「これからの高知県について」

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

「これからの高知県について」 平成19年度高知県連合婦人会リーダー研修会での講演

平成19年7月4日(水曜日)9時30分から(三翠園)

(橋本知事)
 皆様おはようございます。本日は連合婦人会のリーダー研修に講師としてお招きをいただきまして誠にありがとうございます。また、皆様方には日頃からそれぞれの地域で地域活動の文字通りリーダーとしてご活躍いただいておりますことに心から感謝を申し上げたいと思います。

 最近、ちょっと夏風邪をひいたのか、少し喉がかれ気味でございますので、お聞きぐるしいかもしれません。また、こうやってお人の前で1時間もお話をするというのは、実に久しぶりのことでございますので、まとまったお話がきちんとできるかどうか心配ではございますけれども、今日はせっかくの機会でございますので、県政をちょっとスポーツに例えて守備と攻撃、県政の守りと攻めというような切り口でお話をさせていただきたいと思います。

 この1年を振り返ってみますと、私自身の身の回りでいくつか大きな変化がございました。その1つはこの1月12日で私満60歳の還暦を迎えました。昔、文部省唱歌だったでしょうか、「村の渡しの船頭さんは今年60のおじいさんと、年はとってもろをこくときは」という唱歌がございました。よく歌ったのを覚えていますが、その村の渡しの船頭さんと同じ年になったかと思いますと、何となく信じられないような気がします。

 けれども、今は年齢×0.7、7掛けが大体の実際の肉体年齢、精神年齢ということを言われますので、60であれば×0.7で42歳と、40過ぎたばかりの今働き盛りだと、こういう思いでまたバリバリと頑張りたいなということを思っております。ですから、皆さん方も古希70でようやく50手前になり、そして米寿88でやっと60を越えて還暦を迎えるというような気持ちで日々頑張っていただけたらなということを思います。

 もう1つの変化は、昨年、私の兄が急に他界をしたということでございます。ちょうど3日前の7月1日が命日になりますので、3日前に1日で1周忌を迎えたと言うことになりますが、改めて1年が経つのは早いものだなということを思います。

 その1周忌に先立ちまして、先月下旬に東京のホテルで親戚をはじめ、昔、秘書官や秘書を務めて下さった方、また、病院でお医者さんとしてお世話になった方、そういうゆかりの方々が集まって兄の偲ぶ会が開かれました。その席で様々な立場の方が兄に関わる思い出話、エピソードを紹介されたんですが、その中で若いかつての秘書さんが話しをしたことがとても印象に残りました。

 それはどういうことかといいますと、少し古いことになりますが、兄が総理を退任したあと、三井銀行と住友銀行が合併をするというニュースが新聞に出ました。その秘書さん、小池さんとおっしゃるんですが、その秘書さんが三井と住友が合併というような新聞の大見出しを読みながら、兄に対して「三井と住友が合併をする日が来るとは思いもよりませんでしたね。だけど、これも先生がいろいろ手がけた改革の結果なんじゃないでしょうかね。ちっともそんなこと新聞に書いてないですけどね。」と兄に問いかけました。

 そうしたら兄が、「小池君ね、波っていうのはどんな小さな波でも一旦起きれば絶対に消えることなく、だんだん、だんだん大きくなって、やがて大きな波となって押し寄せて来るんだ。その最初の小さな波を起すことが政治家の仕事なんだよ。」という話をしたのだそうです。

 我が兄ながらなかなかいい話をするなと、こう思いましたし、せっかくそんないい話をするのならば、秘書さんだけでなく弟にもそういう話をしてくれればよかったなと、こう思いました。

 もう1つ、その7月1日になって改めて思ったんですが、去年兄が亡くなったときには余りにも急な出来事でしたし、また、倒れてからしばらくの間はまだ頑張ってくれるんじゃないか、何か奇跡が起きるんじゃないかというような期待も持っていました。ですから、最後に会ったのはいつで、どんな話をしたかなどということを思い出しもしませんでしたし、また、思い起そうともしませんでしたが、1年経って改めて振り返ってみますと、最後に兄に会って話をしたのは亡くなる2ヵ月ほど前のことだったと思います。場所は東京の虎ノ門にある兄の事務所でした。

 その2階の部屋で差し向かえで座って話をしましたときに、「兄貴、最近どうだい?」ということを投げかけましたら、「いやー、面白くないな。」という一言が返ってきました。当時、小泉政権のまだ時代でございますけれども、それから1年経って安部総理の時代になって、今、また兄貴がもし元気でいて、兄貴に「どうだい最近は?」とこう投げかけたらどんな答えが返ってくるかなということを思います。

 というのは、今、国の政治のあり方、政府のいろんなあり方というものを見ていますと、何か地に足がつかない、バタバタとしているような印象を受けます。しかも、地方から国を見ていますと、地方の実体・現状というもの、地方といいましてもそれが日本の大半です、その日本の現状、有様というものを充分政府の方々、国の方々が認識しているかな、分っているかなということを疑問に思わざるを得ないことがいっぱいおきます。
 例えば、最近地方に関することで話題になっていますことに、ふるさと納税というものがあります。これは、地方で生まれ育った方が、大都会に出て仕事をして、そしてその収入から税金を納める、そのときに自分のふるさとに一部を納税をすることによって、中学、高校を卒業するまでそのふるさとで受けたサービスの恩返しをしていく、また、それと共に大都市と地方の間にある税収の違いというものを少しでも是正をしていこう、そんな思いが込められていますので、こうした考え方そのものに反対する人は一人もいないだろうと思います。
 問題は何かというと、そのやり方、手法にあります。というのも、そもそもどういう形であれ、47の都道府県、またそこにある1804の市町村には税収にばらつきがあります。また、どんなにその税収が少ない地域であっても、地域の住民の皆さん方に対してやらなければいけない仕事、必要な仕事と言うものがあります。

 ですから、そういう税収のバラツキを是正をしてやるべき仕事をやる、そのことを保障するために国の税金、所得税だとか法人税の一部を貯めて、それを地方に配分をするという仕組みがあります。これが地方交付税というものです。

 ですから、この地方交付税という制度をしっかりとその機能を守っていく、また充実をさせていけば何もふるさと納税などという小手先のことをしなくても充分そういう格差の是正ということはできますし、また、地域で必要な事業はできるということになります。

 にも関わらず、その地方にとって必要な地方交付税というものを三位一体の改革ということに名を借りて、大幅に一方的に削減をする、高知県でいえば県分だけでも200億、市町村分で200億というような大きな額を削減をする。そうしておいて、一方でふるさと納税というようなものを何か救世主、これがウルトラCいいの対策なんだというような形で見せていくというのは、あまりにも筋がおかしいのじゃないかなということを思うんです。

 地方はこれまでその地方の税財源というものを充実させていかなきゃいけない、そのためには国の取っている税金を地方にもっともっと移していかなければいけない。税源の移譲といいますけれども、そういうことを主張し、そのための1つの手段として地方消費税、つまり消費税の中で地方のとる分をもっともっと増やしていく、充実をさせていくことが必要だということを47の都道府県、また市町村も一丸となって、声を揃えて訴えてきています。つまり、国から地方に税源を移すことが必要だということを言ってきています。
 ところが、今回言われておりますふるさと納税というのは、住民税という地方税の中で大都市で納められる住民税を地方の都市に一部送ろうという、地方税の中での遣り繰りでございます。ですから、大都市部、東京だとか神奈川だとか、大阪、愛知というような地区からは自分のところで納められる地方税が取られるということで反対の声が今起きています。

 つまり47都道府県といっても東京のような地方から高知のような地方に至るまで、様々な財政力、様々な事情を負った都道府県があります。そういう中で、地方税の中でふるさと納税というふうな形でやりくりをしようということは、つまりその都道府県下にあるいくつかの対立の要因というところに楔を打ち込んで、地方が一帯となって国に対してものを言っていくことの力を弱めよう、そういうような魂胆が背景にあるのではないかということも疑われてきます。

 また、何よりもさっきもいいましたように、国の税を地方に移していくということが地方分権ということを進める上でも大切なことです。にも関わらず、このふるさと納税ということを声高に叫ぶことは、そうした本来の地方消費税の拡充と言ったような議論を先送りさせよう、少し目先のことでごまかしていこう、そんな魂胆もまた背景にあるんじゃないかなということを思います。
 さらに、こうしたふるさと納税というものがもし実現したとしますと、47の都道府県の間で、高知県も別に、東京にいる高知県人からもらうだけではありません。高知県に住んでいる人で自分のふるさとのどこかに一部を納めようという人も必ず出てきます。

 ですから、47の都道府県の間で税金をどっかからもらったり、また税金をどっかから送ったり大変な事務手続きが出てきます。作業が出てきます。そのコストも莫大なものになります。ざっと概算をして、どれぐらいそのふるさと納税で高知に来るだろう。これはその前提になる条件がいろいろありますから、確定的な事は何も言えませんけれども、せいぜい県分でも市町村分でもそれぞれが1億円前後だろうと言うふうに思われます。
 とすると、一方的に地方交付税という本来ある格差の是正のための手段というものを何百億というオーダーで削減をしておきながら、一方でふるさと納税という形で1億とか1億ちょっと、そんなちょっぴりの是正をしていくというのはあまりにも筋がおかしいんじゃないかなと、そういう声が必ずもしこういうことを実施したとしたら出てくるんじゃないかなということを思っています。
 ただ、こういうふうに国のやることおかしいね、おかしいねって言って文句を言い、批判をしているだけで厳しい現状が克服できるわけではありません。やはりいろんな意味で厳しい現状というものを受け止めて、その中でも力強く生き抜いていく、そういう知恵と工夫を地方も持っていかなければいけません。
 では、県として何をしていくべきかということですけれども、冒頭申し上げましたように、スポーツに例えると、例えば、今年の春の選抜で室戸高校が大活躍をしました。ああいう野球の試合を見てても、バッティング、攻撃だけがいかに強くても投手が悪い、守備も悪い、それではボロボロと点を取られてしまって負けてしまうということになります。

 つまり守備もしっかりしていて、そして、攻撃もできてはじめて試合に勝てるということになりますので、そんな視点から県政を守備、守りと攻撃、攻めという切り口で少しお話をしてみたいと思います。

 まず守り、守備ということですけれども、高知県では2020年から2030年、つまり今から10数年、20数年後、そういう私達から見れば子供や孫の世代にも、誰もがどこでも安心して暮らせるような高知県を維持していきいたい、作っていきたいという目標を掲げています。

 そのためには医療、福祉ですとか、教育ですとか、また消防、防災、こういうような分野で誰でもがどこでも一定の水準のサービスを受けられる、そういう基盤を作っていかなければいけません。
 ところが、2020年から2030年までの今後のいろんな変化ということを考えましたとき、今、県内には35の市町村がありますけれども、小さな町村のまま残っていって、市町村のまま残っていって果して今申し上げたような、誰もがどこでも安心してというような守りの基盤を作っていけるだろうかということが非常に心配になります。
 そこで、守りの基盤を作っていくために、1つの手法として提案をしましたのが、この3月にまとめた合併の構想というものでございました。と、こう話を進めてくればその合併の構想の内容はということをすぐお話をするのが分りやすい話し方ですけれども、少し遠回りをしてその合併構想に至った背景というものを3点ほどご説明をしてみたいと思います。

 1つは少子高齢化のこと、2つ目は小規模の1万人未満の町や村が高知県には非常に多いということ、3つ目はそれとも密接に関わりますけれども、財政状況が極めて緊迫化しているという3点でございます。

 まず少子高齢化の高齢化ですけれども、2005年の本県の高齢化率、つまり人口に占める65歳以上のお年寄りの比率は26%ほど、つまり4人に1人がお年寄りという高齢社会になっています。けれども、県が目標としております2030年にはこの高齢化の率というのが34%近く、つまり4人に1人から3人に1人が高齢者という、超高齢社会を迎えると予測をされます。

 しかも、それは高知市のようにまだまだ若い人が残っている、そういう市部も含めての平均値でございますから、中山間の地域ではもっともっと高齢化の現象が進むということになります。そのときに、今の町と村の形でそうした地域の医療ですとか、福祉ですとか、そういう基盤が守っていけるかなということが1つの背景としてあります。

 また、その裏返しの少子化ですけれども、2005年の県内の小学生と中学生、児童生徒を合わせた数はおよそ7万1千人ほどでございました。これが2030年には5万3千人と1万8千人も減少することが予想されています。中でも一番児童生徒数が少なくなります安芸広域の圏内では2030年の中学生の数は、723人になるということが予測がされております。

 ちなみに、高知市内にあります私立の土佐中学校の生徒の数が現在767人でございます。ということは2030年少し先の話ですけれども、安芸広域全体の中学生の数が土佐中学校1校の生徒の数よりも少ないという現状が予測をされていますので、そうした中で、今の町村に分かれて子供たちを教育をしていって、本当に子供たちの社会性などを育んでいけるだろうか、そういうような問題もございます。

 少子高齢化少し長くなりましたが、2つ目の背景は、人口が1万人を切る小さな町村が多いということです。全国では今、1804の市町村がありますが、その中で人口規模が1万人を割っている町と村は495、つまり4つに1つほどの数字でございます。これに対して本県は、35の市町村のうち19の町と村が人口1万人に達していません。

 つまり半分以上の町と村が人口が1万人未満ということになります。こうなりますと、町や村の役場の職員の方にとっても様々な事務をこなす、やりくりをすることが大変難しくなりますし、さらに財政面のやりくりが大変厳しくなるということになります。

 そこで、3つ目の背景がその財政の厳しさ、その緊迫化ということですけれども、市町村の自主財源、自前の財源がどれぐらいあるかということを示す財政力指数という数字がありますが、全国の市町村を平均した財政力指数は、0.53でございます。これに対して本県35の市町村の平均の財政力指数は0.26、全国のほぼ半分しかありません。

 また、こうした市町村が万一のために積み立てている貯金に当ります財政調整基金、また減債基金といわれる積立がありますが、これが2002年度には420億円ほどございました。けれども、昨年度末にはもう既に250億円ほどに激減をしてきております。こうしたことを背景に今回の合併構想というものをまとめました。

 そこで、その合併構想の内容に入らせていただきますが、まず2015年をメドに県内を6つの広域の市に再編をする、東から安芸広域、物部川の流域、高知と嶺北、さらに仁淀川の流域、高幡広域、そして幡多広域という6つの広域、6つの市に再編するということを提言をしています。

 が、ここでできます6つの市は、今ある高知市とか四万十市とか安芸市というような市とは権限、機能が全く違っています。もう身の回りの住民の皆様方へのサービスは全てその市で担っていくという、強い権限、機能を持った市を考えています。

 そのためには、県が今持っています権限も市の方へ移していかなければいけません。また、それだけではなくて、出先の事務所ですとか、また、県の職員だとか財源というものも大幅に市の方に移していくと言うことになります。
 更にそれだけでなく、県と市の関係で変わるところが出てきます。それは何かといいますと、今の行政サービスは県は県のサービスとして、市町村は市町村のサービスとして役割分担をしながらサービスを住民の方々に提供をしています。が、この6つの市になったときには、医療、福祉ですとか、教育とかまた、消防、防災、こういう分野は6つの市と県が一体となって、広域連合というものを作って、その基盤を支えていくということを提案をしています。

 以上申上げた2つの点、つまり県の権限を6つの市に大幅に移していく、権限だけでなくて職員も財源も移していく、県は基幹の基盤整備だとか、高機能の病院だとか、警察だとか、そういう広域的なサービスだけを担っていくように変えていく、そして、その強い権限を持った6つの市が県が広域連合を作ることによって、様々な基盤のサービスをしていく、それによって先ほどから申し上げております、誰もがどこでも安心して暮らせる高知県の基盤、守備の基盤を作っていこうということを申し上げています。
 ただ、こうした今申し上げたような形で医療、福祉だとか、教育だとか、防災、消防、こういうものを守っていく守りの守備の基盤は必ずできるだろうと思います。

 けれども、そうなりますと、その6つの大きな市に合併された結果、辺境にある地域の住民の方々の声が届かなくなるんじゃないか、また、それぞれの地域でこれまで取り組んできた特色のある取り組みだとか、伝統的な文化的な行事というものが消えていってしまうのではないか、そんな不満、またそんな不安というものが地域の皆様方には根強くあるだろうと思います。

 こうしたことにお応えをするために、今回の合併構想では、旧市町村単位に自治区という制度を設けることをご提案をしています。

 この自治区は、今の市町村と同じように、それを運営をしていく議員ではない委員を選んでいくという形になりますが、この委員の選び方も市長さんが任命をする形でもいいですし、公募をして選ぶという形でもいいです、また、団体や地域の推薦を受けて決定をしていくという形でもいいです、それぞれの市のそれは自治として独自に議会でお決めをいただければいいということになります。併せて、それぞれの自治区では一定の予算を持っていろんな地域サービスをやっていくということになります。

 では、その予算はどこから出てくるのということですが、これが市町村合併による規模のメリットを活かすと言うことになります。どういう意味かといいますと、市町村それぞれ独立をしていますと、議会が代表的な例ですけれども、議会の経費ですとか、それから市町村長さん、助役さん、副市長さんなどの給料というものもそうですし、さらにはいろんな総務的な経費など、どの市町村も持たなきゃいけない内部管理の経費というものがございます。

 けれども、これが1つの市にまとまってしまえばそういう内部管理の経費というものを一本化して大幅に削減をし、それを住民の皆さん方のサービスに使っていけるということになります。ですから、例えば住民一人当り5千円と言うことで計算をすれば、4千人の単位の自治区であれば、年間4×5で2千万円の予算を使えるということになります。

 そうなると、例えばお年寄りが多くて、その足、その交通の便が大変困るというような地域であれば、2千万あればコミュニティバスというふうな形で地域の交通、買い物や病院に通う、そういう足を確保するということも可能になります。
 また、これまでの自治体というのは、自治体の1つの自治体の中では公共料金の負担の水準だとか、また、様々なサービスの水準、延長保育の時間だとか、そういうようなものは全部一律でございました。けれども、今後こういう自治区というものができたときには、1つの市の中でもこの自治区ごとにいろんな制度があって、水準が違ってもかまわないと、そういう形になっていくことを想定をしています。
 つまり、うちの自治区では公共料金を下げるためにそういう予算を使うんだということで、1つの市の中で公共料金の負担の水準に違いが出てもかまわない。また、うちの自治区は少なくなった子供たちを大切に育てていきたいということで、例えば延長保育の時間だとか、様々なそういう保育や育児のサービスということにお金を使っていく、そのことによって1つの市の中にいろんなサービスの水準の違いが出る、こういうこともいいんじゃないかということを思っています。

 こういうふうに話をしていきますと、それではこれまでにも合併をした市や町があります。そういう合併をした市や町では、今申し上げたような一緒になったことによって内部管理の経費が節約できて、規模のメリットを活かした、そんな実例はあるんですかというようなお声が当然出てくるだろうと思います。いい例ばかりを挙げたと言う意味ではありませんけれども、そういう実例も出てきております。
 例えば四万十市では、いろんな課題に応えるために、保健師さんをもう少し増やしたいと思っておられましたけれども、なかなかそれができないでいました。けれども、合併の1つの効果として、保健師の数を増やす、充実をさせるということができました。

 また、土佐山田、香北、物部が一緒になりました香美市では、従来いろんな住宅の家賃だとか、そういう公金の収納に問題がございました。けれども、香美市として合併をすることによって収納を管理していく、そういう公金の収納を管理をする担当のセクションを作り、市営住宅の家賃の滞納を40%減らすということができました。

 また、違った例で言えば津野町の旧葉山村では社会福祉協議会を中心に、非常にいい地域の支えあいの仕組みの活動をしておられました。合併によってそういうものがまた消えて行くんじゃないかと、心配をしましたけれども、逆に旧東津野の方にもそういう支えあいの仕組みがひろがって行くというような流れもございます。

 また、これは仁淀村の話でございますけれども、秋葉の祭りと言う有名なお祭りがございます。これは仁淀村一村ではなかなか維持が難しいという話になってきていましたが、今回、池川町、吾川村と一緒になって仁淀川町という広域の町になり、この広域の町全体でお祭りを支えていこういうことで、また伝統の行事が守られる、継続できるということになってきました。

 ここでこの合併の構想というものをもう一度振り返ってみたいと思いますが、2015年までに県内を6つの市に再編、統合をします。そして、その6つの市には現在、県が持っている権限のほとんどをもう移していきます。また、人も財源もかなりの分を移していきます。しかも、その6つの市と県が一体となって医療、福祉だとか、教育だとか防災、消防、そういう守りに当るようなサービスをきちんと水準が守れるようにしていきます。

 このことによって先ほどから申し上げております県民の皆さんの暮らしを守るという守備の基盤を作っていく、合わせて自治区というような制度を取り入れ、そこに合併による規模のメリットを活かすことによって、地域の特色のある取り組みや伝統文化が残っていくような配慮をしていきたいというのが今回の合併構想でございます。
 以上、申し上げましたように、この合併構想というものが県の守りの守備の基盤を作っていくという1つの提案になっています。

 それでは、その守備に対する攻撃、攻めは何かということになりますけれども、この面では、産業政策なり、また観光や交流人口を増やしていくという面で、高知県の何を売り込んで言ったらいいか、何をアピールをしていったらいいか、その旗印というものを何にするかということが大きな重要な点ではないかと思います。

 高知県を外へ向けて売っていくその旗印ということを考えますときに、やはり高知県ならではの安全、安心に関わることですとか、また、健康に関わること、さらには環境ということに関わること、こうしたことが大きな旗印として必要なテーマではないかなと言うことを思います。

 まず最初の安全、安心ということに関して言えば、この1月に高知県ではこうち農業・農村振興指針というものをまとめましたが、その中で、今後高知県は環境保全型の農業の全国でもトップランナーを目指すということを目標として掲げています。この環境保全型の農業というのは何かといいますと、いわゆる有機、無農薬系の農業の推進ということです。
 私は知事になりまして間もなく、窪川の方にこの環境保全型の畑作振興センターというような実験のほ場も作って、こういうことに粘り強く取り組んできました。

 その結果として、安芸・芸西地域を中心にナスの交配をするときに、従来はトーンというホルモン剤を使ってやっていましたが、そういう薬剤を使っていくと言うことにいろんな問題点が指摘をされ、この交配を薬ではなくて昆虫を使って交配をする、昆虫交配ということをナスの場合はマルハナバチという蜂を使っての交配になりますけれども、そんな取り組みを進めてきました。もう急激にそのことは広がってきています。

 合わせて平成11年からは、交配だけではなくて、今度は害虫を退治するのに従来は農薬でその害虫を退治をしているわけです。今ももちろん農薬を使わざるを得ない面はいっぱいございます、けれども、それに代わって農薬ではなくて、その害虫の天敵となるような昆虫を見つけて、その昆虫を増やしてそれをハウスの中で飼うことによって、自然に優しい形で害虫を退治をしていく、こういう天敵の導入ということを平成11年度から力を入れて取り組んできました。

 今、施設園芸農家のうち、ナスでは21%、またピーマン、シシトウでは53%までがこの天敵で害虫を退治するという仕組みをとってます。この天敵の導入率は、全国でもこれはもうすでに1位の数字でございます。
 けれども、先ほども申し上げましたように、安芸・芸西などの地域では、かなり先を行って進んでおりますけれども、県の西部の方がまだまだその天敵の導入率なども低い数字にあります。そこでこの3月には天敵導入のマニュアルというものを作りまして、こういうような自然に優しい安全、安心というものを求める消費者の志向に応じられるような農業を県内全域に広げていきたいということを思っています。

 また、先ほども申し上げましたように、そうは言っても農薬にしろ、化学肥料にしろ使わざるを得ない作物、地域というものもございます。そういうときにもその農産物を育てるときに、いつの時期にどれだけの農薬を使いましたかと言うようなことをきちん、きちんと記録をしておく。生産の履歴、成長の記録というものを書いておいて、それを消費者の方にお見せをすれば、消費者の皆さんとしても安心してそれを買うことができます。

 先ほど、寺尾さんのお話でも北海道の苫小牧の肉屋さんの話が出ましたけれども、農業で作られる農産物に対しても消費者の皆さん方はどれだけ農薬を使ったんだろうな、いろんなことを心配されながら多分買っておられると思います。そこをきちんと示していく、これを生産の履歴ということを英語で「トレサビリティ」と言いますけれども、このトレサビリティをきちんとしていくことによって、消費者に安心して買っていただこう、こんな取り組みもしております。
 既に園芸連が中心になってやっておりますエコシステムという環境に優しい農業のグループがありますが、このエコシステムのグループでは1300戸の農家がこの生産履歴をきちっとつけて公表をすると言うようなことを実行に移しておられます。併せて高知県では、環境の問題の世界的な基準であるISOの14001番というのがあるんです。

 少し難しい話になりますから名前だけのご紹介にしますけれども、このISOの14001番というものを取得をしましょうということをずっと農家の皆さんにも呼びかけてきました。

 土佐嶺北、JA土佐れいほくなどでももうJAとして具体的な取り組みをされております。そういうことで県内では既に21の組織、696の農家がこうしたISOの14001番を取って環境ということにきちんと配慮した生産をしています。ということを消費者の皆様方にもお知らせできるような仕組みを作っています。
 このような形で野菜などを作るものづくり、生産の段階から流通、販売の段階に至るまで、高知県はこの安全、安心ということにこれだけ力を入れて取り組んでますよということを全国にアピールをしていくことによって、また、それによって消費者や流通の関係の皆様方の信頼を得ることによって店頭に並ぶ、各県いろんな野菜の中から、これ高知県だといって手に取っていただく、また買っていただける消費地に選ばれる農業になっていくのではないか、またそのことが農業の再考にもつながるのではないかなということを思っています。

 農業だけではありません。今申し上げたトレサビリティ、つまり生産の履歴を残していくということでは、農業よりは少しは遅れていますけれども、漁業でもそんな取り組みが起きてきました。

 例えば、須崎市の大谷漁協の鯛の養殖の部会があります。鯛の養殖はこれまではそれぞれの養殖業者の方々が思い思いに自分流でいろんな鯛を育てていました。そうなりますと、餌のやり方も量が違う、またやはり漁民の皆さん方からとれば、餌をやればやるほど何か魚も太っていいんじゃないか、そういうような思いになります。

 ところが、その部会の皆さん方が皆でそういう情報を交換し、共有をしていくことによって、そんなに餌をやらなくても過剰に栄養を摂らなくても、そのことによってもっといい形の、また長さも体重も色の出来具合も、もっともっといい鯛ができるということが分って、皆生産者が同じような形のものを作っていくということができるようになりました。
 それと合わせて先ほど申し上げました、どんな餌をどういう期間与えましたかというトレサビリティをホームページに出されるようになりました。ここに持ってきたのが大谷漁業協同組合の鯛部会という形で出ているホームページでございますけれども、そのホームページを押していけば、大変小さなもので見にくいと思いますけれども、生産者のお顔が出て、そして鯛はどこから稚魚を取り入れて、そしてどれだけの期間、どんな餌を使いましたかというようなことがきちっと出てきます。

 こういうようなトレサビリティということをきちんと成長の記録を付けて公開をすることによって、決してすぐに値段が高くなると言うことにはなりません。

 けれども、こうやって大谷の魚は安全、安心だということが1つのブランド価値になっていくことによって、市場の方にワーッといっぱいその鯛が出てきた時にも、他の鯛が値崩れしても大谷のものを先に買っていただく、通常の価格で買っていただけるということになりますし、どんなときにも1番、2番手でこの鯛を買っていただけるということから、非常に収入が上るということよりも、基本的に安定をしてきたというような実績も上ってきています。

 こういうように安全、安心という旗印は高知県にとって大変重要なことではないかと思いますが、合わせて健康ということを求める消費者の皆さん、国民の皆さんの思いというものも非常に強くなってきました。

 皆さん方は日頃から健康づくりの婦人会としても、いろんな活動をしておられますけれども、こうした一次産品をまた加工していくという面で、健康を求める消費者の国民の皆さんにどう応えていくかということも、高知県として考えなければいけない重要なテーマだと思います。

 また、合わせて大学との連携でそういう研究が随分進んできました。例えば、ビワの種を加工するとか、ユズを使う、いろんな形で健康食品、また薬として使えるものの開発というものが進んできています。

 そうした中で、今割りと評判というか、関心を集めているものにお茶があります。お茶もいろんな効能があります。例えば大豊の碁石茶などもそうですけれども、碁石茶とは別に今注目を集めているお茶があります。

 それはベニフウキという種類なんですけれども、まだまだ栽培の面積は非常に小さなお茶ですけれども、このベニフウキにある食材、具体的に言えばショウガなんですけれども、ショウガを混ぜるとある症状に非常によく効くというそういう研究成果が出ています。

 ある症状といいましたのは、これに効くといいますと薬事法違反なんかになっちゃいけませんので、少しぼやかしていっておりますけれども、そういうような形でせっかくこれだけある一次産品、その中にはいろんな効能をもったものがあります。

 今申し上げたショウガも殺菌力があるということは、もう充分知られていますし、そういうようなものをいろいろ組み合せることによって、健康の指向に応えるようなもの作りができますし、そういうことの旗印をあげていくということも高知県にとってとても大切なことではないかということを思います。

 もう1つ、攻め、攻撃の材料の旗印として、高知県が掲げなければいけないのが環境という分野です。環境という分野では、皆様方もご承知のとおり、高知県では平成15年度に全国で初めて森林環境税というものを導入をしました。

 皆様方にも毎年、毎年県民税で500円を上乗せをして徴収をさせていただいてますが、こうした森林環境税というものが導入から5年を迎えた今年、もう高知県1県しかなかったものが、今は全国の23県にまでこの森林環境税を導入した県が広がりました。

 今、森林環境税の導入を検討していないというところは、東京都など4つの自治体しかありません。それぐらい森林環境税というものは広がってきました。また、合わせて平成15年に高知山の日という形で始めた取り組み、これも翌年、平成16年の11月11日には高知山の日から四国山の日へという発展をしました。さらに最近では九州でも九州山の日を作ろうというような動きに広がってきています。

 また、森林ということでは、森林環境税だけではなく、もう1つ取り組みをしているものがあります。それは一昨年の2月に京都議定書と言う国際的な取り決めが発効をしました、効力を発しました。それと合わせて県として取り組んでいるものですが、協働の森、この「協働」は協力をして働くという字を書きますが、協働の森という事業です。

 京都議定書というのはそもそも何かといいますと、今地球温暖化ということが大変大きな問題になってきていますが、地球温暖化の原因は炭酸ガスですとか、またフロンガスですとか、そういう温室効果ガスといわれる地球温暖化の基になるようなガスがどんどん、どんどん出ていることに原因があります。ですから、京都議定書ではこの炭酸ガスやフロンガスなどの量を世界の各国が努力をしあって減らしていきましょうということを取り決めました。
 ご承知のとおり、森林はこの温室効果ガスである炭酸ガスを吸収し、それを木の体内に吸着をするという力を持っていますから、まさに森林の整備をして、その森林が炭酸ガスを吸収する力、機能というものを高めていくことは、この京都議定書の目標に沿った取り組みということになります。
 ところが、高知県だけではなく日本の国内を見渡しますと、ずっと長年海外から安い木材が入ってきました。そのために国産材がなかなか太刀打ちできなくなって、森林の整備が行き届かないと言う現象が出てきました。

 例えば今日はたまたま大雨になりましたけれども、先月6月の雨の量は、四国、高知県もそうですし、四国全域、歴史上2番目に雨の少ない月だったということが発表をされています。そのことによって、早明浦ダムもそうです、また松山市の水ガメでございます石手川というダムは、もう干上がるほど水の量が少なくなってきています。

 が、このように1ヶ月、また2ヵ月雨が降らないというだけで、すぐダムの水が干上がってくるというのも森林の力が弱まる、森林、山の保水力が弱まってきたという結果でございます。が、保水力だけでなく、同じように炭酸ガスを吸収するというこの樹木、森林が果す機能もどんどん、どんどん衰えてきました。

 そこで、高知県では環境に関心を持たれる企業に働きかけをして、森林の整備のお手伝いをいただこうと、またそれと同時にそういう企業の社員の方、またご家族の方に提携をした森林に来ていただいて、環境の学習、また体験学習をしていただいて、地域の方と交流をしてもらおう、そんなことで始めたのが「協働の森」という事業でございます。

 ところが、最初結構いいアイデアだからどんどん乗ってきてくれるかなと思ったら、なかなかそうはいきませんでした。

 というのも、企業をお訪ねをして、こういうことを高知県で始めようと思っているんですけども協力してもらえませんかといっても、いやー、それはいいですね、と当然おっしゃいます。だけど、うちは高知県に工場を持っているわけでもないし、うちの企業の創設者が高知県とゆかりの人でもない、何故高知県の森林の整備のお手伝いをしなきゃいけないというような反応が返ってきて、その壁をなかなか越えられなかったということがあります。

 もちろんそういうときには、高知県の森林は何も高知の県民だけに酸素を出しているわけではないし、また高知の県内の温暖化を防ぐためだけに炭酸ガスを吸収しているわけではないですよと。そこに県の境も国境もないんだから、高知県の森林、どこの森林であれ、炭酸ガスを吸収して地球温暖化を防ぐという役割を果しているんですよというような正論の話をすると同時に、高知県は森林面積が84%、つまり全国一の森林県、しかも森林環境税というような取り組みを全国に先駆けて進めてきました。

 そういう県でこの協働の森というような事業をまた先行的に進めていく、そこにお宅の企業が参加をされたということは、必ず企業のメリットにもなりますよというようなことを説得するうちに18年度に入って、今度はどんどん増えて、パートナーの協定を結んで下さる企業、団体が増えてきました。今、既に17の企業と団体との間でこの協働の森のパートナーシップの協定を結ぶことができています。

 一業種一社という形にしていますので、例えば商社であれば、三井物産、ビールの会社であればキリンビール、航空会社であれば全日空、銀行ならばご地元の四国銀行というように一業者一社でやっておりますが、中には矢崎総業という、これは自動車の部品を作る企業としては世界的に展開をしている大手の企業でございますが、この企業のように梼原町と協定を結び、梼原町を拠点に木質のバイオマス、つまり木材のエネルギーを使った暖房だけではなく、ペレットストーブだけではなく、冷房の装置、冷暖房の空調の装置を開発をしようというような事業に取り組んで下さっている企業もあります。

 こうした企業側のいろんな取り組みに対して、県の側もこの協定を結んでくださった17の企業と団体の皆さん方に、皆様方がその協賛金を出していただいて、それによって森の整備が進みました。その結果、これだけの炭酸ガスを吸収する能力が森林に高まりましたという、炭酸ガスの吸収の証書というもの、証明書というものを企業にお出しをしようと思っています。
 この意味は、そもそも京都議定書をきっかけに始めた事業でございますし、京都議定書は先ほどお話をしましたように炭酸ガスなどを世界的な取り決めで減らしていこうということですので、その炭酸ガスを減らすことにあなたの企業はこれだけお役に立っていただけましたということを証明することは、まさにその方向に沿ったものでございますし、合わせて将来考えられる排出権の取り引きと言うことの先鞭を付けることになるんではないかというふうに思ったからです。
 ということで、その排出権の取り引きという、また難しい言葉を使ってしまいましたからその言葉の説明をしなければいけませんが、企業はいろんな生産活動をするとき、電力会社であれば電気を起すという仕事をするときに、自動車のメーカーであれば自動車を作るという仕事をするときに、いろんなものを運んでいくために車の排気ガスを出すということもあります。

 物を作るときに、石油や石炭などを焚いて炭酸ガスを出すということもあります。ですから、企業の活動が活発になればなるほど、どんどん、どんどんこの炭酸ガスなどの量が増えて、地球の温暖化が進み、やがては南極や北極の氷が溶けて云々ということになってきてしまいます。

 だからこそ、その京都議定書というようなものがあるわけですけれども、個別の企業にとれば、やはり生産活動をするからには炭酸ガスを出さざるを得ない、だけど、全体の炭酸ガスを減らさなきゃいけないということになりますから、そういう産業活動で自分の企業で出す分の炭酸ガスを何かの活動によって減らしていく努力を自らしていくか、または、他の企業がそういう努力をして減らした炭酸ガスの量というものを証明をしてもらって、その証明書を買うことによって自分たちの企業で出す炭酸ガスの量を相殺をしていく、そういうことが必要になってきます。

 これが排出権取引ということで、つまりはその炭酸ガスを排出をしないと産業活動というものは成り立ちません。けれども、その分の炭酸ガスを減らさなきゃいけないということですので、その排出をしてもいい、その分の炭酸ガスを減らしましたということを証明するものを取り引きをしていかなきゃいけないということになって、これが少し難しい言葉で「排出権取引」というものに当ります。
 まだ日本の国内ではこの排出権取引というものが確立をされてませんが、国際的には既に排出権の取り引きというものが行われておりますし、国内でも排出権の取り引きというものはやがて具体化をしてくるだろうと思います。そういうときに今、申し上げたこの炭酸ガスを吸収をこれだけしましたという証明書をお出しをすることがその排出権取引が進んでいくときの先鞭をつけることになるというふうに思っています。

 既に検討は終わって、来月からその炭酸ガスの吸収証書というものも17のパートナー協定を結んで下さった企業、団体にお示しをできるということになっていますけれども、こういうような先取り、先取りの取り組みをしていくことが高知県というもののイメージを高めていく、また高知県の掲げる環境と言う旗をアピールしていくことにつながっていくのではないかと思っています。

 また合わせてこの環境や自然ということは、いろんなものを売って、高知県をアピールをしていくということだけではなくて、県外からいろんな形で多くの方々に来ていただく、観光交流とか、そういうことを進めていく上でも大きな魅力、ポイントになっていくんではないかということを思っています。

 少しこじつけの話になるかもしれませんけれども、そういう高知の自然や環境というものを売り物に、また、そこに高知の食、食べ物とか人とのふれあいの楽しさというものを合わせまして、「花・人・土佐であい博」というのを来年1年間高知の全域で繰り広げていこうかとしております。
 お渡しをした資料の中にお配り、入れてあるんじゃないかと思いますけれども、こういうようなパンフレットができておりますので、またいい機会にお目とおしをいただければと思いますけれども、1年を通じ、春のシーズンが3月1日から6月30日まで、締めくくりの冬のシーズンが12月20日から1月の12日までということで、春夏秋冬4つのシーズンに分けて、それぞれのいろんな取り組みをしていただこうとしています。

 県内には北川村のモネの庭だとか、牧野の植物園だとか、また足摺の椿だとか、いろんなスポットがありますし、また来年は牧野植物園の50周年というような記念の年にも当ります。

 ということから、先ほど申し上げましたように、花、自然環境ということ、それから食のおいしさ、さらには神祭などに代表されるような人とのふれあいの面白さ、こういう高知の良さというものを活かして、何も、何か建物パビリオンがあるわけじゃありませんけれども、県内全域が地域がパビリオンだと、そういう思いの「花・人・土佐であい博」というものを開催をしていこうと思ってます。

 是非、皆さん方には国体のときの盛り上がりなどを思い出していただいて、地域で何ができるだろうね、どんなおもてなしができるだろうねというようなことをまたお知恵出しをいただければ幸いだなということを思っています。

 また、こうして観光交流というだけではなく、短期に来ていただくというだけではなくて、もっと長期滞在、またもう少し言えば、高知に移住をしてもらうというようなことを進めていくためにも、高知の自然環境というものはとても魅力的な旗印ではないかということを考えています。
 といいますのも、私自身がその先駆けになりますけれども、戦後の昭和21年、22年生まれを先頭に数年間、その年に生まれた世代の人のことを団塊の世代というふうに言います。この団塊の世代が今年、先ほど申し上げましたように私も60歳になりました。普通の企業にいれば定年と言うことになりますので、大量退職の時代を迎えます。全国で大体700万人ぐらいこの団塊の世代がいるといわれますが、団塊の世代はベビーブームの世代でございますから、ずっと受験競争というものを戦ってきました。

 また、大学生の頃は全共闘学生運動の盛んな時代でございましたし、就職をしてからは高度経済成長を支えてきた。さらに中年になってから団塊の世代と呼ばれるようになったというように、いくつになってもいろんな意味で注目をされる世代でございますし、またいろんな分野で激動の変化の中を生き抜いてきました。

 ですから60になって、といっても最初にいいましたように7掛けで42歳でございますので、まだまだできるという思いの人がいっぱいいますし、定年になったからといってもうそこの家に落ち着いてということじゃなくて、まだ1回転、2回転人生を楽しみたいと思っている人がいっぱい間違いなくいます。

 ですから、そういう団塊の世代に働きかけて、ふるさとに戻ってきてもらう、また、ふるさとでなくても第2のふるさとという思いで地域に入って活躍をしていただく、そんなことを進めようということから、南国土佐への移住促進事業というものを県として取り組んでいます。既に県のホームページも立ち上げていろんな窓口のお世話をしていますが、市町村としては四万十市、土佐清水市、黒潮町、また安芸市などが非常に積極的に取り組んでくださっています。
 安芸市では、内原野に住宅を整備をしておりますが、その第2期の分譲分の中に市外枠というものを設けましたら、既に県外から6世帯の方が移住をされました。また、黒潮町では18年からこの取り組みをされておりますが、既に20人の方が県外から移住をされています。また一番やはり人気があるのは四万十川があるということから、四万十市などですが、四万十市では民間の皆さんが受け入れの協議会を作られて、既に26世帯60人の方が県外から移住をされています。

 また、空き家が出れば教えてねというような情報待ちの方が102家族もおられます。ということから、今後各地域で力を入れて取り組んでいただければ、必ず伸びてくると思いますし、昔のヒッピーやら何やらというような分けのわからん人が来るのと違って、やはりある程度社会できちんと経験を積んで、いろんな実績も積み重ねた方がふるさとに戻るなり、また、第2のふるさととして地域に入って下さるということになりますので、是非、こういうような動きを温かい目で受け入れていただけたらなということを思います。

 また、先ほど農業の分野で環境保全型農業のトップランナーを目指しますということをいいましたけれども、高知県では昨年から県も支援をして土佐町の方で土佐自然塾という名前の有機無農薬の農業をお教えをする塾が開かれています。

 初年度は14人の方が、2年目の今年度は11人の方が塾生として農業に取り組んでいただいておりますが、昨年は14人の方のうち9人が県外から来られた方で、そのうちの3人が県内に就農されました。また、今年は11人の方のうち8人が県外から来られた方ですが、この県外から来られた8人の方のうち6人の方が県内に就農をしたいということを目指されています。

 何もこの土佐自然塾は団塊の世代だけをもちろん相手にした塾ではございませんが、この土佐自然塾と共に窪川の方にはあぐり体験塾という、こちらは自然の方だけではなくて、農薬などを使います慣行農業もお教えをするという塾ですけれども、ここでも農業を体験をしたい、またできればそういうことをやっていきたいというような方が大勢来られています。

 ですから、こういうようないろんな仕掛けというものも使って、県内に少しでも移ってきていただく、定住して下さる方が増えていけばいいな。そのためにもこうした環境だとか、自然循環ということを高知県の攻めの旗印としてもっともっとPRをする必要があるんではないかなということを思っています。

 ということで今日は高知県政というものをちょっとスポーツに例えて守備と攻撃、守りと攻めというような切り口でお話をしてみました。といっても高知県の課題のうちごく一部に触れただけでございます。まだまだ課題はいっぱいあります。

 皆さん方の中にも西に延びる、東に延びる高速や高規格の道路の整備の予定はどうなっているのだろうか、また一人当りの療養病床が一番多い高知県で、療養病床の転換ということが今後の高齢者の医療介護に福祉にどんな影響を与えるんだろうか、また、医療の面では郡部の医師不足というものに県としてどういう考え方を持っているんだろうか、更に2011年には地上波のテレビが全部デジタル化に切り替わるわけですけれども、そのときに見えなくなっちゃうようなところが出てこないだろうかなどなど、いろんな疑問なり思いなりを持っていらっしゃるだろうというふうに思います。
 また、教育の面で言えば、先ほど市町村合併の話の中にくくり込んでしまいましたけれども、やはり子供がこれだけ減ってくる中で、小学校や中学校の統合の問題をどう考えるかという大きな課題があります。子供たちのためには統合した方がいいということは目に見えているんですけれども、しかし、地域にとって小学校、中学校というのは地域の力を維持するためにも大変重要なポイント、拠点でございます。こういうようなことをどういうふうにお話し合いを進めていくかなどなど、本当に多くの課題がございます。

 けれども、そうした中で若い世代の方の中にもこういう高知の課題に関心をもって勉強しようという方も随分増えてきました。つい先日も我が家にJC青年会議所の新しいメンバーの方々がおいでになって、話をしたいというので意見交換をしました。

 そうしましたら、先ほど申し上げました療養病床の転換ということに対して県としてどんな方針を持っているんですか、また、地域の過疎化が進む中で地域の医療や福祉をどうやって確保していくんですか、さらにはコムスンの営業停止ということがありましたから、そういうことの高知県への影響はどうなんですか、それに対して県としてどんな考え方を持っているんですかと、いろんなご質問が出ました。

 それぞれになかなか一口で言えないぐらい大きな問題ですけれども、自分なりに分かる範囲でお答えをすると同時に、こういうことに関心を持たれるのはとても素晴らしいけれども、もっと違うところにもまた目を向けてくださいねということをいいました。
 というのは、確かに今申し上げたような課題はとても大切なことで、特に行政にいる私達はそのことを重く受け止めていつも考えていかなければいけません。けれども、一方で地域には元気なお年よりもいっぱいおられて、将来ということをいろいろ考えながら、明るく力強く生きている、活動されているところもいっぱいあります。

 ですから若い方々には、そういう今申し上げたような課題に目を向けるというのは非常に立派なことだけども、だけど一方で元気に頑張っている、明るい話というのもいっぱいあるんだよと、そういうことにも是非目を向けてくださいねということを申し上げました。

 というのは、若い方はまじめに考えるだけに、そういう重い課題だけに目を向けますと、何かもう将来暗いんじゃないかなというような思いになりかねません。そうではなくて、やっぱりもうちょっと幅広い目で物事を見るということが必要ではないかなということを思ったからです。

 ということで、実は具体例としてお話をしたのは、先月おじゃまをした越知町の日の浦という地区の話でした。ここでは平成6年に仕事を退職して戻ってこられた方、つまり、それからもう13年経っておりますので、今は70を越えた方ですけれども、その方が地域に戻られてから集落の下の方にある廃校になった小学校から集落までをずっとアジサイで飾っていこうという取り組みを始められました。

 地域の先輩方もいいねといって、みんなが参加をされて、アジサイ街道は春野とか安田とかいろいろ取り組んでおられますけれども、この越知の日の浦にもとても素晴らしい綺麗なアジサイの街道ができています。そうなると別に人を呼ぼうと思って始めたわけではなくても、シーズンになると高知市などから大勢のお客さんが来る、また、その大勢のお客さんを相手にすることで元気も出てくると言うことになります。

 ということから、アジサイのシーズンだけではなくて、そうやって元気が出てきて皆で何かしようかねという話から、山椒の木を植えて山椒の販売をするということを取り組まれて、一定の成果を上げられるようになりました。

 私もちょうどそのアジサイのシーズンに訪れましたけれども、皆さん地域外から来られる方々のお世話でバタバタと忙しくしていますし、アジサイの花と同じように色とりどり明るい表情をされていました。そして、地域の方からは毎年知事も忙しいから来るわけにはいかないだろうと。だけど、3年4年来ないと俺たちもくたびれてできなくなるぞと、きっと。だから2年後にどういう状況か再来年もう一度来てくれやと、こういうことをいわれて、はい行きましょうということをお約束をしてきました。

 ことほど左様に物事をマイナス思考で見ていきますと、やっぱり重く暗い話題っていうのもいっぱいあります。しかし、もっと前向きに見ていきますと、まだまだ明るく捉えられるプラス思考で考えられることいっぱいあるんじゃないかということを思うんです。

 高知県の現状というものを見てみますと、私は行政のトップですから、物の見方を変えればこうですよなんていう能天気なことはいえません。それぞれの問題に真剣に重い課題として取り組んでいかなければいけません。

 しかし、地域で頑張られる皆さん方はその重い課題を重い課題として捉えられることはもちろんですけれども、それだけではなくて、もう少しものの見方、視点というものを変えればまた違ったものが見えてくるんじゃないか、是非、そういうプラス思考で物事を考えていただければなということを思います。
 今日は何度もいいましたけれども、今、年齢は7掛けです。私は42歳、古希70の方はまだ50手前、90の方が63歳還暦を越えたばかり、100歳でようやく古来稀70歳になれるということでございますので、皆さん方もあと10年とは言わず20年30年頑張るぞと、そういうような思いで地域で活躍をしていただければなということを思います。
 ということで、少しいただいた時間とは延びましたけれども、大体10時半までということで伺っておりましたので、ほぼ時間になりましたのでお話を終わらせていただきますが、冒頭、この1年の間に2つ身の周りで変化が起きたということを申し上げましたが、まもなくもう一つ大きな変化が起きます。

 というのは何かといいますと、初めて女の子の孫が誕生することになりました。ありがとうございます。うちは子供2人息子でございますし、それぞれ2人ずつ孫がおりますが、いずれも男ばっかりということでございましたが、初めて7月の末が予定日で、女の子が誕生するということになりました。

 また、女の子の孫ができると、更に明るい視点でいろんな物事も考えられるかなと、また頑張っていきたいなということを思っていますし、皆様方連合婦人会の方々は、まさに先ほどの自治区ではありませんけれども、地域の活動を支えていく、そういう支えあいの核になる皆さん方でございますので、是非、これからも手を携えて頑張っていっていただきたいということを最後に申し添えて私の話を終わらせていただきます。
 ご清聴どうもありがとうございました。
 

(司会)
 どうも知事様、ありがとうございました。それではご質問のある方は市町村名と氏名を言ってご発言ください。ご質問何かありませんでしょうか。
(橋本知事)
 質問があるといけないと思って時間いっぱい話してしまいました。いや、でも、何かあれば。
(司会)
 どうでしょう。いいです?かまいません?はい、それでは知事さんどうもありがとうございました。
(橋本知事)
 ありがとうございました。

(終了)


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