平成18年度の県政運営にあたっての知事講話

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

平成18年度の県政運営にあたっての知事講話

平成18年4月3日(月曜日)13時00分から13時25分(高知県庁 正庁ホール)


 皆様、こんにちは。
 時の経つのは早いもので、また1年が過ぎて、今日から新しい年度がスタートすることになりました。また、これからの1年も引き続きよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 ということで昨年度を振り返ってみますと、昨年度1年間は色んな意味で底を見たというか、底を経験したような1年ではなかったかと思います。

 例えば、三位一体の改革の影響などもその1つですけれども、三位一体の改革というのは、本来の目的、目指すべき方向は決して間違ったものではありません。ただ、その結果として現れた現実は「地方分権」といったこと、また「地域の自立」といったこととは縁遠いものになりました。

 こうした経験から、私は「地方の側は何か新しい政治的な力でも持たないと、なかなか国からの攻撃には抗し得ないな」ということを身をもって感じました。けれども、そんな政治的な力というのはすぐに身に付くものでもありません。

 ですから、「昨年度が底」ということを言いましたけれども、それが底ではなくて、さらに色んな意味で国から切り込んでこられるということも予想をしなければいけませんし、そうなっても堂々と進めていける県政というものでなければいけないということを思っています。

 一方、経済や雇用という面では、昨年の2月に有効求人倍率が0.44まで落ちて、これまでの底を記録いたしました。けれども、直近の今年の2月の有効求人倍率は0.53まで戻すということができました。

 また、物づくりの企業のお話を聞いてみますと、技術力を持った企業はそれなりにしっかりとした足取りで取り組みを進めておられますので、そういう意味では、少しずつ明るい兆しが顔を覗かせて来ているのではないかということを思います。

 また併せて、今年からは大河ドラマ「功名が辻」が始まりましたが、その影響で高知城の本丸「懐徳館」の入場者数は、対前年度同月比で見てみますと1月が141%、2月が167%、そして3月は201%と、目に見えた効果を上げています。

 こうしたことから、このお正月の最初の庁議の時に幹部の職員の皆さん方には、「今年はぜひ、前向きに、ポジティブな志向で……」ということを申し上げましたが、時代環境の変化というものも、そうしたポジティブな志向というものを少しずつ後押しをしてくれる、そんな流れになってきているのではないかと思っています。

 去年から今年ということを考えますと、去年の12月に行政改革大綱、新しい行政改革のプランというものをまとめましたが、これも別に守りの行革ではなくて、ポジティブな、前向きな姿勢での、考え方での行政改革というものを目指しています。

 といって思い出しますのは、この前の平成10年10月の行政改革大綱をとりまとめた時のことですが、この時にも「行政改革というのは、なにも人員を削減するとか、また組織の名前を変えるといったことが目標なのではない。そういうことを通じて、国や市町村との関係を見直していく、変えていく。また、企業やNPOなどの団体との関係を変えていく。ひいては、県民の皆さん方との関係を見直し、変えていく。そういうことに行政改革の目標が、目的がある」ということを言いました。

 今回の新しい行政改革大綱、また行革プランというものも、まさに県と県民の皆さんや、また県と企業だとかNPOなど、そういう様々な方々との関係を見直し、新しい関係を創り上げていくというところに目標があるというふうに考えていますし、それを進めるためのキーワードとして「アウトソーシング」とか「住民力」とか「地域の支え合いの仕組み」という言葉を使っています。

 3年前に取り組みました「地域支援企画員」というものも、まさに、こうした県民の皆さん方との関係を変え、新しい関係を創り上げていく、そういう県の現場の出先の第一線の営業マン・営業ウーマンという位置付けがあるのではないかということを思っています。

 先ほど申し上げた行政改革プランを作るための検討委員会の長を務めていただいた方からも、「組織が困った時は、営業にまず力を入れていくということが鉄則だ。そのことから言えば、いま高知県はこの地域支援企画員というようなことに、全組織がむしろそういう形で動いていってもいいのではないか」というようなご指摘を受けました。

 もちろん、「組織全体が……」ということはできない話なのですけれども、組織ではなく「意識」ということでは全ての職員の皆さんに、「自分たちが地域支援企画員なんだ」という思いで仕事に取り組んでいただけたらということを思います。

 そこで、いま申し上げました行政改革大綱の目標でございます「県民の皆さん方との関係を変えていく、新しい関係を作っていく」ということで、そのキーワードに入れました言葉を1つずつ考えていってみたいと思いますが、まず「アウトソーシング」というのは、ただ単に県の仕事を外部に出していく、委託をしていくというだけではなく、むしろ、そういうことよりも、そのことを通じて企業など様々な団体とのおつき合いが出て来ます。

 そういうつき合いの中で、企業などの持っておられるコスト意識、また知恵、お客様本位の仕事の仕方というものを学び、それをまた県庁の仕事にフィードバックをしていくということに大きな意味があるということを思っています。

 また、こうしたアウトソーシングを進めることによって、これまでのように県の役所の理屈を押しつけていく、また役所の物差しで地域の現場を見ていくのではなくて、地域の現実、地域のニーズというものを物差しに県の仕事をもう一度見直していく、そういう動きが出て来るのではないかということを期待しています。

 先日、このアウトソーシングに関する説明会を開きましたところ、220の事業所、350人の方々にお出でいただいて、大変、そういう意味では盛況であったということを聞きました。

 このように、県が前向きに色んなことに取り組んでいけば、県民の皆さん方もポジティブに反応してくださるのではないかと、そういうことをそれぞれの担当の職員の皆さん方も感じていただけたのではないかと思っています。

 次に「住民力」ということでも、「もう県の力ということを最初から頼るのではなくて、自分たちでとにかくできるところまでなんかやってみよう。そういう動きを起こしていこう」という芽があちこちに出て来ているのではないかと思います。

 先日、出版をしました私の本の中でも事例として紹介をいたしました、土佐市の宇佐地区の防災の取り組みなどもそうした活動の1つですけれども、その背景には、どんなことがあってもめげずに前向きに地域の住民の皆さん方に話をしていく、働きかけをしていく、そういうことによって、やがて地域全体を巻き込んだ運動にしていく、そんなリーダーの存在があります。

 また、そうしたことから、私たちは、自分たちも前向きに、ポジティブに、地域の、また県民の皆さん方に色んなお話を仕掛けていく、ご説明をしていく、そういうことを粘り強く続けることで、地域全体を、県民の皆さん全体を巻き込んだ新しい動きを起こしていくことができるということを教訓として学べるのではないかというふうに思います。

 また、そうした思いで「地域の支え合いの仕組み」ということで言えば、今年度から健康福祉部の中に、地域の支え合いの仕組みを進めていくチームを作りました。

 といいますのも、特に健康や福祉の仕事はそういう面がありますけれども、やはり国が縦割りで決めてくる計画とか事業というものを受け込んでいかざるを得ません。

 けれども、地域の現場ということで言えば、まさにこうした分野こそ、国が一律に決めたものではなくて、地域の現実・ニーズに合わせた、色んな横に繋がった仕組みづくりが必要なのではないかなと。

 そういう一歩を、ぜひ、こういう地域の支え合いの仕組みを作るチームから興していければということを思っていますが、なにも組織を作ったからすぐそんなものが動いていくかと言うと、もちろんそういうわけではありません。

 そこでは市町村、また、それぞれのブロックの福祉保健所、さらには各NPOの団体ですとか、また従来からある民生委員・児童委員の方々、そういう皆さん方との連携というものが欠かせませんし、その連携の中で、まさにポジティブ、前向きな動きが出て来たら、それを1つでも、2つでも形にしていくということをぜひ進めていきたいと思っています。

 今ご紹介した民生委員・児童委員の幹部の方々と、先日、3月31日ですけれども、お話をした時に、この地域の支え合いの仕組みの話になりまして、「各ブロックごと、福祉保健所と同じ5つのブロックで、それぞれ、この地域の支え合いの仕組みを作るための研修会を開いていくことにした。だから、知事にもぜひ出席をして欲しい」というご要請を受けました。

 私は、そもそも、自分だけではなくて、県の職員みんな、こういう形で色んな場面での、分野での県民の皆さん、団体の方々との結び目を作っていく、それを広げていくということが、これからの仕事のキーポイントになっていくと思いますので、こうしたご要請を快く受けて、ぜひ参加をしていきたいと思っています。

 また、併せて福祉保健所の中には「知事が、毎日、毎日この県庁の中で仕事をするのではなくて、時には出先に出て行って、そこで1日県庁なり、また数日そこを県庁として、そこをベースに仕事をしていくようなことをしてはどうだろう」という提案をしてくださる所もあります。

 といっても、それがまた、単なる地域の事務所の連絡会を開くためのきっかけになったりするという形式的なことになってはいけません。

 けれども、地域福祉でも、子育てでも、また生活保護の自立支援でも、本当に縦割りを廃して横に繋がってやっていかなければいけない。そういう、仕事を進める上で役に立つことであれば、ぜひ、そんなことも試みてみたいと思っています。

 また、そうすることが、予算ではなくて人の力で、知恵で仕事をしていくということの1つの実践例になればなということを思います。

 もう1つ、その「知恵の力で……」ということで言いますと、「特区」ですとか、また「地域再生」ですとかいうメニューが出て来ました時、私は「地方分権のモデルを作るということを言いながら、特区の申請のために膨大な時間と書類作りに費やさなきゃいけない。そして、それを持って行って中央の省庁に頭を下げて『ぜひ、これをお認めください』と言って回って行く。これは何か、地方分権とは程遠いんじゃないか」というような言い方をしました。

 そのために「知事がそこまで消極的なら、あまり考えても仕方ないな」という思いも県庁の皆さんの中に広がったのではないかと思いますし、また、そうしたことが国に対するアンチテーゼとして、地方が独自に取り組むべきこと、また「こういうことはこういう形に変えていこう」という提案をしようと言っても、なかなか出にくい雰囲気ができてしまったのではないかということを反省しています。

 ですから、ここでもう一度狭い意味での特区でなくていいのですけれども、「こういうことをやはり独自にやっていくべきだ」ということを特区ということに名を借りて、ぜひ提案の募集をしていきたいなということを思っています。

 例えばということで言いますと、いま高知工科大学を中心にした地域結集型の研究の支援事業というものの中で、ZnO(酸化亜鉛)を使った新しい物づくりの研究がかなり進んできています。

 が、こうしたことも、何の対策も講じないままでいますと、この研究が本当にビジネスに結び付いた時には、そのフィールドは県外に、また国外に取られてしまうということにもなりかねません。

 そうならないために、せっかく高知県から発信をされた、そうした研究開発の芽というものを少しでも県内に根付かすために、例えば「ZnOに関する立地の企業は法人税を無税にしていく」というような特区の申請だとか、そうした思いきった発想というものが欠かせない時ではないかということを思うんです。

 また、これは先日、ある県内の福祉の関係者からご提案を受けたことですけれども、先ほどもちょっと触れた「生活保護の自立支援ということで特区申請をしてみたらどうか」というご提案を受けました。

 それはどういう意味かと言いますと、生活保護というのは、ご承知のとおり、本来は自立をしていただくための中間的な措置として保護という措置があります。

 ところが現実には、高齢化が進む中で単身の独り暮らしの後期高齢者のように、自立ということはとても望めない、そういう方々も増えてきています。

 であれば、そうした後期高齢者で、独り暮らしで生活保護を受けてらっしゃる、そういう方々は、一旦、行政から切りはずして、例えば、社会福祉協議会などがケースワークを行っていけるような、そういう特区申請をしていく。そのことによって、本来の自立支援の部分に行政、県や市が力を入れ、福祉の分野だけではなくて、雇用政策の分野も広げて幅広く対応していく、そんなことが提案できないだろうかというアイディアでございました。

 この他にも、今後、医療制度の改革などで「施設から在宅へ」というようなことが言われる中、また「地域福祉」ということが言われる中で、例えば、診療所と居宅のスペースホームというものの合築などなど、色んな規制を緩和していく、その必要性というものは各場面に出て来ると思いますし、そもそも全国一律の事業がおしなべて行われているために地域の現実とずれてるということは、もう数えあげればキリがないのではないかということを思います。

 そこで、新年度、まだ新鮮な気分がとれないうちに、もう2、3週間のうちに、ぜひ、特区といっても、先ほど言いましたように狭い範囲ではなくて「こういうことを、高知県は地方分権、地域の自立ということで言えば独自にやっていくべきだ」また「こんなことはもう逆にやめていくべきだ」ということを、提案として2、3週間のうちに募集をして月末にはまとめていく、それくらいのスピード感覚で一度提案募集をしてみたらということを思います。

 で、先ほども言いましたように、狭い意味での特区ということに限らずに、また役所的に「これはできそうだ」「できなそうだ」とか、「そもそも特区には相応しくない」とか「相応しい」とかいう議論をしないで、もう、とにかく考えて、フラッシュなアイディアでいいからそういうものを挙げていく。

 少なくとも1課室1つの、事務所1つくらいは挙げていく、個人でもいいから挙げていただく、そんなことをぜひやってみたいなということを思います。また、こうしたことがポジティブなものの考え方ということの訓練、勉強の機会にもなっていきはしないかということを思っています。

 まあ「ポジティブ、ポジティブ」ということを言っておりますうちに、かなりの時間を費やしてしまいましたけれども、今年度は、これからも「二十四万石博」の開催が続きます。

 また「華フェスタ」というものをどうやっていこうかというようなことも検討していかなければいけませんし、高知駅前の利用整備ということもございます。

 また、リタイアメントタウンの構想などなど、色んな仕事があり、しかも、それはハードということではなくて、やはり知恵と人の力をどう活用していくかということが重要なポイントになります。

 また、いま事例として挙げました事業なども、従来のように「一過性だ」とか「箱物だ」というふうに言われないようなものの見方、また財政面でもこれまでとは違ったファイナンスの付け方、そうしたことをあらゆる事業を通じて前向きに、ポジティブに考えていきたいなと。

 そんな意味で、くどいようですけれども、今年度1年、少しこの流れというか、時代の環境も良い方向に動き始めていると思いますので、その風に乗って、全員でポジティブ、前向きにこの1年を仕事をしていきたいと思いますので、どうかよろしくお願いをいたします。
 ありがとうございました。


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