環境未来都市EXPO2002記念シンポジウム【環境に配慮した地域づくりをめざして】(日刊工業新聞社主催)

公開日 2007年12月07日

更新日 2014年03月16日

環境未来都市EXPO2002記念シンポジウム【環境に配慮した地域づくりをめざして】(日刊工業新聞社主催)

平成14年9月4日(水曜日)千葉県「幕張メッセ」

(パネリスト)
 橋本大二郎(高知県知事)()()(10
 堂本暁子(千葉県知事)()()(
 山本良一(東京大学教授)()()(
 藤村宏幸(荏原製作所 代表取締役会長)()(11
(コーディネータ)
  松尾正洋(NHK解説委員)
 


(司会)
 大変お待たせいたしました。ただ今より、環境未来都市EXPO2002・特別記念シンポジウムを開会いたします。本日は、大変お忙しいところ、このように大勢の方々にお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
 それでは、開会に先立ちまして、日刊工業新聞社代表取締役社長、岡村信克からごあいさつを申し上げます。
(岡村)
 環境未来都市2002・記念シンポジウムの開催に当たり、主催者を代表いたしまして一言ごあいさつ申し上げます。本日は、大変お忙しい中、このように多数のご出席を賜り、ありがとうございます、厚く御礼申し上げます。本日のシンポジウムは、きょうから七日までの四日間開催いたします環境未来都市EXPO2002の記念シンポジウムとして開催するものでございます。
 地球環境問題は、人類にとって二十一世紀最大の課題であります。特に人口密度が濃く、世界有数の工業国であります我が国にとっては、環境問題の解決はまさに焦眉の急でございまして、最大の課題となっております。この解決のためには、地域住民、自治体、そして産業界が一体となって、それぞれの地域に適した環境対策に取り組み、二十一世紀にふさわしい環境に配慮した新しい町づくりの実現と、循環型社会の形成を目指すことが必要であります。
 本日の記念シンポジウムには、自治体として環境問題に積極的に取り組んでおります千葉県並びに高知県から堂本知事、橋本知事、それぞれ大変政務ご多忙の中、ありがとうございます。また、我が国の環境政策に多角的に提言されておられます東京大学の山本先生、また、環境先進企業を代表いたします荏原製作所の藤村会長様、それぞれご出席いただき、NHKの松尾解説委員のコーディネートで、「環境に配慮した地域社会づくりをめざして」をテーマといたしまして、具体的な議論を展開していただくことになっております。
 必ずや本日ご出席の皆さんに大変ご参考になろうかと思いますので、どうか最後までご清聴、よろしくお願いいたします。簡単でございますが、開会のあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。
 
(司会)
 どうもありがとうございました。それでは、早速開会いたします。今、私どもの社長のほうからございましたように、本日のテーマは、「環境に配慮した地域社会づくりをめざして」ということで進めていきたいと存じます。 それでは、パネリストの皆様方を改めてご紹介させていただきます。
 皆様方から向かって右側から、東京大学教授、国際産学共同研究センター長の山本良一先生です。よろしくお願いいたします。お隣ですが、千葉県知事、堂本暁子様です。そのお隣、高知県知事、橋本大二郎様でございます。最後になりましたが、荏原製作所代表取締役会長、藤村宏幸様でございます。
 そして、本日、進行並びにまとめをやっていただきます、NHK解説員、松尾正洋様です。それでは、早速でございますが、松尾様のほうにバトンタッチさせていただきまして、進めていただきたいと思います。それでは、松尾様、よろしくお願い申し上げます。
(松尾)
 松尾です。きょうはどうぞよろしくお願いいたします。通常、この種の環境をテーマにしたシンポジウムとなりますと、なかなか集まりが悪くて、主催者が苦労するわけでありますが、きょうは、後ろには立ち見の方もいらっしゃるほど、大変な盛況です。
これはひとえに、全国的にもいろんな話題を提供していらっしゃる二人の知事の集客力によるものではないかと思います。また、企業の方々にとりましては、今、環境に手抜きをしたらもう社会から取り残される、競争を生き抜いていけない、そういう切実な思いも背景にあるのではないかと思います。
 さて、日本の経済、公式にはこの五月に底入れをしたというふうになっております。しかし、業種、地域ごとに見ますと、そことはほど遠いのが現状ではないかと思います。今まで頼りにしておりましたアメリカ経済、この数カ月、大変な息切れ状態であります。とりわけ、今週に入ってからは、世界同時株安といった大変な事態となっております。
 九月は中間決算の時期でありますが、とりわけ金融機関にとりまして、これだけ株価が下がりますと、なかなか決算が困難であるという事態になっているのではないでしょうか。こういった状況を打開するためには、国の強力なリーダーシップ、民間企業の旺盛な意欲、そして地域経済の特性を生かした独創的な取り組みが欠かせないところだろうと思います。
 きょうのテーマであります環境問題、循環型の社会を目指す試みも、国、地方自治体、企業、それからNPO、NGOといった方々が一体となって、相互に協力、刺激を与えあわなければいけない状況ではないかと思います。
 たまたま今、南アフリカで開かれております環境開発サミット、きょうが最終日であります、恐らく間もなく採択されるんでありましょう政治宣言を見ますと、環境破壊をどう防ぐかということが人類に課せられた緊急の課題であるというふうに位置づけるはずであります。
 日本としては、環境の先進国として、この課題の解決へ向けて、その先頭に立たなければならないのではないかというふうに思います。きょうのシンポジウムは、そういう大きな問題意識を持ちつつ、特に地域社会の視点から環境問題というものを考えてみたいと思います。
 幸い、環境問題に熱心に取り組んでおりまして、全国の自治体をリードする立場にいらっしゃる千葉県と高知県の両地方自治体、それから、小泉首相の主宰しております二十一世紀「環の国」づくり、このワは環境の環、わっかの環というふうに書くわけですが、環の国づくり会議の委員として活発に提言活動をなさっている東大の山本先生、それから、日本を代表する環境先進企業であります荏原製作所の会長、藤村さんにご出席をいただいています。
 得がたいパネリストの皆様方に一堂に会していただいております。大変刺激的な議論になるのではないかというふうに思います。それでは、まず、山本先生から、日本が抱えております環境問題の特質、取り組むべき方向についてお話をいただきたいと思います。では、山本先生、どうぞよろしくお願いします。

(山本)
 これからのパネル討論の前座というか、イントロダクションをさせていただきます。ごらんのように、これは日本の典型的な風景で、私たちはこういう風景をずっと守っていきたいと考えているわけです。ところが、どうかといいますと、世界は大変に環境が劣化している状況でございます。
 これはイギリス大使館の文化情報部から公表されたデータでございますが、ことしの二月から三月にかけて、たった一カ月で南極半島の、ラルセン棚氷のBが大崩壊をしてしまったわけでありまして、東京都の面積の1.5倍の氷が一カ月の間に崩壊して、これは科学者の心胆を寒からしめているわけでございます。これは、まさに我々が大変な時代を生きているということをあらわしているわけです。
 これが衛星観測で見た写真でございまして、三月二十八日の写真ですが、ごらんのように、氷が小さな氷山に砕け散って、今、解けているわけですね。それから、これもNASAのデータですが、先ほどのはイギリスの極地研究所のデータですが、NASAは、前から南極、北極、衛星観測をしているわけですが、実はこれはグリーンランドなんですね。
 グリーンランドの氷は、年間五百十億トンずつ今溶けているわけです。五百十億トンの氷が解けると、それだけでも海面の水位が0.1ミリずつ上がってくる。そういうことで、ことしの夏は特に異常気象が全世界で頻発しているわけで、ドイツはもう約二兆円ぐらいの災害に遭っている。
 そういうことで、我々が今どういう時代を生きているか。これは一日の世界の変化をあらわしているわけでありますが、一日に熱帯雨林が五万五千ヘクタール消失する、農耕地が二万ヘクタール消失する、炭酸ガスは、何と六千万トン、空気中へ出ていくわけです。
 松下電器は一日に九千トンの炭酸ガスを空気中に出している。あるいは、キヤノンは千七百トンの炭酸ガスを一日のうちに放出しているわけですね。これはもうどこの企業も同じような状況なわけです。そういうことで、その中で人類だけが一日に二十一万人ずつふえて、よその生物種は百種類から二百種類が絶滅していると。
 これは、お隣に堂本知事がいらっしゃるんですが、堂本知事は生物多様性に大変お詳しいわけでありますけれども、この生命の歴史、三十五億年が、このままのスピードで生物が絶滅すると、あと千年で全生命が滅んでしまうと。地球上の未確認種を含めた三千万種があと千年で滅びてしまうスピードで今絶滅が進んでいる。
 これを人間の寿命に直すと、人間の寿命を百年とすると、「あなた、あと十五分で死にますよ」というところまで来ているわけですね。だから、我々はものすごく慌てふためかなければいけないところへ来ているにもかかわらず、毎日毎日を根拠なき楽観状態で、無責任に過ごしているというのが、我々の状況なわけです。
 そういう中で、先ほど松尾さんのほうからお話がありましたように、日本経済の長期低迷をいかに脱却し、再生させるか、この問題があるわけであります。
 これは各国の資源生産性を比較した表でございますが、日本は年間五兆ドルを、二十六億トンの資源消費によって、そのお金を稼いでいるわけです。これは、資源生産性として見る、すなわち資源投入当たりのGDPを見ますと、世界最高水準なんですね。すなわち、日本は極めてむだのない資源生産性の高い国であるわけであります。
 ところが、皆さん、今、私たちは不況だ、不況だ、あるいは経済が低迷しているといって、チョウヤを上げて、2%の経済回復をしたいと考えているわけですね。そうすると、世界で一番資源生産性の高い国が2%の経済成長をするということは、この世界最高水準の資源生産性をもってしても、さらに五千万トンのマテリアルフローを引き起こしてしまう。
 こういうことが許されるのか、可能なのか、よくよく考えてみなくちゃいけないわけで、答えはただ一つ、不可能ですね。そんなことはできっこない。今、全世界的に我々は環境悪化の中を生きているわけですから、日本だけがさらに環境負荷を増大させる中での経済成長というのは、もう到底許されない。
 ということは、全面的に産業経済のあり方を徹底的に変えなければいけないというところへ我々が来ているわけでありまして、これをグリーンエコノミー革命とも、環境経済革命とも言っているわけです。そこで私たちは何をやらなければいけないかというと、これはもうはっきりしているわけで、三つの方向で私たちは産業経済活動を見直さなくてはいけないということで、一つは脱物質化であります。二つ目は物質の代替化であり、三つ目が脱炭素化ということをやっていかなければいけないわけであります。
 バイオも、IT技術も、サービス化も、全部この脱物質化、すなわち、我々が資源エネルギーを最も徹底的に有効に活用していく、環境負荷を下げながら、サステナブルバリューをつくっていくということに我々が全力を上げなくてはいけない。恐らく、きょう会場の皆さんは、全面的にこれに同意していただけると思うんですね。
 そこで、先ほどご紹介がありましたように、昨年から環の国づくり、さらには環の国くらし会議というのが、環境省から内閣の主導のもとに行われまして、まず国民に対して啓蒙・普及をしようということで、これは、環の国くらしは、こういう暮らしであると。
 これは、漫画家の笠松先生が、三カ月にも及ぶいろんな議論をまとめた結果をここにかいているわけでありますが、要は、なるべく長距離移動の場合には鉄道を利用していくとか、さらには、住宅は環境共生住宅であり、我々が日ごろ使うテレビとか冷蔵庫とか、これも徹底的な省エネ、エネルギー効率の高い物を使っていくとか、循環システムにしていくとか、さまざまなアイデアがこの絵に盛り込まれているわけです。
 ですから、まず私たちがやらなければいけないのは、環境に配慮された製品、材料、技術、建築、そういうものを徹底的に社会に普及させる必要がある。今、一番有名な例は冷蔵庫でありまして、十年前の冷蔵庫に比べると、現在の冷蔵庫はエネルギーの消費が三分の一で済むわけですね。今、リサイクル法ができて、リサイクルシステムができてますから、十年前の冷蔵庫を、新しい、非常に環境に配慮された冷蔵庫に買いかえたほうが、はるかに環境負荷が下がる。
 すなわち、賢い買いかえ運動を徹底的にやらない限り、我々は社会全体の環境負荷を下げられない、こういう状況になっているわけです。そこで、経済産業省は、産業構造審議会が、今後、循環ビジネス、あるいは環境ビジネスを振興していかなければいけない、すなわち、エコビジネスのマーケット、百兆円規模のマーケットをつくり出して、その中で産業経済活動をグリーン化していこうと。こういう戦略、報告書が出まして、来年の前半には、この環境ビジネスを振興するための新規立法を経済産業省はお考えであると。
 そこで、きょうの話題でございますけれども、それでは国はやるべき方向ははっきりしているわけでありますが、自治体が何をすべきかといいますと、私はまさに今、地方自治体が相互行政を実行できるというふうに考えております。
 ぜひ、まず自治体が国を先取りする形で、例えば、産業廃棄物に、ある都道府県が団結して課税をする、あるいは一般廃棄物についても課税をする、あるいはエコ製品、エコ技術に対して、それを優先的に公共事業で調達をする、あるいはそういうエコブランドの共通化をする等々、さまざまなことができると思います。
 それで、一つ、海外の見本というか、これが参考例になると思うんですが、ヨーロッパでは気候同盟というのがつくられているそうなんですね。これは、中世ヨーロッパにおいてはハンザ同盟というのがあったのは、皆さんもご存じだと思いますが、要するに、港を持つ商業都市が同盟して繁栄を守ると。
 同じように、気候同盟という同盟をつくって、2010年までに炭酸ガスの放出を50%削減するとか、特定フロンは全廃するとか、さまざまなそういう共通の目標を掲げて、お互いにさまざまな交流、情報交換、助け合いながらこれを実行していこうということをやっているそうでございまして、四百二十三都市がこの同盟に加わっていると。
 では、どういうことをやっているかというと、一つは自然エネルギーの導入ですね。それから、ドイツのブッパタール研究所が開発したリースト・コスト・プランニングという、LCPと言っておりますが、要は、コストが最小になるような仕方で持ってエネルギーを供給する、環境負荷の低いエネルギーを地方自治体に供給していく。すなわち、エネルギーの使用量をふやすという方向ではなくて、減らす方向で、しかも、このサステナブルバリューをつくり出していくと。
 日本でもエスコ事業が少しはやってきたわけでありますけれども、こういうさまざまなアイデア、技術を組み合わせて、先ほど挙げたような2050年、50%炭酸ガス削減という、地域の目標を達成していこうという動きが出ているわけでございます。
 ぜひ、日本でもさまざまな同盟、地方自治体、コミュニティの同盟で、これは、日本国内の同盟に限らず、今後、例えば中国の都市と同盟するとか、地域と同盟するとか、さまざまな同盟によって、経済を活性化しながら、なおかつ環境負荷を改善していくという動きを、ぜひこの千葉県と高知県は率先垂範をしていただきたい、こうお願いして私の話を終わりたいと思います。ご清聴、ありがとうございました。
(松尾)
 どうもありがとうございました。地球環境問題といいますと、どうも皆さん、私も含めてでありますが、基本的な認識としてやや中長期の課題、五年、十年ぐらいのスパンのテーマではないかという意識がおありではないかと思いますが、山本先生は、そういうのは根拠なき楽観である、もっと慌てていいのではないかという基本的なお考えでご説明されたわけであります。
 今の山本先生のお話を踏まえて、お二人の知事に、基本的に地球環境の問題をどういうふうにお考えになっているか、それぞれの県としてはどんな方向で環境問題に取り組んでいらっしゃるか、その辺のお話をぜひお聞きしたいと思います。それでは、堂本知事から、よろしくお願いします。

(堂本)
 早速、学者の山本先生から、政治家といいますか、行政の長といいますか、知事のほうに玉がぼーんと投げられてきました。これをしっかり受けとめなければならないと思っています。
 まず、司会のほうからもございましたように、きょうはヨハネスブルグで開かれております環境と開発に関する国際会議の最終日ということなので、ちょっと地球レベルで、今、先生のお話にもあった、地球環境の問題の推移を、本当に一分ぐらいで振り返りたいと思います。
 1972年、これが初めて国連人間環境会議、これはストックホルムで開かれました。このときに、水俣病の方たちがタラップをおりたとき、もう本当にヨーロッパの人は驚いたわけです。当時、日本は公害列島と言われたような時期でございまして、初代の大石環境庁長官が、日本は、自分の国の山河を壊し、そして公害の列島になった、これを回復することこそが仕事であるということを高らかに言われまして、満場の拍手を受けた。
 しかし、それ以後の日本がどうなったかというと、全くそれが実行されないまま進んだというふうに私は思います。随分改善はされました。公害国会というようなものも開かれ、随分といろんな努力はされたんですけれども、それでは実際に、当時、大石さんがおっしゃったように、全く公害のない、そして環境に配慮する国として日本が生まれかわっていったかというと、72年からの三十年間にたどった道は必ずしもそうではなかったのか、ではなかったと。
 しかも、それは日本だけではなく、あらゆる国が、事によったらそうだったのではないかとすら思います。80年代に入って、アメリカのカーター大統領ですとかフランスのミッテラン、それからゴルバチョフなど、日本だったら竹下総理なんかが、本当に地球環境に危惧を抱いた世界のリーダーが、世界環境会議というのを初めて、ノルウェーのブルントラントさんという女性の総理大臣がイニシアチブをとった、そしてリオの地球サミット、もう本当にこれは二十世紀最後のサミットだから、ここで決めなければこの地球は危ないという危機感で、実はリオサミットが開かれました。
 私はその間、国際的な議員の連盟の中で、生物多様性の部分を担当することになるんですけれども、今でも非常に印象深く思っておりますのは、ブルントラントさんが、大変立派なレポートを書かれて、このサミットに期待をされるんですが、もう既に最初から南北の対立がありました。
 南の国は、北からの技術移転、それから資金援助というようなことを言っていたわけですけれども、それでもその場では気候変動枠組み条約と生物多様性条約が採択された。今お話のあった南極の氷の問題、これは温暖化、そしてオゾン層の破壊という、言ってみれば、もともと地球の上には大気はなかったわけですから。
 この水の惑星は大変不思議な惑星で、四十億年近く前に生命が誕生してから、三十億年ぐらい光合成を微生物が、そして水の中の生物が繰り返している間に、オゾン層ができ、大気ができていくと。そういうことで初めてこれだけ豊かな生態系を持つ、そして陸上の生物の生き方が可能になったわけだと思います。
 しかし、それを、大変幾何級数的な速さで人類は破壊を始めてしまった。そのことに対して、私はよく地球が風邪を引いちゃったと小学生に話すときにはいつも言うんですけれども、温暖化が始まってしまったこの地球の、何とか温暖化を防ぐために、どうやって大気、オゾン層、CO2だけではありませんけれども、あらゆる形でこの温暖化をとめることができるのかという条約が一本できました。
 もう一つは、もう本当に、多分、地球の歴史の中で、地球の寿命が百億年と言われてますが、その半分ぐらい来ている地球の中で、今、一番豊かな生態系、生物多様性の中で生きているとも、生物の専門家は言ってますけれども、その生物を守ろうということで、遺伝子のレベル、生物種のレベル、そして生態系のレベルでどうやって守っていけるかという条約もできました。
 しかし、そこではっきりとした数値目標を合意することができなかった。それで、その次の条約の会議で、気候変動枠組み条約は、ベルリンの会議でまた、これは数値目標ができなかった。ベルリンの会議で決めたことは、COP3というのは京都で開かれるんですが、京都で開かれるCOP3では決めようということが、ベルリンで決まるわけです。
 しかし、私どもは京都にいてもう本当にはらはらしましたけれども、日本は一生懸命頑張ったんですけれども、結局、アメリカとヨーロッパの対立、あるいはインドが合意しないというような事情の中で、どうしても数値目標はできませんでした。
 次、アルゼンチンに行きました。アルゼンチンへ行ったときは、もう本当に一体これはどうなるんだろうと思うぐらい、やはり数値目標を決めることができなかった。何回もそういったことを経ながら、ついにヨハネスブルグまで十年間の歳月がたってしまいました。
 一日、二日前に、ヨハネスブルグに行っている友達から電話がかかってきて、リオプラステンのはずのヨハネスブルグが、リオマイナステンにならないといいんだけどもと。リオで決まったことが、今や前進よりも後退しないでほしい。
 あるいはアジェンダ21、これも、これの実施をどうするのかということで、実施計画ということがどんどん進んでいるように言われてますけれども、みんなNGOの人たちは、アジェンダ21、マイナステンにならないといいけれど、そう言っているということです。
 この三十年間を見てみますと、本当にどんどん地球の環境は悪化していながら、そして、最初にイニシアチブをとった政治のリーダーたちが舞台から、亡くなった方もいるし、姿を消した人もいるし、健在の人も、いろいろですけれども、今、残念ながら、そういった形で本当にリーダーシップをとっている人がいるのか。
 リオにはお父さんのブッシュが来ました。片方の、気候変動のほうにはサインをしたけど、生物多様性にはアメリカはサインしなかった。なぜなら、アメリカの薬品業界との問題で、開発が、バイオテクノロジーの世界で規制されると困るということで、むしろ、そういった都合でブッシュはサインしなかった。今度は、息子のブッシュは、ヨハネスに来もしません。
 日本の総理大臣は、リオにはいろいろな事情で行かれませんでした。今度、小泉さんは行きました。そのちょうど立つ日に千葉へ来て、「これからですね」と言ったら、「アメリカも何とか京都議定書を批准する方向だ」と小泉さん自身はおっしゃってましたが、本当に、果たしてこれから国際的な合意ができるのかどうか、これは大変不安なところです。
 世界のリーダーが幾らリーダーシップをとって、声を上げてスタートしたことでも、だんだんそれが細分化されて、そして具体的な相談に各国のレベルでなると、これが合意しきれない。日本の国内でも同じようなことがたくさんありました。こういうようなことだと、一体だれが本気でこの地球の未来を守るの。
 今、山本先生は、地方自治体に期待するところ大とおっしゃいました。私は本当にそうかなと思います。自分が知事になったから言うんじゃないですが、地方自治体、もっと言えば、私は基礎自治体である市町村が、本当に一つずつの市町村がその気になって、そして、そこに住む地域の住民が本気でそのことを考えるようになると、私は変わっていくのではないか。
 もう世界の大統領とか総理大臣に期待するのではなくて、この地球上に住む市民の一人ひとりが本気になって変えよう、そうしなければ、私たち人類だけではなくて、この地球全体がもう、まあ地球は続くかもしれません、しかし、生命はいずれは、さっき山本先生がおっしゃったように、非常に近未来に絶滅の道を歩まなければならないことになるのではないかというふうに思います。
 一言だけ千葉のことで申し上げますと、知事になって一番驚いたのは、廃棄物の問題です。もう来る日も来る日も、あちこちに廃棄物が捨てられる。それも不法に投棄されると。これを何とかとめようということで、二月に、不法に投棄される、自社処分というジャンルの物ですけれども、条例をつくりました。
 このときに何と大変だったことか。上位法である法律よりも厳しいものを県でつくることが大変に難しいということを発見しました。これは、国の行政より先に地方の基礎自治体が、ですから、千葉の場合で言えば、今、市町村もそれぞれ条例をつくろうとしています。私は、県の条例が市町村の条例の邪魔をしてはならないというふうに考えていますが、今度、都道府県と国の関係になったらどうなのか。
 今、気候同盟というお話が出ましたけれども、私ども、そういう形で、どうやって下からの改革を、私は「緑の行革」という言葉を国会議員のときから使っているんですが、それはすべての政策を環境の視点から見直す、建設の政策も、福祉の政策も、そして教育の政策も、すべてを緑、緑と言うよりも環境と言ったらいいですかね、環境の視点で見直すと。
 その同じことを千葉県にも持ち込んでまいりまして、今、緑の視点からの行政改革、そして政策立案、県民の視点からの緑の政策立案、それは福祉や生活の面でもそうですし、企業の産業の面でも前向きに、プラスの面でも産業が、これからエコロジーの面での発展をしていくような、そういった県にぜひ展開をしていきたいということでやっております。
 ちょうど十分、もしかしたら超したかもしれないので、私も橋本知事も放送局出身なので、時間には厳しいはずなのですけれども(笑)。どうもありがとうございました。
(松尾)
 それでは、続いて、橋本知事に環境問題について基本的にどういうお考えをお持ちなのか、そしてそれを受けて、高知県としてどんな取り組みをなさっているのか、その辺のお話をぜひお願いしたいと思います。

(橋本)
 高知の橋本でございます。冒頭、司会の松尾さんのほうから、パネラーの集客力でこれだけお客さんが集まったのではないかという話がありましたが、きっと中には、私は動員組だとか、会社や役所に言われたという人もいるんじゃないかと思いまして。ただ、そういう方にも来てよかったなと思っていただける話がしたいと思いますけれども、それだけの話ができるかどうか心配だと思いながら、ここに座っております。
 本題に入りますけれども、二十世紀というのは、大量生産を大量消費で支えていく、それを大量廃棄して、経済を拡大し、富をふやしていく、こういう時代でした。それを進めていくうちに、先ほど堂本さんが言われた水俣などの公害問題が起きましたが、そのときはまだ地域での問題でしたから、これを何か問題が起きてから治療するというやり方で処理をしてきました。
 しかし、ここへ来て、CO2による地球の温暖化だとか、また熱帯雨林の伐採等による世界的な異常気象というような、地球規模での環境問題が起きてきました。こうなると、従来の公害問題のように、何かが起きてから処理をしていくという治療型の発想では間に合わない。起きる前に、そもそも環境に負荷を与えないような素材をつくり、活用し、またごみなどが出ないような仕組みをつくっていくという、予防型の仕組みをつくらなくてはいけないというのが、今、言われている資源循環型の社会づくりだと思います。
 この資源循環型の社会づくりをしていくときには、やっぱり幾つかの問題点があろうかと思います。一つは、先ほど言いました、公害と言うときには、企業名を出すのは失礼ですが、当時のチッソだとか昭和電工だとか、相手方、加害者の企業がはっきりしていました。戦うべき相手が、ある意味でははっきりしていました。
 しかし、地球環境の問題は、私たちが毎日毎日暮す中での、自動車に乗ったり、電気をつけたりということが積もり積もっての問題ですから、一人ひとりが加害者であって、なかなかだれが敵だ、相手だということが見えにくい問題、それだけに毎日毎日の暮らしも含めて、みんなが意識を切りかえないといけないというところが、大きな違いであり、難しい点だと思います。
 また、環境の大切さというのは、多くの人が理解をするようになりました。けれども、環境のことに配慮するのには、まだまだ余分なお金がかかります。ですから、環境は大切だけれども、それは経済的に余裕が出たらやろうねというような意識の企業なり行政なりがまだまだ多いのではないかということを思います。
 つまり、少し難しい言葉を使えば、経済の仕組みの外に、外部経済として環境というものが位置づけられている、これを内部経済化していく、経済の仕組みの中にいかに取り込んでいけるかどうかということが大きな課題ではないかと思います。そういうことで、高知県での経験を言いますと、高知県でも木の文化ということを言って、もっと木を使っていこう、見直そうという取り組みをしています。
 そういう中で、県内の森林組合がつくりました、集成材という間伐材などを寄せ集めた木材ですけれども、この集成材を使った事務机を県庁の事務机としてもっとたくさん入れていこうということを言いましたが、値段を聞いてみますと、コクヨさんなど、そのスチール製の事務机で購入している物が二万三千百円だったのに対して、この集成材の物は九万千三百五十円と四倍近い価格でした。もちろんそのコストダウンの努力はしていますが、そういう問題がありました。
 また、本県の中に、馬路村といってユズの生産で非常に有名な村がありますが、ここが間伐材を薄く切って、それを三枚ぐらい重ね合わせて、プレスをして、トレイやお皿をつくるという、エコアスという会社をつくっています。その製品を見たときに、そのトレイを、もう県内のすべてのスーパーや百貨店などに使ってもらって、発泡スチロールの石油化学製品にとりかえていけば、これは環境の面でも大きなアピール効果があるのではないかと思いました。
 それで、少々の支援だったら、行政でどっと支援してもいいなと思いました。ところが、値段を聞きますと、発泡スチロール製の物は、一枚一~二円でつくれますけれども、この間伐材のエコアスの物は、まだつくり始めですから、一枚二十円も三十円もかかる、二十倍、三十倍というもので、こういう価格差をどうしていくかというのが、環境を内部経済化をしていく大きな課題だと思います。
 そのためには、やはり価格を下げるための技術開発ということが一つ必要です。また、環境に優しい製品をもっともっとみんなに使ってもらって、マーケットを広げることによって、需要を拡大することによって、値段を下げるということが、もう一つ必要です。そして、三つ目には、行政の手助けということで、そこには助成という制度、支援の制度、また税制を使うというやり方、そして条例を使うというやり方の三つがあるのではないかと思います。
 いずれにしろ、こういうことをやっていくためには、産学官民、つまり、企業と行政と研究者と消費者が入って一緒に取り組んでいくことが必要だろうということで、おととし九月に高知エコデザイン協議会という会を立ち上げました。今三百名余りの方が参加しておられます。
 その中で、エコ産業大賞というような形で、新しいエコ製品を開発し、それを評価していくというような仕組みもつくっておりますし、皆様方にお配りした袋にも多分入っていると思いますけれども、エコデザイン協議会で、そこに参加する企業がつくっているエコ商品をも、一つのカタログとして出して、市場の拡大をしていこうというような取り組みをしています。
 また、そのマーケットの拡大ということで、一番大切なことは、去年から始まりました、国なり地方の自治体なりによるグリーン購入をいかに幅を広げていくかということであろうと思います。高知県の場合は、去年、国が百一品目で始めたのに対して、小さなこだわりですけれども、木を使った名刺ですとか、名札という物を入れて、百三品目で始めました。この木の名札や名刺は、既に国の品目にも入れられて、今は国が百五十品目になっています。
 そこで、ことしからは、後で藤村さんからもお話が出ると思います、バイオマスの一つのとっかかりになります、ペレットストーブだとかペレットボイラーというものをこの品目に入れて、百五十三品目でグリーン購入をやっております。
 将来的には、今、県で取り組んでおります、次の回にお話をしようと思います、ISOの認証を受けた農産物でございますとか、また、このエコデザイン協議会のエコ産業大賞をとった商品などを、こういうグリーン購入の対象に入れていきたいなということを思っています。
 もう一つが行政のかかわりでございますけれども、助成の制度、支援制度というものは、補助金などは多岐にわたりますので、一つひとつご説明をするのは省かせていただきます。また、条例のことは、これも二度目のお話のときに、四万十川条例という地域づくりの条例のお話をしたいと思いますので、次に回します。
 残るは税制です。税制の場合、環境での税制というのは、本来ならば、炭素税だとか、環境税だとかと言われるように、環境に負荷を与えている企業から税金をとって、その負荷を下げている企業に援助をしていく、プラスマイナスゼロにしていくような仕組みが望ましいだろうと思いますが、こういうものはなかなか、県だけではできないいろんな問題もございますし、県だけということよりも、国全体で早く取り組まなければいけないことだと思います。
 では、県でできることは何かといいますと、例の地方分権の中で進んでまいりました法定外目的税とか、法定外普通税というものをいかに使うかということで、これに関して、本県では、環境にかかわるもので水源税、水源涵養税というようなものを、今、考えて検討しております。
 それはなぜかといいますと、本県は、県の面積の84%が森林という全国一の森林県でございます。ところが、外国からの輸入木材などによって、木材の価格が非常に低迷し、森林の手入れがほとんど行き届かなくなりました。
 このために、山に水を蓄える、根っこのところに水を蓄えるというような機能ですとか、また、炭酸ガスを吸って酸素を出していく、地球の温暖化に最も効果的なこの森林が果たして言える公益的な機能というものが、どんどん弱まってきています。
 このように、森林の問題というのは、本当は国民全体、県民全体の問題なんですけれども、これを今いただいている税金で何かやろうとすれば、都市部の住民の方からはなかなか見えない仕事になりますので、それは行政がやることで、ご勝手にということで終わってしまいます。
 そうではなくて、みんなに、この森林の問題というのは自分たちの問題だという、当事者意識を持ってもらうためにはどうするかということで、広く薄く県民全体に負担をしてもらうような水源税、森林の保全を考えていくような税が考えられないかと思いました。
 これに対しては、そういうことをしてもどれだけの仕事ができるのというご意見があります。これに対しては、私は、税というものの見方を一度変えてみたらどうだということを言っています。というのは、これまでの税金というのは、何か新しいサービスをするために、それに必要な税金を集めてくる、つまり量を額として税金を見ていました。
 そうではなくて、税金というものを、先ほど言いましたように、これまでなかなか目に見えなかったものをみんなに意識をしてもらう。この森林のことで言えば、森林と都市部の人を結んでいく、その結び目としての税、そういう質的な税としての効果というものを見ていったらどうかということを言っています。
 また、この森林税、水源涵養税については、使い方も不明確ではないか、無責任ではないかという言い方があります。これについても、私は、これまでの税というのは、国なり地方自治体なりが勝手に考えて、そして県議会で通して、こういうものができましたからと言って、いただいておりました。
 そうではなくて、つくる過程から、その使い方をどうしていくのということを県民を交えて議論をしていく中で、森林の問題というのは、自分たち一人ひとりの問題だということをみんなに気づいていただけるのではないか。そういうことにこれからの新しい税制ということは働かすべき役割があるのではないかということを思っています。
 最初に、資源循環型の社会というものが、公害時代の環境問題と大きく違うという点として、相手方がはっきり見えない、つまり、私たち一人ひとりが加害者だということを言いました。森林の問題というものを、本県の事例として挙げましたけれども、自分たち一人ひとりにかかわる問題で、なかなか見えていないものがいっぱいあると思います。
 そういうものをどうやって気づいていただくか、そのための仕組みに条例や何かをどう活用していくかというのが、行政として、私たちが現場でやらなければいけない仕事かなということを思っております。とりあえず。
(松尾)
 ありがとうございました。それでは、最後になりましたが、藤村会長にお願いいたします。荏原製作所、最近は荏原というんでしょうか、ポンプメーカーというイメージが我々は強いんですけれども、最近は手広く環境関連の機器に手を広げていらっしゃいます。そういう分野へハンドルを切られると言いますか、エンジンを大きくされた理由なども含めて、環境問題についてどんなお考えをお持ちなのか、ひとつお話をいただきたいと思います。

(藤村)
 ご紹介にあずかりました藤村でございます。私たち、今よく言われている言葉でございますけれども、グローバル・トリレンマに直面しておると。これは何かと申しますと、今、世界の人口というのは、六十二億と言われているわけですけれども、七千万ずつ毎年ふえていると。先ほど山本先生からもお話がございましたけれども、今、人類だけは爆発的に増加しております。
 しかも、南北問題というんですか、貧富の差が拡大しておりまして、こういう貧富の差とか、増加する人口問題を解決しながら、みんなが豊かになっていく、その必要があるわけです。それが、持続可能な成長になるために、我々は何を解決しないといけないか。これは言うまでもなく、成長するためには資源が必要です。
 ところが、その資源は、主として地下資源を使ってきたわけでございますけれども、今、枯渇の状態に入りつつあります。半導体に必要な銅は、もう既に七〇%、地下資源としては使いきっておりますし、金とか水銀とか、多くの地下資源は枯渇状態にございます。エネルギーに関しましても、石油、石炭、いずれにしても有限でございます。
 そして、また、そういう資源を加工し、あるいは使用するときに老廃物として排出している物、これが環境を悪化させているというふうに思われます。したがいまして、この持続可能な成長といいますものは、資源の枯渇問題、環境問題を同時に解決していく道を進まなければいけないということになるわけです。
 この解決の方法として、資源を徹底的に使う、そして有効に使って、廃棄物としての、いわゆるむだな物として捨てる物をできるだけゼロに近づけていこうというような考え方が生まれるわけでして、これを私たちはゼロエミッション・アプローチと呼んでいるわけです。
 従来の環境産業は、明らかに汚した物をきれいにしまして捨てるということで、環境をきれいにしてきたわけでございますけれども、そういう持続可能な社会を形成する中での環境ビジネスといいますのは、できるだけ物を大切に使う、エネルギーも使わない、資源もできるだけ省資源で、そして長もちさせるというスタイル、これが環境産業のコンセプトになるわけでございます。
 いろんな努力をいたしましても、それでも私たちの生活を見ましても、どんなに節約し、あるいはリサイクルいたしましても、廃棄物として出さざるを得ない物がございます。これは、企業活動においても同じでございまして、自分ではどうしようもない老廃物、しかし、それは他の産業、あるいは他人にとっては資源として使える物があるわけでございまして、他の系に使える物に転換すると。
 そうする大きな輪、大きなリサイクルによって、社会全体の廃棄物の発生をゼロに近づけていこう、そういうビジネスが新しい環境産業であろうと認識いたしております。具体的にご説明しますと、これは、一つはクリーンなエネルギーを利用する、これは自然エネルギーが主体になるわけですけれども、クリーンなエネルギー、あるいは環境に優しいエネルギーを使っていこうじゃないか、そして資源のほうもできるだけ再生資源を使う、あるいは環境に負荷を与えない資源を使っていくということになります。
 また、そこでつくられる物も、あるいはつくられた物も、資源を大切に、あるいはエネルギーを消費しない、高効率な、そういう製品とかつくり方でなければいけない。生活の面でも同じようなことが言えるわけです。そうしても、廃棄物になる物、これは他の系において有価物に転換して再使用する、リサイクルするという過程が必要なわけですけれども、このためには転換技術、新しい物質、他の系で使える者に転換する技術が必要であるわけです。
 その転換した技術を有効に使うためには、先ほど橋本知事からもお話がございましたように、グリーン購入もそうでしょうし、使用者と生産者、あるいは地域全体が連携を持って、あるいは産業間ですと、A社とB社が一緒になって、老廃物を有価物にして再使用していくというような、そういう連携の必要、輪をつなぐ、そういうシステムが必要になるわけです。
 そういうようなシステム、これが今後の新しい環境ビジネスの視点でございます。橋本知事が先ほどおっしゃったとおり、これは市場経済の中で、非常に難しい面を持っております。といいますのは、環境に関する仕事は、外部経済として扱われておりまして、市場経済の中では、競争しない分野でございます。
 したがって、そういうことでございますと、環境産業が市場経済の中でプロモースされないことになってしまうわけでございまして、外部経済の内部化ということが必要になるわけです。そうしますと、それを実施するためには、どういう基準で実施できるのか、その評価方法はどういうものなのかということになります。
 今の経済といいますのは、よくご存じのとおり、イニシアルでほとんどが売買されております。しかし、一部には、もう既にライフサイクルコストで評価されている分野も出てまいっております。しかし、環境負荷を市場価格、評価の中に組み込んでの活動という、あるいは評価というものはないわけでございまして、しかし、それがなければ、経済と環境を市場経済の中で確立することはできない。
 法律として強制的にコントロールすることはもちろんできるわけでございますけれども、あくまで世の中、市場経済でございますし、市場経済のいいところもあるわけでございますので、できることならば、市場経済で評価できる基準を考えたいものだというふうに思っておりまして、LCC、いわゆるライフ・サイクル・コストに環境負荷をコスト化したものを加算して評価してはどうかという提案をいたしております。
 これは、難しいのは、環境に負荷を与えたものをどのように金銭に換算するかというところでございまして、炭酸ガスが出ますと、これが温暖化にどう影響し、生物系、人類にどういう悪影響を及ぼしているか、金銭に換算することは大変難しゅうございまして、私どもは、有害物質、いわゆる環境に負荷を与えた物質をもとに返す費用、いわゆる無害化する費用を限界費用として加算してはどうかというふうに考えております。
 これは一つの仮定で、工業的製品が主体でございますので、計算できるわけでございます。例えば、ダイオキシン1キログラム、これを無害化いたす費用は百九十億円というふうに計算しております。炭酸ガスは、1キロ固定化する費用は、5.5円でございます。
 こういう費用をLCC、いわゆるライフ・サイクル・コストに加算いたしまして、そして、このものは環境を含めてどういう価値があるかという評価をいたしたいというふうに思っております。ダイオキシンにつきましては、私ども、2000年3月23日に藤沢工場におきまして多量のダイオキシンを引地川に排出するという事故がございまして、地元の皆様方、そして社会に大変に不安とご迷惑をおかけいたしました。深くおわびいたしております。
 同時に、その信用回復のために、設備あるいはルール等を再チェックいたしまして、万全を期する努力を重ねております。風化しないために、3月23日を自分の行動を再チェックする記念日として設定いたしておりまして、毎年、改めて初心に返って、企業活動を続けております。この場に、おわび申し上げます。
 きょうは、地域社会づくりに関連したご報告でございますので、こういうトータルLCCとして評価して、最も意義のあるプロジェクトとして、バイオマス産業の育成と地域づくりについてお話ししたいというふうに思っております。
 この二十一世紀は、石油とか石炭というようなオイル・リファイナリーを中心として、いろんな産業が発達し、私たちは大変快適な生活をすることができるようになりました。その反面、その生産、使用の過程、廃棄の過程におきまして、大変な環境に対する負荷を与えてまいったわけです。これは、先ほどのお話のように、温暖化も一つの例だと思います。
 私ども、二十一世紀は、バイオマス、これは再生資源でございますので、バイオマスを中心とした産業が、それなりの生育、いわゆる発展をしなければいけない時代であろうというふうに思っております。ご存じのように、バイオマスは、石油・石炭と同じ成分でございますので、当然、化学反応あるいは生化学反応を通じまして、石油製品でつくられている物は、一応製作することができます。
 そして、それを、もしTLCCというような評価基準で世の中に流通することができるならば、非常に大きな産業として将来発展するであろうというふうに思います。しかも、このバイオマスの量は、世界的に見ますとかなりの量がございます。この表は、上段のほうは、日本のバイオマス量を算定いたしております。大体、年間二億七千万トンのバイオマスの資源を私たちは持っているわけです。
 この量は、日本の一次エネルギー消費量の12%に相当いたします。したがいまして、これを、単純に言いますと、約12%はバイオマス産業が受け持つ分野であるというふうにも言えるわけでございます。しかも、そのバイオマスは育成する、いわゆる栽培するということもできるわけでございますので、そこの栽培を含めます、あるいは収集を含めますと、かなりの雇用を創出することができます。
 これは福山市、私は福山出身なんですけれども、四十年に農林業に携わった人は、あの地域で七万人いらっしゃいました。つい最近調べましたら、一万人を切っております。六万人の人は、これは土建とか、あるいは第三次に携わっていらっしゃるということになります。したがって、このバイオマス産業といいますのは、雇用に対してもかなりのインパクトを与えるものだと思っております。
 また、世界の場合は、世界の人類のエネルギー消費量というのは、四百十エキサジュールと言われているんですが、その七倍がバイオマスで収集できる、いわゆる置きかえることができるぐらいの多量なバイオマスがあるというふうに言われております。
 このバイオマスの問題点は、材料の収集・運搬に多量の労力とエネルギーが必要であるというところでございますので、どうしても、バイオマス産業というのは、地域に密着した、独特の地域固有の文化とか、あるいは資源とか、そういうものと密着した産業になるであろうと。したがいまして、海岸につくられました大型産業ではございませんで、比較的小さな産業であるということになります。
 こういう農村と都市の接点において、バイオマスを資源とした新しい産業の創設と育成というのが、これが私たち、地元あるいは行政の皆様方と知恵を絞りながら、その地域独特の産業を育てていくというところで貢献できるならば、大変にありがたいというふうに思っております。それではこれで、時間もございませんので終了いたします。
(松尾)
 ありがとうございました。自分の会社のダイオキシン流出事故にも率直に触れていただきました。さて、先ほど来、両知事からは基本的な条件の環境行政の取り組みの姿勢についてお伺いしたわけでありますが、さらに踏み込んで、じゃあ具体的にどんな取り組みをやっていらっしゃるのか、その辺に話を進めていただきたいと思います。
 橋本知事は、先ほどグリーン調達に力を入れているんだというお話でしたが、先日、高知県のホームページを拝見しましたら、確かにグリーン購入の品目ごとのリストが載っているんですが、感心しましたのは、その品目については、例えば、高知県庁では購入しなかった、環境物品を購入しなかった理由も小まめに掲示されている、大変きめ細かい対応だなと感心したことがございます。その点を含めて、さらにお話をお願いいたします。では、橋本知事からどうぞ。

(橋本)
 先ほどグリーン購入の話の中で、ISOを使った農産物の販売のお話をいたしましたので、これをまずお話ししてみたいと思います。ISOに関しては、高知の県庁舎自身も既に、14001番ですが、ISOを取得をして、節約効果が目標のものではございませんけれども、年間四千万ぐらいの節約効果が上がっています。
 また、先ほどお話をした、エコデザイン協議会でも、県内の企業がISO14001番を取る、その支援をするというふうな取り組みもしております。そうした中で、農業にもこのISO14001番が活用できないかということを考えました。
 というのは、本県は、施設園芸、ハウスを使った園芸作物では全国でも有数の県でございます。ところが、中国からの輸入野菜などに押されて、こういう園芸産品も、ここ四年連続して、価格的にも数量的にも前年度割れをしております。
 一方で、中国からの輸入野菜の残留農薬の問題などが出ているということを考えますと、ただ単に無農薬の基準が云々ということよりも、ISOそのもので、つくり方の仕組みそのものを情報公開もし、消費者の皆さん方に、環境への負荷の少なさというものを、手続き的に説明責任を果たすというやり方もあるのではないかと思いました。
 おととし、この環境保全型の畑作振興センターという、有機農業などの研究をやっているセンターが、まずISO14001番を取りました。農業者それぞれが取ることは、手続き的にも、また費用負担的にもとても無理でございますので、この環境保全型の畑作振興センターが、今度は認証承認をしていくという形で、今九つの農業生産法人と、三百四十戸の農家が、この畑作センターに連なる形でISOの取得を目指しております。
 一方で、こうやってできた野菜だとか果実や花を買って、それを販売をしていく農協の組織に園芸連というものがございます。この園芸連も、ことしの六月、ISO14001番を取りました。この園芸連で売る物を運んでいく県内の運送業者が主に二社ございます、この二社にも14001番を取っていただくということで、生産から流通・販売まで含めたISOの輪で、ISOの鎖でこの農産物をつないでいく、そのことによって、農産物の付加価値なり、消費者への安心情報にできないかということをやっておりまして、こういうことがこれからの地域づくりには必要な視点ではないかと一つ思っています。
 それから、条例のことで、四万十川条例というお話を先ほどいたしました。私は知事になって数年たったときに、四万十川対策室というものをつくって、四万十川流域というものを中心に、まず、新しい環境をテーマにした地域づくりを進めたいと思いました。それで、清流四万十川総合プラン21というプランをつくって、その中で、例えば、水質浄化のための新しいシステムとして、四万十方式の自然循環型水処理システムをつくりました。
 これは、化学薬品等をもちろん使わずに、地域にある石ですとか、枝だとか、葉っぱだとか、土砂だとか、そういうものに炭素材を合わせて、自然循環型で水質浄化をしていくというもので、既に県内の企業が商品化して、その意味では内部経済化をしております。
 また、道路の整備に関しても、道幅を広げるとき、山側を削るとのり面ができます。こののり面を従来はコンクリートでかためたり、コンクリートブロックを置いていたりしたわけですけれども、そうではなくて、間伐材で木の枠をつくって、そのだんだんなところに、苗の入ったポット、ポット苗を置いていって、数年たてば自然に植生が復活するという、木の香る道づくり事業というものをやって、これはもう既に国の事業として取り入れられていますけれども、四万十川の流域を中心にこういうものも進めてきました。
 さらにその延長線上で、四万十川条例という、流域の市町村を巻き込んだ条例をつくって、これによってゾーニングをして、そのある特定のゾーンでは、いろんな事業経営、産業の活動なども一定の制約を加える、また広告宣伝なども一定の制約を加える、そういう地域指定をしていこうということをしています。
 今ちょうどその地域指定、並びに、例えば水質だとか、そういうことの目標基準をどうするかという検討をしているところですけれども、四万十川は何も高知県だけではなくて、愛媛県からも支流が流れ込んでおりますので、関係する愛媛の四町村にも同じ条例をつくっていただいて、愛媛のほうで、ことしの九月議会にその条例を提案していただいて、愛媛・高知、合わせてこの四万十川条例というものを地域づくりに生かしていきたいと思っています。
 また、先ほど藤村さんからお話のございましたバイオマスなどは、まさに大きくやる火力やこれまでの原子力やなんかの発電とは違って、地域地域で、電気だけではなくて熱供給もできる地域エネルギーとして非常に有効性のあるものではないかと思っていますので、この四万十川流域でエコエネルギー研究会というものをつくって、今お話のあったバイオマスですとか、風力ですとか、太陽光ですとか、小水力ですとか、一定の具体性のあるものを組み合わせたエネルギー地域政策というものを進めていきたいと思っております。一応この程度にしておきます。
(松尾)
 ありがとうございました。それでは、堂本知事からお話を、さらに具体的にお願いしたいと思います。緑の変革、すべてを環境の視点から見直すという政策を掲げていらっしゃるわけですが、具体例を踏まえてお話しいただきたいと思います。

(堂本)
 自分の話をする前に、実は、数年前、四万十川にカヌーを乗りに行ったんです。運悪く、大変水がふえてしまって、カヌーには乗れなかったんですが、ちょうどセメントの、今お話の出た道路のところを壊していたんですね。
 それで、とっても驚きまして、工事している人に「これは何なんですか」と聞いたらば、「知事が、この流域をまさに自然の形でやるということで、今までにつくられたもので、壊す必要のあるところは、こうやって少しずつだけど壊して、そして自然型の道をつくってるんです」という説明を、実は、私はそのときに受けまして、まさか自分が知事になるとは思ってなかったものですから、知事さんというのはこういうことができるんだなと思って、とってもびっくりしたんですね。
 今、まざまざとそれを思い出してました。四万十川はとてもすてきな川で、私も大好きで、まだカヌーに乗りに行きたいと思っているんですけれども、そのチャンスがありません。では、千葉の話に戻りますが、緑の行革ということで、一つ公約として決めたことが、三番瀬の埋め立てをやめるということです。
 これは、やはり海に囲まれている千葉県の中で、どれだけ干潟、あるいは、そういった海岸を大事にしていくかということの、一つの象徴的な事業だと思っています。と申しますのは、三番瀬に行っても、それほど白浜の海岸があるわけではありません。しかし、それでも、自然度は辛うじてなんですね、周りを埋め立てられているものですから、非常に自然度は低いんですけれども、でも、そこのところでどうやって埋め立てをやめるかということが、私にとっては大変な大きな政治課題でした。
 その結果、円卓会議を立ち上げさせていただいて、今も続いておりますけれども、日本で恐らくこういうケースは少ないと思っています。非常に大きな公共事業でした。そこを道路、第二湾岸が通り、下水場をつくり、そして町をつくる計画まであった、その公共工事をやめて、そして市民参加、そして環境団体の皆様方のご参加、これは全国レベル、あるいは千葉県内、そして市町村のレベル、そして県、国と、全部これが平らな関係で参加している円卓会議です。
 この間も行ってみたら、漁民の方が、国土交通省に行って、対等な形で国のお役人と議論をしているのを見て、もう本当に隔世の感と申しますか、ちょっと前まではこういう姿はなかったのではないかと思ったんですけれども。
 本当に二十代の若い女性から、主婦から、学生から、いろんな人が議論をしながら、これからの三番瀬のあり方を模索し、どうやって自然を保全し、そして再生していくかというこのプロセス、これを千葉の中でできるだけ広げていきたいというふうに思っています。これからもいろんな形で保全をしていくときに、行政が一方的に決めるんではなくて、みんなで考えながらつくり上げていくという、そのプロセスがとても大事だということを、まず一つ申し上げたいと思います。
 次に、先ほどの続きですが、産業廃棄物は首都圏に近い千葉としてはもう大変な問題で、不法投棄は、全国の約三〇%が千葉へ来ています。どのぐらいの量かと申しますと、これは大体一千万立方メートルを超える大きさ、それは東京ドームの八杯分で、香川の今の豊島が大変問題になりましたけれども、大体それの二十倍ぐらい、そのぐらいの量が一年間に千葉県に投棄されている。これは想像を絶する多さです。
 一晩で四トントラック百三十台、捨ててきましたといって、県庁に飛び込んで来た方がありました、何とかしてください。これはもうどうにもならないということで、この不法投棄に対しては、自社処分といいながら、これは法を逆手にとったやり方なんですが、本来なら自分の会社の廃棄物を自分の会社が処分するということになっています。それを、これは自社処分ですと称して、他社処分なのか自社処分なのかわからない物をどんどん持ってきてしまう。
 そういうことで、この十月一日から条例が施行になりますが、どういうことを決めたかというと、夜十時から翌朝六時まで千葉県には廃棄物を持ち込んではならないということをまず決めました。ほとんどが夜中の投棄です。寝静まったときに、気がつくと、朝、それだけものすごい量の物が捨てられていたということが、千葉県のあちこちで起こっていますけれども、夜はもう捨てさせない。
 それから、もう一つは、持ってくるごみについて、それがどこから出た物かということをきちんとマニフェスト、その表を持って入ってくることということを決めました。ですから、今までは警察官がそこにいても聞くことができなかった、今度は条例に基づいて、これはどこから来たごみですかというと、それをきちんと、持ってなければもうそれで違法です。
 それから、持っていた場合には、それがそこから来た、確かに自社処分なのかどうか、そのことを確認することができます。自社処分と称しながら、よその会社の物であった場合には、これは国の廃棄物処理法の違反ですから、これによって罰することができる。
 それから、今までは二百キロの炉ですね、燃す炉、それの焼却炉以下の物は何の届け出も要らなかった。これを使って、みんなどんどんやっていたわけです。千葉県では今度は五十キロにしました。ですから、五十キロ以上の炉で処分する場合は、これは必ず届け出をし、許可、認可の世界に入ったわけです。
 そういうことで、今までよりも、そういう水際作戦で何とかこういった廃棄物を食いとめたいというのが一つですが、食いとめるだけではやはりものは解決しません。そして、不法投棄だけではなくて、適正な投棄というか、適正に持ち込まれる物もあるわけです。
 ですから、まさに先ほど藤村さんがおっしゃったように、これからどう廃棄物をエコ産業に展開するかということで、一つやっているのは、エコセメントということで、セメントをつくっているんです。これは焼却炉を、これでは世界で初めてという工場でございまして、年間六万トンの焼却灰を持ち込んで、ほかの物とももちろん混ぜるんですが、そして十一万トンのセメントを今つくっています。
 このように、いろいろな形で、焼却された灰をまた再利用する、あるいは砂のかわりにガラス用のスラッグを使うという形で、これは廃棄物焼却炉の灰を使って処分するという産業も興ってきています。こういったようなことがいろいろあるわけですけれども、私はやはり大変興味を持ちますのが、先ほどのバイオマスを使っての、農業から出るいろいろな廃棄物、特に今、問題になっているのが、牛のふんとか、それから豚のふんとか、そういったものの処理が法律で決められたものですから、これも大変大きな問題に、農業県としては取り組まなければならない問題として起きてきています。
 そういうことで、バイオマスをどのようにしたらいいのか、藤村さんのお話を伺いながら考えていました。私たちは、循環型の社会づくりというのを県の基本としておりまして、その象徴的なこととして、菜の花プロジェクトというのを始めました。
 大変短く簡単にそのことをご紹介したいと思いますが、菜の花は千葉の県の花です、千葉県じゅうに菜の花はあるわけですが、この菜の花ですけれども、これを単に菜の花としてだけ見るのではなくて、この菜の花を使うことによって、まず景色をよくしよう、きれいですよね。ですから、景色をよくしよう。
 それから、次に、無添加の食品として菜の花、これは大変おいしいです、これを適用することができます。それから、有機肥料、それから家畜の飼料として、これを使っていこうという計画があります。それは、菜種をとって、そして、その油をとった種を、今度は、今、肉骨粉が使えなくなりましたね、ですから、油は食料に使う、しかし、そのかすのほうは肥料と飼料と両方に使うというようなことです。
 それから、次は、これは手賀沼の周辺なんかでも水質の汚濁対策、それから、大気の汚染防止というようなことです。これを図にしますと、お手元にもお配りしてございますけれども、こういうことになります。まず菜の花をつくる、それから油をとる、そして、その使った油をまた集める、そして、菜種の油だけではなくて、植物性の油だったら、天ぷらの油でも何でも集めてきて、それを石けんにしたり、また精製して、ディーゼルカーでも何でも使えるんですけれども、同時に、菜種をとった残りはまた肥料、飼料として再利用すると。
 そして、循環型でやっていこうというので、これを菜の花プロジェクトとしてやっておりますけれども、もう本当に市町村から、県としては種を配るということをお約束したわけですけれども、きのうも文句を言われました。県庁に行ったら、菜種が来ないんだ、県庁へ行って確かめたら、もうその油をとる種、油をとる菜の花というのは、食べるほうの、いわゆる葉を食べるのとちょっと違う種類らしいんですが、もうどんどん注文が来てしまって、全国に種を集めるので大変なんですということでした。
 そのぐらい、もう二十二の市町村で始めました。これが千葉県じゅうで始まっていくと、今の遊んでいる田んぼとか畑、そこの土に草が生えずに、もっと活用していける。これを、NPOの方とか、それから農家の方に大いに参加してやっていただきたいと思っています。それで、これがどうしていいかというと、先ほどから申し上げているように、三番瀬もそうですし、それから、この菜の花プロジェクトもそうですし、産廃のことも全くそうなんですが、やはりオール県民参加ということで考えています。
 そういうことで、私たちは、千葉環境再生基金というのをその計画の中でつくりました。こういうのをお配りしてますけれども、子供が十円の基金を入れてもいい、それから大人が百円入れてもいい、単に税金だけでやるのではなくて、そういった形で基金をつくっていこう。
 いろんな形でつくった基金に、今度は自治体がやってもいい、あるいは、企業なり、その社会貢献のなさる分野と、NPOが一緒になったり、農業の人、どんな組み合わせでもいいと思うんですが、もうありとあらゆる、これから環境を破壊しないために、それから生態系を持続させていくために、そして新しい環境ビジネスを実現していくために、いろいろな形での、あらゆる環境、先ほどから出ているグリーン購入の問題もあります、そういったいろんなことを全部大展開をしていくための資金を、税金だけではなくて、先ほどグリーン税のようなこともお話もございました。
 そして、経済の内部化ということもあるわけですけれども、これは相当外部でやる一つのキャンペーンになるんですが、全県で県民の意識と行動と資金と、その三つを全部立ち上げながら、環境の循環型社会というものの実現を目指したい、そう思っているところです。ありがとうございました。
(松尾)
 ありがとうございました。千葉に行くと、将来はやや天ぷらのにおいが残った燃料を車に入れられると。大変夢のあるお話ではないかと思います。ちょっと司会者からパネリストの皆さんにご相談ですが、やや時間が押しているんですが、どうでしょうか、せっかくここまで議論が盛り上がっておりますので、司会者としては若干延長したいと思うんですが、時間のご都合はいかがでしょうか。
 若干よろしゅうございますか。ありがとうございました。そういうことで、やや延長させていただきます。会場の皆様、決まったご予定があって都合がつかないという方は、どうぞ退席なさって結構でありますので、もうしばらく議論を続けていきたいと思います。
 今、二人の知事の方から将来へ向けて力強い考え方のお話があったわけでありますが、これから本格的な循環型社会をつくるに当たって、国であるとか、あるいは、その企業、地域に対してどんなことを希望されるのか、その辺に話を進めてみたいと思います。山本先生からお願いします。

(山本)
 もう千葉県、それから高知県の大変すばらしい取り組みが紹介されましたので、特に申し上げることはないんですけれども、私は今後一番大事になるのは、情報の発信ということが非常に大事ではないかと思っております。
 この環境情報を、だれでも、どこでも、いつでも、必要な情報が、特に信頼できる必要な情報がいつでも手に入るという状況をつくり出せば、それぞれの日常の暮らし、あるいは商品、あるいはサービスの選択、あるいはどの銀行にお金を預けるか、あるいはどの投資信託を買うかとか、日常茶飯事にやっていることに、そういうさまざまな環境情報が役に立てられると。
 例えば、三百五十ミリリットル入りのアルミ缶製の缶ビールを一本飲むと、一体どのぐらい炭酸ガスを出してしまうか。こういうのは、日常、我々は知らないわけですね。調べてみると、アルミニウムの缶を、ライフサイクル全体で、生産してリサイクルするまでで、百グラムぐらい炭酸ガスを出してしまうわけです。中身のビールを生産するのに、やはり七十二グラム、炭酸ガスをどこかで出してしまってるわけです、エネルギーを使いますから。
 百七十二グラム出してしまうわけで、日本では一年間に百億缶、アルミニウムの缶ビールが生産されているそうでありますので、それだけでも百七十二万トンの炭酸ガスが出てくるわけですね。これは、杉の木を植えて、この炭酸ガスを吸収させようと思うと、何と一億二千万本の杉の木を植えないと、炭酸ガスが吸収できない。
 ということは、私たちがもう徹底的にいろいろなことを知って、それで適切に、先ほど堂本知事がおっしゃられましたように、草の根レベル、市民一人ひとりが適切に考えて行動して、どの製品をどのぐらい使って、どのサービスをどう利用するか、また考えていかないと、今、我々が直面している問題を解決することが非常に難しいと。
 ですから、まさに炭酸ガスダイエット、あるいはごみダイエットとか、そういうのを個々人がもうやらなくてはいけないというところへ来ているのではないかと私は思うんですね。ですから、信頼できる情報、先ほど、橋本知事から、例えば有機農産物だったら、ちゃんとした第三者機関がここのこの製品は本当に大丈夫ですよ、有機野菜であり有機農産物というのを保証してくれて、そういう保証、ちゃんと評価され保証された信頼できる環境情報を、これを我々がいつでもどこでも手に入れることができるような、いつも申し上げているんだけれども、怒濤のごとき環境情報の普及ということが重要だと思うんです。
 松尾さんがいらっしゃいますけれども、NHKもよくやってくれてるとは思うんですが、全く不十分、まだまだ不十分だと。これは、朝昼晩、地球環境を天気予報に続いて、もうそれを法律で決めてというぐらいやらないと、だれも知らないわけですね。
 アルミ缶の缶ビール、年間百億本で百七十二万トンも炭酸ガスが出ていると。キヤノン一社が年間出している炭酸ガスは六十一万トンですから、アルミ缶の缶ビールだけでキヤノンの三社分出しているわけでしょう。こういうことを我々がちゃんと知って、その上でどの会社の缶ビールを飲むのか、きょうはアサヒにするのか、あしたはサッポロか、キリンかというふうに、そういう時代にもう入っているんですね。
 そこで、最後に申し上げたいのは、地域地域ではちゃんとしたコミュニティをつくり上げて、ちゃんとした健全な地場産業があって、雇用が保障されていると同時に、日本というのは資源もエネルギーも何もない国ですから、やはり外貨を稼がなくてはいけない、つまり世界的なプレーヤー、そういう企業を持ってないといけないわけですね。
 ですから、国際的に活躍する企業を、これを育てる意味でも、どんどんそういう有名ブランドの企業が、一生懸命環境経営に邁進して、エコ製品の開発を一生懸命やるようにし向けるような、社会的な政策をとっていくと。例えば、グリーン購入がその一つだと私は思うんですね。
 もう一つだけデータを紹介しますと、トヨタの低公害車は、一体国内で販売している台数の何%を売っているかというと、まだ1.4%ですよ。スーパーの西友は、エコ商品の売り上げの全売上高に占める比率は、昨年度たった3%ですよ。コクヨは、エコ売上高の比率が41.5%まで来ているわけですね。これはなぜかというと、やはりグリーン購入が浸透してきている。
 それから、三菱マテリアルは10%がもうエコ売上高になっていると。これはもうリサイクル法がきいてきているわけです。ですから、この社会制度をうまく我々が適切にしていくことによって、技術開発の方向を、環境配慮型の製品開発、サービス開発の方向に向けさせるということが重要なんですね。そういう会社の製品を、我々が率先的に使うことによって、お金をもうけさせると。
 環境配慮すればするほど、お金がもうかるような社会をつくらなければ、絶対に私たちは環境経済革命を達成することはできないというふうに考えています。
(松尾)
 ありがとうございました。メディアに対しても厳しいご指摘をいただきましたが、役所の答弁みたいでありますけれども、持ち帰って検討させていただきたい(笑)。それから、山本先生にぜひお伺いしたいと思うんですが、今お二人の知事の方から、例えば産廃税であるとか水源税であるとかというお話が出ました。環境庁の審議会では、炭素税といいますか、環境税の論議も進んでいるようでありますが、そういう税金による、いわば経済的な手法については、どんなふうにお考えですか。

(山本)
 これはまさにすばらしい方法で、ヨーロッパではもう既に長い経験があって、先ほど橋本知事が強調されましたけれども、それでお金を徴収して、それが目的ではないんですね。つまり、例えば、同じミネラルウォーターでも、日本産のミネラルウォーターは安くするわけですよ、海外産のミネラルウォーターは若干高くすると、だれでも気づくわけですね、高いほうは何で高いんだろうと。
 みんな、大体は安いほうを選ぶ。つまり、国内のミネラルウォーターを我々は飲まなくちゃいけないわけだ。だから、海外から来ているミネラルウォーターは若干余計、お金をつけるわけです。つまり、そこで情報を発信しているわけですね、先ほど橋本知事が強調されたように。
 ですから、ヨーロッパでは炭酸ガスに課税する、あるいは排出に課税する、亜硫酸ガスの排出に課税する、あるいは、バージンマテリアルを使った場合には課税するというふうに、その税金をちょっと上乗せすることによって、みんなに気づかせて、それでより環境に配慮した製品の方向へ購入を向けさせるということで、もう既に十何年以上、かなり成功をおさめているわけですね。
 日本の場合は、一応、三ステップに分けて、京都議定書を守るための政府の温暖化防止政策大綱は、三ステップでやると。第一ステップは、まず啓蒙・普及だと。第二ステップ、すなわち、2005年から2007年にかけて、2004年の日本の状況を判断して、温暖化対策が十分でなければ、2005年以降、早期に炭素税を導入していく、こういうことになっております。
(松尾)
 ありがとうございました。それでは、堂本知事、今まで言い残された点も含めて、最後のコメントをお願いします。

(堂本)
 私たちが地球のことを考えるということも大事なんですけれども、やはり自分の回りで、環境ゆえに生きにくさというのがもう出てきていると思います。例えば、本当にいろんな病気、いろんな公害というか、そういうものだけではなくて、もう既にいろんな形で空気が汚染され、土壌が汚染され、水が汚染されてきている。こういう状況というのを、どうして私たちが守っていくかということを真剣に考えなければならない。
 今、山本先生もおっしゃいましたけれども、私も徹底的に、最後まで、一人ひとりがその問題意識を持つことが、一番の早道なんだろうと。それにしては、日本のやっていることは遅すぎる、そんな2005年まで待っていたら、そのうちにどんどんみんな、人間まで絶滅しなければならないふちに追い込まれるんだということの危機感が、国として足りないと思います。
 とすれば、県のレベルで私たちは危機感を持っていい、そして、橋本知事だけではなくて、そういう危機感を共有する知事同士でもっとどんどん政策を進めていいと思います。一つご紹介したいのは、ディーゼル車についての規制、これを東京都、埼玉県と千葉県で同時に条例を採択しました。
 これが実施されますのは、これは七都県でやるんですけれども、平成十五年六月一日に始まります。そういうことで、ディーゼル車からの、これは微粒子状の物質の減少装置をつけることが義務づけられるわけですね。
 これは一つの、東京都だけでやってもだめ、それから、神奈川県や千葉県だけでやってもだめ、やはりそういった広域、ある地域でやらなければだめということは、自治体が協力しあって、国がやらなくても、自治体のレベルでやることが必要だと思います。
 ですから、個人のレベルと、それからあと自治体のレベル、そしてそれぞれの県のレベルということがありますけれども、これからは、きょうせっかく二人の知事がアベックで並びましたから、三人しか女の知事はいないんですけれども、大いに男女の、これは別なくですけれども、たくさんのそういった、お互いにいろんな共有できる環境の政策を、例えば、今のディーゼル車だったら関東一円でやったらいいと思います。
 でも、例えば今のバイオのこととか、それからグリーン購入なんかだったら、これは高知県と千葉県とで、両方の県、いや、それじゃああとほかの県もやるということで、あちこちの十ぐらいの都道府県でそれがスタートしたら、今度それが国を動かすことになると思います。
 そういうことで国を動かし、本当は日本から発信して世界を動かすところまでいきたいところですけれども、ちょっとドイツやヨーロッパの国に負けてますね。それはとても残念に思いますが、皆様とご一緒にやっていきたいと思います。どうもありがとうございました。
(松尾)
 ありがとうございました。それでは、橋本知事に、今後へ向けての決意表明も含めて、コメントをお願いいたします。

(橋本)
 今後ということで言えば、僕は境を取り払う、壁を取り払うというのが一つのキーワードではないかと思っています。というのは、資源循環型の社会をつくるというときに、その資源循環型のいろんな物づくりの原材料を集める、その原材料のマーケット、また、それを売っていくマーケットということを考えたときに、一つの県の中ではなかなか完結できません。もう少し広い、広域の連携ということが必要になります。
 例えば、先ほどお話をした、そのエコデザイン協議会でつくっているカタログの四十ページに、金星製紙という会社が出ております。この会社は、ペットボトルから繊維を取り出して、もともと紙の会社ですので、そのペットボトルの繊維を使って水切り袋という製品をつくっている会社でございます。
 ところが、ペットボトルを粉砕するとか、ペットボトルを粉砕した物を繊維にするということは、高知県内だけではなかなかマーケット、市場が成り立ちませんので、広島の会社、山口の会社を使って、その分、物流コストが高くなっております。
 一方で、愛媛県では今度このペットボトルの粉砕等をやる会社を立ち上げようという話で、愛媛の知事さんからもお話があって、それでは、こういう物の循環を四国四県で、ペットボトルを全部集めて、そして粉砕、繊維化から、それをまた製品化するということを、四国四県の企業が連携をしてやっていく仕組みをつくろうと。まず、ことしその調査をしようということにしています。
 また、先ほど堂本さんからのご紹介にあったように、もともとはNHKの記者でございますが、私がNHKの社会部に転勤してきたのが今から二十年余り前の2004年です。そのとき既に空き缶のデポジットというのが大変な話題になっておりました。
 このデポジットというのは、缶に最初から少し余分のお金を足しておいて、そしてその缶を戻してくれたら、余分に上乗せした分をお返しするという仕組みで、これによってリサイクル、回収を進めようということでしたけれども、なかなか幾つかの課題があって成り立ちませんでした。一つは、企業の理解が得られないということですが、もう一つは、これだけ物が広く行き交う時代に、一つの地区だけでやっても、なかなか外から入ってくる物、外へ出ていく物があって、うまくいかないということでした。
 四国は島でございますので、四国四県ならば、統一に条例をつくって、この空き缶のデポジットをやってみれば、一定の効果があるのではないか。それで、それこそ情報発信をしていけば、琵琶湖のあの条例のときに、リンや窒素を取り除くのは難しい、界面活性剤のラースを取り除くのは難しいとあれだけ言っていた洗剤会社が、一遍にもうリンのない、窒素のないという物をどんどん売り出したという事例から考えれば、そういう動きができれば、この缶についてもまた全然違う飲料メーカーの動きというものが出てくるのではないか。
 そういうことをぜひ四国四県でやっていきたいということを思います。それから、壁や境を取り払うということで言えば、やっぱり役所の縦割りの壁だとか、役所の意識というものも切りかえていかなければいけないということを思うんです。
 さっき菜の花プロジェクトのお話があって、ぜひ高知県も取り組んでいきたいということを思っていますけれども、これをやるときに、今、農水省が減反ということをずっと続けています。ところが、減反でそのやめた田んぼを使っていく、後の転作奨励の中に菜の花というものは含まれておりません。
 また、この菜の花の油を、食用だけではなくて、車や何かを動かす、工業用というか、そういうエネルギーとして使っていこうとするときに、農水省には食用だとか、観賞用という発想しかありません。農産物を工業用品として使っていくという発想が全くありません。そういうような意識の壁を取り除いていく。
 また、バイオマスというようなことを考えていったときに、今、一般廃棄物と産業廃棄物という区分けがあり、また、産業廃棄物というのも、全く同じ物なんですけれども、どういうところからどう出てきたかで、産業廃棄物になったり、そうでなかったりするという物がいっぱいあります。
 こういうような壁を乗り越えていかないと、資源循環というのはできないのではないかなということを思いました。さっき堂本さんから関東でのディーゼル車の規制の問題がございました。今度、高知県で、この十月に秋の国体が、そして十一月に障害者の国体が開かれます。
 それを環境国体と言うほど大げさなことはできないんですけれども、幾つかのテーマをやろうということで、環境国体ということで、そのディーゼル車の排気ガス規制ということをやってみたいと思っています。というのは、先ほど本県は森林県だということを言いましたけれども、ヒノキのエキスを使って、排気をする仕組みを開発した研究者がいて、企業もございます。この企業は県内の企業だけではないんですけれども。
 これでディーゼル車の排気の規制ということを実験して、ぜひ関東地区で示された%よりも低いものをきちんと出して、その低くなった車には高知県としてのマークをつけて、そのマークがついた車は、関東七県、自由に入れていただくというふうにぜひしていきたいということを思っています。
 もう一つ、広域ということで言うと、最初に山本先生が言われた気候同盟、ドイツで四百二十三都市と十六の地方行政機関が一緒になって、CO2を50%削減というふうなことで活動されている、とてもすばらしいことだと思います。けれども、役所でそのためのプログラムを考えようといっても、先ほどの縦割りだとか、意識の問題があってなかなかできないのではないかな。
 ぜひ、研究者の方、またきょうお見えの中で、企業なり、コンサルタントなり、いろんな方がいらっしゃると思います。この気候同盟に当たるようなものを、国内で自治体が一緒になってやっていくときに、具体的にこういうプログラムだったらできるんじゃないかということを示していただければ、堂本さんはもちろんですけれども、そのほか、仲間として一緒にやっている、いつでもすぐ集まれる知事が六県、七県はおりますので、そういう県で一遍にやれば、すぐ大きな動きとしていくのではないかなと。
 そうすれば、山本先生が心配される、国のスピードではなかなかいかないんじゃないかというのを、地方からの動きでカバーしていけるんではないかな、ぜひそういうことをやってみたいと思っております。
(松尾)
 ありがとうございました。それでは、最後に藤村会長にお聞きしたいんですが、この三月に政府が地球温暖化対策の要綱をまとめました。それによりますと、2010年には産業界で1990年に対して7%温室効果ガスの排出を削減するという厳しい方向が打ち出されているわけでありますが、産業界の中にはこういった動きに反対、あるいは消極的な動きも強いというふうに聞くわけでありますが、産業界に身を置いておられる立場として、そういう動きに対してどんなお気持ちなんでしょうか、どんな方向でこれから取り組んでいかれるおつもりなんでしょうか。

(藤村)
 松尾さん、ご存じのはずなのに、大変難しいご質問をしていただきまして、ありがとうございます(笑)。私も、実は経済産業省の地球温暖化の審査委員をやっておりまして、私は産機工(日本産業機械工業会)の代表として出るわけでございます。
 産機工の代表というのも、これは、経済全体では経団連とかいろんな団体に所属しているわけでございまして、経済団体全体としては、アメリカが批准しないということで、競争力の低下をかなり心配いたしております。
 ところが、産機工というのはどういう団体か、これは環境装置をつくっている団体がかなりいるわけでございますので、炭素税をとって、やはり正当に温暖化に対する対応はすべきであるというような考え方も非常に多いわけでございまして。
 今、経済界全体がどうというのは大変に難しい問題だと思います。ただ、自分ができるだけやってみると。これはもうぜひ必要なことでございますので、これは法律で課徴金が、あるいは税金が徴収されるということになっても当然のことで、自身が最大の努力をしていくと。これはもう必要な行動でございますので、今後もそういう自主的な努力はしなければいけないというふうに思っております。
 私は、先ほど申しましたように、環境負荷に対する、与えた悪影響に対しては、それを改善する費用は、市場経済の中の中に組み込むべきであるという思想でお話をしているわけでございますので、当然のことながら、例えば、今、炭酸ガスの固定化で一番安いというのは木材で固定化するというのが一番安いわけでございます。
 それで全部が固定化できないという問題はあるわけでございますけれども、我々の計算ではキロ当たり5.5円というものは負担すると。いわゆる環境に負荷を与えた場合は、その負荷を改善する費用は負担しなければいけない。
 ですから、ごみを排出したときに、そのごみの処理に関しては、ちゃんと出した人が、発生した人が出すべきであるというふうな、そういうことをやることによって、この産業と環境が同一の線路の上を走っていくことができるというふうに考えております。
(松尾)
 ありがとうございました。きょうは特に地域社会の観点から環境問題を論じていただきました。全体として、時間が三十分近く押してしまいました。司会者の不手際でまことに申しわけありません。放送でありますと、もう始末書では済まなくて、辞職願いを出さなければいけないところでありますが、パネリストの皆様、あるいは会場の皆様のご協力をいただきまして、まことにありがとうございました。
 お二人の知事からは、さすがに環境先進自治体だけあって多面的に、またより深く取り組んでいらっしゃるということがはっきりわかるご報告をいただきました。身の回りの自然を再生させる、市町村や近隣の自治体と連携を図って、循環型社会の実現を図るという方向をお聞きしたわけであります。
 しかし、一方で、どうも環境と言いますと、みんなが小さく縮こまってしまうというイメージがあるわけでありますが、お二人のお話をお聞きしておりますと、環境ビジネスの創造や育成を手がけて、環境という点を切り口にして、むしろダイナミックに地域経済を発展させて、雇用を創出する、そういう姿勢が伺えたように思います。
 私自身にとりましても、大変、新鮮に映りました。心強い限りだと思います。先ほどお話をお伺いしますと、お二人の知事、なかなか直接お会いする機会がないそうでありますけれども、お互いに環境づくり日本一の座を目指してしのぎを削っていただきたいとうふうに思います。
 それから、山本先生からは、大変強い危機感を背景に、環境経済革命を起こさなければだめだというお話をいただきました。そして、具体的に八つの提案をいただきました。十分に、これは検討に値する案ではないかというふうに思います。
 それから、藤村さんからは、トリレンマ、つまり三すくみですね、経済成長とエネルギー資源の枯渇、それから環境の保全、あちら立てればこちら立たずという三すくみの関係にある。しかし、産業界としては、厳しいコスト計算をしなければいけないけれども、懸命に挑戦をしたい、こういう大変心強い決意の表明がありました。
 この地球環境問題といいますのは、経済のグローバル化でありますとか、産業の空洞化、あるいは少子高齢化などと並んで、私たちがこれから全力で取り組まなければいけない大変重要な壁だろうと思います。
 それは、例えば、アメリカに京都議定書への批准を促す、あるいは新しい省エネとか、新しいエネルギーについての革新的な技術を開発するといった国レベルの対応が必要な問題である一方で、私たち自身の生活のあり方、ライフスタイルそのものを問い直す必要がある問題でもあるだろうと思います。また、地域社会が挙げて取り組まなければいけない、そういう分野が多い問題でもあろうかと思います。
 先ほど来のお話をお聞きしますと、特に日本がおくれているバイオマスの点については、お二人の知事と藤村さんの間で、相当これはいい合意ができそうな段階まで来ているんではないかと思いまして、大変楽しみであります。
 きょうの議論というものが、各自治体や地域社会、企業の今後の対応に大いに参考になることを期待したいと思います。積極的に建設的なご意見を提示していただきましたパネリストの皆様方に、改めて大きな拍手をお願いしたいと思います。会場の皆様方にも、本当に長時間にわたってご清聴いただきました。まことにありがとうございました。
 時間の関係で、質疑応答の時間がつくれなかったのは大変残念でありますけれども、お二人の知事の人柄を拝見しておりますと、皆様方の率直な質問に対しては十分お答えいたしているのではないかというふうに思います。それぞれの自治体、あるいは企業のほうへ、積極的な提案をこれからもぜひお願いしたいと思います。
 長時間にわたりまして、本当にご協力、ありがとうございました。これで閉会したいと思います。
(司会)
 どうもありがとうございました。本来であれば、皆様方に質問用紙をお配りしてあったんですが、お時間の関係で、大変申しわけございません、質問はなしということで、よろしくお願いしたいと思います。それでは、松尾解説委員を初めパネリストに皆さんにもう一度拍手で、御礼にかえさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 

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