知事の定例記者会見

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

知事の定例記者会見

平成18年7月25日14時00分から(県庁二階 第二応接室)

(項目)
 ・室戸海洋深層水タラソテラピー施設(1)
 ・郵政再編
 ・全国知事会と国への主張の届け方
 ・室戸海洋深層水タラソテラピー施設(2)
 ・排出権取引
 ・地方交付税
 ・県立病院の医療事故
 ・政策協議
 ・県東部の活性化と公益性
 ・夏休みの予定



室戸海洋深層水タラソテラピー施設(1)
(吉川:テレビ高知記者)
 最初に室戸のウトコディープシーテラピーセンター&ホテルのことなんですけれども、2月議会にいったん補助金を出されて、それから紆余曲折あって、6月議会で通りましたけれども、補助率を下げたことについて、オープニングセレモニーで植村秀社長が、不快感と取れるようなことをインタビューで答えていらっしゃいました。

 こういう紆余曲折あったというのは、県の企業誘致をする中でも決してプラスになったとは思われないと思うんですけれども、どのように受け止められて、今後、対外的に懸念を払拭するような取り組みを何かお考えかということを教えてください。

(知事)
 この事業は深層水関連の事業の一つとして、特に深層水のブランド化ということも含めて、県としてかなり力を入れて取り組んできた事業ですし、また、7年という歳月をかけて取り組んできた仕事ですので、今おっしゃったような、いろんな紆余曲折があったとしても、事業がスタートしたということを私としては大変うれしく思っていますし、ほっとしています。

 その間のいろいろな問題点ということは、県として今後に生かすべきことは当然生かしていかなければいけませんけれども、何よりも地域としては、35人という大きな雇用を持った事業ですし、また、それが、先ほど申し上げたブランドという意味で与える波及効果が非常に大きいことが期待をされますので、せっかく始まった事業がきちっと地元に根付いて、また、ビジネスとしても継続できるような、しかも長いこと地域の産業として根付いていくように、さまざまな応援をしていくということが、今、私どもに課せられた仕事だというふうに思います。

 この間のいろいろな紆余曲折に基づく懸念ということは、この事業が順調に動いていくということによって当然払拭されていくことになると思いますので、そのことに全力を挙げて取り組んでいきたいと思っています。

郵政再編
(吉川:テレビ高知記者)
 次に郵便局の再編の件ですけれども、先日、再編計画が正式に発表になりまして、県内でも27集配局が無集配化されることになりました。郵便局側は、ユニバーサルサービスの低下は絶対にしないというふうに強調していますけれども、再編計画をご覧になって、どんなふうに対応といいますか、お考えになっていることがあればお聞かせください。

(知事)
 郵政公社というふうに形態を変えて事業の見直しをしていかれる中で、人員を含めたさまざまな見直しが出てくるということは、ある意味避けられないことだというふうに思います。

 私たち地域を預かる者としては、サービスをいかに低下をさせないかを、どのような形で郵政公社に働き掛けていくかということが大切な点だと思います。

 この全国的なサービスということに関しては、今お話がありましたように全国一律のサービス水準を落とすことはしないということを言われておりますが、それが、どうやって具体的に保たれていくのか。

 また、その際に細かいことであってもサービスとして、土日のことだとか、さまざまなことがあると思いますけれども、そういう面でサービスとして、従来よりも低下する懸念のあるものはどういうことなのか。

 また、それを補うためにどんなことを考えているのかというようなことは、そろそろいろんな準備も煮詰まってきているところだと思いますので、あらためて、私自身がということではないですけれども、県としてきちんと郵政公社の四国支社のほうにもお話をして聞いていきたいというふうに思っています。

全国知事会と国への主張の届け方
(吉川:テレビ高知記者)
 代表質問として最後になりますが、島根県での知事会がこの間ありました。

 その中で、具体的な政策の提案ですとか、そういうものができなかったということで、「闘う知事会」という方向性が薄れているんじゃないかという向きもあると思うんですけれども、そのへん、どんなふうに受け止めていらっしゃるかということと、今後、高知県としての意見を国に訴えていく方法として、どのように主張を続けていこうと思っていらっしゃるか教えてください。

(知事)
 具体的な提言というのは、何年ぶりだか忘れましたけれど、地方自治法に基づく知事会としての意見書も出して提言をしています。

 その中に地方共有税のことなど、さまざまなことを七つの項目として具体的に提言しておりますから、具体的な提言がないというのは、受け止めとして私はおかしいと思います。

 ただ、その梶原さん(前全国知事会長)のときの知事会と比べて雰囲気が違うということは、そのとおりです。

 けれども、その梶原さんのときに喧々諤々(けんけんがくがく)やったのは、三位一体の改革というものに、まだ、ある意味希望もあり、闘いがいのあるものだということをみんなが感じていた時期ですし、また、3兆円の税源移譲というときに、「その補助金、負担金でどの部分を」という投げかけを国から受けて、地方の受け止めとしてはできるものなら出してみろと、こう突きつけられたようなテーマだったと。

 それに対して、それならば、いろいろな意見の違いはあっても議論してまとめていこうじゃないかという、大きな到達点、目標というものが明確でしたので、それだけ熱の入った議論になっていたということだと思いますが、今回は、もう既に三位一体の改革をそれなりに評価するという声ももちろんあるわけですけれども、私などが見れば、ほとんど評価に値しないような形で三位一体の改革というものが進んだと。

 それでは、その中でどうやってその後、闘っていくのかということに梶原さんのときにも私も質問をして、具体的に闘う手段というのはないということになっているわけですけれども、そのモヤモヤした思いというか、なかなか闘いたくても闘う手段を持たないという、その弱みというものを乗り越えられないと。

 そこに大きな違いがあるのであって、特段、その知事の姿勢が後退しただとか、守旧派がまた声高になったというようなこととは事情が違うというふうに思います。

 闘っていくということを考えれば、この間、前々回の知事会のときに私も発言して、今回自民党総裁選の候補者などにある程度の質問状を出して、というようなことも取り組むようになりましたけれども、もっともっと、来年、さまざま行われるような地方から国レベルの選挙というものを踏まえての政治的な取り組みというものをやっていかない限りは、なかなか本当の闘いにはなっていかないだろう。

 ただ、やっぱり知事会という組織の生い立ち、また、その組織の持っている性格からいって、正面からその政治的な闘いを挑んでいくということはなかなかしにくいという、これまたモヤモヤというか、割り切りのつかない思いというのが、あの2日間の知事会に凝縮というのか、露呈というのか、しているのではないかというふうに思いました。

(吉川:テレビ高知記者)
 幹事社からは以上です。皆さん、質問をお願いします。

室戸海洋深層水タラソテラピー施設(2)
(畑本:読売新聞記者)
 先ほどのウトコディープシーテラピーですが、この事業が順調に進んでいくことで、高知県の企業立地に対する懸念が払拭できるというお考えですが、事業が順調に動いていくために、経営見通しというのを県では推定はされているんでしょうか。

(知事)
 経営見通しというのは、県として立てるものでもないと思いますし、県として具体的に何か経営の見通しを持っているというわけではありません。

(畑本:読売新聞記者)
 ウトコのほうから2年、3年、4年と、あるいは5年、10年というふうに、先々、どういうふうに集客数が変わっていってというような見通しを聞かれていたりするんですか。

(知事)
 私個人はそこまでは聞いておりません。当然、そういう計画を立てなければ、企業として、いろんな経営に踏み出すことはできないと思いますので、例えばこれだけの借金をし、これだけの従業員を入れて、これだけのものをつくって経営をしていけば、年間こういうふうな収支で、何年間で単年度の黒字を達成して累積(債務)を消していくかという計算は当然持っておられると思います。

(畑本:読売新聞記者)
 その企業が立てている計画、見通しを、県が聞き取るということはあまりないですか。

(知事)
 いや、私個人がこの場で答えられるかというと、それは別に聞いておりませんということで、それは、担当部のほうに聞いていただければ分かることではないかと思います。

(北村:高知放送記者)
 ウトコのことなんですけども、議会のほうから透明性の確保とか、そういう説明責任にかかる付帯決議が可決されましたね。これについては、知事はどのように受け止めて、どのように対応、改善していかれるか、教えてください。

(知事)
 改善、対応というか、透明性というのは当然のことで、今回のことでも十分貫かれていると思いますので、何か改善することがあるかというと、そういうことではないと思います。

(北村:高知放送記者)
 今回問題になった原因の一つには、着工してからの議案提出というものがあったと思うんですけど、そのあたりの手続きの見直しとか、そういうものは考えておられませんか。

(知事)
 見直しになるかどうか分かりませんけれど、着工してからいろいろ議案を諮るということが全くないわけではないですし、企業誘致というのは相手の企業とのかかわりと交渉の中で進んでいくものですから、あまりしゃくし定規に考えたら、高知県のように大変厳しい経済環境の中で、企業を誘致したり、雇用を確保するということはますます難しくなるということは、県民の皆さんが全員念頭に置いてからこの問題はぜひ考えてもらいたいとは思います。

(竹内:高知新聞記者)
 ウトコの話ですが。今後地域に根付いていくよう応援していくことが課せられた仕事だと。その具体的な応援要請とか、あるいは県が今後こういう応援をしていこうということが、何か具体的にあるんでしょうか。

(知事)
 応援要請はありません。
 それから応援ということで言えば、それはやはりいろいろなPRをしていくということだと思います。

 たとえば、コンベンション協会を通じて航空会社等のいろんなキャンペーンなり、広報なりに乗せていくとかですね。そういうものを単発ではなく継続的に続けていく。

 また、極めて抽象的な言い方にはなりますけれども、さまざまな宣伝媒体に、これは雑誌から何かでいろいろありますけれど、単に広告ということではなくて、取材なんかで取り上げてもらうと。そういうことをいろいろな機会に働き掛けていくということは、県として支援できることとして挙げられると思います。

(原:日本経済新聞記者)
 ウトコの件があってからも、例えば(株)ジェーイーエルさんの進出というような話がありましたけれども、その後の企業誘致で、一度決まった補助率が下がったことによって何か支障が出ている、あるいは、進出を考えている企業から「そのへんは大丈夫なんですか?」というようなことを聞かれたということは、知事に直接ではなくても担当部署のほうであるんでしょうか。

(知事)
 私に直接はありませんし、それから担当部署にそういうことがあったという話もこれまでのところ報告としては聞いたことがありません。

 少し誤解を招くかもしれませんけれども、まだ、そんなに全国的にマイナス要因の大きな話題として取り上げられているというわけではありませんので、ご質問のような意味でのダメージにはなっていないと思います。

 そういうときだからこそ、スタートした事業をいかに順調に進むようにいろいろな形で支援をしていくかということが大切なときではないかというふうに思います。

(原:日本経済新聞記者)
 先日の植村さんが話されているところに私もいたんですけれども、直接的な言葉は使わなかったんですけれど、言外に撤退も考えたというふうに取れたんですけれども、直接「撤退するかもしれないよ」という話というのは、知事にあったんですか。

(知事)
 あとになって私は聞いています。

(原:日本経済新聞記者)
 あとというのはいつですか。

(知事)
 (植村さんがインタビューを受けていた)あの日〔7月10日〕です。

(原:日本経済新聞記者)
 じゃあ、そこまでは・・・

(知事)
 あの日か、あの前日の電話かまではちょっと明確に覚えていませんけれども、「2月の時点では、そこまで含めて考えました」というお話は伺いました。

 ただ、既に35人の方の雇用ということを決めて、その方々にご説明をしているし、研修もしていると。

 ここで撤退ということになると、社員になってくださった方々への企業責任というものをなかなか果たし得ないのではないかということなので思い悩んだというお話は伺いました。

排出権取引
(畑本:読売新聞記者)
 ウトコ以外ですが、4月に県が発行された『森の力』という冊子がありますね。

 あの中で、知事がずっと公約に挙げられていた森林整備によるCO2排出権取引という話が含まれていて、びっくりしたんですが、これは京都議定書で定められている排出権取引ということで、まだ国内の取り引きというのはないですね。

(知事)
 ええ、ないですね。

(畑本:読売新聞記者)
 あの中で認めているCO2吸収認証というのは、県独自のものだとお聞きしているのですが、それは企業にとってはイメージアップにつながるものだと思うんですけれども、京都議定書の枠組みに入れられるのか、入れられないのかを含めて、構想をどういうふうに実効性のあるものに変えられていくんでしょうか。

(知事)
 それはまだ道筋として明確なシナリオがあるわけではありません。

 けれども京都議定書に基づく森林吸収の排出権取引への進展というものを待っていますと、なかなか時間もかかりますし、具体的にどういう進み方になっていくのかも分からないという中で、一方では、今もちょっと言っていただいたように企業のイメージアップということに、森林吸収による炭酸ガス削減への貢献ということが使っていただけるというふうには思いますので、まずは、そういうことを県として何らかの数字的な根拠に基づいて公表し、それを認証していく。

 それを県の認証として企業に活用していただくということが、そもそも企業にとって何らかの魅力になるかどうかということですね。

 企業にもお聞きしていかなくてはいけないので、お聞きしていくためにはメニューに挙げてお話をしていかなくてはいけないという、それぐらいの段階です。

 まだまだ具体的にそれは国際的に行われているような排出権取引の証券化とか、そういうところを見通して、こういう形でできるんじゃないかというところまでいっているわけではないです。

地方交付税
(岡林知永:高知新聞記者)
 今日、午前中の閣議のほうで普通交付税の配分額が確定したということで、本県の場合は、県の配分が臨財債を含めて1.9%の減少とか、市町村分も含めて微減にとどまったようなんですけれども、今回の交付税の配分の決定を、知事としてはどう総括されているかということを、まずお聞きしたいんですが。

(知事)
 ごめんなさい。今日の閣議決定の細かい内容をちょっと報告を受けていませんでしたので、今、お聞きしたものに対する印象というか、考え方になりますけれども。

 今回は、ある意味、本県のように財政的に特に厳しい県に対して、それほどひどい状況にはならないんじゃないかという希望的な観測はもともと持っておりました。

 それは正直なところ、やっぱり来年の各種選挙というものをにらんだ政府与党としてのお考えということも当然あるだろうと思います。

 それから一方で、いろんなご批判があるにしろ、知事会等、6団体で力を合わせてこの問題に取り組んできたと。

 それと政治状況というものがかみ合ったということだと思いますが、結論として言えば、それで安心なんかとてもできる状況ではなくて、これはそうした特殊事情というものを踏まえてのいったん休止という段階ではないかと。この次、20年度以降に向けてまだまだ大変厳しいことが予想される。

 今は地方交付税についてのご質問ですけれども、地方交付税とも絡みますけれども、生活保護のことだとか、まだまだ医療制度改革にまつわることだとか、まだまだ残っている大きな課題がいっぱいありますので、そのことはある程度希望的な観測として予想できるとしても、全く安心できる状況ではないというふうに思います。

(岡林知永:高知新聞記者)
 それと関連しまして、地方交付税の話で言うと、新型交付税の導入検討ということが夏場に向けて具体化されるのではないかというような話がある中、知事は6月定例会の冒頭の報告で、他県とも連携して取り組んでいくというような形で、従来より一歩踏み込んだ形のお話をされたと思うんですけれども、夏場、もう梅雨明けも近くなってその時期にもなってきたと思うんですけれども、何か具体的な戦略とかを描いていらっしゃったりという部分はございませんでしょうか。

(知事)
 自分の頭の中で具体的な戦略を描けているというわけではありませんが、例えば、今お話のあった新型交付税の人口面積等(の基準)で(配分する)というものを、どういうような配分でどうやって分けていけばいいかというような具体的な提案だとか、それから国がよく言っておりますけれど、財務省寄りの方が言われるプライマリーバランス論、地方はプライマリーバランス、基礎的な収支が改善しているのに国がまだまだ悪化をしている、赤字であると。

 だから地方から削減をして国に回さなきゃいけないという論ですけれども、その論拠のおかしさということは指摘できるんだけれども、ではそれに代わる、何を目標に財政収支の改善していくのかということが地方の側から打ち出せていないわけですよね。

 ですから、冒頭のご質問にあった知事会での具体的な提案がないというのが、一般的に提案がないということで言えば、先ほど申し上げた七つの提言があるわけですけれども、例えば人口面積等(で配分する)ということにどう答えますかという投げかけをすると、島根の会議でも従来からの地方の立場を代表したような意見がずらずら、ずらずら並んで、自分も何か言わなきゃいけないかなと思いながら、そういうことを言うのも何となく気恥ずかしいなということがあって黙り込んでしまったというところがあります。

 要は、その人口面積等に対してどう答えていくかとか、プライマリーバランス論の問題点はいくらでも言えるし、明らかにおかしいと思いますが、じゃあ、これだけ国も地方ももうそろそろ1,000億円を超えるという借金を抱える中での財政の改善ということの目標に、どういうものを立てるんですかということを逆に国側から聞かれたときに答えるものを持っていない。そこをきちっと、ある程度詰めて考えておくことが必要ではないかと思います。

 知事会でも、知事会としてのシンクタンクを持ちたいという会長からの提案があって、今さらそんなものをつくってどうなるという意見がいろいろあったわけですが、私は会長自身が国と闘っていくときに、今の人口と面積(基準)というようなものに対して、地方はそれならばこうだと言える対立軸なり、それからプライマリーバランス論に対して、地方は総論目標じゃなくて、こういうことを目標にすべきだということをきちっと言っていけるものを持っていないために非常に会長自身も闘いにくいというか、知事会自身のモヤモヤにもつながっていると思いますので、そういう意味で会長が闘う材料を得たいということであれば、そういうものをつくって会長の指揮下でやればいいじゃないかということを言いました。

 このシンクタンク的な機能というのも、「ばかばかしい」とか「屋上屋を重ねる」ということはいくらでも言えますけれども、ここまでいろいろ突き詰めてきている中で、やはり地方としてのきちっとしたものを持っておく意味では必要ではないか。

 こういうものも先ほど言われた、自分一人の頭の中で何か戦略を描けるわけではないけれども、一つの道筋だろうというふうに思います。

 あと、まだ具体的にどうしたいかということではないですけれども、私の入っているもので言えば、加藤秀樹さんが代表をしている、構想日本系の「国と地方の税制を考える会」がありますし、それから新藤宗幸さんや西尾(勝)先生らが入っておられるもの〔分権型政策制度研究センター〕もあります。

 こういうところでやはりもう少し具体的な議論をしていくことが必要ではないかということを思っておりますが、既にもう夏だぞと言われましたけれど、まだ、具体的なところがなかなかできていないというのが現状です。

(岡林知永:高知新聞記者)
 あと、知事会から具体的な提言という形で6月に意見書を出しましたよね。あれに対してほとんど国からはゼロ回答という形でしたが、それについてはどうお考えですか。

(知事)
 そうですね。さっきから繰り返して言っておりますが、やはり政治的な力関係から言えばそうならざるを得ないし、本当は国の側にもっと本気で分権を進めて、分権型社会をつくるということが一つの国の改革の大きな柱だという意識があれば、そういうことを踏み出していかれるべきだと思いますけれども、もう、なかなかそういう思いを国全体として持ちえないという現状でしょうし、であると、今の国と地方との力関係の中で、地方にそれに対して何かをやっていくという、その闘う手段があるわけではありませんので、ああいうふうにならざるを得ないと。

 やむを得ないというのか、いかんともしがたい事態だと思います。

 それにやっぱり対抗していくには、地方としてこれを実現してもらわなければ困るという公約なりマニフェストというものをつくって、それを地方レベル、また国レベルの選挙で見ていくというふうな政治的な取り組みが地方としてできるかどうかと。

 ただ、今のその知事会とか、地方6団体という組織ではその成り立ちからいってもなかなか難しいだろうと。それをどういうような形で、さっき申し上げたような民間を含めたような有識者の会、それと有志の知事の会などでそういうことができるか、そういうところまでいけるかということだと思います。

 先ほど申し上げた有識者のグループのなかでも、地方交付税について、例えば加藤秀樹さんのグループというのは、加藤秀樹さん自身の考えがそうですけれども、もう財源調整ということは捨てたらいいんじゃないかと。財政調整は必要でしょう。
地域間の調整は必要でしょう。

 だけど、財源調整ということで地方はこれが必要なんですよという基準財政の考え方がモラルハザードやなんかを乗り越えることはもうなかなか難しいんじゃないと。であれば、そちらを捨てて、という考えを持たれています。

 そういうことに本県として、もちろんうちの財政課が「そうだ、そうだ」と言うわけはないわけです。私が政治的な立場でそこまで踏み込むかどうかとかね。

 そうなったとしても、そこに参加をしておられる知事さん、市長さんが、それに「よし、それでいってみよう」といっていけるかどうかというような前段階がありますので、難しいことはいっぱいありますけれども、もしやるとすれば、そういうような有識者やなんかの会で。

 今のは一例ですから、財源調整と財政調整は、ごく一般論として聞いてほしいんですけれども、そういうようなことを、政治的なアピールを立ててやっていくということがないと、なかなか闘いにはなっていかないだろうなというふうに思います。

県立病院の医療事故
(田中:高知放送記者)
 県立あき総合病院の医療事故の件についてですけれど、県病院局のほうでは、今も遺族の了解が得られないという理由で積極的な公表を避けていますが、取材者側からすると、遺族の思いを重要視するというのは非常に大事ですけれども、1年以上にわたって事故があったことさえも公表しないという対応というのはおかしいというふうに感じますが、その点について、知事はどのようにお考えでしょうか。

(知事)
 私もおかしいと思います。おかしいと思うけど、いかんともしがたいと言われると、なかなかその壁が破れない。非常に自分自身もなんとも割り切れない思いがします。

 いろんな医療事故が、あき総合病院でほかにもありました。それに対して病院内の人からも、病院局や知事さえ知らないんじゃないかと。関係者が伏せこんでしまっているのではないかと。

 そういうことだと、病院内では知っている人はいっぱいいるのに、病院のモラルにもかかわる。また、そういうことを公表してきちっと議論していかないと、なぜ起きたかとか、再発をどうやって防止するかということもできないというご指摘をいただいて、そのとおりだと。

 それはもう事故が起きて間もないころですから、かなり前なんですけれども、そのとき以来、ずっと病院局には投げかけをしています。

 たとえどこの病院だということが明確にならなくても、また何歳の方だとかが分からなくても、やはりどういうことが起きて、それで、どうすれば防げるかということが公開できない、議論できないというのは、個人情報保護といっても私はあまりにもおかしいのではないかということを思い続けています。ですからご指摘の点は私も同じ思いです。

 ただ個人情報の保護ということが昔以上に厳しくなっている時代ですから、そのことへの配慮とか、ご家族への配慮ということはこれまで以上に必要ですけれども、やはりいわれる公益性というものを実現していくためにこのままでいいかというと、絶対このままではいけないなと、制度的にも、仕組みとしてもということは思い続けています。

政策協議
(竹内:高知新聞記者)
 政策協議なんですけども、人件費をコストとして一度考えてみようじゃないかという、このねらいなんですけども、これは例えば、Aという部署の事業費がこれぐらいだと。それに対する人はこの人数ですねと。人件費はこうですねと。それをそのバランスを中心に今後人事異動なんかも考えていくとか、そういった発想なんでしょうか。

(知事)
 いや。従来人件費というものを事業費と同じようなコストとして十分意識していたかというと、決してそうじゃないんじゃないかと。

 で、単に予算だけで比率を比べるのではなくて、人件費込みのコストでそれぞれにかかる事業というものを見ていったときに、そのバランスがどうかと。

 そのバランスを見たときに、こうであれば事業費というだけではなくて、人の割り振り、人件費のことも含めて、もうちょっとこういうところを手厚くすべきではないかとか、いろんなことを考えるきっかけになるのではないかなと。

 今日の午前中にやった文化環境部であれば、文化を担うセクションと、環境を担うセクションと、それから県民生活とか安全というものを担う、大まかに分けて三つになるんですね。

 それを事業費で見たのと、人件費込みのコストで見るのとは、やっぱり比率に若干の違いが出てきます。

 そういう開きがこれからの時代に文化環境部が担っている仕事の比率として割り振りとしてどうかなというようなことを、マネジメントをされる部長なり課長なりが考えるきっかけになればなということを一つは思いました。

 それから、これからやるわけですが、例えば、港湾空港局であれば、港の背後地を売っていくという仕事を持っているわけですね。

 では、売っていくというのに、どれだけのコストをかけているのかというような、コスト意識を持って、例えば企業立地などと一緒にして、その人件費コストで考えた場合にどうかとかね。

 いろいろな発想の見方、切り方の違いというのは当然出てくるのではないかと。そういうことを、ぜひ考えてみてほしいなという思いもあります。

 そのほかにもさまざま思いがあるんですけれども、ただ自分自身のそういう思いがなかなか幹部職員にも伝わらないまま始まっておりますし、幹部職員も全くそこがどういう問題意識だろうという受け止めも進まないまま入ってしまいましたので、これからの部局でどうやって話を進めようかなと実は昼休みに非常に悩んでいたんです。

(竹内:高知新聞記者)
 幹部の中にも、例えば事業費の少ない部署で、多人数を抱えている部署があるとしたら、そういうところの幹部ってものすごく説明がしにくくなるというか、そういう思いを持っていないでしょうかね。

(知事)
 いや、だからそういうふうに受け止められているんじゃないかと思うんですね。だから人件費コストを考えるというと、コストを削減しろという意味で考えろと言っているんじゃないかと。そうでは全くないんですよね。

 事業費だけで、予算だけでものを考えるという時代からやっぱり人も資源としてということは、人件費見合いでの総コストというもので事業全体を見ていくという見方をしてほしいということで言っているのであって、人でやっている仕事だから多すぎるとか、そういう話とは全く違うんですけどね。

(竹内:高知新聞記者)
 そういうふうに取っている方も・・・

(知事)
 取っている人が相当多いんじゃないかと思われます。

(竹内:高知新聞記者)
 人減らし、金減らしになっているんじゃないかと。

(知事)
 そう、「これだけ人減らしをし、アウトソーシングだなんだと言い、なおかつ、また人件費コストでものを見るというのは何をしたいんだ」という受け止めだと思いますね。

(竹内:高知新聞記者)
 僕も最初に聞いたときに、またそうかなと。

(知事)
 ええ。そうではなかったんですけどね。もっとプラスの思考で、単に事業費というだけでなくて、人件費も含めた総コストで全体の仕事を見ていくと。そのときにいろんな自分の持ってる部なり、課なりの仕事、その中での割り振りというものが、もうちょっとやっぱり事業費は少ないけれども人件費コストも含めた総事業費はやっぱりもう少しあってもいい仕事だね、というようないろんな判断が働いてもいいんじゃないかなという思いなんです。

 もちろん、人件費がこれだけかかっているのに、プラスの効果がなかなか得られていないじゃないかという、マイナス面(の気づき)もあると思いますけれど、従来の事業費予算で物事を考えていくというのとは違ったものの見方というのが出ないかなと。何かの気づきのきっかけにならないかなと。

 三位一体の改革後のこれだけ厳しい現状になってきているところで、という思いだったんですけど、正直なところ、思いは十分には伝わっておりません。

県東部の活性化と公益性
(岡林直裕:高知新聞記者)
 今、知事のほうからあき総合病院の話で公益性という言葉がありましたが、実は、これからの県東部のことを考えていく上で、極めて重要なキーワードだと思います。

 もちろん公益性というのは、今までずっと言われ続けてきたことなんですけど、古くて新しいテーマなんじゃないかというふうにちょっと思うので、そこをちょっとお聞きしたいんですが。

 今回のタラソについても、執行部の答弁の中で公益性があるというお話がありました。

 端的に受け止めるならば、一つは県東部の今後の活性化という部分が公益性。その中には当然室戸という地域性も含まれた部分での県東部の活性化。もう一つは、室戸の海洋深層水事業。これへの取り組みという、この2点で、やはり公益性があるという判断だっただろうと思います。

 となると、実際に誘致ができたということになって、今後はその公益性をいかに県民に分かるような形で見せていくかという段階になってくると思います。

 県東部の活性化、それから海洋深層水事業、それについて、今後知事自身がどのように具体的に取り組んでいくのか。例えばそれを各部に指示されている状況であるとかですね。

 そういった視点というのが、タラソ施設だけでいくと、一つは問われると思うので、そこの展望というものがあればお伺いしたいんですが。

(知事)
 私は今言われた地域の活性化だとか、深層水産業のブランド化ということ以前に、35人の雇用というのは大変大きな公益性だと思います。

 企業誘致における公益性をはかる大きなポイントの一つは、私は雇用ではないかということを思いますので、その雇用が実現をしたということで、ある意味、十分な公益性はあるというふうに思います。

 特にその地域の経済状況ですとか、有効求人倍率ということを考えあわせれば、その公益性というのは非常に大きなものがあると思いますので、要は、その事業を持続的に経営できるようにさまざまな応援をしていくということが公益性につながっていくだろうというふうに思いますので、その次の段階として、その深層水全体のブランド化とか、それから地域の活性化ということでいえば、活性化というのは、やはりそれに基づいて定期的に人を呼んできて、そして、交流人口ということをもとに何らかの地域のものをまた売っていくというふうな仕組みをつくっていくということだと思いますので、それは従来から四万十ブランドでもいろいろやってきたような取り組みを、県として力を入れてやっていくということに尽きると思いますので、何か、それだけの特別なシナリオだとか、何か戦略があるということではないだろうとは思うんですけれども。

(岡林直裕:高知新聞記者)
 分かりました。ただ、今財政が非常に厳しいという状況で考えてみたときに、公益性というのが、ある一定の部分ではなくて、かなり広い分野にわたって県民の納得が得られる。

 すなわち、県がこういうものに取り組むことによって多くの県民に恩恵があるというようなものに、今後考えていかなければ、その公益性が一部の雇用ということは、これまではおそらくそれで良かったと思います。

 だけど、今後の状況から考えていったときに、さらに県政の位置付けの中で、もっと大きな公益性があるんだよといった展開というのが今後必要になってくると思うので、できれば、これはこちらの勝手な考え方なんですけれど、例えば、政策協議の話の中で各部に対して「じゃあ、君たちの考える公益性というのは何なの?」という問い掛けという部分を、実はそれぞれの部にしていくことが必要な状況になっているのではないか。

 それは執行部だけではなくて、一方に議会がありますので、そういった論点というのは整理していったほうがいいかなと思いますので、質問させていただきました。

 あと一点、別件ですみません。個人的なところですみませんが、夏休みのご予定はどんな感じになるかなと。

夏休みの予定
(知事)
 夏休みは毎年時期としては同じですけれども、(8月)14日に室戸で海洋深層水フェスタというのが毎年やられていますので、それに出て、その足で東京に行って15日の全国戦没者追悼式に出て、その後、休暇を取るというようにしております。

(吉川:テレビ高知記者)
 時間なので、よろしいでしょうか。
どうもありがとうございました。

(知事)
 どうもありがとうございました。

 


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