公開日 2007年12月08日
更新日 2014年03月16日
知事の緊急記者会見(モード・アバンセへの融資に係る高松高等裁判所の判決を受けて)
平成17年7月12日18時45分から(県庁二階 第二応接室)
判決を受けての知事コメント
率直に言って、これほど重い判決が言い渡されるとは、思っていませんでしたので、すぐには、コメントをする言葉が見つかりません。
ただ、この裁判の経過にかかわらず、県としては、すでにこのような問題を二度と起こさないよう、特定の個人や団体への毅然とした対応をはじめ、徹底した情報公開と、県民の皆様への説明責任を基本にした県政改革に取り組んできました。
今後は、この厳しい判決を胸に刻んで、さらなる県政改革に取り組みますことで、県民の皆様に、信頼される県政をつくっていかなければならないと考えています。
(味元:県広報課長)
先ほど知事のコメントをお配りしましたが、この会見はそのコメントを踏まえて皆さんのご質問にお答えするかたちで進めたいと思います。よろしくお願いします。
(竹内:高知新聞記者)
今回の判決で、県として進めてきた仕事が公益性が低いというふうに判断をされたわけですが、職員の間には「これから政策判断に関わるような仕事はもうしたくない」とか、あるいは「経済的なリスクを伴うような政策を進めるのは嫌だ」というふうな、非常に萎縮した声も聞かれるわけですけれども、知事自身この判決が県職員に与える影響というのはどのようにお考えですか。
(知事)
必要な政策判断を回避するとかいうことにつながる判決ではないというふうに思います。
私たちはあくまでもやはり公益性ということを考えながら、また公金をお預かりをしていろんな政策を運用していくという立場から、さまざまな政策判断というのは当然していかなければいけないことだということを思います。
このモード・アバンセの事件を踏まえて県庁の中で議論をして、6項目の県政改革へ向けての取り組みというものを誓い合いをしました(※1)けれども、その(政策判断などの)プロセス、過程にあたって、「情報公開を徹底していく」とか「政策決定のプロセスを県民の皆さんにきちんとお知らせをしていく」とか、また「情報そのものを一つの課、一つの部だけではなくてなるべく共有できるようにしていく」とか、そういうことを徹底していけば、今おっしゃったような問題点というのは十分回避できるのではないかと。
やはり情報公開への取り組み、説明責任への取り組みというものが非常にまだ希薄だった、そういう時代に起きた誤りであったということを思います。
(竹内:高知新聞記者)
情報公開であるとか、意思決定のプロセスを県民にできるだけ明らかにするということは、当時とは今は違うんだという自負はおありですか。
(知事)
それはそうですし、私は正直なところ判決そのものをまだそんなに細かく読んでいませんけれども、1審以上に議会に諮っているかどうかということは重く判断の材料として取り入れられていると思います。
それは一つの手続き上当然のことだというふうに思いますけれども、従来の法制度からいっても手続き上一般の県民から見て当然だと思われることだけではなくて、県庁の中でのいろんな意思決定のプロセスというのはこれまで以上に県民の皆さんには明らかにするかたちになっておりますし、また、そういうことに自負があるかと言えば、前よりもずっとそういう意味での県政改革は進んできたという自負はございます。
(岡林:高知新聞記者)
コメントと重なるかもしれませんが、率直な感想をお聞かせいただきたいと思います。
今回の判決を、どこで、どの時点でお聞きになられて、その時にどういった印象をお持ちになられたというところから。
(知事)
(午後)2時ぐらいだったと思いますけれども、東京で仕事中、車の中で県庁の秘書課から一報を受けました。それが最初に判決を聞いた時です。
その時の印象は、率直に言って、自分が考えていなかったような非常に重い判決、厳しい言い渡しだったというふうに思います。
こういう判決を受けて、県民の皆さん方が受け止められる思い、また3人の被告となった元職員、この事件に関わったその他の職員、そうではなくてこの事件をずっと見てきたその他の職員。そういういろんな人の思いというものに気持ちを馳せると、つらいという思いに尽きるような気がします。
言葉ではなかなか説明できないというか、理屈や論理で申し上げられるようなことでは全くありません。
正直いろんな思いが重なり、また県民の皆さんから職員まで含めて、皆さんに対して自分自身の立場で非常につらいという思いがいたします。
(竹内:高知新聞記者)
先ほどの「つらい」というお答えとこれも重なるかもしれませんけれども、やっぱり一緒にお仕事をされてきた3人の幹部の方に対する判決が、執行猶予と実刑とで全く重みが違うと思うんですけれども、3人に対する思いというものを。
(知事)
これも今申し上げた言葉に尽きるんです。修飾語だとかいろんな言葉を飾ってそれ以上言うと、もしかすると自分の本心と遠ざかってしまうといけないという気持ちさえします。もう正直なところ「つらい」という思いに尽きます。
(浜田:高知新聞記者)
「考えていなかったほど厳しい判決だった」と受け止められたと思うんですが、一定の見通しというのは知事自身の中でどういう根拠でどういう見通しをある程度持っておられたんですか。
(知事)
見通しは何も持っていません。
(浜田:高知新聞記者)
それと比べた上で、厳しいということを――
(知事)
そんな論理的なものではありません。
ただ1審判決と、その後の状況だとか、またこの裁判の最後のところにも書いてありますけれども、「これまでこうした行政がからむ融資で実刑に問われたことはない」うんぬんというふうな、いろんな過程というものを踏まえた時に、実刑というふうなことまでは全く自分は想定をしておりませんでしたので、それは別に何かの情報で自分の一定の考え方を持って、それに比べてということではありません。
(竹内:高知新聞記者)
きょうの判決、主文言い渡し後に中西副知事が臨時部局長会議を開催されたわけなんですけども、この判決を受けて、知事ご自身が職員さんに、あるいは幹部職員なりほかの職員に何か語りかける場をつくろうというふうなお考えは現在おありですか。
(知事)
いえ。今時点で、いつ・どういうようなかたちで語りかけるということは考えてはおりません。
ただ、きょう出張から帰ってきてそのままここに参りましたので、このあと幹部職員とも話をして、県庁の職員の受け止め方だとか動揺だとかいろんなことがありますので、そういうことを踏まえた上で、今ご指摘の点は考えてみたいということを思います。
(亀岡:朝日新聞記者)
公益性の観点で、1審よりもちょっと狭く捉えたというふうに言えると思うんですけれども、それに対して、もし知事としてお考えや受け止め方があれば。
(知事)
今おっしゃったような判決かどうかというところは、ちょっとよく読み込まないと分かりません。
事実認定の違いということがあるので、公益性を狭く判断したからということにウエイトのある判決かどうかというところはちょっと自分にはまだ分かりません。
(釜本:時事通信記者)
行政が関係した融資に違法性が問われたことはこれまでにないということも、先ほど知事が、判決がどうなるかという考えに思いを巡らせた時にそういう一つの要素であったという話がありましたけど――
(知事)
いや、そうではないんですけれども、判決文の最後にありましたから。
そんなに一つずつ論理的に理由を積み重ねて、こうだろうな、というふうに考えたのではないけれども、判決でも言われているようなことというのは、よく考えれば一般的にそういうような捉え方というのはあるだろうから、そういうことから言えば実刑まではないかな、というふうに思っていたということです。
(釜本:時事通信記者)
今回のような行政の施策が背任にあたるという裁判が過去にほとんど例がないということで、かなりそういう点で判決の持つ意味というのも大きいと思うんですけれども。
この判決を読む限りでは、一つの読み方としては、モード・アバンセという事業が少々特異というか、融資をするにはあまりにもずさんな状態だったのではないのか、という点が一つと、行政としては施策という二つの見方があると思うんですが、知事がモード・アバンセという事業を今振り返ってみて、どのように見ているのか。もしくは今後、県の施策に与える影響について。この二つをお願いします。
(知事)
前段の質問はちょっと、今の時点でどう振り返ってというところは、緻密に調べて考えたわけではございませんのでお答えをしかねます。
それで、今後というのは、別にこの判決を受けてということではございませんけれども、あの問題が起き、そして元職員が逮捕され起訴されるという、ずっとこの一連の経過の中で、先ほど申し上げたような県庁の中での県政改革に向けての議論をして、そして6項目の意思統一をしてきて、それを一つずつ実行に移してきたという経過があります。
今回の判決ということで言えば、やはり年月が経つにしたがって風化という言葉はふさわしくないかもしれませんけれども、だんだん事件が日々遠くなるということをもう一度引き戻していただいて、私たちがこの問題を自分たちのこれからの課題として捉えて県政改革に取り組むという、大きなきっかけになったというふうに思います。
(釜本:時事通信記者)
今回実刑という重い判決でしたけれども、いわゆる背任で県が被った損害という部分に対しての求償とか賠償という話も出てくるかと思いますが、現状のお考えはいかがですか。
(知事)
それは別に、実刑だ、猶予がついたということとはあまり関わりのないことだと思いますし、まだ3人の方々が上告審についてどうされるかということが分かりませんので、今の時点では何とも申し上げられません。
(岡林:高知新聞記者)
前回の1審判決の時に同じような記者会見がありまして、知事がお答えになっている部分で「同和対策事業と行政の融資のあり方」という部分について「県の仕事の公益性や民間企業との性格の違い。
県の同和対策事業が果たしてきた役割などについて相当配慮されている」というかたちで、一定知事は分析されています。
今回、知事の元に要旨のほうは届いていると思いますが、当然会見を開くということですので、そういう部分を考えてみますとこの同和対策事業の部分と行政の融資、今回の判決を受けてこの根本のところをどういうふうにお受けとめになられたんですか。
(知事)
これは直接裁判官ご本人に訊かないと分からないんではないかな、ということを思います。
というのは、判決の要旨の中でも同和対策事業の持っていた重みということには触れておられます。
要は事実認定として、その重みということと、このモード・アバンセに関わるいろんな一連の経過というものがどちらに重きがあったかということの事実認定が違っていたということであって、同和対策事業の持つウエイトを高く評価をされたかそれとも低く評価をされたかということで違ったのかどうかは、ちょっと裁判官ご本人に訊かないと分からないのではないかというふうに感じました。
(北口:読売新聞記者)
判決の中で、「被告人3人は自己保身とモード・アバンセの利益のために共謀して背任した」ということになっていますけれども、知事ご自身はそういうふうな認識を持っていらっしゃいますか。
(知事)
私自身がコメントをすることではないと思います。これはもう、裁判所の事実判定の中で出てきた判断でございますので、それをそのまま受け止めるということしかないと思います。
(北口:読売新聞記者)
今ご質問したのはなぜかというと、職員の中に「県民の方に甘いと言われるかもしれないが、自己保身というのはどうも首をかしげてしまう」という声が多々あったから伺ったわけなんですけれども。
そういう職員の反応があるということについてはどのようにお考えですか。
(知事)
そういう職員の反応があるということは十分想定はされますし、理解もされます。
また一方でこうした司法の判断があるということも当然同じレベルで受け止めて判断をしていかなければいけないと思いますので、今の段階でどちらの立場に立って、一概にどちらがいい・どちらが悪いというふうな判断は、自分には今の時点ではできないということです。
(北村:高知放送記者)
結果的にこうして会見の場が設けられたからよかったんですけれども、この高裁の判決日がきょうであるということは、もうだいぶ以前から分かっていたと思うんです。
その日公務で出張ということだったんですけれども、この重さというか、そんな日に行かれるというのはどのように考えられていますか。
(知事)
重さというのは十分受け止めております。ですからこうして記者会見をしておりますので、決して軽視をしていたというわけではありません。
(北村:高知放送記者)
公務もはずせない用件で。
(知事)
それは私はそう思います。それぞれがやはり、判決の要旨を聞きながらいろんな対応を変えていくということであろうと思いますし、そこは一概に最初から判断できるというものではないと自分は思います。
(池:高知新聞記者)
今後の対応の中で、再発防止とか知事の今のお気持ちは分かりましたが、職員個別の求償も含めた損害賠償、つまり現実的な事後処理としての対応が、先ほどのお答えでは上告されるかどうかを見極めてということでしたけれども、それは上告した場合、最高裁の判決が出たあとにならないと具体的な協議には入れないということでしょうか。
(知事)
きょうの段階では、上告のこともございますし、ほかの法的な問題がどうなっているのかということまでは分かりません。
そこまで想定をして議論をしたわけではありませんので、どういう対応が考えられて、またその中でどういう対応を選ぶべきかということは今後協議をして決めさせてもらいたいと思います。
(池:高知新聞記者)
現実問題として、まずこういった行政の判断が背任に問われた判例がない。それと事実認定についてはかなりの部分が高裁の判決でコンクリートされる。
そういった状況を踏まえると、もうこの高裁判決が一つそういった協議に入る節目なのかな、という思いを持つんですが、知事としてはそのあたりどう――
(知事)
だから協議に入るということを申し上げております。
(池:高知新聞記者)
それはもうあした以降?
(知事)
それはちょっと…。あしたはもうできませんので。
(池:高知新聞記者)
(全国)知事会に行かれるから。
早々に、ということですね?
(知事)
早々にというか…。ちょっと日程的にどうなのか分かりませんので、今この場で答えられませんけれども、それはできるだけ早い時点でそういう話はしていきたいと思います。
(岡林:高知新聞記者)
判決をお聞きになってから、副知事等も含めてですけれど、職員とお話しされましたでしょうか。
(知事)
それはもちろんいたしました。報告そのものは秘書課から聞いておりますし、副知事とも話もいたしました。
(記者)
そういう状況の中で、今後の対応ということについて知事が早急に取り組むべき問題であるとか、こうやったほうがいいとか、そういった今後の対応についてはお話し合いにはなっていない?
(知事)
これから話すと申し上げております。
(釜本:時事通信記者)
先ほど公益性が狭まったかどうかという判断については、なかなかまだ読み込んでいないというお話でしたけれども。
(知事)
読み込んでもなかなか分からないと思います。
(釜本:時事通信記者)
要するに1審判決との違いを簡単に言いますと、1審判決だと行政が行う融資については一定の償還可能性よりも公益性があるんだから、若干ブレても構わない。
ただ2審については、一定そういう性格はあるにしろ、償還を確実にするあらゆる措置を講じるべき義務があると。
一般金融機関との性質は違うにしろ、やっぱり貸したお金が返ってくるような措置はするべきではないでしょうか、という部分です。
この判決を受けて、県は今もいろんな融資をやっていますし、補助金なり支援金というかたちの事業があると思うんですが、それについての認識というのは今後変化がありますか。
(知事)
部分部分をとり上げて判決を読んでは、いろんな間違いが生じると思います。
そもそもで言えば、最初の高度化資金の14億円あまりは詐取されたという認識があったかどうかという、その大きな違いが全体の判決のストーリーに大きな影響を与えておりますので、今おっしゃったような部分だけで判決が書かれているとは思いません。
ですから、そういう一部分一部分だけを捉えて「この部分に対して県がどうしていくか?」ということにはならないだろうと思います。
特に、融資と補助ということで言えばもう全然趣旨が違いますし、融資であるからこそ、担保がどうだったのかということが大きな判断材料として使われているわけですので、そういうことも含めて言えば一部分一部分だけをとり上げて公益性がどうのこうのということになりますと、それこそ職員が萎縮してということにつながってしまうのではないかと。
もっと大きな流れとして、この事件の教訓というものを捉えて活かしていかなければいけないというふうに思っています。
(岡林:高知新聞記者)
県のナンバー2を含め、3氏の方の実刑判決がありました。県民から選ばれた知事として、責任という部分については率直に今どういうふうにお感じになられてますか。
(知事)
それは別に、実刑が出たから、有罪判決だからということで違うものではございません。
これまでもこの事件が起き、そしてこの事件にまつわる一連の、きょうまでに至る経過の中で申し上げているように最高責任者として指導監督の責任というのは当然免れないと思いますし、行政のトップとしての責任ということもずっと感じ続けております。
(竹内:高知新聞記者)
それは、有罪であろうが無罪であろうがこのことに対する行政責任というのは県として一定あるというご認識?
(知事)
それはそうでございます。
(味元:県広報課長)
ほかにございませんでしょうか。
(知事)
ありがとうございました。