公開日 2007年12月08日
更新日 2014年03月16日
知事の定例記者会見
平成16年5月26日16時00分から(県庁二階 第二応接室)
(項目)
・国への要望活動と地方財政危機突破総決起大会
・市町村合併(1)
・小泉首相の北朝鮮訪問
・市町村合併(2)
・三位一体改革への地方からのアピール
・森林環境税
・市町村合併(3)
・参議院選挙への対応
・出納長人事
(岡村:NHK記者)
代表質問をさせていただきます。
国への要望活動と地方財政危機突破総決起大会
先週末から昨日にかけて東京に行かれて、特に、国への要望を行ってきたわけですが、その手応えや感想、それと、昨日知事会の前に地方財政危機突破総決起集会に出席されたわけですけれども、それに関して、感想ですとか、三位一体改革に対する要望とか、より効果的な意見とかそういう、(他県の)知事さんに会われて感じたことがあるかどうかなどをお願いします。
(知事)
東京で国に対しての要望活動をやってまいりましたが、前にホームページの中でも「ハムレットの心境」ということを書いたことがございますが、同じようなことを各所で感じました。
というのは、具体的に言えば、例えば、「中山間地域等の直接支払いの制度を17年度以降もぜひ継続をしてほしい」と、「その際には要件緩和をしてほしい」と、こういう要望をして、農林水産省でも、「もうそれは、省としてもぜひ継続をさせていきたい。特にヨーロッパ諸国など、こういう直接支払いの制度というのは世界的な流れになっていくから、そういうことを踏まえても、ぜひとも引き続き国土保全の政策として続けていきたい。ただ、これも補助金なので、知事会の方から補助金の削減・廃止ということを言われ、その項目の中にこれを入れられると、財務省との協議でも非常にやりにくくなる。なんとかまた、知事会の方でも、そういう点も考慮してもらえないか」というようなお話がございます。
考え方として、こうあるべきだという筋論と、その筋論の中で、しかし現実の制度が変わっていない以上県民のためにプラスになることをしていく、という現実的な判断とは、レベルとしても違いがあると思いますけれども、なかなか、そういうことを直接その場で申し上げることもできませんので、ふんふんと頷いてまいりました。
また、「まちづくり交付金」という国土交通省の事業に関しても、県内で2箇所が手を挙げて、ぜひその採択をということを…これは直接本省でどなたに会ってということではないのですけれども、要望していますが、知事会のまとめた三位一体の改革に関する提言でも、「まちづくり交付金のような…」、表現はそうじゃないですけれども、「小手先の交付金化でごまかすことを許してはならん」と、こういうような(趣旨の)表現(提言)があって、その都度非常に辛い思いをしたというのが実際のところです。
各論になりますと、やはりそういういろんな問題が出ますし、なお、きのうの知事会でも感じたことですが、大都市部とそうでない地方では税収の構造にも大きく違いがありますから、地方交付税以外に税の制度で配分の仕組みを作っていくかどうかというようなことに対しては当然大都市部は反対をされますし、いろいろな意見の違いが出ます。
また、文部科学省の総額裁量制に対する見方、スタンスというものも、各県によって異なってきます。
等々、各論になるといろいろな意見の違いが出て、私は、「ここはひとつ、やはり一致団結をしていく力を持てるかどうかということが、国に対しての重要な戦略ではないか」ということは申し上げましたけれども、今申し上げましたような、高知県としていろいろな活動をする中でのジレンマというかハムレット的なこともありますし、また、知事会としてまとまっていくときの、今申し上げたような各論での温度差というものもあって、いよいよ難しい領域にさしかかってきたな、ということを思います。
それから、それより前に、三位一体の改革に関わっておられる国の関係者にもお話をしました。
その時感じましたのは、地方の無駄づかい論「地方は無駄づかいをしているのではないか」という声がありますし、そういうイメージが強く広がっていますが、しかるべき立場の有識者の方が持っているイメージのきっかけが何かといえば、例えば県庁を訪ねた時に県庁が非常に豪華だったとか、高校の校長室が大変広くて立派だったとかいう、極めて、まあ分かりやすいといえば分かりやすい、「こうしたことで地方が無駄をしているということを全体的に評価してしまうのかなあ」という、ちょっとした怖さを感じるようなお話もございました。
現実の市町村も都道府県も、今の財政状況というのはそんな、無駄をしていて苦しいという現状ではなくて、サービスも削り、また行財政改革の努力もして、なお大変厳しい現状にあるわけですが、そういうことがやはりなかなか伝わっていないし、伝え方が難しいなということも思いました。
併せて、今後、地方公務員の人件費というものが、やはり大きなターゲットになっていくのではないかというお話がございました。
これは総務省の幹部の方からですけれども、経済財政諮問会議でも、もう既に3回にわたってそのことが議論され、小泉総理も「ブロック別でそういう賃金水準を決めることはできないのか」というような表現をされていると。私自身そのものを読んでいませんので、正確な表現ではありませんけれども、(そういった)表現をされているということです。
国家公務員の給与水準と比べる「ラスパイレス指数」というものがございます。
もうほぼ100に近づいてきて、黙っていても職員の年齢構成が下がったりしていけば、高知県でも100を割っていくということになろうと思いますけれども。
それが今度は、100という数字になっていけば、「国の公務員と地方が同じだというふうに考えることがそもそも間違いではないか」、「地域の中小企業の従業員の方の給与水準と同じでいいのではないか」と、こういうような声もそういう委員会などで強く出されてくるというようなことで、今後は、この人件費の問題も、地域、地域だけではなくて、国の委員会などでも取り上げられる課題になってくるということを感じました。
と同時に、やはりいいところを突いてくるというか、時代の空気を読む感じが鋭いなということは思いました。
というのは、高知県だけではありませんけれども、地域、地域でも、「地方公務員の給料は高すぎるのではないか。それをもっと削れ。これだけ民間は苦労しているのに」という意見に、なかなか反対論を唱えることは難しいだろうと思いますし、現実にそういう声が国から出てくれば、「そうだ、そうだ」という声が地域の住民、県民の皆さんの大多数の声として出てくるだろうということを思って、(小泉さんは)やはり非常に今の時代の空気を読むという勘に優れた方だと思うと同時に、そういう流れというものを覚悟しながら、これからのいろいろなことに取り組まなければいけないということをあらためて痛感いたしました。東京での感想というのはそういうことです。
例の地方財政危機突破の大会のことですが、正直な印象を言うと、また地方からそういう声が出たというようなネタに使われるので、なかなか言いにくいような印象が正直な印象だったということです。
前に、浅野さん(宮城県知事)、増田さん(岩手県知事)とちょっと鼎談をする機会がございまして、その時にも、「この武道館での大会で何かはちまきを巻くそうだけれども、それだけはいくらなんでもやめたいね」と浅野さんが言っていて、「それは当然そうだね」と言っておりましたが、(会場に)入ったらもう、ワッとはちまきを巻いているという大会で、「うーん、すごいな」という印象を受けました。
もう少しコメントをすればですね、それぞれの人の思いがそうでなくても、そうやってはちまきを巻いて「地方交付税をどうの」というような議論をすると、「あいかわらず地方は物取り主義ではないか」と。そこで発表される意見の内容を読まずに、イメージとしてそういうイメージを与えるだろうと。例えば、映像として、新聞の写真、TVの映像にもしそういうものが出たとしたら、そこでのコメントというものに関係なく「うわぁ、まだこんなことやってるのか」という印象を与えかねないという強い危惧を覚えました。
市町村合併(1)
(岡村:NHK記者)
続けてお願いします。
三位一体(の改革)にかかわることだと思うのですけれども、県内の市町村合併について、知事のウエブログの中で、合併を強く促していたことで「アクセルを踏む」という表現がありましたけれども、これまでのスタンスを変えることの理由ですとか、今後は知事が前面に出て市町村の間をとりもつことなどを想定してらっしゃるのか、そのあたりをお聞かせください。
(知事)
基本的に、市町村合併に対する考え方とかスタンスというものを変えた発言ではありません。
市町村合併というのは、これまでも申し上げているように、国や県が強制をしてできるものでもすべきものでもありません。市町村が住民の皆さん方と十分話し合いをされながら、自主的に判断をしていくべき課題だという考え方、スタンスに何の変わりもありません。
しかし、2~3年前に市町村合併ということが具体的なものとして動き出した時と今とでは、県の、また市町村の財政状況が全く様変わりをしていますし、また、今後、三位一体の改革というものが2年目3年目にこのままのかたちで入っていくということを想定した時に、もっともっと厳しい現状になるということを思いました。
私のウエブログの中でも、「ことここに至ったら」という表現をしましたが、まさにことここに至ればということを感じたのが、ああいう表現を使ったきっかけというか、一番の原因でございます。
こうした厳しい現状というのは、首長をはじめ地域の議員の方々などはもうかなり感じておられると思いますが、そのことが本当に地域の住民の皆さん方に伝わっているかといいますと、いろんなアンケートの集約のパーセンテージだとか、説明会を開いた会場の数とそこに集まられた住民の人数、というようなことを見ても、なかなか関心を起こせない、また、それだけの実態のご理解をいただけていないという現状ではないかというふうに思いました。
ですから、「アクセルを踏む」というのは、これまでの考え方を変えて無理やり強制的に合併をするように何らかのアクションを起こすという意味では全くありません。これまでのように、市町村の自主的な判断というものを尊重していく、また、住民のそこでの考え方というものを尊重していくという姿勢に何ら変わりはありませんけれども、こういう厳しい、将来的には多分それぞれの市町村が予算を組むことさえ、もう1年2年で難しくなる、できなくなるという現状を、少しでも地域の住民の方に知っていただいて、そのことを十分踏まえた上での判断をもう一度お願いする。もう一度ではないかもしれませんけれども、判断をあらためてお願いをする、ということを、あの言葉の中に「アクセルを踏む」という表現で込めております。
で、具体的に何をするかということですけれども、ひとつは、今、市町村の今年度当初予算の内容はどうかと、その中で財政調整基金だとか減債基金などがどれだけ取り崩されて、どれだけ残っていて、これが将来どういう推移をするか、ということのまとめをしております。
一定のまとめができて、今週中に各市町村にもお話しをして、来週の初め、31日ぐらいに皆さま方に発表をさせていただくという段取りで準備を進めているということですけれども。
この数字を見ましても、もし三位一体の改革というのが、今年度と同じように、2年目も3年目も地方交付税等が12%ずつ削減をされていくというかたちで進んでいけば、(平成)19年度には県内のどの市町村も予算が組めなくなる、という現状にございますし、来年度でも半分ぐらいの市町村が予算が組めない状況になるというようなシミュレーション、推測になっています。
こういうような数字を「狼少年だ」という見方も出てくるかもしれませんけれども、しかし、その狼少年的に言っていたことが、もうこの数ヶ月でどんどん現実のものになってきておりますので、「こういう現状です。このままもし三位一体の改革が進めばあなたの市は、あなたの町や村は、こういうふうな予算の状況になっていきます」ということをぜひ知っていただくということも、ひとつ県としてできることだと思います。
それから、ご質問の中でも「知事として直接」というお話がありましたが、これまでは、基本的なスタンスにのっとって、地域のご判断というものをまず尊重していくという姿勢をとっておりましたし、その際に、もちろん県が、情報提供だとか、仲を取り持つというような作業をさせていただいてきましたが、それは、企画振興部並びに市町村振興(課)だとか、また(市町村)合併推進(室)だとかいう担当の課や室の職員にある程度ゆだねておりました。
私がそれを飛び越えて直接行って、ということをしておりませんでしたけれども、今後、いいかたちに進められるということであれば、ぜひ、自分が直接出て行って、いろいろな場でお話しをしていくということもしていきたい。それは、最初から公的にというか、実際に合併うんぬんという形を前提にして議論をするということでなくても、懇談会的な形ででもそういうようなことをやってもいいと思いますし、そこは十分担当課の方とも打ち合わせをしながら…。
というのは、勝手に呼ばれて行きますと、かえって進んでいたものをまたおかしくするということも十分考えられますので、そういうことがないよう、十分庁内的な調整はとりながら、直接自分が出て行くということもやっていきたいということを思います。
小泉首相の北朝鮮訪問
(岡村:NHK記者)
最後の質問です。
小泉首相の北朝鮮の訪朝なのですけれども、拉致被害者5人帰国しましたが、評価が分かれているわけですが、橋本知事の見解を伺いたいのですが。
(知事)
私は、外交というのは、なかなか表に出てこない、分からないことが数多くございますということを前提にしますと、今の時点であれこれ批判がましく言うことは、相手国との関係からみてもあまりいいことではないのではないかと。逆にそういうような国内のぎくしゃくした批判というものが相手国に利用されることさえあり得るのではないかということを思います。
もちろん、拉致被害者の残る10人の方々のご家族が期待していたものとは全く違ったという言い方をされる、不満を表明されることは当然だと思いますし、そのことは十分理解ができますけれども、この残された10人の方についても、これまで「解決済みだ」と言っていたものを「再調査をする」というところまで進んでいるわけですから、ここは、そういう過去の問題からだけこの両国関係というものを見るのではなくて、将来の両国関係という未来に渡る視点から見ていく必要があるのではないかと思います。
私は、前々から、北との間の関係を安定させるためには、人道援助というかたちであれ、経済援助というかたちであれ、もっとやはり経済的な交流をすべきだということを思っておりましたので、今回は国連からの指示による人道援助というかたちをとっていますけれども、こうしたかたちの経済的な援助をしていく、さらには、北にございます港などを活用して経済特区的に経済関係をつくっていく、それも特別な企業だけがということではなくて、より幅広くグローバルに活躍する企業がそういうところに参加をしていくことによって、経済関係をつくっていけば、相手国もそれをむやみに壊すことは決して得なことではないということを当然認識をされるだろうというふうに思いますので、従来から、そういう関係をつくることが遠いようでも早道ではないかということを思ってきました。
そのための第一歩が今回の訪朝で築かれたと私は思いますので、そういう面で評価をしたらいいんじゃないかなというふうに思っています。
(岡村:NHK記者)
ありがとうございました。
幹事社からはここまでですが、ご質問がありましたらよろしくお願いします。
市町村合併(2)
(須賀:高知新聞社記者)
よろしいですか?
市町村合併です。
来年の3月末で切れる現行の特例法、その次の法案も成立してしまいましたけれども、その法の中には、総務省が基本指針をつくりますので、その基本指針をもとに都道府県が市町村の合併の組み合わせなどの構想をつくる…、これが義務なのかどうか、ちょっとわかりませんけれども。
その上にですね、知事は今度は構想対象の市町村に対して合併協議会の設置などを勧告することができる。まあ、このふたつが入ってくるわけですね。
これはもう、仮定ではなくて、そういうスケジュールになるというふうに見なくてはいけないと思いますけれども、知事の先ほどのお考えですと、この、構想をつくりそして勧告していくということを、ひょっとしたら橋本知事はしないのではないかというふうに受け取れるのですけれども、その辺についてのお考え、見通しはどうですか。
(知事)
しないのではないかということにはなりませんし、必ずしていくということにもなりません。
というのは、今ご質問の中にもありましたように、構想が義務なのかどうかということも分かりませんし、また、全国一律にそれをやっていくということになるのか、何か遅れている地域にそういうものを求めてくるのかということも分かりませんので、もう少し、そこは、総務省としての事務的な詰めというか方向性というものを見ながら、考えていきたいと思います。
それから、勧告ということも、実際に法定の協議会などが立ち上がって、そして、さまざまなご事情でそれがうまくいかなかったというところに、またあらためて同じようなかたちで勧告をしていくというのは、今の時点ではなかなか難しいのではないかということを正直思います。
一般的には勧告ということをどの程度の強さに受け止めるかということですけれども、うまく話が進みそうだという市町村の間の協議の動き、そういうものを後押ししていくかたちでの勧告というのは、私は手法としてはあり得るだろうと思います。
つまり、無理押しをする勧告というのは、市町村合併のあるべき姿としてあってはならないと思いますが、ごり押しではなくて後押しをしていくという勧告であれば、選択肢としてはあると思います。
(須賀:高知新聞社記者)
総務省がつくる基本指針には、人口規模…、高知県のようなところですと非常に危惧するんですが、おおむね(人口)1万人未満(の市町村などが構想策定の対象になる)ですね、そういう方針が盛り込まれる…。これも確定的な情報だと思うのですが、このことについては、強い違和感なりは、今までいろいろな場面で知事も確か表明されていると思うんですが。それが全国一律でそれが来ると思うんですよ。
そのことについてご感想をあらためて求めたいんですけれども。
(知事)
1万人というふうな人数で全国一律に切っていくという考え方そのものが、日本という国の地理的な条件や何かを少し無視しすぎてはいないかなということを思います。
というのは、ちょっと話がずれるかもしれませんけれども、本県の場合、いくつかの町村が一緒になっても、ようやく1万(人)だとか2万(人)だとかいう規模のところが多いですよね。それで果たして市町村合併の一番のメリットである「規模のメリット」というようなものが出てくるかどうかということも、市町村合併に対する疑念の大きな理由でした。
そういう中で、ただ単に全国一律の人数というかたちでもし方向性が出てくるとしたら、果たしてそれが市町村合併が本当にメリットを出すかたちにつながるか…、本県のような地理的な条件でつながるかどうか、という疑問も一方で持つことになりますし、また、それを無理やり、何か1万人未満でやらなければペナルティがあるということであれば、それもいよいよ、地方分権のかたちの中で問題だと思いますので、そういう発言をし、そういうやり方であれば反対の議論を出していくということはしたいと思います。
ただ、市町村合併に対するスタンスのことと同じように、また、冒頭申し上げました「国に対して補助金の廃止・削減を求めながら、今ある制度は今ある制度として求めていかなければいけない」ということと同様に、本来やはりあるべき筋論というものをきちんと高知県の立場で言いながらも、ただやはり、現実の流れの中で選択をしなければいけないということになる可能性もあると思いますので、1万人うんぬんということに対しての筋論としては今申し上げたとおりですけれども、今後やはりそれが進んでいく中で、それに対して現実的にどういう対応をとっていけばいいのかというところまで詰めた考え方は、まだ持ち得ていません。
(須賀:高知新聞社記者)
「1万人未満というものが前提になった構想をつくりなさい」とこういうスタイルになれば、「それは高知県ではつくりませんよ」ということを宣言するケースもあり得るわけですね。
(知事)
まあ、「作りませんよ」というか、その趣旨が何かということ…。1万人というものの意味は何かとか、それで効果として何を求めようとしているのかと。そうすると、地理的な条件などを無視して「1万人」といった時に、霞ヶ関で考える効果というものが、全国で1万人できるもので果たして発揮できるものかどうかというようなことは、議論としてしていかなければいけないだろうというふうに思います。
(浜田:高知新聞社記者)
市町村合併の絡みなんですが、このまま三位一体改革が続けば、予算の組めなくなる市町村も全国でかなり出てくるらしいですが、例えば県内では、合併したくてもできない市町村…、特に安芸市とか南国市、土佐市とか、都市部に多いんですけれど…、そういうその、合併したくてもできない市町村へのアプローチなどは何か考えていらっしゃるでしょうか。
(知事)
それは、私自身がいろんな形でお話を聞いて考えて動くということも含めてですけれども、今、例えば制度的にとか予算的に何かを設けて今言われたような問題点に対応していくというアイデアを持っているわけではありませんけれども、よりひとつずつ詰めて、問題点をどうやったらクリアしていけるか、壁を乗り越えていけるかということは、もう一度考えていきたいと思います。
それは、自分自身が足を運ぶということも含めて、考えていきたいと思います。
三位一体改革への地方からのアピール
(釜本:時事通信社記者)
きのうの知事会の提言等についていろいろお聞きしますが。
まず1点、昨日の決起大会の印象が、どちらかというとアナクロ的な、はちまきを巻いて…、という話もありましたが、実際に昨日の決起大会をめぐる一連の報道等を見ても、なかなか都会と地方とのギャップを埋めるような効果というものは見られないような気がするんですが、今後、参院選等もありますが、このギャップについて、再三になりますが、(ギャップを)埋めていく考え方についてお聞きしたいと思います。
(知事)
埋めていくためには、広くなんらか国民にアピールをしていくという取り組みが必要だと思うんですね。
昨日の大会でも、自分がそれこそ主催者でもないので、そういうことを申し上げる機会も全くありませんでしたけれども、運動の進め方として、あの大会が終わったあと地元選出の国会議員のところをまわってと…、私はちょっと別の用があったので行けなかったんですけれども…、まわって、ということなんですね。
そうではなくて、ああいうことをやったのであれば、例えば、うまく話のできる市町村長さんだとか知事さんが代表としてマスコミをまわって論説や社説の方のところに行くとか、いうようなことをやるとか。それから、そういうものを持って、中央の団体としていろいろ活動されている、女性の団体でもいいし何か若者の団体でもいいし、そういう所へ行ってそういうアピールをするというような知恵…と言うと知恵が無いように聞こえるので失礼なのですけれども、そういうことをやっていかないと、ちょっといかにも…、ということを感じました。
そのほか、僕は…マスコミの出身ということもあるけれども、やはり、いかにマスコミにそういう話をしていって、誤解の部分を解いていき、また、あまりにも財務省寄りの論調であればそういうものに対してきちんとした批判をし、そうではない意見を載せるスペースをつくってもらう、ということが必要だと思うんです。
5月9日の読売新聞(社説で、麻生総務大臣の三位一体の改革に対する試案を、地方を甘えさせるものだと厳しく批判)のことを庁議などでも申し上げましたけれども、ちょっと休み中で気がつかなかったんですが、その前の5月5日の毎日新聞も、「もう弱音を吐くのか」というようなタイトルで、読売の社説より以上に厳しく、麻生プランとそれに対する地方の声を批判するものが出ておりました。
そういうものも、各社に行って聞いてみれば、決して社全体の雰囲気ではなくて、地方部なんかはもっと地元の方を向いているということもありますし、社説の中でも違う意見を持っている人はいるということですので、そういうかたちの勉強会なりといったような…、まあ、時間的な期限もありますけれども、そういう努力もしていく必要があるということを思います。
併せて、役所との関係でも、浅野さん(宮城県知事)や増田さん(岩手県知事)とも話をしたんですが、財務省の課長の方々などとそういうことの意見交換をしていくというような場もいい形でつくったらどうかということも話しました。全然具体的にアレしているわけではないですけれども。
(釜本:時事通信社記者)
過去の会見等でも、政府の予算協議の前になんらかのアクションを起こさないといけないというような発言もあったかと思うんですが…、今いくつかアイデアが出ましたが、こういったやつをすぐに実現させるお考えというのは?
(知事)
マスコミの方とのいろいろな会だとか、財務省も含めて役所へのアプローチだとか、そのアプローチというのを、単に次官のところへ要望書持って行ってというのではなくて、実際に動かしている課長クラスの人たちと率直に語りあう会をつくるとか、いうことは、やれる範囲でやっていきたいと思います。
ただ、政府予算の概算(要求)の前になんらかのパンチのあることを、というのは、現実にはなかなかやっぱり難しいな、というのが正直なところです。
これは前も申し上げたかもしれませんが、長野(県知事)の田中さんが「直轄の負担金をもう返上するというようなことを言ったらどうだ」と…。それは、ほぼやるべき公共事業が終わっている県であれば言いやすいことですけれども、本県のように、それこそ新直轄や何かという、これはまあ地方負担のないものですけれども、そういうものから、それに連結をするさまざまな直轄事業を持っていて、というところが、果たして、「それじゃあもう払いません」と言って何か突きつけることが脅しになるかというと、脅しではなくて、「それだったらやめて、他に使わせてもらいます」と言われるだけではないか、ということを正直思いますので、なかなか難しいです。
それから、行財政改革に対しても、明らかに地方は行財政改革を相当早くから、本県だけではなくて、取り組んで、その実効も挙げていると思います。
それに対して、国の方はどうかというと、国の方は遙かに遅れていると思いますが、これもですね、各論になって、「それでは、その○○省の、中四国にある○○は、もう廃止をしたらどうですか」というのも、なかなかやはり、我々、というか、私の立場では言いにくいということを、それぞれの知事がそれぞれの持っている地域の特性に応じて感じておりますので、正直、非常に難しいな、という悩みを持っています。
森林環境税
(須賀:高知新聞社記者)
森林環境税の認知度・周知度が50%を割っているんですね。「知っている」が47.1%。
これ、いささかと思うんですが、知事はどうですか。
(知事)
まあ、これまで2年間かけてきた、また、それより前から言えば2年何ヶ月かかけた、ということから言えば、「知っている」という度合いがどういう「知っている」かということは分かりませんけれども、森林環境税というものがあるということを半数以上の方がご存じないという意味であれば、やはり少し認知度として低すぎるなということは思います。
ただ、その他の問いかけに対するお答えが、かなりプラスのことがありますので…、評価としてのプラスということではなく、認知だとか期待だとかいうことでのプラスの面をうかがわせるものがありますので、全体的にそれほど関心が薄いかというと、決して僕はそうではないんじゃないかと(思います)。
これは初年度ですから、今後はやはり2年度、特に2年度、3年度、今年度から来年度にかけて、何をどう見せていくかということが一番大切なことだとは思いますけれども、その努力でその部分はもっと膨らませていけるのではないかと期待をしています。
(須賀:高知新聞社記者)
なお、周知の仕方といいますか、アピールの仕方、それについては「工夫の要あり」と?
(知事)
それは「要あり」でしょうね。
「あり」でしょうけれども、なかなか県庁だけではできないかもしれないので、また力を貸していただければ、うまいかたちで…。単に宣伝ということではなくて、いろいろな批判だとか、多角的なものの見方の中で、そういうことに力を貸していただければな、と思います。
市町村合併(3)
(篠塚:朝日新聞社記者)
市町村合併に話を戻すんですが。
先ほどのお話ですと、財政状況を中心とする情報が十分に行き届いていないということ、それが全般的な状況に…しているんじゃないかというお話だったと思うのですけれども。
では、なぜそういう状況が生まれてしまったのか。それはその行政の努力という問題だけなんでしょうか。そのあたりを知事はどうお考えですか。
(知事)
行政の努力というと、市町村長は大変な努力をされているわけで、例えば、直近に動きのあったところであれば、野市(町)でも42カ所で(住民説明会が)開かれたと。だけど560人しか集まらなかった。これをただ単に町の努力不足だとはとても言えないだろうと思います。
そういうような、これまでやるべきと考えられたご努力はほぼし尽くされていると思います。
もう少し、もし周知徹底ということであれば、本当は別の角度から…、例えば、先ほども少し三位一体のアピールで言いましたけれども、この問題でも、地域の女性の団体だとか老人クラブだとか、そういう横の広がりを持っている行政の…、地区別という行政的な区割りでの説明会ではなくて、横のつながりを持ち、口コミを持っておられるような団体に周知徹底を強く働きかけていく、というような工夫は必要だと思います。
どうして(そういう状況が生まれてしまったのか)、というのは、鶏が先か卵が先かの話で、これだけやはり(財政状況が)厳しくて、「そこが問いかけられてますよ」ということが分かれば、関心を持たれるだろうと。
だけど逆に、それがなかなか…、第一投としての石が投げられ波紋が…ということがないと、目もなかなか向けないと。
それは、やはり高齢化も進んで、おじいちゃんやおばあちゃん方の中には「もういいよ」と。自分たちが残る人生を暮らす中で「そういろいろなごたごたを無理してやらなくても、少々苦しくなってもいいよ」というふうに思われているような例もあろうと思いますし、それから、「いかに苦しいといっても、そりゃあ何もかもできなくなるわけじゃないだろう」という…ぐらいと言ってはこれも失礼ですが、そういう程度の問題にとらえてらっしゃる方も居ると思います。
そういう方々にもう一度なんとかこう伝えていくということが、「ことここに至ったら」というのはまさにそういう意味ですし、今回ああいう形で、「アクセルを踏む」というような表現で、新聞やTVメディアにも取り上げていただくような形の発言をしましたのも、まさにそれをきっかけに何か関心を持っていただければ、という思いがあるんです。
それが「何を知事が今さらこんなことを言って」という批判であっても何でもいいので、要は、そういう批判だとか「おかしいんじゃないか」ということから、「なぜ」という次の疑問に、それぞれの、そういう思いを何か感じられた方が、その思いにそれを転じていただければと思います。
(篠塚:朝日新聞社記者)
中央に対しては三位一体改革に対して批判をし、しかし、地方に対しては、逆にそれを代弁して「これだけ厳しくなります」と言わなければいけない立場におられると思いますけれども、その心境というのはいかがですか。
(知事)
それはまあ、すべての、冒頭に言ったハムレットや何かと同じ延長線上ですので、そこにはそんな矛盾だとか苦しさということは感じません。
参議院選挙への対応
(小川:毎日新聞社記者)
参院選の対応でちょっとお聞きしたいのですが、前回の知事会見の時に、いわゆる中立であるという話をされたのですが、また一方で、党の方々からしたら、知事のなんらかの応援なりというものをいただきたいという方がいると思うのです。
このあと、集会なり大会が数多く入ってきますが、その中で、例えばお祝いの電報であるとか、メッセージであるとか、直接来てもらいたいというような要望を持ってらっしゃる方もいると思うんですが、知事が考えてらっしゃる「中立」というのは、それに対して一切拒否をされることなのか、もしくは、極端な話、「来るものは拒まず」というか、頼まれれば出て行く、というスタンスの「中立」なのか、それをちょっとお伺いします。
(知事)
拒否はしないが、強く遠慮したいと思います。
(小川:毎日新聞社記者)
だから、自分が出て行くことは無理であっても、例えばなんらかのメッセージなりというのは?
(知事)
それも、強く遠慮したいと思います。強く遠慮しているということをぜひ伝えてほしいなと思います。
(小川:毎日新聞社記者)
公務に専念されるという…。
(知事)
そうです。
(松浦:朝日新聞社記者)
その件で伺います。
昔といいますか、衆院選の前だったか党議選の前だったかに、かつての改革派の知事の皆さんとの間でも、議員に立候補する方との地方の知事連盟のようなもので支援をしたいというようなお話もありました。その辺との思いの変化というのは…?
(知事)
あの発言は、自分の思いとしては今もありますけれども、それもやはり、知事会の中でのさっきの意見と同じように、やはり相当温度差があります。
私は、政治家としての活動というものはもっとあっていいとは思うのですけれども、そのことに関しては、「あまりそこまで、政治に踏み込んで色をつけたり、国との対立関係をそういうかたちでつくるべきではないんじゃないか」という声が、その改革派というか同じテーブルにつく人たちの中にもありますので、そのことはそこで言いっぱなしで終わっています。
出納長人事
(篠塚:朝日新聞社記者)
出納長人事はどうでしょうか?
(知事)
出納長人事は粛々とやっております。
(篠塚:朝日新聞社記者)
1ヶ月前から前進は?
(知事)
前進がないわけではございません。
全くないというと、何をしているのだということになりますので、そういう意味での前進がないわけではございませんが、まだまだ「粛々」というところです。
(篠塚:朝日新聞社記者)
7月議会に…?
(知事)
できれば、7月議会前に臨時会を開いていただいて、諮ることができれば、とは思っていますけれども、まだ、そういう臨時会を開くという決定をしたわけではないですし、そこに至るお人が決定をしているわけでもありませんので、その日程も含めてこれからです。
(岡村:NHK記者)
それではこれで終了します。どうもありがとうございました。
(知事)
ありがとうございました。