第5回NTTドコモ四国グループ 地球環境フォーラム

公開日 2007年12月07日

更新日 2014年03月16日

第5回NTTドコモ四国グループ 地球環境フォーラム

平成14年7月9日13時30分から(県民文化ホール)

第2部 パネルディスカッション 環境コラボレーション(環境保全と経済活動の両立)

(パネリスト)
写真家 浅井愼平氏
高知県知事 橋本大二郎氏
高知県高岡郡梼原町町長 中越武義氏
宇治電化学工業株式会社代表取締役社長(高知エコデザイン協議会会長) 西山彰一氏
コーディネーター 枝廣淳子氏

〇司会
 お待たせをいたしました。ただいまより第2部パネルディスカッションを始めさせていただきます。本日のコーディネーターは第1部でも対談していただきました環境ジャーナリストの枝廣淳子さんにお願いしたいと思います。枝廣さん、どうぞ。

〇司会
 それでは、パネリストの皆さまをご紹介させていただきます。
写真家 浅井愼平様、高知県知事 橋本大二郎様、高知県高岡郡梼原町町長 中越武義様、宇治電化学工業株式会社代表取締役社長 高知エコデザイン協議会会長 西山彰一様、そしてコーディネーターは、枝廣淳子さんです。それでは、このあとは枝廣さんにお任せいたします。ではみなさま、宜しくお願い致します。

〇枝廣淳子氏
 はい。では、後半のパネルディスカッションを始めたいと思います。
 高知県というのは森林面積が84%という事を先程伺いました。日本全体の平均が67%、日本はとても森林に恵まれた国ですけども、その中でも森林にとても恵まれている、そして風もよくふいていて、水もたくさんある、ということで、後半のテーマを「もり・みず・かぜ」という風に決めさせてもらいました。

 そういった観点からのお話をまた後で展開したいと思いますが、最初に今日パネリストで参加してくださっているそれぞれの方から自己紹介とご自分の活動を含めて10分程度でお話を伺って、それからディスカッションに入りたいなと思っています。では最初に、橋本知事お願いします。

〇橋本大二郎氏
 突然きましたので自己紹介はもうご存知の方が多いと思いますから省かせていただきまして、日頃の活動ぶりもご存知の方が多いと思いますので、これも省かせていただいて、今日のテーマに沿ってという事なんですけれども、森のことに少し重きをおいてお話をしたいと思います。

 と言うのも、昨日「クローズアップ現代」というNHKの放送で水源税を取り上げて頂いて、そこで自分もちょっと出てお話をしたからなんですけれども、今のお話にもありましたように、高知県は県の面積の84%が森林で、日本一の森林県でございます。

 ところが、木材の価格が低迷をしているとか、山に住む方の高齢化が進んだということで、なかなか手入れの行き届かない森林が増えてきました。このために山に水を蓄えて下流の町に飲み水を提供するとか、また下流の町の洪水を防ぐとか、更には炭酸ガスを吸って酸素に替えていくとか、そういう森林が果たしている役割・機能というのがどんどん衰えてきました。

 このように森林の問題というのは国民全体の問題、高知県でいえば県民全体の問題だと思うんですけれども、もし行政・県が今もっている財源を使って何かこれに対する手当てをしましょうということになると、森林から遠く離れた都市に住んでいる方から見ればそれはお役所が勝手にやることだから、任せておけばいい、自分たちには関係のない事だね、ということで終わりかねません。

 そうではなくて、やはり県民のみなさん全体で森のこと、森林のことを考えていく、そのきっかけを作らなければいけない。その為には、街の方も含めて広く浅く負担をしていただく税金の方式がいいんじゃないかなということで考え始めたのが水源税でした。

 この水源税に関しては、一つわずかな税収で何が出来るの、というご質問もよく聞きます。そういうご質問に関しては、税金というものに対する考え方をもう一度見直してみたらどうだろう、という答え方も一つではないかと思っているんです。

 と言うのは、これまで税に関わることというのは、県の立場、国の立場で言えば、財源が少なくなった、厳しくなったから何か新しい税を考える、つまり税を量の問題として捉えてきたわけですね。そういう見方で言えば県で考えている水源関与税というものは、年間の税収が一億何千万ぐらいしかありません。

 それでこれだけ荒れてきた森林に何が出来るの、というご質問になるだろうと思います。しかしこの水源関与税というのは、量の問題ではなくて質の問題、つまり県民全体で森のことは自分たちの問題だという事に気付いて何かを起こしていく、そのきっかけを作るということに焦点・狙いがあります。

 ですから、この最初の一億何千万の財源で何ができるかということではなくて、そのことによって街に住む人も森林のことを考え、森林の大切さということを気付く、そして上流と下流の街を結ぶような色んな仕掛けや取り組みが起きてくれば、それによって森林も変わっていくんじゃないかな、という事を思っています。

 もう一つ、最初から税金ありきで何か使い方が不明確なんじゃないの、という声も聞きます。これに対してもこういう答え方をしているんですが、これまでは国なり県なりの行政が税の使い方はこうですよ、と決めて議会との話だけで条例を作ったり法律を作ったりして税金というものが出来ました。

 そうではなくて、県民・国民の皆さんに関わることだから、みんなで使い方を考えましょうという事で今皆さま方に色んな税の方式というのを示してその使い方についても意見を聞いています。そういうご意見を聞く中でみんなで作るのが水源税なんだということをぜひこの機会にご理解を頂けたらな、という事を思います。

 もう一つ森に関することを言いますと、今でもそうだと思いますけども、熱帯雨林などをどんどん伐採をしてしまって、これが地球の環境に大きな影響を与えているという問題が指摘をされました。こうした問題への反省点から、森林の果たしている色んな機能・役割というものを弱めない、そういうような持続的な森林経営が出来る森を作っていきましょう。その為の国際的な認証をしていきましょう、というシステムがあります。

 「FSC」と略称で呼ばれているのが、その国際認証なんですけれども、こういう時代ですから高知県の森林もぜひ持続可能な森林経営だというお墨付きを頂きたいということで3年ぐらい前から県内の森林組合などに働きかけてこのFSCを取りませんか、という取り組みを進めてきました。

 そうしましたところ、お隣にいらっしゃる中越町長の梼原町の森林組合と、近くにある池川町という街の池川木工という会社がこの持続可能な森林経営の認証FSCの認証を、これは立っている木をそのまま育てていくという認証と、FSCの認証を受けた木材を使ってなお加工の分野でもきちんと環境への手当てが出来ているという二通りの認証があるんですけれども、こういう認証を受けられました。

 始めはですね、このような認証を受ければきっとそれで付加価値が付いて高く売れるんじゃないかなとこう思ったんですが、なかなか世の中そう甘くはありません。けれども僕が行ったのはイギリスの状況などを見たんですけど、ヨーロッパに行きますとすでにそのFSCの認証を受けたから高く売れるという事じゃないんですけども、逆にFSCの認証を受けていないとドゥー・イット・ユアセルフであれ公共事業であれ、その買い手が買ってくれないそういう社会になっていました。

 やがて日本もそうなっていくんではないかと、その日を目指してぜひ梼原だけではなくてもっとこのFSCというものを広げていきたいと思っています。

 一方、今度は木を使うという面なんですけども、木を使うという面では高知県では少し前から「木の文化県構想」という名前で「木を育て、木を活かし、木に親しむ」というようなキャッチフレーズで色々な取り組みをしてきました。これはどちらかと言うと、木材の振興、林業の振興という視点が強かったと思います。

 そうではなくて木と環境との関わりという事から言いますと、去年から国・地方共ですけれども国や地方で色んなものを買う時には、なるべく環境の負荷の少ない環境にやさしい製品を買っていきましょうというグリーン調達という事が始まりました。

 去年、国では101の品目を指定しましたけども、高知県ではちょっと小さなこだわりを持って、それに加えて胸につけるネームプレート(名札)を木で作る、また名刺も木にする、こういう物をこのグリーン調達の項目に入れて103品目にしました。このうち名札は去年から今年にかけて国の項目の中にも取り入れられましたし、国ではもう少し増やして150品目になっています。

 これに加えまして、県では残った木の名刺と木質のペレットを使ったストーブ、木質のペレットを使ったボイラーという物をその品目に入れて、合わせて153の品目で今このグリーン調達に取り組んでいます。

 これから先はですね、先程言ったFSCの国際認証。持続可能な森林経営をしている、その森林から出てきた木材を使った製品だという物をぜひこのグリーン調達にも入れていきたいという事を思って仲間の各県の色々な知事さんにも働きかけをしています。

 と言うのは、各地方でFSCの認証が出来て、そこから出てきた木材を使った物がグリーン調達に入れられれば、必ず国のグリーン調達の項目にも入るでしょうし、その事で大きくこのFSCも伸びていくんじゃないかと思っているからです。

 ということで、森の話を終わってもう一つ水の話にちょっとだけ触れておきますと、高知県には有名な四万十川という川がございますので、僕が知事になって間もなくしてから「四万十川対策室」という一つの川の名前をつけた課・室では全国でも珍しい所属、仕事場を作りました。

 これに対してはですね、県内には他にもきれいな川がいっぱいありますので、「なぜ知事・県は四万十川の事だけするんだ、けしからん」というお声もありましたけども、四万十川は何と言っても全国の方に知られていますので、そこで色んなモデル事業をすれば全国に情報発信をしていけます。

 また国も関心を持ってくれて、色んな予算をつけてくれやすい、というような思いがありましたし、また四万十川を中心に一つのモデルが出来れば、それは県内の他の地域にも使っていける、また全国にも使っていけるようなモデルになるんではないかというそういう思いで取り組みを進め、プランも作り、そしてそれを条例という形にしました。

 この条例は一つの地域を指定したらそこでは看板を立てるとかホテルを作るとか砕石をするとか、そういう色んな事業を少し規制をするという風にしていますし、またその中では森林もただ一律にするのではなくて、水辺の森林だとか里山だとかそういう区分けをしていって、その区分け(ゾーン)ごとの体制を組んでいく、そんな事に取り組んでいます。

 これは最初はもちろん高知県だけの条例だったんですけども、この四万十川には愛媛の方からも支流が数多く流れ込んできておりますので、愛媛県にも働きかけて愛媛県の側でもこの四万十川の条例を作っていただくことになりました。

 これはただ単に自然を保護・保全をしていくというだけではなくて、そこで地域をその四万十川というものまた環境というものを活かしてどう振興していくのか、その事と保全をどうバランスをとっていくか、という事に主眼を置いていますので、色んな難しい点はありますけれども、また動かしていくのはこれからなんですけれども、ぜひこういう取り組みも進めていきたいなと思っています。以上です。

〇枝廣淳子氏
どうもありがとうございました。浅井さん、どうですか?三人終わってから何か聞かれた方がいいですか?

〇浅井愼平氏
その方がいいですね。

〇枝廣淳子氏
 今の一つだけFSCについて私の方からも申し上げたいのですが、今イギリスの話をされましたが、イギリスは国有林が確か全部FSCの認証をとっていますし、BBCを始め大口の例えば紙を使う企業が集まって「バイヤーズグループ」というのを作って、そのグループだけでイギリス国内の紙の消費量の15%を扱っている。

 そこがFSCのついた物しか買わないという宣言をしたりとかですね、そのバイヤーズグループ今日本でも立ち上げ中なので、そうなった暁には次にお話をいただきますが梼原の木がたくさん使ってもらえる、それが一つのモデルになるんじゃないかなと思います。またペレットについてまた後で詳しくお話を伺いたいなと思います。では中越町長、よろしくお願い致します。

〇中越武義氏
 ただいまご紹介いただきました、梼原町の中越と申します。せっかくここにパワーポイントで紹介と説明をさせて頂きたいと思います。今日の題にぴったりの「風をおこし、町をおこす」です。

 これ「自治体環境グランプリ2001」の表彰で4月9日に東京で頂きました。知事秘書の方の川竹さんも出席をしていただきました。自治体では千葉県と三重県と我が梼原町でした。コラボレーションというのはここにも書いていますけれども、皆さんで共同して色々な面で取り組みを行なっておる、色々な組み合わせによって行なっておる町村に対して表彰する。

 特に梼原町では町の振興計画の中で「森と水の文化構想」それの中でも「つむぎあうまちづくり」ということを理念として対応しておる、この中には千枚田のオーナー制度とかいったことも含まれておりました。

 梼原町のエネルギーの状況ですけれども、今言ったようにこの上に風車があります。そしてこれが風車の絵ですけども、ここに602機を設置をさせて頂いております。これは標高が1300メートルということで、全国の中で最も高い位置に風車が設置されているという地域です。これが、名前のごとく「雲の上のまち」にまさしく風をおこしているということです。

 これは山の状況ですけども、風力から生まれた資金を活用して森と水を守るということから利用しておるものでございまして、梼原町の基本というのはやっぱり森作りの基本条例を定めて、その中にやっぱり行政・事業者・所有者という責任・役割というものをはっきり対応する。そしてそれぞれの持ち味を活かして守る、という事です。そしてそのお金から生まれたものを1ヘクタールあたり10万円の交付金をあげる。

 もう一つは触れ合いの森づくり。下流域の皆さん方と一緒になってボランティアとともに触れ合いの森を作る。そして今、お話にございました、これは大変に県のご支援を頂きましたんですけども、FSCの認証制度、環境に配慮されたあるいは環境に保持された森林を認証していると、そこから出た物をどう皆さんに活用していただくか、という事になると思います。

 これはコラボレーションの中で少し出てきましたけれども、千枚田のオーナー制度です。これは平成3年からはじめました。特に京阪神地域からおいでいただいく方が多いわけですけども、全国ではじめてこのオーナー制度を始めたこういった取り組みも一つの自然を守る、環境を守るという意味からこういった取り組みも認められたということです。

 それで梼原町の基本理念というのは、やっぱりこれから21世紀は健康の里づくり、教育の里づくり、環境の里づくりだと思っていまして、この三つをトータルして「つむぎあうまちづくり」としようと、その中でも特に自然と共生する環境づくり、持続可能な産業づくり、森づくりといった事を対応する、それから新世紀を開く基盤作り、ここらが大きな柱になってくると思っていまして、これは全部公募による町内の方々に作っていただいた振興計画で、今までは委託をして対応しておりましたけども、これは地域の公募によって出来た大きな三つの柱です。

 それで環境への取り組みですけれども、環境と共生する町づくりを目指している。その中でも我々の地域は四万十川の源流地域で、山の民として山を愛し、水を慕い、自然を活かして生きる為にこういった環境と共生する町づくりをつくる。

 その中でも自然との共生を高める。或いは、循環型社会を目指すということがこれからの大きな方向になっていく、その自然と共生する中では「鎮守の森づくり条例」「四万十川の保全と振興に関する基本条例」これは県と同一歩調を合わせていますけれども、そういった事。

 公共下水道・農業集落排水の整備と合わせて我が町では風車から出来た資源を高度処理するということで、きれいな水を四万十川に供給するという役割が我々のところにはあるんだという事を思っていまして、そういった意味で高度処理をする、そして千枚田のオーナー制度、自然エネルギーの利用促進、風力発電設置をまだしたいと思っていますし、更には新エネルギーを活用して太陽光・地熱・小水力といった形のものに対しても助成をしています。

 そして更に、循環型社会というのは森づくりの基本条例を定める「循環と共生の森づくり事業」の中でFSC・ISO14001の認証の推進、これは農業で対応したいと思っています。林業のFSC、農業のISO14001、そしてRの町づくり、これからの時代というのは、やっぱりこのRの町づくりにある。

 ゴミの固形燃料化の施設「クリーンセンター四万十」、もう一つはし尿処理施設「土つくりセンター」、そして保険・医療・福祉サービスの統合、更にはどうしてもこういった循環型の社会の中では地産地消、地域の中でお金が回らないと、それは地域が成り立たないという事から、林業にいたしますと町産材利用促進条例をして木の家を作る。

 それから地産地消、農業の関係でいえば「もっぱら梼っぱらディ」として今言った通りに地産地消の日を皆さんが作った物をこの地域で利用する。それから公共施設への木材の利用ということが考えられます。これは自然と共生を高めるということで、こういった広葉樹が非常に人々の心を癒すという役割を担っています。

 これはきれいに間伐をしますと、こういったように下草が生えまして、保水力が高い、雨が降っても一時的に下流域に水が出て行かないということもありますが、間伐をすることでこういった下草の生えた対応が出来るという事でしょうね。これは、先程の千枚田のところです。

 梼原の取り組みとして、実は毎週第二土曜日を「環境デー」と定めています。これは子供たちが一緒に参加してそれぞれの道路や家の近くのビン・カン拾いといったことを子供たちでやってくれています。そしてこれは作っていただいた道というのはやっぱり使う我々が清掃して使わせてもらうという感覚を持たなければこれからの時代は対応していけないという事で、もう皆さん全員が参加して国道・県道を問わず地域の生活道に至るまで、皆さんでこの整備をする。

 こういうことは、やっぱり山村に生きる我々でないと出来ない面があるのではないかと思っていますけども、こういった感覚がやっぱりこれからの時代に必要だろうと思います。

 これは風車です。これからウィンドファーム構想を立てていくという計画ですけども、更にこの地域にマッチしたような形でウィンドファーム構想を立てたいと。そしてここの四国カルストというのは、全国でも恵まれた風況があると、それから広大な開設可能な面積、これ全部町有地です。23キロありますけども、23キロの8合目ぐらいから上は全部町有地になっているという事も、やっぱり有効な手段なのかもしれません。

 これは自然を活かすということで、太陽光のパネルを設置したものです。それからこれも住宅ですけれども、太陽光のパネルを設置したものです。去年から行なっていますけども、民間で去年6個太陽光の発電を行ないました。今年も6個今申請が出ています。

 これは給湯システムで、身体障害者の療護施設の上につけてあるパネラーです。それから家庭用のワイパーですね。これは南四国部品が対応しておりまして、そういった形と提携をして対応をしていく。

 これも梼原にしか無いと自慢していますけども、地熱を利用した温水プール25メートル5コース対応していますけども、この100メートルの地底から27本のボーリングをいたしまして、それからとったものをヒートポンプで替えて温水プールに利用しています。大体28℃から30℃の範囲内で対応できる。ここから下に向けて1メートル50の水をざっと落としていまして、人が中に入って泳ぎますと水が溢れて下に落ちる、その下に歩行浴があるという施設です。

 これはちょっと我々の所に集めて今言ったように処理をしてもらうんですけども、やっぱりこういった廃棄物を出すということがあります。今、県と大変苦労されてどうするかという事を検討していただいていますけども、やっぱり私はこういったそれぞれの町村で出た廃棄物を自分の町でどう処理をするかという事を考えて、それが出来ない時に果たして総合的な施設に対応していくかどうかという論点をもう少し考えないと、ややもすると傍観者的な形になって、あそこに作ってもらえるからそれでいいではないか、という感覚になっているんじゃないかと。

 自分の町で出来た物、排出された物を処理をしていくという感覚をそれぞれの町村が持たないと、私はやっぱり総合的な施設の建設というのは非常に難しくなってくる。その事がやっぱり助け合うという事になってくるのではないかという風に思っています。

 これは第三セクターの「土づくりセンター」ですけども、し尿と籾殻とを集めてこれを土壌改良剤として使っておる施設です。
これは津野山広域で対応しています家庭から出る可燃物をペレット(固形燃料)にして対応しておる施設です。

 これから環境の循環の思想を広めるということで文化の里づくり推進、あるいは先程言いましたようにRの町づくりといったことから、これから21世紀のキーワードはなんと言ってもリフレッシュ・リサイクル・リハビリ、或いはわが町では健康づくりということから「あ~る」の町づくりとしてますけども、こういった事もやっぱり必要となってくる。

 それから健康文化の里づくり推進委員というのは、ただ単に健康を守るだけではなしに、やっぱりお互いの環境や人・あるいは先程浅井先生のお話にありましたけども、「隣は何をする人ぞ」といった事はまだまだ山間地域では皆さんの状況をしっかりつかんでおりますし、昨年の西南豪雨でもやっぱりそういった地域とのつながりがあって大きな災害につながらなかったということから考えて、やっぱりしっかりした組織体が必要であるということです。

 これは木材を使う、山からFSC材ですけどそれを出来たので協力いただいて54メートルの屋根つきの橋を作りました。これは大体木材が150立方程作ってますので、名前は「みゆき橋」とつけましたけども、向こうに神社がある、鳥居がある、という事から多少皆さんからどうなのかという事ですが、大正13年に歩道橋を架けてましてそのコンクリートの歩道橋が老朽化した為に今の時代ですから、わが町のシンボルである杉を使った木橋を架けたという事です。

 これは地産地消ということで地域の雲の上の市場で朝市会の皆さん方がその地域で出た産物を売っています。「回れ風車、いつまでも。ありがとうございました」と言う事ですが、わが町の取り組みは以上です。しかし要は皆さんで共に考えてやっぱり共に運営をしていくという事が必要ではないかと。

 それからもう一つはなんと言っても環境に配慮された物、FSCも一つの方法ですけども、そういった思想を皆さんで広めていくということが必要ではないかなという風に思っています。以上です。

〇枝廣淳子氏
 ありがとうございました。私は1年半ぐらい前に梼原に伺ってFSCへの取り組みの取材をさせて頂いた事があるんですが、今の話を伺って、それを含めて町づくりを本当に住民参加でなさっている。これは実験結果というか、心理学的にも証明されているし皆さんもお考えになるとすぐ分かるんですが、決まった事をやりなさいと言われるよりも、どうやってやろうかと計画作りに参加した人の方が当然その決まった事をやる確立が高くなる、やる気が高くなるというのがあるので、そういった形で進められているという事が本当に良いなと思いました。

 一つお伺いしたいんですが、先程写真で放牧地の上にタービン、風車が回っているのをあれ、それ放牧地として下が使えて、しかも上の風と両方の収入が得られるいい形だと思うんですね。ただ日本の場合は、ヨーロッパのように絶対に風力発電の電気を買い取りなさいという買い取り決めが電力会社に無いですし、いくらで買いなさいという高い価格も決まっていないので、最初に設置する時には補助が出ることがあるのですが、なかなか安心して設置できないというその辺が一つの障壁だと思うんですね。この辺の経済性について、梼原はどのようにクリアされていますか?

〇中越武義氏
 たまたまわが町が設置した時には、四国電力と交渉して実は1キロワット当たり11円50銭で15年間買って頂けるということで契約をしています。その関係で、大体年間で4000万から4400万ということですが、今年はちょっと風況が良くて、5000万程度売り上げがあるんではないかと。その約10%が管理費にかかりますから、その後を今言ったように地域の循環・環境にまた利用できるという事になっています。

〇枝廣淳子氏
 なるほど。でも15年買取という約束をしてくれると、安心して設置できますね。そういった事が、日本でも出来るんですね。今とてもいいなと思って。

〇中越武義氏
 そうですね。この点については、やっぱり一つは隣に知事がおられますけども、家地川ダムの関係もございまして、電力がやっぱりそういった事も多少配慮してくれたんかなという風に思っていますけども。もう少し配慮して、もう少し高く買っていただいたらもっと良いんじゃないかなと思っていますけども。

〇枝廣淳子氏
 本当ですよね。では、次に経済の主体というと産業界、企業ということが非常に重要なプレイヤーになってくるんですが、特にそのあたりで高知で新しい動きが起こっているという事を、私も前から東京の方にいて話を聞いています。西山さん、お話をいただけますか?

〇西山彰一氏
 私、高知エコデザイン協議会の会長を務めさせて頂いております、西山彰一と申します。この高知エコデザイン協議会といいますのは、環境の問題を取り組むに当たりまして、企業・行政あるいは市民団体が個々に取り組んでいてもなかなかこの色んな共同作業が出来難いだろうといったことで、産業と行政と教育、そしてまた民間が一体になった組織として2000年9月18日に発足を致しました。

 現在、305名の会員の皆さんと共にこの地域で出来る様々活動をこの循環型社会に到達するためには、どのような絵が描けるのだろうかという事を目指しながら進めていく作業、これをエコデザインとして私ども活動を続けているところでございます。次お願い致します。

 現在このエコデザイン協議会の活動なんですが、三つの委員会から構成されております。まず最初に、「ブランド化推進委員会」というのがあります。これはですね、やはり一村一品などと言われるように各地域でこういう環境配慮型の製品がありますよ、という事を皆さんにお知らせしていくという作業が必要となってまいります。

 特にこの地域の中で行なわれている製品サービス、こういった物を環境面から評価をして環境へどういった配慮がなされているのかという事を私どもは研究してまいります。そして協議会としてこの何らかの統一ブランドを目指して全国的な情報発信をしていきたいなと思っております。現在具体的にはホームページなどを通じて、様々な団体の皆さまとリンクをしながら、この活動をさせて頂いているところでございます。次お願い致します。

 続いてこれは二番目の委員会ですが、「ISO認証推進委員会」というのがございます。このISOに関しましては、代表的なものとしては14000シリーズというものがございます。各企業の中でこのISO14000、とにかく少しでも環境にやさしい企業を目指してどういう事が出来るだろうかという半ばISOに対する憧れ的なところがあるのかもしれませんが、実際はISOの認証取得の作業にかかりますとですね、なかなか骨が折れるということを体験なさった方がいらっしゃるかと思います。

 しかしながら、実際このISOを取ることそのものが本当に目的なんでしょうか、ということをこの認証取得委員会の活動を通じる中で皆さんにお知らせを出来ているんじゃないかと思っています。

 このISOを取得する本当の目的というのは、おそらく自分たちの作る製品・サービスそしてまた色んな活動のあり方が本当に持続、発展できるその仕組みの中に位置づけが出来ていると同時に本当にやりがいのある活動であるかどうかの確かめになっているのではないかという風に思います。

 このISOを取得し、また取得をした後の維持に関して、どういう事柄が必要かということをお知らせする活動をしている委員会が二番目のISO取得推進委員会でございます。次お願い致します。

 三番目の委員会は「サロン委員会」といいます。これはサロンといいますと、なんとなくやわらかい雰囲気が致します。その通りこのサロン委員会というのは、おそらくものづくりということから考えますとどうも生産者主導といいましょうか、供給する側の論理が先走ってしまいまして、技術開発は非常に優れているんだけれども、どうもこの製品が買ってもらえない。

 私たちのこのサービスは本当に環境に配慮してやっているんだけれども、なかなか受け入れてもらうことが出来ない、などといった色々な悩みが出てまいりますが、実際にこのサービスとか社会の仕組み、そしてまた製品・物作りというのが利用者の方と一緒に、こんな物本当に役に立つんじゃないだろうかなんて事を共に考える場ってあったらいいんじゃないかな、と思うんですね。

 特にNTTドコモさんなんかもお客様の声を反映させる事においては大変献身的にお仕事をされておられまして、そういったお取り組みなんかもこのサロン委員会で参考にさせては頂いております。

 今女性の方が委員長を務めていただいておりまして、この製品サービスというものを先程申し上げましたのと少し重なりますけども、本当に利用者から見た時にどう受け取られるのか、そしてまた更に製品サービスがより良くいい物になっていくためには、どういった点を改善していけばいいのか、そういった事を協議を重ねております。その成果が色んな形でこれから現れてまいるところでございます。続いてお願い致します。

 主な活動の内容と致しましては以下の五つの項目になりますが、三つの委員会の発表の場ということでもありますし、連携の場ということがこの活動の内容となってまいります。一番目には「環境メッセ・エコプロダクツ高知2002」を開催いたしました。このメッセにつきましては、あとで写真が出てまいりますのでご紹介を致します。

 そして「高知エコ産業大賞」というものを創設いたしました。特にこの高知県内で取り組んでおられる企業・団体の方々の環境配慮のグランプリといったものを構えました。せっかく作ってもなかなか皆さんに知っていただく事が出来なければ、その努力というのはなかなか報いられることが出来ません。そういった面で、このエコデザイン協議会として三学会の連携を持ってこの産業大賞をかまえてその取り組みに対して、検証をしていこうということであります。

 三番目は環境関連製品、システムのカタログを制作いたしました。そして後はセミナーの開催と、四国四県、そしてまた全国の団体との連携をしながら活動の輪を広めているところでございます。続いてお願い致します。

 これが環境システムのカタログでございまして、現在各方面の方に配布を致しまして、まずこの高知県の環境に関わりを持った企業の総合カタログと見ていただいていいと思います。「高知県は環境でどんな企業がありますか?」という事をお尋ねいただければ、このカタログをご提示出来る体制になっております。ぜひご希望がありましたら、お問い合わせ頂けたらと思います。どうぞ次お願い致します。

 これが「環境メッセ・エコプロダクツ2002」でありまして、本年2月22日から2月24日まで開催をいたしました。来場者数が12000人参加していただきました。このメッセのやはりメイントピックスとしてぜひ取り上げたいなというのが、子供さんと一緒にこの環境の問題を捉え、取り上げるということ。

 そして実際に小学生が環境をどのように見ているのか、そして大きくなった時非常に大事なことだと思うんですが、この町をどう今の小学生の目線で捉えているのか、そして子供さんの手で出来る事がどんな事が出来るかということをしっかりアピールして頂く事ができました。

 この小学生の発表の他、行政としての様々な環境配慮の取り組みの紹介、そしてまた地域の団体の皆さま方の取り組み、そして企業の製品の紹介、そういったものが話されております。この「環境メッセ・エコプロダクツ2002」は、経済産業省のエコタウン事業の認定も受けて実施をされた全国でも比較的新しい事例の一つでございます。続いてお願い致します。

 これがエコ産業大賞の表彰式でございまして、先程の環境配慮型の企業でグランプリを受けられたところの写真でございます。続いてどうぞ。

 エコ産業大賞でどのような企業が大賞をとったかと言いますと、今日のテーマにも近づいてまいりますけども、風力エネルギーをいかに低コストで製品化していく、役に立てていくかというものでございます。「ヴィエントーサ・トゥインクル」という製品名でありまして、トゥインクルという名前でありますと、多分こういったローターが回る物ではないかなというイメージが描かれると思います。

 こちらの方はローターが回転しながら非常に小さい風力であっても電気エネルギーに替える事ができるといった事での取り組み、このユニークさで大賞をとられております。どうぞ次お願い致します。

 エコデザイン協議会のこれからの展開という事が皆さまの色々なお問い合わせを頂いているところでありますけども、事業の継続性の運営、そして先進事例の検証、そして環境に配慮した製品を更に育てていくといった事の三つの点でこれからの発展と展開をもって皆さんのお知恵を借りながら進めていきたいなと思っているところでございます。どうもありがとうございました。

〇枝廣淳子氏
 ありがとうございました。エコデザイン協議会、エコデザインの動きというのは、日本の中央から進んでいる所もあるんですが、県ではじめてエコデザイン協議会というのが出来たのは、本当に高知がはじめてなんですね。そういった点で、高知の方々、特に産業界の方々のそういうご意識がとても高いのかなという風に思って伺っておりました。今三人の方からそれぞれお話をしていただきましたが、浅井さん、いかがですか?

〇浅井愼平氏
 首が痛くなりました。でも首が痛くなった甲斐があったんですが。と言うのは、理念がなかなかしっかりしていて良く出来ているんですが、それを実践されておられるという事でちょっと正直に申し上げると驚きのようなものがありました。

 特に町長のおやりになっているのは、非常にモデルケースになる。ですから表彰もされたんでしょうし注目もされていると思うんですが、そういった考え方が日本の隅々まで伝わっていって何か参考になったりすれば、非常にいい方向に行くんだなと。

 今日最初に二人でお話した時にも出ましたけど、何か少しやはり時代が動いているのかなという事の証拠のような物を見せていただいたので、なかなか感動的でした。

〇枝廣淳子氏
 ありがとうございます。今回このパネルディスカッションのテーマに「もり・みず・かぜ」というのを選ばせて頂いたのですが、ちょっと皆さんに考えてみていただきたいんですね。今から二つの生活パターンを言います。どちらが持続可能と皆さんお思いになるか。

 一つのやり方は、先祖代々蓄えてきてもらった貯蓄を食いつぶして生活をする。もしくは人の世話になって生活をするパターン。

 もう一つは、その日の自分の収入で生活をするパターン。

 というと当然大体の人は後半の方だろうと、その日の自分の収入で生活をしていく方が、自分の足で立って安全だし、長続きするだろうという事を思われると思うんですね。ところが今の日本はそうではない。例えば世界もそうではない、化石燃料を掘り出して、それを使って経済をまわしています。

 日本も今この時点でも270隻のタンカーが中東から日本に向かって私たちの生活を支える為に石油を運んでいるんですね。日本は先祖代々の貯蓄を食いつぶし、しかも人の世話になって生活をしている状況ではないかと思うんですね。例えば石油があと50年もつとか、いや650年もつとか論争がありますけれども、あと地球は50億年ぐらい続くらしいんですね。

 50億年というスパンで見ると、50年も650年も大差ないんじゃないかと私なんか思ってしまいます。そうした時にこのテーマに選んだ「もり・みず・かぜ」あとプラスお日様なんですけども、それは私たちが使える物なんですね。過去の遺産を掘り起こさなくても使える、その日の自分の収入になると思います。エネルギーもそうですし、例えば今研究進んでいるのは、プラスチックもそのうち木から作れるようになると。
 

〇 枝廣淳子氏 
 ちょっときびしいと思うのですが、高知県とか檮原町とかそういう小さな地域で、あるまとまりのある地域でエネルギー100%自給できているとか、食糧も他の国にお世話にならなくても自給できてるとか、特別な物は除いてですね。そういう遺産によらない他人に頼らないいい意味でのその日暮らしというのを、これから多分日本の小さなあちこちで進めて行かなければいけないと思うのです。

 そういった点で例えば知事と町長にお聞きしたいのですが、いい意味でのその日暮らしの今高知県はどういう状況にあって檮原町はどうなのか、ちょっと付け加えていただけますか。

〇橋本大二郎氏
 その日暮らしと言われると何かどきっとしますね。

 エネルギーのその日暮らしで言えば、質問にぴったりした答えじゃないかもしれませんけど、難しい面があると思いますね。というのは、従来自然エネルギーだといわれていたもの、つまりその日暮らしに近いものが、今の時代になってみると環境的にはいろんな影響を与えているという例があるからです。

 さっき中越さんがお話の中でちらっと言われた家地川のダム堰というのはまさにその例だと思いますが、四万十川は法律的な意味でのダムはないです。大きなものは。しかし、一般の人が見ればこれはダムだなと思う家地川の堰というのがあります。

 これは発電用のもの、つまり水力発電用のものでそこから水を汲み上げて四国電力が発電をされて、その水は別の河川に戻すという仕組みになっています。このことは、かつては化石燃料を燃やすよりもずっと自然に近いものでしょうという考え方だったと思います。 

 ところが、森林がだんだんだんだん衰えて水の量も減ってきた。そういう中で同じように水力の発電で電気エネルギーをまかなっていると、これはその日暮らしではなくて、むしろこれまで貯蓄してきた水がですね、だんだんだんだんその貯金を使い果たすような状況になってきている時に、なおその貯金を使ってやっていると河川そのものの環境もおかしくなってくる。というような問題点が今出てきてると思います。

 ですからこれまでのその日暮らしの生活の中でも、やはりもう一度その環境に与える負荷というものを考えなきゃいけない時代になってきてるなということを、その家地川のことから自分は学びました。

 それでこれまで30年だった更新の期間を10年間にして、この間に今度は水力に代わるさっきご紹介のあった風力だとか、それからペレットストーブの話をちょっとしましたけど、こういうペレットと木くずやなんかを合わせて、それに他のエネルギーも混ぜますけれども、バイオマスというふうな手法だとか、そういうものがどこまでできるかというのが、これからのこの10年ということで言えば、その日暮らしで考えなければいけないポイントだと思っております。
 ということで後はいかがなものでしょうか。振ってしまいます。

〇中越武義氏
 知事に振られると後が言いにくいわけですよね。
 私が思うのは、風力発電を設置をしたときに一番やっぱり問題となるというのは、その設置するまでの道路の状況がひとつ、一点大変問題になる。もう一点は、やっぱり送電線、この山間地域はおしなべて今○○○電力の使用量が少ないといったことから、送電線をどこまで引っ張っていくことでその電気を皆さんに供給できるかという、その送電線の距離によってペイできるかとどうかということがでてきますので、そういう意味からいうと、設置をするのに条件は良くても送電線が長い、あるいは道路がないということになれば、なかなか難しいと思います。

 ところが私のところは、比較的道路ができておったということ。それから送電線も比較的近い所に対応できる。これから設置をするのにはそういった意味では非常に多くの経費がかかります。

 となると今まで開発ができず、自然が比較的残っている、そこでできたものを町内の方々に供給するということで、今言ったように電気がある程度その地域でまわるということにもなるのではないかと。どうしても長い経費がかかるとなれば、そういったこともやはり考え方のひとつとして考える必要があるのではないかなと、そういうふうに思います。

 そしてさらには、水も少なくなりましたけれども、小水力にしても太陽光にしてもやっぱりそういったできるだけ自然エネルギー的なものを利用していくと、そしてその中でどうしても付属するものを入れてくるということをすると。そこで今日のドコモが対応しておられる、サービスをするわけではありませんけど、やっぱりそういう意味からも今言ったように携帯とか情報の過疎のならないような地域づくりを一緒にしていくということが、その日暮らしをするにも必要ではないかなというふうに思います。

〇橋本大二郎氏
 あとですね、もうひとつ町長さんが言いにくいことで、もうひとつの課題としてあるのは、そのさっきの風力発電のあれが建ってたとこが、四国カルストという大変風光明媚な所です。

 このためにお隣に愛媛県の柳谷村という村があって、そこも含めてもう少し風力の風車を建てたらという考え方があるわけですけど。あれがいっぱい建つことが果たして景観にいいかどうかと、そういう意味での環境の問題というのが別にでますので、ただ単にやっぱり自然エネルギーだねと言っていたのでは、なかなか全体のコンセンサス、合意が得られないという難しさももうひとつあると思いますね。

〇枝廣淳子氏
 そうですね。風力の場合は往々にしてとても貴重な鳥がそこにしか住んでないとか、渡り鳥がぶつかったらどうするんだとか、やはりトレードオフというかこちらを進めようと思うと別の問題がどうしてもでてきてしまう。その時に何を基準として判断していくかということになると思います。

 例えばその水力といったときに、これまでの大きなダムをつくってそこで大きく発電するというのではなくて、さっき町長がちらっとおっしゃった小水力といいます、小規模水力発電の略なんですが、今ある河川にちっちゃなものを置くだけでそこで発電できちゃう。たくさんは発電できないんですけど。

 例えば日本の川はとても急ですね、山からいっぺんに流れますから。ヨーロッパの人が昔それを見て、日本は川ではなくて滝だと言った話がありますが。そういう農業用水とか今ある流れをそのまま生かすというような形でですね、あともうひとつは町長がおっしゃった事で、分散型というか独立型というか、送電線に売っていくらではなくて、売ることも考えない、自分のところの電気をまかなうみたいなですね、そういう方向にきっといくんだろうなと思います。

 ぜひ今度はバイオマスの話を伺いたいのですが、その前に皆さんにちょっとお話をしておきたいのですが。森とか森林といった時に持つイメージが結構人によって違うと思うんですね。天然林、原生林のようなそういう手つかずの森林を思い浮かべる人もいます。

 ただ高知もそうですが、日本の森の場合ほとんどが人工林といって、人が一回切った後に植えて森になっているのです。そういった時に、では森を守ろう、森は大切がといった時に、原生林とか天然林のイメージを持っている人は、切っちゃきけないといった方向にいっちゃうわけですね。

 ところが人工林というのは、人間が手を入れてますから手入れしないと荒れてしまう。だから人工林だったら森を守には、逆に切ってちゃんと使っていくことだということだと思います。私はよく森というか人工林はですね、50年で育つ大根だというふうに講演なんかで言うのですが、大根だってつまみ菜をちゃんとつまんで、それはつまみ菜として売れるからまた手数料が入るわけで、そういう意味では間伐材もちゃんと売れて、それがまた次の手入れのお金になっていく仕組みがないといけないなというふうに思っています。

 そのあたり県もとても間伐を進めていらっしゃいますし、国の補助に加えてやっていらっしゃる。今朝の新聞をたまたまホテルで見ていたら、土佐嶺北というのですか、第三セクターの間伐のプロ集団が素晴らしい生産性を上げて、これまで間伐はお金にならないと言われていたのが、山主さんも喜ぶし雇用にもつながってるし、もちろん県民とか地球もうれしいというようなとてもいい記事を読ませてもらったんですね。

 その辺の高知が今進めていること。あとペレット、ペレットとさっきから出てるんですが、木くずを固めてこんな小さなポロポロという固まりにして、それを燃料にして

〇橋本大二郎氏
 持ってきております、一応。小さいですけどね。

〇枝廣淳子氏
 あ、ありますか。皆さん見えますか。本当に小さなものなんですが、それをペレットストーブとかペレットのボイラーとかに燃料にする。これはスウェーデンの方はとても進んでいて、もうすべて自動調整で、これぐらいの火力例えば何時にこれぐらいの暖かさというふうにいうと、ペレットストーブが自動的に調整して、必要なペレットを流し込んで燃やしてくれる。

 人々が私たちが灯油を買いに行くように、ペレットを買いに行くんですね。そういうような姿がスウェーデンではあるそうですが。そのペレットストーブ、ペレットについても高知は進めてらっしゃるということで、知事そのへんを少し補足していただけますか。

〇橋本大二郎氏
 あんまり補足するだけの知識がないのですけれども、今お話のあったペレットというのはこういうものです。ポッキーよりもうちょっと太いぐらいですけれど、長いとポッキーみたいですけどね。木くずをおがくずなどを固めてつくったものです。この製品は100%おがくずですけども、いろんなつくり方が多分あると思います。

 従来ですとこういうおがくずだとか木の皮だとか、例えば材木をつくる時にでてくるもの、これは製品をつくる時にでてきますので、産業廃棄物ということになります。

 つまり捨てるのに、捨てなきゃいけないし、捨てるのにちゃんとお金を払って捨てなきゃいけないというものになります。それは結局生産者にもひとつの負担になりますし、またゴミの処理という環境上の問題もでてきます。そこでというわけではありませんが、やはり資源循環の中でそれを産業廃棄物、ゴミとして扱うのではなくて、資源として考えていこうというのが、ペレットストーブもそうですしバイオマスもそうだと思います。

 それでペレットストーブに関してはさっき申し上げたように、県のグリーン調達という、環境に優しい物を買っていきましょうという項目にはストーブを入れて、そこに木質系のペレットを使ったストーブをということで、とりあえずと言ってはいけませんけども、この森林関係の仕事をしております森林局の関連の施設からということで、土佐山田という町に森林センターがあって、そこに学習館があるのですけれども、この学習館の中とか。

 それから同じく山田ですけれども、甫喜ケ峰というところに県立の森林の公園がありまして、底の中に使うというようなことをやっています。

 今後やっぱりバイオマスというのはとても重要な課題だと、日本全体にとって重要な課題だと思うのですけれども、今そのバイオマスに関してはやはりどの地域からどれぐらいの木くずやなんかが出て、それをどういう形で集めれば一定その効率性が合うかというようなことを調べています。

 そういうことが調査としてできないと、いきなりやっても大赤字なのではしょうがないということなので、そういう調査をしてますが。風力の場合もそうですけれども、やはり今の化石燃料を燃やすような、また原子力のそういうエネルギーのつくり方に比べれば、やはりコスト高になるのは間違いないだろうと思います。

 その時にやはり税制でそれを補うのか、税の制度で補うのか、それとも補助金という形で補うのかという二通りの方法で行政としてはやっていかないといけないだろうと思いますけれども。

 税制というのは先程水源税のような特別のお話をしましたけれども、全体的に税をまけるというのは、県の単位ではなかなかしにくい面があります。これはもう細かいテクニカルな話しになるからこの程度にしますけれども、つまりは税をまけるとですね、それだけ財政的に豊かなんだから地方交付税を削りましょうということになりますので、県の立場でも町の立場でもなかなかやりにくい面があります。

 ということになると、補助ということになりますが、県や町の単位でなかなか補助をしても動くものではないだろうということで言えば、逃げるわけじゃないんですけども、やっぱり国全体でこういうバイオマスやなんかに対しての税の制度をつくっていく、環境税的な考え方をして環境に負荷を与えている企業なりそういう個人から少しでも多くの税を取って、そうでない努力をしているところの税を下げるというようなバランスを考えておかないと、なかなか成り立たないなということを思います。

〇枝廣淳子氏
 そうですね。バイオマスに関して中越さん、西山さん、何か追加していただけることがありますか。

〇中越武義氏
 そうですね、あのバイオマスというのはこれからの時代はどうしても研究していかなければなりませんけども。四国の山地というのは非常に急峻な地域が多いわけですよ。ですからその材料調達に結構時間と労力がかかるということから、比較的難しいという事もあるんだろうと思います。

 けれどもこれはどうしても避けて通ることができないと思います。というのはなぜかと言うと、今公共事業は大変厳しい状況で批判をされてますけども、やっぱり我々の所はまだまだその必要だ。ところがその山肌を切るじゃないですか、そして山肌を切った木材が、産業廃棄物だと言われるわけですよね。

 私はそれは違うのではないか。何でそこへ向けて対応したのを山に還元しておけばいいものを、それを事業をやるから切り取ったからそれが産業廃棄物だと、そういうものを利用するという方向で、今言ったようにバイオマスとかいうところに変えていくというそういうもうひとつの循環ということを考えないと、私はいけないのではないかということを思ってまして。そういう意味ではやっぱりこれから非常に必要になってくるのではないかなと思います。

〇枝廣淳子氏
 ありがとうございます。いかがですか。

〇西山彰一氏
 はい、若干の補足になるかどうかわかりませんけども、やはり仕組みをつくるということが非常に大事だと思いますね。ですからバイオマスでこういういいことがありますよという技術的なことをお知らせをして、それを順番に積み重ねていって、生活者の方あるいは消費者の方に使っていただくというステップを踏むには、あまりにも時間とコストがかかり過ぎるという事が数々の事例で考えられますので、できるだけこの開発の段階から産学官民が一体になって、安心と安全と安価この三つを目指してですね、ゴールを導かれることをされたらよろしいのではないかなというふうに感じます。

〇枝廣淳子氏
 私もあちこち日本の山を見せてもらって、本当に急なんですよね。あそこで木を切り出してというのは大変だと思います。今切った後の運び出すのもお金がかかるというので捨て切り間伐がされてますけど。それで日本はとても技術力が高いですね、工業製品とか。特に小型化というのは得意です。

 ですから今のバイオマスからペレットをつくる機械、今大きいのですが、それを技術革新で小型化してくれて、例えば小型の掃除機ぐらいのものでですね、山に持って行ってそこでペレットにしちゃう。そこでホースをつなげておいて、どんどんどんどんペレット工場に流しちゃうみたいな、今運び出してからペレットにするので大変なんで、是非、それは私の夢物語ですけど、エコデザイン協議会でそういったバイオマスペレット製造機をデザインしていただければうれしいなあなんて思います。

〇西山彰一氏
 ありがとうございます。新しいテーマをいただきましたので、お土産としていただいてまいります。名誉顧問として橋本知事に務めていただいておりますので、賛成たいします。

〇枝廣淳子氏
 じゃあ二人に聞いていただいたということで、楽しみにしていたいと思います。
 あとバイオマスペレット、ペレットストーブをですねやっている人たちに話を聞いたのですが、単にエネルギーの観点だけではなくて、火を見るというのがとても人間の精神にいんだという話を聞くことがあります。

 今私たちは火を見るということがほとんどないんですね。でもうちの中にストーブがあって、そこで火が燃えている。じゃあ暖かさとか温もりって何がつくってるんだろうというのがそこで見えるというのです。本当に単に火が燃えている様子を見るだけで、人間の精神が安定するという話を聞きますが、そのあたりも含めて浅井さん、どうですか。火。

〇浅井愼平氏
 火ですか。火は実は僕先程ちょっとお話してたかどうか知りませんが、たき火。僕は橋本知事とか町長さんみたいな役職ができない性格だからこういう仕事をしているのですが。

 ある時たき火の事を僕の友人が文芸春秋に書いたらですね、たき火の会みたいのがあったらぜひ所属したいということが、あちこちから手紙が来まして、たき火に対する、今火の話からでているのですが、思いのある人がどうもたくさんいるということになってですね。その友人が僕にその会の長になってくれないかと言ってきたんですね。

 僕は長が嫌いなので、影で動きたいということを言ったのですが、そこをなんとかと言われて、それでは僕が名前をつけていいかと言ったら、もちろんですと言われて、『国際たき火学会』というとんでもないはったりの名前をつけまして、それがもうできあがったのですが、一度も総会をしたことがないんですけれども。

 今日話しにでた立松和平とかいますけども、いろんな文化人なんだかんだがいて、世界たき火学会なるものをつくって、今日は学会へ行ってくると言って二人か三人でたき火をするんですね。火というのは人間の非常に原始的なアイデンティティーに関わるもので、火を見ればいろんな思考もできるしとても大切なものだというふうに思っているんですね。

 ですから、今おっしゃった森というものの存在がね、今日街の循環型のエコロジーの話の中にもでてきましたけれども、そこで感じたものというのは、風の話しもでましたが、要するに具体的な風とか森とか水とかというものと同時に、人間の内部にあるつまり我々人間の心の中にある森、心の中にある水、心の中にある風というものが実は人間を生かしているのでしょうね。

 ですからそういう意味でも、自然と人間との共生というのはやはりとても重要であるし、意味を持ってくるんだと僕は思ってるんです。多分皆さんもそういうふうにお考えになっていると思うんですね。ですからそれをまた実際に具体的にいろんな形で実行されておられるのが面白かった。そしてひとつは気候風土と伝統的なものとそこに住む人々の気持ちが何かをつくり上げていくということなんでしょうけども。

 ですから僕は今のお話の中に当然組み込まれていると思うのですが、やっぱりひとつは僕はどう考えてもこれからの環境にとってはエネルギーをどうコントロールするかというのはとても重要だろうと思うのですね。つまりエネルギーができるから使っていいんだというのではなくて、どれぐらい使っていいのかという、つまり消費のバランスですかね。

 それを例えば行政の指導も必要でしょうし、市民の自主的なものもあるでしょうけども、何か目安というようなものをこれから先ね人間達が考えていかないと、あるんだから使っていいんだというやりかたをしますと、きっとまたね違う問題が次から次起きてくるだろうと思うのですね。

 ですからそのエネルギーの使い方の思想といいますか、文化といいますか、そういうものがこれからそういうコンセプトが必要になるのではないかなと。ですから、一方でエネルギーの生産の安全性であるとか信頼性であるとかと同時に、あるいは経済性であるとか同時に、エネルギーそのものと我々はどう関わり合うのかということをシステマチックにしておかないと、大変じゃないかなというのはありまして。

 今日はまあお三方の話の中には、背後にそういうものを感じていましたので。それがいわば地球全体にいかなきゃいけない、あるいは日本という国のいわば限られた資源の中で海外に頼っているエネルギーではなくてですね、そういうことを考えなくては。

 それから専門的に言うとこれは荒唐無稽な話かも知れないけれど、僕が今考えているのは、エネルギーが必要であるということは、エネルギーが使われるわけです。そこでまたもうひとつのエネルギーが発生するわけですから、そのエネルギーが蓄積されないだろうかと。

 例えば今マイクロフォンを使ってますが、僕の中から言葉というエネルギーが出るものを伝達していただいてますけど、その僕の言葉が持っているエネルギーをここで拾ってくれないかなと。そうするとマイクロフォンは今のように電気を使わないですむわけですね。そういう考え方であらゆるものを、例えば今日皆さん座っていますが、座っている人間のエネルギーが全部椅子からですね、どっか持って行かれてプールされているというような。

 例えばこの間ワールドカップで特に韓国の赤いサポーターのエネルギーが、膨大なエネルギーだったですね。あのエネルギーがもしプールされると、多分韓国の1年間ぐらいの電気代がでるんじゃないかとかですね、そういう荒唐ではあるけれども、同時にひょっとしたらエネルギーをもう一度再利用、リサイクルできる可能性というのはあるのではないかと。

 つまり我々の存在自体、あるいは地球の存在自体あるいは宇宙の存在自体が、エネルギーによって成立している以上、そのエネルギーをただ消費するだけではなくて、それを循環型なものに変えていく科学あるいは考え方、というものができあがることが近い将来あると、非常に人間にとってハッピーだろうと。それの基本を今それこそ県や町でおやりになっている、あるいはみんなでおやりになっているということを感じました。

〇枝廣淳子氏  西山さん、もうひとつあれですね、高知エコデザイン協議会、エネルギーキャプチャーというのをつくらないといけないですね。皆さんが座っているもしくは、いらっしゃるだけでエネルギーを取り出すような。

〇西山彰一氏
 そうですね、たくさんバラエティーに富んだエネルギーが期待できると思います。まず重さですね。それとあと熱、それとあと香りの分はどうか、いいものでありたいなと願ってますし。

〇枝廣淳氏
 ええ、いろいろと楽しみですね。

〇浅井愼平氏
 本当にそれを考えると無数にアイディアがあるんですよね。僕例えばトイレで水洗で水を流しますよね。あれはエネルギーですよね。その流したエネルギーがまた何かに使われてとかですね。あらゆることがそれにつながっていくんですね。そうすると高速道路で車がバンバンは走ってますけど、その車が走っているエネルギーが例えばどこかでプールされることができないだろうかとかですね。

 そういうふうなことを考えている研究者とかですね、あるいは集団とかがあるんだろうかと思うのですが。時々僕らのようなちょっと科学的ではない人間が考えていることがですね結構役に立って、僕の友人の科学をやっている人たちに、時々僕はそういう質問を投げかけられますとデスね、文系の人間だととんでもないことを言うものですから、それを科学の人は知らなかったりするわけですよ。

 僕はある時松茸を作りたいと思った友人の学者がいてですね、彼はいろいろ松茸の研究をしていて、ある時僕と一緒に酒を飲んでて、君は松茸のできる条件というのをちょっと今から10個くらい書いてくれというので、僕が酔っぱらって書いたら、彼はそれを見てびっくりするのが三つか四つあったんですね。

 それで参考にするとか言ってたら、ビーカーの中で2cmぐらいのものができるんですよ。彼はできたんですよ。ところがいわば我々の口に入る所までの大きさのものはまだできないんですね。僕は彼にきっともし松茸をつくったら、松茸王となって、将来は松茸を持った銅像が御木本幸吉翁と並んで出きるんじゃないかと言っておだてたんですが、なかなかうまくいかないんですけども。

 つまり今学才という言葉がありますけども、いろんな事を考える時にいろんな立場の人のいろんな意見というのはですね、ある専門を越えて集まってくると、なかなかそこには面白いアイディアがあったりヒントがあったりするので、ぜひ今日のような時に、僕はもうすごく今刺激を受けたのですが。そこまで人間がいろんなものを持っているわけですから、ぜひその知恵を結集してよりよい社会ができあがるといいなと思いますけども。

〇枝廣淳子氏
 このサブテーマの森・水・風というのは、別の言い方をすると自然資本という言い方があります。労働資本とかそういう言葉はよく聞かれると思いますけど。自然の資本だとナチュラルキャピタルという考え方が今世界的に広がっているんですが、森・水・風もそうだし、例えば受粉をしてくれる虫もそうだし、土を肥やしてくれる微生物もそうだと。

 今自然資本の計算というのは、私たちの今の経済に入ってないんですね。二酸化炭素を吸収してくれてありがとうと、木に給料を払っているかといえば払っていないし、受粉してくれてありがとうって虫にお給料を払っているかというと払ってないですね。それはただで使わしてもらってる。そこがやはり経済に組み込まれないと難しいなあというふうに思います。

 これはワールドウォッチ研究所の理事をやっているレスター・ブラウンがよく言う話ですが、3年前に中国の揚子江ですごく大きな洪水がありました。あの時中国政府は最初はあれは天災だという話をしていたのですが、実は人災だったと。揚子江の上流の森林の8割を全部切ってしまってたんですね。

 それで保水力がなくなって、あれは人が災害を起こしたんだと。その時の中国政府が面白いことを言っていて、彼らは計算したんだと思いますが、立っている木1本は、切って木材にした木3本よりも価値がある。という計算をしたのです。それまでみんな木を切る業者さん達がそこにいたのですが、伐採一切禁止、みんなもう植林業者さんに贖罪をして今一生懸命植林をしています。

 そういうふうに何らかの価値を入れ込んで考え方もしくは計算を変えていかないと、今個々のレベルではみんな確かにバイオマスいいですよね?とか風力いいですよね?とか言ってもですね、なかなか進まないと思います。その辺は皆さんのご活動の中でも難しいところ,ぶつかってらっしゃるところかなと思うのですが。その辺を乗り越えるためにどういうことができるのか、何をしたらいいのか、難しい質問だと思うのですがぜひお考えを聞かせていただきたいと思います。

〇橋本大二郎氏
 難しすぎるので誰か先の答えてくれませんかね。

〇中越武義氏
 そうですね、まあ価値というのは三菱総合研究所が去年調査されたのでは、70兆2600億の価値があるんだとかいう報告を出されてました。けれどもこれは皆さんが価値として認めるかどうかですれども。その価値をそれなら今言ったように山間地域あるいはそれぞれ発散させている地域に還元をするかとなったら、そうなってないんですよね。

 昨夜のスペシャルでも話がでていましたが、そういった価値観をやっぱり皆さんに植え付けるということ、あるいは分かっていただくということをどうするか。広く浅くやっぱり皆さんに分かっていただいて、そのものが特に守っている地域に還元ができるという対策がとれないものか、と私は思います。

〇橋本大二郎氏
 あとですね、と中越さんにしゃべってもらってる間にちょっと答のアイディアが浮かんだのであれなんですけども。
 個別にいろんなことをやってても、なかなかさっき言ったようなコストの問題なんかがあって成り立たない。それをいかに結んでいくかということをひとつ大切な視点ではないかと思うんですね。

 さっきの中越さんの最初のプレゼンテーションの中にもあったんですが、もう何十分も前なのでご覧になった方も忘れてるかもしれませんけれど。その森林ではFSCでやってみようと、農業ではISOの14001番を使っていこうと、こういうお話がありました。

 ISOの14001というのは環境に関する国際基準でですね、企業などまた高知県も取ってますけども、いろんな団体や企業などが取ってるものです。高知県では農業にISOの鎖をつくっていけないかという取り組みを今やっています。

 というのは、県庁のいろんな施設が機関がISOを取る中で、環境保全型の畑作振興センターと名前は難しいですが、要は環境に優しい農業を進める、そしてそのための研究をするセンターです。窪川町という町にあるんですけれども。ここがISOの14001番を取っております、すでに。

 それでこれに合わせてですね、各農業者の方々がそれぞれISOを取るというとものすごくお金がかかって大変なことになります。ですからこの環境保全型の畑作振興センターがISOの14001番を取りましたので、このセンターに登録をしていただいて、そしてその指導を基に県との契約を結んだ農家の方々が、そのままISOの認証になっていくという仕組みにしております。

 それでこれに合わせて今度はそこからでてきた野菜を集めてそして売っていく、その機能を果たしているのが高知県では園芸連という団体です。園芸連もちょうど先月だったと思いますが、先月の末にこのISOの14001を取りました。そして園芸連から各大阪とか東京の市場に運んでいく運送会社が2社ございます。

 この2社の企業にもISO14001を取ってもらう。そうすることによって、個別にそんなことをやっても何だという話しになってしまいますけども、物づくり生産の段階から流通販売に至るまでISOの14001番を取っていくことによって、ひとつの結ぶということが完成をして、ISOのチェーン、鎖による農産物の保証ということができるのではないかということを思っています。

 というふうにそれぞれ個別では先程のエネルギーで言えば、小水力をやるバイオマスをやる風力をやる、それぞれだけではなかなか全体のエネルギーの変化にはならないだろうけれども。そういうものを例えば四万十川、その家地川の問題を抱える四万十川で、みんなが知恵を出し合って小水力と風力とバイオマスや太陽光を使ってどれだけのエネルギーを転換できますかということを、もう10年きって残り8年何ヶ月なんですけど、みんなで考えていくというふうに結ぶという視点も必要なことではないかなと。

 それがそれぞれに受粉をしてくれる虫にお金を還元することはできませんけれど、全体として価値として地域にも還元できるシステムになっていくのではないかというふうに思います。

〇枝廣淳子
 私も東京の方でスーパーに買い物に行くと、よくピーマンとかですとかね高知というのがついて、だいたい高知のピーマンを使わせてもらっているのですが。それがそういうつないでつくるところから、そして運んでくれるトラックまでISOというひとつのつながりで、私たちが信頼できる仕組みでやってくれてるという、そういうピーマンがですね早く表れて欲しいなと。

 その前にぜひ知事がですね、野菜になっているコマーシャルがあると、東京の方ではまだ流れてないのですが、それも見たいなと思ってますが。

〇橋本大二郎氏
 はい、関西地区と東京地区とでは放映料が3倍ぐらい違うもので。それはもちろん見てくださる方の人口とかその経済効果に影響が、関係あるわけですけど。東京でもぜひやらせていただきたいとは思っております。はい。

〇枝廣淳子氏
 そうですね、楽しみにしています。
 あとですね、今回のもうひとつのサブテーマがコラボレーションということで、今のつなぐ結んでいくということに本当に関係してると思うんですね。それぞれの人たち、それぞれの立場で一生懸命やるだけでは、どうしても次にいけないところがある。そこはやはり立場の違う人たちが一緒にやることで、もしくは補い合うことで進んでいけると、それがコラボレーションの意味だろうというふうに思います。

 これは浅井さんを含めて、最後に浅井さんにお伺いしますが、それぞれの方にですね、ご自分の立場、例えば今回行政からそれから産業界から、あと市民の立場がないので私が代弁しようかなと思ってますが。例えば行政でも県に対してもしくは市町村に対して望まれること。それから産業界に対して望まれること。市民がもしくは住民がこう動いてくれたら、これがあったらもう一歩いけるのにというのが多分あると思うのですね。その辺をじゃあ西山さんからお話をいただけますか。

〇西山彰一氏
 そうですね、あのまず共同という言葉がでてまいりましたので、共同の核をどういう展開をするかということをお話したいなと思います。

 まず企業の方から考えたときには、やはりお客様があって私たちの仕事があります。ですからやはりいろんなサービスとか製品、そして仕組み、価格、これが最大限に喜んでいただかなければなりません。その喜んでいただくということを今カスタマサティスファクション,CSという言い方をしております。

 ですからこの共同というものをですね、産業側から見た時には、お客様の生の声を聞く、生の声を聞かせていただくというフィールドで共同作業もあるのではないかなと思います。

 そしてまたお客様サイドの方から考えますと、やはり今の社会の仕組みの中で潤いを求めておられるわけですね。その潤いというものが、企業サイドから考えたらこういうような提案がありますよ。あるいは企業から離れて環境問題に取り組む諸団体としては、メッセなんかにおいてこういうような提案ができます。それでもって皆様方の潤いというものを肌で感じていただけるのではないでしょうかということを提言できるのではないかと思っています。

 いずれにしましても共同作業というのは楽しくなければいけません。そしてあと楽しければやっぱり友達も連れて一緒に行こうかということになりますので、そういう和が広がることを考えていきたいと思いますし、またあまり喜んでいただくがために単なるうけ狙いというようなことでもいけないと思います。やはり心を言いましょうか、それぞれの共同作業に関わる思いですよね。これはやはり大事にしていきたいなというふうに感じているところです。

〇枝廣淳子氏
 はい、ありがとうございます。では中越町長お願いいたします。

〇中越武義氏
 はい、私は先程説明いたしましたように、FSCというのを県が説明会をしていただいて、それにうちの森林組合が真っ先に手を挙げて、大変職員が努力をしていただいて、取らせていただいた。FSCの認証を受けただけで今言ったようにそのことがなしとげたというわけではない。

 それからもう一点は、FSCを受けてもそれがどういうふうに地域の活力につながったのかと聞くと、今の段階では、ただ高知県でもひとつ、全国でもまだ四カ所しかないといったようなことから考えると、もっとこれは増えていくべきだと。特に高知県には吉野川や仁淀川や四万十川があると。

 その流域をやっぱり指定を受けて、皆さんがやっぱりその中で環境に配慮された山をあるいはつくると、そのことが水をつくるまた海を潤すということになる。そういった形のものを皆さんで使っていただいて、それが環境に協力をしているという参加をしているという、参加意欲がわくという方向付けをみんなしていかなければならないのではないかなというふうに思っています。

 ところがそういったように地域で恵まれている所はいいのですが、今の国の政策というのは、もう右へ倣え形式で個性というものを尊重するというような形になっていません。ですからそれぞれ高知県の中でも我が町でもそうですし、隣の町でもきっと違う、あるいはいろんな形で生かせるものがいっぱいあると思うんですよね。

 そういった個性のあるところを、個性を生かした共同というかそういったものに取り組むと。それができたらそれをまた県全体として私は支えるという力があって初めてそれぞれの個性のところが伸びていくのではないかなと、こういうふうに思ってまして、そういう意味でややもすると隣のする人を見てよければそれに追随をしていこうかなという思いではやっぱりこれからはいけないのではないかと。そんなに思ってます。

 ですからうちの千枚田の全国で初めてオーナー制度を取り入れたことにしても、あるいは今言ったように風力が、これは風力は風の関係がありますからできるところもある、できないところもある。けれども太陽を受けることはどこでもできるわけですよね。さきほどもちょっとでてましたけど。全国で一番日照時間の多い県になったということなら、そんなこともできるということで、それぞれ生かせるものがいっぱいあると思いますので、それをすること。

 それからひとつのいい例が馬路がつくってますトレーナーというものをつくってますけど、それも私もよくうちの者にも言うのですが、やっぱりあそこで一生懸命対応しているのがみんなで売るあるいは使うという方法をみんなで考えようじゃないかと。

 これは高知県の東だから東の所で対応したらいいんじゃないかということではない。先程言ったように、やっぱり支え合うそのことが地域の共同であり、県の共同につながるんだというふうに思ってまして、そういう取り組みを私はこれからしないといけないんじゃないかなと。

 それで県にお願いしたいのは、今言ったようにISOにしてもそういった14001にしても、農業の関係で力を入れてもらってますけど、やっぱりLSCにしてもISNにしても、そういったどうしても力の弱い町村が多いわけですから、そこに視点を向けていただいて、やっぱりご支援をしていただくということをしていただくと増えてくると。そしたら今言ったように、先程知事がおっしゃられたように、結ぶというところにつながっていくのではないかなと思います。

〇枝廣淳子
 はい、ありがとうございます。では知事お願いします。

〇橋本大二郎氏
 はい、コラボレーションというのは共同ですよね。共に働くということで、共働きは高知県の一番得意な分野でございますから、必ずうまくいくのではないかと思います。

 それでいろんな共働きの形がこの分野ではあると思いますけれども、先程からのエネルギーの分野での話しにもありましたように、環境に優しい製品、自然循環型の商品というのは、これまであるだいたいのプラスチックの製品だとか鉄を使ったものだとかいうものに比べると、まだまだコストが高いんですよね。このコストをどう下げていくのかというのが大きな課題で、そこにその共同作業がいろいろでてくるのではないかと思います。

 例えば柚の製品で有名な馬路村という村があって、ここがエコアスという第三セクターの会社をつくってですね、間伐材の木を非常に薄く切って、それを目を違う形に重ね合わせて三枚張りにしてお皿だとかトレーだとかいうものをつくっています。

 そのトレーを見た時に、スーパーなどでのお買い物の時には、今発砲スチロールのトレーがついてますけど、こういうものにこの間伐材のトレーが代われば、そのアピール効果もあるし素晴らしいなと思ったのですが、値段を聞きますと石油製品の発砲スチロールのトレーというのは、1枚が1,2円でつくれるんです。

 これに対して間伐材のトレーは20円から30円近くというもので、つまりは2,30倍のコスト差が、今はもっと縮まっているかもしれません、あるということでとても無理だねという話しになったんですけれども。

 じゃあそれをどうやって夢の実現につなげていくかということを考えた時に、ひとつはやはり技術の力でコストを下げていくということが必要で、そのために行政側のいろんな研究機関もそうですし、大学などの学の部分もそうですし、企業も一緒になってそういうことを考えていくというコラボレーションが必要だと思います。

 それでもうひとつは今中越さんが言われたような、行政の補助だとか、また規制の緩和だとかいう官の側がやってくコラボレーションの分野というのがあると思います。10倍、20倍の開きですとなかなか補助で支えていくということはできませんけれど、これが1.何倍という例えば風力なんかは、今化石燃料のエネルギーに比べればそれぐらいにもうなっています。

 1.3倍ぐらいのコストだと思いますけれども。そうなってくればいろんな補助制度などでそれをカバーするということも可能になります。

 一方規制ということで言いますと、さっき小水力のお話がでました。これ、何も水利権なんかのないとこであれば、小水力どういう形でもつくれますが、その農業用水で使っているところだと、発電に使えないだとかいろんな規制が多分あると思います。こういうような規制というものを取り払って、少しでもコストを下げることにつなげていくということもひとつ必要だと。

 それでもうひとつはですね、やはりマーケットその市場を広げる。つまり買う人を広げることによって、全体の需要を広げることによって全体の価格を下げるということが必要だろうと思います。最初に枝廣さんがFSCでイギリスのお話をしてくださいました。

 僕も行った時にそのFSCの関係の団体というか協議会があるというので、その消費者団体でそういうものを買いましょうという運動かと思ったら、消費者ももちろん入っています。けれどもそれだけではなくて、公共事業を担う行政であるとか、またそういう製品をいっぱい買う“do it yourself“のお店のチェーン店のところだとか、また大手のスーパーだとかそういう企業が入っている。つまりそういうものを材料として買い付ける消費者としての立場の企業なり役所がいっぱい入っているわけですね。

 日本でもそういう形でのコラボレーションというのが進んで、単に消費者運動でお願いしますねと言うだけではなくて、行政の側も企業の側も含めた買い付けをしていく。先程ご紹介したグリーン調達というのもその第一歩だと思いますけれども、そういうことによってマーケット、需要を広げていくというコラボレーションも、こういう環境とかエネルギーということを考える時には必要なことだなと思っております。

〇枝廣淳子氏
 ありがとうございます。浅井さん、コラボレーション、まあ多分私たちは皆さんのように当事者とはちょっと違う立場でお話を聞いてきたと思うのですが。外から見てあそことここもうちょっとつながればうまくいくのになと、もしかしたら見えやすいのかなとも思うのですが。どうですかその辺は。

〇浅井愼平氏
 そうですね、おっしゃるように当事者ではありませんので、ただの市民なんですが。ただコラボレーションという言葉から浮かんでくることをいろいろ考えますと、やはり基本的に職業がなんであれ、年齢がどうであれ、同時代の市民として考えるならば、地球環境そのものがコラボレーションであるということを認識することだろうと思うんですね。

 つまり素晴らしい海は素晴らしい森がつくってる、あるいは川がつくってる。そういうふうな、つまり森は森であるとか海は海であると、かつてはそういう職業的にも漁師であれば山の民とは縁がないという感じでしたが、そうではなくて地球市民ということを考えますと、全てがつながっているんだということだと思うんですね。

 全てがつながっているという前提に立って、自分の生活者としてのあるいは市民としてのやらないといけないこと、意識しなければいけないこと、いろんな事がそこからそこから浮かんでくるのではないだろうかと思うんですね。

 ですから今日はみなさんのお話を伺って僕が教訓にすることがあるとすれば、ここにいらっしゃる方々もそれぞれ違う職業や違う年齢でいらっしゃると思いますが、しかしながら同時に共有してるものがあるとすれば、地球がやはりコラボレーションであると。  

 だから我々自身がお互いにそういう協力をしながら、知恵を出しながらということで生きていくしかないだろうと。そうなると地域の問題は当然ありますし、先程ちょっとお話ししたように、気候風土、伝統、それぞれ違います。違いますがそこで共通するものはまず認識できること。そして何が違うのかと。違うことをどうするのかというふうな。

 コラボレーションをする一番ベーシックな形が個人である。しかしながら個人で生きているわけではないという、他者と生きるんだと、同時代を生きるんだという意識がやはり必要なのではないか。そういう点ではお三方の話は、とてもそういうことを踏まえてらっしゃると思うんですね。

 だから我々としては、市民としてそれにどう対応していくのかということになるだろうと思うんですね。だから基本的にもう一度繰り返すと、やはり我々自身が循環型であるし、地球というものがそういう存在であるというベーシックな認識から多分ものの考え方が生まれてきて、それがお互いに広まっていくことによって次の世代が豊かに暮らせることにつながっていくのではないかなと思います。

〇枝廣淳子氏
 ありがとうございます。私からも一言。
 コラボレーションと言うと共同という言葉で、何となくみんなと同じ事をするみたいな感じが、イメージとしてでてきてしまう面があるんですが。多分本当のコラボレーションって、それぞれ立場が違う人たちが自分の強みを持ち寄ることだと思うんですね。 

 そういう点でじゃあ行政がコラボレーションで果たせる役割、行政の強みって何だろうと思うと、ひとつは私はビジョンをだすことだろうと思っています。私は通訳という仕事でよく国際会議にでるのですが、例えば中国の代表者がですね50年後は中国はこういう国にしますと、そのために今こういう政策を打ってる、そういう発表をなさるわけですね。

 例えばデンマークも20年前は今の日本と同じように100%石油に頼って、石油は全て輸入してそれでエネルギー源としていたのですが、20年前にデンマークはそれではいかんということで、ビジョンをだして今全国で使っている電気の15%風力なんですね。そういうふうに変わってきた。

 そういうビジョンをだして、簡単に言うとあの山に登るぞということをみんなに宣言をして、そうすると企業であっても市民であっても、いつ頃どうなるかということがわかります。それに対して対策が打てるし、進んでいけるんじゃないかなというふうに思います。

 もうひとつ、企業とか産業界の役割は、先程から知事のお話にもありましたが、ひとつは大口需要家としての力ですね。これをいい方向に、買いたたく方向ではなくて、いい方向に使って欲しいなっていうこと。もうひとつは特に流通業はそうなんですが、消費者に直接接する立場なので、意識啓発をしてもらえる立場にいるんですね。

 これはスウェーデンで面白い話があって、スウェーデンのそういうことにすごく熱心なスーパーがあるんですが、そこは自分のスーパーで、環境に優しいものは緑の棚に置くんですね。環境に優しくないものは黒い棚に置くんですね。そういうふうに区別しちゃってる。

 それだけではなくて、黒い棚のものを買おうとした消費者に、何であなたはこれを買うんですかとインタビューしたりするんですね。それでもちろん黒い棚から買う人はいなくなって、うちのスーパーに来る人は環境に優しいものしか買わないと、このスーパーは宣言して全て緑の棚になったんですが。それはかなり強行手段ですが、ひとつの消費者教育の形だと思うんですね。そういうことはきっとできます。

そういうことで言うと、先程浅井さんが、例えばエネルギーもあるから使っていいというのはどうかというお話がありました。同じように産業界は消費者が神様だという、使いたいならいくらでも供給しましょうという基本的な考え方があると思うんですね。

 これも面白い話があって、例えばアメリカのオールスターゲームやってる途中にですね停電する。日本でそれが起こってしまうと、電力会社に抗議の電話が殺到するんですね。でもアメリカは同じ事が起こると、みんなそんなもんだと思っているので、別に抗議の電話もこないと。

そんなもんだという、電気はいつもいつも完璧に高性能のものがきているのが当然だ、と私たちは思っているけど、そうじゃないよ、もしくはパソコン用には松竹梅じゃないですけれども、途切れない松の電気、高いけどどうですか、テレビ時々途切れていいんだったら、もしくは子どものテレビをちょっと減らしたいと思うんだったら松竹梅、梅ですね。時々切れるけど安い電気ありますみたいなですね、そんな形ができないかな、そういう意味で消費者が神様、神様は神様なんでしょうけれども、少し誘導していくような動きが産業界から出ればなあ、なんて思います。

 もうひとつ私も含めて一般の市民の役割、私たちの強みというのは、お金を使う。買い物ですね。買い物は投票だと私はよく言うのですが。それは先程から皆さんの話にもあります。よく中国からの安い野菜が入ってきてけしからんとか、セーフガードしろとか言っていますが、言ってる人たちはスーパーで何を買ってますか。本当に自分達が望ましい方向のものを少し高くても買ってますかと言うと、ちょっとクエスチョンがつく場合があります。

 欧米に比べると日本の消費者、生活者はあまり声を出さないというふうに言われますが、声が出ないということは、例えば行政にとってもそうです、企業にとってもそうですけど。声が出ないということは反対者はいない、反対はない、これはオッケイなんだということになってしまうわけですね。

 そうじゃないというような声をもっと私たちは出さなければいけないなと思います。例えば私たちが欲しいのは安いことだけじゃないんだよ、もっと大切なことがあるんだよ、というようなことを買い物を通じて、もしくは直接声を出すことを通じて、それが今ここにいらしてるような、環境の方向で一生懸命やろうとしている行政とか企業に対する何よりの応援だというふうに思います。

 あとこれはもうひとつのコラボレーションは、アイディアの持ち寄りができるということで、これはひとつだけ面白い例があるのでお話しますが。ドイツのフライブルグというところ、環境に非常に熱心なんですが、そこがサッカー場を持ってるんですね。サッカー場の屋根を太陽光発電にしようと。

 とても広いのですごくお金がかかります。パネル1枚ずつを50万円ぐらいですね、日本のお金にして、に分けてそれを市民の人に買ってもらう、出資してもらう。その時に売れた電力の見返りはあるんですけど、50万円はとても元が取れないんですね。でもたくさんあったパネルがあっという間に売れてしまった。

 それはどうしてかと言うと、お金の事を考えるともちろんみんな買わないんですね。環境だから我慢して買おうという人もそんなにたくさんいるわけではない。でも売れちゃったのはその太陽光パネルを持っていれば、出資していれば、そこのサッカー場のサッカーのチケットが優先的に手に入る。そういう仕組みにしたんですね。

 そうするとその環境のことを考えていても考えてなくても、サッカーが好きな人はみんな出資しちゃうわけです。なにかそういう正攻法でいく場合もすごく多いんですが、そういうアイディアでお金以外のところに価値がある人たちに対するアプローチも含めてですねできるのかなというふうに思います。

 本当にいろいろお話を伺っていてまだまだ伺いたいんですが、最後にもう一巡ですね、お話を伺っておしまいにしたいと思います。

 高知は森林県であるし、特に檮原はそれに加えて風も吹いていて地熱もある。先程の話だと自然資本がとても豊かだと思います。高知がこれからどういうふうにその自然資本を守って強めようとしているのか。それぞれの立場での今後の取り組みを含めてまとめのコメントをいただければと思います。じゃあ、もう一度西山さんからお願いしていいですか。

〇西山彰一氏
 はい、まずですね、森林でまず身近なものであるということを理解していただく。ということが非常に大事だと思います。そういう広報活動をですね、継続的にしていく必要が当然あります。そしてあとはやっぱり水と空気はただではありませんと。こういう仕組みでちゃんとつくられていますよということは、常識的にわかっていただく必要はあると思いますね。

 それとあと大事な点としては、やはり実際にこの森林の環境の中に入っていただいて、ふれあっていただく機会をつくっていく。その中から楽しみを得るという、ひとつのレジャーの枠組みの中で森林に親しんでもらうというような取り組みですね。こういったことを広げていくということも大事かと思います。

 あと生活面においては、FSCでできあがったいろんな材料ですけども、そういったものがどこで買えるのか、そしてそれを買うことによって例えばシックレスですね、ハウスなど、とにかく自分の身体においても非常にいいんだといったことが分かることを広げていくことだと思います。

 そして最後には、やはり生きとし生ける者として、人間だけがこの地球上で生活をしているのではないんだということを、理解していただくような活動ですね。これをしていく必要があると思います。これは環境教育というもののなかの非常に重要なところではないかなというふうに感じているところです。以上で。

〇枝廣淳子氏
 はい、ありがとうございます。じゃあ、町長お願いします。

〇中越武義氏
 はい。環境だけでは食べていけないということなんですよね。我々の地域の中にも過疎・高齢化といいますか、少子化も進んでいます。けれども地域の中に循環がある。その循環はお金であったり、あるいはエネルギーであったり自然であったりという、その循環の中で我々生かされているわけですよ。ですからそのことを考えると、やっぱり環境という言葉だけ、あるいはイメージだけでその地域を守ということは非常に難しい。となると、どうするか。

 今言ったように山に手入れをするためにお金を。そのことが自然を守り水を守り、あるいは川を守り海を守りという循環になってる。となると、そこに入れたお金がやっぱりそういった役割を果たす。そのお金がその地域でまわる。ということがまた循環になって、その地域を支えると、こういうことになるわけです。

ですからやっぱりいろいろなことを考えて、環境だけで食べるということは非常に難しい。そのためには今言ったように、ある程度のお金は循環をしなければならない。その循環をするお金を生むためにどうするかとなると、国民全体でやっぱりそれをどう支えていいくかということをしていただかないと、山だけではそういったことは守れないというふうになると思います。

 ですので、そういう意味でもやっぱり環境、皆さんのイメージではそういったしっかりした考えを持たれていると思いますけど、我々山間地域に住むものにとっては、やっぱり多少の経済的な循環がないと山は守れないし水も守れないということになると思います。

〇枝廣淳子氏
 はい、ありがとうございます。では知事、お願いします。

〇橋本大二郎氏
 はい。さっきの枝廣さんのお話を聞いていたら、そろそろまとめに入ったかなと思って、もう終わりかと思って安心をしておりましたら、あと一巡と言われたのでドキッといたしました。今日のお話の中でちょっと感じたことも含めてコメントをしたいと思いますけど。

 ひとつはですね、先程枝廣さんのお話の中にあったことから思いついたことなんですが。高知工科大学の先生が大学に入ってきた学生に、機械というものを教えるという意味で、ハンディの手で使う掃除機があります、あれの日本製のものとアメリカ製のものを分解をして比べた事があるんです。詳しい数字は忘れましたけれど、部品の数が日本製の方が圧倒的に多いのです。それで当然価格も非常に高いんです。

 それは何故かと言うと、日本製は1時間か3時間か忘れましたけれども、バッテリーチャージをする時間が非常に短いのです。アメリカの24時間かなにか入れてないとバッテリーチャージできないと。ただハンディで使う掃除機が、そんなに1時間や3時間でバッテリーチャージされる必要があるかどうか、というような考え方の違いをそういうところから学生達に教えたという話がありました。

 やはり松竹梅のさっきの話の続きなんですけど、日本でもですね何でも松にならないといけないと、しかも求めてないようなサービスがどんどんどんどん電化製品についていくということに、消費者としてどういう目を向けるかというような視点もひとつ必要ではないかなと思いました。

 それから浅井さんのお話の中で、素人の発想が面白いんだということで思い出したんですけども、全然違う分野の話ですけども。造船業界の方に向かしお話を伺ったことがありまして。昔その造船の方法というのは、背骨にあたるものをまずつくってですね、そこからあばらにあたるものをつくって鉄板を張り上げて全体をつくっていくというやり方をしていた。

 ある時その技術とは全然関係のないオーナーの経営者の人が、寿司屋さんに行ってですね、それで嫁さんにお土産にするからと言って海苔巻きを巻きずしをつくらせたのです。その職人を見てたらパンパンパンと切って、切ったものをまたバンと重ねてやった。

 それで同じように船も縦に輪切りにしたものをそれぞれつくっていって、バンとくっつければできるんじゃないかと。そうすれば広いところを最初から使わなくて、分散をしてもっとコストが安くできるんじゃないかといってそういうやり方ができたという話を聞いたことがあります。

 やっぱり素人、素人って浅井さんのことを素人、素人と言ってはいけないんだけども。全然違う分野の人の発想って、とっても生きると思いますので、そういうことも僕はコラボレーションとしてとっても重要なことではないかなと思ったんです。

 浅井さんがさっき、トイレでジャっと水を流すのもエネルギーだからとおっしゃったんですが、小水力とトイレのジャーを考えれば、トイレでジャーと流したその勢いで次の人の電気代かなにかがでれば、すごい面白いものができるなと。そういうようなことが面白味ということからも必要ではないかなと思いました。

 ということで、ちょっと真面目な話に戻しますと、森林の話が、自分も最初にしましたし、最後の方にもでてきました。県ではですね、ぜひ山の日というものをつくって、単に水源税やなんかの仕組みだけじゃなくて、みんなで山に行ってみる日、山を考える日というのをぜひつくってみたいと思っています。

 今7月20日、海の日というのがありますけれど。やっぱりもうちょっとみんなで山を考え、山がどうなっているのか見に行く日というのは必要ではないかな。そういうことによって、単に水源税というような税の仕組みだけではなくて、本当に何か行動に結びつくような、みんなが一緒にできるような何かが生まれないかなということをぜひ考えていきたいということを思います。

 あと県が目指すべき方向ということですけども、やはりエコデザイン協議会というものもせっかくできました。それでこういう協会をひとつの土台にして、環境ということが確かに今のままではなかなか飯の種にはつながならない面がいっぱいあります。

 けれどもやはり環境ということを目指す、または環境に優しいものづくりをすることが、本当に企業としてのもメリットになる、そういう動きというものを、なかなか口でかっこよく言うように進むわけではないですけれども、ぜひ西山さんや中越町長達と一緒に、ひとつでもふたつでもそういう成功例をつくっていければなと思います。以上でございます。

〇枝廣淳子氏
 ありがとうございました。じゃあ浅井さん、最後に簡単にまとめてください。

〇浅井愼平
 はい。僕も今橋本さんのお話のように、エピソードをひとつお話ししておきたいと思うのですが。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんけれども、蘭の花をイギリス人はとても気にしていた時代がありまして。蘭をアジアの暖かい所から集めてきて、蘭の花を200年ぐらい栽培をして、ことごとく失敗をしたという記憶があります。

 それは何故失敗をしたかと言うと、イギリス人というのはとても律儀なものですから、完璧な温室をつくって土壌も湿度もあるいは光も完璧だったんですね。なのに200年失敗したのです。実は蘭は風が欲しかったんですね。

 それで、日本のような国だと完璧にできないので風が入ってきてしまいますが。イギリスを旅された方は知っておられるかもしれませんが、イギリスの温室といったらものすごい、もう完璧な室内なんですね。別な南国があったりするんですけれど。

 つまり命のことを考えると、僕は多分今日のテーマである森と水あるいは風はですね、多分命のことだろうと思うんですね。もちろんそれはただで手に入るものでもありません。今はコントロールをしないといけない。中越さんの話は全くその話をおっしゃってましたけど。

 僕はいわば三流の詩人ですから、霞を食うような話で恐縮ですが。その命の代名詞であるものを、じゃあどうやって我々がこれから先自分のものとして、あるいはこれから地球に現れる子ども達、あるいは人間だけじゃない生きているもの、生きとし生けるもの、地球という存在そのもの、宇宙そのものをですね考えますと、そのシンボルである水の話が今日でたことは、非常に我々の未来を考えるのに大事なことだったなと。

 ですから今その蘭のことを思い出してですね、蘭はどんなに素晴らしい環境を与えても、風がひとつないだけで死滅するんですね。命というのはそういう存在であるとするならば、多分森をなくしたら、まあ水がなくなったら人は死ぬというのは分かりますが、風ぐらいは大丈夫だろうということかもしれませんが、しかしやはり僕は風も森も水もそういう意味では命の代名詞だという気がするので、みんなでそれをこれから先考えながら、生きていきたいなというふうに思います。
 

〇枝廣淳子氏
 ありがとうございました。2時間という長い時間をいただいたのですが、あっという間で、私はとても楽しく、聞きたいことをたくさん伺って、2時間過ごすことができました。会場の皆さんもこの貴重な時間を使っていただいて、私と同じように楽しい、面白いなというふうに思っていただけたらとてもうれしいです。

 長時間にわたっていろいろとご意見、それからやってらっしゃることお話をいただいたパネリストの皆さんにもう一度拍手をいただいて、これでおしまいにしたいと思います。

〇司会
 皆様、長時間にわたり本当にありがとうございました。西山彰一さん、そして中越町長、浅井晋平さん、ご多忙の中ありがとうございました。橋本知事、公務の合間をぬってのご参加まことにありがとうございました。そして長時間にわたりコーディネーターを務めていただきました枝廣淳子さん、ありがとうございました。

 それでは皆様を拍手でもってお送りしたいと思います。ありがとうございました。
 それぞれのお立場で環境保全への取り組みを実践されてることを本当に実感いたしました。私も身近なところから早速実践していきたいと思います。

 これをもちまして第5回NTTドコモ四国グループ、地球環境フォーラム、環境コラボレーション、環境保全と経済活動の両立、を閉会させていただきます。長らくのご静聴、皆様まことにありがとうございました。お席にお着きのままぜひアンケートにご協力をお願いしたいと思います。尚、アンケートは出口のスタッフにお渡しくださいませ。本日はまことにありがとうございました。
 


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