平成19年度全国都道府県知事会議での橋本知事の発言

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

平成19年度全国都道府県知事会議での橋本知事の発言

平成19年11月14日(水曜日)総理大臣官邸(※橋本知事の発言と、それに対する福田総理の発言部分の抜粋です。)

【増田寛也総務大臣】  
 それでは、ここでですね……。それじゃ、午前中発言していませんでしたので、高知県、お願いします。

【橋本大二郎高知県知事】  
 手短にいたします。私からは極めて原始的で、ありきたりですけれども、ぜひ中央で仕事をしていらっしゃる方に、地方の現状を見にきていただきたいと思うんです。

 私は東京生まれの東京育ちで、福田総理が通われたのと同じ、港区の真ん中にあります中学・高校を卒業いたしましたから、かつてはれっきとしたシティーボーイでございました。それが、ご縁があって16年前に高知の知事になりましたので、大都市の大切さも地方の大切さも十分に理解したつもりです。

 16年間高知の知事をする中で、高知のような県にある町だとか中山間の地域に人が暮らしていける、そういう土台をつくっていくことが国にとって大切だし、この国の文化・伝統を守ることにつながると思うんですね。

 ところが現状を見ると、中山間地域の国土というのは、間伐も行き届かなくなって森林も荒廃をする、またイノシシやシカなどの食害によって農産物も食べられる、また木も食べられて、それによって山が崩れて川の水質も汚濁してしまう。また生活の面では、公共の交通機関がなくなり、商店も店を閉じる。毎日、病院に行くにも買い物に行くにも支障を来すという人が、本県でも何万人という数おられるわけです。

 その上、医師不足ということの中で、万が一というときの命を救うための時間距離の短縮、つまり、道路の整備ということもなかなか進まない。それに加えて、2011年から地上波のデジタル化ということになりますが、本県の場合、5,500から8,000世帯ぐらいがテレビが見られなくなるのではないかということも言われます。

 これを衛星放送でカバーするとなるとローカルの放送は見られない。大きな災害が起きても、地域で何が起きているかわからない。こういう新しい格差も加わるということになります。

 これに対して、総理が地方の再生ということを言われていることは大変心強いことですけれども、中央で仕事をされる官僚でも財界人でも、大手のマスコミの方でも、ほんとうに地方の実情というのをよくご存じかどうかということを不安に感じます。

 ですから、総理、閣僚、中央の官僚、財界人、大手のマスコミというふうな方々官民一緒になって、グループになって地方をぜひ見にきていただきたい。そのことによって、格差というのがほんとうに書面の上のことだけなのかどうか、それから、地方がいろいろ言っていることが、相変わらずおねだりの甘えなのかどうかということを判断をする。その心証をぜひ地方でつくっていただきたいなというお願いです。

【増田寛也総務大臣】  
 ありがとうございました。
 もう時間がいっぱいいっぱいなので、すみません、ここで総理のほうからまとめてご発言をお願いします。

【福田康夫内閣総理大臣】  
 いろいろご意見等を伺いました。済みません。日本語わかりますか、私の日本語。
 お伺いいたしておりました。最初は財源の話です。
 要するに皆様方、財源では大変苦労されているということでございまして、そういうお話はよくわかりました。地方においても行財政改革を非常にシビアにやってこられている。また、これからもやられる。そういうふうなことをおっしゃっておられまして、交付税なんかも相当減らしましたのでご苦労されているなということは思っておりましたけれども、きょう改めて、また皆様方のそういう切実なお話を伺っているところでございます。

 財源につきましては、地方法人2税の問題もありますし、それをどうするかといったようなこともございますけれども、この辺は消費税との関係もございます。その辺の財源のあり方については、今、総務省それから財務省においていろいろ議論しております。火花を散らしてやっておりますけれども、大変難しい問題だというような認識は私ももう既にしております。

 きょうは予算編成の前で、まさに陳情をお聞きするような気持ちでもって伺っておりましたけれども、切実さというのはよくわかりました。皆様方のご意向をどこまで反映させることができるか。それと結局は、その財源と申しますと、国の財源との関係がございますので、それを無制限に皆様方のご要望をすべて聞いてというわけにはまいらないという状況は厳然としてあるわけであります。

 その中でよりよい方法は何なのか、そしてまた未来に向けて希望を持てるような方向性というのは一体どういうものなのか。その辺を我々もこれからよく考えてまいりたい。また、各省でも議論していただきたいと思っております。

 いずれにしましても、この問題は皆様方の非常にバイタルな問題だという認識を持っておりますので、また皆様方のご意向もこれからもよくお聞きしながらやらせていただきたいと思っております。何しろお金がないんです。お金がないので、じゃ、足らない分は消費税を上げてというのもあまりにも短絡的過ぎるのではないのかなと思いまして、ことしも来年も、この1年間は何とか金のない方向でもってやりくり算段できないかなということを今思案しているところでございます。その点はひとつご理解いただきたいと思っております。

 それから、道州制の議論もございました。
 この道州制議論はこれから地方分権の進展を図るということもございますけれども、同時に国と地方の役割分担、両者がどうあるべきかといったような観点、これは決して忘れることのできないことでございますので、単に財政の節約のためというのは次元がちょっと違う話である。

 そしてまた、その程度の財政の削減というんだったら、ほかにもやる方法はあるんじゃないかなというふうな思いがいたしますので、これも皆様方のご意向をお伺いしながら、時間も多少かかりますけれども、しっかりやっていかなければいけないと思っております。

 その前提といたしまして、私は道州制実現の前にやることは何かということを皆様方に申し上げたいんですけれども、それはまず第一に、各地域が自立できる体制をつくっていただくということなんです。

 これは待ったなしのことでございます。そして今の問題解決のためにも、そしてまた道州制実現のためにもどうしても必要なことだと思います。そしてまたそれを実現するためには、やはりそれぞれの地域で人材を確保していただきたい。人材確保。確保というのは養成もございます。人材養成。そのことをぜひやっていただきたいと思います。

 ただいまも総務大臣のほうからいろいろお話があったと思います。各地域で地域のよいプロジェクトを見つけてくだされば、これから総務大臣がお話しすると思いますけれども、それは国としても支援していこうというふうなプランを出されると思います。これもやはり受け手である、そして実行者である皆様方地域地域がよい案をつくって、それを実行できる体制があってできることだと思いますので、ぜひその基礎となります人材の育成はよろしくお願いしたいと思います。

 多選の問題がございました。
 これは私ども群馬県も多選、そして実はやっちゃったんです。今来ておられる知事さんは多選反対で立ち上がった知事なのでございまして、それはやはりかなり影響がありました。県民に対してもアピールしまして、それが1つ大きな多選阻止ができた原因になったと思います。私は多選がすべて悪いという話ではないと思います。

 ですけれども、悪い面が多い可能性があるのではないかということを考えましたら、やっぱりこの辺も考えなければいけない。皆さん方知事さん方は絶大なる権限を持っているんです。私の権限なんていうのは吹けば飛ぶようなもので、もうほんとに今情けない思いをしておりますけれども、そのぐらいのことでありますので、皆さん方は私と比べたら絶大なる権限を地域で発揮される存在なんですから、そのことはあわせて自覚していただきたいというように思っております。よりよい都政をはじめとして、県政、府政をしていただきたいなと思っております。
 それから、地方をよく見ろというお話もございました。
 私も全く同感で、私は先般、各大臣に指示いたしまして、なるべく地方に行ってくださいと。そして、地方の実情をよく聞いてきてください。そういうことを申し上げました。これはやっぱりその点について、若干今現在足りないところがあるのではないか。

 地方の声を、私はこの間の総裁選挙でもって、地方といっても限りがありましたけれども、何カ所か参りまして、やっぱり相当いろんな意見があるな、不平不満もあるなということを実感いたしました。そういうことを感じたものですから、各大臣にもぜひ行っていただきたい。

 そして地方の声を吸い上げて、いろいろ小さなことと思われるようなことでも今は全国的に大きな話題になるんです。そういう時代だと思います。また、そういうことが話題になるということはそういう土壌は各地域にもう蔓延しているんだと思います。

 ですから、1カ所でのろしが上がると、それが全国的な話題になってしまう、大きな社会問題になるというような実情を考えますと、やっぱりこの辺、そろそろ限界点に達しているのかなというふうな思いがしているのであります。だからといって、消費税とすぐに直結するわけじゃありませんけれども、そういう限界点に、ある意味においては達している可能性がある。

 このことは重く受けとめて、そしてこれからの全般の政策に反映させていかなければいけないということを考えております。総務大臣もそういうことについて大変深刻に考えておりますので、また総務大臣ともよくご相談いただきたいというように思っております。

 以上です。


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