知事の定例記者会見

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

四国八十九箇所ヘンロ小屋構想と木の文化を考えるシンポジウム

平成15年4月21日15時40分から(県庁二階第二応接室)

(項目)
 ・県議会議員選挙の結果に対する受け止め(公共のプラットホームづくり)
 ・南海地震の被害想定に対する受け止め
 ・徳島県の知事選挙への思い
 ・構造改革特区への対応
 ・岩手県議会の覆面新議員
 ・県議会の会派の再編成
 ・県議会の親知事派と反知事派
 ・高知県の知事選挙
 ・市町村合併での西尾私案と県の対応
 ・県の機構改革への手応え


(県議会議員選挙の結果に対する受け止め(公共のプラットホームづくり))
(植村:RKC記者)
 まずは幹事社の方から2~3質問させていただきます。
 県議会議員選挙が終了しました。この中で、県の平均投票率が過去最悪の54.62%という結果になりました。この結果というのは「県民の選挙ばなれ」ということを象徴しているように感じますけれども、この低投票率を踏まえて、今回の県議選の結果というのを知事としてどのように受け止められておられるのかということをまず質問したいと思います。

(知事)
 庁議でもそういう話をしたんですけれども、議会との関係っていうのは、もちろん、予算、あるいはいろんな議案を認めていただく車の両輪としてこれからも大切です。

 けれども、議会との関係だけでは、県民と行政との関係というものを、きちんと取り組んでいけないような時代になってきたのではないかということを感じました。県全体で54.62%ですし、また、県議会議員の数からいえば3分の1以上の高知市は44%台という状況です。それに、死に票ということを考えました時に、どれだけ県民の声が反映をされていくのかということは、もう数字的にも明らかではないかと思います。

 これまでは県議会というのはそのまま県民の代表だということで、役所が考え、役所が作り上げたいろんな事業の提案を議会に諮って実行をしていくということ、そういう一つのチャンネル(やり方)だけでほとんどの仕事が進んできたと思いますが、これからは、県民の皆さんに直接働きかけて一緒に何かを考え、また調整をしていく場づくりというものが、ますます必要になってきたということを感じています。

 今日の庁議でも「公共のプラットホームづくり」ということが提案をされたわけですが、その提案についても、僕が今申し上げたような意味合いで、やはり、県議会のルートというものを補完をしていく新しい形の政策づくりの場、または既に起きている問題の合意形成の場としての位置付けが必要だということを言いました。

 つまり、いろんな県民の知恵や力を集めていく場というのが、ただ単に公聴会だとか、パブリックインボルブメントの延長線上で終わってしまったのでは意味がありませんので、そうではなくて、お互いのやりとりの中で政策を考えていく、また合意形成をしていく、そういう場をぜひ早く作っていく必要があるということを、県議会議員の選挙の結果としても痛感をいたしました。

 で、そういう場を作っていくためには、ますます情報公開ということが一つ重要になりますし、そのような場を動かしていく、コーディネート(調整)をしていく人材が必要になってくるだろうと思います。

 情報公開ということで言えば、今もって、監査委員事務局での事例のように、独立の行政の委員会とはいえ、古い意識のまま情報公開をしている部署がまだまだある。そういうことは私はあってはならないことだというふうに思いますので、そういう場づくりということを機会に、思い切って情報公開の考え方というものももう一度、独立の委員会も含めて県庁全体で考え直さなきゃいけない時期だなということも含めて思いました。

注1:「公共のプラットホームづくり」とは、住民と行政を近づけ、「公共」をみんなで支える高知県を創っていくために、民間と行政の垣根を越えて、いろいろな人が知恵や意見を持ち寄る場(=プラットホーム)を創ること。

注2:「パブリック・インボルブメント」(PUBLIC INVOLVEMENT)は、直訳すれば「市民を巻き込むこと」。つまり、政策形成の段階から住民の意見を吸い上げるための意思表明の場を提供すること。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 「公共のプラットホームづくり」という呼称でよろしいですか。

(知事)
 呼称については、(庁議でも)「非常に分かりにくいのではないか、もっと分かりやすい呼称を考えたらどうか」という意見も出ました。実際に掲示板を立ち上げていくのが9月の予定になっておりますから、これから議論をしていくことになろうと思います。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 これはインターネット上ということですか。

(知事)
 インターネットだけではありませんけれども、提案されている主要なメディアはインターネットです。
 

(南海地震の被害想定に対する受け止め)
(植村:RKC記者)
 先日、政府の中央防災会議が、東南海と南海地震が同時に起こった場合に、高知県の死者が最悪で6200人という甚大な被害が出るという想定を発表されましたけれども、この想定、発表を受けて、県の防災計画の方がどのように変わっていくのか、どういうふうに受け止めていらっしゃるのかということをお伺いしたいと思います。

(知事)
 国が発表された数字と県のすでに出しています数字とに違いがあるわけですが、国の発表があるという報告を受けた時に、まず危機管理の担当に話をしたんですけれども、国と県がそれぞれいろいろ調べて、結果として違う数字が出て来るということは、あとで説明をすれば、「それは被害の想定が違う。東南海が一緒に起きる、または南海の単独でというようなこと。

 マグニチュードの規模、そういう想定が違うのだから」というご説明ができるにしても、そういう違いが出て来ること自体、国民、県民の皆さんから見れば、やや、違和感を感じられるのではないかということです。

 ですから、これからは、国でもいろんな調査をされ、県でもやっていくと。この件については、高知県の方がより早くから、危機感というか一定の意識を持って調査を進めてきましたので、県が独自の被害想定も出しているわけですけれども、今後、国もですね、法律(東南海・南海地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法)もこの7月(25日まで)に施行されるという段階で具体的に動いていかれる時に、もっと事前の情報交換をして、その被害想定のあり方とかその時の結果の出し方などに齟齬(そご)が起きないようなことが一つは必要ではないかと思っています。

 で、それはそれとしてですが、お出しになった数字の大きさから、私どもも勿論そうですけれども、多くの県民の皆さんも、「大変広域的な、また甚大な被害の起きる地震だ」ということを認識というか意識をしていただいたのではないかと。そういう意味での発表の効果というのはあったと思います。

 と同時に、この被害想定では、何もしないでいればそれだけ大きな被害が、また死者が出るけれども、行政と県民の皆さんあげてきちんとした防災対策をしていけば、それはもうはるかに小さな数字にできるということもお示しをしていただいていますので、まさに防災対策の必要性というものを、私ども十分認識はしていますけれども、改めて数字の上でも感じました。

 危機管理の担当の理事及び課のこれからの仕事として、向こう5年間ぐらいはかかっていくと思いますが、ハード・ソフト、どういう優先順位で仕事をしていくかということをきちんと計画立てていくことが大切です。

 先ほど申し上げました国の特別措置法も動き出しますので、その際に国に何をしていただくか、国と地方がどういう役割分担をしていくかということも早急に詰めていかなければいけませんので、そういう国との役割分担ということを踏まえて、県の防災計画の中にも、こういう、国の示された被害想定というものも、当然反映をされていくことになろうと思います。
 

(徳島県の知事選挙への思い)
(植村:RKC記者)
 徳島県の知事選挙の件についてですけれども、大田前知事が失職されて、新しいその選挙が行われるわけなんですけれども、総務省出身の、前の徳島県の幹部職員さんが立候補、出馬を表明されているということで、一部のマスコミで知事の所見も出てましたけれども、あらためてお伺いしたいと思います。

(知事)
 今回の徳島の知事選に関して、僕は、従来は、他の県の知事選挙についてコメントすることは避けていましたし、特に、お近くの県の場合に何らかのコメントをすることは避けてきましたけれども、今回の場合、議会での不信任決議案に至るまでの経過とその不信任決議の内容を見てみますと、やはり僕は、地方自治のあり方として大きな疑問を感じました。

 もちろん、不信任を議決をするというのは、民主主義のルールで認められたことですから、それ自体をどうこう言う立場にはありません。しかし、民主主義っていうのは、一方で、どんなことがあっても、お互い我慢をしあいながらより良い方向を見つけていくということも一つ必要であろうと思います。

 そういう中で、これまでの経過を考えた時に、あの不信任案に正当性があったかということには、私は大いなる疑問を感じています。

 そういう不信任案の経過の中で起きる今回の選挙戦に、私自身は、総務省から部長として行かれた方が、そういう不信任の決議をした議会のグループの方々に担がれて出て行かれるというのには強い違和感を感じました。私は、総務省の役人として少し一線を踏み越えていはしないかなということを強く思います。

 ただ、新聞の記事として書いていただいたものを自分なりに読むと、一般の徳島の県民の皆さんから見た時に、個人攻撃と受け取られかねない面もあるかなということも感じました。

 お二人ほど徳島の県民の方からもメールをいただきました。一方、勿論、「よく言ってくれた」というメールもあるんですけれども、そういうご批判のメールもいただいて、それも非常に理にかなったものでしたので、そういう自分の思いというものをきちんと伝えるにはどういう表現をしたらいいかなと。

 実は今日、半日思い迷っていましたが、なかなか上手い表現が見つからないまま来ましたので、少し中途半端な言い方かもしれませんけれども、そんな思いを持っております。
 

(石村:朝日新聞社記者)
 一線を踏み越えているというのは、もう少し具体的に言うと、どういうことを言っているわけですか?

(知事)
 僕は、現職の部長としてこられた方が取るべき態度ではない、役人のあるべき姿ではないと、自分自身は受け止めたということです。
 

(石村:朝日新聞社記者)
 これを許可した総務省の態度そのものについては何か?

(知事)
 私は疑問に思いますけれども、許可したかどうかは全く知りません。もしそれを総務省としてお許しになったのであれば、止めなかったのであれば、そのことにも、自分は疑問を感じます。
 

(関谷:毎日新聞社記者)
 大田前知事の方から応援の要請があれば、頭から拒否するものではないということだったんですが、その後、応援要請はございましたか?

(知事)
 応援要請は、今度、23日にお見えになります。
 

(関谷:毎日新聞社記者)
 大田前知事ご本人が?

(知事)
 いや、大田さんは来られないんでしょうけれども。市民ネットワークのグループの方々が知事室にお見えになります。
 

(関谷:毎日新聞社記者)
 で、知事ご自身のお考えは定まってらっしゃるんですか?

(知事)
 ええ、定まっております。

(関谷:毎日新聞社記者)
 どういう?

(知事)
 いや、それはそのとき、お答えしますけれども。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 徳島県知事選のことについて言えばですね、知事のおっしゃる「役人のあるべき姿ではない」という部分、なかなか表現はしづらいと思いますけども、これは「総務省の役人として」ですか、それとも、高知県なんかでも、かつて副知事がですね、役職から、まあこれは特別職になりますが…、じゃあトップの道へ手を挙げるべきではないというふうに拡大、誤解されるおそれもあるんじゃないでしょうか。

(知事)
 どういう誤解を受けてもかまいませんが、私は、これまでの徳島での県議会の様々なやりとりとか、そして今回の不信任案の状況だとか、そしてご自身を担いだ方々の思惑だとかいうことを全部踏まえたときに、役人としては採るべき姿ではないと、私は思いました。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 ということは、こういう「個別のケース」というものが冠にあるわけですね。

(知事)
 それはそうですね。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 それが強くくっついてないと、「役人のあるべき姿ではない」というのがちょっと一人歩きしかねないのかなという、そんな感じを抱きますけどね。

(知事)
 まあ、どう捉えてもかまいません。私は強い違和感を感じてますから。
 

(構造改革特区への対応)
(須賀:高知新聞社記者)
 あと話題を変えますが、今日、構造改革特区の第一弾というものが指定になって、つまり今日付けをもって全国で57件の特区が誕生するらしいんですけれども。

 高知県の場合は、昨年9月の定例県議会で議員さんの質問に知事さん答えてらっしゃったのは、考え方の部分として、「全国一律というのが本来の姿ではないですか」と、で、「これまでと同様、国へ働きかけをしなくちゃいけない、ということが強いられるのであれば、従来の国と地方の関係のままで変わりないのではないか」という危惧を表明されてましたですけども。

 それとですね、「高知県の地方政府として力量を磨き上げて、現実に国政の壁というものに対して、それをどう取っ払っていって、自分たちの自立した政策を磨き上げるか」というものとは本来別のものだと思うんですが、それについてはまあ、ちょっと、正直言いまして、高知県の提案がいささか数少ないかなあと、ちょっとさびしいかなあという声もありますけれども、いかがでしょう?

(知事)
 僕は、いくらでも思い切ったものは出せます。出せますけれども、そんなものを認めるわけがないので…。要は、小出しに、何か「法律の一部の枠を取っ払いましょう」なんていうのは、特区でも何でもないんじゃないかと。単なる地域指定の延長線上の考え方ではないかと思うんですね。

 もっと、やるのならば、思い切って何かの提案に対して、それは更地にしてですね、更地にした上で法の網を全部取っ払ってみて、その上で、これこれどうしても必要な規制だけをかけていくという考え方ならいいですけれども、それぞれの何かの提案に対して、各省庁が関係する法律のこの部分だけを取ろう、この部分だけは外そうというようなことでは、特区にも、規制緩和にもならんのじゃないかと私は思いました。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 だったらもう、4件提案されましたけども、いっそのことゼロでもよかったんじゃないんですか?

(知事)
 よかったですよ。だけど、それはせっかく農林部や何かが一生懸命考えてやってくれているものを、それをまたケチをつける必要もない、と僕は思いました。だから、僕は、是非やれといって号令をかけてやるような意味は、僕自身はあまり感じませんでした。

 だけど、それは事務的にその市町村の思いというのもありますから、そういうものをくみ上げていって国に伝えていくというのは、これまた当然必要なことだと思いますね。それを全部ないがしろにして止めるという筋のもんでもないと思います。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 その文脈で行くと、これからの2次申請等とかはいくらか出てくるんでしょうか?

(知事)
 いや、出てくるかどうかはちょっと僕は聞いていません。
 

(岩手県議会の覆面新議員)
(関谷:毎日新聞社記者)
 岩手県議会で覆面の新県議が誕生したんですけども、知事ご自身はどういう感想を持たれてますか?

(知事)
 いや、うちの県じゃなくてよかったなと。うちの県でコメントを求められたら面倒くさいなと思って見ておりました。
 

(県議会の会派の再編成)
(須賀:高知新聞社記者)
 県議選についてですが、その結果を踏まえてということですけれども。 会派の再編等にはご関心はおありですか。

(知事)
 まあ、なかなかコメントできませんね。答はありますけれども…。あえて…。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 回答はしない?

(知事)
 ええ。記事になるような言葉で、いろんな挑発をする必要もなかろうと。
 

(県議会の親知事派と反知事派)
(須賀:高知新聞社記者)
 親知事派・反知事派という、まあ、メディアの方にはそういう言葉の使い分けもありますが、知事さんの方から見ますと、それは必ずしもそういう色分けではないというふうにお考えでしょうか?

(知事)
 それはもう、全然そういうのはないと思いますね。だいたい、親知事とか反知事というものじゃないんじゃないかなと、議会というものは。議会議員も。それは、是々非々という言葉と同じようなことですけども、何もがそれは是々非々なのであって、議会というのは。親知事だから全部是にしなきゃいけないというものでもないでしょうし…。
 

(高知県の知事選挙)
(岡村:高知新聞社記者)
 知事、あの知事選ですが、特段こう心境にですね、あるいはタイミングとかいうものにですね、思いに変化がありましたか?

(知事)
 ここ数日ございません。
 

(岡村:高知新聞社記者)
 (今回の)選挙結果は特に影響することはないですか?

(知事)
 それは全くありません。
 

(市町村合併での西尾私案と県の対応)
(須賀:高知新聞社記者)
 市町村合併ですが。地方制度調査会がですね、間もなく正式な中間報告をですね、年内に正式な報告を出します。これが、実は全国の小規模な町村の行方というものにずいぶんと大きく影響するという政治状況が生まれています。

 その中で、ご存知のように「西尾私案」というものがずいぶんたたき台になって論議されておるんですけれども、知事ご自身は「西尾私案」について思われることがあればお伺いしておきたいんですが。

(知事)
 「西尾私案」というのは、一方の極になるような案を出してですね、案を述べられて、それによるいろんな動きを起こしたいという思いで出されたものだと思いますから、それそのものの内容をどうのこうの言う、既にもうその時期ではないとも思いますけれども、どうのこうの言ってもらおうという趣旨で出されたものでもないと思います。

 やっぱり、波紋を投げることに西尾先生としての意味があったのではないかと、私は、あの私案そのものについては思います。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 その「西尾私案」が問いかけた波紋の中に、一つ大きく見逃せないのはですね、2005年ですか、特例法期限ですね、それに間に合わずに、相手にされないと言いますかね、ちょっと言葉は悪いんですけれども、合併の意志がありながら取り残されていく、そういう小さな自治体の救済策ということを投げ掛けてるわけですけども。

 高知県のような地域もですね、非常に該当する、また、しそうな事例がもはや見えて来ています。そのことについて、これは国任せではなくてですね、県として、能動的、主体的な対応の方法があるのではないかと思うんですが、その点についてはお考えがおありでしょうか?

(知事)
 その「あるのではないか」というのは、例えばどういうものを指してるんですか?
 

(須賀:高知新聞社記者)
 例えばというのはですね、自立宣言が、一所、二所出て来ます。それから、それは自立できるんですけれども、例えば、合併をしたいんだけれども、その枠組みの中からはじき飛ばされている地域というのがあります。

 そういうものに対する支援ですね、県の。パートナーとしての支援の仕方というものについては、支援室の方に何か具体的に指示を出しているのか。それとも、その出方を待ってるというかですね。どういうふうに今、現状をとらえてますか。

(知事)
 いや、今せっかくその「具体的な支援の方策というのがあるのではないか?」とおっしゃったから、何かその試案をお持ちなのかと思って…。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 あ、こちらがですか?

(知事)
 うん。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 例えば、これは一例ですが、長野県の例をひきます。長野県は高知県のだいたい倍近い市町村数が現時点ではあります。そこにですね、本年度からだと伺いましたけれども、県庁職員を1人張りつける。つまり住まわせるわけですね。

 それで、その地域の、いわゆるA村でしたらA村の基本的な県の事務というのは全部彼一人で引き受けて、なおかつ地域の、その何と言うんですかね、県とのパイプ役の調整官みたいな役割になるわけですね。

 そうすることによって、その地域が、「総合行政ができにくいので、私の村ではこの部分とこの部分は県に肩代わりしていただきたい」、そういう、まず要望をあげるそうです。それを県の方で調整しながら、できるものは年次を切って具体化させていくと。

 つまり、もう少し、市町村と県の関係が上下じゃなくてフラット(平ら、平等)になっている、そのための試金石をもう打ち始めたというふうに聞いてるんです。高知県にもそういう取り組みが全然なかったとは言えないと思うんですけれども、今言ったような動き方も一つの動き…。

(知事)
 そういうことは、いろいろ具体的に考えていくべきでしょうね。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 今年度ですね、そういう動き方っていうのは、見えてこないんでしょうか?

(知事)
 今年度中にそれが見えてこないとは言えないし、今後、どこがどう最終的に残っていかれるかということも見定めて、そうならないような努力だとか、様々な経過がこれからあると思いますけれども。今年度中には何がしかの、今おっしゃったようなことも含めての方法を考えていくことは、当然求められると思います。あと2年に迫ってる話ですから。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 例えば、法定協(法定協議会)の中に県が入って行って…、で、地域が広域ないわゆる新しい自治体を作ろうとしてますね…、その中で、もう既にその段階から一緒になって、役割分担だとか、できるできないのサビ分けをするという話を、県の方から仕掛けていくという考え方はないですか?

(知事)
 僕も実態をよくつかんでないのかもしれませんけれども、市町村と県の仕事、その役割分担ということから市町村合併を捉えすぎていはしないかなあと。やっぱり、そこに住む住民の人達の新しい地域づくり、まちづくりというのをどうしていくかという視点が抜けかねないのではないかなあと。

 そうやって、仕事の役割分担を、「保健・福祉何とかをどうしますか」「土木行政をどうしていきますか」「代行業務をどうしていきますか」というのは、まさにプロの世界の話であって、そういう区分けというのは当然どこかで必要にはなってくるだろうと思いますが、それだけに私は注視していいかなあと。

 そういう方向が、一方では財政のことだけ考え、一方では行政の事務のことだけ考えるような市町村合併を、今、全国的に起こしつつあるんではないかなあと。何とかして、地域の人達が地域の将来を考えるという動きを、それこそ県の職員が入って動かすことはできないのかなっていうのは、実態がそうなってるかどうかっていうのは僕も十分捉えきれませんけれども、私は、そういうことを県の職員が今やっていくべき時ではないかと思うんですけどね。

 仕事の役割分担というのは、どこかのところでエイッとやっていけば、それはできる話だと思うんです。何をどう引き受けていくかとか、どれとどれを代行業務にしていくかとかいうようなことは。

 僕は、そういう行政のプロ的な市町村合併じゃない市町村合併というのを、一つでも二つでも作っていけないかなあ、という感じはしますけれども…。行政の役割分担ということよりも、例えば、これから長寿社会の中で一番大切な健康づくりや何かのことを考えた時に、うちの県の場合、小さな町村の方がはるかに健康づくりは進んでますよね。そして、国保の会計の状況だって、介護の会計の状況だって、小さな町村の方が頑張っていい仕事をしてるところがあります。

 で、そういうところが大きな市と一緒になっていった時に、せっかくのそういう良かったものがどうなってしまうんだろうという危惧もこれ、ありますよね。そういうものを、「悪化」といっては失礼だけれども、従来の医療制度の中でやってきた治療型の医療で済まされてきたような地域に、(せっかくの良いものが)飲み込まれてしまわないようなことを、どのようにやっていくかというようなことが、僕は、県の職員として本当は考えて取り組んでほしいことなんですよね。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 論議が長くなるんですけども、いわゆる橋本県政を見てますと、小さな行政府を目指すのかどうかが非常に見えづらいんですね。
 市町村合併を考える時は、「地域の将来像を自分達で考える」、これは大前提です。その際に、住民からは県も市もないわけですから、国もないわけですから、行政というのは…。でも、コストダウンのためにやるわけですよ、行政の思惑から言えば。

(知事)
 「行政から言ってコストダウンのためにやる」というのは?
 

(須賀:高知新聞社記者)
 行政効率とですね、それから、財政に怯えて市町村合併に走り出してる市町村が実質はあるわけですね。その時に、本当に住民のニーズというものを行政が噛み砕けるかどうかの瀬戸際が、今来てるわけですね。

(知事)
 「噛み砕けるか」というのはどういう意味ですか?
 

(須賀:高知新聞社記者)
 行政の方が、やりこなせるかどうかというものに自信がなくなってる段階だと思います、財政面から。で、それが大きくなると住民は不安を覚えるという、一方には悩む事例もありますね。

 その時に、行政の、特にリーダーがですね、「行政というのはここまで」というものをある程度青写真を持たないと、住民要望・要求というのは際限ないわけですよ。その時に、新しい枠組みを法定協なり任意で話し合いをしてる時に、行政の方が出て行って住民の皆さんと仕分けというものを話し合わないと、新しい地域の姿が見えてこないと思うんですよね。

 ですから、それができ上がってきて、後で行政のプロだけで仕分けをすればいいという話ではないと思うんですよ。

(知事)
 それはそうです。まさに「地域づくり」といったのはそういう意味ですよ。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 そこに、だから県も…

(知事)
 それは、だけど、大きな政府、小さな政府ということとは違うことだと思いますよ。大きな政府、小さな政府というのが最初から「こうですよ」といってあるもんじゃ、僕はないと思います。

 これはまさに、身近なサービスということについて、それを官と民とがどう役割分担をしていくか、この財政状況の中でどういう役割分担をして、「うちの自治体ではこういうことだけ行政にやってもらおう」ということを住民を巻き込んで議論をし、それぞれの地域で「それじゃあ、うちはこういうふうにいこう」ということを考えていくのが地方自治のあるべき姿じゃないかなと。

 で、それは、住民との間の話の中で決まっていくことであって、「行政のやるべきことはこれだけです。民はこれをやってください」と言って、上から押しつけてそのリーダーシップをとるというものでは、僕はないと思います。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 だから、そこへ入っていけばいいんですよ、県も。と思うんですけどね。

(知事)
 それは入っていくべきだと思います。それは全然否定してません。だけど、大きな政府だ、小さな政府だと言って、「行政のやるべきものはこれだけです」と、「後は皆さんで考えなさい」というものでは、僕はないと…。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 そういう言い方は、当然、してはダメでしょうね。だけどもう…

(知事)
 でも、姿が見えない、大きなものを目指してるか小さなものを目指してるかの姿が見えないということは、どっちかを明確に言って、やっていかなきゃ、できないんじゃないですか、というご趣旨じゃないんですか?
 

(須賀:高知新聞社記者)
 そうです。どちらかと言えば。

(知事)
 僕はそうではないと思います、地方自治というものは。特に、市町村という基礎自治体というものと住民との関係を考えた時には、そうではないと思います。

 県として、県の責任として、県がこれまでにやって来た仕事の、「ここはもうできませんね。こうですね」ということは、県のリーダーシップの中でやっていくべき部分だと思います。

 しかし、基礎自治体の中でそれをどうしていくかは、県が押しつけて決めて一定の配分をしていくというものでは、僕はないと思います。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 だけども、県自体がどうなっていくかというのも、非常に、まだ答が出ない、出にくい状況ですよね。中二階といわれる県が…。
 だから、その時に、その基礎自治体というものを作り直そうとしてるこの時期に、基礎自治体の人達と、つまり住民も含めて、「県ってそもそも何なの」という話まで引きおろしていってですね、県の仕事を再規定するという…。

(知事)
 まあ、毎日毎日暮らしてる方にとってそんな理屈っぽいもんじゃないんじゃないかと…、行政との関わりだとか何だとかいうものは。

 やっぱり、自分達の求めるサービスっていうのは何で、それが実際に自分の住んでる町や村でできますかと。で、「それはできなくてもいい」と、「それでもこの小さな村でやっていこう」というなら、そういう合意をしていくということもあるだろうし、「それはダメだね。もっとやはり広い単位で、少し薄まって周辺が弱くなってもいいから、もうちょっと基幹的なこういうサービスだけはやってもらおうね」というのが、

それぞれの地域で決まっていくので、住民から見えてるのは、そういうサービスとそのサービスの主体がどうだろう…、まあ主体までは考えられないかもしれませんね。「サービスが行政から得られるかどうか」ということだと思いますね。

 そんな、「県の役割がどうだ」、「中二階がどうだ」っていうのは、我々が理屈の面では言って、また、理屈と一定の考え方というものは持ちながらやってますけれども、住民の方々の日々の生活に落とし込んでいけるような話じゃないんじゃないかなと思います。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 もちろんそうです。だけども、こっちの理屈というのがきちんとないと、行政はなかなか円滑にまわらないと思いますね。このスムーズな、話、協議だけでできにく
いと思うから言ってます。

(知事)
 うん、理屈はないわけではないですね。僕は、県はどんどん解体をしていくべきだというふうに思います。

 県の職員はどんどん、それは身分はいろいろ別ですけれども、市町村に出ていって…。もうこんな建物の中で書類を作って、「○○計画づくり」という国から押しつけられた計画を作ったり何かするのはもういい加減にやめようと。

 池本さん(同席の総務部長)も森林局長をされてたけども、森林の計画なんかそろそろどうにかしようと…。「しよう」と言ってなかなかできるもんじゃないですよ。だけど、方向性ということで言えば、もうそういうことを思いきってやって、それで国庫補助金が得られなくても、県の中でどうやってやっていけるかと。もっと地域のニーズに合ったものをやっていくことを考えても、10あったものが7になっても、7で自由度が増せばその方がいいんじゃないかと。

 その分、よけいな規制だとか何かに関わる仕事を減らして、それで県の職員がもっと地域に出ていって、先ほどお話があったように、一緒に市町村とともに仕事をしていくようなまわり方が求められるときじゃないかということを、僕は言い続けていますし、その考え方は変わっておりません。
 

(須賀:高知新聞社記者)
 お伺いしたいことはだいたい伺いましたので、終わります。

(知事)
 はい。
 

(県の機構改革への手応え)
(井岡:読売新聞社記者)
 まだ4月の途中なんですけども、県の機構改革が大幅に変わってまだ20日ぐらいですけども、何か、「思いどおりいってるな」とか、そういう手応えがあれば…。

(知事)
 それはなかなか、辛い質問というか、まだそんな効果が出るということではないと思います。せっかく「政策推進の力、企画の力を強める」ということを一つの大きな柱に置きましたので、政策推進と各部局の企画課はですね、僕等を含めて、メーリングリストを、これは掲示板からですけれども、そういう形で絶えず情報共有をして、同じ方向性を考えていこうと、そういうようなことをやってみようと思ってます。

 あと、いろいろこれまで出先機関長会(臨時会議)なんかで話したことを具体化をしていこうということはしてますが、課室がいろいろ分かれて、その中で、仕事が例えば速くなるだろう、そういうことが具体的にこういうことで実感できましたというふうな例はまだありません。そういう意味では。
 

(植村:RKC記者)
 予定の時間になりましたけれども、最後にどうしてもこれを言っておかないかんというようなことがあれば…。 無いようですので。

(知事)
 ありがとうございました。
 


Topへ