私たちで考えるまちづくりシンポジウム −限りある資源「とち」の利活用と保全について−

公開日 2007年12月08日

私たちで考えるまちづくりシンポジウム −限りある資源「とち」の利活用と保全について−

平成15年9月10日(水曜日) 13時30分から16時30分 (高知県民文化ホール (グリーンホール))

基調講演
  『地方分権時代の新しいまちづくり−市町村の土地利用計画を中心に−』
   講師   横浜国立大学大学院教授  小林  重敬

パネルディスカッション
  『快適なまちつくりのために』

 (コーディネーター)
 北村  喜宣(上智大学教授)

 (パネリスト)
 小林重敬(横浜国立大学大学院教授)
 内海麻利(駒澤大学専任講師)
 飯田道夫(国土交通省土地・水資源局土地利用調整課長)
 清藤真司(夜須町長)
 橋本大二郎(高知県知事)



基調講演 (横浜国立大学大学院教授 小林重敬)

(項目)
はじめに
わが国の土地利用計画
計画白地地域の実態と土地利用の方向付け
新しい土地利用の方向付けの事例
計画白地地域における土地利用の方向付けと条例への位置付け
都道府県レベルの土地利用調整の仕組み
市町村レベルの土地利用調整の仕組み
国土法及び個別法の動向
 

(はじめに)
 御紹介いただきました小林でございます。
 テーマにございますように1時間ほどでございますが、『地方分権時代の新しいまちづくり』についてお話させていただきます。
 地方分権という声はさまざまの形で今日聴かれるようになりましたが、まちづくりの面から考えて、実態的にそれを具現化しているということはまだまだだと思っております。

 今日、高知県が県として条例を作り、このような機会を設けるなどして、市町村の土地利用に関する関心を高め、更に市町村の土地利用計画の立案を促しているということは、大変新しい動きとして敬意を表している次第でございます。そういう場所にお招きいただきまして、こういうお話をさしていただくことを大変光栄に思っております。
(わが国の土地利用計画)
 それでは、私の方からお手元にある資料、ちょっと大量ですので、若干とばしながら、お話をさせていただきたいと思います。表題は『地方分権時代の新しいまちづくり』~市町村の土地利用計画を中心に~ということでございます。

 わが国の土地利用計画を考えてみますと、理念的にはビジョンがあり、それを計画にして、この計画に基づいて実現するという、そういう大枠が必要であるといわれておりまして、現実には、わが国では国土利用計画と土地利用基本計画という計画が国土利用計画法に位置づけられております。

 形としては土地利用計画を縦系列で見ますと、国の計画、都道府県の計画、市町村の計画がそれぞれあるという関係になってございますし、それから、理念的には土地利用計画を構想、計画、実現という形でもっているということでございます。

 しかし、わが国の国土利用計画体系をみてみますと、確かに1番左側(資料2頁)にありますように国土利用計画、全国計画と都道府県計画、市町村計画という形で縦系列にあるんですが、実態的には、この関係を位置付けているのは地目別の土地の面積、例えば宅地や農地が何ヘクタールあるかという形だけで調整している段階に留まっているということになっています。

 それから、計画と構想と実現という枠組みでいうと、下に行くほど実は構想とか計画という内容が薄くなってございまして、更に実現するツールとしては、ここにございます土地利用基本計画が実態的には個別法にゆだねられています。例えば、都市地域という地域区分がございますが、ここについては基本的には個別法としての都市計画法、農業地域というのは個別法としては農振法にゆだねられています。

 その結果として、どういうことになっているかということですが、大きく二つの問題点があります。
 これは、後ほど国土交通省の課長さんのお話で詳細が明らかになるかと思いますが、一つは、個別法の土地利用の集積が土地利用計画になっているがために、異なる土地利用が重複しているという問題があります。

 もう一つは、個別法がそれぞれにエリアを設定して、土地利用計画ができているために、それぞれにカバーできない計画白地地域、計画的に規制が弱い白地地域が生まれているのです。計画重複はそれなりにその重複の中でルールを作ると、ある程度の対応ができるわけですけど、計画白地が非常に問題になっているのではないかと思います。

 計画白地については、ここは弱い都市的土地利用と書いていますが、何のことかというと、以前は都市の中に必要な土地利用だけど、都市の中に収めていくにはなかなか問題がある土地利用、例えば、廃棄物の処分場とか、そういうどうしても都市の中に収まりきれないものが押し出されて、その周辺に出て来るというのが計画白地地域の土地利用の実態だったのです。

 ところが、最近はそうではなくて、むしろ、都市的な土地利用をある意味で破壊するような強い都市的土地利用が市街化区域の外に出てしまう。具体的には大規模なショッピングセンターが、こういう計画白地地域に出てきて、結果的に都市の中にある中心市街地を衰退させて行くというような事態が生まれてきております。そういう中で、計画白地地域の土地利用の方向付けというものが極めて重要になってまいります。

 しかし、あとで少し細かくお話しますが、従来のように計画白地地域が、例えば農業地域であるので、農業だけ守っていこうというようなことではなかなか対処できずに、今日、秩序ある開発とか、適度な都市化というようなものが土地利用の方向付けの視点として出されています。
このことは、とりもなおさず、土地利用を計画的に考える、秩序立てて強制していかなければいけない、そういう時代に入ってきたことを示していると考えられます。
(計画白地地域の実態と土地利用の方向付け)
 それでは、計画白地の実態はいかがかということですが、欧米の計画体系を見てみますと、欧米の国土のほとんどがしっかりした規制の枠組みの中に入っています。例えば、英国の都市農村計画法は国土全体をこの一つの法で覆っておりまして、それによって、土地利用の規制が形成されるということになっています。

 しかし、わが国はどうでしょう、例えば都市計画の枠組み、土地利用のかなり大きな枠組みである都市計画の枠組みから見ると、欧米の土地利用計画におけるコントロールと同じレベルの計画が行われているのは、市街化区域とそれから線引きをしてない所で用途地域があるエリアに限られています。

 ただ、これは都市計画の方から見ただけですから、農業その他から見たらどうかという話でございますが、その面についても、わが国はかなり遅れておりまして、先程お話しました市街化区域と市街化の線引きされていない用途地域はある程度の規制がされています。

 市街化調整区域は、実は規制がされている、あるいは強い規制がされているという話ですが、実態的にはさまざまな問題を抱えています。ですから、実質的な規制を行っているのは量的には大きなものではなくなってきています。

 農業側からいうと農振地域はこういう形でありますが、そのうちで実体的規制がかかっているのは農用地区域ですから、この領域(資料4頁)とこの領域(資料4頁)が、先ほど見た諸外国における土地利用コントロールの枠組みに対応する部分、もう少し実態的に二つの制度だけで仕切りますと、この領域(資料4頁)とこの領域(資料4頁)になります。

 しかも、最近では、農用地区域についても、従来は厳しく農地転用が厳格に守られていたという話でございますが、なかなかそこがそうはいかなくなってきているという実態があります。

 全体としては土地利用規制の弱さ、特にこういう規制がある程度されているところ以外の領域、そちらの方の領域が広いわけですが、その問題が大きな問題として出されてきているのです。制度的な問題だけではなくて、そういう土地利用の実態を受け止める農村集落においても、都市的な土地利用が押し寄せて来るということだけではなくて、農村集落側からの土地利用のさまざまな問題をはらんでいるという部分も、最近多くなっています。

 これ(資料5頁)は非農家と農家の割合を見たものでございますが、1960年から90年代まで、農村集落、農業政策の中における農村集落の領域を見ても、非農家の割合が非常に大きくなってきています。

 更に農地の他用途への転用について15年を単位で眺めてございますが、若干減っていると御覧になるかもしれませんけれど、減っている分は実はこちら(農地)です。

 耕作放棄地面積の推移を見ますと、これ(資料5頁)は1年間の耕作放棄地面積ですから、実は10年間で23万ヘクタール、こちら(農地の他用途への転用面積)は15年間で32万ヘクタールですから、それに匹敵するような耕作放棄地が現れていると考えますと、農村集落側からの要因による土地利用の混乱というものがかなりあると考えています。

 それから、先ほど若干申し上げましたが、強い都市的土地利用が本来、市街化して土地利用を高度化しようとしている市街地区域以外でもかなり出てきております。例えば、都市計画区域の中の未線引き都市計画区域という用途が指定されていない部分がかなりございますが、そういうところとか、都市計画区域外でも、大規模なショッピングセンターが出てきています。

 本来であれば、この市街地区域にそういう大規模な店舗を立地すべきであるものが、近年こういう所(市街地区域以外)に大規模なショッピングセンターが出て来ている事態を招いているわけです。

 そういうような状況から、実際に都市計画区域外とか、あるいは規制が緩い非線引きの都市計画区域の中でどういう事態が起きているのかということをいくつかの事例で見ていただきます。

 ちょっと分かりにくいですけど、これ(資料6頁)は千葉県、東京はこちら側にありまして、千葉県の房総半島のところです。そこで、都市計画区域外で幹線道路が走っていますが、その周辺で極めて乱雑にスプロール化して市街地が展開しているところがあります。

 これは、岐阜県の岐阜市になりますが、岐阜市の都市計画区域から外れた都市計画区域外において、都市的な土地利用がバイパス的な県道だと思いますが、幹線道路の沿道にでてきています。特に、大型店舗がバイパス沿道に出てきているという実態があります。

 岐阜県真正町の実態をもう少し細かくみてみたいと思います(資料7頁)。ここは、市街化区域があって市街化調整区域があるのですが、これは非常に薄くなっております。

 農地側と都市側との攻めぎ合いで、市街化区域は都市側でしっかり規定するけど、調整区域は都市計画区域の中に入りますが、農地側から押されて、結果的に薄い市街化調整区域となっています。その更に外側に、バイパスの完成とともに、都市的な土地利用が展開するというように、人口が都市計画区域外でもこのような形で増えています。

 これ(資料7頁)は昭和47年のこの地域のまだ道路ができていない段階での図ですが都市的な土地利用に見えるのは農村集落が中心でしたが、平成6年にはここにショッピングセンターを始め、いくつかの大型の施設が立地してまいります。

 具体的にはショッピングセンター・工場・大型の家具店・ショッピングセンターの増築というようなものが展開して、バイパス道によって中心市街地を脅かすような、そういう土地利用がされています。都市計画区域外に出された大きなショッピングセンターに、例えば、県庁所在地の岐阜市からの来客があって、休日になりますと、この地域に車を使って大量のお客さんが出てきてしまうような実態があります。

 それから、もう一例申し上げますけど、群馬県の渋川市、これは先程申し上げました都市計画区域内にあるんですが、用途地域が指定されていない、規制が緩い都市計画区域であります。

 そこでも、人口がたいした数ではないんですけど、確実に増えていまして、それ以上に紳士服店、家電量販店、それからショッピングセンター、ドラッグストアーという最近こういうところによく立地する大型店舗がここに出て来ています。建築床面積を見てもこういう状況、これだけの床面積のものが出てきている実態があるわけです。

 たまたま高知県の資料が一枚ありました。ショッピングセンターだけではなくて、資材置場が南国市の山林の中に展開しているということです。
(新しい土地利用の方向付けの事例)

 ここでちょっとお話を違う方向にもって行きたいと思います。今、御覧いただいたような、本来、市街化して都市的な土地利用をすべきところ以外に、例えばショッピングセンターが出てきたり、あるいは家具店が出てきたり、あるいは場合によっては住宅が出てくる実態はどういうところに問題があるのかということでございます。

 一つは、土地利用が混乱するというのが即物的な問題でございますが、それ以外に、御案内のようにショッピングセンターが出来れば、現在、地方都市で皆さん車を一般的に各家庭数台お持ちですから、車を使って混雑する中心市街地に行くよりも、特に大きな駐車場を持っているショッピングセンターに行った方が買い物が出来るということで、そういうショッピングセンターに出かけています。そのことは、結果として、大きな議論でいえば、地球環境問題、CO2を排出して地球環境問題をある面では引き起こしているということになります。

 近年、そういう拡散的土地利用をやめにしよう、もっとコンパクトに都市を考えてみましょうというコンパクトシティの議論が盛んになってきています。更に、コンパクトシティというのは大きな構造としてのコンパクトシティだけでなくて、それぞれの地域社会、コミュニティがコンパクトに環境を考え、生活の質を考えて展開する、そういう必要があるのではないかということです。

 アメリカという国は、正に自動車の国でありまして、分散型の土地利用をやっているところですが、そういうところにも、例えば、ここはオレゴン州ポートランド、東海岸側のカナダ寄りにある都市です。

 ここでは、アーバン グロス バウンダリー(UGB)というのを設定して、この中だけでしか市街化を基本的には認めない。市街地を拡大するとしたら、この(資料14頁)赤に書いてございますね、こういう拡大予備地を用意しておいて、ここだけが拡大を許す地域で、それ以外のところに都市的な土地利用を展開することを基本的に禁ずるというようなことを始めています。

 また、ブラジルのクリチバでは、公共交通バスの路線網をさまざまに工夫し、バスの運行が幹線道路に設定されて、幹線沿いに高密度の利用が行われるようにしまして、一方、その周辺部では自然的な土地利用を保全する保全区域を指定するというような形で、環境に配慮したコンパクトシティを考えています。

 日本でも、最近、青森市は、市長さん自ら音頭をとって、青森市の郊外にある幹線道路の外側には都市的な土地利用が展開しないように、この中でコンパクトにまとまった都市、中でも中心市街地にもっと人が住むような都市を作ろうとしています。青森市は雪国でありますが、雪国における都心居住モデルを作りたいと、いろいろ活動されています。

 それから、今の3例は、全体としての都市構造をいかにするかというお話ですが、実はそういう都市構造を支えるものとしては、コミュニティですね、環境に配慮し、コンパクトなコミュニティを作っていくということが必要です。

 ワシントン州シアトルでは、アーバンビレッジというコンセプトで、コンパクトなコミュニティ作りをやって、環境に配慮した生活をするという仕組みを導入しています(資料15頁)。

 それから、その考え方を基本的に参考にしていると思いますのが、神戸市です。神戸市は、今総合計画の中でコンパクトタウン、小さなコンパクトタウンが市の中でこういう形(資料16頁)で形成されて、全体としてコンパクトシティになる。こういう都市づくりをやりたいということで、総合計画に位置付けています。

 これは、コミュニティと地域経済と環境という三つの要素からなるコミュニティをコンパクトタウンという形で形成していくのですが、まだ緒についたばかりですので、実態的にはこれからだと思います。

 そういう中で、現在、私もかかわり、それから、コーディネーターの北村先生、あるいはパネリストの内海さんも若干関係なさいましたが、仙台市でコンパクトシティを作ろうとしています。コンパクトシティを作るに当たっては土地利用調整条例という条例を作り、更に条例を具体化するための土地利用の基本方針というものを作ろうとしています。

 これは、このままいければ、都心から拡散的に市街地が拡大し、周辺の自然的な土地利用を侵すことになる。それを仙台市は、地下鉄が今ここ(資料16頁)に走っているんですけど、新たにここに設定して地下鉄を中心に土地の高度利用を図り、周辺の自然的な土地地用を侵さないようにしよう、こういうところの開発については開発協議、土地利用調整をするための開発協議を求めるというような仕組みを導入するというような条例作りを今進めているところです。現在パブリックコメントにかけているという段階にきております。
(計画白地地域における土地利用の方向付けと条例への位置付け)
 これから少し条例の話に入ります。特に先程問題としました計画白地地域というような地域における土地利用の調整条例を念頭に置きながら、お話をしていきたいと思います。

 最初に、土地利用の方向付けの議論をいたします。
 基本的に現在わが国のこういうところの土地利用の問題点というのは、都市とも農村ともつかない、極めて混乱したある意味での生活空間が周辺部に放置されている状況があることだと思います。そういうことをやめる仕組みを作ることが必要であると思います。

 ただ、そのためには土地利用条例の仕組みとして、基本的には規制という部分と場合によっては誘導という部分の二つを設けることが必要ではないかと私は思っております。

 更に、土地利用調整条例の仕組みではありますが、これは開発と保全をいかにするかという側面と、それから、土地利用の開発・保全には行政も、事業者も関わりますし、当然、住民・市民もかかわるわけですから、そういう様々な主体間の調整を図るといった側面の両面の調整の仕組みが必要ではないかと思っております。

 更に四番目(資料17頁)の土地利用調整を図るツールとしては二段階の土地利用計画といっておりますが、これには、ビジョンと計画が必要ではないかと思っておりますし、それからそれを具体化するための開発基準が必要ではないかと思っております。

 現実に、そのような土地利用調整を図る仕組みがこれまでも幾つかあります。それを少し都道府県レベルと市町村レベルで見てみたいと思います。
(都道府県レベルの土地利用調整の仕組み)
 最初に、都道府県レベルの土地利用調整の仕組みでございます。都道府県レベルで土地利用調整を具体化した恐らく最初の事例としては、岡山県県土保全条例というのがございます。

 1973年、ずいぶん早い時期に制定をしております。ちょうど、岡山県で山陽新幹線が開通する、中国自動車道が敷設されるという時期で、更に、例の新産都市として、水島という地域が指定されて工業化が展開する、そのため、極めて大きな開発圧力が岡山県にかかりました。それで、岡山県のいろんなところでいろんな開発、例えば、ゴルフ場や事業を起こすための土取りというものが展開しました。

 そこで、岡山県としては、都市計画区域外での1ヘクタール以上の開発行為を知事の許可制とする、簡単に言うとそういう制度を作ったのです。ただ、この条例は、基本的に個別法の許可対象のものを対象外とするとしております。ただ、都市計画区域内での1ヘクタール以上の土砂採取は、対象とするというような条例内容になっております。

 その条例の大きな特徴は、岡山県が市町村モデル条例として、開発事業の調整に関する条例の策定を市町村に促したという点でございます。今回の高知県の条例(高知県土地基本条例)も、そういう意味合いを一つ持っておられるようですが、先例として岡山県の条例がございます。

 この岡山県のモデル条例は1,000平方メートル以上の土地造成、延床面積300平方メートル以上の建物設置の事業を対象とすることになっていまして、これには5戸以上の建物設置の事業も含まれています。これらの開発事業に当たっては、事前協議を義務付け、助言・勧告、必要に応じては協定の締結、まあ余り強い規制はかけてございませんが、こういう内容のものを市町村で条例を作ってもらおうとしました。それに応じてかなりの市町村が条例を作りました。

 代表的な例としまして、赤坂町の開発事業の調整に関する条例がございます。ここ(資料19頁)では個別法令との複合・調整を行うと書いてございますが、1番大きな目玉はこの町の計画、これは国土利用計画法の土地利用構想図というのを当時既にもっておりまして、それとの計画適合を求めるということです。その土地利用構想図で宅地誘導地域を位置付けています。

 それ以外については自然的な土地利用を守ろうとしています。開発が入った場合には、土取りもそうですが、そういう所は絞っていこうというように、計画に基づく土地利用規制を条例を介して行ったのです。

 それからもう一つの事例は、時代が20年ほど飛びますが、1994年に兵庫県緑豊かな地域環境の形成に関する条例というのが作られました。これは、都市計画区域で線引き済みの都市計画区域以外、いわゆる線引きをしていない、あるいは都市計画区域外に適用する条例なのですが、知事が市町村と協議して地域環境形成基本方針を定めまして、緑豊かな環境形成地域の指定をするというものです。当初、丹波地域と淡路地域の二つの地域にこの仕組みを導入しまして、実際に運用がされています。

 例えば、丹波地域は、条例適用地域ごとに地域の置かれた状況、特性を踏まえて、基本方針を策定し、それに基づいて豊かな土地利用の誘導を図るということですが、具体的には、丹波地域のエリアを、森林を守る区域・森をいかす区域・さとの区域・それからまちの区域という、そういう形で区分して、それぞれに開発についての協議が必要になります。

 こちらは森を守りますから、許可申請の必要な許可制度にして、ここは中間的なところですから、協議が必要だというようなところ、こちら(まちの区域)は恐らく開発行為の届出だろうと思いますが、そういう形で仕組みをそれぞれ変えて一体的な環境形成を図ることを考えています。

 ここは、そういう区分も重要ですけれども、恐らく積極的に緑豊かな地域環境を形成するという、要するに開発を止めるということだけではなくて、むしろ、緑豊かな環境を形成していくという、そういう色彩をもった県の枠組みと市町村の条例作り、計画作りを促していったという側面を持っていることが重要だと思います。
それから3番目でございます。私がいる神奈川県の土地利用調整条例です。これは北村先生がかなり御指導なさってこういう制度を導入しています。

 この大きな枠組みは、後でお話しますが、条例が対象としているのは、市街化調整区域を対象に1ヘクタール以上の開発行為です。これには資材置場とか、砂利採取、土取りその他を含むということになっています。これは、基本的には知事と協議をしなさい。そして、協議があれば、知事は市町村長に意見照会し、必要に応じて国土利用計画審議会の意見を聴取するというのです。

 審査の基準としては、審査指針を設けているということでありますが、恐らくこの条例の大きな特徴は、審査結果通知を交付する前の開発行為の着手を禁止し、審査結果通知書の交付を受けずに開発行為に着手した者に対し、知事は工事中止・現状復元等の処置を命令できますし、これの命令違反者その他については懲役又は罰金といったような手続違反者に対する罰則を設けているというところであると考えられます。
以上三つの県の条例、土地利用調整条例にかかわる事例を御紹介しました。

 最初に申し上げました岡山県の事例は、各市町村が土地利用調整条例を作り、計画を作るという特徴を持っています。
2番目の兵庫県の事例は、開発をコントロールするという側面だけではなくて、緑豊かな風景や景観を作るという積極的な側面を持つところに特徴があります。
3番目は神奈川県の事例ですが、これは、先ほど申し上げましたようにかなり実効性を持っています。工事中止とか、現状復元とかの措置を命じることが出来きますし、罰金、懲役というような強い手段でコントロールするという実効性を備えています。

 私が間違っていたら恐縮ですが、恐らく高知県の今回の条例はその三つの側面を一つの県の条例としてまとめ上げた極めてハイブリッドな条例であろうと思っております。そういう面で、これから運用が期待される県の条例ではないかというように思っております。

 この点については、後で知事からお話があると思います。2001年に制定された高知県の土地基本条例は、先ほど申し上げましたようにハイブリッドな先端的な幾つかの要素をうまく複合化した条例として、成立していると思います。
(市町村レベルの土地利用調整の仕組み)
 ところで、本日のお話は、県のレベルのお話よりも市町村レベルの土地利用調整の仕組みを御説明するということが一つの大きな狙いですので、少しこれから時間をとってお話をしていきたいと思います。
市町村レベルの土地利用調整の事例として(資料23頁)3-2の(1)から(4)までを挙げております。

 最初にお話するのは、先程の赤坂町の事例ですが、その前に市町村における景観・環境に関する条例の制定状況の話をしたいと思います。
これ(資料24頁)は、基本的には土地利用調整条例や景観条例という位置付けのものの実例と動きなのですが、都市計画区域内においては、確かに景観に関するものはかなり増えております。これに対しまして、環境とか自然に関するものはどちらかというと領域としては小さくなっているという動向があります。

 それに対して、むしろ、都市計画区域外の市町村において条例の制定が目立ってきております。中でも、環境とか、自然・緑そういう側面、例えば自然・緑はですね、こちら(都市計画区域内)は減ってきているのに対して、こちら(都市計画区域外)は増えています。

 それから、環境に関するものもかなりの事例が出て来ていることで、従来はそういう土地利用調整、景観とか環境、そういうものに対して、必ずしも積極的でなかった市町村において、むしろ、条例の制定が増えているということです。それだけ、そのような土地利用の問題が都市計画区域外に恐らく起きているのではないかと思います。

 そこで、いくつか事例を挙げたいと思います。これは先程、同じ画面が出たと思いますが、1973年、赤坂町の開発事業の調整に関する条例です。先ほどは県の条例と県の作ったモデル条例があって、それに従って各市町村が条例を作っていったと御説明いたしましたが、実際はそうではなくて、開発に直面して、これに対処するために条例を作りたいと言い出したのは赤坂町なのです。その赤坂町の動きに、ある意味でプッシュされて、県がああいう条例を作ったということになります。県が条例を作って、それをいち早く取り入れて条例化したのが赤坂町です。

 県より早く必要性を感じていた赤坂町は、既に町の計画として国土利用計画法に基づく土地利用構想図(資料25頁)というのを持っていまして、住民も参加をして、我が町の土地利用をこう考えようということを既に議論しているということがあります。

 人口は6,000人の小さな町です。先程見たような土地利用構想図、これは当時の国土庁、現在の国土交通省の土地局になりますが、そこの予算措置によって、赤坂町が土地利用構想図というのを描きまして、これを条例に位置付けて、この計画に従って調整していくということをもう30年前にやっているということになります。

 それから、まちづくり条例で有名な事例として湯布院町がございます。先日、NHKのプロジェクトXの担当者から私に電話がかかって参りまして、何事かと思いましたら、プロジェクトXで湯布院のまちづくり条例を取り上げたい。ついては、取り上げるのが適切かどうか、意見を聴きたいということでございました。

 私は適切だろうということをお答えしましたが、話を聴いてみると、どうも町行政だけを際立たせるような内容になっているので、そうでなくて、湯布院は、むしろ地元の方々が活動して、それを汲み上げるような形で町行政が動いた訳ですから、そういう地元の方々、住民の方々の活動にスポットライトを当てないとおかしいのではないですかと申し上げました。

その湯布院町では、都市計画区域と区域外があります。都市計画区域内の中では用途地域がある所もありますが、線引きがされないで用途地域がない所もあります。これは二つの意味合いがありまして、用途地域の無指定のところにも、空地率とか壁面後退とかですね様々な形態の制限を行います。更に都市計画区域外においても高さとか壁面後退というような形態制限を行います。

 リゾートマンションとか宅地分譲というようなものに対しまして規制を行っているところで、景観が悪くなっては困るものですから、周辺の環境を維持し、景観を維持するためのコントロールを都市計画区域外においても展開していこうとしていたのです。

 その上、ちょっと前に戻りますが、この湯布院町の条例が出来た後に、国の制度で都市計画区域外においても容積率、建蔽率を細かく決めることが出来るということになったのです。そこで、国の法律に基づく事項も組み入れて、それを法による委任事項と言っていますが、委任的な事項と自主的な事項が一体となって、この条例が運用されているというところも一つ意味合いがあると思います。

 それから、次の土地調整条例の事例としては、兵庫県神戸市の人と自然の共生ゾーンの指定等に関する条例で、これは市街化調整区域の中で、ここ(資料26頁)はみどりの聖域という別の条例(緑地の保全・育成及び市民利用に関する条例)で緑が守られています。

 それから黄色は農用地区域で農地側から守られています。赤色が都市計画市街化区域で守られているところで、白地のところが市街化調整区域で、しかも、みどりの聖域に関わる条例で守られていないところです。白の市街化調整区域で守られていないところが共生ゾーンとされています。

 その意味は、後で私が申し上げる話と繋がって行くわけですが、要するに環境を保全する区域を設定する、農業保全区域を設定する、従来の集落の居住区域を設定する。

 それ以外に特定用途区域を設定するのですが、こういう市街化調整区域といっても、環境を保全し、農業を保全していって、その中に農業集落があるというだけでは、今日、生活が出来ないのです。むしろ、積極的に農業経営をやって行くためには、一定の都市的な土地利用を行い、そこから農外収入を得ながら積極的な農地保全をし、農業経営をやっていくという、そういう枠組みを作りたいというのが、ある意味で共生ゾーンという意味であります。

 モデル的な図面でいえば、ほうっておけば、こういう(資料27頁)道路に沿って都市的な土地利用が乱雑に展開するのです。これを防ぐ方策として、それを里づくり計画と言っていますが、集落ごとに計画を作ってもらっています。百ぐらいの集落があるので、百幾つの計画を作ってもらって、保全をするところ、集落地、農地を保全するところ、都市的な土地利用をするところと計画を作って、それに従って開発協議、土地の調整を行っているということになります。

 これ(資料28頁)はその中の代表的な事例でして、野中という集落の里づくり計画です。さまざまな検討をし、野中の集落では、その中で集落景観づくりというのがあります。集落の近くに公園を作り、隣には農地があります。集落からは必ず農地景観が見える、公園からも田園風景が見えるというような形です。

 例えば、ここ(資料28頁)に集落があって、ここに宅地が出来て、ここから農地を見通せないというような土地利用はやめましょう。それ以外のさまざまな計画を作って、それを実際に実行していって、これ(資料29・30頁)が集落の中の風景です。農村景観がきれいに守られています。

 これは先ほどの、里づくり計画を集落の方が集まって、ああでもない、こうでもないといろいろと議論をやった場所があるのですが、この場所から、この方を見て、市民農園があり、その外側に広がって、集落はちょっと遠くに見えますが、こんな土地利用になっています。集落地域というのはこういう形でまとまっています。ある意味で丁度壁はないんですが、極めて秩序立った土地利用をしています。

 それから、もう一つの、土地利用調整条例の最近の事例としては、1999年に長野県穂高町の事例(資料30頁)があります。条例手続の流れは、ちょっと細かいので、省きます。ここ穂高町は、長野県松本市という長野県の第二の都市の周辺地域であり、松本市から車で20分位で来られるのです。

 穂高町というのは、北アルプスを望んだ非常に景観のいい所で、したがいまして、松本に職を持っている方々は、景観がいいからこちらに住みたいと、それでどんどん流れ込んで来るのです。人が増えれば、当然、それに対応する店舗が沿道に出て来るという状況にありまして、このままほっておきますと、美しい景観が台無しになってしまいます。

 土地利用調整条例、まちづくり条例といいますが、そこは土地利用調整基本計画という町全体の計画により町をこういう(資料31頁)ゾーンに分けます。色塗りがそうなのですが、ゾーンに分けて、それごとの土地利用の方針を描き出します。それぞれの土地利用の方針を描き出したゾーンごとにどういう建物が建てられるかということを示します。

 △の表示は、集落で細かい土地利用計画を作ってもらって、そのときにここ(資料31頁)を○にするか、×にするかを集落に任せるという部分です。そういう、割合に柔軟な誘導的な制度として、住民が参加して決めないと動きませんよという、そういう条例にして、住民参加を促しながら、まちづくりをやっていくということです。
(国土法及び個別法の動向)
 最後に、今、新しい土地利用に関する国の制度が動きはじめていますので、そのことについてお話いたします。国土法及び都市計画法、農振法、農地法の動きであります。

 国土法については、たまたま私が先ほど御紹介いただきました国土審議会の土地政策分科会の小委員会で、この新しい国土法の中でも、市町村土地利用計画のあり方について議論をして、そのまとめ役をやらせていただきました。その審議会での答申の方向性についてお話をしたいと思います。

 それはどういう内容かといいますと、現在の土地利用基本計画というものは都道府県計画があり、市町村計画があり、一応、市町村計画も構想を練り、具体化するための措置を書きなさいとなっているのですが、実際は極めて内容の薄いものになっています。

 実現性を担保しているのは、都道府県の土地利用基本計画で、これが個別法に繋がっているという形で、なかなか市町村独自の計画作りの道が開けておらず、わずかに、先ほど御紹介したように、補助金の仕組みで土地利用調整計画を各市町村が作っている状況であります。

 その土地利用調整計画に近いものを今回、法に位置付けたいと考えました。新たな市町村計画ということであって、個性ある地域づくりのため、土地利用に関する基本構想ビジョンを充実していって、将来、個々の市町村ではこういう土地利用を考えたいということを表明しておくと、そのことが個別法の都市計画法とか、農振法とかに影響を与えて、個別法を改定するときに各市町村が作っているビジョン、10年あるいは20年のビジョンにのっとって個別法が動いていくという、そういう仕組みを考えなくてはいけないと思っています。

 併せて、土地取引の規制というのが国土利用計画の大きな特徴になっています。従来は土地取引の規制は価格審査が中心だった訳ですが、実は制度として価格審査だけではなくて、土地利用審査が出来るわけで、今回はむしろ、価格は今問題がなくなってございますので、土地利用審査を構想の段階で、どういう土地利用をこの地域でやろうと考えているのかということを取引とからめて、チェック出来る機構があってはどうかということを我々小委員会ではまとめまして国に提出しています。

 今、これから制度化するためにいろいろ動いているようですが、我々の提案どおりになかなか動かなそうだという、まだ残念というのは早いですけど、そういう状況になっています。

 それから、都市計画法ですね、都市計画法は2000年に改正されました。それは御案内かと思いますが、従来は都市計画区域があると、都市計画のエリアはこの中に留まっていて、後は他の農業サイドの土地利用になって、都市の側からこちらにはもの申せないという厳然たる仕切りをされてしまっていました。

 先程若干申し上げましたが、市街化区域があって市街化調整区域があると、市街化調整区域は農業側からの圧力があって、特に地方の都市では市街化調整区域の幅は薄くなって、その外側にショッピングセンターとかいろんな開発が出てきてしまう。

 そこで、今回、制度としては準都市計画区域という区域を設定して、積極的に都市的な土地利用を図る事業として道路を作ったり、下水道を作ったりするのではないけれど、しかし、土地利用については乱れては困りますから、用途地域をここに設けられるという準都市計画区域を都市計画区域外に設定できるようになりました。

今回の制度改革の一つの大きな目玉は、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に線引きする都市計画区域と線引きしない都市計画区域、つまり非線引き都市計画区域ですが、これらの二つについては都道府県に選択権があることにしたのです。

 しかし線引きをしない都市計画区域でも無秩序な土地利用をされては困りますので、用途地域を指定します。従来は、ここまでだったんですが、用途地域を指定しないでも、しかし、特定の用途はここに入っては困るというような所があります。例えばショッピングセンターが入っては困るとか、あるいはそういう規制のできる特定用途制限規制地域というのをこの中に設定できます。

 従来、土地利用の混乱をどうしても招きやすかった地域についての手当を都市計画法上一定程度やれるという状況になっています。
更に、これは私が昨年、農水省の土地利用検討研究委員会、大臣も参加する物々しい委員会でしたが、その委員会の委員として議論した内容が、かなり小振りになって今回制度化されました。

 ちょっと分かりにくいんですが、法律的に説明すると、こういう言葉になります。市町村が条例に基づく農業振興計画により、農用地以外の用途に供することを予定するものとして定められた土地の区域内に設置される施設の農用地区編入基準からの除外です。皆さんの資料の16ページを御覧いただきたいと思います。

 要は、市町村が自主的な条例を作って、その条例の中で条例と連動する計画を作り、現在の農用地を守ると同時に農業地の中の一部をそうでない土地利用に変えることもできます。

 それから、農振白地地域については、従来はある程度の規模以上でなければ、これを部外者が利用出来ないことになっていましたが、それをもう少し小振りのものでも出来る。ただし、これは大臣承認の厳しい歯止めがかかっています。集落を守り、耕作放棄地についてはその他に利用できます。もう少し土地利用について、従来の農用地、農業的な土地利用を条例に基づく計画を作った場合には柔軟に対応できるような道筋をつけたのです。

 要するに、農用地といえども他の用途に使ってもよい、ただ、それはあくまでも条例があり、計画があるということが前提であるということです。
 先程、冒頭に申し上げましたのは、神戸市の事例でしたが、農業が農業として活性化していくためには、神奈川県にいるとよく分かるんですが、農業者が農業経営だけで収入を得ているだけでは、十分な農業経営はできないという状況に、残念ながら、わが国の農業経営が追い込まれています。

 一部、都市的な土地利用その他で収入があって農業経営をやっているというところの方が、農業が活性化しています。そういう実態をベースに、農水省がこういう制度、施行規則の改正を行いまして実現したものでございます。

 要するに、国土利用計画法も都市計画法も農振法もそれぞれ新しい地方分権時代に向けて、市町村が主体的に、できれば国土利用計画法の市町村土地利用、それを支える自主的な市町村の条例があるという環境を我々は期待しております。そういう世界が用意されてきています。それをうまく活用する知恵次第でいろんなことが出来るかもしれない。是非、そのことを市町村の担当者の方々はお考えいただきたいのです。

 そのベースになる土壌を今回、高知県は極めて先進的な県の条例として作られましたから、この条例をベースにそういう動きが各市町村で広がることを期待しまして私の講演を終らせていただきます。
 御静聴ありがとうございました。


パネルディスカッション『快適なまちづくりのために』

(コーディネーター 上智大学法学部教授 北村 喜宣)
 皆様こんにちは、上智大学の北村喜宣です。これから4時半までの時間、少のうございますけれども、表題にありますとおり、パネルディカッションを開催させていただきます。

 中土佐町の事件は、皆様よく御存知のとおりでございます。高知県内におきましてこの事件が与えたインパクトは、非常に大きゅうございました。結果として、今日討議の中心となる土地基本条例が制定もされたわけです。

 ところで、小林教授のお話でも、地方分権という言葉が何度も登場いたしました。これは、地域のことは地域で考えるということを基本としているものでございます。自己決定というわけですが、これには自己責任というものも伴っているのです。

 それ以外に、地方分権のなかでは、県と市町村の関係の対等化が実現されたところでが、全国的に見ましても、これはまだ掛け声段階でございます。
しかし、高知県におかれましては、高知県土地基本条例の制定でもって、これを具体的に示されたのでございます。

 皆様方、ともすれば、市町村よりも県が偉いというようにお考えではないでしょうか。現在は対等な関係でございます。
 土地基本条例においては、県の役割を極力抑える一方で、市町村の役割を極めて大きくとるというような制度設計をしてございます。結果的に、市町村間の競争が生まれるというようなことにもなっておることで、こういうようなことを制度化したのは全国初です。知事のリーダーシップが非常に大きかったというように感じるところでございます。

 小林教授の話にもございましたが、国の法令というのはなかなかうまく進みません。そういうところで、高知という地域から発進した法律モデルいうものが、今後あちこちに伝播をするというようなことが望ましかろうというように考える次第でございます。そういうモデルを示したことを、高知県民の方は、誇りに思われてよいと思うのです。

 しかし、自己責任、自己決定と申しますのは、楽ではございません。みんなで決めるということは、実は非常に困難なのでございます。この条例のもとでは、市町村に汗をかいてもらう必要がございます。行政がやるのでなくて、市町村民の方々が汗をかかないとどうにも進まないのが、この条例の仕組みなのでございます。お任せではなくて、自分たちのまちの将来をどうするかという点が、今日のこれからのパネルディスカッションの大きな焦点になるところです。

 自分のものもございますが、守りたい土地は人のものであることが多い。となると、いかにして合意を形成するかいうことが重要な論点になってくるのでございます。皆様方におかれましては、県民というよりも市町村民として、どういうことができるかという意識をもって、このパネルディスカッションにどうぞ御参加ください。

 ここにおられる5名の方々は、それぞれの専門分野のエキスパートです。影響力の大きい方ばかりでございますが、なるべくわかりやすい言葉でお話を頂戴するということになっておりますので、よろしくお願い申し上げます。

 それでは、始めたいと思います。
 まず最初に、この土地基本条例の陣頭指揮をなさった橋本知事に、この条例に関する制度の背景や内容等のお話を頂戴いたします。
 

(高知県知事 橋本 大二郎)
 はい。皆さんこんにちは、今日はお忙しい中、シンポジウムに御出席をいただいて誠にありがとうございます。また、基調講演者として、パネラーとして、御出席をいただいた皆様方にも、心からお礼を申し上げます。

 北村さんから、そもそもこの土地基本条例を考えたいきさつは何かとこういうご質問がございました。そのきっかけは先程お話にもございました中土佐町での出来事でございます。これは、どのような出来事かといえば、中土佐町上の加江という地区に県外の事業者の方が採石、これは石を取る採石でございますけれども、採石業をしたいという申請をされたということがきっかけでございました。

 この町、中土佐町は、かつおの一本釣りということを基盤にしまして、かつお祭りですとか、また、その後、黒潮本陣とか、風工房といったようないろんな施設を作られて、食文化、食べ物や地域に伝わる伝統を活かして、交流人口の拡大ということを一つのまちの基本コンセプトにしている自治体でございます。しかも、それがだんだんと成功しつつある町でございました。

 そこに採石業という話が出てきましたので、町民の方からは、こうやって食だとか文化とかを中心にまちづくりをしているところに、毎日、毎日、石を積んだトラックが何十台も走ったら、そうしたまちづくりが台無しになるのじゃないか。また、採石をした後の土地がどう使われるのだろう。いろんな不安の声が起き、だんだんとその反対の声が強くなりました。

 結果的に、町長さんも反対の意見書を県知事あてに出されましたし、また、議会も反対の決議をされました。更に町民の思いはどうだろうということで、アンケート調査、これはアトランダムなアンケート調査ですけど、それをいたしましたら、久礼・上の加江・矢井賀と三つの地区がございますが、どの地区も反対の方のほうが多い、それを合わせれば、大体7割近くの方が反対だという現状でございました。

 こうした現状を受けて、自分としても、こういうような町の状況であれば、もう少し判断を慎重にしたいなとこういうふうに思った訳です。けれども、現実には、森林法にしろ、採石法にしろ、表現の仕方は違いますけれども、結論から言えば地域の産業、主に一次産業のことを指していますが、農林漁業に被害を与えてないとか、地域の公共的な施設に害を与えないとか、3つ、4つの限定的な項目、これに当たらなければ、許認可をしなければいけないという主旨の条文になっておりました。

 こうしたことから、何とかやはり環境とか文化ということにも、もう少し配慮をした裁量権が与えられないかなあ、また、市町村の首長さんはもちろん、市町村の住民の方々の思いも反映をした、そういう手続が作っていけないかなあということを思いました。当時、県にはこういう開発計画に伴う事前のいろんな調整を総合的にやっていく要綱がございましたが、要綱は法的な裏付けがございません。つまり、指導ということにも限界がございます。

 一方で、この年は、丁度、地方分権一括法が制定をされまして、機関委任事務などが自治事務という形で地方の権限に任されるということになりました。こうした時代背景を踏まえて、何とかこの手続をきちんと条例化をして、もう少し地域の声が反映できるような保証、担保を作っていければという思いで始めたのがこの条例づくりでございます。

 条例づくりに当たりまして、まず、今の法制度にある問題は何だろうと考えましたら、三つ程の問題点が出てまいりました。
 一つは、地域ごとの環境保全、また、計画的な土地利用ということへの配慮が足りていないのではないか。二つ目は、市町村長さんの判断だとか、意思ということが反映をされる形になっていない。そして、三つ目は、開発計画にかかわる事前調整の手続、特にその中での事業者の方の説明責任といったことが明確化されていないという点でございました。

 こういうような問題点を踏まえて、条例の内容を考えていったわけですけれども、結論に一気にいけば、まず、やはり土地利用の計画というものをそれぞれ市町村が持ち、この基本理念というものをきちんと持ったうえで、その条例に基づいて手続を進めていく。まあ、それによって、土地利用計画に担保を持たせる、実現性を持たせるということをこの条例の骨子といたしました。

 この条例が議会で議決をされましたのは、一昨年の12月議会、去年の4月からこの条例は施行をされています。
 残念なことに、まだまだ市町村で詳細な土地利用計画、つまり、この条例の骨になります基本理念をきちんと定めてくださったところがございません。
ですから、その土地利用計画を担保していくための条例に基づく手続もまだ活かせないままでございますが、これから市町村合併などが進む中で、いよいよまちづくりというものがとても大切になる。

 その時に、住民参加で、こういう土地利用の計画を作っていただくことが、正にこれからの新しい地方自治の姿を象徴する出来事にもなっていくのではないか、是非こういう条例があること、そして、この条例が土地利用の基本の計画というものを基本的な理念としていること、そういうことを知っていただいて、それじゃ、うちの町でも、うちの村でも作ろうと、そういうような思いを首長さんや役場の職員の方々にも、そして住民の皆様方にも持っていただきたい、そんな思いで開いたのが今日のシンポジウムでございます。というところで一応冒頭の御紹介を終らせていただきたいと思います。
 

(北村)
 どうもありがとうございました。今知事からは、市町村レベルでしっかりしたものを作らないと高知県土地基本条例は機能しない、動かせない、という発言がございました。と申し上げましても、市町村ではどういうふうにしていいのか、暗中模索ではないか、前例はあるのか、当然そういうことが問題になります。

 そこで、次に内海麻利さんから、全国の市町村ではどういうようにこうした課題に対応しているのか、という点についての具体的なお話を頂戴いたしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 

(駒澤大学専任講師 内海 麻利)
 はい。本日お招きいただきまして、ありがとうございます。駒澤大学の内海と申します。私は、御案内にもございますように、都市計画やまちづくりというものを専門に研究をしておりますが、中でも、まちづくりのシステムである、全国の条例を対象に研究を進めて参りました。

 なかでも、高知県土地基本条例については、地方分権時代の先進的な県条例として、著書や雑誌などにも紹介させていただいているところです。
 そして、こういった研究を進めていることから、自冶体における条例づくりや施策づくりにもかかわらせていただいておりまして、本日のテーマであります土地利用計画の策定に当たっては、幾つかの市町村において、住民の方々と御一緒に計画づくりを検討させていただいております。

 そこで、本日、私からは全国の土地利用にかかわる条例の動向を御紹介するなかで、高知県土地基本条例の意義というものと、この条例が規定する市町村の土地利用計画の重要性を御紹介できればというふうに思っております。

 皆様、お手元の資料では、20ページにお話の主旨を書かせていただいておりますが、まず初めに、全国で展開されている土地利用にかかわる条例の動向、どういうものなのかという点を御紹介したいと思います。

 現在、土地利用に関する条例は、開発などの規制誘導を中心に多く制定されておりますが、近年の動向として、三つの傾向があるのではないかということが調査などから分かってきております。

 一つ目は、条例に土地利用計画を定める傾向があります。そこで、どのような内容を位置付けているかが重要となります。市町村の条例では、先程、小林先生から、穂高町あるいは神戸市などの御紹介がございましたように、土地利用計画の作成において、ほとんどが住民参加で行われています。

 また、内容的にも地域的、あるいは分野的なものを法律が定める計画を包含するような形で、総合的な独自の内容を定めているというものがあります。そして、地方自冶法に基づく総合計画、あるいは国土利用計画法に基づく市町村計画、あるいは都市計画法が定める都市計画マスタープランなどとの関係も明示されています。

 つまり、メモに書かしていただいているように、条例に、土地利用計画の策定手続と、総合的な土地利用計画としての内容と法的位置付けを規定しています。これは、独自の土地利用計画の正当性を確保するという観点から、住民の理解と参加を前提とし、また、法的根拠を明示化することを意図したものでもあります。

 二つ目は、この条例で定める土地利用計画の実現手法を同じ条例で定めているという点です。メモの方には、その具体的な内容として、土地利用計画への適合規定と書いてございます。「計画適合規定」とは、開発事業などが、自治体の定める計画に適合するよう手続や協議を義務付ける規定として示させていただいておりますが、その内容は二つあるのではないかと考えています。

 一つは1)に書いてあります内容で、地域住民の参加により策定された市町村の土地利用計画の内容を個々の開発等事業者に遵守させるという手続が定められている点です。これは、事業者が開発事業などを行う際に、住民の参加によって出来た土地利用計画に即して、企画・計画・実施することが義務付けられるような手続です。

 2)として書かしていただいておりますのは、開発事業の手続の中で土地利用計画を道具として、周辺の住民の方々と開発事業者との調整を図るという手続です。これは、開発事業の早い段階で、開発事業の説明会あるいは公聴会などを開いて、事業者が事業の内容を説明する。

 そして、地域の住民が意見を述べられるような場が設けられている。つまり、こうした手続は、土地利用計画を用いて土地利用に地域の住民の意向を反映させようということと、開発協議を通じて、事業者の説明責任を果たす場を設けているようなものです。
今、お話した二つの傾向・動向は、市町村に多いものでございます。

 三つ目は、県条例の傾向に見られる特徴です。数はそう多くないのですが、先程、小林先生から御紹介があった中で兵庫県,神奈川県などが市町村の土地利用計画の策定と活用を念頭においた県条例を定めています。

 例えば、兵庫県条例では、市町村及び地区レベルで策定された地域整備計画を位置付けて、その策定に当たっての支援を行うと同時に、開発事業がその計画に遵守する仕組みが定められています。これらは、県が市町村の自主性を尊重し、調整補完する地方分権時代にふさわしい仕組みではないかと考えられます。以上の三点が、全国の条例の動向の先進的なものであるかと思います。

 それでは、何故こういった三つの傾向が出てきているのかということです。一つは、なぜ土地利用計画が必要なのかという点と、もう一点は、土地利用計画をなぜ条例で規定する必要があるのかという点でございます。

 まず、なぜ土地利用計画が必要なのかについては、地域の望む目標像、あるいはビジョンを、住民と行政、あるいは住民同士が共有していく必要性が存在しているからではないかなと考えております。

 その背景としましては、地域の自己決定・自己責任でまちづくりを行う可能性が拡大したとする地方分権の流れがあります。また、現実的には、地域で起きている問題、住民が地域に寄せる思いが不明であるというようなこともあります。

 地域の問題解決について申し上げますと、例えば、地域の景観や環境を阻害する開発事業などが起きた場合に、どういう方法で開発事業を誘導したらいいのかということが明示化されていないという状況があります。また、住民の地域に寄せる思いというのは、多様であって、対峙するような考え方も沢山あります。

 そこで、地域として一つの目標を土地利用基本計画として示すことで、住民と行政、更に事業者に向けて地域のあるべき姿を明示化、提示していくことが出来るわけです。

 私のかかわっている神奈川県の大磯町の事例を申し上げますと、大磯町では、自然あるいは別荘地の開発問題、農家を中心とする地域の衰退などに悩んでおりました。そこで、開発や建築行為を誘導するため、あるいは活性化を目的として、「大磯らしさを守り育てる条例」というのを策定することにしました。

 そこで、住民の方々も交えて最も議論したことは、「大磯らしさ」とは何なのかという点でした。もちろん大磯町では、著明な松林や、文豪が好んだ景勝地が沢山あるところです。当然、こうした重要な歴史・文化を保全するという意見は出されましたが、結果として町民が出した答は、大磯らしさとは、町民の生活、更には町民それぞれの心の中に刻まれているのではないか。地域の誇りであったり、愛着を一つの形にしたいというような思いでした。

 そして、その思いを表現するものとして「まちづくり基本計画」という、土地利用計画を条例に位置付け、町民参加で策定することになりました。現在は、ワークショップなどを開いて議論しているところです。つまり、地方分権で最も重要とされる地域の特性や個性、すなわち、「らしさ」というもの自体が明確になっていない現実があって、町民は、それを表現する道具が土地利用計画というふうに理解したわけです。

 次に、なぜこうした土地利用計画を条例で規定する必要があるのかという点でございますが、条例で土地利用計画を規定している自冶体にその理由をたずねたところ、主に二つの回答がありました。

 その一つは、個別法の枠組みを超えた総合的な対応を図りたいというものです。これは小林先生や知事から御指摘がございましたように、法令による土地利用計画や規制制度における複雑化、あるいは総合性の欠如、個別法の限定性というこれまでの法律の問題点などもあります。法定計画では、地域住民の生活に根ざした総合的なものを作るのは困難です。しかしその一方で、自治体独自に定める計画というのは実効性を視野に入れると何らかの根拠が必要になってきます。そこで、条例にその土地利用計画を位置付けるということになっているわけです。

 二つに、土地利用計画の実効性の確保をしたいということです。この実効性を確保するために、独自の実現手法を定めている手続を二つ御紹介しました。計画適合規定や周辺住民との調整という1)や2)で御紹介したと思いますが、逆に、こうした独自の規制誘導の根拠として、土地利用計画が住民の参加手続を踏まえて、住民の支持と理解を得た土地利用計画に基づいているということが非常に重要であるということがいえるかと思います。

 他方、県レベルの動きについては、先程、県と市町村の対等化という話がありましたが、やはり、出来る限り、住民に身近なレベルの政府が権限を持つべきであると、その中では、県の役割というのは、広域連携、調整補完というのに徹するというような方向性が地方分権化の中に出てきたわけですが、それに沿って実践しようという動きが先程御紹介した県レベルの動きだと思われます。

 けれども、特に開発許可権限を持たない自冶体、高知県では高知市以外が開発許可権限を持たないということだと思いますが、その場合に、県と連携しない限り、地域に応じた土地利用誘導を図ることが出来ないと、ある一定の限界を持っている。その場合は、やはり県と市町村が連携をして、あるいは県が補完をしていく、支援をしていくということが重要です。

 更には土地利用計画策定においては、人・資金など、多くのエネルギーが必要になってきます。こうした方向性あるいは実態から、市町村土地利用計画を支えるような仕組みが出来つつあるという状況にあります。

 以上が、近年の土地利用にかかわる条例の動向に見えてくる実態ですが、冒頭でも申し上げましたように、こういった傾向のすべてを地方分権時代の先進的な条例として含んだものとして紹介させていただいているのが高知県土地基本条例です。

 その意義・背景については知事の方から御紹介がありましたが、特に二つ注目される点としては、やはり地域の意思の尊重と優先を重視されている点、小林先生からもハイブリッドな条例というお話がございましたけれども、土地利用計画を基本施策として、全面に押しだされた条例は初めてではないかと思っております。

 更に、二つ目は、市町村の土地利用計画の実効性を確保するための具体的な手続が定めた県条例は、高知県土地基本条例が初めてだろうと思います。
ただし、論文などで高知県土地基本条例を先駆的なものとして御紹介させていただいている最後に、いつも付け加えさせていただく課題として、すべての鍵になるのは市町村の土地利用計画のあり方、市町村の土地利用計画をいかに作ることが出来るかを期待を込めて投げかけています。  

 先程お話したように、地域の意思に基づき作ることが出来るのか、あるいは高知らしさを創造していくことが出来るのかが極めて重要です。さらにこの条例では、私権を制限するような内容も規定していますので、その誘導根拠になり得る計画を作ることが出来るかということが、最も今、この条例に、あるいは高知県の土地利用において、求められている課題ではないかというふうに思います。
 

(北村)
 どうもありがとうございました。知事の御発言あるいは内海さんの御発言からもありますとおり、この条例を動かすに当たっては、市町村の役割が非常に重要であるということでございます。

 そこで、夜須町長に、現場を預かる町長としてどう受け止めて考えるか、現在どういう施策あるいは動きが夜須町において進行中であるかということを、御紹介いただけませんでしょうか。 
 

(夜須町長 清藤 真司)
 皆さん、こんにちは、夜須町長の清藤です
 今日、私が、ここで、そうそうたる皆さんの中でこの場に呼んでいただいたということの一つに、先程、北村先生からお話がございました地方の一町長として、現場に、一番住民と身近に接する機会が多いということと、もう一つは、土地利用計画です。今後、夜須町で15年度と16年度、これを策定していくという予定になっています。

 そんなことの思い又は取組というふうなものをお話していきたいというふうに思います。私の背中の方にも幕があるんですが、地方分権時代の新しいまちづくり、地方の時代又は地方分権時代という言葉が叫ばれて久しいんですけれども、その中で一番思うのはまちづくり、このことに関して一番大事なものは何だろうかというときに、住民参加、参加することと、もう一つ踏み込んで人づくりではなかろうかと、そういうふうに思います。

 これからのまちづくり、地域づくり、そんなものを考えた時に自分たちのまちは自分たちで作るんだというふうな意識を住民がまず持つこと、そして自分たちの地域、自分たちのまちをこんなにしたい、こんなふうになったらいいのにというふうな一人一人がそんな思い、そして夢を持って町づくり行政に参加する喜び、そして参加することの面白さを持ってもらって、積極的に行政あるいはまちづくりに参加する環境を作ることが必要ではないだろうかというふうに思います。

 また、そういった土地利用計画策定を契機としまして、これが一つの形となって、町民がより参加ができる、そんな環境が作られたらよいというのが一番の願いでございます。

 また、ここで、この場をお借りしまして、夜須町を会場の皆さんに御紹介をしたいというふうに思います。夜須町は、高知市の方から車で40分ほど、25km程離れた東の方にございます。海あり、山あり、自然が豊かな恵まれたところで、近くには大きなホテルもございますし、ゴルフ場もございます。

 また、昨年からヤ・シィパークがフルオープンをしまして、海水浴場も併設なんですが、海水浴場に全国的にも珍しく芝生があり、そして夏以外でも秋・冬・春といろんな楽しみ方がございます。是非お越しをいただきたいというふうに思います。

 そんな中で、夜須町の立地環境は凄くよいのですが、過疎化・老齢化が進み、特に基幹産業である農業が昔と違ってなかなか厳しい現実がございます。また、農地の耕作放棄地、休耕田とかそういうものが非常に多く、まずその対策が必要であるということと先ほどお話をしましたヤ・シィパークと南部の海の方はなかなか開発が進んでいるんですけど、北部地区がいろんな開発が遅れているというようなことがございます。

 また、近年、夜須町では夜須川地区というところなんですけども、森林地域における土地開発、また、産業廃棄物の中間処理施設の問題がございました。住民の反対の署名運動、また議会の方でも全会一致で反対の議決をしたり、そういったことがございました。その中で住民の環境に対する、豊かな自然を守りたいというふうな意識がぐっと高まったという経過がございます。

 平成13年度に夜須町の総合振興計画というのを策定しました。策定時にアンケートを取ったんですけれども、このアンケートの中で、夜須町の豊かな自然環境を残したいということと都市的利便性を持った生活基盤を是非作りたい。この二つが住民の大きな希望といいますか、意識でございました。

 そんな中で自然環境の保全、景観作り、こういったものにも大変意識が強かったわけですけれども、単なるランドスケープでなく、夜須だから、夜須らしい現風景を活かしたそんなランドスケープを考える。

 また、土地というのは住民の生活及び活動の基盤であり、住民の視点に立って地域の事情に合った利用の仕方をされなければならない。有効利用を図るために、その土地利用計画の早期の策定が必要ではなかろうかということで、住民参加主体の官民共同のまちづくりを、そして夜須町の歴史の先達がいろいろ残してきたそういったものを考慮しながら夜須町の町全体をデザイン、ゾーニングして行く必要があろうかと思います。そういったことを踏まえて、この夜須町で土地利用計画をこれから策定していきたいというふうに思っています。

 ところで、市町村としまして、非常に大きな問題がございます。市町村合併という問題がございまして、夜須町においても香南地区で合併協議会が今進んでいるところでございます。ただ、平成17年3月が目標ということで非常に期間も短い、少ないということで、今、いろんな協議をしているところでございます。

 けれども、合併後の地域全体の広域なまちづくりを考えるということがまだまだ不足しているのではなかろうかというふうに思います。全体のまちづくりを考えることも不足しているし、夜須町だけの今後の合併までのまちづくり、合併後の夜須の地区をどういった形にしたらいいのかというふうな議論も、まだまだ不足をしているように思います。

 そんな中で、土地利用というのは夜須町だけに限らず、合併した後の地区の大きな要素でもあろうし、合併するまでに夜須の地区をこんなにしたい、こんなまちになったらいいのにというまちづくりを土地利用計画を踏まえて、合併までにきちっと作っておくということが、夜須の存在意義を高め、アピールする、そして夜須の特徴を近隣の町村にも十分理解をしてもらうということも必要ではなかろうかと思っています。

 また後段でお話をしますけれども、土地利用計画を一つの大きな契機としまして住民参加、合併協議にも住民が参加をする環境を作る、三位一体といいますか、一石三鳥、四鳥というふうな形で取り組んでいきたいというふうに思っています。
 

(北村)
 ありがとうございました。合併という非常に、ある意味では読めない要素を持ち続けながらの活動というのは非常に、興味がございます。後でより詳しく御発言を頂戴したいと思います。

 方分権時代と申しましても、国は市町村に関心はないぞというわけでは決してございません。国の方でも市町村に対し、健全な関心が当然あるわけでございます。それでは飯田課長にその辺りのお話を頂戴したいと思います。
 

(国土交通省土地・水資源局  土地利用調整課長 飯田 道夫)
 御紹介いただきました飯田でございます。画面をご覧いただきたいと思います。先程、北村先生から国の法令は遅れている、知事からも法制度上の問題をいろいろと御指摘いただきました。その辺りをちょっと自戒を込めて御説明したいと思います。

 まず、土地利用に関する法制度の仕組みでございます。国土利用計画を基本として県が土地利用基本計画を作っております。土地利用基本計画の中で国土を五地域に区分しております。都市地域、農業地域、森林地域などでございます。それぞれに基づいて個別の法律の制度がございます。

 都市地域ですと都市計画法に基づく都市計画区域、農業地域ですと農振法に基づく農業振興地域というように、それぞれの個別規制法がございます。
五地域の面積でございます。国土は3,700万ヘクタールですが、五地域を合計しますと、5,800万ヘクタールでございます。つまり、国土の1.6倍ということで、かなり重なっている部分があります。

 次に、先程来、出ていますけれども、計画白地地域のことです。計画白地地域は何かといいますと、例えば都市地域ですと、市街化区域とか市街化調整区域は線引きがなされているのですが、そういうことがなされていない地域が4割ぐらいあります。

 農業地域のうち、農用地地域でないところもかなりの面積があります。森林地域のうち保安林でないところ。こういうところにつきましてはかなり開発に対する規制がゆるいということで、ここの土地利用をどういうふうに調整するかというのが非常に難しいということでございます。

 そういうことで、どういう状況が起こっているかということでございます。例えば、ミニ開発、スプロール的開発が進んでいましたり、里山・里地等の身近な自然が破壊されたり、一方では低未利用地・耕作放棄地の発生がございます。

 こうした問題に対してどういうふうにしたらいいのかということでございます。まずは地域ごとに目標を掲げていくことが大切じゃないかということで、例えば、限りある土地を次世代により良い形で継承していく。

 それから、高齢化社会に対応した、安全・安心なまちづくりにはどうしたらいいか、それから、より良い生活空間・緑と水の景観の形成と保全に対してどうしたらいいか、そういう観点からそれぞれの地域に合った持続的な土地利用の構想とその実現に向けた取組が必要ではないかということでございます。

 一つ例を上げて御説明したいと思います。これ(資料24頁)は埼玉県の三富新田というところで、例のダイオキシンの問題で有名になったところです。都心から30kmということで非常に交通の便がいいのですが、一方で7割ぐらいは屋敷林と農地がきれいに保存されているところです。

 この土地利用区分を見ていただきますと、農用地区域以外はほとんど規制が緩いところで、こういったところに産廃施設とかターミナルとか、住宅もかなり入ってきていて、土地利用上の問題が生じてきております。これに対して地元では、農業と自然を守るための土地利用のためにはどうしたらいいかということで、検討が進んでいるということです。

 国土交通省土地利用調整課としては、市町村・地区における土地利用計画策定を推進しております。
具体的に申しますと、市町村・地区それぞれに適した土地利用のあり方を考えていただくため、国の補助事業として、土地利用調整システム総合推進事業というものがございます。

 これは、具体的な計画策定に当たっての調査として、まず自然的な条件がどうか、インフラがどうか、景観・文化的条件がどうかといったことを調べて、地域の方々に説明会を開いて、それから必要であれば、専門家も派遣いたしまして、地域の自主的な土地利用計画を作っていただこうということで支援をしております。実際、既に全国で91市町村で土地利用計画を作っていただいております。

 その例を御紹介したいと思います。これ(資料25頁)は栃木県の西那須野町の例でございます。ここは全域が都市計画区域で未線引きのところですが、独自に集落地域ゾーンとか、市街地形成ゾーン・フロンティアゾーン・緑との共生ゾーンという形で区分いたしまして、こうした方向性で土地利用調整を進めているということです。

 都市計画法の区分とは違う独自の将来図を描いているということです。この計画を実行に移すために指導要綱を作って、一定の開発行為に対して指導とか勧告をしているということです。

 続きまして、かなりアバウトな図ですが、静岡県富士宮市の実例です。ここ(資料26頁)が市街化区域で、あとは市街化調整区域ということですが、保存系のゾーンを二つ作っています。それから一定の条件の下で開発を進めても良いというゾーンを二つ作っています。こういうゾーンを作ることによって、開発するところと保全するところをしっかりと分けて行こうということです。

 実はここのポイントは、線が非常にアバウトであるということです。実際、線引きをすると、どちらに入るかということに、住民の方々の意見の別れるところですが、そこを巧みにすり抜けているということで、私は非常に気にいっているところでございます。

 これ(資料26頁)は、地区レベルでの計画の例でございます。地区ごとにこういうゾーンを作ったものです。里山の保全、集落の環境整備、優良農地の保全とか、地区ごとに将来像を描いているという例です。

 ご覧いただきましたように、国土交通省土地利用調整課が進めている土地利用計画の特徴というのは、市町村とか地域の住民の合意をベースにしているということでございます。既存の法制度とはちょっと観点が違う、かなり将来的なイメージを描いてそれを実現していこうということで、計画の実効性については、住民の声をベースにして、できれば条例化、議会の議決という形にもっていこうということでございます。

 そこで、これからのまちづくりをどうしたらいいのかという結論に当たる部分ですが、まず地域の将来像、皆さんの目標を明確にする必要があるということです。
例えば、安全・安心な町づくり、防災とかバリア・フリー、コミュニティの維持とか、潤いのある生活空間、緑と水の景観の形成・保全、美しい国づくり、こういう目標をそれぞれの地域で作っていきたい。

 それで、その実現に向けて住民と行政とが共同して働く、住民参加による土地利用計画を充実していくという目標とプロセスが大切だと思います。この過程で重要なのは情報提供・情報公開ということだと思います。

 それと、今日も夜須町長さんいらっしゃっていますが、やはり市町村の首長さんのリーダーシップというのが非常に重要ではないか。要は最初のきっかけをいかにするかというイニシアティブ、リーダーシップをとってもらいたいのです。

 後は、熱意のある住民の方々の自主的な取組みが重要です。私、「ハートのある人達」というふうに言ってるんですけど、リーダーシップを持った首長さんとハートを持った人達が一緒になって、地域の将来像を作っていただきたい。

 それから、こういったものを作るに当っては、かなり技術的な面が必要です。その点を県が支援をしていただくことが大切です。それに対して、国としても支援いたします。ということで、これ(資料)は当課の事業の紹介ですが、こういう形でしっかりと窓口も決めてやっておりますので、ぜひ県の担当ないしは当課に御連絡いただければ、いつでも喜んで御支援というか、一緒にやりたいと思っています。

 次に、実際に土地利用計画についてどういうイメージをもっていただくかということでございますが、外国のキャンベラの例を挙げてみました。そこにはマレー川という川があるんですけど、これは四万十川の13倍も長い2,600kmある大きな川なんです。この例を御説明したいと思います。

 キャンベラはオーストラリアの首都ですけども、なぜここに決まったかというと、これはシドニーとメルボルンの間にあるということもあるのですが、眺望がいい、見晴らしがいいということが非常にポイントとなったわけです。

 これ(資料)は首都が決まって15年位たったところなんです。ここに国会議事堂があります。周りはほとんど建物がなくて、白くなっているところはすべて羊の放牧地で、ここに小さな小川が流れています。

 ここ(資料)にちょっと注目していただきたいですが、これが私がいた時のキャンベラです。川を堰き止めてまず湖を作りました。それから、放牧地にすべてこういう形で木を一生懸命植えました。その結果、ほとんど屋根が見えない状況になっています。

 実はここは全部住宅地なんですけども、今のところを拡大したのがこういう状況です。すべてこういう形でコーディネートして、一生懸命緑化を進めています。驚いたのは塀がないことです。細かいところまで気を使って、まちづくりを進めているということをご覧いただきたいと思います。

 それから、これ(資料)も私が上空からとった写真ですが、内陸の田舎町です。コンパクトシティについて、今日も、先生から御説明がありましたが、住宅部分とそれ以外の部分が極めて明確に別れております。

 これは川です。ここに農地の部分があるんですけれど、あとは全部放牧地です。こういう形でのある程度の土地利用区分の明確化が必要なのではないかというように思っています。

 それから、農地の中では極めて流動性が高いわけです。これは一般の不動産屋の農場の広告ですが、農地の売買はまったく自由です。ただ、農地、農場はあくまでも農地、農場であって、他の用途には出来ないということで用途規制は非常に強いのです。

 これ(資料)はマレー川の上流のオーストラリアの一番大きなダムのところですが、日本のダムの状況と比べて見たら分かるように、はげ山になっています。全部これは放牧地です。諸外国の状況というのはこういうものです。ここは川の色をご覧いただきたいのですが、青くなっています。次に、ここは大体1,000km位下ったところですが、川幅は50mから100mで、土壌の侵食が進んでいまして、川が非常に濁って、土色になっています。

 これは中流の水田で、10月に撮った写真です。これは等高線で畝を作っているので、畝が曲がっているのです。ここに水準器があるんですけど、これに合わせて機械でこういうように作っているのです。

 オーストラリアでは非常に水が重要でして、水をしっかりと管理をしている。ここに水車のカウンターがあるのですが、このカウンターで年間に使える量が決まっていて、この年は渇水だったので水の料金がかなり高かった。

 ここは水田を放棄する状況になっております。耕作限界地に水がこないと、羊の放牧地になってしまいます。ここは稲を植えたのですが、途中で水が来ないんで止めちゃったわけです。私が申し上げたいのは、土地と水はいかに大切なものかということを御理解いただきたいということです。

 オーストラリアとか中国から安い食糧とかがたくさん来ているわけですが、そういう外国の食糧というのは森林とか農地とか水を非常に無理して使って安く生産している。それを日本が輸入しているということです。日本に豊富にある土地とか水とか、森林もそうですが、これらをしっかり使わないで、海外の資源を酷使して私どもの生活が成り立っているということです。

 もう一度、土地と水の使い方がいかに大事なもので、なおかつ、しっかりと使いまわすことが重要であるということを、地球環境保全の観点からも考えていただきたいのです。そういう面からも、土地利用のあり方というのをしっかりと考えていく必要があるのではないかということでございます。
 

(北村)
 どうもありがとうございました。今のお話等含めましてプロセスの重要性、参加の重要性ということが語られました。
 小林先生も内海先生も大学の先生ではございますが、自治体の審議会などでは、住民の方々にののしられながらも、一生懸命そういう人達をサポートされておられる先生方でございます。

 ここで内海先生、小林先生流に、条例なり、計画なりを作っていくというところで、それをしかも実効性あるものにしていくためには、どういう点が重要かということを、具体的にお話をしていただければと思います。それでは内海先生の方からよろしくお願いいたします。
 

(内海)
 はい。先ほど御紹介いたしましたように、高知県土地基本条例というのは、地域の意思の反映であったり、尊重という点で土地利用計画を位置付けたり、実現手法を明示化したり、市町村自体にとっての土地利用計画の策定の支援などを設けるような規定も定められています。

 しかし、県条例のみで対応できない部分も多様にあるわけです。恐らくその部分が市町村の条例という形で期待されるところではないかというふうに思います。その重要なところを幾つか御紹介させていただきたいと思います。

 その一つは、その土地利用計画の策定のための手続も条例に定めていく必要があるのではないか。先程、市町村の土地利用計画は、いかに住民の意向を反映することが出来るかという点が鍵になるというお話をしましたが、住民の生活に密着した意向を十分に発揮するためのプロセスは各市町村によって異なっていて、それにかかわる住民によってもさまざま異なります。

 先程、御紹介にもあったように、市町村などで土地利用計画を策定する場合に一番問題になるのが、どのように作るのかということで、会の半分ぐらいが過ぎてしまうというような状況があります。

 高知県はどうかわからないですが、行政と住民の信頼関係がまだ築けていないという状況の中で同じ思いを一つにした絵を描いていくというのが非常に難しい。そういう意味で条例の中で、ある一定のプロセスを明示していく、ルール自体も市町村条例の中に規定していくということが非常に重要なのではないかと思っています。

 更には、先程ハートのある人達が重要であるというお話がありましたけれども、かなり熱心な住民の方々が住民の発意として作り上げた計画を土地利用計画に反映させていくというような仕組みを、恐らく市町村レベルで用意する必要があるのではないかなと、この辺りが土地利用策定のための、あるいはゾーニングに関しての市町村条例の一つの規定事項ではないかなと考えています。

 もう一つが、県条例では10ヘクタール以上の開発行為のみを対象としていますから、この意味では木目細やかな対応とは必ずしもいえない部分があるわけです。したがって、地域レベルで問題を解決するためには更に小さな単位あるいは違う内容、市町村レベルの独自の問題に対応するような基準というものを設定していく必要があるのではないかというふうに考えています。

 これらの二つが市町村レベルで規定されている重要な内容かと思いますが、いずれにせよ、土地利用の計画のみならず、ルール化すなわち条例化においても住民の支持をいかに得ることができるか、住民の意向をいかに反映することが出来るかということが重要になります。

 こうしたプロセス、住民と行政が協同していく、最近使われる言葉でパートナーシップを協働というふうに読み替えて使っているところがありますが、今日ではこのような協働関係を築きあげることでしか、やはり計画であれ、条例作りも含めて、ひいてはより良い土地利用というのは出来ないのではないかなというふうに思います。
 

(北村)
 ありがとうございました。パートナーシップと申しますのは、双方向性ですよね。一方通行では片思いでありますから、いかにそれを確保するかというのが重要だという御指摘でございました。それでは小林先生の方から御発言を頂戴いたします。
 

(横浜国立大学大学院教授 小林重敬)
は い。簡単に二点申し上げさしていただきます。一つは、先程からもいろいろと御意見が出ておりますが、住民の支持と理解が必要だということです。それを一つの言葉で言うと、住民がお互いに契約をした、お互いに計画を作ることによって自分達の土地をこういうふうに使って行きましょうという約束事をしたという実感を持つ必要があるのではないかと思っております。そのことが、先程の計画作りに住民が参加するという必要性ということの裏返しの表現だと思います。

 御案内かと思いますが、先日、東京の国立のマンションに関していろいろ問題が起きて、これに東京地方裁判所が判決を言い渡しました。我々専門家もあっと驚くような判決でございまして、建てたマンションの上を切れという判決でございました。

 その判決の中に建築不自由のデメリットを住民が相互に受忍してきた。そのことによって良好な社会的ストックを形成することによるメリットを享受するという関係があの地域の中には成立していた。

 そのことを互換的利害関係、お互いに交換する利害関係というのだそうですが、自分たちでそのことを決めたことで、そのことを守る。守ることによって結果的に良好な社会的ストックというか、景観風景を獲得するという関係を住民の間で結んだという実感を持てるようにするためには、やはり土地利用計画を住民が参加して作らなければいけないのではないか。そのことがまず必要ではないかと考えています。

 そういうことを議論していると、先程、飯田さんのお話にございましたけれども、まち全体の土地利用計画に合わせて、出来れば地区のプラン、私も事例の中でお話しましたが、集落という小さい単位での計画を条例と絡めて意味あるものにするということも、私は必要ではないかと思っております。それが一点です。

 もう一点は、我々計画づくりや条例づくりをやっていて、住民が計画作り、条例作りに参加したが、結果的に大した効果が上がらないではないかというようにいわれてしまうことが、逆に住民の参加をある意味で将来的に阻害することになる。実効性を持つということは、私は計画においても条例においても必要だと思っています。

 今回の高知県の条例はある意味で実効性という面でそれなりのレベルに達していると思いますが、併せて、住民がこういうまちにしたい、こういう村にしたい、例えば、農村の風景を保全するということがよく出ていますが、日本の農村の風景は、保全するだけではどうも良い景観にもうならない状況にまできているのではないかと思っています。

 景観は作り出すという側面も必要だと、罰則を設けて規制だけしたのではどうも実現性は期待できなくて、何らかの形で、そこに事業的なものを組み入れていかなくてはいけないのではないかというように思っています。

 国の都市計画の関連ですが、国の、住民参加のあり方の審議会をやっていまして、その審議会の中で初めて一括助成という言葉を国の答申の中に入れようとしています。地域の方々がお金を国から補助金としてもらって、その地域にとって必要な事業は何かということを考えてお金を使う、そういう補助金をできれば作りたいと思って国土交通省もその方向で努力するといっておりますので、若干期待しているところです。
 

(北村)
 どうもありがとうございました。
 正に自己決定ですよね。決め方も自分たちで決めてください。あてがい扶持ではないというようなことから、何かを期待しようということでございましょう。
 夜須町長、今までの御発言をお聴きになられまして、これからお進みになる御決意も含めて御発言を頂戴できればと思いますが。
 

(清藤)
 はい。先生方のお話を聴いてこれからの土地利用計画を含めたまちづくりに住民参加が絶対不可欠なんだということがよく分かりました。これは自分の思いと同じなものですから、意を強くしたという思いがします。

 その中で夜須町では、そういった住民参加の取組みをこれからどうやっていくか、なかなか難しいことだと思います。どうやってやっていくか具体的に考える必要もあろうかと思います。

 そこで、夜須町では役場の中にまちづくり推進室という部署を今月中に設置をする予定にしています。これは行政の中ですので、担当職員もおり、そしてこれからの夜須町のまちづくりに情熱のある人、先程お話にもありましたハートのある人、こういった方に何名か入っていただいて、推進委員長は町長である私というふうな形になって、そして大事なことはその下といいますか、周りに住民参加ができるサポーターの方を、ずっとなるべく参加をしてもらうというふうな形で作りたいと思います。

 何を言いたいのかといいますと、行政の中の推進室だけでは行政のいろんな考え、立場、話だけになってしまいます。また、サポーターの方だけの話でも、これもワークショップという言葉も10年ほど前からあるんですが、ヨーロッパ等と違いまして、日本のワークショップはややもすると何か要望会の感じになってきまして、私の家の前の道を広げて欲しいと、こういうような形になってこようかと思います。

 そうではなくて、これからはやってもらう、こんなことを役場でして欲しい、そういう思いから自分たちのまちは自分たちで作る、こんなに自分たちがしたいんだと、それを行政はどうサポートしていくかというふうな、意識の改革というか、そういったことをコンセプトとして、かんかんがくがく夜須の将来を、デザインを、未来図をどんなにして作っていくかということを常日頃から話し合って欲しいと考えています。

 まあ、そんな中でこれからのまちづくりにふさわしいそういった企画を推進室の方で吸い上げて、そしてそれを各担当課の方に回していく、そういう風な仕組みですると、夜須町のこれからの行政のいろんな施策・予算執行といったものはすべて住民の考えから、声から起こってきたというふうな形が出来ようかというふうに思います。

 そういった形のまちづくり推進室というものを是非作るようにしたいと、要はこれをどれくらい啓発をするか、また、参加をしてもらえるかというふうな工夫も一つ大きなことであろうかというふうに思っています。

 それで、まあ一つ、二つ例を言いますと、例えば夜須の中学生にも作文を書いてもらって、11月には文化の日もございます、夜須町では文化祭等もございますが、中学生に自分の住む町のまちづくり、将来こんなにしたい、こんなになったらいいのにという作文を書いてもらったり、例えば小学生には自分の地域はこんなになったらいいという絵を書いてもらったり、そういったものを夜須の子供が思う将来のまちづくりコーナーというふうなものを作る。こんなことも考えてみてはと思っています。

 また、これも一つの手段として、NPOのいろんな活動を積極的に支援していきたい。NPOというのは、私を活かすことによって公を活かすという面もあろうかと思います。そういった夜須町の民間の、一般の方が行政では出来にくいことを、そちらでNPOを作ってやるということで、またより多くの行政も活かされてくるという形になろうかと思います。

 そういった住民が参加できる、行政に参加する喜びを持ってもらえる環境をどうやって一つ一つ作っていくか、いろんな細かいことを考えながら作っていく必要があろうかと思いますけれども、要は取組みの大事なことは住民参加です。どういった形で皆さんがそれに参加していただけるかということを一番主に考えながら、そして、それと土地利用計画とまちづくりというものを同時進行という形で考えて、自分たちの住むまち、また未来をデザインしていく、次の世代へそれを伝えていきたいと思っています。

 合併があるからこそ、その前にきちっと住民の力で作るという自信を持っていただける環境を作ることが大事ではなかろうかというふうに思いますので、そういった細かいことから一つ一つクリアをしていきたいと考えています。
 

(北村)
 ありがとうございます。正に将来世代も含めた住民全体が責任を持って試行錯誤を続けていくというようなことが必要かということでございました。
 さて、知事、今までの御発言お聴きになりましてやっぱり県としても戦略をもって、このプロジェクトを進めていくということがあろうかと思うのですが、いかがでございましょうか。
 

(橋本)
 戦略ということにいきなりいく前に、何が必要かなということを考えていました。住民参加によってこの土地の利用計画を作っていくということの大切さのお話を伺いながら思いました。

 というのは、これまで日本では、土地利用の計画というのはなんか住民から最も遠いものであったような気がするんです。
例えば、都市計画法のいろんな都市計画道路とかさまざまな計画があります。これも別に全く住民を遠ざけて決めているわけではございませんし、最後の決定の以前に縦覧をして、御意見を聴くとかいろんな手続があるわけですけれども、

現実には、縦覧をしてもどなたも御覧にならずに、出来上がったものも知らずに、そして、ある日何とか土地開発公社ですとか、土木事務所ですとかいう人が来て、あなたのお家は、実はこういうふうに何月何日の都市計画決定で都市計画道路の用地になっているんですよ、ついては予算が来年度からつきそうだから、土地を御提供いただけませんかという話で急に気付いて、なんだこれはというようなことが非常に多いと思います。

 これは自分の、個人の土地のお話ですけども、先程お話があったように、守りたい土地は他人の土地だということを含めて考えれば、日頃からもっと土地利用の計画に関心を持っていただく、そのことが一番大切なことだなあというふうに思いました。

 ちょっと土地利用そのものとは違いますが、僕も外国についてびっくりしたのは、一つはスイスのチュウリッヒに行ったときです。住宅地といってもやや公園に近いようなところですが、そこにほんの細い棒とベニヤ板みたいなもので大きな造形物ができていたんです。

 これはなんだといったら、そこに新築を予定している人が、自分のお家を建てたら、どういう形になるか、それによって、例えば一日中日陰がどうなるかいうようなことを周りの人に見てもらって、認めてもらうために作ってあるんだということを聴いて、地域を守るという意識がそこまで強いかということを思いました。

 飯田課長がオーストラリアの例をお話になりましたけれども、僕もゴールドコーストに行った時、素晴らしいなあと思ったら、あそこも30年前は沼地だったところをみんなでこう考えながら、みんなといっても当然かなり行政が入ってるでしょうけれども、ああいう町を作って、モーターボートで行きあって大変高級な住宅地であり、リゾート地である町ができた。

 つまり、守りの面でも攻めの面でも、皆が共通の意識を持てば、素晴らしい町、素晴らしい集落、地区というのをいくらでも作れるではないかなということを思いました。

 その住民参加をいかにするかということですけれども、内海先生がその行政との信頼感はいかがかというお話があって決して信頼感は十分ではないと思います。信頼感だけではなくて、言葉が、言語が十分共通になっていない面があります。

 ですから、今、清藤さんがNPOとおっしゃいましたけれども、こうやってまちづくりを考えていく、土地利用計画を考えていく、それをつなぐNPOの存在というものが必要ではないかなあと思っています。

 高知県の場合には、例えば浦戸湾の周辺をどうしていくかということで、今NPOが立ち上がって、そういう活動をしてくださってますけれど、同様にそれぞれの地域で、そのまちづくりを考え、そのときに行政の言葉を市民に分かりやすく通訳をしていく、また、住民からの声も単に要望、陳情ではなくて、それをもっとクリエイティブなことに繋げるにはどういうふうにしていけば良いか知恵を盛っていく、こういうNPOの存在が必要ではないかと思っています。

 もちろん、その土地利用計画を作るためのマニュアルを設けて、それを市町村の皆様方にお示しをしていく、また、それを作る際の一定の補助、支援をしていくということも当然必要なんですが、それだけではなくて、繋ぐ機能を果たすNPOが必要ではないかなと、そういうNPOを育てるというか、一緒にやっていけるようなことを考えていきたいというふうに思いました。
 

(北村)
 ありがとうございます。さて、残り少なくなってきたディスカッションでございます。今、知事からも参加あるいは情報あるいは一方的にいうだけでなくて、責任を持ってコミットする市民の存在が知らされたのではないかというように考えます。

 最後に各パネリストの方々に今後、土地利用はどういうふうにやるべきであるのか、将来像をどういうふうに描けばいいのかということを、今までの他の先生方の御発言も踏まえて、お一人ずつ御意見を賜ればというように思います。内海先生いかがでしょうか。
 

(内海)
 一言だけ、先程から申し上げておりますように、高知県の土地基本条例は分権時代にふさわしいシステムであるというふうに私は思っているんですけれども、そういった方向性を自己決定・自己責任の下に実現していくという契機がこの条例によって出来たんだろうと思っています。

 逆にいうと、高知県、高知県下の市町村・県民自体が実力を試されようと、今、しているのではないか、更にいうと、分権時代を経たまちづくりのシステム、土地利用ですけれども、このまちづくりのシステムのあり方、運用のされ方によって、わが国の土地利用の実態、分権化ということ自体にも影響を与えるのではないかというふうに思っております。

 その意味では、基本的なところで市町村や地域住民の主体性や協働ということをベースに土地利用計画を作ってまちづくりを行っていっていただきたいと、更にはそれを支えるために県・国に対しても期待していきたいというふうに思っています。
 

(北村)
 どうもありがとうございます。夜須町長の方からは、先程もその具体の進め方につきまして御発言があった訳でございますけれども、やはり、この企画ができたとすれば、かなり今後の夜須町、合併もございますけれども、地域の将来像というものが具体的に描ける、かなり、環境保全なり、農業なりを重視したまちづくりというものが可能になるという御認識でございますでしょうか。
 

(清藤)
 はいそうですね。何よりも住民が考えて積み上げてきたというふうな計画になる訳ですから、そんなことで一番大切だなと思うことは、住民主体でいろんなゾーニングをする、デザインをする、そういった言葉は適当でないかも分かりませんが、訓練をするということにもなりますし、そういった環境ができるということにもなろうかと思います。

 それは取りも直さず、その土地利用計画だけではなく、これからの夜須の地区のまちづくり、そんなものを住民主体で考えると、力がつくというのが10年、20年、30年後の無形の目に見えない財産になろうかというふうに思います。

 次の世代にも活かせられるし、そして、町民がいろんなことでこれからの合併後にも自信にもなるし、このような無形の見えない財産が一番意義のあることであろうと思っています。そういったことを自分なりに皆さんにもお話をしながら、御理解をいただいて積極的にこの土地利用だけでなく、住民参加の意識が高揚するというふうな、町全体をそういった流れといいますか、皆さん思いを持っていただくということをこれから訴え、お話をしていきたいと思います。
 

(北村)
 ありがとうございます。フロアに御参集の方々は、あるいはこれから土地利用計画をどうしょうか、条例はどうやって作っていこうかというお気持ちのあられる方、NPOといわれているから私たちも参加したいと思われてる方もいらっしゃるかもしれません。

 小林先生におかれましては、そうした委員会等に数多く参加された非常に経験豊かな先生であられますので、何かこう御助言・アドバイスを含めての御発言があれば、最後におねがいいたします。
 

(小林)
 今、土地利用計画あるいは策定手続の議論がいろいろございました。住民の参加は重要でございます。参加の実現にはある意味で自ら参加したいという意欲を出し、この計画を作り、条例を守るためには自分たちにとって、どういうメリットがあるということがやはりないといけない。

 今日、日本の土地というのは極めて高密に利用されていますから、一方的に、この地域は農村地域で、この地域は森林地域であるというそういう区分がなかなか難しい。逆にいうとむしろ先程若干申し上げましたが、農村地域と都市的な土地利用はむしろ混在しているところの方が農業経営はうまくいくという事例がかなりあります。

 ただ、そうかといって農村地域を乱雑に壊していったのでは農業は成り立ちません。その秩序を求めること、結果として農業経営がうまくいくような土地利用がトータルにはできるという、そういう解を土地利用計画の中で作り出す、難しいことなんですが作り出すということは、是非必要ではないかと私は思っています。先程の神戸市の里づくり計画というのはまさにそれをねらっている訳です。

 その里づくり計画の単位に自分たちのコミュニティはどういう土地利用をするか、そのことによってあるメリットをその方々は受ける、その都市的土地利用のメリットを受ける必要のないところ、例えば野中地区で、実はありましたが、あそこは自らも受けない、農村地域を保全するという議論を自らしている訳です。そのことが恐らく必要だというふうに私は思っております。
 

(北村)
 ありがとうございます。先程、知事の方からも、「ある日突然、都市計画の話が降って湧いたように起こる」というご発言がありました。今の小林先生のお話は、正にそういうレベルの、何が出来て何が出来ないか、何が望ましくて、何が望ましくないかということを自分たちで議論して決めていくということが自分たちのルールを守るのに繋がるのだというようなことであったかと思います。

 この点、国土交通省のお立場ということもございますが、先程飯田さんは、自分の趣味であれは好き、これは好きとおっしゃっていました。もっと踏み込んだ御期待なり、御発言が賜れるのではないかと思いますが、いかがでございますでしょうか。
 

(飯田)
 まず、本日このような素晴らしい機会を作っていただきましたことに感謝申し上げます。こうした取組みは、全国で初めてだと思います。今回の取組みにつきまして全国に向かって、情報発信、P Rを是非していきたいと思っております。

 それで、今回のテーマである個性あるまちづくりに関して、最後に三点ほど申し上げたいと思います。
個人的な見解ですが、まず、今までは開発一辺倒、又はそれに対するカウンターアタックとして、保全一辺倒というようなかなり両極的な立場というものがあったと思います。これからの時代には利用と開発と保全のバランスをいかにとっていくかということが大切です。

 そういう利用と開発と保全とのバランスについて住民の方々が議論をして一つの長期的な方向に作り上げていくということが、土地利用計画を作る上で最も重要なところだろうと思っております。

 二点目です。特に私は山村地域の動向について関心をもっている訳ですが、過疎化とか高齢化が特に進むようなところにつきましては、いかに高齢者の方々が地域の中にとどまって、安全で安心な暮らしを続けていくことが出来るかということを土地利用も含めて考えていく必要があるのではないかということです。

 コンパクトシティというのが出ていましたけれども、地域のコミュニティなり、福祉とか安全とか農業活動も含めて、土地利用調整を含めた集落再編というのを山村地域で考えていただきたいと思っております。

 それから、三点目です。これも、私は最も基本的なことだと思うのですが、土地利用計画を作り、これを具体化していくためには、まずその土地を誰が所有しているかということを明確にしておく必要があります。

 先程、知事からもご発言がありましたように、何か事業をしようとしたとき、土地利用調整をしようとしたときに話す相手が一体誰なのか、ここからここの土地は一体誰のものなのかということがはっきりしていないと何も話は進まないのですね。

 そういう意味でしっかりとした地籍調査、地味な取組みですが、これをしっかりと進めていただきたいと思います。国としても補助事業を行っています。愛媛県はかなり進んでいるのですが、高知県はどうもあまり進んでいないので、頑張っていただきたいと思います。

 これとともに、相続の問題ですが、かなり地元の方は東京とか大阪とかへ行っていると思うのですが、行ったきりの人に土地の将来方向を任せるのではなくて、住民の人達がしっかりと自分達の土地をどうしていくかということを責任を持ってコントロールできるようにすべきだと思います。

 戦前は長男がすべて相続していたのでこうした問題は生じなかったのですが、今の憲法の下では、地域の土地利用をどうしていくかを考えて、相続が発生した場合にどうするかということもしっかり念頭において取り組んでいただきたいと思います。
 

(北村)
 かなり踏み込んで発言をしていただいたように思います。けれども、この高知県の土地基本条例は、内海先生の方から見ても、全国的に見ても非常に先進的なものであるというお褒めの言葉を頂戴している訳ですが、県条例として出て来た、しかも、知事提案ということで制度設計の責任者であられる知事に最後にこの条例を含めて、県土管理の責任も持ってらっしゃる訳ですが、いかに市町村と連携して県土管理を進めていくかという観点からお話を少し頂戴したいと思います。
 

(橋本)
 はい。今日は多くの関係の皆さん方の御協力でこうしたシンポジウムが開けたこと、また、多くの市町村や関係の方々に御参加をしていただいてこの話を聴いていただいたこと、とても大きな一歩だと思って大いに今後の進展を楽しみにしております。

 まず、1点申し上げたいのは先程内海さんから御指摘いただきましたけれども、県の条例は、10ヘクタール以上の開発を対象にしております。その部分については一定の手続の保証が出来る訳ですけれども、それより小さなもの、つまり集落や地区の中で起きてくることには対応できませんので、市町村でも同じような形で、条例化、いきなりそこまでいかなくても、そういうことを念頭に置きながら、この問題を考えていただけたらということを思います。

 県でも、今年の4月から、政策法務課といういろんな条例作りをお手伝いしていく課を作りました。県の条例をきちんと調整をしていくということは第一の仕事ですけれども、市町村の方々のいろんな御相談に応じて、条例づくりのお手伝いをしていくという仕事も合わせてやっておりますので、是非御相談をいただければと思います。

 もう一つは、小泉さん流に言えば、備えあれば憂いなしかなということを思いました。冒頭申し上げました、中土佐町の事例もですね、かなりもう進んだところで私がそのことを知ってどうなっているかと聴くという状況でしたけども、もうそのときには担当者はもう粛々と法に基づいて手続を進めていたということになります。

 他の事例でも、よくまちの中でも農村部でもパチンコ屋さんが近くにできると、学校から何メートルという規制はありますけれど、それには触れない、だけど子供達がよく行く場所だからどうにかならないか、また、農村部でせっかく静かな農村地域の中の住宅地なのに、こういうものができたらと、だけど、農業の関係の法や手続には触れないとなると、最後の最後になってこれは知事の許認可の権限だからどうにかしてくれ、貴方なら何とかしてくれるはずだと、こう買い被って言ってくれるのは有難いですが、本音を言えばやや有難迷惑のところもあります。

 やはり、こうならない前に自分たちの町や村をいかにしていくかという自己責任・自己決定というと何か重荷になりますから、もう少し夢を持って、未来を持って、自分たちの地域づくりをしていくという趣旨で土地利用計画を考えていただけたらなということを思いました。

 その際には小林先生のおっしゃったように、メリットということが確かにないとなかなか動きが出てこないなと思います。今、申し上げたようなメリットはやや守りのメリットになりますので、そうなると何か起きたときはわっとくる。けれども、咽元過ぎれば暑さ忘れるではないですが、他の市町村で起きていると、対岸の火事で終わってしまう。それをもう少しプラスのメリットとして考えていただけるようなこと、今すぐこういったらいいという知恵がないんですけれども、考えていけたらなあということを思いました。

 併せて飯田課長が相続のこととか、山村地域のことにも触れていただききました。私も森林というものを本当に環境資源で考えて行くのであれば、相続を今のような均分相続でやっていって、もうどこにいる人か、誰が持っているかわからないようなことにしていくことは、地籍調査も絡めてですけども、非常に危険なことではないかということを思います。

 山村でのお年寄りなんかが安心して暮らしていけるという地域づくりを考えますと、農業関係の法律やなんかも山村部においてはもう少し自由度を膨らまして、福祉にも、農業にも、まちづくりにもいろいろ使っていけるような融通性が必要じゃないかなと思っておりました。

 これはなかなか難しい点ですけれども、そういうことを日頃から思っておりまして、飯田課長も同じような思いで言ってくださったのではないかということを大変力強く思いました。

 地籍調査についてもお話しがあって、これも地味な仕事だということをおっしゃいましたけれども、高知県においては南海地震が迫っております。地震があった後は間違いなく地籍がしっかりしてないと、この土地は誰かということでえらいことになると思いますので、この機会に是非市町村の皆さんにも考えといていただきたいと思います。

 その地味ということでいえば、正に土地利用計画というのは何か地味で、この条例も先生方には褒めていただけるけれども、玄人好みの条例というふうな位置付けではないかと思うんです。

 だけど、こういうものがやはり玄人好みの地味な条例でなくて、本当に身近なものだと感じていただけることが大切ですので、県ももちろんP Rをしていかないといけませんけれども、是非今日お見えの方々はそれぞれの地域でこれはよそごとじゃない、地味な玄人好みの条例でもないと、身近な、特にこれから市町村合併で合併をするところも、

残るところもまちづくりをいかに考えていくのかということが大きなポイントですから、この土地利用計画と合併などに基づくまちづくり、どちらが鶏でどちらが卵でもいいから、それを機会にみんなで何か考える切っ掛けになればなということを改めて思いました。どうかよろしくお願いいたします。
 

(北村)
 ありがとうございました。市町村におかれましては、あるいは条例作りは大変だというようなことを思っていらっしゃって逡巡されるかもしれません。しかし、今、知事から政策法務課という組織が県にできて、相談すればまああまり過度にわたらない範囲での御助言がいただけるということでございます。

 大体県に何かいうと潰されるという昔のパターンでありましたけれども、今度は引き上げてですね、いいものを作っていただくように協力が得られるというふうに知事もおっしゃっています。これは部下も従わないと首という話にもなりますので、安心していただいていいのではないかと思います。

 さて、1時間半あっという間に過ぎたわけでございます。快適なまちづくりのためにいろんなレベルからのお話を頂戴いたしました。総括するまでもありませんが、皆さん共通しておっしゃっているのは、主役はこのフロアにいる皆様方であるということではなかったかと思うのです。

 まちづくりはすぐには出来ません。行政改革はハードですから、2年位たてばいくらとか、何人とか数字が出ます。しかし、分権改革とか、まちづくりはソフトでございますから、申せば皆様方のお子様、お孫様のためのまちづくりをする、してあげるというふうなことではなかろうかと思うのでございます。

 今日、色々とお話を賜ったことが、今後の皆様方のそれぞれの立場における活動に役立つならば幸いでございます。飯田課長もおっしゃった、この日本で初めてのこういう土地利用のシンポジウムが、高知を発にしてあちこちの県で開催されることを祈るばかりです。本日はどうもありがとうございました。
 


  • 高知県 総務部 秘書課
  • 住所:〒780-8570 高知市丸ノ内1-2-20
  • 電話:088-823-9151
  • ファックス:088-824-7745
  • メール:110101@ken.pref.kochi.lg.jp