやって、後から検証していくという事をやってるんですけどね。

 そういうものの延長として、その選挙についてはつじつまがあった従来型の公約ではなくて、まあ、それを紛らわしいと言って良いのか、どうか分かりませんけれども、自分の中での目標、それからそれの実現に向けてのプロセス、それからできれば、それについて財源としてちゃんと裏打ちがあるかどうかという、こういう事を例示するのは必要だろうと思います。

 そこで、じゃあそれが完全な北川さんに、合格点貰えるようなものができるかどうかって言いますとね、それはさっき増田さんがいみじくも言われましたけども、財源の所にさしかかるとですね、おそらくはたと立ち止まらざるを得ない状況が今、日本にはあるわけですね。

 それはさっき私がちょっと言いましたけれども、分権時代の財政改革と言いながら、平成15年度の交付税の姿すら分からないわけです。現時点でもちゃんと。それが、じゃあ来年度、再来年度、その任期いっぱい、4年いっぱいのですね、財源の推計ができるかというと、とてもできない。

 で、税ですらですね、まあ税は自前で、ある程度決められるっていう分野があるんですけれども、その税ですらですね、許容範囲というのはすごく狭いですし、それからそもそも税も、毎年、毎年の中央でやります税制改正で、まあ翻弄されるというと言い過ぎかもしれませんけれども、地方とは関係なくですね、中央の数字によってコロコロ、コロコロ変えられてしまう。

 そうしますと、財源というものの見通しが全くつかない、今状況なんです、都道府県も市町村も。そこで、北川知事が言われるようなちゃんとしたマニフェストを書かないと選挙は余計いかんということになって、それを誠実にやろうと思ったら財源の所で頓挫してしまう。これではいけない。やっぱり、そういう、その財源の見通しの立つような地方財政の姿にしなきゃいけないということに、多分なるんだろうと思うんですね。

 それは、やっぱり今日のテーマに戻りますけれども、やっぱり地方分権の社会にしなきゃいけない。分権型の財政にしなきゃいけないということで、多分結論としてなるんだろうと思いますね。だから、そういう現状では、制約が、勿論ありますけども、できる限りの誠実な目標、そういう道筋での財源まで見ていくと、提示することが私は望ましいと思ってます。

(北川三重県知事)
 まさにその通りでして、実は、地方分権でですね、知事さんや首長さんにマニフェストを書いていただきますと、財源の問題にもう必ずぶつかるわけでございます。したがって、こういう所が本当にですね、首長が困るということは、それぞれの担当の皆さん方はそっくり困るわけです。

 地方財政計画が出て来なければ予算は組めない。全て自治的な地方政治と言えますかということを考えた時に、マニフェスト一つとりましても、そういう自治体をつくっていく、自治政府をつくっていくとこれが多分私はヨーロッパの、ECのですね、マーストリヒト条約の前文に書かれたですね、一番の地域を、これは国だったんですけど、構成するのは一体何かということをですね、やった時に、・・・・・・・・。

 そういうふうなことをやっていく、一つの地方分権を進めるためにはね、今日、立派にお2人が発表されたんで、このお2人のマニフェストにかかっていると申し上げて過言ではないと、このように思うわけでございまして、財源の所は確かに難しいことは難しゅうございますが、

最近の優れた県や市町村の方はマネージメントがしっかりしておりますから、比較的ですね、書きやすいとは思いますが、ぜひですね、お作りをいただいて、21世紀の日本の民主主義を、それもですね、地方分権という切り口で、ぜひお2人がですね、取り上げていただければと、そのように思うわけでございます。以上です。

(新藤教授)
 まあ、今のお話を聞いてますとね、これはもう私の推測ですけれども、知事選挙のマニフェストはマニフェストとして、当然重要ですが、同時にそれを充実させるためにも、国政レベルに地方分権の、まあ、こういった我が国のマニフェストが必要であるという事にもなってくるんではないでしょうか。まあ、その先は、ご推測によって、皆様方のご推察の限りです。

 で、ただ2点ほどちょっとお訊きしたいんですけれども、1点はですね、これ、まあ11の知事選挙、それ以外に市長選挙等々ありますね。で、そこへ向けてどういうふうに発信させるんでしょうか。このお2人だけじゃなくて、もっと広げられるんですよね。

(北川三重県知事)
 あの、多分ですね、11県のみならず、色んな市長村長さんなんかにですね、お送りしたりすることになっていくと思うんですね。で、まず一定お2人に、今日ご理解いただいたら、誰かやってくれませんと逃げられたら恥ずかしいですから、この機会に、ちょっとちゃんとみんなの前で約束してもらおうと思って、

それでですね、いっぺん地方で色んな事を実験をしながら、本来の政党はやられるべきマニフェストですから、地方でのですね、国会議員の先生方でぜひやっていただいて、しっかりした民主主義を作っていければですね、良いんではないかなというふうに思っておりますので、まだ経験はありませんけれども、まずお2人が実行していただけたらと思います。

(新藤教授)  お2人が、まあ実行されるというのは、もう今日ここで、これだけいらっしゃる所で、それからもう1階上にまだ同じぐらいおりますので。

 ただですね、お2人は現職でもう1度、選挙をとり得ることで、そのマニフェストを作る時にも、単に資料的に優位の所があると思うんですね。で、しかしもっと違ったタイプ、あるいは仲間を増やそうという時には、現職からだけとは限らないし、新人だって限らない。で、その方は、具体的に県庁の機構とは、本当に何の関係も持ってない。こういう時に、この6人の連合はどういうサポートをなさるんですか。

(北川三重県知事)
 あのですね、新しい方にも、同じようなこのマニュアルというか、そういうのを全部できたらお送りしたりしながらですね、平等に取り扱って、それでやっていただければというふうに思っております。
 で、実はですね、この現職の方が実は書きやすいんですね。自分の実績がありますから。

(新藤教授)
 そうですよね。

(北川三重県知事)
 ええ。で、新人の方には新人で、ご自分達が、例えばですね、政治姿勢の問題、理念の問題までこれは入ってくる可能性があると思うんですよね。その辺りは、同じような内容の物を、例えばお送りしてですね、やっていただくとか、そういうことにしたらどうかなというふうに思っております。

(新藤教授)
 で、それはしかし、北川知事は、まあ知事職から離れる。で、どっかの雑誌か新聞かのインタビューでちょっと拝見した話ではありますけれども、そういうですね、何と言うかな、マニフェストのベースを作るスタッフを抱えたNPO的な事をおやりになろうという。

(北川三重県知事)  今日は知事の、この立場の話をしてますから。(他の知事さんから「北川さん、正直におっしゃって」の声)
 いや、いや、あの・・・。私は、大体、まあそんなことができたらなあぐらいは、・・・・、そんなことを思ってる所は思ってます。その程度です。

(新藤教授)
 浅野さん、いかがですか。このマニフェストという構想でね、それを広げる三役として。

(浅野宮城県知事)
 うん。大変良いと思うんです。まあ、私は2年前に選挙が終わりましたから。気軽に言えるというところがありますけども、それで、この4月に11県で知事選挙があるんですね。

 明日は、あ、今日が愛知県知事ですね。青森は来週です。あ、来週か、青森は今日ですね。まあ、ずーっと続くんですけども、顔ぶれを見てみるとですね、新聞にも載ってましたけれども、国会議員の方、元国会議員の方も含めて、みんな知事選挙に出るというのがブームになってる。現職の知事としては、プライドをくすぐられますよね。そんなに知事って・・ことを、あれ見て自分であんまり思ってなかったけど、あ、みんななりたがってるんだ、とこういうふうに。

 国会議員の方が現職を辞めてですよ、辞めて来られるんです。だからね、みんな北川さんが、あ、止めとこかって出るんじゃないかと、もう、まことしやかに言われてる。そんなはずはないじゃないですか。

 国会議員の人が、知事になりたい、なりたいって今、一生懸命やってるのに、国会議員辞めてなった人が、もう1回国会議員になりたいなんていうのは、あの、北川さんが今、他の方の世話を焼いたんで、私も逆に世話を焼いたんですが・・・。

 本人がおっしゃると信憑性がないから私が言いますけども、そういうふうにですね、知事が魅力的になってるという事なんですけども、例えばね、この前、小泉さんについての毎日新聞の岸井さんと話した時に、私とこうやって話してて、岸井さんが、「いや、小泉政権って意外と長期政権になるかもしれない」とおっしゃったんですよ。

 ところで岸井さん、長期政権っていうのはどのぐらいですかって言ったら、3年ぐらい続くんじゃないかって。私、もう10年やってるんですけどって。いうぐらいですね、国政っていうか、その、いわゆる総理大臣、トップは、そんなふうにクルクル変わる。3年で意外と長期政権だって言われる時代なんですね。

 まして今や大臣なんていうのは1年ちょっとで変わる。こんな事で仕事ができるんだろうかというようなこともあれですから、今、マニフェストっていうふうに言うのは、確かに財源なんかのことで、なかなか上手くできないっていうことも。しかし、じゃあ、政党なり、総理大臣はできるのかと言ったらですね、3年で長期政権って言われた時に、マニフェストも何も無いんじゃないですかっていうことなんですね。

 だから、むしろよく言われるように知事は大統領制でですね、仕事がやれる。まあ、そこら辺の幻想の部分もあるのにもかかわらず国会議員の方が、なりたいとかっておっしゃってるけど、まあそれは半分は本当という事もあります。

 で、今日はずっとこうやってきて、何か、国に物欲しげに権限下さい、財源下さいっていうふうに言ってるように聞こえるんでしたら、むしろですね、我々はある意味では逆に胸張って、地方の方が今、既に進んでる部分がありますよと、例えば情報公開にしてもですね、それから生活者重視とかいうのも、それも産業廃棄物税、産廃税とかですね、そういうのも、むしろ国が真似しようとしてる。

 だから、縦割りが弊害っていうのは、国においては極まれるんですけども、県においてはむしろ、縦割りなんていうのはないんですね、やろうと思えば。さっき言ったように宮城県では、北川さんの上手い所だけ真似して産業経済部っていうのを作りましたけども、これだって3つの部を一緒にするっていうことは、もう簡単にできるわけです。私の時は、農水省は誰も文句言いませんでしたし。

 まあ、そんなふうにですね、できる。それから、後、今日はこれ議会のお話出ませんでしたけども、議会ですよね、県議会と国会が対比されるわけでしょう。

 私は、ここにいる知事の所の議会は、みんな先進的になってるということになってるんですけども、議会もですね、単なるチェック機関とかそうじゃなくて、ローメーカーと言いますか、法律の作り手になって議員提案の条例っていうのはドンドンできてる。

 これはむしろね、国会よりもある意味では進んでるということになったりして、着実に変わってるし、我々が胸張っていくっていう所もある。で、こういうのをどれだけ増やしていけるかということだと思います。

 で、今、北川さんから提案があったマニフェストというのもですね、本来、政党がやるべきだと言っても、じゃあ国の政党で、それができるかと、能力の問題じゃなくて、やっぱりシステムの問題はあってなかなか難しい、逆に知事選で出る方の方がやりやすい部分もあるかなと、隣の人に向かって今言ってるわけですけども・・・・。

 あの、だから、ぜひ頑張って下さいというわけですね。この辺をね、含めて、地方から発信という、非常に我々とすると胸張りたい部分というのが、またここで出て来るかなというふうに思うと、大変力づけられます。お2人の方頑張って下さい。

(北川三重県知事)
 総理がわずか3年でできるかというのがですね、残念に思うわけでございまして、実は、そのマニフェストとか、しっかりした公約の基になられていないからもたないんだという気がするんですね。

 で、イギリスの例でサッチャーがですね、あれほどの大改革をやり、今度トニー・ブレアが出てですね、アッという間に、半年の間にですね、大きな改革をドドーンとやったというのは、結局は、自分はこういうことをやるということを国民の皆さんに訴えて、トニー・ブレアが圧勝してですね、トニー・ブレア改革が進んだんだと思うんですね。

 で、サッチャーの場合、メージャーに移ってですね、18年も続きましたが、それは国民が選んだということですから、やっぱり、与党になられたら徹底的にですね、やられることだと思うんですね。

 で、民主主義は様々な要素で成り立っておりますから、どんなにいい政策でも本当にそれを続けたら、どっかで政策転換は行われなければいけないというふうには、与野党の転換とかですね、そういったことが行われる。

 それがですね、引いては個々の問題を徹底的に、ちょっと私今日は何でこんな事を申し上げたかといったら、今日も自治体の方がいっぱいいらっしゃってますけれども、結局はですね、そこに行き着いて、そして自分達の政府は、自分達で作るんだと、国の方ばっかり見て、国の予算を見て、税体系見てということだけじゃなしに、

ご自分達のトップがですね、公正な選挙で選ばれて、そしてその人達がしっかりと自分達で財源まで含めたことを約束した時に、私は自治体の職員の方も燃えるし、そして議会の皆さんも対執行部に対してチェックが本当に行き届くと。こういうふうなことが、私は、結局は、その、自らの手でその壁を破っていくという、そこへ行き着くんだろうと思う。

 それで、西尾先生が昨日の基調講演をなさったわけですけども、それがですね、分権改革は政府改革というふうに、私は捉えていただいたんだと、そんなことを思いましてですね、今回提案をさせていただいたということで、本当に自らの手で壁を破るということは抵抗も強いし、国にもいじめられますしですね、難しいんですけれども、私は、根幹はそういう所にあるんではないかなと思って、提案をさせていただいたわけです。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございます。確かに4月の選挙は非常に厳しい状況に自らを立たすという事に、お2人はなるかもしれませんよね。だって、この、これは切って、これをこちらに回すんだと、あれもやります、これもやりますをやらないわけですから、その時には当然、それは受けて立って、批判に答えると、そういうご覚悟ですよね。

(片山鳥取県知事)
 それはね、その、やっぱりこういう仕事をしてますとね、真剣に考えれば考えるほどね、あれもやります、これもやりますとは言えないですよね。私なんかは今もそういう事は言ってませんけどね。だから、それを改めてもう1回再確認をするという事になるんですね。

 さっき浅野さんのご意見がありましたけどね、地方団体っていうのは縦割り無く色んな事がやれるんです。やろうと思えば。これは首長と、それから議会との協力関係があればやれるんですね。私の所はあったんですね。やっぱり、従来は使う予算の中で非常に多かったのは、土木建設費、土木費なんですね。

 もう来年度の予算、今作ってますけども、まだ整理してませんけども、おそらくは、教育費がトップになると思うんですね。もう、この数年の間にガラッと変わった、変えたんですけど、そういうことはやろうと思ったらできるんです。

 逆に言うと、あれもこれも全部バランスとりながら、微妙な差でもってシーリングの下でということをやってたら、そういうことはできないですね。やっぱりどっかをのばそうと思ったら、全体のパイがありますから、どっかを思いきり切らないといけない。

 そういうことを今現実にもうやらざるを得ない状況ですから、それの延長としてキチッとつじつまが合った、矛盾のない、まあ北川さんから満点をもらえるようなのは無理ですけども、そういう政策的な、整合性のある物をちゃんとまとめていくということは、必要だろうと思います。特に現職の場合ですね。

(新藤教授)
 橋本さんと木村さんは、4月の選挙、いや、橋本さんはさっきもおっしゃってるわけですが、4月の選挙とはちょっと関係はないんだけれども、やはり、今後の県政運営の中で、今のようなマニフェスト、まあ選挙じゃないんだけど、そういう形でもっておやりになるということですか。

(木村和歌山県知事)  まあ、僕もあんまりよく勉強してなくて、このマニフェストっていうのは非常に難しくて、それで、この間から北川知事なんかに教えてもらってるんだけど、簡単に言えばですね、もう、今その、僕なんかも色んな人に理念を語りながら、そして理念を語りながらその中にある程度の具体性と、そして数値目標を入れるというような形で、色んな人に話しかけていくんです。

 その話しかけることによって、ある程度方向性を分かってもらうというような努力、これはね、そういう話をしても、分かりましたと、で、ところでこあの道路作って貰えますかと言われた時は・・・。本当に、ハッキリ言ってね、僕は、恐怖感があるんです。

 それが、まあ、人間が正直なんで、嘘がつけないんですよね。その、みんな僕にアドバイスをしてくれる人はね、「適当に言うといたら良い。とにかく道路なんて、何十年か先にはいずれはできるかもしれんのだから、『一生懸命頑張ります。だけど、あいつが反対しててなかなか難しいですよ』と言っておいたら、あんたには傷がつかんねんから、もうそれで良い」と言う。だけど、そんなことをね、真面目に物事考えてる人間にはできないんですよね。

 だから、そういうふうなことのために、もう結局、あんな道路を造るか、この橋を造るかという事じゃなくて、理念を語るということだろうと思うんで、そのことが、まあゆるい意味での、僕はマニフェストということに繋がってくるし、そしてまた、そういうものの考え方が一般的に地方自治体の人達、そして住民の人に理解された時にね、

本当の、牛飼いが歌よむ時に(世の中のあたらしき歌大いに起きる)何とかかんとかというのがあったけれども、そういうふうな状況になってくるんじゃないかなと。まあ、淡い期待を持ちながら、色んな所で、車座みたいな所で話したりしてるんです。なかなか分かってもらえません。

 やっぱりね、一般の人には目の前の道路とか、こんなのがハッキリ言って大事なんですよ。理屈より、理念よりも。だけど、やっぱりそういうことをちょっとでも分かってもらうようにしたいし、そして選挙の時の公約なんかも、あの橋をいつまでにつけますというようなことじゃなくてね、

もう少し、やっぱり、何て言うのかな、この地域全体を本当の意味で良くするような考え方、それをまとめた物、それをマニフェストと言うなら、マニフェストというような形で、物を言っていきたいなというような気持ち。

 なかなかこれ、正直言って難しいことですね。やっぱり、全部に良い顔したいというのが普通の人間だから。だけどそれはできない、基本的には、お金もないし、今の時代ね。だから、やっぱり心で補うところも作っていかないといかんから、これはまあ、僕は、まあ別にまた選挙に出るかどうかも知らないけれども、いずれにせよ、まず両知事さんが一生懸命やりはるのを見せてもろうて・・。こんなもんが出て来るんだよという、見てから順々に検討をしていきたい。こんなふうに思ってます。

(新藤教授)
 橋本さん。

(橋本高知県知事)
 もう、時間も迫ってまいりましたので短くいたしますけれども、先ほどから話がありますように、マニフェストということをやってる時に、やっぱり財源は問題で、国と地方との関係だとか、単年度予算の事だとか、非常に難しい点があると私は思います。

 けれども、方向性としては、これまでの公約作り以上にこういうことに踏み込んでいかなければいけないと思います。ただ、その時に、今この話を聞きながら三つほど思ったことがありました。

 一つはですね、政治っていうのは、おこがましいですがやっぱり情熱です。私の場合で言えば、県民との間にその思いが伝わるかどうかという事に、非常に重点がありますので、単にコンサルタント的なマニフェストになってはいかんのではないかなと。そういうものが横行しないように、見る目が、やはりきちんと県民の側にも求められるんではないかということを思います。

 それから、さっきちょっと先生がおっしゃいましたけれども、公平性ということですね。現職はマニフェストを非常に作りやすいと思います。ということから言えば、現職がマニフェストを作る時には、作り始める前に「自分は、こういう資料を基にマニフェストを作ります」という事を情報公開しないと、対等の戦いにはならないんじゃないかなと。自分がやる時には、ぜひそういうことをしたいというふうに思います。

 で、もう一つは、財源だけではなくて、やっぱり人が必要だということで、アメリカの大統領選挙など色々比べられますけれども、アメリカの場合にはご存知のようにスタッフがゴソッと変わります。

 しかし、県庁で知事になる場合には、知事だけは県民が直接こういう人にこういう事をして貰いたいと言って選びますけれども、部局長以下の職員は何十年そこで積み上げてきた、その頭、その見方をずーっと、こう正しいものとして思ってきた人が、そのまま引き継がれています。その中で、なかなかいっぺんに変えるのは難しいというのが、自分の10年の経験です。

 ということから言いますと、今、各県でも任期付の職員採用ということが制度化されてきました。選挙に出る時に、「こういう部署に」ということが限定されればなお良いと思いますけれども、「こういうスタッフを10人ここへ入れます」例えば、「○○商事の△△さん、××電気の□□さん、◇◇社会福祉法人の◎◎さん。こういう人をこういうクラスの職員として入れます」という、スタッフを県民の皆さんに提示をして、選挙を戦うということも、僕はぜひ次にもし選挙をやるとすれば、やってみたいなと思っています。

(新藤教授)
 はい、ありがとうございます。

(北川三重県知事)
 ちょっとこれは、お2人に申し上げておこうかね。
 木村さんがですね、連続と非連続の話をいただきましたが、連続した改善・改革があってですね、僕は非連続が生まれると思うんですね。だから、三つの橋本さんの欠点を解消するためにはマニフェストを作ると。そうすると、実は現職は逆に言うと、ご自分の作られたことに縛られて、新しいファンタジーというか、新しい文化が作りにくいという点も出て来ると思うんですね。

 で、そういう議論も争うということになって、選挙に緊張感が走るというようなことを含めてですね、まあ、これからまだまだ議論をいっぱい詰めていかなければいけない問題であり、イギリスのマニフェストもですね、財源が十分書き込めてない所も実はいくらでもあるんです。だけど、進化だと思っておりましてですね、民主主義の形っていうものを、こういう議論が出ることも本当に良いことだと、私は思っておりましてですね・・・。

(橋本高知県知事)
 僕は全然否定で言ってるわけじゃないんですよ。やるべきだと、やる時には、という思いで。

(北川三重県知事)
 ええ。ちょっと古いなと思ったので。

(浅野宮城県知事)
 聞いてて分かった。マニフェストっていうのは、選挙で勝つための物じゃなくて、選ばれた後、「これを、あんた方は俺がこんな事やるってやったのに、選んだね」ということを言うための・・・。

 あの、例えば、このダムやめるぞとか、この橋架けるのやめるぞっていうことを言って選ばれたらやめたって文句言えないねというために、言うんじゃないの。

(北川三重県知事)
 浅野さん、もう少しお勉強しましょう。

(浅野宮城県知事)
 いや、いや、そういうこともあるんでしょう。権利の問題じゃなくて、そらマニフェストがどうのと言うんじゃなくて・・・。

(北川三重県知事)
 それじゃあ、お2人の成果を見て、また議論しましょう。

(新藤教授)
 分かりました。

(厚狭の木村和歌山県知事)
 いや、だからね、お2人のように選挙は絶対強い知事だからこそ、少し、少々不人気なことを言っても、信念に持ってやれば・・・。

(北川三重県知事)
 私も、それを期待しておるんです。

(片山鳥取県知事)
 いや、いや、・・・。

(北川三重県知事)
 色々とご心配いただいたけど、後は私が責任を持ってやりますんで。

(新藤教授)
 あの、2時45分から進めて参りましたが、外は暗くなり、アッという間でございました。まだまだ論点はいっぱいありますけれども、ここらで終わっておきたいと思います。

 大手新聞の正月の川柳にですね「参議院 ハローワークの 旗が立ち」というような川柳がございました。それで言えば、「国会議事堂 ハローワークの 旗が立ち」ということに今はなってるんではないか。で、国会よりはむしろ、県、あるいは市町村の改革にタッチする、そういう政治家が、いわゆるこういう時代状況というのは、まんざら捨てたわけじゃなくて、・・・・・・・、もっと改善するべき状況があると。

 で、おそらく、今日の4月以降は、5人が現職で、北川知事はゴッドファーザーとして首を挟むかもしれませんが、今後、益々こうした改革派知事の活動が、活躍が広がることを期待して、本シンポジウムを終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。

(司会)
 ありがとうございました。コーディネーターの新藤先生、そして各県知事の皆様に、今一度大きな拍手をお願いいたします。ありがとうございました。
 


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