知事選挙後の職員への知事あいさつ

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

知事選挙後の職員への知事あいさつ

平成15年12月1日(月曜日)高知県庁 正庁ホール


 皆さん、ご無沙汰をいたしましたけれども、また戻ってまいりましたので、引き続きよろしくお願いを申し上げます。
 この17日間、選挙活動ということで、県内の53の市町村をくまなく駆け回りました。そうやって各地域に行き、いろんな方々の話を聞く、ということをくり返すなかで、地域の課題とか現状というものを改めて感じたという点もありますし、またこの4年間での変化を実感をしたというようなこともございます。

 いくつか具体例をあげながらお話をしてみたいと思います。

 一つは、大豊の西峰という、徳島県境の京柱の近くの地域がございます。この山の上の集落を回っておりましたら、お家の坂道をおばあちゃんが駆け上がって来られますので、車を下りて手を握ってお話を聞きますと、なんとかここにバスを通してもらえんろうか、とこういうお話をされます。

 とても定期バスを通してなりたつような場所ではございませんので、答えに窮しながら、それはともかくとしておばあちゃんはどうやって町に行っているの、という話をしますと、バス停まで歩いて行ってバスに乗るんだと言われます。

 それで、バス停までどれくらいかかるんですかと聞きますと、自分の足で下りで1時間半かかるとおっしゃいます。そういう話を聞いて中山間対策だ、中山間問題だと軽々しく言えないくらいの深みというか、むずかしい課題があるな、と改めて感じました。

 と同時に選挙が終わってから聞きますと、この期間中にちょうど大豊で白タク行為で、個人の方がそういうおじいちゃん、おばあちゃんを病院などに運んでお金をいただいていたということが摘発を受けたという話がございました。

 法律は法律として当然ございますので、それを無視して云々ということではないんですけれども、何かやっぱりこういう課題に答えていく知恵というものをしぼらなければ、中山間問題なども一歩も進めないぐらいのところまできているんではないかと、その特区の申請などさまざまな手法もあると思います。

 一例ですけれども、そういうことを具体例として考えていくということを皆さんがたにも日頃から努めていただきたいなと思いました。

 また、地域の経済、雇用ということですが、各地域を回ってみますと、それぞれの地域の建設関連の産業ですとか、また縫製工場だとか、病院、商店、それぞれの事業所、そこにかなりの方がまだまだ働いていらっしゃる。

 しかも表に出てきてもらって、手を握って挨拶をしますと、若い、しかもしっかりとした人材がまだまだ相当数いらっしゃるということをあらためて知りました。それだけにこうした雇用をこれ以上減らしてはいかんなあと、なんとかこういう雇用を保っていかなくてはいかけないなと思いました。

 今回の公約というか、お約束のなかでも掲げていますけれども、南海地震の対策だとか高齢者の対策だとか、県としてこれから取り組んでいかなければいけない重要課題というものがありますし、その重要課題について出てくる、いろんなハード、ソフトの事業がございます。

 こういう事業を県が計画を立てて一方的に実施をしていく、どこかの企業や団体に発注をし、委託をしていくというようなやり方ではなくて、最初の計画づくりから地域の関連の産業なり団体に一緒に入ってもらって計画を作り一緒に実施をしていく、そのようなことで、県の抱えている重要課題というのはすべからく地域の経済や雇用になんらか跳ね返っていく、という工夫もぜひとも必要ではないかなと思いました。

 またあわせて、雇用にからむことですけれども、佐川町に尾川という中山間地域があります。この尾川地区を回っておりましたら、ごく小さな作業場がありまして、そこにお年寄りのご婦人が仕事をしておられました。

 出て来てくださって、これも握手をさせてもらったんで、おばちゃんどういう仕事をしているですかということを聞いたら、土佐市の高岡の製紙会社から運んでもらってティッシュペーパーの仕事をしているんだとおっしゃいます。

 時間がないので、ティッシュペーパーを詰めてらっしゃるのか何をしているのかというところまで聞くことはできなかったんですけれども、土佐市の高岡から佐川の尾川までわざわざ運んで、その物流やなんかのコストの面でなりたつのかなと正直思いました。

 けれどもそうやってなりたっているということは、何か同じような知恵の絞り方によって、二人でも三人でもそうした雇用の場を作るというのも可能なのかなということを感じました。

 もう一つ、今度は街の話ですけれども、最終日はいつも帯屋町など中心商店街をパレードというかたちで5時から回って、最後の七時半からマイク納めに行くということをやっております。要は、商店街をあいさつをしていくということを2時間半、いつも時間をとっています。

 いつもだいたいぎりぎりくらいになるんですが、今回に限って数十分という時間が余りました。何故余ったかと思って、最初は時間の組み方がおかしいんじゃないかと言って事務所にどうなっているんだという話をしたら、いや従来は2時間半で組んでもぎりぎりなんだという話でした。

 そこで考えてみるとやはり、空き店舗がでてきているということ、それからお店は開いていてもそこにおられるのは昔からの代々の商店主ではなくて若い方がアルバイト的に雇われてまったく新しい仕事をされている、だから昔のように名前までこちらも覚えていなくても、顔は少なくとも見知っていて、

どうですかとか頑張って下さいねと言われてお話をする、そういう時間がまったくなくなって、若い男性や女性で握手をするのもこちらも気恥ずかしいし、向こうもいやがるという感じで、そのまま目くばせだけして過ぎていく、ということで数十分という時間がたぶん余ってしまったんだな、と思いました。これもこの4年間の変化だなと思いました。

 今あげたのは、ごく限られた事例で他にもいろいろあるんですけれども、そういうことを感じるなかで、この17日間県内各地を回るということは、知事という立場だけではなくて、県で働くなかでとても参考になるし、また明日からの仕事の糧になるということを思いました。

 皆さんがたも大変お忙しいとは思いますけれども、できる時には時間をとって、全市町村を回ることももちろんできません、どこか自分で何か関心を持ったとか、こういうテーマを持ってとか、一度行ってみて、そこで畑におられるおじいちゃん、おばあちゃんでもいいし、お家で寝ておられる、休んでおられる方でもいいし、

なにか話を聞いてコミュニケーションをとっていくうちに、相手方も県のしかるべき職員の人が来てくれて話を聞いてくれて、ということでまた違う動きが出てくると思いますし、こちら側も情報という面でもこんなことがあったのかとかいろんなことを知って、それがまた仕事につながっていくのではないかなと思います。

 現場主義とかなんとか言うとまた言葉だけがかっこよく聞こえますけれども、地域の現場を歩いてみる、それもアトランダムでもいいから、どっかに行ってちょっと話を聞いてみるだけでも、ずいぶん仕事の密度が違ってくるのではないかと感じました。

 それこそ今回のお約束のなかでも、来年度50人の職員を再来年度100人の職員を地域に出していきたいということを言っています。それで、そういうことを言いますと、まずどういうことをさせるのかとか何かきちんとしたミッションがないとなかなか動きようがないんじゃないかとかいう議論から始まります。

 その思いとか意味は分からんではありません。けれども実際に現場に行けば、行くだけでいろんな課題というのは出てくるだろうと思います。また先程も三役会議で話をして、今の大豊の西峰の話をしたら、

十河(企画振興部長)さんがですね、須崎の久通の方では市役所が車を買って、それをその久通の住民の方に委託をして、そしておじいちゃん、おばあちゃんをくろしお病院だとか、ショッピングセンターゆたかなどへ運んで回るという仕組みができてそれなりにうまくいっている、という話なんですね。

 そういうことをもちろん、その市町村にこういうことがありますからと言って、担当課から広報していくということもなんですけども、やっぱり実際にそれを動かす職員というのが現地に行って久通なら久通で何がうまくいったのかとか、

どういうところにまだ課題があるのかとかいう話を聞き、それを課題をもってやりたいという町村に行って、具体的に説明をしながら動かしていくという仕事もなんの分野でもいっぱいあると思います。

 今各部局には職員を出すというとで、何に使ってもらえるかという手をあげてもらう、提案をしてもらうということを投げかけていますけれども、各地域と言ってもおじちゃん、おばちゃんまでに提案をしてもらうというまではいかないと思いますけれども、市町村なりしかるべき団体なりNPOなり、そういう皆さんがたに提案を募集をして、せっかく県の職員が出ていくんだったらこういうことを一緒にやっていってほしいということをぜひとも進めていければなということを思います。

 あわせて、現場で一つ感じたことは、三里の地区で地域懇談会をしましたときに、やっぱり南海地震の話になって、とにかく安心をさせてほしいねということをある人がおっしゃいます。

 安心というのはどういうことかという話をしているうちに、もちろん防波堤をきちっとするとか、それから三里の場合は高いところが一ヶ所もないので逃げると言ったってどこに逃げてどうやって逃げるかということもきちんとやってもらわなければならない。

 ただ、そういうこととは別に安心というのは、自分たちがこういうことをしてもらいたいとか、こういうことをしたいとか、これは何故だろうという提案とか疑問、質問をもった時に、どこにどう持っていくかということからまず最初大変になると。

 で、市に話をしていくとこれは県のことだからと、県に行くと市のことだから、ということをやってたんでは、南海地震でこれだけ大変な課題だと言っているにしちゃあ、あまりにも住民にとっては安心にはならない。

 三里地区にひとりの人を張り付けることはできないだろうけれども、高知市の海岸線でいくつかに分けて、この地区、この地区、とそこはもう県でも市でも職員はどちらでもいいから、この人が担当だ、と。

 その代わりその人をワンストップのサービスにして、その人が聞いた話を県の仕事、市の仕事、国の仕事、と全部いろいろ聞いてきて、こうできるこうできないと説明してもらう、そういうことが安心につながるんだと。

 その通りだなあ、と。まだ高知さんとは全然話をしてませんけれども、新しい市長さんも誕生されましたから、ぜひそんなことも話をしてやっていければと思っています。

 このように、現場に出て行くというのは、それぞれに新しい新鮮さもあります。また向こうに出て行って話を聞いてもらえたというだけで、さっきの安心のことじゃないですけれども、相手の皆さんがたも、というのは市町村の方もあるし住民の方もあるしと思いますけれども、とても満足をされて、県に対する距離感というのが違ってくるだろうということを思います。

ぜひそういうことを自分たちもですけれども、また若い職員の人たちにもそういうことをやってもらえればなと思います。

 それで、今回の公約、お約束として掲げたことは、夏の政策協議のなかで、各部局また各理事さんと検討したことをそれぞれ盛り込んでおりますけれども、それ以外のこともいくつかございますので、政策推進のほうから投げかけをさせてもらって、どうやっていくかということを検討をしていただくことになりますけれども、

来年度予算からというものはもちろん来年度予算から、いくつかできることはやっていっていただきたいと思いますし、そうではなくてすぐにも動かしていける、準備をするというものはもう12月からでも動きを起こしていくということで、できるだけスピーディに仕事をしていければ、ということを思っています。

 僕も今日からは仕事のモードに、と言ってたんですけれども、鞄を見たら手帳もペンも持って来てなくて、まだまだ少々ぼけが残っていますけれども、今日からはしっかりと仕事のモードに戻ってまた頑張っていきたいと思いますので、

皆さんがたもそれぞれ、今申し上げたようなことを少しでも感じていただいて、活かしていただければなと、私が17日間に経験したことをまた皆さんのお仕事に活かしていただければなと思います。どうかまた、これからも力いっぱい頑張りますので、よろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

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