高知工科大学のオープンキャンパスでの知事挨拶

公開日 2007年12月07日

更新日 2014年03月16日

高知工科大学のオープンキャンパスでの知事挨拶

平成14年7月20日(高知工科大学)

 皆さん、おはようございます。高知県の知事で、高知工科大学の理事長をしております橋本です。今日はオープンキャンパスに来ていただいて、誠にありがとうございます。

 少し例年に比べて早い時間に、自分の仕事の都合で設定をしましたんで、ちょうど先ほどお話がありましたように観客が少ないなという感じがいたしますけれども、せっかく多くの方に来ていただきましたので、心を込めてお話をしたいと思います。

 そもそもこの大学は、今から11年前に私が高知県の知事選挙に初めて出た時に、こんな大学をつくってみたい、またつくります。こう県民の皆さんに訴えかけてお約束をしてつくって育ててきた大学でございました。

 が、普通の大学とはちょっと違ったところがあります。それが何かといいますと、公設民営ということです。と言いましても、いきなり聞き慣れない言葉で、どういう意味だろうと思われる方いらっしゃるかもしれませんが、公で設置をして民間で運営をしていく公設民営と書きます。

 その意味は何かと言いますと、普通大学は建物からそして最後の運営まで民間でやっていく私立の大学、そうでなければ国や県が設置をしていく運営していく国立とか県立の大学というのが普通ですが、この大学の場合は、皆様今いらっしゃるこの校舎、建物や土地は県が準備をして、あとの運営は私立の大学として学校法人が運営をしていく、つまり半分は公のもの、半分は民間のもの、そういうような経営形態をとってますので、公設民営という大学です。

  なぜこういう公設民営にしたかといいますと、例えば民間の学校ということですと、やはりこれだけの小さな県ですから信用力というような問題も出てきます。この点県が、つまり県民の皆さんが全員で支援をしてくれてる大学だという、そういう信用力がつくという面があります。

 一方で、国立の大学や県立の大学ですと、その教授などのスタッフを選ぶ時、また民間の企業と一緒に研究や連携をしていくときに、いろんな制約というか枠があります。これに対して、これまで日本になかった新しい大学をつくるからには、そういう枠を抜け出て私立として思い切った大学づくりをしていきたい、そんな意味を込めて公設民営という形でスタートをしたのがこの大学です。

 大学のスタートは平成9年の4月ですから、もう6年目に入ったということになります。つまり去年と今年の3月、1期生、2期生を社会に送り出すことができました。それぞれの就職率を見てみますと、1期生の場合には99.2%、今年3月の2期生も98.3%、大変就職が厳しいと言われる時代に、とても高い就職率になっています。このように卒業生を社会に送り出すということは、こうした新しい大学にとって大きな意味があります。

 その一つは、今日来てらっしゃる受験生の皆様方、これから大学を目指そうという方にとって、自分がこの大学に入って卒業したらどういう道に進んでいけるんだろう、そんな一定の目安がつくということです。

 多分皆様方も大学に入ってまた将来こんな事がしたい、こんな事に挑戦をするんだという夢や希望を持ってらっしゃると思いますが、卒業生の皆様方の進路、進み方というものを見て自分の希望、夢と照らし合わして、うん、この大学ならいいな、ということを感じて頂けるんじゃないかと思います。

 二つ目は、こうやって卒業生を社会に送り出すということで、企業を始めとする社会から、この大学の評価をしていただけるようになります。と言っても、もちろんその採用の時点で高知工科大学の学生を採ってくれる企業には、一定この大学への関心があると思います。

 けれども、採用後に実際に社員として、この高知工科大学の卒業生を使ってみて、うん、この大学の卒業生を採ってよかったな、それだけの人材の育成ができているな、という評価がもらえるかどうか、ここがポイントでこういう評価を、卒業生を送り出すことによって社会から企業から受けることができます。

 このことは、大学にとってはちょっと恐い不安な面もありますけれども、県外の企業の皆様方から高知工科大学の卒業生を採ってよかったというような話をよく聞きますので、そういう話を聞くととても嬉しく思います。

 もう一つ卒業生が出るということは、もう当たり前のことですけれども、在校生の方々にとってはいい先輩ができる、社会人の相談相手ができるということになります。もう去年の2月に、全国の同窓会ができました。今年は、東京と大阪と名古屋に高知県の事務所がありますので、この事務所と連携をして、各ブロック別に同窓会の支部をつくっていこうとしていますし、またこの支部が各事務所を通じて、一緒に連携をして様々な交流をする、そんな場づくりもしていきたいと思います。

 このように県の事務所と同窓会が一緒にいろんな活動をしていくということも、公設民営ということの一つの効果ではないかと思います。このように卒業生が社会に出ていくということによって、社会的な評価も定まっていく、また他の大学とも対等に競走をしていける、それだけの場ができた、土俵ができたということを感じています。

 そこで、今年3月に卒業した2期生の進路をもう少し詳しくご説明をしますと、卒業生は366人おりました。このうち25%にあたる90人の方が大学院に進んでいます。また65%にあたる239人の方が、就職を希望されました。残りは37人になりますが、この方々はお家の仕事を継ぐ、また自分で仕事を起こして社長さんになる、さらには国外に出ていって海外で勉強する、いろんな道を選んでいます。

 このうち、就職を希望した239人の方のうち、235人が就職をすることができました。先ほど言いましたように、就職率ということからいえば98.3%で、大変就職が厳しいといわれる時代にとても高い就職率になりましたが、率が高いというだけでなく内定もかなり早い段階から頂きましたし、また皆さん方がよく名前を聞いたことのある、一流企業、有名企業も数多く含まれています。

 このように有名な企業にも採用を頂いたということは、それ自体高知工科大学という新しい大学が社会的に評価を受けた一つの証だと思ってとてもうれしく思っていますけれども、決して一流といわれるような名前の知られた企業に皆さん方にご就職をしてもらう、それだけが大学の目的、使命ではありません。

 もちろん、それもとても大切な事です。けれどもそれだけではなくて、小さな企業でもまた地元の企業でもとても将来性があって頑張ってる企業、また就職をしてくれた社員の人たちの個性を力を伸ばしてくれる企業、そういう大変いい企業が一杯あります。

 そんな会社に入ってもらって、そういう会社を力いっぱい自分の力で大きくしていってもらうような人材を育成する、さらには自分自身でいろんな会社を起こすそういうベンチャー企業家を育てていく、また研究者を育てていく、大学にはさまざまな使命があります。

 そういう意味で皆さん方がやりたいな、こういう道に進みたいなというその道を切り開いていく、その手助けができることが大学にとって一番大切なことではないかと思っています。ですから、この大学では学生さんのために、学生さんを中心にということを教職員みんなが、その一番基本的な考え方として取り組んできています。

 そこで、この大学の教育の方針といいますと、堅い話になりますけれども、目指すものをちょっとだけご紹介をしておきたいと思います。詳しいことはまた後で、いろんな相談コーナーで先生方に聞いてもらえばいいと思うんですけれども、この大学には5つの学科があってそれぞれにシステムというカタカナがついています。

 それには、それなりの思いがあります。それは何かといいますと、工科系の大学ですから、もちろんそれぞれの分野での専門性を身につけてもらう、専門的な知識や技術を身につけてもらうってことは当然必要なことです。

 けれども、これからの時代はその専門性だけではなくて、そういう学問の領域を越えた、国と国の領域を越えることを国際的とこういいますから、学問と学問の領域を越えることを学際的といいますけれども、そういう学際的な知識、また学際的なものの見方、考え方のできる人材を是非育成をしていきたい、そんな意味合いでシステム工学科という名前を付けています。

 もう一つ、今の若い皆さん方は、結構大人しくていうことを聞くという社会的な評価があります。僕の若い頃は、もっともっと悪い連中というとちょっと表現がいけないかもしれませんけれども、自分の思いを大人にもばんばんぶつけてエネルギーを出していく、そんなタイプの友達が一杯いました。

 それに対して、今の若い方々は、結構いうことをよく聞くそして指示を受けたことはきちんとやってくるけれども、指示を受けてないことを自分で考えてやっていく力がない。つまり、指示待ち型の人間が多くなったんじゃないかというような言い方をされます。今、やはり企業が求めてるのはそういう指示待ち型の人間ではなくて、自分で考えて行動していく人です。

 ですから、この大学では自分自身でそれぞれの分野の問題点、課題というものを見つけ出して、それに対する解決の方法を考え、さらにそれを実践をしていけるような、そんな人材を育てていきたいと思っています。こういうことの延長線上で、大学院には工科系の大学としては、全国でも初めてベンチャー企業などを起こすそういう、起業家を育てる起業家コースというものをつくりました。

 また来年度からは、各学科にもこの起業家を育てるコースを学んでいけるような、そういう枠を設けていきたいと思っています。もう実際に、学生さんの中でも、自分で小さなお店を開くとか、また少し大きな夢ということでいえば、インターネットを使った会社を起こすとか、自分で会社の社長さんになっている人も何人かいます。

 またそれだけではなくて、この大学で学んだことを生かして、海外の学会で発表したり、また全国の大学に行って講演で呼ばれて発表したり、様々な活動をしている学生さんがいます。さらに学生生活ということでいえば、クラブ活動も段々盛んになってきました。

 また高知には、ご承知のとおりよさこい祭りという有名なお祭りがありますけれども、よさこいへの参加また大学祭、さまざまな活動を皆さんがしてくださるようになってきました。こういう自由な雰囲気、学生の自主的な活動を、みんなで支えていく雰囲気がこの大学の特徴だと思っていますし、そういう中から新しいこの大学の伝統や歴史も育っていくと思います。

 80年、90年、100年続いた大学も素晴らしいと思います。けれどもそういう大学に入ったら、もうその伝統に染まっていくしかありません。この大学はまだ6年目、7年目という大学です。先輩達も頑張ってくれましたけれども、これからこの大学に入ってくださる方が、また新しい伝統や歴史をつくっていける。

 こういうふうに新しい大学を、自分達の力で一緒につくっていけるというのも、この大学に入っていただく非常に大きな夢、楽しみに繋がっていくんじゃないかなということを思っています。

 ただ、今全国的に大学に入る年齢、18歳の人口が減ってきていますし、今後も少子化が続いていきます。このことは、私立の地方の大学にとっては、大変大きな問題です。理事長の立場で、こんなことをみなさん方にお話をするのは少し変な話かもしれませんけれども、この大学でも2期目、3期目随分受験生が減って心配をしました。

 その時教職員の方々ともお話をしましたが、この大学の教員のスタッフの方々は全国と比べても大変すばらしい方ばかりですし、またそこにある機材も先端的なすばらしい機材がそろっています。そういう人と物だけではなくて、そこで進めているまた進めようとしている教育や研究の方向も、これまでの日本になかった大学づくりということで、決して全国の大学に負けるものではありません。

 そういう意味で自信をもっていこう、むしろそのことをもっともっと受験生の皆さんや、また保護者の方々に知らせていこうと、こういうことをみんなで考え合いました。ちょうどその頃、1期生の方々の就職率が大変いいという話も流れて、県の内外の高校からも多くの高校から、見学また遠足などで来て頂くようになりました。

 そして一度この大学に来て話を聞いてもらい、またキャンパス、またそこにある機材などを見てもらうと、本当にすばらしい大学だな、是非行ってみたいな、という方も増えてきて、この2年はその受験者の数もぐっともち直すようになってきました。

 ただ、ご承知のように、この大学は土佐山田町にあります。町の方は怒るかもしれませんけれども、土佐山田町はまだまだ立派な田舎です。で、そういう田舎の中にあるとても自然環境のいい中にある大学ということは、私達にとっては誇りですけれども入試の担当をしている、そこに立ってる福田君という職員の人などに言わせると、これはやはり受験生を集めるにはなかなか大変なハンディキャップだと言います。

 そういう話を聞くときには、僕はそういう風な考えをもう一度180度変えて、やはりこういう大学で今の時代こそ学べきじゃないか、ま、そういうPRをもっともっとしていこうということを言っています。

 というのは、先ほども言いましたように18歳の人口、少子化は進んできていますけれども、高校を卒業した人のもう半分は、大学に進もうという時代になってきました。一方、今全国にいろんな試みをしている大学が出てきて、みなさん方から見ても選択肢は非常に広がってるし、その情報もいっぱいある時代だと思います。

 振り返って僕が受験をした頃を考えますと、僕は東京生まれの東京育ちでほとんど東京にある大学しかなかなか情報もありませんでした。その他の地方にあるいろんな大学のことを全く知りませんでしたし、当時はあんまり地方で新しい試みをしているという大学もありませんでした。ですから、自分自身で考えたというよりは、親やまた先生方の意見をそのまま受け入れて大学の受験をして、第一志望には落ちて第二志望に入りました。

 でも、今この大学を自分自身で作って育ててみた時、自分が受験をしたときにこの高知工科大学があったら、僕は結構へそ曲がりの人間なので、わざわざ東京から高知に来てこの大学を受けたんじゃないかなということを思いますし、そういう事を皆さん方に自信を持って言いたいと思います。

 というのは、就職をしたときには、やはり多くの方々は、東京や大阪といったような大都市で仕事をするということになりますし、地元の企業に勤めたとしても企業のあるところというのは、高知県であれば高知市だとか、やはり都市部ということになります。

 ということを考えたとき、大学の4年間また修士博士の6年、7年間というその青春の時期をこうした地方の環境の中で暮らすということは、人間の人生のバイオリズムの中でもまた社会的な経験という意味からも、大変僕は大きな意味合いがあると思いますし、是非そういう選択肢を選んでほしいなということを皆さんにお伝えをしたいと思います。

 また全く違った例で恐縮ですけれども、アメリカにスタンフォード大学という有名な大学があります。この大学の周りには、シリコンバレーといってIT産業だとかコンピュータ関係の企業がいっぱい並んでいます。なぜシリコンっていうかといいますと、IT、コンピュータを支えている半導体の材料がシリコンなのでシリコンバレーという名前がついていますが、およそ30年前はこの地区も何もありませんでした。

 ところが、スタンフォード大学という一つの地方の大学が段々段々研究、開発、また教育という面で力を持つ、そしてその周りに企業が集まって大きなシリコンバレーという集積ができました。

 また別の例ですが、アメリカにノースカロライナという南部の州がございます。この州も昔は綿を作るとかタバコを作る一次産業、農業で飯を食べていたそういう州でございました。ところが、一次産業が駄目になりました。それから何とかやはり違う産業ということで、大学を中心にさまざまな研究開発を手がけました。

 そしてこのノースカロライナには、三つのわりと小さい町があるんですけれども、この三つの町、三角形のトライアングルを中心にした大学を核にした町づくり、リサーチパークというものを作っていって、これも大きな産業の集積になってきています。わが高知工科大学も必ず10年、20年、の大学としての研究開発、育を続けていく中で、そういう集積をそういう広がりを持つ大学になっていくと思っています。

 先ほど言いましたスタンフォード大学との関係で言えば、日米の技術経営の提携というものをしていまして、スタンフォード大学との間で通信でむすんで、講演会を開くとかさまざまな交流もございます。

 今後こうした国際的な交流も通じて、この大学は世界にも有名な大学に必ずなっていくと思っています。と、少し大風呂敷な話だなと思ったかもしれませんけれども、この大学を僕は自信を持って21世紀を支えていく、21世紀の核になっていける大学だと思っています。

 是非、皆さん方にもそういう思いを持ってこの大学に挑戦をしてもらいたいし、この大学に入ってこの大学を支え、また育てていく仲間に入っていただきたいなということを思っています。

 さて最後にちょっと受験の話をさせてもらいたいと思いますけれども、この大学ももう入試を6回やりました。6回やるなかでいろんな大学としても経験をして、毎年毎年入試の方法も改めてきています。そういう中で、今年はこれまで五つの学科で400人だった定員を460人、60人増やすことにしています。

 これによって一般入試の回数も増やすようにしました。また詳しいことは後でそれぞれ専門の先生に聞いて頂ければいいんですけれども、試験のやり方も高校での選択の科目また他の大学との受験の兼ね合いなどで、やりやすい受けやすいような形をとっていきたいと思っています。

 こういうような形でこの大学としても、いろいろ毎年毎年新しい試みをしていますので、是非今日このオープンキャンパスということを機会に、先生方にもどんどん質問をしてもらいたいと思います。また模擬の授業ですとか、研究室の公開だとかいろんな事をやっています。

 是非一日高知工科大学の学生になったつもりで、さまざまなとこを尋ねていろんな話を聞いてこの大学への関心を深めて頂けたらと思います。あんまり一方的に話してると時間がなくなってしまうので、この程度で話は終わらしていただいて、後、福田さんとの漫才でもいいですし、ご質問を聞いてお答えをしたいと思いますのでよろしくお願いします。
 どうもありがとうございました。

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