財政危機に関する所属長会議−県幹部に向けた決意表明−

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

財政危機に関する所属長会議−県幹部に向けた決意表明−

平成16年7月14日(水曜日)県警本部2F講堂

H16.7.14 所属長会議資料



注)説明の中で引用される数字は多くが推計に基づいており、今後の国と地方を通じた税収の動向や、三位一体の改革の進み方によって大きく変動する可能性があります。


橋本知事:
(はじめに)
 皆さんおはようございます。毎日お暑い中、大変ご苦労様でございます。
 今日は、昨日の県議会冒頭の提案理由でお話をした県の財政危機について、皆さん方にもぜひ共通認識を持っていただきたいと、そういう思いでお集まりをいただきました。
 といいますのも、県庁の中で各部局と色んなお話をする中で、多くの方は財政危機ということを理解はしていただいていますけれども、まだ、本当に腹に落ちて、隅々の職員まで「財政危機」ということの深刻さが共通認識として持たれているかというと、若干、不安に感じることもあります。
 また、もう一つ、最近、若い職員の方とお話をしたら、「自分の職場には、なかなかそういう危機感が伝わってきていない。もし幹部の職員の間で、この財政危機についての色んな議論がなされているのであれば、そういう議論の様子をそのままビデオに撮るなり、またインターネットで配信をするなりして伝えてもらうと実感として分かるんだが。」というご提案がありました。
 といっても、なかなか庁議の様子などをビデオに撮り、インターネットでそのまま配信をするというのも手段として難しい面もあります。
 ということから、今日は、まず僕が直接皆さん方にお話をする。そして、聞いていただいてご理解をいただけたら、それを皆さん方の口で、またそれぞれの職場の職員の方に伝えていただきたい。そんな思いでこの会を設けさせてもらいました。

(今回の「財政危機宣言」とこれまでの財政構造改革との違い)
 本題に入ります前にもう一つ、昨日の県議会の提案理由説明を終えた後、記者の皆さん方から受けた質問と私の答について少しご紹介をしておきたいと思います。
 その質問はどういうご質問だったかと言いますと、「財政が大変厳しいということもずいぶん前から繰り返し聞いてきている。また、それに伴う財政構造改革ということも県としてこの数年間取り組んできた。そういう財政の厳しさ、これまでの財政構造改革というものと、今回の財政危機の宣言と言われるものにどういう違いがあるのか。どんな、いわば新しさがあるのか。」というご質問でした。
 これに対して、僕は二つのキーワードを挙げました。その一つは「財政再建団体」いわば、企業で言えば倒産にあたるものですけれども、「財政再建団体への転落が目前だ」と、こういうキーワード。
 そしてもう一つは、「義務的経費である人件費、なかんずく職員の皆さんの給与ということも考えていかなければいけない」と、この二つのことをキーワードとして掲げました。
 そのようなことを、ちょっと頭の片隅に置きながら、これからご紹介をする画面、またお手元のペーパーを見ながら話を聞いていただきたいと思いますが、今日はいきなり財政危機の内容に入るのではなくて、高知県がこれまで取り組んできたこと、財政構造改革・行政改革への努力、そしてその結果と、それが三位一体の改革によってどう変わってきたか。そして、その見通しがどうなるか。それに対して我々が何ができるのか、何をせざるを得ないのか。その状況を前にして、17年度に向けて共通認識として持っておいてもらいたいことは何か。というような話の流にしていきたいと思います。

(高知県の財政構造改革の取り組みと予算規模の推移)
 で、最初の画面から入っていきますけれども、高知県は、他の全国の都道府県に先がけて財政構造改革ということに取り組んできました。ですから、他の都道府県が、地方財政計画の縮小に伴ってこの3年間ほど予算の規模を下げている所が多いというのに比べて、本県は、このように平成11年度が予算規模のピークだったわけですが、平成16年度(今年度)まで5年連続して予算の規模を下げてきている。マイナス予算を組んできております。
 そして、この5年間の間の予算規模の削減は、額にして1393億円。率にして22.4%。全国の都道府県の中でも、最も大きな率で予算の規模を削減をしてきました。

(限界に達しつつある普通建設事業費の削減)
 では、その中で普通建設事業費はどういうふうに動いたかというものを見てみますと、普通建設事業費は、このように平成8年度の当初が一番のピークでした。これに比べて、今年度の当初を見て下さい。ちょうど半分になってきています。それが過去と見比べてどの時期の水準にあうのかということを見ますと、昭和54年の当初とほぼ同額ということが分かります。
 つまり、今から25年前、四半世紀前の水準にまで戻るというか、下がってきているということになりますが、この普通建設事業費というのは、県の経済に与えるフローの影響が非常に大きい予算でございますので、これ以上なかなか削減できないのではないかという限界にまでまさに来ている。それぐらいまで削減をしてきたということになります。

(職員削減の取り組みの成果)
 一方で、こうした事業費の削減、つまり財政構造改革というだけではなくて、行政改革にも取り組んできました。

 職員削減の取り組みという面で、まず警察の職員、また教員も含めた県の職員の数を見比べてみますと、平成6年がピークで1万7494人。そして、今年度の当初が1万6094人と、全体で1400人、およそ8%を削減をしてきています。これを知事部局に限ってみますと、知事部局だけでも650人、およそ12%を削減をしたということになります。

(収支均衡からわずか2年で大幅な財源不足に)
 繰り返しになりますが、このような財政構造改革、また行政改革の結果、その努力の結果、次の画面を見ていただきたいと思いますけれども、平成14年度にはほぼ収支均衡の予算を組むことができました。
 ちょっと見にくいかもしれませんけれども、上のグラフが予算の規模。そして、下のグラフが財源不足の額を表しております。そして、予算の規模を見ていただきますと、平成14年度が5400億余で、財源不足は15億円。ほぼ収支均衡の予算を2年前に組むことができました。
 ところが、それから平成15年度、そして平成16年度と2年間、600億円もの削減をせざるを得ませんでしたが、それにも関わらず、つまり600億円の予算を削ったにもかかわらず財源不足の方も伸びてきて、236億円の今年度当初財源不足が生じたということになります。
 つまり、繰り返しますが、2年前には収支均衡の予算が組めていたのに、わずか2年間で600億と236億、つまり800億余の財源が消えていってしまったということになります。
 その理由は何かということを見てみますと、それは三位一体の改革によります地方交付税と、そしてそれが足りない時に発行いたします臨時財政対策債、この削減が一番大きな原因です。

(財政課注:国体の終了や、公債費の上昇に伴って、裁量可能な一般財源が減少したために事業の規模を縮減せざるを得なかった、というような実情もある。)

(地方交付税等の大幅削減が原因)
 この15年度と16年度、15年度は決算の見込みのベースとして、16年度は当初予算のベースですが、このように2236億円から1996億円、なんと240億円も削減をされたということになっております。

(では、今後の地方交付税等の動向は?)
 では、この地方交付税の今後の見通しはどうなんだろうということを考えてみますと、この地方交付税・臨時財政対策債ともに今後とも削減をされる傾向にあるだろうと思います。その一つの理由は、ここに書きましたように「地方財政計画が、今後とも抑制基調にいく」ということです。
 地方交付税は、ご承知のとおり国税の所得税、法人税、消費税、そしてアルコール税(財政課注:酒税)とタバコ税という5税を原資にしていますが、いずれも大幅に不足をしておりますので、少々この国税5税が、(景気回復で)税が増収になってもなかなかカバーしきれない不足額になっております。
 このため、総務省もむしろ地方交付税という制度を守っていく、このままであると色んな攻撃、圧力を受けるので守っていくということから、率先をして簡素化を規定方針にしました。その具体的な内容は、この都道府県の補正係数の半円等々、ここに書いたとおりでございますが、いずれの要因もマイナスに働く要因でございます。
 次に、第二の理由として、全国の大手のマスコミ、また経済界の一部からは、相変わらず「地方は、努力もせずに無駄遣いをしている。だから、この地方交付税を削減をすることによって、こういう無駄遣いをなくさせればいい。」というような、極めて短絡的な、むしろ誤った認識に基づく議論がなされています。こうしたマスコミの論調、また、経済界の方々は、国の経済財政諮問会議をはじめ、さまざまな重要決定をする委員会のメンバーとして入っておられますので、こうした誤った短絡的な認識が、今後とも地方交付税等の削減での大きな圧力になっていくだろうと思います。
 もう一つ、この6月に国が骨太の方針の第4弾を出しております。これを読みますと、まあ両論併記でございますので、下の方に小さい字で書いてございますように「地方団体の安定的な財政運営に必要な一般財源の総額を確保する」との表現もあります。
 しかし、全体的な流れとしては、上に大きな太文字で書きました「地方交付税については、国の歳出の見直しと歩調を合わせて抑制をする」というのが大きな流れであろうと思います。
 こうした三つのことを重ね合わせますと、地方交付税・臨時財政対策債とも、今後とも削減の基調にあるということを考えなければいけませんし、その結果、財源不足236億というのは、今年度当初だけのことではなく今後とも続いていくということを覚悟しなければなりません。

(近未来の予測)
 そこで、それでは、こういう基調、こういう状況を前提にして、今後の近未来の予測はどうかということを、二つの条件を立ててシミュレーションをしてみました。
 一つは条件Aで、いわば悲観的なケースです。これは、臨時財政対策債(赤字地方債=交付税の原資が不足しているために交付税の代替として平成13年度以降発行)が、平成16年度当初315億円ですけれども、19年度でゼロになってしまう。そして併せて、逆に歳出の側で投資的経費は削減をしないでそのままやったらどうなるかという想定です。
 そして条件Bは、逆に楽観的なケースで、地方交付税と臨時財政対策債は今年度と同額、併せて投資的経費の方はさらに努力をして毎年10%ずつ削減をしていく。こういう想定で立ててみました。
 上にあるのは、財政調整的な基金がどれだけ残っていくかということです。そして、下に出すのは財源不足の額ですが、まず条件A、悲観的なケースで見てみますと、今年度末に残る見込みの財政調整的な基金は109億でございますので、もういっぺんに財政調整的な基金は底をついてしまうということになります。
 一方、条件Bの楽観的なベースで見てみましても、200億?270億ぐらいの財源不足が生じるということになりますので、これも同様に、この109億の財政調整的な基金はいっぺんになくなります。
 本県の場合に、100億ほどの赤字というか、手当のつかない財源が出て来れば、もうそれで財政再建団体への転落ということになりますので、こうした数字を見れば、平成17年予算の編成ももう見通せない状態だということがお分かりいただけるだろうと思います。

(財政課注:都道府県においては、赤字額が標準財政規模の5%を超えると、地方財政再建特別措置法の適用を受ける。本県の平成15年度の標準財政規模は2,358億円であり、基金なども全て取り崩した上で決算の赤字がその5%である118億円を超えると財政再建団体となる。)

(非常手段の活用の可能性)
 こういうふうに今お話をいたしますと、「でも、何か特別に使えるような非常手段の財源があるんじゃないか」と、こういうふうに思われると思います。確かに、無いわけではありません。例えば、特定の目的を持った基金、そのうちの一つは退職手当の基金ですが、これが60億円。その他の特的目的の基金がおよそ106億円。166億円あります。また、株式を保有をしております。これがおよそ81億円ございます。併せて、遊休財産として売れるものが15億円あります。
 といいますと、「ジャスコの隣の秦南の団地の土地代などが入っていないじゃないか」ということを思われると思いますが、あれは、土地開発公社が(借金をして)購入をされて、借金としてお返しをしなければいけないものですので、50数億の価値があると言われておりますけれども、これを売ってもそのまま県の一般財源として活用できるというわけではありません。ですから、ここでは一般財源としてすぐ活用できる遊休財産として、遊休財産の処分の色んな計画の中であがってきたものを積み上げて、15億円という数字を出しました。
 これを足し合わせますと、およそ262億円ということになります。けれども、これは皆さん方もお分かりのとおり、一度使えば終わりです。財源不足というのは、毎年、毎年、先ほど見ていただいたように出てまいりますけれども、この262億円は一度使えば終わりということになります。
 そこで、先ほど挙げました条件AとBのうち、楽観的なケース、条件Bと、この非常手段を使うということを組み合わせるとどうなるかということを、シミュレーションとしてグラフにしてみました。
 上に掲げましたのは財政調整的な基金で、371というのは、今年度末に残ることとなります財政調整的な基金109億と、そして、先ほど申し上げました262億と足し合わせた371億でございます。

(楽観的に見ても…)
 けれども、楽観的なケースで見ましても、来年度の財源不足は216億でございますので、もうその時点で155億しか残らないということになりますが、18年も、19年も、272、274という水準で財源不足が出ますと、もう18年度・19年度には予算が組めなくなって、財政再建団体に転落をしていくということになってしまいます。
 これは、先ほど申し上げましたように、楽観的なケースで見た場合でございますので、悲観的な条件Aなどで見れば、もう言わんやおや、この非常手段も「焼け石に水」というようなことになってしまいます。
 もちろん、今まで申し上げたことは全てシミュレーションでございますので、国を含めました税収の伸びでございますとか、地方財政対策の変化によって変わるということは十分想定をしなければいけません。しかし、この条件A・条件Bは、先ほど申し上げましたように悲観的な予測パターンと、楽観的な予想パターンの、いわば両極端にあるものと考えていただいていいと思いますので、その楽観的なパターンよりも厳しい状況というものを私達は想定をしながら、今後の財政運営を、また仕事をしていかなければいけないと考えています。

(財源不足の重み)
 では、こうした状況にどう対応していけるのか。言い方を変えれば、財源不足をどのように解消していくことができるのかということですが、そのためには、今年度の236億という財源不足の重みが一般財源と比べてどれぐらいの重みがあるかということを見なければいけないということで、円グラフを作ってみました。
 この円グラフは、一般財源、今年度当初の2971億をどのような使い方をしているかということで、人件費ですとか公債費、また扶助費などの義務的な経費が82.5%を占めております。これに対して、各部局の調整に任せた予算ですとか、また特別枠の予算など、裁量経費は17.5%しかございません。
 では、この236億が全体の何%ぐらいの重みを持っているかと言うと、ここに書きましたように7.9%の重みを持っております。
 つまり、この236億を解消しようとした時、裁量経費だけでその財源不足を解消しようとすれば、45%以上を削減をしていかないといけないということになります。逆に言えば、この図を見ても裁量経費だけを削減するだけで236億の財源不足を(解消)することは、常識的に言ってできないということになります。

(人件費の推移予測)
 それでは、もう一方の義務的経費の中でも大きな枠を占めております人件費はどうかと言いますと、今後5年間で10%の人員を削減をしていく。退職不補充などで削減をしていくという計画を立てておりますので、段々と給与、一般的な意味での給与人件費は減っていくということになります。
 ところが、これに退職手当を含めてみますと、18年度・19年度と退職者が増える、その時に反転をしてしまって、19年度のグラフなどを見ていただいてもお分かりのように、退職手当の伸びというものが、この定数の削減によります人件費の削減の努力を帳消しにしてしまう。むしろ、全体的には削減の効果を上回ってしまうということになります。
 また、こうしたことからも、先ほど非常手段として掲げました退職手当の引当のための基金を他のことに使っていくことがなかなか難しいなということも、まあお分かりいただけるのではないかなということを思います。

(共通認識にしたいこと)
 これらのことを条件、前提として、さて、県庁の皆さん方に共通認識としていただきたいことが三つございます。
 まず第一は、地方財政への縮減・圧力は今後とも強いということで、これは先ほど言いましたように、マスコミ、また経済界の中に「地方は無駄遣いをして何も努力をしてない」という誤った認識が強くあるということもございますが、そのさらに背景として、国と地方を合わせて79兆円の税収、14年度決算のベースですけれども、これに対して151兆円のサービスをしております。こういう背景のもとには、地方財政への縮減・圧力というものは今後とも続くだろうということを考えなければいけません。
 そして、第二には、財政再建団体への転落が目前に迫っているということです。財政再建団体というのは、先ほどもちょっと言いましたように、企業で言えば、いわば倒産。よくマーケット、証券市場などで「監理ポスト」ということが言われますが、それに照らして言えば、国の監理ポストに入ってしまって県として独自の事業ができなくなる。昨日の提案理由説明で例に挙げたことで言えば、小学校・中学校での30人学級ですとか、またプロ野球のキャンプを誘致するためのさまざまな事業ですとか、そういう国の基準を超えた県独自のサービス。また、国にはない県として必要なサービス。そういうことがほとんどできなくなります。
 ですから、企業であれば職員・社員のクビを切っていくとか、またお取引先との債権・債務を帳消しにする。そういう従業員や取引先にご迷惑をかけるだけでどうにかしのげるかもしれませんけれども、県の場合には、県民の生活・経済に甚大な、多大な影響を与えるということになります。
 つまり、財政再建団体への転落ということは絶対に避けなければいけない。このことを、ぜひ一つ共通認識にしていただきたいと思います。
 そして、そのためにも、三つ目には強い危機感を皆さんの共通認識として持っていただきたいなと思うんです。冒頭申し上げましたけれども、「まだ、どうにかなるんじゃないかな。これまでも厳しい、厳しいと言われてどうにかなってきたから、何かやれるんじゃないか」という思いを持たれている職員の方も多数いらっしゃるんではないかと思います。
 が、ここ数年の変化は、そうした状況とは大きく変わってきておりますので、それぐらい深刻な危機感「なんとかなる」という意識は捨てていただいて、強い危機感の下に、ぜひ今後の仕事をしていっていただきたいということが、この共通認識として持っていただきたいことでございます。
 もう一つ、それによって収支均衡の財政運営に戻していくという方向を、ぜひとも共通認識として持っていただきたいということを思います。

(平成17年度予算に向けて)
 そこで、次に来年度予算に向けてどういう姿勢で臨んでいくかですが、まず事業の面、そして作業の面という言葉に分けて書いてみました。
 事業の面では、できればあった方が良いなという事業、これは断念または凍結という強い姿勢で臨んでいかなければいけないと思います。これに対して、県民生活の根幹を支えていく、また、県としての発展のために不可欠だ、欠かせないという事業に集中し、特化して予算を組むということが、事業の面では必要だと思います。
 そのための作業ですけれども、これまでここ数年、各部局に予算調整の枠をお渡しをして、その中での予算の枠組みはお任せをしてきました。こういう流れは、今後ともの長期スパンで見れば変えるべきではないと思います。また、各部局の経営方針というものも、きちんと尊重していかなければいけないことは言うまでもありません。
 しかし、先程から申し上げてきておりますように、極めて深刻な事態ですので、緊急臨時の措置として、今回は一度、部局にお渡しをした枠を戻していただいて、「全体最適はどうか」という視点でもう一度見直す。それによって、分野間の配分の見直しということも結果的に進めていきたいと思っています。
 また、こういう作業を少し前倒しをしてやっていかなければいけないと思いますし、そこで、色んな県民の皆さんへの、また関係の団体の皆さんへの影響が出て来ることは必至でございますので、そのご理解を得るように、できるだけ早く説明できるだけの考え方をまとめ、県民また団体の皆さんに説明をしていっていただきたい。
 そして、もう一つは、今申し上げましたような厳しい状況を職員の皆さんに十分理解をしていただくような、そういう研修を積極的に行っていきたいということを思っています。

(具体的に取り組むこと)
 さらに、具体的にそれではどうするかということですが、経常経費の思い切った見直しをまずしなければいけません。県の単独事業、特に補助金の徹底した見直し。また、県の運営をしております施設の廃止も含めた見直しということを進めたいと思いますが、その際には、民間との共同をぜひ目指していっていただきたい。
 これは、なぜこういうことを書き加えたかと言いますと、「横浪こどもの森」の廃止ということを今議会にご提案をすることにしておりますが、そのことが新聞に出ましたら、このこどもの森を利用されてる方々から「四国の中でも最も良いキャンプ場だ。これを、ただお金がないと言って切ってしまうのは勿体ない。なんとか自分達で努力をして支えていくことができないか。」というお話をいただきました。

 すぐ簡単にいかない色んな課題はございます。けれども、そうやってせっかく出て来た地域の方々、また利用者の方々の声を無視してしまうのは勿体ないと思いますので、もう一度なにができるかどうかということを、「県としての運営は廃止をするとしても、その後の活用を、民間の方々の力を活かして何ができるかを考えてみましょう」という投げかけを今しておりますけれども、そういうような経験からも、今後、一方的に廃止ということではなくて、やっぱり今利用されてる方々に、何かやっぱり活動をしていただいて、民間との協働を目指すという視点がひとつ必要ではないかと思っています。
 次に、第二は人件費の問題でございます。人員の削減、職員数の削減ということ。そのためには、勧奨退職の年齢、また条件などの枠を拡充をしていくということをしなければいけないと思って、そのことも今検討を進めております。
 もう一つ重要な点は、給与のカットの検討ということです。来月、8月10日前後に国の人事院の勧告が出ますので、この勧告が出ました後、この給与カットについても具体的な検討、県としてどういうことができるかどうかという具体的な検討をしてもらうように、関係の担当には指示をしております。
 そして、次は投資的経費の見直しということで、国も投資的な経費の見直しを進めておりますが、その削減方針以上の見直しをしていかなければいけない。その時、「ソフトあってはじめてハードなんだ」という考え方をぜひとも徹底をしていきたいと思っています。
 このことは、従来からも言ってきました。かなり、この10年あまり改善をされてきてるということは実感をしていますが、もう、ソフトあってのハードだということが条件であるということを、ぜひ徹底をしていっていただきたいと思います。
 これらのことを踏まえて、既存の予算をベースにするのではなくて、ゼロから積み上げをしていく。つまり、もう事業のスクラップ&ビルドというのは、その徹底をしていくというようなことではなくて、スクラップ&ビルドが当然なんだということを、ぜひとも皆さん方に知っておいていただきたいなということを思います。

(おわりに)
 以下、もうこの画面の説明は終わって、私の口から最後の付け足しをさせてもらいたいと思いますけれども、今申し上げた財政危機の宣言というのは、いわば現在置かれている現状とこれからの見通しということを踏まえた、方向性を示す第一段の財政危機宣言だというふうに受け取っていただけたらと思います。
 その意味は何かと言いますと、この9月から、国は経済財政諮問会議で国と地方との関係等々を含めて詰めた議論、集中的な議論をするということを言っております。

 これに併せて、この三位一体の改革が地方にどういう影響を与えたか、また、それによって地方がどういうことをやらざるを得ないかというようなことを、ある意味では、全国へのアピールとしても県の考え方、またやらざるを得ないことを打ち出していきたいということを思っておりますし、また、その際には県民の皆さんに対しても、新に、これまでの財政構造改革に加えてまたこうした痛みをご理解をいただかなきゃいけない。

 そのために、「我々の側も、内部の側も、こういう痛みを共に分かち合う覚悟をしております」ということを、数字的にも示していかなければいけないと思いますので、その9月の経済財政諮問会議にあわせ、そして、県民の皆様方にも説明できるような形で、数字が少し入っていった第二次の、第二段階の財政危機宣言というものを、秋頃にしていきたいということを考えています。
 また、今日申し上げたような話を申し上げると、皆さん方は「なんか夢がないな」と、で「ここ数年我慢するのは良いけども、我慢して何年かすれば何かまた夢の持てる時が来るんだろうか?」ということを率直に思われると思います。
 それに対しては、確かに予算の面では、ここまで厳しい状況になってきている。また、国・地方を含めて、先ほど申し上げましたけれども、79兆の収入に対して151兆のサービスをしているという現状の中では、それを少しでも後年度の子孫の負担にしないように解消していくためには、なかなか予算の面では昔のような右肩上がりの夢の持てる時代というのは、もう戻ってこないんじゃないかなということを思います。
 だけど、だからこそ、これまでも申し上げてきたように、予算でだけ仕事をするのではなくて、「人の力」、また「知恵の力」で仕事をする県庁をぜひ目指していっていただきたいということを思うんです。
 というのは、今日お話をしたことは、三位一体の改革に照らして言えば、その量的な削減、地方交付税などの削減がどういう影響を地方に与えたかということを中心に、それによって何をせざるを得ないかということをお話をしましたが、三位一体の改革は量的な削減だけではなく、むしろ、それよりも地方の自由度を高めていくという質的な変化に大きな意味があるはずです。
 ちょうど明日、新潟県(注:実際には新潟の豪雨災害のため東京で実施された)で全国知事会議が開かれて、そこで、国が「3兆円の税源の移譲の見返りに、地方の方で国庫補助負担員の3兆円に見合う分を出しなさい」という投げ掛けに対する議論をするわけですけれども、こうしたことによって、結果的に一般財源化をされていくものがあれば、それによって地方が自由に色んな仕事ができる分野が出て来ます。
 例えば、これまでの政策協議でもお話をした中で1例を挙げれば、福祉の施設の整備費というものが一般財源化されるのではないかという流れが出て来ています。で、もしこれが一般財源化されたとすれば、従来からの高齢者・障害者・児童というような縦の枠にこだわることなく、また特別養護老人ホームだ、デイサービスだ、ケアハウスだという枠づけで各地域にどういうものを配分していくのかという考え方ではなく、地域の実情にあわせて、新しい、そうした福祉のための居場所づくり、またグループホームを、県独自でどのような形で配置をしていくか。白地図の上に色んなビジョンを描いていくことができるようになります。
 また、その時には、単に福祉の関係の方だけではなく、住宅や建築の専門の方、また都市計画・まちづくりの専門の方、さまざまな経験・知識を持った方々が一緒になってチームを組んでそういう仕事がしていける。
 僕は、そういうことに、そういう知恵と人の力に、もっともっと力量を発揮できるような県庁を目指していくべきではないかなということを思うんです。
 もう一つ、県内でも環境関係のビジネスというのがずいぶん出て来ました。が、環境関係のビジネスを本当に伸ばしていこうとしたら、今行われてるような指導などの規制を取り払ってみる。それによって大きなビジネスチャンスを広げる。また、逆に、今は無い規制をかける。もちろん、それは単に規制という意味ではなくて、そのことによって、県民の皆さんの健康レベルを上げる。また環境水準を上げる。そうした規制をかけることによって、その規制に応える新しい環境ビジネスの分野を広げていくなどの、僕は知恵があると思っています。
 ですから、例えば、今申し上げたことであれば、保健所とか福祉事務所の方々も、単に今与えられている分野の仕事だけではなくて、そういうものを取り払ったら、また新しいものを付け加えたら、それによって県内の産業がどう変わっていくか。そういう視点で、また色んな部局を超えた議論をして、そして、それを実施に移していく。
 そんな仕事をしていけば、僕は、予算が少なくなっても、まだまだやり甲斐を持って仕事に取り組める分野はいっぱいあるんではないかということを思っています。
 ぜひ、皆さん方には、こうした財政危機の現状というものを知っていただき、それを職員の方々、若い皆さん方にお伝えをいただくと同時に、「ただ単に夢がなくなるというわけではない。これを機会に、やはり県庁の仕事の仕方を変えていく。そして、その変えていくことによって、新しいやり甲斐を一緒に見出していこう。」という前向きな視点で、併せて伝えていただければ幸いだなということを思います。
 以上で、僕からの話を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

(質問)
質問者1: 
 3ページなんですけども、3ページの下の箱の中なんですけども、「今後の地方交付税の動向は」という所で、実際に最初の「・」の中で、その最初のバーで「地方交付税の原資が減っておる」ということは、これは当然間違いないことと思います。
 その次のバーで、「入ってくる原資が少ない」というふうなことを言ったうえで、その次のバーで「総務省も地方交付税の簡素化を規定方針としている」というふうなことなんですけども、当然、入ってくる額が少ないんであれば、簡素化をするということも考えれると思いますけども、この中で、全国一律に簡素化をするんではなくて、例えば、整備の遅れてる所ですとか、そういうふうな、いわゆる調整機能というのを高知県の‥‥、高知県と言いますか、そういう遅れている地方の方から国の方に向かって言って行くようなことはまたできないんでしょうか。
 もし言って行かれてるんであれば、その結果というふうなのはどういうふうなことになってるかお聞きしたいと思います。

総務部長: 
 国の動向の説明ですので、私の方からご説明しますけれども、交付税の簡素化というのは、これは知事会でもかなり議論がございまして、今まで、例えば起債の元利償還金に交付税算入を認めるとか、こうしたものがあまりにも行き過ぎてたのではないかという論調がございます。これは、経済財政諮問会議などの中でもかなり主張がされまして、確かに交付税が補助金のような使われ方をして、そういったことがかなり地方で公共投資に、本来でないドライブがかかったんじゃないかという議論がございました。
 こうしたところは、全国の知事さんの中でも「やはり、直すべきところは直すべきではないか」という論調がございますので、簡素化の方向に向かっております。
 ただ、一方で、やはり地域の動向、実情、また公共投資などは自然条件にかなり左右されるところもありますので、そういったところは、やはりきちんと需要を把握して算定すべきではないかということも、また、これは主張としてやっていかなければいけないというふうに思いますので、そういった意味では、簡素化の方向というのは、確かに規定方針として進められておりますけれども、それがあんまり過度にいっているのかどうか、また、本来そういう交付税に入っている不純物のような制度を取り除くだけではなくて、本当に地方を苦しめることになってないのかどうか、そういうことはきちんと監視していかなければいけないというふうに思っております。

橋本知事: 
 今の疑問に別の言い方で答えるとすれば、簡素化をしても、その中で高知県のような財政的に非常に厳しい、色んな地理的な不利な条件を抱えた、そういう県に対して特別な配慮をしていく。そういう配分の仕方をすべきだという主張はもちろんしていますし、そのことは正論だと思います。
 ただ、そういうような配分をしても、額そのもの、まあ全体の厳しさが下がっていけば、そこでいくら調整をしても、その調整をしてきたものは、前に比べればかなり落ちてくるということになりますので、そういうことを覚悟しなければいけないという趣旨で言っております。

質問者1: 
 両方していただきたいというふうなことです。

橋本知事: 
 はい。

質問者2: 
 ニ点あります。一番最後の、あ、これは二つ目の囲みですがね、「平成17年度予算に向けて」の「作業では」という所の最初のパラに「分野間の配分も含めて見直す」という文言があります。
 これは、配分の見直し自体が目的では決してなくて、全体最適を目指して組み直した結果として従来の配分とは違ってますねということだろうと思いますので、そういう趣旨なのかということの確認をまず一点させていただきたいのが一点。
 それから二点目ですね、これはお願いなんですけども、先ほどの方からもありましたが、地方交付税の調整機能につきまして。
 従来から、色んな機会でも私の方からもお願いしてるんですが、三位一体等で財政力の弱い所ほど大きな痛みを伴うと。高知県は、事実として47位の財政力指数の県ですので、一層、税収構造の差が開くということですよね。この地方交付税による調整機能、財源保障機能を強化する方向で頑張っていただきたいと。
 これから県民にも、県庁サイドにも、非常に厳しいことを言っていかなきゃいけない、覚悟してもらわなきゃいけないわけですから、外に対しても財源確保のためのことを一生懸命やってるということを、ぜひ県庁職員にも、県民にも分かってもらえるようなことをやっていただきたいと思います。
 以上です。

橋本知事: 
 はい。第一のご質問の点は、おっしゃるとおりでございます。
 最初に分野間の配分の見直しありきで、例えば、「どの部局はこうだけど、この部局は何%」というふうなものを決めて、それに基づいてやりましょうということではございません。全体を議論する中で、今またはここ数年続いてきた部局間の配分の比率が、結果として変わる場合もあると。そういうことも含めてやっていきたいという趣旨でございます。
 それから、第二の点は、ご指摘のとおりでございます。
 ただ、先程から「外部からの削減圧力」ということで申し上げましたように、財源保障調整の機能、そういうものそのものを否定する議論さえ、大手のマスコミの中、また財界の中にございます。その背景には、誤解に基づく、また短絡的なイメージに基づいた議論がありますので、そのことを私達としては国に対して色々要望をしていくということと同時に、いかにやはり広く国民の皆さんにそういう問題を分かっていただくかという努力をしていかなきゃいけないなと。PRということを含めてやっていかなきゃいけないということを思います。
 何かまた良いやり方の面でご提案があれば、そういう広くPRの仕方ということではまたご提案もいただければと思いますが、国に対しては、当然、財源保障機能の堅持ということは、もう強く求めていきたいと思います。
 

  (他の質問は知事が直接答えていないため略)
 


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