新年の職員へのあいさつ

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

新年の職員へのあいさつ(庁議での挨拶)

平成17年1月4日(火曜日)県庁二階 第二応接室


 皆さん、明けましておめでとうございます。また今年も一年どうかよろしくお願いいたします。
 
 新年のごあいさつをする前に、先ほど山本理事からもご紹介がありましたが、ひとつ、高橋さんを庁議メンバーに迎えたということをご報告したいと思います。
 
 副出納長という形で庁議メンバーに加わっていただいた訳ですが、そうしますと、これは将来にわたって出納長を置かないということを決断したのかという受け止め方もあろうかと思いますし、また実際にそのような質問も何度か受けました。
 それに対しましては、今の段階でそうしたことを決断したわけではないということを申し述べておりますが、今の段階で決断した訳ではないという事を裏返してもう少し本音に近いことを言えば、将来的には出納長というものを置かない道も選択肢の一つになってきているのではないかということを思いますし、また時代の大きな流れはそういう方向に行きつつあるのかなということも感じています。
 
 そのように特別職としての出納長を置くか置かないかという議論とは別に、大変地味なまた目立たない仕事であっても行政のチェックポイントとして予算編成を進めていく時の欠かせない業務として、出納の業務の大切さということはもう一度見直さなければいけませんし、そうした位置づけということを高めていく評価をしていくということが県政の大きな課題になっておりました。
 
 そのような意味で、1月1日付で高橋さんに副出納長をお願いしたわけでございますけれども、今後とも若い職員にはできるだけこうした出納業務を経験してもらう。そのような人事的な配慮もしていきたいと思っております。

 また、そのことによって、基礎ができた上で応用もできる。そういう職員の人材の育成に努めていきたいと思いますので、各部局長さんもそういうご理解の元に職員の指導にあたっていただければと思います。
 
 さて、去年一年間を振り返りますと、印象に残った出来事がいくつかございましたが、その中で、災害が非常に多かったということ、三位一体改革のこと、そして自分自身の出直し選挙に関すること、この三つのことについての所感を少しだけ述べさせていただきたいと思います。
 
 
 まず、第一に災害のことですけれども、去年はなんと高知県に5回も台風が上陸しましたし、それだけ数多くの被害も出ました。また、高知県だけでなく、全国的に集中豪雨、台風による被害、さらには中越地震のような大規模な地震といったように、一年中災害に見舞われた年だったと思います。
 
 さらに世界に目をやりますと、アメリカの巨大なハリケーンの襲来、そしてインドネシアのスマトラ沖の大地震と津波といったように、まさに異常気象ということを実感させられる、また文字通り何か地殻変動が起きてきているのではないか、そんな地球の悲鳴が聞こえてくるような年ではなかったかということを思っています。
 
 その異常気象の原因の一つが地球の温暖化でございますし、このことについては間もなくロシアが京都議定書を批准するという節目の年でもございます。このように地球温暖化の防止ということはまさに地球的な規模の緊急なテーマ・課題になってきていると思います。
 
 それだけに、全国一の森林率・林野率を誇る本県として、炭酸ガス吸収源としての森林の価値の見直しということは大きなテーマであると思っています。ですから、もちろんそこには大きな課題・問題も数多くあるんですけれども、森林を炭酸ガスの吸収源として見つめていく、そして森林を舞台に排出権取引のあり方、仕組みづくりを考えていく。ぜひそういうことに努力をする一年にしていきたいということを思っています。
 
 また、年末年始、寝正月でテレビを見ておりましたら、さすがニュース専門のチャンネルですのでCNNは朝から晩までほとんど津波に関するニュースをやっておりました。

 それを見ておりまして、今回地震が起きた地域、また津波の被害を受けた地域の方々が、いかに津波に対する意識、認識がなかったか。そのことが災害をいかに大きくしたかということをあらためて思い知らされましたし、繰り返し流されます津波の映像というものを見ていて、自分自身は津波を見たことも体験したこともない訳ですけれども、その被害の大きさ、災害の厳しさということを映像を通じて少し体験できたような気がいたします。
 
 ですから、もちろんハードの対策ということを否定するわけではありません。けれども、まず県民の皆様にこうした事例を通じてでも津波の恐ろしさ、そのことについての意識、認識を深めていただくということ。そして、それに基づいて、地震が起きたらすぐに逃げる。そのための道と場を確保していくということにぜひ全力を挙げて取り組んで行きたいということをあらためて感じました。
 
 
 次に、第二の三位一体の改革についてでございます。これに関しては、税財源の移譲の道筋がついたとか、国と地方との協議の場が確保できたといったような評価の声がある半面、国民健康保険への地方負担導入など、十分な手順を踏んだ議論がないまま持ち出されたテーマがある。また、相変わらず霞ヶ関の省庁間の省益争いが続いているなどなどの批判もありまして、論点、切り口によって見方も異なる、大変評価しにくい状況になってきているのではないかと思います。
 
 また、そのために相変わらず、県民、国民の皆さんのこの問題に対する理解、関心がなかなか深まらない。そういうもどかしさを感じた一年でございました。
 
 が、昨年の暮れ、テレビドラマの「白い巨塔」の総集編を見ておりまして、その中の場面をぼうっと見ながら、こういうこともあるかなと感じたことがあります。

 それは控訴審の途中で、財前教授の手術によって患者さんの死が早められたかどうか、ということが論議をされている中で、亡くなった患者さんの遺族である原告の奥さんと息子さんが、「何を言っているのか話が難しくて分からない、自分たちは何が起きたかという、そういう説明をしてほしかっただけなのに」ということをつぶやいて、それを聞いて弁護士が「裁判の闘い方を間違えていたかもしれない」とこういう独白する場面でございます。

 こうしたことをきっかけに、この裁判そのものも財前教授の手術をめぐる医学的な論争から、財前教授が事前に手術以外の方法があることを、お話をしていたか、つまりは余命いくばくもない患者に対して命は救えないとしても、その残された限り少ない命をどう過ごしていくか、生活をどう過ごしていくかの説明を十分果たせたかというインフォームドコンセントをめぐる論争に移っていくという転換点でございます。
 
 こんなことを言いますと、高知県が瀕死の患者かということを思われるかもしれませんけれども、決してそういう意味で申し上げるわけではございません。

 けれども、この問題をめぐる論議を振り返りましたときに、地財計画の投資的経費と決算に乖離がある。しかし財務省がその点を指摘するのであれば、経常経費の逆乖離はどうか、といったような議論。また、国はバブル経済崩壊後の経済対策として大規模な補正予算を組んできた、それを受けこむために地方は多くの事業を実施して、そのまさに返済時期にかかっているときに地方交付税などを削るのはどうか、といったような議論。

 これは専門的な議論としては大変説得力のある議論であろうと思います。けれども国税、地方税にかかわらず納めている県民、国民の皆さんにとってみれば、極めて専門家の間の分かりにくい議論に映っているのではないか、ということをあらためて感じました。
 
 では、どうすればいいかという答えがないまま話しておりますので、そこが少し弱い点ではございます。けれども、こうしたことを踏まえて、もう少し分かりやすく、県民、国民の皆さん方に話をしていく、問題点を提示をしていくということが今、求められているのではないか。そうした意味での県民の皆さんに向き合った説明責任が求められているということを改めて感じでおります。
 
 また、先月12月29日のある全国紙の記事を見ておりましたら、「2004年から2005年への潮流」と題されたシリーズの中の、「地方も改革の努力が必要」といったような見出しの記事の中に、12月議会での私の発言が取り上げられておりました。

 それは、事業の取捨選択が必要だということ、また、サービスに関しても削減、負担増をお願いしなければいけない、ということを述べた部分でございまして、こうしたことを取り上げてこの記事は「知事も出直しの選挙ということを通じて腹をくくったのかもしれない。高知県のような財政力の弱い県だけでなく、多くの自治体にとって、自治と分権の厳しさというものを求めているように聞こえた」というこのような締めくくりの文章になっておりました。
 
 腹をくくったかどうか、開き直ったかどうかというのを、今の時点で申し上げる時期ではございませんけれども、この一年は、腹をくくるかどうかはともかく、腹を据えて仕事に取り組んでいかなければいけない一年だと思いますし、それだけに先ほど申し上げましたように県民の皆さんと向き合ってきちんと説明責任を果たしていくこということがまさに求められているのではないかと思っています。
 
 
 ということで、三つめの出直し選挙のことに話を移しますけれども、13年前、まあ足掛け14年前の最初の選挙。まあ草の根選挙と呼ばれた選挙は、初めて普通の県民の皆さんに向き合った候補が知事として選ばれたという意味で歴史的な価値のある選挙だったと私は思っています。

 今回、昨年の出直しの選挙は、そうしたことを踏まえ、他の県の知事さんとは少し違った政治スタンスで仕事を進めてきた知事に対して、普通の県民の皆さんの側が今度はまた向き合ってくださった。そういう新しい時代を象徴する私の選挙ではなかったかと思います。

 つまり、行政の対象とする県民、住民の皆さん方というものが、その層が少し移ってきたというか、層が広がってきた。そんな兆しを感じさせる選挙で、まさにその意味では歴史的な価値のある選挙ではなかったか。私自身が戦ってそういうこと言うのもおこがましい話ですけれども、私はそのように感じています。

 それだけに、これからはまさにそうした、今自分があの選挙を通じて感じた思いというものを理解してくださる職員の皆さん、また、価値観を同じくする職員の皆さんと一緒になって、この県政に向き合ってくださった県民の皆さんに、もう一度向き合っていく。そういうことの具体的な仕事を進めていく。まあ住民主体の行政というものをつくりあげていくということが、今年も含めました私の残りの任期三年間の課題ではないかということを感じました。
 
 最後の方は少し抽象的な話に感じられたかもしれませんけれども、このような思いを込めて、この一年間、仕事に当たっていきたいと思いますので、またこれからも部局長、理事の皆さん方の一層のご支援、お力添えを心からお願いして、私の年明けにあたってのごあいさつといたします。
 
 どうもありがとうございます。

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