知事の定例記者会見

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

知事の定例記者会見

平成18年8月24日10時00分から(県庁二階 第二応接室)

(項目)
 ・政策協議
 ・県職員の自動車税滞納問題(1)
 ・靖国神社参拝と自民党総裁選挙
 ・県職員の自動車税滞納問題(2)
 ・皆山集の紛失(1)
 ・今後の税体系
 ・長野県知事選挙
 ・皆山集の紛失(2)



政策協議
(浜田:高知新聞記者)
 まず、ことしの政策協議の総括ですけれども、今回は7月18日から31日にかけて行われました。特に今回は、人件費にもコスト意識を持ってもらい仕事を見詰め直してみようという趣旨から、例年とは違う意見交換もできたのではないかと思いますが、知事自身または幹部の方に新しい気づきなどがあったのか、そのあたりも含めて、政策協議の感想からお願いします。

(知事)
 人件費コストをもう一度考え直そうというテーマは、十分深みのあるかみ合った議論ができたかというと、決してそうではなかったというふうに思います。また、どれだけの気づきが話し合いの中で、それぞれの部局長なり職員の皆さん方の中に生まれたかと言えば、それも確信はありません。

 けれども、こういうことを続けて議論し、また、お互い認識をし合うという中で、人件費コストということをもっともっと真剣に考えていくという風土が県庁の中に生まれていくきっかけは、つくれたのではないかと思います。

 部局長さんとお話をしていても、率直に「人件費をコストとして考えていくという意識はもう十分に育ってきている」と。「今さらそんなことを各部局に投げかけてどうなるんだ」と。「そんなことよりももっと具体的な事業の話やなんかをしていったほうが、実りがあるんじゃないか」ということを言ってくださる部局長さんもおられます。

 確かに10年前、20年前に比べて、「人件費をコストとして意識をしていく」という気持ちははるかにに進んできているというふうには思います。

 けれども、一般の企業うんぬんという言い方はしませんけれども、本当の意味で「人件費をコストとしてとらえながら、仕事をしていく」という、先ほど言いました風土が県庁の中に根付いているかというと、まだまだであろうと思います。

 部局長さんで「それはできている」とおっしゃる方の中にも、ほかのもっと進んだ意識の方から見れば「何だ、そういう考え方で」というふうに見られるような状況もまだまだあるんじゃないか。また、部局長はそう思っていても、本当にそのことが部局の中、課長さん、班長さんに浸透していっているかというと、決してそうではないんじゃないかと。そういうことをもう一度考えて、また、各部局の中でも、職員の皆さんと話をしてほしいということも、きのうの庁議の中で申し上げました。

 また、部局長さんの中には、こういうふうに「人件費というものをコストとして意識をして、そのことによって職員の配置を考えていくというふうな仕事は、そもそも総務部の仕事である。最終的には県のトップの責任としてなすべきことではないか」とおっしゃる方もいます。

 それはそのとおりで、最終的な責任がトップにあること、また、そのためのいろんな事務的な作業をするのが総務部の担当であるということは、言うまでもありません。

 けれども、だからといって人件費をコストとして考えて、それに基づいていろんな配置を考え直そうという仕事を、総務部やトップだけに任すのではなくて、それぞれの部局でマネジメントとして、経営のひとつの手法として考えていくというのが、これからの部局長さんなり、課長さんなり、管理職という立場にある人の仕事だというふうに思っています。

 ですから、そういうことをもう一度投げかけて、それぞれの部局の中で人材の配置というものを、人件費コストということも含めて考え直す、そういうきっかけにはなる、最初の年になったのではないかなということを思っています。

 きのうの庁議でも言ったんですけれども、少しかけ離れた話で分かりにくいかもしれませんけれど、岐阜の県庁で、私に言わせれば、今どき裏金の話が出てきたと。普通の感覚で言えば10年、15年も遅きに失したような話です。

 で、人件費コストの話というのも、今「分かってる、分かってる」とみんな言うわけですけれども、10年、15年たったときに同じような意識で「そんなことは分かってますよ」と言えば、ああいう裏金の問題なんかが「分かってる、分かってる」とは言いながら、結局そのままズルズルいったのと同じようなことが、こういう「人件費をコストとして意識をしていこう」というような問題でも起きてくるんじゃないかと。少々かけ離れた事例を例えとして挙げていますので、分かりにくい話かもしれませんけれども。

 公務員に限らず大きな組織というのは、「そんなことは分かっている」と言いながら、変わっていかないということが非常に数多くあります。ということから言えば、今、「分かってる、分かってる」ということの中にある問題点。

「本当はまだまだ分かっていないんじゃないか」と、それぞれが嫌々ながらも考えてもらう。そのきっかけとしては、今回の「人件費をコストとして考える」という協議は意味があったのではないかと。

 ただ、それが何か深まって、1歩の効果を生みだすかと言うと、ことしはまだそういう段階ではないというふうに自分なりには総括をします。

(浜田:高知新聞記者)
 19年度予算に即、反映という方向にはならないでしょうか。

(知事)
 これはもう、当初からこの議論を始めるときに、総務部長からも「今回議論して、そこで何らかの物差しなり、基準なりというものをお互い認識をして、それを19年度予算というか、組織改正に伴う人員の配置というようなことに反映をしていくということはとてもできない。また、それは難しい」ということを言われましたし、私もそのとおりだというふうに理解をしております。

 ですが、少しでも早くそういう意識をつくって、先に進めたいと。物差しということを言いましたけれども、確かに教育の仕事をしている人、道路を造る仕事をしている人、生活保護のお世話をしている人、そういうようなさまざまな仕事を同じ物差しで切るということが非常に厳しい職場であるということは、もう前々から言われて、そのとおりです。けれども、だからといって、従来の配置基準のままでいいかと。やっぱりもっともっと揺り動かしていく必要があるんじゃないか。

 そのときには、ただ単に「この仕事が必要だ、必要でない」というふうな主観的なことだけではなくて、もっと何かやはり、今申し上げた「人件費をコストとして考えて」というふうな物差し、基準というものは、何らかの形で必要なんじゃないかなと。そういうことを考えて、19年度は無理にしても、何らかの物差しを、それぞれの部局長も含めて考えていけるような流れになっていけばというふうに思っています。

県職員の自動車税滞納問題(1)
(浜田:高知新聞記者)
 次に、県職員の自動車税滞納問題です。7月に中央東県税事務所管内で県職員の自動車税の滞納状況を調べた結果、139人の滞納が判明しました。それ以降、県民からは「県職員の納税意識はどうなっているのか」という声が上がっております。

 税務当局はその後、督促状を送ったりして、結果的に6人が依然未納ということで、9月の給与を差し押さえる事態になっております。

 そもそもこの問題、6人が差し押さえになるということがニュースではなくて、139人も滞納しておったということだと思いますけれども。一連の経緯を見られて、知事はどのような感想を持っておられるのか、お聞かせください。

(知事)
 これはもう県民の皆さんに納税という国民の義務を履行していただくようにお願いをして、そして、厳しい経済状況の中で多くの県民の皆さんに税を納めていただいているという立場から、許されないことだというふうに思います。もう、どういうご批判を受けても、甘んじて受けざるを得ない。ある意味言い訳のできない、県庁の職員としての意識の問題を問われれば、何とも申し上げようのない、申し訳のない話だというふうに思います。

 (差し押さえに至った)最後の6人の方の中には、確かに事情として情状酌量というか、非常にご家庭の事情、お父さまもお母さまも病気を抱え、介護の状況で、住宅ローンも抱えて、というご家庭もあります。

 つまり、そういうご家庭の場合には、本当は県税事務所のほうに早く何らかの免税の措置なり何なりということを相談されて、そこらへんの事情がどうか、まだ、十分に私自身はつかんでおりませんけれども、そういうようなケースもあったとは思います。

 けれども、そういうものが何件かはあるにしろ、全体として許されることではありません。先ほどの督促状から給料の差し押さえに至るまでの過程の中で、やはり「ボーナスのときに払えばいいや」とかいうような、総務部長の(全職員に宛てた)メールの中にもありましたような、安易な思いというのがまだまだ県庁の職員の中に根強く残っている。

 しかも、今、ご質問にもありましたように東県税だけの話ですので、ほかの県税事務所を含めれば、もっと多くの県職員が同じような状況にあるということは、当然極めて高い蓋然〔がいぜん〕性で推測できることですので。そういうことがないように、もちろん厳しく県の職員に指導をし、また、これからも話をしていきたいと思いますけれども。

 それは何とかこういうことを機会に、自ら洗い出して、県民の皆さんにもある意味恥をさらしてこういう状況を公開したわけですので、ぜひ、そういう県庁としての「これを機会にもう一度、県庁職員の納税意識も出直していく」という思いもくみ取っていただいて、「県庁の職員がこうだから」という思いは県民の皆さんが持たれても当然だとは思いますけれども、ぜひこれからも国民の義務の1つとしてご理解をいただいて、納税に努めていただきたい。

 そういう県民の皆さんの思いというものをくみながら、県庁の職員の意識改革ということ、この問題に対する意識をこの機会に切り替えるということには、全力を挙げて執行部としても取り組んでいきたいというふうに思います。

(中澤総務部長)
 ただいまの幹事社の方の質問で、事実の誤認がありましたので。先ほど139人の滞納があって、その後督促状を送った6人が差し押さえとありましたが、そうではなくて、263人が滞納であって、それから139人に差し押さえ予告通知出をして、それで6人が差し押さえになったとしてください。

(浜田:高知新聞記者)
 滞納はもっと多かったという?

(中澤総務部長)
 通知書を送った人間は263名。それからいくと納期までに支払っていない人はもっと多かっただろうということは推測できます。

靖国神社参拝と自民党総裁選挙
(浜田:高知新聞記者)
 最後に国政で2点ですが。小泉首相の靖国参拝問題と自民党総裁選についてですけれども。
 小泉首相は就任時の公約を実行する形で、8月15日に靖国神社を参拝しました。知事は昨年6月のご自身のブログで首相の靖国参拝について「乱暴で配慮に欠ける」とか「国益上バランスを欠いているんじゃないか」と痛烈な批判をしておりましたが、今回の参拝についてはどういう感想をお持ちでしょうか。

 また、靖国問題ともリンクする総裁選ですけれども。現時点では、谷垣さんと麻生さんが出馬表明して、来月1日には安倍官房長官も立候補を正式に表明する予定ですが。地方に厳しかった小泉改革の反動でしょうか、谷垣さんは例えば「ふるさと共同税」をつくってはどうかとか、麻生さんも「地方に温かい手を」などとおっしゃっておりますけれども、現時点で総裁レースをどういうふうに見ておられるのか。
 靖国の問題と総裁レース、2点お願いします。

(知事)
 靖国の問題ですが、私は去年のブログでも書きました。ことしも8月15日のブログで書こうと思いながら、まだ、ちょっと時間がなくてアップできておりませんけれども。総理大臣は靖国に参拝すべきではないという立場は一貫をしております。

 ことしも8月15日の参拝をされたあとの小泉総理の記者会見を生で見ておりましたけれども、幾つかの疑問点を感じました。あのとき総理が挙げられたポイントは3つございました。憲法違反の問題。それから中国、韓国という外国から言われて態度を変えるというのはどうかというようなこと。そして3つ目には、自分はA級戦犯に参拝をしているわけではなくて、その他大勢の戦争の犠牲になった方々のために参拝をしているんだ、という3点であったと思います。

 憲法の問題に関しては、昔よく「公人か、私人か」ということを言われましたけれども、裁判所の判決等も通じて、ある程度整理されてきていると思います。この点では総理が会見の中で言っておりましたけれども、「伊勢神宮に参拝をしたときには特段の問題点として追求がなく、靖国に参拝をしたときだけ憲法問題うんぬんというのはおかしいんじゃないか」ということにも、ある程度理解できる点がございます。

 次の中国、韓国に言われてという点は、外国に言われて日本の総理が、日本の施設に参拝をすることをどうのこうのするということ、その事態はおかしいというふうに言えると思います。そこまでは私も小泉総理と考え方は同じです。

 しかし、公人という、総理大臣という立場を考えたときに、全体の国益を考えなければいけないのではないかと。つまり、中国、韓国の首脳なり政府が政治的なカードとして靖国問題というものを使うということは、日本という国からして、それをただ安易に許していいものではないというふうに思います。

 けれども、その背後には、やはり日本が中国、韓国という国を侵略して多くの被害を与えたという歴史的な事実があると私は認識をしています。そういう思いを持たれた中国、韓国の国民が大勢いらっしゃる。そのことを踏まえて、中国、韓国政府も政治カードとしてこの問題を使っているということを考えなければいけませんし。日本の国内にも随分大きな変化は出てきていますが、なお、やっぱり総理が靖国に参拝をするということに賛否両論、ちょうど半分ぐらいに分かれているという現状があります。

 つまり、こういう状況の中で靖国参拝をするということは、国内世論にも分裂が起きていることを世間にさらすということになりますし、そこを中国、韓国などの諸外国に政治カードとして利用されるという面を残すということになります。

 こういうようなある意味政治的なリスクを負いながら、「心の問題だ」と言って総理が靖国に参拝をすることに日本の国益としてどれだけのプラスがあるんだろうかということを、私は公人であるからには考えなければいけないと。私人として参拝するのは、それは勝手ですからいいですけれども、公人か私人かという議論は、従来の憲法問題での公人か私人かということよりも、「国益としてどういう影響を与えるのか」ということを私は総理という立場の人は考えなければいけないんじゃないかなと。

 そういう意味では、いくら心の問題だといっても、公人としての参拝であり、そのことが日本の国益にマイナスの影響を与えていると私は思いますので、こういうことはすべきではないというふうに思います。

 もう1つの論点として言われた、A級戦犯に参拝をしているわけではなくて、この戦争には行きたくないのに戦争に行かされて被害を受けた、そういう多くの国民がいるんだと。そういう英霊に対して自分はお参りをしているんだというふうに言われます。

 それは私はそのとおりだと思いますけれども、だからといって、「戦争の加害者も、その被害者も、十把ひとからげにしていいのか?」ということを考えなければいけないんじゃないかと。

 A級戦犯というのは、確かに戦勝国による戦争裁判で、ある意味戦勝国の勝手でなされたものですので、そういうことに対するいろんな問題点を指摘することはできるでしょう。

 けれども、その中に日本の国民の目から見て明らかに戦争の加害者である、多くの国民を戦地で死に至らしめた、その責任を負うべき人がいるということも事実であって。
 「誰が戦争の加害者で、誰が被害者か」ということを日本という国として、国民として、きちんと区分けをしなければいけないのに、それをしてこなかったので、A級戦犯うんぬんだとかいうことにいつまでも振り回されることになるのではないかと。

 私は、やっぱり加害者と被害者というものを十把ひとからげにして、心の問題だからそれで構わないんだということには、これは中国、韓国うんぬんを別にして、日本国民としてもそういうことをすべきではないというふうに思います。

 というようなことから、私は総理大臣の靖国参拝には反対ですし、あのときの記者会見にも大きな問題点が幾つもあるというふうに感じました。

 それから、次の総理に対することですけれども。麻生外務大臣にしろ、谷垣財務大臣にしろ、地方のことをうんぬんということを言われている背景には、やっぱり小泉改革というもので大きな格差が、都市と地方の間に起きたと。そのことに対する地方の不満があるということを前提に意識をされて言われている政治的な配慮であろうと思います。

 けれども、実際にそこで言われていることは、ある意味財務省なり、総務省なりという中央の官庁の目から見て地方をどうしていくかと。従来からの補助金なり、地方交付税の制度というもので地方をコントロールしていく。その中で、より地方にプラスになるような政策をしていこうという意識が、見え見えというか、そういうような思いで発言されているというふうに受け止められますので、 「地方にどうのこうの」と言われても、分権社会の中での地方の自立ということを求めている知事会なり、地方の自治体の長なりの思いとは随分大きな開きがあると思います。

 ですから、安倍さんがこの点で何を言われているかはよく分かりませんし、『美しい国へ』も読んでもいませんので分からないんですけれども。

 地方にとって、安倍さんと麻生さんと谷垣さんの考え方にそう大きな、本質的な違いがあるというふうには思いませんので、どなたが総理になられても、そういう地方のある意味厳しさというか、地方の分権自立の道が開けるかどうかということは、決して明るい見通しはないというふうに思っています。

(浜田:高知新聞記者)
 幹事社からは以上です。各社質問があれば、どうぞ。

県職員の自動車税滞納問題(2)
(八代:NHK記者)
 自動車税の話なんですけれども。今回の調査は、中央東県税事務所管内の調査の話の中で出てきた話なんですが、これをほかの県税事務所で同じような調査をするというのは、考えていないですか。

(知事)
 これはどうですか?

(中澤総務部長)
 今、県税事務所長と、そこらあたりを相談しておるところです。

(浜田:高知新聞記者)
 それは、知事部局の職員だけではなく、教員とかにまで広げてというのも含めて。

(中澤総務部長)
 いや、違います。
 名簿がある範囲しかできません。

(北村:高知放送記者)
 滞納がなくなるような抜本的な対策というか、そういうのは考えられていますでしょうか。

(知事)
 滞納がなくなる抜本的な対策というのは、べつに県の職員に限らず、県民の皆さんに対しても、なくなる抜本的な対策っていうのはないと思います。滞納というのは、個人の意識ですので、それをなくするということはできないと思います。

(北村:高知放送記者)
 あくまで意識に訴えると。

(知事)
 あくまで意識というか、日本の納税の制度というのは、自主的に納税をしていくという形ですので。天引きをしていくような性格の税であれば、漏れをなくすということは行政の側として手を打つことができますけれども。

 県民の皆さんの自主的な申告によって成り立つ、これは県税でなくても、青色申告などの国税でもそうですけれども、そういう制度の中で、滞納だとかそういうことを防いでいくということは、制度としてはできませんよね、仕組みとしては。ということを申し上げています。

(竹内:高知新聞記者)
 県職員が何人、自動車税を滞納したかということを公表すること自体がおかしいんじゃないかと、個人情報と同じに滞納情報というのを外に出すのはおかしいんじゃないかという意見が、県庁の中で何人かの職員から聞かれたんですけれども、その点については。私は、べつに構わないんじゃないかと。

(知事)
 個人情報に触れるとかいうことは、私は思いません。例えば先ほども申し上げた6人の人の場合に、最後まで残ったわけですから、より重いじゃないか、もっと公表をしろというようなお声があって、それぞれの事情ということを点検していったりするときに、そこには個人情報との絡みというのは出てくるだろうと思います。

 けれども、全体の中で、どういうような滞納があり、督促状をどれだけの者に出して、なお、それに対してどれだけが応じないでいる、というようなことは、それは当然、私は、やるべきことだと思いますし。そのことに何の疑問もないと思います。

皆山集の紛失(1)
(浜田:高知新聞記者)
 (大河ドラマ「功名が辻」高知県推進協議会が県立図書館から借り出したあと行方不明になっている資料)『皆山集』の話ですが、知事が報告を受けたのは、休み中だったのか、きのうだったのかという。

(知事)
 きのうです。きのうの前に、そういう話があるということは聞きはしましたけれども、きちっと報告を受けたのはきのうです。

(浜田:高知新聞記者)
 理事のほうから聞かれて、率直な感想は。協議会の会長名で借りておられますんで、そのあたりも含めて、どうでしょう。

(知事)
 まあ、なんともいわく言い難いですね。感想と言われますと、いわく言い難い。というのは、現実にどういう流れて起きてきているか、また、その担当した職員の方の心理的な状態だとかいうものがどうかということを、自分が直接会って話を聞いているわけでもありませんし、また、調べたということが、実際にどういう場所をどういうふうに調べたかっていうものを自分の目で見ていないと。それはあまりにも話がずさんではないかというようなことが、自分の肌合いの感覚としてつかめないというところもあります。

 で、全般的な書類上のことを見て言えば、これまた「どうしてこんなずさんなことが起きるんだ」ということを思いますけれども。その中で、もう少しディテールの部分、細かい部分が分からないと、なかなかいわく言い難いなというのが正直なところです。

 もっと上の段階で、ああいう貴重なものを貸し出すときの制度、仕組みをきちんとしなきゃいけないということは、別の議論としてあると思いますが。今、起きてきていることに対しては、まだまだちょっと、自分自身よくつかみきれないところがあります。

(浜田:高知新聞記者)
 その担当した職員の精神状態うんぬんはあると思いますけれども。なくなってしまっているという事実はあるわけですけど。それに対して、会長である知事としての……

(知事)
 それは県民の財産ですので、推進協議会の会長としても、また図書館行政をあずかっている、(直接的な担当部署は)教育委員会ですけれども、全体の責任者としての知事としても、大変県民の皆さんに申し訳ないということを思います。

 ただ、消失をしているという、例えば焼けてなくなったとか、シュレッダーにかけたとかいうことはあり得ないものだというふうに思いますので。やっぱりどこかにあるということだと思っておりますので、ぜひ捜し出さなければいけないというふうに思います。

(岡林直裕:高知新聞記者)
 極めて残念なことだと思いますので、資料が見つかることを望んでいます。
 ただ、そういったことを踏まえて物事をちょっと考えてみたときに、物のとらえ方ですが、観光に関しては、高知市でも幾つかの問題が起こっています。

 それはいわゆるイベント主義に流されてしまうと。本来観光っていうのは何なのかっていうものを考えてみたときに、違ったものを持ってくるのではなくて、本来地域に根差したもの、いいところに目を向けてその存在の価値を見いだすべきというのが観光のあり方だろうと思うんです。

 そういった意味で言うと、今回の資料というものに対する価値というものの見方から言うと、もちろん担当職員の問題はあろうかと思います。ただ、組織として見たときに、その価値を見いだした上での観光の展開をしていたのかということになると、その資料自体の希少な価値というもの自体も認識されていなかったという状況が組織としてあると思います。

 で、観光に取り組む姿勢とともに、そうしたさまざまな観光をこれから行っていく上での県庁としての組織の在り方っていう2つの問題点が出てきたようには思うんです。知事が会長だからすべてについて関知をして、ということにはならないだろうと思います。

 ただ、観光を展開していく上でも、落とし穴っていうのが今回ちょっと出てきたような感じがしますので。観光というものに取り組む上での物の考え方が1つ。それから、組織としての問題点というものを、今、知事はどういうふうにお受け止めになられているのか。この2点をちょっと。今回の問題を教訓として感じていることがあれば、お伺いしたいと思うんですけれど。

(知事)
 ちょっとご質問に十分な答えかどうか分かりませんけれども。
 (来年度の組織改正を控えて)文化環境部をどうするかという組織上の問題があるわけですよね。で、いろんな議論がある中で、私は、文化環境部という部を残していくべきではないかという意見を持っています。

 その意味は何かというと、文化環境部というのは、これまで「少し余裕ができたら、付け足しでやっていこうね」という意識で行政上取り組んできた文化だとか、環境だとかいうことを、単に「水質を良くする」だとか「文化財を保護する」というだけではなくて、すべての行政の中に「土木で道路を造る」だとか「福祉をしていく」だとか「教育」だとかいう、いろんな行政の中にそういう文化や環境の視点というものを根付かせていくんだと。

 そういう全庁的な役割を文化環境部っていうのは担っていくんだという思いでつくったものですし。そのことが、少しは広がってきているとは思いますけれども、果たして全庁的に浸透しているかというと、決してそうではない。

 環境の問題について本当にみんなが考えながら、道路計画なり何なりをしているかっていうと、まだそうではないですし。今、お話があったような観光という、文化と、また、環境とも密接に結び付く分野でさえ、そのことを十分に認識できていないというような現状ではないかと思います。

 ですから、組織というものの少し大きなところで話をしていけば、やっぱり文化だとか環境というものを、県の持っている財産としてきちっととらえていく。しかも、それを新しく何かものをつくっていくときも、いつもそういう意識で仕事をしていくということを文化環境部という部を通じて、まだまだ県の職員に、もうあと5年、10年かかっていくかもしれないけれども、取り組んでいかなきゃいけない。そういうことが、一番のベースになければいけないということを思います。

 で、観光という分野で文化というものをきちんと位置付けながら、それにそれこそ光を当てていくという観光というのは、おっしゃるとおり必要な視点であろうと思います。

 ただ、イベントというものも、やはり交流人口を増やすという中で必要なもので、無視してはいけないものだと思いますので。そこはバランスと、またそこにかかわる人間の意識というものをきちんとしていかなきゃいけないということだと思います。

 で、今回のことへの、あまり付け焼き刃の対応をしていっても、それがプラスの面に働くかどうかは分かりませんけれども、やはり、自分は観光コンベンション協会の会長ですが、観光というものにかかわっていくものは、文化の大切さということをもう一度、きちんと。

 ああいうものを扱っていくときに個人個人の職員に任せていくのではなくて、組織としてそういうものをきちっと対応していくようなやり方、仕組みというものは、それがどういうものかは分からないですけれども、考えなければいけないと思います。

(岡林直裕:高知新聞記者)
 要するに、観光コンベンション協会がかかわってきていると思うんですよね、問題は。その組織が県庁だけで構成されているわけではないし、さまざまな各種団体にかかわってきている。

 そうした状況の中で、1つの方向性を見いだしていく組織のあり方っていうのは、抜本的に見直していかなくちゃいけないのかなということも感じたんですけれど。具体的にそうした検討っていうのは、会長側としてですね、推進協議会の会長さんとして考えられることがありますでしょうか。

(知事)
 それはなかなか難しいですね。

(岡林直裕:高知新聞記者)
 この問題だけで、例えば(大河ドラマ「功名が辻」高知県推進)協議会を臨時に招集されて、というようなことは、お考えになられているわけではないですか。

(知事)
 今は、まずは、その本を発見するということが大切だと思いますので。そのことに全力を挙げてほしいというふうに思っています。

 これはまあ、同じ組織内で、県庁、教育委員会、図書館、そして観光コンベンション協会という大きな意味で同じ組織内で起きていますので、言い訳のできない話なんですけれども。

 私自身も元の仕事〔NHK記者〕をしておったときに、私自身がかかわったことじゃないですけれども、仲間の者が貴重な物をお借りしてきて、それこそ撮影をして、その一部が分からなくなって、というようなことを何回か経験をしています。

 で、そういうものを組織的になくしていけるかというと、なかなかそれぞれの人間の意識……そういうものに対する意識というものが高まっていかない限りは難しいなということを思っておりまして。組織的に何かができるんではないかというお問い掛けはよく分かりますが。自分自身の経験からも、なかなかそれに対する「組織としてこうしていけば」という「制度、仕組みとしてこういうものをつくればいい」という解答が見いだし得ません。何かいい考えがあれば、教えていただければと思います。

今後の税体系
(岡林直裕:高知新聞記者)
 次の総理の話の中で、いわゆる自立する分権社会というものを考えていったときに、なかなか期待できないんじゃないかというお話がありました。1点、租税の体系という部分でお伺いしたいんですが。

 知事自身も、全部の知事に会ってということではなかったと思うんですけれど、全国の知事の中で、これからの税制のあり方っていうものをまとめていくお立場に、今、なられていると思います。

 今の税体系で考えていったときに、地方が暫定的にできる租税の体系にもなっていないだろうし、これから分権・自立っていう枠組みを考えていく上で、そこはもう避けて通れないところだろうと思います。

 となってくると、次の総理、総裁に対して地方が求めていく1つの材料としては、税制のあり方っていうものについても突っ込んだ話をしていかなくてはいけないだろうし、そこに伴う権限移譲という部分にどう切り込んでいくかということは、1つのポイントになろうかと思います。

 で、今の現状で考えてみたときに、その消費税の関係であったりとか、そうした租税の体系というものについて、知事自身が今、具体的にお考えになられている部分というものがあれば。

 「ポスト小泉候補に対して、こうしてもらいたい」もしくは「ポスト小泉が決まった段階で、何らかの行動を起こしていく」というような視点がありましたら、お話をいただければと思います。

(知事)
 全部の体系として、法人税から消費税に至るまで、「現在の国税、地方税の割合をこういうふうに制度的に変えていったらいいんじゃないか」という体系を、全部自分として持っているわけではありませんし、語れるわけではありません。

 けれども、例えば消費税ということに関して、今、総裁候補として手を挙げている方々の意見に対しての自分の思いということで、一例を言えば、谷垣さんが「消費税は10%ぐらいまで上げるということを考えていかなきゃいけない」ということを言われております。将来的にはそうであろうと思います。

 けれども、あのご意見をそのまま受け入れていけば、ある意味、財務省がバックになった発言として出てきているわけですから。その消費税を国が担当する福祉の分野の消費なりなんなりという社会保障関係費に使っていこうと。その部分を消費税で賄って、今の税源をそのまま守っていこうという国の意志が見えると思います。

 ですから、つまり、消費税アップということであれば、それは「その消費税分を全部地方に回していくということという大きな制度改正が前提になっていかなければいけない」ということを消費税問題で地方が一体となって意見を言っていけるかどうかということが、私は大きなポイントではないかなというふうに感じています。

長野県知事選挙
(板倉:朝日新聞記者)
 長野県では田中知事が敗れることになったんですが。もちろん政策はまったく別ですが、改革派として知られる知事にご感想をいただきたいんですが。

(知事)
 とてもいろんな意味でいい仕事もされ、また、いい発言もされてきたのに、なかなかそれが長野県民の皆さんにも、それからほかの関係の方々にも十分理解をされなかったというのは、非常に残念だなというふうに思います。

 そういう意味で、自分自身も、「改革とかいろんな新しいことに取り組もうというときに、少しでもやっぱり県民の皆さんの理解を得ていく。また、反対をされる立場の方々の理解を得ていくという努力というか積み重ねが必要なんだな」ということを、他山の石というか、長野県の事例から自分自身は感じました。

 私は、田中さんが長野県という県の県政の中で出てこられた意義、また6年間果たされた役割というのは、非常に大きいものがあったと思いますので、このあとを継がれる村井さんにも、そういう流れをぜひ続けていっていただけたらと。余計なことですけれども、そんなふうに思います。

(竹内:高知新聞記者)
 何が受け入れられなかったと。

(知事)
 それは、一言で言えば、まあキャラクターで済ますのはいけないとよく言われますけれども、やっぱり人と人とがつき合っていくときに、キャラクターというのは非常に大きな要素なので、その人づき合いがなかなかうまくいかないというところは、非常に大きな壁になったというふうに思います。

皆山集の紛失(2)
(齋藤:高知さんさんテレビ記者)
 さっきの史料のお話の部分なんですけれども。先ほど、組織として対応するように考えていかなければならないというふうにおっしゃっていたんですが、それと絡めて。

 特にマスコミなんかでは、撮影して使える、なんかそういう大事な意味があれば、そういう資料等々、特別に撮影を許可して貸し出すということもあるとは思うんですが、特別に貸し出すとかいった対応について、もうちょっと詰めて(もう今後は貸出はしないと)考えるのか。それとも、そういった対応についてきちっと決められたものが、例外的なものについてないのか。ないのなら、それについて考えるという意味でおっしゃったのか。そのあたりを具体的に。

(知事)
 その貸し出しの部分で申し上げたことではありません。特別の申請を受けて貸し出したあとの管理だとか、その際に個人の責任に任すのか、それとも組織としてきちんと見ていけるような対応をとっていくのかという組織的なご質問だと思ったんで。そういうことはなかなか必要だと思うけれども、難しいというお答えをしました。

 で、今の貸し出しの部分は、当然、一般的には貸し出しをしない本、だけど、今お話があったように、マスコミの方などから公的な理由で申請があった場合に特別に貸し出す。または、研究者の方でどうしても必要な資料だということで特別な申請があって貸し出すということは、貸し出しの基準がございます。

 で、貸し出しの基準をこういう撮影だとか、PRなどに活用していくときにどうしていくかということは、図書館として考えるのであれば考えていただくべき問題で、私は直接ちょっとそこまでは、「どうすべきだ」とか言うことを、実務上の知識もありませんので答えられませんけれども。それはまた、今回のことを踏まえて、図書館のほうでもお考えになるかもしれないと思います。

 だから、今回の『皆山集』も、もちろん一般に貸し出す図書ではありません。特別の申請を受けて、その申請の基準にのっとって貸し出したというものですので。

 そういうものをより厳しくしていくとか、より注意書きなりその際に個人の担当者だけではなくて、その組織の上司にもそういうことをちゃんと知ってもらってやっていくとか。そういうような、二重、三重のチェックの仕方っていうのはあるんではないかと思います。そういうことは、図書館でもまた考えてもらえばいいことではないかというふうに思いました。

(浜田:高知新聞記者)
 各社よろしいでしょうか。
 ありがとうございました。

(知事)
 ありがとうございました。


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