高知県警察本部の捜査費問題に関する知事コメント(記者会見での配布資料)

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

記者会見での配布資料

平成17年7月5日15時00分から(県庁二階 第二応接室)


 高知県警察本部の、捜査費をめぐる問題に関して、複数の警察関係者から、直接話を聞くことができた。その結果、今回問題になっている、国費と県費の捜査費だけでなく、過去には、公金の扱いとしては、明らかに不適切な処理があったことは間違いないとの心証を得た。ただ、そうしたことが、現在も続いているとの具体的な証言は得られなかった。

 この問題に関して私は、問題が発覚した当初には、正直を言って、もしそうしたことがあったとしても、正規の予算の枠では賄えない穴を埋めるための、必要悪の側面があったのではないかと感じていた。

 また、長く記者として、取材の現場を経験していたため、協力者などの情報源を明かすことはできないという、捜査費の持つ機密性を、理解しやすい立場にもあった。

 あわせて、もしこのことに、一線で捜査にあたる警察官が不満を感じているのなら、その声が、必ず自分の耳に届くだろうと思っていたが、そうした声は一件もなかった。

 さらに、その後の経過を見てきて、宮城県のように、警察本部との行き過ぎた対立を作り出すことは、捜査官の士気の低下などを含めて、決して県民全体のためにはならないと感じていたので、何か、他の方法はないかと悩み続けてきた。

 と同時に、そもそも、警察内部の問題なので、直すべき点がある場合には、まずは、県警本部みずからが襟を正して、県民の皆さんに出直しを誓うべきではないかと考えて、そうした働きかけも試みていた。

 ただ、そのためには、もう少し具体的な証言を手に入れたかったので、関係者へのさらなる接触を求めてきたが、そのことが十分に進まないうちに、議会の手をわずらわすという事態になってきた。

 また、私の家族のプライベートな問題で、警察にものが言いにくい事情があるのではないかといった、事実無根の噂までが、まことしやかに語られることに対して、かねてから、弁明の出来ないもどかしさを感じていた。

 このため、もう少し時間がほしかったと言う正直な思いもあるが、県議会でのご意見を踏まえて、県民の皆さんの思いをくむ時、みずからが、これまでの態度を改め、一歩踏み込んだ取り組みをすべきだと考えて、監査事務局に特別監査を請求することにした。
 
 
 

 以下、関係者からの聞き取りの結果をまとめた。

1 警察の予算の中で、過去、“裏金”づくりに使われたことがあると指摘された費目には、以下の5つがある。

 (1)報償費(国費捜査費、県費捜査費、職員表彰金)
 (2)旅費(国費旅費、県費旅費)
 (3)交際費(弔慰金など)
 (4)需用費(修繕料、燃料費など)
 (5)食糧費
 

2 費目ごとの証言

 (1)報償費
  (イ)国費捜査費や県費捜査費
「次長などが、事前に電話帳などから拾い出した住所と氏名をもとに、下書きを作ったうえ、近くの警察署、場合によっては遠くの警察署にも出向いて、その署の次長などを通じて、その警察署に勤務する職員に書いてもらった」

 「新しい法令の説明などのため、毎月開かれる教養日に、次長の作った下書きをなぞって、集まった職員に領収書を書かせた」

 「このようにして作った領収書のうち、およそ半分には、署内で保管している印鑑を押す。残りの半分には、相手方に捜査費を手渡した時、印鑑を持っていなかったので、押印出来なかったとの奥書をつけて、有効な領収書として扱った」

 「内部通報者との連絡場所に使う、アジトを作るためのアジト費についても、架空のアジトを作ったうえ、その署に勤務する職員などに領収書を書かせたことがある」

 「警察庁の監査に備えて、アジトの建物の所在地をはじめ、室内の間取りや調度品について打ち合わせたうえ、では、こういうことで行こうといった話をしたことがある」

 いずれの証言も、古くは昭和60年前後、新しくても、平成に入って間もない頃のことなので、過去には、“裏金”と言われてもいたしかたないような、不適切な処理が行われていたことは疑いないが、現在も、このようなことが続いているとの証言はない。

 逆に、平成13年度から、あらかじめ登録された捜査員には、月額5000円が支給される、諸雑費の制度が導入されたことによって、その分は、執行の適正化が図られたとの証言がある。

  (ロ)職員表彰金
 「表彰を受ける職員の数を、水増しした表彰者名簿を作って、水増し分には署で保管している職員の印を押して、差額を浮かせていた」
    
 これも、10年以上も前の経験に基づく証言だが、現在は、500円相当の記念品を贈呈しているので、こうしたことは出来なくなっている。

 (2)国費旅費・県費旅費
「以前は、警察の裏金の大半は、国費と県費の旅費から捻出した」、「昔の話だが、国費の旅費は、本部から各警察署に随時配分された金額のうち、20パーセントを署に残して、残りの80パーセントは本部に戻していた。このため、その分は、空出張の命令簿を作ったが、出張中のはずなのに、捜査で超過勤務をしているといった齟齬を、監査で指摘されて困った覚えがある」

 これもまた、10数年から20年近く前の話を証言されている。さらに、国費旅費も県費旅費も、10年余り前に、支給の方法が、金融機関への口座振り込みになったうえ、精算書に、ホテルなどの領収書の添付が義務づけられるようになったため、旅費で裏金を作ることはなくなったとの証言がある。

 (3)交際費
 「新聞の死亡広告などから、適当に選び出した名前を、協力団体の関係者のように装って、支払い証明書を清算書に添付した」

 これもまた、平成の初め頃の体験談で、現在は、このようなことはしていないと考えられる。

 (4)需用費
 「昭和62年ごろまでは、実際の請求額より多い請求書を業者に書いてもらって、支払いが終わった後、業者から現金をキックバックしてもらっていたと先輩に聞いた」

 これも古い話で、現在は、このようなことはないと考えられる。

 (5)食糧費
 「官官接待が廃止になるまでは、協力団体などとの架空の懇談会を設けて、裏金を作っていた」、「職員の飲食代をつけで残しておいて、ある程度の金額がたまったところで、店に請求書を書いてもらって公金を支出する、通称“こなし”と呼ばれるやり方もあった」

 官官接待の廃止前の話なので、かなりの年月が経っている。 
 
 

3 証言を受けて

 以上の証言などを総合すると、過去には、本部から警察署までの幅広い範囲で、しかも、捜査費だけでなく、いくつかの費目にわたって、“裏金”づくりにあたる、不適正な会計処理が行われていたことは、疑いようがない。

 しかし、これらに関する証言は、10数年前など、いずれもかなり以前の経験で、今もなお、このようなことが行われているとの証言はない。

 また、このようにして浮かした資金の使いみちに関しては、「安全協会や防犯協会など、協力団体との懇親会が開かれる時、参加する警察官が、個人で分担金を支払うことがなかったため、幹部が裏金から出したのだなと思った」とか、「冠婚葬祭が多くて、交際費で賄えない時に、不足額を捜査費などの裏金で補填した」といった証言はあったが、それ以上のものはなかった。まして、個人の私腹を肥やすために使ったといった話は、具体的には全く聞かれなかった。

 しかし、その一方で、裏金問題に関して、そのようなことは全くないと言い切ってしまう姿勢に、自らが関与してきた経験と照らして、違和感や葛藤を感じる関係者がいることも確かだ。

 また、会計検査院の検査の前に、警察庁の職員が高知県を訪れて、検査に備えての予備監査や、リハーサル的なことを実施していたことをとらえて、警察庁も、捜査費が裏金として使われていることを、認識していたはずだと受けとめている人もいる。
 


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