合併問題についての意見交換会(大正町主催)での知事の説明

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

合併問題についての意見交換会(大正町主催)での知事の説明

平成17年1月14日(金曜日)16時00分から17時10分(きらら大正)  参加者数:約180名

皆さん、こんにちは。 
今日は、ウィークデイの日中という、何かとお忙しい時間に、大勢の方にお集まりをいただいて、誠にありがとうございます。

 限られた時間ですから、いきなりでございますけれども、今日ここに来た目的を、端的に率直に、お話しをすれば、合併ということについて、もう少し是非、前向きに考えてみていただきたい、こういう思いでございます。

 今回、大正町におじゃまをするに当たって、様々な方が、それは町の内外を問わずでございますけれど、賛成の方、反対の方、色んな立場から、こういう言い方をしてほしい、こんな話をしてほしい、また、こんな言い方はやめてほしい、という様々なご注文や要請を受けました。

 また、たまたま去年出直しの選挙をしたばかりでございますので、選挙の時に応援をしてくださった方の中には、こういう考え方の方が多いよ、というようなご忠告、選挙をする者にとっては、少し悩ましい、ご忠告もいただきました。

 それだけこの合併の問題に対する関心が高まっているという証ではないか、と思いますけれども、その場その場の色んな声に動かされて、考え方を変えてしまうということでは、知事としての姿勢が問われるということになろうと思いますので、まずは、この問題に対する基本的な姿勢、そして、その後の色んな大きな環境の変化に伴っての、今のこの問題に対する考え方というものを、ご説明をしたいと思います。
 
 まず、基本的な姿勢ですけれども、このことは終始申し上げていますように、市町村合併というのは、国や県が強制をして、お仕着せで進められるものでもありませんし、また、進めるべきものでもないと思います。

 ですから、このことは首長さんも町長さんも、また、議会の方、そういう代表者も含めた地域の住民の皆様方の議論のもとに、そういう地域の住民の皆さん方が、自分のまちの将来をどうするかということを考えて、決断をすべき問題だと思います。

 が、かと言って後は自分たちに任されたんだから、もう県のことも他の色んな話しも聞かないよ、というのでは、やはり民主的な対応ではないだろうということを思いますし、そんな意味合いで、今日の会も開かれ、また、大勢の方が足を運んでくださったのではないかと思います。
 
 まあ、そこで今、色んな環境の変化が起きた後の、今の私の考え方というものを、ご説明したいと思いますが、この1、2年の間に地方の自治体を取り巻く環境、そこには財政の面の環境もあります、また、大都市部の方々が地方を見る目の厳しさ、そういう視線という環境もあります。その環境は、大きく変わってきました。
 
 例えば、財政ということで言いますと、皆さん方も、お聞きになったことがある三位一体の改革ということに伴う、色んな見直しの中で地方交付税など、地方にとっての一番大切な財源が、大幅に削減をされるという流れが出てきています。

 例えば、今年度、つまり昨年の4月から始まっています予算に関して言えば、この地方交付税、また、それが足りない時に、借金をするための枠でございます、臨時財政対策債というものが、全国的に大幅に削られて、高知県分だけで233億の減額、県内の市町村では66億5千万円の減額というかたちになりました。
 
 このため、高知県は全国の都道府県の中でも、最も早く財政構造改革、財政の見直しも手がけてきましたし、また、人件費等、つまり職員の数を減らすといったような行政改革にも取り組んできたんですけれども、にも関わらず、本年度の当初で236億円もの大きな財源の不足が生じるという事態になりました。

 こうしたことは、県だけではなく、県内の各市町村も同様の状況だと思いますし、こういう状況のもとでは、通常のこれまでどおりの予算は、もう組めないという現状になってきています。
 
 ただ、こうしたことに対する地方の不満、地方の意見というものを強く国に突き上げていった結果、17年度この4月から始まる予算に関しては、地方交付税や臨時財政対策債を合わせた枠、地方税を含めてなんですけれども、こういう枠は16年度と同じ額が確保されるということになりました。

 が、同じ額が確保されたとしても、しかもその中で、例えば、高知県であれば、大幅にさらに、サービスを削減していったとしても、なお、来年の予算を組むに当たって、100億から150億、もっとの財源不足が生じそうな現状になってきています。
 
 このことは、各市町村も同様だと思います。しかも、国では、例えば自由民主党の与謝野政調会長は、さらに、地方交付税など2兆円削ろうということを言っていますし、財務省も強く、そういう意向を持っています。
 
 ですから18年度以降、この地方交付税がさらにどれくらい減額されていくかということは分かりませんし、また、三位一体の改革の中で、補助金が地方の財源に移されるということが行われる中で、実際には、税財源の移譲が行われずに、その仕事そのものが、やまってしまうというような例もございます。

 まあ、こういうような状況がもし起きてきますと、高知県そのものが、予算が組めなくなる。難しい言葉では財政再建団体と言いますが、企業に例えれば倒産と同じ状況になって、国の管理下におかれてしまうということになります。
 
 そうなると、いかに独自に頑張っている市町村を手助けてしていこうとしても、それさえもできないという状況になりますし、このことが単に脅し文句ではなくて、現実にこのままでいけば数年後そういうことになりかねないという状況になってきています。

 このような大きな環境の変化、また、特に財政上の大きな環境の変化ということを踏まえて、私もことここに至っては、市町村合併について、アクセルを踏むという表現を使いました。
 
 このことについて、これまで独自に頑張っていく自治体を応援をしてくれる知事だと思っていたのに、少し心外だというご批判の声も勿論あります。

 また、もしアクセルを踏むというのであれば、もっと早く言ってくれれば良かったのに、もう手遅れではないかというようなご批判もあります。

 これらのご批判は、それぞれ真正面から真摯に受け止めなければいけません。けれども、まさにことここに至ったという状況の中で、この市町村合併という問題に対して、本当、前向きにもう一度考え直してみてもらいたいな、というのが今の私のお願いですし、また、私のお勧めでもあります。
 
 確かに、この大正町だけでなく、地域にお住まいの、お年寄りなどから見てみれば、静かに暮らしている、もうこれ以上いろんな波風を立てないで、かき混ぜないでほしいなという思いもあろうかと思います。

 また、一般の住民の方から見ても、一体、市町村合併をして、何が良くなるの、どんなプラスがあるの、という様々な疑問があろうと思います。
 
 このことには、正直なところ、なかなか真正面からこんなに良くなります、こういうプラスがありますと言える状況ではありません。 
 
 けれども、先程も言いましたように、県そのものも、そして各市町村共々、財政的に大変厳しくなる、今のサービスどころか、もう考えられないくらいサービスの削減をしない限り、予算が組めなくなるといったような事態が想定をされます。

 そういう状況の中では、何かがプラスになるということよりも、これ以上状況を悪くしないために、今の暮らしを、今のサービスを少しでも守っていくために、その生き残りのための選択肢として、合併というものは有力な一つの手段ではないか、そういうことを是非、お考えを願いたいと思います。
 
 そういうことを考える中で、いくつか心配ごとがあります。そのひとつは、県内でも法定の協議会というものが立ち上がった後、地域の住民の皆様方のご理解が得られずに、その協議会が解散をして元のかたちに戻ったという地域がいくつもあります。
 
 こうしたことから、そういう地域もあるんだから、赤信号をみんなで渡れば怖くない、ではないけれども、うちも単独でやっていっても大丈夫じゃなかろうかという、割と気軽と言っては失礼ですけれども、そんな思いでこのままでどうだろうかな、という方が増えてきているのではないか、そういう心配があります。
 
 県内だけを見ていけば、今申し上げたように、法定の協議会が次々と解散をしたという実例もあります。しかし、全国を見てみれば、この1年間の地方自治体の財政の厳しさということを受けて、もうこれまで予想をしなかったくらい急激に市町村合併の動きというものが強まってきました。

 例えば、今人口1万人未満の市町村というか、町村は全国に1500程の自治体がございます。が、来年の3月、この今の法期限の暫定の猶予期間が終わる来年の3月までには、1万人未満の自治体は1000を切るだろう、ということが言われています。

 このように市町村合併というものが進んできますと、そのために使われます特例債というものが、10兆円ありますが、この10兆円のうち70%は、地方交付税で裏打ちがされるということになります。

 つまり、地方交付税、将来の地方交付税のうち、この合併特例債の返還分にあたる7兆円は、その合併特例債の償還に取られてしまう、ということになりますので、赤信号をみんなで渡れば怖くないね、と言って赤信号を渡っているうちに、その特例債に回す償還分等々で、地方交付税、普通交付税も特別交付税等も含めてですけれども、そういうものが、さらに、他の地域に渡ってしまって、単独で残ったところが割を食うということも十分予想されることだと思います。 

 もう一つ心配をされることは、単独で残っていく市町村のことを自立という言葉で呼んでいる点ですけれども、果たして本当に自立につながるかな、という心配があります。

 と言いますのも、先程高知県そのものが、もし18年度以降さらに地方交付税の削減等々の流れがでてきた時に、予算が組めなくなって、財政再建団体という企業で言えば倒産と同じ状況になりかねない、そういう具体的な危機があるということを申し上げました。

 そうなりますとまさに県としては、独自の仕事が殆どできなくなって、国の管理下に置かれる団体になるということになります。

 つまり、高知県そのものが、自立した自治体ではなくなるということになります。市町村においても、それぞれの持っておられる基金、まあ貯金などの額によりますので、何年後かは分かりません。

 しかし、さらに、地方交付税などで厳しい切り込みがあれば、今は予想としてどうにかなるなと思っていても、予算が組めなくなって財政再建団体という、そういう自治体がでてくるということも、十分考えられると思います。

 そうなりますと、確かに単独で残っていても、もはや自立した団体ではなくて、国の管理下に置かれた団体ということになってしまいます。

 そういうことから言いますと合併という選択肢は、自立した自治体として生き残っていくために、色んな問題点、課題はありますけれども、一つの選択肢だということは、間違いなく言えることだと思います。

 ただ、そのことを進めていくためには、様々な難問、課題がある。また、地域の住民の皆さんにとっての、色んな疑問や、また、心配ごとがある。そのことは、よく分かりますし、また、このことも重大なことです。

 例えば、周辺の地域が益々寂れていくのではないか、といった心配。また、これまで、大正町なら大正町という町で築いてきた伝統や文化、横文字で言えばアイデンティティーというようなものが、薄れてしまう、また、奪われてしまうのではないか、また、地域で進めてきた色んな地域活動が、大きな自治体にのみ込まれていってしまうのではないか、様々な心配ごと、懸念があろうと思います。

 が、こうしたことをお互いが、各地域ごと、これはこの大正町だけではなくて、今後一緒になっていかれるということであれば、そういう大きな広域の町村の中で、住民の皆様方が話し合って決めていく、また、お互いが譲り合っていく。

 先程、町長さんからも「住民力」という言葉がでましたが、まさに、そういう住民力を発揮して、そういう問題点を解決をしていくというのも、これからの自治体の、地方自治の一つのあり方ではないか、ということも思っています。

 また、先程、合併ということに、何か大きなプラスがあるかというと、なかなかそれは言いにくい。むしろ、今以上に悪くならないために、それを防ぐための一つの選択肢だという、ある意味では極めて消極的な、また、後ろ向きな言い方をしました。そう言わざるを得ない現実が一つは、背景にはあります。
 
 しかし、そうした中で、今後色々進めていく仕事、そういう計画を考えました時に、今の状況のままでは、なかなか手をつけられないような仕事を進めていく、また、やらなければいけない仕事だけれども、今一遍にできないね、でも、早く済まさなきゃいけないね、そういう仕事を少しでも先取りして始めていく。
 そのきっかけには、私は合併ということは、あり得ることだと思います。 

 例えば、大正町において439号線という大きな幹線を、どう整備をしていくか、という課題がありますけれども、今の県内の色んな道路の状況を、そして、高知県の財政ということを考えてみますと、今の状況のままで、なかなか優先順位を高く、その仕事を手がけていくということは、正直、難しい現状にあります。
 
 しかし、合併ということが行われ、新しいまちができるということになれば、これは国、県を挙げて、新しいまちの中心部と周辺の部分を繋ぐ幹線の道路、すべての道路ということにはなりませんけれども、幹線の道路を、きちんと整備をしていくというのは、合併ということに向けての一番のお約束ですから、439号線の整備ということも、当然、これまでの予定よりも早く進めて行かなければいけないし、また、すぐにでも手がけるということで言えば、手がけていく事業になっていくだろうと思います。
 
 また、今回の合併の計画の中でいくつか、こういうものは、やはり先取りして進めた方がいいなと、自分自身思うものがありました。
 
 一つは、ケーブルテレビ、CATV、お隣の十和村は、かなり早くからそういうものを村内全域で張り巡らして整備をしておられます。これを新しくできるまち全体に広げて行こうという計画があります。

 このことは、色んなテレビのチャンネルが増えて、様々なサービスを受けられるという面でも、勿論プラスでございますけれども、将来のテレビの受信という面で非常に大きな意味があります。

 というのは、少し難しい話ですので、分かりにくいかもしれませんけれども、国は今のテレビ放送の方式、これは、アナログ方式と言いますけれども、これを2006年から2011年までの間に、デジタル方式という新しい方式に変えていく。

 このことによってテレビを受信しておられる方が、放送をただ見ているだけではなくて、受信者の側から、色んなクイズに答えるとか、買物をするとか、様々なかたちがありますけれども、お互いが双方向で色んなやり取りができる、そういうテレビの方式に変えるという大方針を持っています。

 そのことはそのことで、決して悪いことではないんですけれども、そうなりますと今のアナログ方式で、いくつかのテレビ局が見えないという難視聴の地域、県内に何%かありますけれども、そういう地域がデジタル化をすると更に拡がってしまう。

 つまり、今はテレビが見えてるけれども、見えなくなってしまう地域が出てくるという危険性があります。これは、勿論、国の責任ですので、県としても同じような悩みを抱える地方と一緒になって国に、そんなことは見過ごせませんよ、ということは言っています。

 言っていますけれども、国そのものも、これだけ財政の状況が厳しい時ですから、その分の手当をするかどうかということは、全く分かりません。

 そうした時に、このCATVというものを整備をすれば、このケーブルテレビのケーブル網によって、デジタルの放送というものを流して行くことができますので、デジタル放送になっても心配なく、今、テレビを見ている方も視聴できますし、また、今、まだ難視聴の中におられる方々も、すべてのテレビ局を十分いい映像で、見ることができるということになります。

 また、高知県にとっては、南海地震に備えるという大きな課題がございます。で、このことの中で公共的な建物、例えば、子どもさんが毎日集まる学校ですとか、また、福祉施設、病院、医院、そういうものの耐震化を進めていくというものは、大きな課題です。 

 県でも学校の耐震化の事業というものを、来年度から具体的に進めていきたいと思っていますし、各市町村でも、そうした事業は、かなり優先順位の高い課題だと思います。

 けれども、相当な、やはりお金のかかることですから、今の状況で言えば、相当の時間をかけていかないと、できないということになります。その点、今回の計画の中にも盛り込まれておりますけれども、合併の特例債等を使っていけば、そういうことを先取りをして、安全安心を確保できる、こんなメリット、プラスの面もあろうかと思います。

 確かに色んな課題、問題点は、ありますし、合併をしたから全てがプラスになるというものではありません。 
 しかし、この町の中、県内だけではなくて全国の状況の変化というものも踏まえ、そして、これからの大きな国全体の財政状況の変化というものを背景に見ながら、ご自分たちの、また、まちの将来を、是非考えていただきたいと思います。

 ということで私の話を終わらしていただきます。
 ありがとうございました。   

Topへ