財政危機への認識に関する知事の説明

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

財政危機への認識に関する知事の説明

平成16年7月議会で知事が提案理由説明をしました“財政危機”につきまして、平成16年7月13日に知事室で行われた記者会見記録の抜粋です。

(記者)
 なぜこの時期に(財政危機への認識を)発表されたのか。どのあたりが、これまでにない内容なのか。あわせて、具体的にどんな内容を考えているのか、教えていただきたい。

(知事)
〇なぜ今の時期か
 なぜ今の時期かというのは、三位一体の改革の初年度の姿というのが、県や市町村にどういう影響を与えたかということが具体的に数字でつかめた、また、一定の将来予測をそれに基づいてすることができた。それを受けていまの時期にということになります。
 それから、あわせて9月くらいから経済財政諮問会議を通じて、国の方でさらに国と地方との関係、財政の問題(注:三位一体の改革のH18までの全体像)について詰めた議論が進められるという予定になっております。その時期にはより具体的な形で地方の実情を訴え、また地方として取り組まざるを得ない方向性を打ち出すことによって国にも広く、また国民の皆様にもアピールをしていきたいと思っておりますので、そのいわば前段、スタートとして今のこの段階で、7月議会の冒頭に、提案説明の中で説明をしたということです。

〇何が新しい点か
 何が新しい点かというのは、ひとつは財政再建団体への転落が目前に迫っているということを表現として使ったという点、もうひとつは人件費についても検討の課題にしていくということをより明確な形で申し上げたという点ではないかと思います。
 最初の財政再建団体ですけれども、詳しいことは省きますが、だいたい高知県の場合には100億ほどの赤字(決算)が出てしまうと、それで、財政再建団体となり、(財政運営が)国の管理下におかれて、自由な事業ができなくなる。今日の提案説明の例で挙げたものでいえば、30人学級ですとか、またプロ野球のキャンプですとか、国の基準を越えて県独自で取り組むという事業とかがほとんどできなくなって、県民の生活にも大きな影響を与えるということになります。

 どうしてこういう事態が目前に迫っているといえるかといいますと、236億の財源不足が出たわけですが、今後、この財源不足が、地方交付税や臨時財政対策債の削減ということの予測の中で(今年と)同じくらい(の規模)で毎年毎年出てくるか、またはもっと大きな削減が出てくるかということが予測をされております。

 これに対して県が持っております、非常用のというかですね、隠し財産的なもの、例えば退職手当のための基金ですとか、その他の一定目的の基金、また会社の株券、そして遊休の財産こういうものをあわせても260億円余りしかありません。しかも、これらを取り崩して使ったとしても、1回きりの数十億の財源不足に対応するということしかできません。これを、毎年毎年出る二百何十億の財源不足に対応するとすれば、流用だけでは足りない。

 つまり、いま実施しています投資的経費、さらには経常的経費、また、義務的な経費まで踏み込んでいかなければいけないという事態になりますので、そういう危機感を県の職員、また県民の皆さんにも共有をしていただきたいという意味で、財政再建団体への転落は目前に迫っていると申し上げたのが新しい部分でございます。
 もうひとつは、人件費のことですけれども、今年度当初の予算のうち、使途があらかじめ決められていない一般財源がどのように使われているか、これを裁量的な(裁量性のある)経費と義務的な経費とに分けますと、義務的な経費が82パーセント余り、裁量的な経費が17パーセント余りというぐらいの比率でございます。

 財源不足にあたる236億というのはですね、同じ一般財源に占めるパーセンテージで見ますと7.9パーセントくらいですので、要は、一般財源のうちの裁量的経費のさらに半分近く削らなければ対応できないと言うことになりますので、とても裁量的経費だけではできない。つまり、義務的な経費をもう一度見直さなければいけないということを考えたときに、人件費ということは非常に大きな課題になります。

 本県ではここ5年間に2パーセントずつ(トータルで10パーセント)職員を削減するという計画を既に実行に移しておりますので、職員の人件費はなだらかに下がってくるというグラフになります。ところが、退職手当のことを考えますと、18年度から19、20年度と退職者が増えていく。その退職手当の支払いによって人件費の削減の努力が消えてしまうという状況になりますので、こういう中で、投資的な経費だけを削って対応することは、県民のご理解をとても得られないということから、人件費を視野に入れるということをより明確な形で申し上げました。

 ただ、最後の結びにあった具体的な数字は、今後の8月の10日前後に国の人事院勧告が出されて一定の今年の方向性というものが出て参ります。そういう方向性を見て県としての具体的な方向というものを検討していこうということで、今の段階で何パーセントということを踏み込んで検討していくわけではございませんし、議論する時期でもございません。

 その他ということでいえば、やはり職員の人件費のことも視野に入れて取り組まなければなりませんので、職員の皆さん方にも逆にいろんな選択肢を広げなければいけないだろうということで、勧奨退職の年齢ですとか、また、上限率というものを広げていくと言うようなことも具体的に検討しておりますし、少し違った意味合いですけども、職員の人がもっと自由にいろんな研修やなんかをですね、具体に技術の習得を目指すのであれば、そういう形で新しい知識・経験を身につけるそういうチャンスを広げるなどのこともやっていきたい、ということを思っております。

(記者)
 執行部に聞きますと、これは「財政危機宣言」との認識だとお伺いしたんですけど、知事の認識も同じですか。

(知事)
 「財政危機宣言」です。ただ、本当の意味での財政危機宣言ということであればですね、抽象的じゃないんですけれど、これからの状況がどうなるかというシミュレーションなんかだけではなくて、具体的にそれはどういう形でそれに対応していきますかということをもうちょっと示さなければいけないと思います。

 そのためには、いま申し上げた人件費の見直しの具体的な内容だとか、投資的な経費に対する見直しだとかいうことへの具体的な内容をお示しをして、県民のみなさんのご理解を、ご議論をいただくということが必要ですので、そのことはもう少し後、9月になるということになりますが、いまから方向としてはそういう方向に行かざるを得ないという意味の財政危機宣言ということになります。

(記者) 
 具体的なお話は、9月議会ぐらいには出したいということで。

(知事)
 そのとおりでございます。議会の場が最初の説明の場になるか、なにか別の形で行うかは、国の動きとの関係もありますし、うちとしての準備の進み具合もありますので、いまの段階ではどの場を使って具体的な内容を最初に明らかにするかということはまだ決めておりません。

(記者)
 財政再建団体に陥ると、県が今後とる施策が現状と比べて厳しくなるというのを、どの程度想定しているのか。まして、これから県民生活にも影響を与えるというのは、どの程度の犠牲を想定しているのか。

(知事)
 さきほど申し上げたとおり、それを申し上げるからには、県の側もどれだけ汗をかくのか、血を流すのか分かりませんけれども、スリム化をしていくかということをお示ししないと、サービスの側だけ県民のみなさんにまたご負担をかけますよと、いう一方的な部分だけを申し上げるわけにはいきませんので、それは、あわせて9月にきちんとお示しをしていきたいと思っております。

(記者)
 対外的な対応についてですが、例えば高知県が議会に言われたようなことを明後日の知事会議でですね、各県から意見が出されると思うんですけど、高知県として、これだけは主張するというものはあるんですか。

(知事)
 いろんな議論があります。庁議で、財政再建団体の話に対して、財政再建団体の基準が少し厳しすぎるのではないか、もう少し、各県、各自治体同じような状況であれば、それを緩和するとか、いうのが当面の仕事ではないのか、という意見も出ました。

 ただし、それに対しては、これだけ厳しい財政状況の中で、金融機関などになお地方債を引き受けて頂いているのは、いざとなったら、財政再建団体という形で、国が管理をするのできちんと回収できますよと、償還はされますよという保証があるからだ、それを緩和してしまったら、はたして、市中の金融機関にですね、地方債を引き受けていただけるのかという議論もございました。

 そんなことも踏み込んで議論をしていくと、いまの段階で各県と連携をして何かの動きを始めるというようなところまで具体的な考え方には至っていません。


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