木質バイオマスサミットinいわて−みどりのエネルギーが日本を変える−

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

木質バイオマスサミットinいわて−みどりのエネルギーが日本を変える−

平成16年1月20日(火曜日)岩手県盛岡市 盛岡グランドホテル

(パネラー)
 三村申吾(青森県知事)  
 寺田典城(秋田県知事)
 木村良樹(和歌山県知事)
 増田寛也(岩手県知事)
 カール・オルフ・ベングドソン(スウェーデン ヴェクショー市長)
 橋本大二郎(高知県知事)

(コーディネーター)
 熊崎 實(岐阜県立森林文化アカデミー学長)

 

〈第1部〉 現状認識・緑を守る取り組みと緑のエネルギーの利用促進に向けた考え方

〈第2部〉 将来ビジョン・みどりのエネルギーが日本を変える




〈第1部〉 現状認識・緑を守る取り組みと緑のエネルギーの利用促進に向けた考え方

熊崎 
 コーディネーターを仰せつかりました熊崎です。5人の知事さん、みな論客で、こういう方々をコーディネーターするのは、実は本当に荷が重いのです。だけど論客だから、お互いに回ってくれるのではないかと、僕は楽観しているので、よろしくお願いします。

 先ほど増田知事が言われましたように、今回こういったサミットをやって、どのぐらい盛り上がるのか、心配だったのですが、これだけたくさんの人が見えて、僕は感無量です。

 私どもが木質バイオマスのエネルギー利用を言い始めたのは、10年ぐらい前です。そのころ僕は、「お前、少し頭がおかしいんじゃないか」と言われた時期があったのですね。そして、6年前に木質バイオマス利用研究会を立ち上げました。それで昨年、バイオマス利用の事業化のための『木質エネルギー』という機関誌を刊行するところまでこぎ着けたのです。年が明けて、今回こういったサミットを岩手県のイニシアティブで決まって、これだけの皆さんがお集まりになったことは、本当にすごいと思います。

 ただ、私がいつも残念に思っていることですが、今から40年か50年前は、日本は森林のバイオマスをエネルギーに利用していた。そういう面では、僕は最右翼の一番すごい国だったのではないかと思うのですね。1年間に木炭を 200万トン生産したのです。そのころはエネルギー用に、日本の買えるところの森林から、1千万立方、2千万立方と、大変な量の木材が切り出されて利用されていたわけです。

 ところが今どうなっているのか。先進国の中では、木材のエネルギー利用がいちばん遅れた国になったわけです。僕は今回、FAOの統計を持ってまいりましたが、ここには、木材をエネルギーとして利用した各国の2100年の量が出ています。それを見ますと、日本は13万立方です。それで、スウェーデンは日本と森林面積がほぼ同じなのです。そのスウェーデンが590万立方なのです。日本が13万立方でスウェーデンが590万立方なのですね。

 それでドイツは、スウェーデンや日本に比べて、森林面積は半分です。その半分のドイツが、約 300万立方の木材をエネルギーとして利用しているわけです。それに比べたら、本当に日本は、先進国の中でも、最も木材をエネルギーとして利用しない国になった。これだけ化石燃料もなく、大部分を海外からエネルギー源を輸入している日本が、なぜ自分のところの森林をこんなに使わないのか、非常に不思議なのですね。

 もうひとつ言いますと、イギリスは、森林面積からいったら日本の10分の1ぐらいしかありません。そのイギリスが、エネルギーとして結構たくさん利用しているのです。それで2年前から、できるだけ薪やペレットを使いましょう、という国家的なプロジェクトを始めたのです。ロンパイプロジェクトといいますが、なぜそういうことを始めたのか。

 イギリスの森林は、針葉樹を植えた人工林もあります。だけども古い森林はだいたい広葉樹林なのです。日本の里山と同じような山がずっと広がっているわけです。それでイギリスでも、かつてはそこから燃料を取ったり、いろいろ利用していたのですが、今はほとんど利用しなくなったのです。そこでイギリス政府が、こういった里山は、利用されてこそ健全な状態が維持できる、と言い始めたのです。

 だから、できるだけそこから薪を取りましょうと。それでみんなで薪ストーブやペレットを入れて、もう一回、森林を活性化させて、地域に雇用の場を作っていく、という考え方なのですね。いま日本で薪を使うと言ったら、そんな古いこと、という意見があるかもしれませんね。ただし、このプロジェクトには、薪を使うわけですが、条件が3つあります。

 第1の条件は、エネルギーとして使う木材は、森林から持続可能なかたちで取り出されているということ。2番目は、生の木を燃やすのは、ダイオキシンをはじめいろいろな物質が出てくるので、山から切ってきた木は、クリーンで効率よく燃やす、ということですね。それで、今の新しいストーブの技術や燃焼装置は、木材をほとんど完全燃焼できるのです。だから一酸化炭素も煙やすすも出ない。そういう利用が2番目の条件です。

 3番目の条件は地産地消ですね。その地域で木を切って、エネルギーを作ったら、外に売るのではなく、その地域の中で使う。そういうふうに利用してこそ、再生可能エネルギー源としての木材が本当に循環型の社会の形成に役立つのだ、という考え方があるわけです。だから、そういうふうに木質燃料を利用することに対して、一生懸命助成していこうということなのですね。

 イギリスのように日本の10分の1しか森林がない国が、そこまで一生懸命やろうとしているのに比べたら、日本はずいぶん遅れている。今までたくさんの木材をエネルギーに利用してきた日本人が、この30年か40年のあいだに逆の極端に走ってしまったわけです。

 それで今回、岩手県でこういうサミットが開かれたのは、非常に象徴的なことではないかと思うのですね。日本の木炭 200万トンといったころ、岩手県は木炭王国でした。その木炭王国からこのサミットが始まることは、大変に意味があることだと思います。これを契機に、もう一回、木質燃料の復権が始まるのではないかという気がしているわけです。

 僕のイントロはこのぐらいで、各知事さんからお話いただきますが、最初の紹介にありましたように、はじめは現状ということで、今日お集まりになった知事さん方、やはりたくさんの森林を持っていて、今、森林、林業が大変な状況にあり、それぞれ大変ご苦労なさっていると思います。そういったことを含めて、お話を願いたいと思います。

 最初に岩手県の増田さんから、今回のサミットの仕掛人でもあり、これからこのサミットがどういう性格になるかというのも、それにかかっていると思いますので、お話願いたいと思います。よろしくお願いします。
 

増田岩手県知事
 地元の知事ということで、現状認識など、簡単にお話を申し上げたいと思います。
 岩手県は、県土が四国の4県とほぼ同じ面積がございまして、北海道に次ぐ、面積の広い県でございます。その中の約8割、正確には77%でございますが、そのぐらいが森林であります。当然のことながら、北海道に次ぐ森林県であるといえると思います。

 これを林業という産業の観点から見ますと、恐らく、おいでの各県が同じような状況だ思いますが、例えば素材生産、丸太の生産動向が、昭和55年をピークにして、生産量が減り、平成14年は昭和55年の約半分まで減少してきている状況でございます。

 そもそも、木材の需要量が最近ずっと減ってきております。ちょうどこちらもパラレルでございますが、昭和55年と平成14年を比較しますと、木材の需要量が約半分、5まで減ってきております。最近の経済情勢等を反映していると思いますが、新設の住宅着工戸数がずっと減ってきておりますし、新しい非木質系の材が大変に普及をしてきていることもあって、需要そのものが半分まで減ってきている状況でございます。

 当然、山を維持していくときに重要な指標が間伐の状況でございますが、いま単年度で、岩手県の場合には県土面積が広いこともございますので、平成14年度の実施面積が約1万 5,000ヘクタールです。ただ、これも県内全体で、われわれが計算して出しております間伐必要面積に比べて約半分程度、民有林での16から45年生の人工林面積で、間伐必要面積というのを割り出していますが、それの半分ぐらいにしか手が及んでいないということがあります。

 ご承知のとおり、価格がこれだけ落ちていますから、山の中から搬出する経費などが賄えないということなどあります。林野庁でも、この間伐に対して特別の手当てをしていますし、県は県単で、この部分について最近は特に手厚くしてございますが、いま大変に厳しい状況になっているのが、全体のシチュエーションでございます。

 そういう中で、木材の需要も大変に落ち込んでいますので、それをなんとか高めていくということ。これは官民あげての取り組みが必要になってまいりますが、われわれ公共サイドでも、公共施設での利用を、例えば岩手は27も県立病院がありまして、毎年必ずどこかの県立病院は建て替えをしております。

 そうした県立病院での利用を増やしたり、それから公共事業、土留め工とかスノーポールなどの利用の用途も、いま新しい分野をできるだけ多くつくろうと思い、開拓をしております。こういった公共事業での利用を新たに増やしていくこともやっております。

 また市町村にも努力をいただいて、例えば盛岡の近くに紫波町がありますが、そちらの小学校は完全に木造の校舎で、去年の4月にオープンいたしました。子供の教育の面からも、できるだけ温かみのある材を使うという取り組みも行われております。

 しかし、そうした中で、やはりこれから林業、山に活気をもたらすという意味合いでも、もっとこの間伐材を中心とした利用の拡大を図っていくうえで、木質のバイオマスエネルギーの利用の拡大を一挙に図っていけないか、ということがございます。

 一方で、環境問題のアプローチということで、できるだけ、地球環境に負荷のかからないエネルギーを新たに解決していくべきだと。たまたま岩手県は水力の発電や日本で最初の地熱発電所がございまして、いま県内で使用されている電力のかなりの割合が、そうした環境に負荷のほとんどかからないようなエネルギーで賄われているという事情もございます。さらにそれを進めて、木質のバイオマスエネルギーの利用をひとつの切り口にして、環境関係からのアプローチも強めていきたいという狙いもございます。

 そこで、やはりこのことについては、具体的な成功モデルを作っていきたいということがございまして、昭和49年がオイルショックの時期だったと思いますが、それの経験をした時期に、わが国でも、ペレット状にチップを固めて、ペレットストーブの開発が行われたことがございました。このペレットストーブをもう一度エネルギーの主要なものとして、新しいペレットストーブを開発しようではないかと。

 それは、先ほど言いましたように、森林の保全ですとか林業の活性化ということのみならず、環境問題への寄与、あとたまたま岩手県は地場産業として南部鉄器がございますので、そうした南部鉄器など県産製品の利用による地場産業の振興、それから最近の雇用創出といった観点から、これをまた新しく成功のビジネスモデルとして製品化できないかということで、ペレットストーブの開発に取りかかったところでございます。

 3年ほど前から、北欧のペレットストーブなどを取り寄せて、性能、機能、それからデザインなども十分に研究したうえで、岩手型のものとして開発をしたのが、このステージの、皆様から見て左側にある2種類のものでございます。そちらのほうについては次の機会に、いろいろな課題がございますので、発言を譲るといたしまして、こういったペレットストーブをエネルギーのひとつの切り口として活用していく。

 今後さらに、ペレットを使ったボイラーとか、それからチップのままでチップボイラーを新たに開発するといったようなことで、いずれにしても、間伐材の利用を飛躍的に拡大をさせていきたい。

 それで、オイルショック以降、少しはやったペレットストーブが、石油価格が下がってすたれてしまったのですが、ずっとペレットを製造し続けていただいております企業が県内にございます。そうした地場の蓄積もございますので、岩手型の木質バイオマスエネルギーの利用拡大を、平成15年度から3年かけて、急速に一般家庭まで広げていきたいと考えております。簡単でございますが、現状と、少し今後の展望まで申し上げました。
 

熊崎 
 ありがとうございました。今ありましたように、間伐材を使うということ。それから環境にやさしい利用をやることで、具体的な成功モデルを岩手県からつくっていこうと、いろいろな取り組みをおやりになっているわけです。その紹介をしていただきました。
 続きまして、青森県の知事さん、お願います。
 

三村青森県知事
 名前に森がついてますから、森林面積が多いと、自分たちでは思っていたのですが、60万ヘクタール、県土の3分の2という状況でございます。秋田県さんと接しているところには白神山地がありまして、素晴らしい杉林とかヒバやアカマツがある。そういう青森県でございます。どこも一緒だと思いますが、本当に木材価格が低迷している中で、林業の生産活動も停滞し、手入れ不足の森林が増加している現状であります。

 特に杉の人工林が全体の6割を占めているのですが、その半数について、16年、35年生のものの手入れが全く遅れていて、また間伐材の有効利用をどうしたらいいのかということも悩みとなっています。それに関連して製材工場も、平成2年に 347工場あったのが14年には 219工場と、減少しています。また平成2年に ・・・あった県内の木材の利用量が、平成14年には半分になり、県内でも非常に落ち込んで、大変な状況でございます。

 それで私ども、林業だけではなくて農業や水産業 、750キロの海岸線があり、非常に海の多い青森でございまして、山との連携が重要になってまいります。今後、安全な農林水産物の基礎ともなるべき山・川・海をつなぐ水循環システムを再生保全していこうということを、政策の中で訴えております。

 きれいな水を供給する豊かな森づくり、青森でございますから、やはり森の再生ということに積極的に取り組もうということで、和歌山知事さんがなさっているようなかたちで、私どもも山林における雇用の拡大ということを、職員を中心に、いろいろなことを工夫しております。

 砂防ダムひとつ造るにしましても、間伐材を木炭にして炭を入れてみるとか、ホタテの産地でございますから、ホタテの貝殻を入れてみたりして、純良な水を出せるようなものを造ろうとか、とにかく自分のところにある資源を使って、食に合わせて山づくり、川づくりを繰り広げようとしております。

 また今日はバイオマス、特に木質バイオマスのサミットでございます。私ども青森県は海の部分も非常に多いわけで、バイオマス資源がございます。間伐材、おがくずとかバークというものもあるわけですが、非常に畜産が盛んな地域ですので、家畜排泄物や稲わら、リンゴは全国一生産しておりますが、リンゴというのは冬場に一生懸命に切るものですから、選定した枝なども木質バイオマスの部分でも使います。いろいろな形のエネルギーの中において、このバイオマスは非常に重要である、という認識になっています。

 ただ本県の場合、面積がある中で、木質バイオマス用の資源を集めて歩くコストであるとか、非常に県内ばらつきがあるということで、木質バイオマスだけでは難しいかな、という思いがございます。私ども今、ここから30分ばかり北に上がる八戸の地域で、環境エネルギー産業の創造特区の認定をいただいてございます。

 その中において、実はコージェネを含めて、いろいろなかたちのバイオマス資源のことをやってみようと、八戸地域集中実証実験で、下水汚泥を使ってのバイオマスとか、六ヶ所地域では間伐材であるとか、津軽からリンゴのジュースの絞りかすを持って行く、稲わらを持っていく、家畜の糞尿等を使うとか。

 あと横浜というところがありますが、ナタネの作付け面積が日本で一番大きいところですが、そこでもナタネの絞りかすでのバイオマスとか、家畜、稲、畜産は下北半島が盛んなものですから、そこでのバイオマスを使っての横浜地域新電力供給事業とか、環境エネルギー特区というものを使って、思い切って、われわれの地域にあるバイオマス資源を使ってと、今日は木質のサミットなので、申し訳ないのですが、どうしても畜産の部分であるとか、その他の稲わら、ナタネとか、そんなものをさまざま取り混ぜたバイオマスの実証実験に一生懸命、努めている現状ございます。

 それで私ども青森県でも、千葉がバイオマス立県という宣言をしたのですが、そこまではなかなか、現状ではもっていけないのですが、今後、自然エネルギーの利用という中でのバイオマスの重要性、秋田さんと岩手さん共有でございますが、木質バイオマスは3県合同の事業というものを進めているものですから、ノウハウとか技術を交換しながら、より低コストで、より地域にとってプラスになる方向性を見いだしていきたいという思いでいま続けております。
 

熊崎 
 私どもも、青森おやりになろうとしております産業環境エネルギーですね、環境創造特区というのが、僕は非常に面白いプロジェクトになるのではないかと思っています。ぜひ頑張っていただきたいと思います。つぎ秋田県のほう、よろしいですか。
 

寺田秋田県知事
 緑と水とかいう木材のことの雑誌を読んでいたら、イースター島の話が出ていました。あそこは、前は森林が豊かで、地味も肥えていて、野性動物も植物も育ったらしいのですが、住んでいる人たちが、何もすることがないから、木を切ってコロにして、石像建てばかりやっていた。

 モアイという石像ですか、そうしたら森林が全部なくなって、植物は育たない、動物は生きていけない、それから川には魚がいない、ということがあったそうです。見つかったときは、いちばん貧乏な暮らし方をしていたと、人まで食べていたとか……、そのへんはよく分かりませんが。世界でそういう例はたくさんあると思うのですね。

 岩手県も青森県もそうですが、秋田県は森林県です。全国的には8番目、81万ヘクタール、71%あります。昔は山を持っている方は、お金持ちの代名詞だったのですが、今は山を持っているのはお金のない人の代名詞みたいですね。行政で強く保護していかなければ森林は育ちません。

 そういうかたちで、県は間伐から含めて、水と緑の条例ということで、50年かけて、故郷の原風景と、日本で一番生態系に合った水と緑の県にしようということ。秋田県は特に政策的に、人工杉を全国で一番植えました。37万ヘクタールあります。木は成長し、1年間に 380万立方米も増えていきます。そういうことで蓄積はありますが、これをどのように利用するかということでございます。

 簡単にいうと、バイオマスの中で、いま80から90万立方米のバイオマスが出ますが、それで活用しているのは約40万ぐらいなのですね。ということは、あとの50万というので、特に残っているのは間伐ですね。これは全然使われていません。あとは木の端だとかつぎ皮とか、そういうのは産業廃棄物になりますから、日本で初めての発電利用だとか、約40万ぐらいはバイオマスに活用させていただいているような状況にはなっています。

 ですから、これから、法制度も含めて、経済優先の社会の中でどのように、バイオマスというかエネルギーに活用していくかというのは、大きな課題であろうかと思います。京都議定書の問題もありますし、それこそ薪ストーブ、それから炭を使った環境も含めて、すごく単純なことですが、当たり前のことがいま非常に難しい時代になってきていますから、そういうことも含めて、力を入れてまいりたいと思っています。
 

熊崎
 ありがとうございました。次は和歌山県の知事さん、よろしいですか。
 

木村和歌山県知事
 皆さんこんにちは。今日は来てみたら、こんなに大勢の人が来ていて、大々的な大会だと知らないで来て、びっくりしています。そうしたらなんと、和歌山県内の清水町という山の村の議員さんも今日参加しているのです。やっぱり、森林を大事にするということが、全国的な広がりをもつようになったなと、大きな感慨を持ったということ。

 それから、先ほど司会の方からお話があったように、昔は確かに、お婆さんは川へ洗濯に、お爺さんは山にしば刈りに、ということをやったわけですね。私たちも昔はよく薪をたいていましたが、そういう意味では、日本の国は経済効率性ばかり言い出して、いつの間にか木を使わない、変な国になってしまったということを、改めて感じのです。 

 和歌山県も、合わせたわけではないのだけれども、森林面積は岩手県と同じ77%なのです。そのうちの95%が民有林で、昔は紀州の山持ちといえば金持ちの代名詞みたいなものだったのですが、今や、80年ぐらいたった木でないとなかなか売れないということで、非常に山が荒れている。それから、ちょうど今、構造改革とか何かで、民間会社がどんどんリストラをして、都市には中山間で働きたい人がいる。

 この2つを合わせたら、和歌山県でピッタリくるような仕事ができるのではないか、と思いついたのが、緑の雇用事業です。都市の人を山に来てもらって山仕事をしてもらう。それは、はっきり言ったら、経済的にはなかなかペイしないので、税金を突っ込んで、しかし大義名分がいるので、CO2の吸収に大きな役割を果たすのだ、ということでやってきたのです。

 これが非常に反響があり、いま和歌山県内で 300人近い人たちが、家族を連れて都会から来て、山仕事に従事しています。だけど人を呼び込んだものの、後々までずっと税金で面倒見続けるわけにもいかないし、責任があるなということで、今日は林野庁から部長さんが来られていますが、林野庁とタイアップして、これをなんとか国策にできないかと。

 今までは田舎から都市へ人を送り出すばかりが日本の国で、それが地方の疲弊を招いてきている。こういうデフレ型の、落ち着いた、増田知事の言い方で言えば、スローライフが見直されるような時代に、何か新しいライフスタイルを提起できないかということで進めてきたら、林野庁も一生懸命になってくれました。はじめは補正予算で95億円、今年は当初予算で70億円ついています。

 昨日の総理大臣の施政方針演述でも、イラクのことばかり言われているけれども、緑の雇用というのが入るようになってきた。これも、やはり世の中がそういうことに注目するようになってきたということだろうと思うのです。

 そういうことで、僕は緑の雇用を進めているのですが、やはり問題は、いつまでも全て税金で賄っていくようなシステムは、やはり健全ではないと。これは完全に自立することはできないと思うのです。例えば和歌山県では、森林面積は77%なのに、第一次産業のGTPというのですか、県内の生産に占める割合はわずか 1.3%なのです。第一次産業というのは農業も入っていますからね。

 だから、・・は大きいけれども生み出すものは非常に少ないという状況で、これを完全に自立することは非常に難しいので、環境問題とかいろいろなほかの要素を入れながら、できるだけ自立し、しかも国の成り立ちに大きなインパクトを与えるような仕組み、ということで考えているのです。

 それで、始めてからいろいろなことに広がっていって、今では、例えば労働組合とか大企業に和歌山県で山を持ってもらって、そこに組合員の人が週末などに来て手入れをして、あいだは森林組合が手入れをする「企業の森」という事業とか、それから都市の人たちが、自分たちの孫などのために、何か後に残ることをしたいという人が多いので、「緑の孫基金」というのをつくって、山にその人たちの名前も刻んで木を植えていくというような事業など、どんどん広がっていっているのです。

 それで、今日の大事なテーマであるバイオマスも、需要をつくっていくという意味で非常に大事なのですね。電気をつくっても高くなるから、本当にペイするところまでいくのは難しいけれども、いまテストプラントをつくって、進めるようにしているわけです。

 僕はただ単にバイオマスでとか緑であるということだけではなくて、やはり日本人の生き方というもので、木なんか使わなくなったということ。エネルギーでもなんでも、金で計算していくと、木を使うのはあまり効率がよくないのですね。だけど、そうではない、スローライフ的発想が、ある程度出てきた。

 日本の国全体がスローになってしまったら、1億 2,800万人の人がおまんまの食い上げになるので、やはり僕はスローの人とファーストライフの人と、どっちもいると思うのだけれども、だけど、スローライフという部分も大きくなってきて、まあこういうような森林というものを大事にしていく兆しが出てきたことは、非常にうれしいと思っています。

 そこで、最近もっとうれしく思ったのは、僕は、中国というのはこれから日本の国のライバルで、大変だなと思っていたのだけれども、ここにきて、何か中国が、青森とか秋田の知事さんが一生懸命やっておられるみたいだけれども、日本の材木を買ってくれるというのですね。かなり金持ちになってきているのですね。マンションの内装に上等の材木を使うのがはやりになってきている。

 日本人の人口の10倍いるから、金持ちの人が10分の1でも、日本と同じぐらい金持ちがいるということなので、今の状況ではなかなか難しいかもしれないけれども、思い切りやっていったらいいと思って、すぐにうちの県の職員に、青森とか秋田と一緒になってやろうといって調べてみたら、和歌山のスギは宮崎のスギの値段の 1.6倍で、なかなか、うまいこといきません。

 ただ、うまいこといくかいかないかということではなくて、中国が材木の市場になる大きな可能性が出てきたということが、非常に大きいと思うのです。
 

熊崎
 ありがとうございました。それでは高知県の知事さん、お願いします。
 

橋本高知県知事
 皆さんこんにちは。ペレットストーブは非常に熱効率がよくて、暑くてたまりませんので、背広を脱ぎました。と言おうと思って上を見たら、照明が暑くて、照明のせいなのか、ペレットストーブのおかげなのか分かりませんが、とにかく、とても暖かいお部屋で、ペレットストーブの効果も、十分きいているのではないかと思います。

 私からは、昨年の4月から、高知県で初めて導入をしました森林環境税という、高知県独自の税の制度について、手短にお話をしたいと思います。どうしてこの森林環境税を考えたかといいますと、先ほどから、各県の森林の面積、比率のお話が出ていますが、高知県は県の面積の84%が森林で、比率の面では全国で一番森林の比率の高い県です。

 しかし、状況はほかの県と変わらず、木材の価格が低迷していますから、なかなか手入れが行き届かない。このために、森林が果たしています降った雨の水を山に貯えて、ジワジワと川に流していくことによって下流の洪水を防ぐとか、また下流の都市においしい水を供給していく機能や、地球の温暖化の原因になっている炭酸ガスを吸い込んで酸素を出していくというような機能、こういう公益的な役割がどんどん衰えてきています。

 このことは、高知県だけではなくて、日本全国共通の問題ですが、これに県が持っている財源を何かやり繰りして手当てをしても、日ごろ、森林のことにあまり関心を持たない人は、山の仕事もだんだん少なくなったから、県が山の人のために、何か新しい工業投資でも考えたのではないかと、それぐらいにしか見てくれないと思います。高知県内であれば、都市部に住んでいる人も、みな広く薄く負担をしてもらうと。そのことをきっかけに森林の環境のことを考えてもらいたい、という思いで始めました。

 ですから、この税は一世帯当たり1年間に 500円、県民税に上乗せをするというものです。少し難しい言い方をすれば、いわゆる法定外の普通税、目的税に当たるものではありません。しかし 500円上乗せをした分を全部集めて、県内全体では1億 4,000万円余りになりますが、この想定額を会計上は別にして、きちんと積み立てて事業をしていく仕組みにしていますので、目的税と同じような効果を発揮するようにしています。

 この税を使って、まずは都市部の人にも、いま森林が抱えている問題を考えてもらう、意識を持ってもらうことが、ペレットストーブを買ってもらうにしろ、またバイオマスのことについて協力をしてもらうにしろ、第一歩だと思いますので、下流の人にもどんどん山に行って、山の現状を見てもらう。良さ、悪さを知ってもらう活動に使っています。

 高知県では11月11日を「山の日」に制定をして、去年はおよそ2万 5.000人の人が、この山の日の行事に参加してくれました。今後、高知は四国という島の中にございますので、愛媛、香川、徳島というほかの3つの県にも、この森林環境税の導入をぜひ進めてほしいということを働きかけ、山の日も四国4県が一緒に、「四国山の日」というかたちで取り組みをしていくことができれば、森林のことを考えることを、全国に向けて情報発信していけるのではないのかなと、次はそんな取り組みに挑戦してみたいと思っています。
 

熊崎
 どうもありがとうございました。各県の知事さんから今の取り組みをお話していただきました。知事さん方にゴマするわけではありませんが、やはり、これから日本を変えていくのは地方からではないかと思うのですね。

 今お話していただいたように、岩手県の場合は木質バイオマスを軸にして地域おこしをやっていく。青森県の場合は、山と川と海をつなぐ水資源循環システムを再生し保全していく。秋田の場合は水と緑の保全条例、緑の条例でですね、故郷原風景を再生していく。

 それから和歌山県の場合は、緑の雇用事業、そして今の高知県の場合は森林環境税と、こういう新しいアイディアのもとに新しい政策を打ち出していく力というのは、やはりいま地方でなかなか、日本の中央の場合には、大きくなりすぎて動けなくなっている。ここから、私は今の日本の閉塞状態を打ち破っていく何かエネルギーが出てくるのではないかと、非常に期待しているわけであります。

 知事さん方のお話は、ちょっとお休みにしまして、スウェーデンからいらしているので、少しコメントをいただきたいと思います。スウェーデンという国は、ヨーロッパの中でも、木質バイオマスのエネルギー利用では本当の先進国なのですね。同じヨーロッパでも、すごく進んだ国と遅れた国との開きが非常に大きいわけです。例えばペレットひとつ見ましても、スウェーデンは一番の大もとで、そこをもとにして、だんだん広がっていっているわけです。まだフランスやイギリス辺りまでは、なかなか浸透していない段階です。

 そういうところで聞きしたかったのは、先ほどビデオで見ていただきましたように、すごく進んでいるわけですが、なぜスウェーデンが木質バイオマスのエネルギー利用で世界のリーダーになり得たのか。それについて、聞かせていただきたいと思います。
 

カール・オルフ・ベングドソン市長
 まず、ここ岩手県盛岡市に誘われたことに非常に感謝をしていますので、それを皆さんに伝えたいと思います。そして各県知事の話を伺って、非常に興味深く、スウェーデンの状況ととても似ている点もありました。

 質問に対する答えですが、2つの重要なことがあると思います。1つは、スウェーデン国民の森とか環境など、そういった問題に対する非常に高い関心、それからスウェーデンでの幾つかの重要な企業の役割も重要だと思います。

 ヴェクショー市では、すでに1970年代に環境の取り組みを始めて、それをだんだんと拡大していきました。その環境政策の柱の1つが森のことです。もう1つの柱は、エネルギーの節約です。そこで、長期的な目標と短期的な目標の両方を立てました。その中で中心になったのは、ベクショー市を化石燃料を使わない自治体とする目標を立てたことです。

 そして、市議会の満場一致で、コンセンサスで決定したのですが、自治体の化石燃料の使用を2010年までに、20年前に比べて約50%削減することを決めました。

 そこでまず、地域暖房に必要な熱電供給施設を、幾つかの大規模なものを造ったのです。そういう大規模な施設では、暖房熱と電気の両方を供給できるのですが、そのほかに幾つかの小さい規模の施設を造って、そこで同じく木質バイオマスを使って熱供給をしています。小さい施設では発電は少し無理ですが。

 それから、一戸建住宅で導入できる木質バイオペレットのストーブの導入、それらは少し離れた農場などでの利用になっています。スウェーデンは人口密度が、日本と比べるとかなり低いのです。日本より大きい面積で、 900万人ぐらいしか住んでいません。1つの重要なことは、政治家が長期的な方向付けをすることです。

 そして、そのエネルギーの転換プロセスを最初から1歩ずつ踏み出すことです。市議会の各政党との間のコンセンサスがあることは望ましいのです。そして、市民と企業、それから周りの地域、ほかの自治体との良い関係も大切です。その方向付けをしてから、一歩ずつ踏み出すことができるのです。ですから、完璧な解決先を見付けるまで待つのではなく、まず決めた方向に向けて一歩進みます。皆さんよく聞いていただきまして、ありがとうございました。
 

熊崎
 ありがとうございました。1つだけ質問があります。スウェーデンがそういう格好で進んだ1つの理由は、国民の環境意識の高さというのがあります。もう1つ、企業の役割ということを言われましたが、その点について、もう少し具体的に教えていただけますか。
 

カール・オルフ・ベングドソン市長 
 まず市民の環境意識は非常に高く、そして環境保護団体がかなり大きくて、私たちは環境保護団体との協力関係があります。企業にとってこの環境問題というのは、2つの意味で重要視しています。1つは新しい商品の新しい市場が生まれてきていることです。また、スウェーデンの全ての企業にとって、環境意識が高い、環境取り組みがよいということを、幅広く見せることが重要なことで、いつもPRをしています。
 

熊崎
 分かりました。環境意識が高いということ、それから企業役割ということからいいましたら、むしろそばに新しい市場を、企業のほうも見つけていくというか、そういうところがスウェーデンで成功した1つの原因だとおっしゃったと思います。

 これからは知事さん方の発言も自由にしますが、僕から1つ、今こういう格好でスウェーデン、ヴェクショー市の取り組みを見られて、こういうエネルギー政策の取り組みが日本でできるのかな、そのあたりがちょっと気になるところですね。

 個々の自治体が中心になってやったわけですが、これはやはり日本では無理だと、皆さん方お考えになっているのか、それとも、ある程度、日本でもできることではないかとお考えになったか、そのあたりの感触を聞かせていただきたいのですが。どなたでも結構です。はいどうぞ。
 

寺田秋田県知事
 私は、長期的な視点に立てば、またそれは実行もしなければならないですが、実現できると思いますよ。秋田県の場合は、どこでもそうですが、産廃税がありますから、木くずだってこれはもちろん産廃税が入っている。そうなってくると発電の利用というのは進んできますしね。

 あとは木くずたきボイラーですか、こういうものでは、全国に 300基あるそうですが、うちは26基ありますから、そういう点では廃材で出ているものは、ほとんどそういうかたちで利用されている。一般の民間に、ペレットだとか炭化して炭にするとか、これは具体的に進めていける仕事であると理解しています。

 ただ、それも大事ですが、緑をいかに保全できるかというのは、環境税、うちらも検討しているのですが、やはり国自体が、地球温暖化も含めて、木材というのは一番リサイクルできる資源ですから、都市部にも負担していただかなければならないというのは、これが原点ではないのかな、それを活用することだと思います。
 

熊崎
 後半のところで、その話をもう一度、出してください。それから増田さんの場合は何回もスウェーデンと行き来して、岩手で定着させようと思っておられると思いますが、その中で、日本とスウェーデンとはやっぱり基本的に違うのか、日本でもできるのか、そのあたりはどうでしょうか。
 

増田岩手県知事 
 ひとつ、スウェーデンと大きく違っているところは、いわゆる化石燃料ですね。木質バイオマスを考えるときには、特に中心が石油だと思いますが、化石燃料との競争、代替性というか、それをどうとらえるかが、大きなポイントになると思います。スウェーデンはじめ北欧、EUの場合には、そこで炭素税というか、環境税の仕組みが国全体として合意が取られて成り立っているうえで、こういう木質バイオマス利用ということが、さまざまなチャンネルで試みられている。

 先ほどの市長さんのお話で、企業の役割が非常に重要だということがありました。わが国の場合、企業というか、それを大きく集めた産業界、経済界と、常にここが論争になって、まだ大きな国民的合意というかたちで、こういう木質バイオマスをはじめ、自然エネルギーの利活用について、さまざまな意見の対立があるということがあります。

 私はこういった問題については、当然、国のリーダーシップも必要だと思いますし、自治体や地域で具体的に行動する、やはり市民の行動が大事だと思います。それと合わせて、企業の役割をさらに前に進めるような国民としての意識、断固として進めるという意識は必要であります。そこがまだ、スウェーデンと同じようなレベルに達しているのはいろいろなところであると思いますが、まだそこで、いま言ったような租税の適用をめぐっては大きな違いがある、ということは指摘しておきたいと思います。
 

熊崎
 スウェーデンのああいったプロジェクトに対して、何か聞きたいことがありましたら、簡単なことならよろしいですけれども、どうぞ聞いてください。よろしいですか。
 ないようでしたら、ここでビデオメッセージがあるのですよね。白井貴子さんと永六輔さんの、また前の三重県知事の北川さんからもきているのですが、この3人の方に、まとめてやっていただけますか。皆さん、見てください。
 

・・・ビデオメッセージ・・・
 

 ビデオメッセージを終わりますが、この中で、「北京の蝶々について増田さんが説明する」と言っていますね。これをちょっと説明してください。
増田岩手県知事

 要は、人口の大変に多い北京で、たった1羽の蝶々が何かを唱えてはばたき始める。それに共鳴する人が1人、2人、4人、8人と出てくれば、それが大きなうねりとなってさらに輪を広げていく。そして地球の裏側のニューヨークに着いたときは、その大きな波がハリケーンのようになって、あっという間に全世界を覆うだろうと、確かこんなことを、北川さんが現役のときに言っていたと思います。複雑系カオス理論とか、大学教授になったとたんに難しいことを言っていましたが、たぶん、こういうことではないかと思います。
 

熊崎
 ありがとうございました。このシンポジウムが北京の蝶になって、大きなうねりをつくっていくことを期待いたします。
 第1部のディスカッションはこれで終わります。14時50分から第2部が始まります。
 

・・・休憩・・・
 

〈第2部〉 将来ビジョン・みどりのエネルギーが日本を変える       
 

司会 
それでは、パネルディスカッションの第2部を始めてまいります。第2部は、「将来ビジョン、緑のエネルギーが日本を変える」と題しまして進めていきたいと思います。熊崎先生、よろしくお願いいたします。
 

熊崎
 では、第2部を始めたいと思います。
 最後の北川さんのメッセージの中で、森林というのは眠った公共材だ、という話がありました。この眠った公共材を上手に活用すれば、地域振興、雇用対策の面で、非常に大きな道が開けてくるのではないか、ということだったわけですね。それで、行政も民間も、

 国に頼ることなしに、自立して立ち上がってこそ地域振興につながるのだ、という気構えを持ってやってほしい。そして、改革の困難の中でいろいろなハレーションが起こるわけです。そのハレーションを解決することによって、多くの北京の蝶がここから生まれてくるだろう、というメッセージがあったわけです。

 それで、今日お話いただいた知事さん方から、各県で非常にユニークな取り組みをやっておられるという紹介があったわけです。このユニークで新しい取り組みであればあるほど、やはりいろいろな困難もあると思うのですね。そこで各知事さん方に、その取り組みの中でどういう困難に直面し、解決するにはどうしていったらいいのか、そういう提案も一緒にお聞きしたいと思います。

 またスウェーデンからのヴェクショーの市長さんには、日本へのアドバイスですね。先ほど申しましたように、スウェーデンというのは世界の先頭を走っている国で、日本は一番しんがりを行っている国なのです。何もかもこれから始めていくことになるわけですが、これからどういうふうにやっていきなさい、といったアドバイスがあれば、市長さんからいただきたいと思います。

 論議の進め方としましては、知事さん方お一人ずつお話をしていただいたあと、自由に討論していただく、としたいと思います。まず、増田知事さんから口火を切っていただけませんか。
 

増田岩手県知事
 先ほど、県の開発したペレットストーブのお話をしたのですが、今このペレットストーブの普及、拡大を急いでやっております。そのことで幾つか申し上げたいと思います。

 県のペレットストーブの利用拡大プロジェクトは3ヵ年の計画になっていまして、今年度が初年です。中型のペレットストーブを、今年100台弱入れてあります。これをさらに拡大していくのですが、中型と小型を取り混ぜて、ペレットストーブ自体は平成18年までに、担当の人がえらい細かく弾き出しているのですが、 2、120台と。

 これは、昨年の4月の統一選挙で知事選挙がありましたときに、例のマニフェストを出したのです。あの中で、こういった木質バイオマスの利用拡大のことをうたってまして、それを県として40の政策に取りまとめたです。その中の1つに木質バイオマス利用の拡大という項目がございます。

 それで、二酸化炭素、C02の削減目標で、この木質バイオマスエネルギーでの転換分として、大体 5,400トンというのをはじき出してあります。CO2全体の2010年までの削減量の1%強でございます。そこをこの木質バイオマスエネルギー転換分で達成させようということになっております。それを具体的に、この3ヵ年の中に落としていくと、ペレットストーブで2,000台強、2,120台という数字になるわけです。

 それに基づいて、早急に普及していきたい。今年度は、小型のほうはまだ試作型ですから普及は無理ですし、中型のものからとなっております。具体的には来年、再来年度で急速に普及させたいと思っております。

 実際にやり始めて、当然のことながら、幾つか問題がございます。ストーブサイドの問題ですね。まず1番は価格です。これは試作費がたいへん高くなっているわけですが、いま量産型に入りましたので、当然下がってきて、さらに普及が進んで生産が増えていけば、それに伴って、1台当たりの価格がずっと低減をするわけであります。

 1台が40万円ぐらいの値段になっていますが、この価格は、これからの販売、流通体制がどうなるかによって大きく変わってくる。そのことが、さらに普及の促進になるということなので、最初の立ち上がりのペレットストーブの普及について、行政支援をするかどうかも含めて、来年度予算の中で検討しているところでございます。

 それから、今度はペレットの安定供給の問題があります。冒頭で申し上げましたが、岩手県にペレットの製造している企業は1社ございまして、そこが、千何百トンと製造をしていたのですが、さらにもうひとつ、今までは県北のほうにありましたが、ペレットの製造の工場を県内に造りまして、2社体制でいま生産を行っています。

 先ほど言いました目標をクリアするためには、この2社で、ペレットの供給は間に合うと、今こういう計算になっております。従来の会社は、県北の葛巻町にある「葛巻林業」というところですが、ここが年間 1,300トンのペレット製造、それにプラスして県南の住田町に、年間 1,000トンのペレット製造工場を造り、合わせて年間に 2,600トン製造できますので、当面の目標はクリアできると。

 このペレットも、できるだけ価格を安くしていくことが必要なのと、こちらは価格の問題と同時に、流通体制をどれだけ確立できるか。ある程度の量を、特に、ご家庭の場合には家の中に確保しておかなければなりませんし、あまり場所を取るようではいけないわけです。できるだけ輸送コストを下げるためには一時にいっぱい運んでいたほうがいいわけで、県内の各地域にストックヤードなどを設けたりして、全域での供給体制の確立が必要になってくると思います。

 いずれにしても、ハード的なものを作っても、あとのそちらのほうが追い付かないことになると大変困るわけですので、流通関係者やストーブを作った企業なども全部入って、流通関係がスムーズにいくような研究会をつくって、いま「木質ペレット流通実務者会議」というのがあるのですが、それを立ち上げ、安定的で低廉なペレットの供給に知恵を絞っているところです。

 いずれにしても、まずペレットを各家庭で使う、あるいは県だけではなくて市町村、それから民間事業者にできるだけ使ってもらうことが必要なので、こういったものを立ち上げるときに、何か成功例として参考になるものがないかなと思って見ていると、ドコモの携帯電話があるわけです。ハードのほうはほとんどただにして、通信料でもうけたわけです。

 ちょっと形が古くなるとゼロ円で、あとは通話料のところで会社の利益を上げる。これも、最初にいいものを作ったら、あとは普及とノウハウをどうするかがいちばん大事なことなので、極端に言えば、そんなようなことをしてでも、ペレットのところで付加価値を付ける。その金を山に戻さなければいけないので、何かそういった、大胆な施策を取っていく必要があるのではないかと考えております。

 それから、いま申し上げましたのはペレットストーブ関係でございますが、あとは現実に、冒頭で申し上げました小学校、木造の校舎を建てたところですが、そこは校舎全体でペレットボイラーを暖房に使っております。ペレットボイラーを設置して、そこで温水にして学校内を循環させて、各教室はパネルヒーターのようなかたちで暖房にしています。特に大きな施設については、このペレットボイラーのようなものを設置して利用していくことも大事だと思います。

 いずれにしても、固めてペレット状にするということよりも、省いて、もっとチップの段階で、チップボイラーで熱効率をもっと上げられないかということで、県内に、ペレットボイラーとかチップボイラーでも稼働しているものがありますが、それをさらに普及させる。技術的な検討を進めて利用効率を上げることが、これから必要になってくるだろうと。これも、県の林業センターなどで開発に取りかかっているところです。

 それから、もうひとつはペレットの質の問題、できるだけバークペレット、樹皮を固めたペレットで、燃焼効率をいいものを、と思って使っております。あとはバークではなくて、芯のところですね。先ほど言いましたチップの場合ですと、わが国では含水率の高いチップになるわけですが、含水率の高いチップを燃料とする国産ボイラーが製造されていなくて、結局、海外から輸入されいていますので、そういったペレットの質、チップの質に応じた適切な器具の開発も必要になってくるだろうと思います。

 とにかく間伐材の利用を拡大して、少しでも山に元気を与えることと同時に、地場の南部鉄器などをうまく活用するという意味での地場産業の振興もありますが、そのほか新技術開発、燃焼器具を新しく開発するということなどによって、全体のレベルを上げていくことも、この事業の目的に入っています。

 関係者も相当多数にわたりますので、林業だけでなくて、工業技術センターなどの技術も十二分に活用して、それから地場に進出している企業の技術も入れて、共同で開発に取り組んでおります。これからも、同様な多方面の関係者の共同チームにより、成果を出すことが求められるだろうと思っております。
 

熊崎
 ありがとうございました。いま出てきた話は、これはやはりトップランナーといいますか、先頭を走っていく人にとっては、どうしても避けられない大きな問題だと思います。ただ、今度の新エネルギーの導入とか、バイオマス日本の関係で、結構大きな国の予算が付いているけれども、その国の予算が、どうも別のところに流れているのですね。

 こういう地道な努力をしているところに本当に流れているのかどうか。やはり僕は、そのあたりをもう一回よく検討してみる必要があると思うのです。これを岩手県が自分のところのあれでおやりになるのは、本当に大変なことだろうだと思います。これはまた、あとで論議することにしまして、青森県のほうから、よろしく。
 特に、先ほど特区の問題は非常に興味があります。ああいう事業をおやりになっていて、いろいろまた問題、考えておられることがありましたら、よろしく。
 

三村青森県知事
 特区という現代的な話の前に、ペレットストーブを触りに行ったのです。というのは、正直な話、つい平成の先ごろまで、わが家は薪ストーブを使っておりましたし、実は今もいろりを使っていまして、煮炊きにはかまどを使っているのです。

 プロパンガスもありますが、そういう家でございますので、ペレットストーブというのはスルメを焼けるのかな、昔、薪ストーブでスルメを焼いたら、いい香りしたな、と匂いまで思い出すような気持ちでいました。本当に、里山とわれわれといいかたちで暮らしてきたのだなと、改めて思い返していました。まだ薪で煮炊きをしているのはうちだけだと思いますが。

 それで近代的な話ということで、実は特区の話でございます。私ども、エネルギーの分野でいろいろなところがありますすが、その中で、青森は自然エネルギーを考えていこうと。風が強いところですから、いま風力の発電所は日本でいちばん数が増えているのですが、バイオマス関連、この分野は絶対重要なことだ。

 なぜかと言えば、農業地帯、畜産地帯でありますから、農林水産業といかに組み合わせていくか、ということがあります。バイオマスの部分では、メタンガスコージェネレーション実証実験というのをやっています。家畜の排泄物と野菜残菜等で、CO2も使いながら、いいかたちで農業にできないかとか。あとバイオマスガス化のメタノールの実証事業。間伐材とか製材した、おがくずとかバークとか稲わら等を使っているのです。

 木質の部分では、いまリンゴ試験場でリンゴの枝を集めて、バイオマスガス化コージェネレーションというかたちができないか、それでエネルギーを冬の農業、施設園芸に使う事業が実際に可能かどうかということを調べています。それと、木質バイオマスのガスタービンを開発していこうと、先ほど話しました八戸地域の工業大学ですが、そこで間伐材、バークとかおがくずを使ったガスタービンができないかと。これも実際にできると非常にいいと。

 あと、木質廃材50%を使った木質とセメントの複合体技術を、林業試験場でやっています。森林資源というのは熱源として、また資材になるし、冬場の農業に使えるとか、いろいろありますが、何よりも、やはりコストの面で合うかどうかということ等が出てきます。

 いわゆる国が補助うんぬんというかたちが、どんどんできない状況が、いま交付税が厳しい状況になってくる中で、それぞれ自前のエネルギーを残してどう生きていくかということの開発をしようとしておりましたら、その開発財源すら、なかなか厳しくなってくることを感じています。

 何よりも、バイオマスに使うための、枝でも何でも集めることの難しさ、そのコストと、そのために動かすトラックのほうがCO2を多く出してしまうのではないかとか、いろいろな心配がありまして、実際には、どういうことができるかと、悩んでいます。少なくとも、いま環境エネルギー特区のほうでやろうと思っているガスタービンシステムということを、なんとかできればと思っています。

 八戸では、市役所とか学校などを結びつけた地域コージェネというものを、風力と光発電とバイオマスとを組み合わせて、それで全体の地域コージェネができないかとか、地域、集落単位の熱供給電力システムというものをつくっていこうということを、特区でやっていますが、やはり開発コストと実際の運用コストの問題が、大いにあります。・・・にしても、補助金があるから買い上げてもらっていけるということがございます。

 ただ、水と食料とエネルギーというものを売って、どう自活できるかというのが、われわれの大きな仕事だと思って、今後も公の面では頑張りますが、私的にはまだ薪を使っているものですから、わが家は自前のエネルギーで頑張ろう、という気持ちでございます。
 

熊崎
 ありがとうございました。秋田県ではバイオマスの発電所が幾つか動いているわけですね。そこでもいろいろ問題が出てきているだろうと思いますが、何かありますか。
 

寺田秋田県知事
 ありますね。発電所というのは組合方式で、日本で初めてだったのですが、 1,500所帯ぐらいで 3,000キロワットですか、電力会社では料金を4円とかいうことで購入してくれないのですね。ですから、流通システムを変えていかなければならないというのは、やはり発電ですね。3ヵ所で動いているのですが、全部、自家工場で使用しているのですが、土日とか工場が休みの場合は、できれば風力発電みたいなに10円とか12円とかで売れればと、これは特別の法制度も必要な時代になってくるのではないかなと思っています。

 ただ、いま新加工で、含水比率の問題が定められておりますから、工場は、秋田杉については乾燥剤を使わなければならないということで、ほとんどそれが、バイオマスエネルギーとして、全体的な、80万円とか90万円、・・の残材、間伐材を除けば、7、8割はバイオマス活用というか、エネルギー活用させていただいています。

 ですから基本的には、ある面では、全国で木くずたきボイラーというのは 300基あるそうですが、うちは26基ですから、進んでいるほうではないのかな、と思っています。ただペレットに関しましては、県はいま何も取り組んでいません。岩手県さんで一生懸命にやってもらって、そのノウハウをあとで安いコストでもらえば、うちはそれでいいのではないかとか、3県共同ですから、ひとつよろしくお願いしたいと思っています。

 それと、木をいかに活用するかという問題です。秋田県はスギが人工林の9割の37万ヘクタールと、全国の民有林としては一番ある県です。スギだけでも1年間に 300万ヘクタール、木が増えていきますので、これをどうやって活用するかというのは、県の大きな課題です。これを県として独自に、「住宅を建てる場合は90本、柱をプレゼントします」とかね。だから秋田県で家を建ててください。柱は提供しますのでね。

 あとは、公共事業は木材をできるだけ優先事項にするとか、それからログハウスではないですが、木を大量に使うことは、板材の厚いのを張れば断熱材などがいらないことですからね、その木の家を50年とか 100年使って、必要なくなったときはたきぎとして使えばいいのですからね。そういう考えでもやろうということで、設計者にそういう話もお願いしています。

 いま集成材とか、樹脂で塗った近代的な合板よりも、天然木を全部使ったほうが、呼吸もしますから、住んでもいいですね。私は木の家に住んでいるのですが、いま私が入っている役所はコンクリートですが、住心地が全然違います。日本の国の人はなぜコンクリートの家を建てるのかなと。木の家を建てて、それをあとでたききぎにしていけばいいのですよね。

 だんだん年を取ってくれば、今まで50坪だった家が20坪もあればいいのだから、半分残して、半分薪ストーブにすれば、そのぐらいの考え方を、日本人がしていかなければならない時代にもきているのではないかなと。

 あとは、秋田県の一番の欠点は、スギだけ植えてしまったということ。ほとんどスギ林みたいな。これは生態系を壊している可能性が強いので、50年間かけて、ブナ林がよければそれに、雑林がよければそれにするということで、これが水と緑の50年間の考え方で、生態系に合った県土にしよう、ということです。

 いずれにしろ、1つだけではものをやっていけない、多方面でやっていこうということで、イースター島で何もやることがないから木を切ってコロにして石像を建てたということですが、そういうことがないように、とにかく50年というと、自分の孫だと理解できると思いますので、孫にでも送ろうと。若い夫婦だったら子供とか、自分もそれを見れることですから、そういうことで環境を守っていこうという考えです。
 

熊崎
 ありがとうございました。いま出てきましたね。やはり日本でいちばん問題になっているのは、せっかくバイオマスで電気をつくっても、なかなか売れないという現状ですね。例えば、いちばん電気を高く買っているのはドイツですが、ドイツでは、小さい規模の発電だったら、1キロワット14円で買うのですね。

 14円で売れたら、ある程度経済的に成り立つという問題があります。北欧の場合ですと、そこの発電所でできた熱が地域暖房に使える、というのがあるのです。日本ではなかなか出口がない。1つの大きな問題は、この出口のことにあるような感じもいたします。

 次は和歌山県の知事さん。先ほど、プラントを計画していると言っておられましたね。計画をおやりになりながら、どこに問題点があるのか、お話していただきます。
 

木村和歌山県知事
 実は、一昨年でしたか、敬愛する増田知事の招きで、このペレットストーブを見て、ヴェクショー市の取り組みについて教えてもらったのです。それで、和歌山はちょっと暑いので、ゴウゴウと燃えているストーブは、なかなか売れそうにもない。だけども、やっぱり今は地方の時代で、いろいろなことを発信していかなければならないので、和歌山県もバイオマスで何かやらなければならないということで、ヴェクショー市を視察に行こうと思ったのです。

 だけども、日程がなかなか合わなくて、その代わりにヘッセルビーという、ヴェクショー市ほどではないけれども、かなりやっているところを見てきて、それで和歌山でもバイオマス発電をやろうと取り組んで、いま進んできています。

 和歌山は今年の6月に、高野山と熊野を参詣する道が世界遺産に、 99.99%登録されることになっているのだけども、そういう歴史と自然にやさしい発電をしているということで、バイオマス発電をやっています。面白いのは、1つはコージェネと言われるのですが、あまり町中でやらないものだから、熱がいらないのですよね。それでいま考えているやり方は、その熱からもう一回発電をすると。まずガスを起こして発電する。それから、そこから出てくる熱をもう一回エネルギー転換して、もう一回発電する新しい方式を取ろうとして、いま進めているのです。

 ただ、秋田の知事さんからも言われたように、電力会社に言っても、ペイしないと。それで、こういうことはまずテストプラントでやるのだけれども、やっても長続きしなければ、お遊びに終わってしまう可能性があるのですよね。やっぱり持続的なシステムにしていくことが非常に大事なので、いま考えているのは、製材所の削りくずは産業廃棄物になるらしいけれども、こういうのを有償で取ってあげるということで、ある程度収入にするとか。

 もう1つは、あとに炭みたいなものが副産物としてできるので、そういうものを観光開発と合わせて売っていくとか。いろいろなことを考えて、なんとか、こういうバイオマスのエネルギーを役に立てていこうとしているのです。正直言って、こういう方策的なことでは抜本的な解決にはつながらないのでね。

 日本人のいけないところは、発電なら発電と1つずつ取り上げてコストの計算をして、それで合うとか合わないとかいう話をする。それで、例えば世界遺産の中で、そういう環境にやさしい発電をしていることは、観光ということでも役に立つわけですよね。そういうトータル的な発想の中で、そこへいろいろな国の支援とかお金を注ぎ込んでいくようなシステム、公共事業でもなんでもそうなのです。

 話が変わって申し訳ないけれども、関西国際空港が和歌山県の近くで、よくに利用しているのですが、このごろ国内線がものすごく減って、調子悪いのです。ところが、そこへ行く橋が、渡るだけで 1,740円かかるのです。それであまり皆使わないけれども、こんなのも、バブルのころにできた発想のままきているから、 1,740でも十分使ってくれるだろうという発想なのだけれども、世の中変わってしまったわけです。変わったときには、変わったシステムに合わせたトータルな社会システムを考えていかなければならない。

 この発電なども、基本的には、環境にやさしいものというのは、化石燃料のものとコスト的にはイコールにはかなかなならないので、トータルで考えて、それでも社会にとって必要なのだという考え方に、日本の国の考え方全体を変えていく必要が、僕はあるだろうと思う。なかなか迂遠なことだけれども、そういうことを実証の中から示していくことが、地方の時代の大事な役割の1つではないかと思っています。
 

寺田秋田県知事
 ・・でやっているバイオマス発電のコストというのはキロワット当たり10円ぐらいです。それで、あと木くずとか、こういうものは集めますが、これは産業廃棄物ですから、キロ立米当たり、 1,500円いただいております。お金をいただいてるから10円でできる。だから、少しの法改正で、電力会社でも買っていただけると思うのですけどね。
 

熊崎
 分かりました。今の話なんか、フロアのほうからも質問があるかと思いますが、時間がないものですから、すみません。
 橋本さんの高知県は、前からバイオマス発電ということでいろいろな取り組みもおやりになり、それから新しいシステムなどもいろいろご検討なさっていると思いますが、そんなことも含めて、知事自身は、高知県の中で、そういった発電のようなものが成り立つのか、どこに問題があるのか、多少、お考えがあったら、そんなことも聞かせていただきたいと思います。
 

橋本高知県知事
 森林のことを全体がそうですが、バイオのことも含めて、先ほどヴェクショーの市長さんも言われたように、地域の合意形成ということがいちばん大切ではないかなと。それによって、地域全体の、また市民、住民の皆さんの、この問題に対する意識を高めていくことは重要ではないかと思っています。それで、森林環境税に最初に取り組んだのも、合意形成とか意識を高めることにつながっていくのではないかと思ったからです。

 合意形成ということでは、2年間かけて、その税をつくる取り組みをしてきました。ですから、本来ならば、 500円とはいえ、新しい税ができて負担が増えるのですから、反対の声が起きてもしかるべきですが、2年間かけたおかげで、議会でも全会一致で、県民のあいだの反対の声もほとんどなく、この税を成立させることができました。次は、この森林環境税というものを使って、バイオマスも含めて、いかに住民の意識を高めていくかということが、課題だと思います。

 バイオマスの研究というのは、わが県も、林野庁の予算、また通産省のころから現在の経済産業省の予算等々を入れ、またNEDOももちろんでございますが、そういうかたちでいろいろな研究、実証実験もしてきました。

 なんといってもコストの問題です。ですから、木村さんの、1つのことだけにこだわらずというお話がありましたように、木村さんが言われたのはもっと広い範囲のことですが、少なくともコージェネは考えていかなければいけないのではないかと。発電だけではなく、特に蒸気を使ったかたちで、効率の悪いものをそのまま進めるのではなくて、ガス化をして効率を高めて、熱と発電の双方でやっていくような実験が必要ではないかと思い、そのような実験にも取り組んでいます。

 それで、その基には何があるかといいますと、蒸気を使ってということでは効率が悪い。効率が悪いと、相当に大きな範囲から材料を集めてこなければならないことになりますが、日本の場合は物流コストが非常にかさみます。ですから、この物流のロジスティックをつくることができません。ついては、なるべく身近なものを集めて、それを発電や熱につなげていくことが必要ではないかと思っています。

 身近ということでは、ペレットストーブも、木村さんが言われたように、和歌山以上に暖かい高知にとっては、利用できる月数にして、岩手県とは2ヵ月から3ヵ月ぐらいの違いが出てくるのではないかなと。そういう意味でも効率性の問題もあります。

 ペレットストーブにも挑戦しておりますが、もっと身近なニーズとして、本県は全国でも有数の施設園芸、つまりビニールハウスを使った農業をしている県でございます。このビニールハウスは、コストの70%は油代に使っている農業なので、この部分をバイオマスでできないか、という実験を始めたいと思っています。

 また、大きな発電ということでは、先ほどからお話が出ていますように、やはり電力会社にもっと高く買ってもらう、それからRPS法という、新エネルギーを一定の量入れないといけないということが、電力会社に義務付けられたわけですが、この比率を上げることを、知事会でやるかどこでやるか分かりませんが、もっと声を上げていくことが必要ではないかと思っています。

 四国電力さんでも、愛媛県の西条にある火力発電所で石炭をたいていますが、石炭の中に、重量比で3%の木質バイオマスを入れるということを実験として始められ、17年から実際に稼働していくかたちになっています。西条から1時間県域というと、高知県も入るわけですが、年間1万 3,000トンの木質バイオマスがそこで処理されることになります。こういうものの比率が上がっていけば、より具体的に、木質バイオマスというか、森林の環境保全にもつながるような動きになるのではないかと思います。
 

熊崎
 ありがとうございました。本当に時間がなくて、最後のところで、市長さんから、これからの日本の木質バイオマスのエネルギー利用を推進するのにどういうことを考えたらいいのか、アドバイスを少しいただきたいと思います。よろしくお願いします。
 

カール・オルフ・ベングドソン市長
 まず、5知事がすでに取っているイニシアティブは非常に貴重なものだと思います。皆さんはそれぞれの地域の状況が違うことから、イニシアティブの内容もそれぞれ違っています。やはり、そういう地域の状況から出発することが大事だと思います。

 それから、国と国のあいだ、地域と地域のあいだのよい関係を持つことが重要です。お互いに学び合えることがたくさんあるのです。スウェーデンの私たちが日本の皆さんにアドバイスをできることが、今とてもうれしいことです。同時に、ほかの分野でも数十年にかけて、日本からたくさん学んできました。このバイオエネルギーの分野でも、これからお互いに学び合えることがたくさんあると思います。日本から出てくる新しい発想とか、たくさんあると思います。 

 少しアドバイスとか自分たちの経験をお話しますと、まず変化のプロセスを始めてください。皆さんがよいかたちでプロセスを始めているようです。そして長期的な目標を立ててください。そして各政党とのあいだでのコンセンサスに努力するよいと思います。ということは、選挙があっても政策はあまり変わらないようにできます。

 まず簡単にできることから始めましょう。そして、割と早いうちに成功が見えるものから始めるとよいです。というのは、成果が見えると、次に進むのがもっと楽になります。もっと複雑なことに取り組むことができるのです。

 そして住民とよい対話を持つことが大事です。また企業とのよい交流も大事で、企業に環境のこと、エネルギーの、ビジネスのこと、市場のこと、全てが関係していることに気づいてもらうとよいです。

 また小さい地域と広い地域、そして国全体、各レベルのよい連帯も大事です。スウェーデンでは、政府が積極的に再生可能エネルギーの推進をしています。EUでも欧州集合体でも、こういうエネルギーを推進しています。

 皆さんの森に関係する議論を聞いていて、とても面白かったです。スウェーデンでは、森というのは産業にとって大切なものです。家具生産もかなり多いのです。パルプ、製紙産業も大きいです。そしてバイオエネルギー分野の産業も、いま拡大しているところです。

 森は早く成長していきます。スウェーデンでは、森から取り出すものは少なすぎるという議論も、ときどきあるほどです。あとは、森は大事な自然としての資源です。それは二酸化炭素を吸収するし、国民の余暇もありますので、国は森林の5%を国立公園とか、自然保護区にすることを目指しています。

 最後に、スウェーデンの森はスウェーデンの国民にとって非常に大切な存在です。それは余暇活動であったりスポーツであり、観光資源でもあります。スウェーデンは、森の可能性をいろいろなかたちで生かしていると言えると思います。それが私のコメントです。
 

熊崎
 ありがとうございました。やはり今の市長さんのお話にあったように、1つは、変化のプロセスをどこからでも始めなさい、ということですね。そして成功の見えるところから始めなさい、ということだろうと思うのです。スウェーデンの場合、いつも重視しているのがコンセンサスということなのです。いろいろな階層のコンセンサス、長期の目標を決めて、それに向かっていくということですね。

 また企業の役割も非常に重要だということと、それから小さな地域、大きな地域、国といったものが一体になって進めていくことが非常に大切だ、ということをお話になったと思います。これから、やはり日本もそういう課題にこれから取り組んでいくことになるだろうと思います。

 今日のシンポジウムを聞いて思ったのは、やはり日本人はこれから少し意識を変えていかなければいけないと思うのですね。三村さんのところは自分で薪を使っているわけだから。だから、日本人も考え方をちょっと変えたら、もっと木質エネルギーは使えると思う。薪にもペレットにもチップにも使えるし、いろいろな格好で、意識の問題があるのと、それから先ほども出てきましたが、日本はやはりエネルギーの出口がふさがれているわけですね。

 だから、例えばRPSがせっかくできても、なかなか電気が高く売れないとか、そういう制度的なものがいっぱいあるものだから、このへんを、これからどういうふうに打開していくかということもあると思うのです。

 それから、これは知事の皆さんが言っていらしたことですが、バイオマスのエネルギー変換というのは、ただそれだけではなくて、もっと広い文脈の中にそれを位置付けていかないと、例えばバイオマスをたくさん集めて発電をやって、化石燃料の発電所と競争するといっても、そんなものはナンセンスに決まっているわけですよ。

 そこで、比較的バイオマスが安く集まるところで、それを上手に利用して、電気も使うけれども、また熱も使う。その熱をまた地域振興に使っていくというような、いろいろと複合的な効果があるので、そういう複合的な効果をねらって、その地域の中にどうはめ込んでいくかということがいちばん大事だろうと思うのですね。

 僕が最後に知事さんにぜひお願いしたのは、やはりバイオマスのエネルギー利用というのは、そういう総合的な性格を持っているのです。それで今、僕は岐阜でやっているのですが、例えば県庁の中だったらいろいろな分野がたくさんあるのですが、エネルギーの総合的な利用というのは、どこから上げようと思っても、なかなか下からは上がりにくいのですね。

 中央官庁のほうもいろいろと部門が分かれているので、なかなか身を結ばないのです。そういうところで全体を統括しているのは知事さんなのですよ。そうすると、やはり知事さんのイニシアで、余分な領域をみんな束ねて、それで、こういったバイオマスエネルギーを推進していくような方策を、これからぜひ取っていただきたい。

 今回の知事さん方のお話で、やはり知事さんの場合は、ただバイオマスというばかりではなくて、非常に、広い目で見ておられますので、そういう中に、このバイオマスのエネルギー利用というものを上手に位置付けていっていただきたいと思います。これで、終わらせていだきたいと思います。
 

司会
 ありがとうございました。スローでいきたいところですが、何しろ分刻みでこの岩手の会場に駆けつけてくださいました知事さんもいらっしゃいます。どうぞご了承いただきたいと思います。

 今日は各県の知事様、それからヴェクショー市長さんから、たくさんの発言をいただきました。このフォーラムでの勢いを残しまして、今後、この貴重なご意見を木質バイオマス利用に結びつけていくとともに、社会にその意味を広くアピールしていくための宣言を行っていきます。
 主催者の一人であります岩手木質バイオマス研究会の金沢会長、お願いいたします。
 

◆共同宣言 金沢岩手木質バイオマス研究会会長

 壇上の皆様、ご苦労様でございました。そしてはるばるベングドソン市長、ありがとうございました。
 木質バイオマスの先進地ヴェクショー市では、いったん出た人たちが、環境の素晴らしいヴェクショー市でもう一回生活がしたいといって、家族を連れて戻ってくる。それで、この10年間で人口が10%以上も増えていると伺っております。非常に素晴らしい町づくりをしているヴェクショー市を、見習いたいと考えております。

 このサミットの直前に、皆さんで合意しました宣言文を読ませていただきます。岩手木質バイオマス研究会に関しては、お手元の資料をご覧ください。それでは読み上げます。

宣言文

 木質バイオマスサミットinいわて宣言、資源小国といわれるわが国にも、国土の3分の2を占める豊かな森林があります。しかし、国内の林業は不振をきわめ、木材の自給率は20%を割るありさまです。また山を見渡せば、管理放棄とみなされるような森林がいたるところに広がってきました。森林は継続的に利用されてこそ健全に維持されるのです。

 かつて、日本の森林の多くは燃料も木材の採取を目的として管理されてきました。そののち、化石燃料の進出によって、森林エネルギーの利用は衰退の一途をたどっていますが、世界に目を転じますと、本日ご参加いただきましたスウェーデンをはじめ、欧米諸国を中心に、木質燃料の復権ともいうべき活動が、世界各地に広がりを見せております。

 再生可能で環境にやさしい木質バイオマスが、来たるべき持続可能な社会の重要なエネルギー源として見直されているのです。それと同時に、木質バイオマスを効率よく熱や電源、さらには液体燃料などに変換する技術の進歩も見逃せません。ようやく、わが国でも木質エネルギーの本格的な取り組みが始まっています。

 本日、私たちは「みどりのエネルギーが日本を変える」をテーマとした全国初の木質バイオマスサミットに参加して、木質バイオマス利用の重要性を改めて認識するとともに、これら関連産業の振興をとおして、地域経済の活性化と雇用の拡大を図ることを決議いたしました。

 これはまた、豊かな森林を育てる循環型の社会づくりに貢献することにもなるのです。このサミットの開催を契機に、地域のエネルギー自立が促進されることになれば、地域から日本を変える歴史の転換点として記憶されることになるでしょう。

 今後、私たちは互いに、そして私たちと同じ価値観を共有する関係機関の団体等々と連携をしながら、あらゆる機会をとらえて、木質バイオマス利用を全ての人々にアピールし、社会に浸透させる努力を惜しまないことを確認して、木質バイオマスサミットinいわての宣言といたします。

 平成16年1月20日     岩手木質バイオマス研究会会長 金沢滋
 

司会
 ただいまは大変に力強い宣言をいただきまして、ありがとうございました。
 本日この会場には、北は北海道から南は九州まで、800名を超える皆様にお集まりいただきました。ただいまの宣言にもありましたとおり、これから木質バイオマス利用の意義を広く、全ての皆様にアピールして、そして社会に浸透していく努力を惜しまないことを再確認するとともに、壇上の皆様への感謝の気持ちを込めまして、今一度、盛大な拍手で本ふフォーラムを終了いたします。ありがとうございました。
 


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