地域自立戦略会議・地域自立シンポジウム

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

地域自立戦略会議・地域自立シンポジウム

平成15年4月22日(火曜日)13時30分から(東京都 都道府県会館)

(メンバー)
 浅野史郎(宮城県知事)
 梶原拓(岐阜県知事)
 片山善博(鳥取県知事)
 北川正恭(早稲田大学大学院教授)
 木村良樹(和歌山県知事)
 國松善次(滋賀県知事)
 神野直彦(東京大学大学院教授)
 月尾嘉男(前東京大学教授)
 堂本暁子(千葉県知事)
 橋本大二郎(高知県知事)
 増田寛也(岩手県知事)
 西村幸夫(東京大学大学院教授)欠席

地域自立戦略会議
 本来の分権社会達成には地域の自立が必要との観点から、地域の自立を目指した具体的政策の検討を行うため、高知県知事をはじめとする8県の知事有志及び学識経験者により創設(平成15年4月22日)

月尾:
 引き続いてパネルディスカッションをはじめさせていただきますが、今日は二つのことについて8人の知事からお話しいただくようにしたいと考えております。

 一つは、具体的な話から入った方が、この会議が目指すことがお分かりいただけるのではないかと思いますので、現在の各県の行政の中で、自立という概念としてどういう政策を推進しておられるかということを、ご紹介いただきたいと思います。

 それから、北川教授の話にもありましたが、自立が必要な背景とか状況というのは地域それぞれの事情があり、同じ自立という考えではないと思います。そこで各県の状況の中で、なぜ地域が自立することが重要かということをお話しいただきたいと思います。

 最初に、各県の知事から5分ずつ程度で、県政の中でどのような自立政策が実現しつつあるかということをお話いただきたいと思います。この席順は単純に、五十音順に並んでいただいているだけですが、左側におられます浅野知事からお願いします。
 

浅野:
 宮城県知事の浅野史郎です。具体的な政策で自立を語るということですけれども、少し難しいので、具体的なことも入れながら、自立とは何かということ、そして宮城県ではどのように考えているのか、ということでお話をしたいと思います。

 自立ということで考えていくと、自立していないのは人間に例えると子供です。自立しているということは大人ですが、一人前の大人と呼ばれるためには二つ必要なことがあります。

 一つは「稼ぎ」で、もう一つは「勤め」です。「稼ぎ」、つまり自分で自分の収入を得るということ、これは必要な条件ですが、それだけでは一人前の大人ではありません。それに加えて「勤め」、これは社会貢献とかですが、収入以外のところで貢献するということも必要です。

 このことは自治体にも当てはまることで、自立のためにはまず「稼ぎ」がなくてはいけません。近いうちに発表しようと思っているのですが、これから宮城県でやろうとしていることは、経済自立というようなことです。

 今、どこの地域でも悩んでいるのは景気の沈滞と雇用の創出ということですが、自立のために新産業やそれに伴う雇用の創出をしなければならないということで、少し大きな規模でそれを打ち出していきたいと考えております。財源も大きな問題ですが、何とか生み出せるのではないかと思っております。まだ予告編だけで、これ以上申し上げられませんが、そんなことをまずやらなければならないと考えております。

 そして、もう一つの「勤め」ですが、勤めというためにはその地域として、あるいは自治体として尊敬される、またこちらから主体的にいえば誇れる、ある意味ではまねされるということが必要です。それは、ここで北川教授がおっしゃられた「北京の蝶々」や、あるいは「カナリア」ということです。

 まずカナリアが構内に入っていき、危険がなければ皆そのあとからついてくる。最初にカナリアになったところは、やはりそれなりに尊敬されるので、自らを誇りに思います。これも「勤め」の部分です。

 そして「地域から変える日本」という部分であれば、その部分を国がまねしてくれるとさらに尊敬を受ける。そういう意味で、宮城県としては、「宮城方式」、「宮城モデル」というものをつくっていくためにいくつかやっております。

 もちろん宮城県をどう運営していくかということもあるわけですが、医療部門、福祉部門、それから情報公開という大きなシステムのところでも、これをまねしてもらいたいというか、全国に向けて発信をしているつもりです。

 最後に、それぞれのプレーヤーについて少し申し上げてこの部分を終わりたいと思います。自立していくためには、何人かのプレーヤーがそれぞれの役割を果たさなくてはいけません。

 まず宮城県庁という組織ですが、2年ぐらい前から「政策立案官庁になりましょう」と明示的にいっております。「当たり前じゃないか」といわれるかもしれませんが、これまでの宮城県庁というのはどちらかといえば事業執行官庁で、意識の上でも多くは国から来たものをただ真面目に法律に沿って、あるいは前例に沿ってやっていくという色彩が非常に強かったわけですが、それを政策立案官庁にしていこうとしております。

 先程申し上げたように、「宮城モデルをつくっていくことが我々の仕事なんだ」ということを徹底せしめて、いろんな部門において、まず「宮城モデル」を作るということに専心させています。

 もう一つは地域、つまりは県民です。よくある例ですが、私が地域を回ったときに、「何でもいいから施設つくってください」といわれるのです。これも県民の偽らざるところであって、ともかくその財源は補助金なり交付税なり借金をして何かをつくっていく。知事はどうすべきか、これは省略しますが、そういったことで果たして誇りというものはありうるのだろうか。

 選挙の話が出ましたけれども、自立という中で、やはり国会議員のあり様、それから各議員のあり様ということがあります。これは意識の問題やシステムの問題もあるわけですけれども、国会議員としてのセールスポイントが「私は国とのパイプ役です」、「こんな太いパイプをいっぱい持っています」というような、国から金を引き出す強さをもって議員の資質と思い、また有権者もそれに頼りながら選んでいくということでは、自立に結びつかないと思います。

 時間になりましたので、こんなところで1番バッターは終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
 

月尾:
 ありがとうございました。最初に浅野知事にお願いしたのは、副業でディスクジョッキーをしておられる関係で時間に正確なので、5分という時間はこの程度だと分かるということでお願いした次第です。次に梶原知事、お願いします。

梶原:
 岐阜県知事の梶原でございます。まず最初に、何故北京の蝶々かと、岐阜県にはギフチョウという素晴らしい蝶々があるということを申し上げておきたいと思います。

 自立というのは、三つの側面があると思うんです。一つは理念としての地域の自立ということで、例えばヨーロッパの地方自治憲章、近接の原理と補完の原理。なるべく市民に近いところで政治をやる、どうしても自治体ができないものは国家がやるという補完の原理、それがヨーロッパの地方自治憲章として制定されております。

 国連でもですね、世界地方自治憲章という案が提案されました。アメリカと中国の反対で日の目を見ておりませんが、日本はそれに賛成している。少なくとも反対していない。中身はほとんどヨーロッパの地方自治憲章と同じです。その賛成している世界地方自治憲章案にですね、およそほど遠いことをやっているのがこの日本であるということでございます。

 本当の国民主権ということであればですね、近接の原理、補完の原理で、国を変えていかなきゃいけないと、こんなふうに思いまして、我々は岐阜県として、憲法改正試案というのを国会の憲法調査会に出しております。

 国はもう限定的に機能を持つだけと、あとは自治体の仕事であるという案を提案しております。今年の7月にですね、岐阜県で全国知事会議がございます。そこで皆さんと語らって日本地方自治憲章案というものを提案していきたいと、こんなふうに考えております。

 二番目はですね、共倒れを防止するという意味の地域の自立。日本の国家機能はもう麻痺状態になってまして、世界の激動に対応できる柔軟性がない。これは神野先生が先ほどおっしゃたことでもありますけれども、東京の対応に連動しておったんでは共倒れになってしまうと。

 例えば経済政策ですが、北欧はですね、IT強国、もう世界のベストテンに全部入っております。そしてほとんどが同時に競争力のベストテンに入っている。つまり、工業社会から情報社会に、もう世界が変わっている。にもかかわらず、日本はですね、特に東京において、時代認識、あるいは世界の情勢の認識が足りないからですね、IT社会に立ち遅れたということが、経済の国際競争力で劣ったということだと思います。

 我々は北欧モデル、スウェーデンモデルを参考にですね、地域の経済政策を進めるということにしておりまして、ITに力をいれている。そして、北欧諸国は、ひとづくりが基本である、人が社会資本であるということを明確に国家政策で打ち出している。日本と違う明確な国の方針がある。

 私たちは、「モノ」から「ヒト」へということで、人材養成に徹底的に力を入れるという方針を打ち出しております。それで、教育はですね、東京でいろいろ議論しておりますが、そういうのにとらわれないで、国際標準の教育をやっていく。東京を見ないで、海外のですね、優れた教育をやっているところを模範に、岐阜県の教育をやっていくと、こういう方針を取っております。

 三つ目にですね、危機管理としての地域の自立というのがございます。異常気象の問題ですね。これにまったく鈍感なのが、日本の国家中枢でございます。例えば食料ひとつを取りましても、これほど食料自給政策に疎いところはない。それで、我々は県民食料確保計画というのを立てまして、自給度を高めることをやっております。

 それから若い人たちがアルゼンチンに農地を買いまして、有機栽培の大豆、麦、これをですね、生産するということにも着手してくれました。それからですね、災害時、東京がですね、地震でやられたらですね、もう麻痺してしまいます。連動して地域も麻痺しちゃいけないんで、そのための対策を今取っております。

 それから戦争ですね。有事法制が今議論されておりますが、あれはもうまったくピンぼけでしてですね、北朝鮮ではテポドン100基がですね、日本に向けられているといわれております。東京のわずかですね、2キロぐらいの半径の中に、政治・経済・文化の中枢が全部ある。

 これほど脆い国家はない、国家中枢機能はない。あるいはテロ攻撃がある、有事のときにですね、中枢が麻痺するということは、もう明らかだ。そのときに、我々自身が地域で自立していかなきゃいけない。そのことも我々は会議を開いてですね、対応をしていくということでございます。
若干時間を超過しましたので、この辺で終わりたいと思います。
 

月尾:
 ありがとうございました。梶原知事の政策で話題を呼んだのは、日本国民が飢えても岐阜県民は飢えさせないという政策です。具体的には、アルゼンチンに農場を確保して、いざというときには、そこから食料を輸入するという政策です。

 初めて聞くと、唐突に思われるかも分かりませんが、地域自立というのはそういうことだという好例だと思います。日本の食料自給率は40%、穀物自給率は28%ですが、それでも政府が平気だというのは恐るべきことですが、そういうことに対して、地域はいろいろ手を打ちはじめているという一例かと思います。それでは片山知事、お願いします。
 

片山:
 はい、先ほど北川教授の話の中で、マニフェストの話がありまして、素直な増田知事はマニフェストをつくったけども、私はつくらなかったというふうに紹介いただいたんですが、実はそうではなくて、実は私もマニフェストという名前ではなくて、県民の皆さんとの約束という形で、無投票には結果的になりましたけれども、私の選挙公約をつくったんです。

 ただ、マニフェストというのは、やはり英国の議員内閣制を前提にした政党が国民有権者に約束するという性格のものですから、やはり紛らわしいので、日本には公約という言葉がありますから、私の場合はマニフェストという言葉を使わないで、つくりました。

 その際に、私が心がけたのは、北川さんのいわれるように、あっちにもこっちにもいい顔をするというウィッシュリストというのは、私は1期目もしなかったんですけども、2期目も矛盾のない整合性のあるものにしようと。

 例えば公共事業もやりますよ、いやこれからはハードからソフトで福祉教育ですよ、そういうような相矛盾したことを盛り込んだような、そういうものはつくらないで、整合性のある矛盾のないものをつくろうという意味で約束を提示しました。結果的には無投票でしたけども。

 実は、その私の公約は、「改革と自立に向けて」という題名でありまして、すべて自立を目的とした内容にしております。それは財政を自立させようということ、それから個人を自立させようということ、雇用・産業経済を地域で自立させようということ、それから文化とか、そういう地域の総合力を付けた地域の自立を目指そうと。

 そういうような内容のものを提示をしたわけであります。選挙がありませんで、早速その約束を実行するために、県庁の中に地域自立戦略を推進する本部をつくり、今取りかかりを始めたところです。

 今どんなことをやっているかといいますと、例えば雇用の面ですと、政府が緊急雇用対策というのにかなりお金を使っていますけれども、これは短期臨時の雇用でありまして、けっして今リストラをされて職を探している人とか、それから学校を出たけれども意に合う職場がなくて困っている人たちの要請に応えるものではないわけです。

 もちろん、やらないよりやった方がいいですから、県も協力して一生懸命やっていますけども、やっぱり一番求められているのは、長期安定の雇用の場でありますので、何とかそれを鳥取県の独自の施策でもできないかということで、実は今、官民のそういう安定的な長期の雇用創出に努めています。

 それはお金がかかります。例えば民間がリストラされた人を長期安定的に雇用したとか、今年の春学校を卒業したけど職がない人がいて、それを企業が雇用したときに県が支援しましょうということをやるわけですけども、それにはお金かかります。

 お金はありませんので、鳥取県では県庁の職員、これは警察官も教職員も含めてですけども、5%の給与カットをしまして、そのカット分の財源を、その雇用対策に充てるということをやっています。地域で独自に自立をして雇用創出を図ろうということであります。

 なかなか思いどおりに民間の企業の皆さんが、じゃあそういう施策があるから、どんどん雇おうということには、もちろんなりません。それだけ民間企業が厳しいということでありますけれど、それでも、かなりの企業の皆さんがその制度を利用して、まあちょっとがんばって雇用を増やそうかなということになってもらっています。

 それは、民間の場だけではなくて、官の場合もそうでして、普段ならできないことで雇用創出につながる政策を充実しましょうということで、例えば小学校の一年生、二年生の30人学級を今やっております。このためには、相当の数の先生が必要なんですけれども、この先生の給与には国から1銭も出ませんので、県のその給与カット分を充てるということをやっています。

 さらに、今年は中学校一年生の、これも不登校の率が非常に高いもんですから、中学校一年生の30人学級に向けて今スタートしまして、今年はまだモデル的にいくつかの学校だけですけども、そういうところにも、今乗り出しております。これで、教育現場の施策を充実させるということと、職を見つけることができない、教員の免状を持っている教員の就職の場も確保できると、まあそういうことを今やっております。

 それから、地産地消というのを進めておりまして、これは梶原知事がいわれたことと関連するんですけども、今、日本人の食文化がもう本当に変わってきてしまっていまして、従来から日本人はお米をちゃんと食べて、日本酒を飲むことによって、お米を消費する。そのお米を生産する水田というものが日本国中にあるわけですけども、今お酒なんかも日本酒よりワインだとかビールだとかということになる。

 これは、もう個人の嗜好だからしようがないかもしれませんけども、それからご飯も食べないでパンとかパスタとかそういうことになってしまって、その結果どうなっているかというと、日本の水田は、お休みになってしまって、小麦を外国から輸入する、ワインを輸入すると、こういうことになっているわけですね。それは個人の好みですから、やむを得ないんですけども、しかし我々ももうちょっと地域の再生に向けて、少し考えたらどうだろうかと。

 一人ひとりの便利とか安いとか、そういうものさしだけではなくて、自分の消費行動というものが、地域の所得とか地域の雇用とか、地域のあり方にどう影響しているだろうかということを考えながら、消費生活をしませんか、ライフスタイルを変えてみませんかということを、今鳥取県では提唱しております。

 その一つが地産地消でありまして、できることならば、やっぱりお米食べませんかと勧めています。県内のお米を食べれば、今遊休で休耕田になっているところが、少しでも耕されるわけで、そのことが農家の所得にもつながるし、また農家の雇用にもじわじわとつながってくるわけであります。

 学校給食でも、地域で採れるものを使わないで、外からの食材供給で子どもに食べさせている。安くて便利、調理がしやすいという、ものさしなんです。しかし、多少不便であっても、地域の物を子どもたちに食べさせて、そして地域の生業というものを、学校給食を通じて子供たちに教えていくということも、教育の重要な課題ではないだろうかということで、今学校給食の地産地消ということを進めています。

 やっと市町村長さんがその気になってくれて、だんだんと、その地元の率、地元の食材を使う率も上がってきてまして、これがさらに進めばなあと思っております。おかげで農協の売上も増えたところや、今までジリ貧だったのに、売上が増えたようなところも出てきていまして、やればそれなりに効果があるなと思ったりもしています。

 それから、環境などもですね、今日環境は大きな自立のテーマですけども、鳥取県はISO14001を率先して取ったんですけども、県内企業とか団体にISOの14001を勧めておりますけども、結構金も手間もかかるんで、県独自の環境ISO基準のような制度をつくって、独自に今認証手続きをやっています。企業とか学校とか、さらには家庭版までつくりまして、鳥取県版のISOシステムのようなものを今つくってやっていますけど、そんなことも独自にやっております。

 いろいろほかにもあるんですけども、あとその地域の自立を推進する県庁も自立をしなきゃいけない。これも従来型の組織ではいけないということで、組織自体を明治の太政官官制以来の中央省庁対応型の県庁の組織から、現場対応型に徐々に変えつつあります。

 毎年のように組織をいじって、あまりにも組織いじりが激しいんじゃないかという批判も一部ありますけども、中央を向いていたものをちょっと視点を変えて、地域に向けて、地域の課題をストレートに受けて、それを解決していくような組織に、今変えていこうということで、試行錯誤的にやっています。

 あとは組織ですから、年功序列というのが従来からあったんですけど、これも地域の自立に対しては大きな障害でありますので、鳥取県庁でいえば年功序列をやめておりまして、私は51ですけども、副知事は41あと総務部長は51とかですね、教育長も50とか、そういう形で年功序列体制を今改めて、活気のある県庁にしております。

 議会も自立をしてもらわなければいけない。執行部の出したものを、はいはいといって、まあ文句をつけながら通すだけという、そういう自立していない議会ではいけませんので、これはもう4年前からになりますが、議会とは根回しをしない、したがって、あらかじめシナリオを決めて、八百長的にやる議会ではなくて、本当にその場で真剣に議論をして、そこで、オープンの場で合意形成しようという議会をやっています。

 学芸会、お互い原稿を読み合うようなそれもやめましょうということで、真剣な議論をしています。そういうことで、今議会では修正もしょっちゅうありますし、議員立法もどしどし出てきますし、非常に活気のある議会になりました。

 分権時代の自立した議会に、私はたぶん鳥取県議会が一番近いのではないかと自負しております。そういうことで、地域の自立を推進する県庁も、それから車の両輪である議会も、お互いに自立していこうということで、今取り組んでいるところであります。
ちょっと長くなりましたけども終わります。
 

月尾:
 ありがとうございました。国ができなくて地域ができるという一例は、鳥取県議会が一早く、事前の質問取りをやめてしまったということです。国の場合、質問する議員から前日に質問をもらって、役人が想定問答を徹夜で書いて、大臣、副大臣、政務官などが答弁するということを現在でも行っていますが、鳥取県は中止した。

 国ではいつ実現するか分かりませんが、地域ではそういうことが進んでいる。小さくなければできないということの一例ではないかと思います。それでは木村知事、お願いします。
 

木村:
 ご紹介いただきました和歌山県知事の木村です。自立について、今、片山知事から、鳥取県では議会が非常に活性化しているという話がありました。私も片山知事から聞いて、議会での答弁は、アドリブに変えたのですが、一応、議員からの質問を聞いているので、その意味では、本格的な自立まではいたっていないと、反省するところしきりです。

 それから情報公開においては、昨年の全国オンブズマンによる情報公開度が29番だったんですが、この結果を受け、情報公開を進めるよう指示したところ、今年は2番目になりました。このように他府県の知事が一生懸命考えたことを取り入れたり、地方がみんな競い合っていくということが、「地域から国を変える」ということになると思って、いろいろがんばっております。

 私は、時代認識として、戦後日本は60年間、一生懸命、経済中心にがんばってきましたが、これはある意味では、特殊な環境の中の「白昼夢」のようなことではなかったのかと思っています。日本の最近の動きを見ていると、今の日本は制度疲労が起こってしまっている部分が少し多すぎるんじゃないか、今の時代はやっぱり本当にリセットして、新しい日本の国をつくっていかなければだめではないか、と思っています。

 そういう中で、例えば自治体の行政において、「わけ知り顔の行政」をしないことに、常日頃心がけております。例えば、表の話はこうでも、実は裏はこうで、こういうふうなことにやっておけばよいという、ちょっと「玄人っぽい行政」というものが行われていた面があると思われますが、私はやっぱり素人の考え方と玄人の考え方をできるだけ近づけていくのが、これからの行政であると思っています。

 地域の自立に向けた具体的な施策としては、皆さんも聞いたことがあるかと思いますが、「緑の雇用事業」に一生懸命取り組んでおります。これは、都市で離職をした人たちにUIターンをしてもらって、地方の中山間地域において森林整備の仕事を提供する事業です。

 森林のCO2吸収機能の向上に貢献する一方、都会にいたときに比べて、低所得であっても、環境保全に貢献しているという「心の所得」を得ることで、個人に尊厳ある生活を提供できるというものです。

 この「緑の雇用事業」は、かなり全国的な大きな流れになってきたのですが、私は、今年度からこの考え方を農業分野にも広げていきたいと考えています。特区制度を活用するなどして、緑の雇用事業により、都市から地方への今までとは逆の人口流動を起こすことに取り組んでいきたいと思っています。

 次に、今は雇用が大きな問題になっていますが、人口106万の和歌山県でも、6,500社の土木建設業者の方がおられます。これは、構造的な問題といえますが、こう不景気になってきますと、その建設業の人たちに、セイフティネットが必要になってきますが、急にそれを用意することは難しい。そういう中で、例えば公共事業のあり方を変えていくことで対応しようと考えております。

 去年、地方の実情にあった公共事業のあり方について、15道県と共同で、国へ提言を行いました。その結果、「1.5車線道路」という地方基準が、今年度から国において補助事業に採択されるようになりました。また、従来はコンクリートによるこわれない公共事業というのが常識でしたが、これからは、例えば、腐ってしまう木を使うような公共事業が環境にやさしい、新しい公共事業になると考えています。

 さらに、公共事業の積算においては、歩掛りとか積算単価が決まっていて、実は三越の特選売り場でセメント買うような値段を基準にしているわけですが、これは違法ではありませんが、値段が非常に高くなっています。これをデフレ時代に合わせたような形にしていくことも取り組んでいきたいと思っています。

 また、東南海・南海地震において、和歌山県においては相当死者がでるという報告書が出されておりますが、これは大変なことです。津波に備えて、昔みたいに防波堤を全部につくればいいんですが、財政状況からみて、難しいわけです。そこで、例えば、公共事業でたくさん出る建設残土を活用して、マウンドみたいなものをつくって、その上へ逃げられるようにできないか、ということも検討しております。

 このように、公共事業をこれまでとは一味違った形で色づけしながら、地域の雇用のセイフティネットとしての役割も果たしていくことに取り組んでいます。それから、これから当分デフレの時代が続くと思いますが、例えば和歌山県が自立しようとしても、実は完全な自立というのは難しいと思います。

 和歌山県の場合、約5,800億円の予算ですが、税金(県税)が約800億円で、交付税が約1,800億円で、借金が約800億円で、国の補助金が約1,000億円となっております。こういう状況は、田舎の県の場合はだいたいみな同じだと思いますが、これでは、ちょっと「ファーフロム自立」という感じがします。

 できるだけ自立していこうと思ったら、例えば農産物に工夫を凝らして付加価値を付け、そして、新しい売り方を検討していかないといけないと考えております。 そこで、今年、首都圏の一番大きなスーパーマーケットと組んで、その複数店舗を巡回して県産品のフェアを行う「ソフトアンテナショップ」を行うなど、いろいろ取り組んでいきたいと考えています。

 本当の自立ということについては、「三位一体の改革」や、今の都道府県制度の限界という問題もある。私はそろそろ新しい都道府県の連合か、合併になるのか、道州制になるのか分かりませんけど、そういう新しい仕組みを提起していく時代が来ていると思います。この地域自立戦略会議を通じてまた研究していきたいと考えています。ちょっと、とりとめもない話ですが、私の方からは以上です。
 

月尾:
 ありがとうございました。私は和歌山県に毎年何回か遊びに行っているので、緑の雇用事業に従事している何人かにお目にかかりましたが、それらの方々は大変に意欲をもってやっておられます。このような政策を各県が相互参照しながら進めていけば、雇用ということについても、新しい動きが出てくると思っておりました。それでは國松知事、お願いします。
 

國松:
 滋賀県知事の國松でございます。私以外の知事さんは皆東京でもご存知の方が多いと思います、有名な方ですから。滋賀県というと、ちょっと東京から見えにくいと思うんですが、事実、面積や人口も100分の1のスケールですから、小さい県なんですけれども、琵琶湖を預かっております。

 地方分権が始まったときに、私は地域間競争の時代に入ったと、まず思いました。地域が競争しなきゃいけない、では何で競争するんだというと、最後は個性の競争になるなということと、そこにうまくデモクラシーを働かせることかなと思っており、知事にならしていただいて、四つの実験ということをやろうということにしました。そういうことが、地域の自立につながるんではないかと、今も思っています。

 地域が競争するということは地域の個性を競い合うことで、(滋賀県が)琵琶湖を抱えているというよりも預かっているということもございますので、私は徹底して環境にこだわるという、環境の実験をやろうと考えました。そしてもう一つは、福祉の実験ということで、だれもがハンディをもったときにも生き生きと生涯を暮らせるような地域をつくれないだろうかということ。

 そして、やはり経済が自立しないと、いくらいいことをいろいろ考えても、実行できないというところがありますので、経済だと。どう、経済で、産業で自立するんだということ。もう一つは、それらが文化といえるときに、初めて一人前のものになるんではないかと。こんな思いがありまして、四つの実験といってきました。昨年から2期目に入りまして、もう一つ教育のことを加えることにしました。

 このように、自然にこだわる、人間を大切にする、経済、そしてそれらが文化といえるもの、私はひとづくりがどうも戦後失われた50年というようなところがあるんじゃないかなということも感じておりましたので、これらに加えて教育、これらに取り組むことが地域力というものを付けると考えています。

 特に今、日本がもたもたしている感じを受けますのは、日本は今まで常に素晴らしいモデルを持って、そのモデルをもとに国づくりや地域づくりを進めてきましたが、もはやモデルのない時代に入っていると、したがってモデルをいかにつくるかということだと思います。モデルづくりを三つのところでやればいいんだと。

 一つは自然と人間がともに輝くような暮らしを考えること、もう一つは自然と人間が輝くような暮らしに貢献する産業を考えること、そしてそれを地域づくりにすることだと、こんなことを夢見ながら取り組んでいます。

 琵琶湖で最初に赤潮が出たときに、これはもう大変なことになったということで、石鹸を使おうという運動が始まった歴史を持っておりますが、今ではライフスタイルについて、例えばここにいる男性は背広とネクタイをしていますが、これは北海道より北にあるイギリスの真似であり、そんなのをモンスーン地帯でやっているのはおかしいと、

私は夏に袖のない背広をつくってみたりして、いろいろ堂本さんにも、冷やかされたりほめられたりしておるんですが、徹底的にそうしたことにこだわっていこうかなと思ったり、琵琶湖でリリースを禁止するということやプレジャーボートのエンジンの種類を規制するということを考え、4月から実施しています。

 産業でも農薬を使わない農業を、あるいは化学肥料を使わない農業を推進しようと、環境こだわり農業ということで知事と生産者で協定を結びまして、そしてきちっと協定により生産していただいた物には、いい、素晴らしい作物だということで環境こだわり農産物という認証マークを貼る。

 また、こうした生産により収量が減るでしょうから援助もしましょうということを条例で決めてスタートさせましたが、産業面でも、いくつかそういう工夫をして、あとは県庁自身の意識改革をやろうと思っています。
 

月尾:
 ありがとうございました。琵琶湖を抱えておられるために、環境に関係した重要な政策を進めておられ、最近は、お話がありました外来種の規制について、画期的な政策を実現されたと思います。それでは堂本知事、お願いします。
 

堂本:
 はい、千葉県知事の堂本です。まず私は、日本の国のあり方、それをやはり今とても考えないといけないときであると強く思っています。そのためには、地方の自立と活性化によって変える以外にない。ただ、これのやり方なんですが、今、分権一括法や三位一体とかいろいろなことがいわれていますけども、はたして中央主導でやる地方分権というものが、迫力をもつものかどうかということなんですね。

 国が音頭をとるのではなくて、どこまでも地方が、もっといえば、市町村レベルの基礎自治体のレベルで、立ち上がっていく、それぞれに何かをやり始めるということが、全部集大成というか総合され、トータルされて、私は日本の国が、また力をもつのではないかという認識に立っています。

 そのことのうえでお話をしたいと思うんですが、千葉の場合には特徴として、急成長した、日本の縮図といわれました。ちょうどこの50年で、人口は200万から600万へと3倍、そして財政規模も27倍と非常に急成長しました。それだけにバブルの崩壊で、またその落差も非常に大きかったということがいえます。

 そこで今、私たちがやっていることは、「千葉からの変革と創造」、千葉から変えるだけではなくて、次に新しく千葉を創造していく、そこから主権をつくっていくということで、千葉主権の確立といういい方をしております。「千葉からの変革と創造」、私個人の言葉にすると、ローカルレボリューションといってもいいし、英語とかカタカナで書くのが嫌いなのであえて日本語にさせてもらえば、地方維新の時代なのではないかということです。

 それでは具体的に何かということですけども、私は三つから四つの具体的な例をあげたいと思います。一つは法律というか、日本の制度によることの改革です。この問題に具体的に直面したのは、産業廃棄物の問題でした。全国の不法投棄の3分の1が、実は千葉県に捨てられている。

 これをもし現状復帰するとしたら、1,000億円ぐらいかかるという、主に東京あたりから来るのですけれども、すごい量の不法投棄がされています。それを条例で止めようとしたら、これは、廃棄物処理法の方が上位法だからだめだということになって、国と大変なせめぎあいをすることになりました。

 そこで気が付いたのですが、常に上位法、条約があり、そして法律があり、都道府県の条例があって、その下に市町村の条例があるという、この構造をどのようにこれからちゃんと位置づけていくのか。そのことについて、きちんとした整理がされてないんじゃないかということを感じました。

 私は、自分の体験から、これはぜひとも各地方で、カナリヤというと、とっても北川さんは控えめにおっしゃっているんですが、カナリヤよりももっと鋭い槍をもって、この法律の問題、法をどうやっていくかということが、これから大きな課題だと思います。千葉県の場合には、ある町が産業廃棄物の入ってきかたについて、県の条例よりも狭い範囲を決めていました。

 そこで、県としては、その狭い範囲での規制を市町村がかけることについて、許すというか咎めないというか、それを認めますという条文の条例改正をして、むしろ市町村に優位性を与える位置づけとしました。しかし、それは、これからの法体系の中で、どういうふうに処理していく問題かということが、地方分権との間で大きな問題だと思っています。

 それからもう一つは、選挙のときからいっていることなんですけども、情報公開と県民参加型の県政づくりということをいいました。これをまた具体的な例でいくつか申し上げますが、一つは、三番瀬です。これは101ヘクタールの膨大な埋め立て計画がありました。そこに外環の道路を通し、下水処理場をつくり、町をつくるという、大きな県としての計画があったわけですが、これを中止したわけです。

 そこに三番瀬という瀬をですね、もう一回自然の保全、干潟としての保全と再生をどうするかということを、普通ならば県で計画を立てて、それをパブリックコメントするぐらいのことはあるかもしれませんが、一切それをやめまして、円卓会議という形で市民参加型とし、

浦安と船橋、そして市川という3つの市も参加し、県も参加し、国もオブザーバーとして参加するという最初から、全部、今までなら縦の構造だったものを横にして、今大激論をずっとやっているんです。もう立場の違う環境団体の人もいれば、漁民もいれば、ありとあらゆる人がいるわけですから、意見が同じはずがありません。

 その中で、コンセンサスが得られて、具体的なこれは工事に入るわけですから、市民参加型で計画、設計図を書かなきゃならないわけです。その工事の設計図を書くところまでを、私は、千葉モデルとこれをいっておりますけども、おそらくこんな大きな公共事業を県民が参加してですね、つくりあげていくということは、前代未聞で、大変難しいことですが、岡島さんという大学の先生が、中心になってやってくださっています。

 これも大実験で、これは正に千葉モデルが成功するかしないかで、日本の公共事業のあり方が変わっちゃうんじゃないかと思うほど、大変な仕事ですけども、参加型の政策決定ができるかどうかという試金石をやっています。

 もう一つは、国のやらないことをやってみるのがいいのではないかというので試みたのが、女性に対しての医療のサービス。長寿の時代を迎えて、特に50歳から80歳までの子育ての終わった女性たちは、更年期障害だけではなくて骨粗鬆症など、いろいろ抱えているわけですね。

 そこでやってみたらば、もう1年の間に、県内はもちろん広がり、そして今では、今、隣の橋本知事にも聞かれたんですけども、日本の中の大体半分ぐらいの県で、それが広がるようになってしまいました。

 国会議員として12年間努力してできなかったことを、知事として1年間で国のやらなかったことを県でやってみたら、逆に全国に広がりはじめているという、この奇々怪々なことにも我ながらびっくりしているということで、国のやらないことを県で実践してみたら、それが全国に広がっていくという実験。

 それからもう一つは、やはり人口構成とか、産業構造といったような面で、非常に特徴がそれぞれの県におありになると思います。千葉県もそうなんです。そういったものに基づいたうえで、やはり地方の政策立案をしていくべきだと思うんですが、今でもまだ中央の決めたことの補助事業というのが、ずっと画一的に続いているような気がしています。

 これをどうやって、これからもっと地方で、きちんと自主的にやっていくかということを、相当これはやはりここに今日書いてある、正に地域の自立を考えるということでいうと、戦略的にやっていかなければならないことですので、私たちは、政策法務という部署を今年からつくりました。これは、政策、条例をつくることを、ただ規則をつくるこというような形での規制とかそういうことではなく、政策的に、県の仕事を考えていこうということです。

 それは、単に県のレベルで考えるのではなくて、本当に県からそういった変革を実現できるような意味でいうと、法律の問題、さっき最初に申し上げた法律の問題に帰っていくのですが、そのためにあらゆる段階で、法律、条令の問題から発想していくということで、政策法務いう部、部ではないんですが、相当大きい組織をつくりました。
それでは、私はここまでにさせていただきます。ありがとうございました。
 

月尾:
 ありがとうございました。ご存知の方も多いと思いますが、堂本知事は参議院議員時代に国連による環境に貢献した25人の女性の1人に選ばれており、堂本知事になってから千葉県の環境行政は大きく変わったと思います。三番瀬もそうですし、手賀沼、印旛沼も浄化が進んでいます。それでは橋本知事、お願いします。
 

橋本:
 皆さんこんにちは。最初順番がずっと後だと思って、非常に良かったなと思いましたけども、後の方になってきたら、しゃべることがなくなったなと言って、今増田さんとどうしようかといっていたところでございます。で、物の自立、お金の自立、人の自立、いろんな事例の紹介がございましたので、少しだけ切り口を変えて、自立への取り組みということをお話してみたいと思います。

 自立のために一つ必要なことは、県でいえば県行政と県民との間、距離を縮めるということがあるんではないかと思います。というのも、行政の側が、先ほど木村さんが言われたように、玄人、自分たちは玄人であるという意識で、何か上から物を見るという見方考え方を変えなければ、

また県民の皆さんの側も、大体のことはもう県に任せておけば良い、行政に任せておけば良いという、おんぶにだっこの意識が変わらないと、なかなか物でも金でも人でも、自立の取り組みというのが、具体的な効果をもたらさないんではないかと思うからです。

 そうした視点で、この間行われた県議会の議員の選挙の結果を見ますと、県議会の役割というのは役割としてありますけれども、県民と県政とをつなぐ力としての議会の持つ役割というものが、ずいぶん弱まってきているのではないかということを実感をいたします。

 というのは、一つは投票率のことでございますが、本県のような地方であっても、県内全域の投票率が54%台、41人の県議会議員がおられますが、そのうち15人、3分の1以上を占めます県庁所在地の高知市は44%台で、これに無効票も含めますと、県民の意思や県民の思いを反映する率というのは、もっともっと低い数字になります。

 一方で、もちろん片山さんが言われたように、県議会の活性化や自立ということは必要ですし、そういう話もずっとしてまいりましたが、その一方で、やはりこういう状況になったとき、県民と県とを直接つないで、政策のことを話し合っていく、又は既にあるいろんな価値観の違う課題の合意形成を図っていく、そういう場、英語で言えば「プラットフォーム」が必要な時代になってきているのではないかと思っています。

 で、こういう視点もあって、本県では平成11年から13年度まで3年間、県民参加の予算づくりモデル事業というのをやってきました。これは、県税事務所がブロック別に5つございますが、その県税事務所単位に、事務所の県税収入のわずか1パーセントを元手にして、地域の住民の方々、男性、女性、お年寄り、若い人、様々な方々に集まっていただいて、具体的な提案、企画、そして予算をつくるまでのことを1年かけて取り組んでいただくという事業でした。

 それはもちろん、県民の目から見た新しいアイデアがあればということもありますけれども、そういうことよりも、そういう作業を通じて、県民の皆さんに予算とか県政というものをもっと身近に感じていただく、また、県の職員にも、自分たちが感じていない県民の思いとか考え方ということを感じて、お互いが刺激しあう場になればと思いました。

 3年間やった結果、参加をされた県民の皆さんの側からは、おおむねというか、大変好評をいただいきましたけれども、県の職員からは、また面倒な仕事が増えたとか、もうそんなことは自分たちで考えていたことだとか、熟度が低いとか、様々な批判の声がありました。 

 それでということじゃありませんけども、昨年度1年間は、一旦お休みをして、これをどう次につなげていかうかということを考えました。先ほどの県議会などの投票行動に現れるような時代環境ということも併せて、今年の秋ぐらいから、そういう政策だけではありませんけども、いろんな意味で県民の智恵というものを集めて、県と一緒に考えていく場、「プラットフォーム」を立ち上げていきたいと思っています。

 といっても、具体的なメディアがやはりインターネットが中心になりますので、そういうものを使える人しか参加できない、そこのデジタルデバイドをどうしていくかという課題はもちろん残っていきますけども、こういう場を通じて、政策づくり、また先ほどもいいましたけれども、既にある問題で価値観の分かれるものの合意形成というようなことを、

県議会の場という従来からの間接民主制の場だけではなくて、直接という意味ではありませんけれども、もう一つ違うバイパス選択肢として、県民の皆さんと一緒に考えていく場をつくっていきたい。こういうことが、私は、様々な事業をしていくときの自立につながっていく一つの取り組みではないかと思っています。

 ただ、そのためには、いくつかやはり必要なことがございます。それは、先ほどから何度も出てきた情報公開ということで、まだまだ県の職員の中に、情報公開というのは行政の側が一定判断をして、公開しても良い文書を県民の皆さんにお示しをしていくという意識でしか情報公開を考えていない職員が多数いることは、

非常に残念ですけれども、もっともっとこうした意識を変えて思い切った情報公開、情報共有をする中で、この「プラットフォーム」を動かしていきたいということを思いますし、もう一つは、やはりそれを動かしていく人がどうしても必要だと思います。

 それは、県の職員ではなくて、NPOなり何なり、そういうことのできるコーディネーターが必要ではないかと思います。そういう人を育てていくことによって、先ほど申し上げた場が、本当に政策を考えたり、これからの県の方向を考えたりする場になっていけば、私は自立のための一つの手がかりがつかめて行くのではないかと思っております。
 

月尾:
 ありがとうございました。高知県は次々に新しい政策を実施しておられますが、最近話題になっているのは森林環境税です。こういう税制も国では利害関係が輻輳してできないと思いますが、高知県では利害関係を越えて具体的な税源とされました。それでは、最後になりましたが、増田知事、お願いします。
 

増田:
 はい、岩手県知事の増田でこざいます。全部論点は出尽くしているんですが、私はちょうど4月13日に選挙で3回目の当選をしました。その選挙期間中に訴えたことが、この岩手県の次の4年間は自立に向けた4年間であるということです。

 「自立に向けての道筋をつける4年間だ」ということを訴えるために、先ほど北川さんから話がありました、いわゆる「マニフェスト」をつくって、県内全域を地道に回って、その内容だけをずっと訴えてきました。これからそのことを話したいと思います。

 それで簡単にいうと、やはり岩手県がこれから自立をしていくうえで、経済的にあるいは行政でいえば財政的に自立をしていくことが一番肝心だと思います。財政的に見ても、国からずっと補助金や地方交付税もらっているわけです。国の都合や懐具合でそういった内容がいろいろと左右されるということでは、何ら我々の計画的な行政もできませんし、結果として国に従属的にいろいろ指図をされることになります。

 ですから、経済的な自立を最優先に政策として進めていこうというわけです。そのためには、産業を活性化させて、産業的な自立、産業の基盤を確立することが必要になります。ちょうど雇用問題も今深刻な状況で、岩手県の有効求人倍率も下から何番目という大変厳しい状況でありますから、そういったことも考え併せる必要があります。雇用対策はイコール産業政策そのものですので、そのことに重点的に力を入れていきたいと思います。

 ベンチャーの育成なども必要でありますが、雇用の観点から今一番手をつけなければいけないのは、若年層の雇用問題で、本格的に対策を講じなければなりません。これについては、産業育成の観点も非常に大事ですが、国の極めて画一的な、そして独占的な厚生労働省の労働行政にも大変問題があると思います。

 もっと自治体と連携を取った生きた労働行政をしていかないと有効に機能しません。そのあたりにもこれから本格的にメスを入れていく必要があると思います。

 そのほか、医療・福祉の分野では、これから当然自然増なども考え併せると、相当な財政負担がかかってきます。先ほどウィッシュリスト、おねだりリストの話がありましたけれども、本当に自立を進めていくためには、全体的な状況を見ると、岩手県の場合には公共事業費をどうしてもカットせざるを得ません。

 そこで「15%ずつ2ヵ年で公共事業費を3割カットいたします」ということを申し上げたわけです。これまで10年ほど公共事業を中心とした国の景気対策が行われてきました。それに生真面目に我々地方団体も付き合ってきたわけですが、そうしたある種身の丈以上に、前倒しをしてきたということで、たしかにモノは出来上がってきたわけですが、これが財政を逼迫させる大きな要因となりました。平成3年ぐらいの水準まで戻そうというのが、ちょうど3割カットの水準であります。

 そういうことによって生み出した財源を福祉や医療の分野、それから産業育成に使う。それから教育も大変大事ですし、少人数学級を志向していかなければなりません。それらを考え併せると、財源配分の大幅な変更を行っていく必要があるわけです。

 そこで、これらをマニフェストとして、数値目標、実現手段、財源を具体的に書いて公表したわけです。これを実際に、建設業関係者の方々に対しても積極的に声を大にして申し上げてきました。それでネガティブな面も十分に説明した上で、信任を得たということで、大きく舵をきっていくということになります。

 話がずれますが、先ほど基調講演のとき北川教授もお話されていましたが、公職選挙法が抱えている問題について、もっと声を大にして国等に訴えていく必要があると思います。私も一番最初にマニフェストをつくって、これを県民の皆さんにきちんと示して、あれかこれかの選択をしていただきたい、更に言えば厳しい内容を140万県民一人残らず周知させたうえで、信任を得て大きく舵をきっていきたいと考えていました。

 しかし、マニフェストは、つくっただけであとは配れなかったのです。マスコミがどういうふうに取り上げて、それを新聞、テレビ等で伝えていただけるかということに全てかかっていました。制度上、私のような無所属候補が、それを一般に頒布することはできないのです。広報媒体を使ったマニフェストのPR手段として、現行制度上は枚数制限があるはがきと、定型の選挙公報、新聞広告、5分30秒の僅かな時間の政見放送しか認められていません。

 公職選挙法はいろいろな規制について規定されていますが、候補者の政策を有権者に知ってもらうために一番必要な文書配付が禁止されているのです。文書配付を認めて候補者の考えが明確に伝わるような制度に変える必要があると思います。イギリスのようにそれを販売をして、ある種政党の財源にするようなことではないですが、それをやらないとだめだと思います。

 便法として後援会の会報などに個人名を入れずに載せる、配るということはありますが、全ての候補者が後援会を持っているわけではありませんし、後援会の会員であれば黙っていても投票してくれるわけです。

 一番大事なことは、全く政治に興味のない一般有権者や、いわゆる無党派層と呼ばれる有権者、あるいは今回は対立候補が出ましたが、そういった対立候補を支持している人たちにそれをお配りして、両者を比較したうえで、少しでもそういう人たちの支持を得るということに、本来使うべきものです。

 せっかくマニフェストをつくっても配れなければ率直につらいこと、厳しいことを書いたとしても、その部分だけがいろいろ宣伝誇張されて正確に伝わらないこともあります。しかもそれが自分を今まで支持してきた人にとって都合悪いことであれば、その人たちの支持を失います。

 逆にそういったことを支持してくれるであろう人たちがいても、マスコミの取り上げ方次第で伝わらないこともあり得ます。こういった矛盾を変えていかなければならないということを痛切に感じております。

 マニフェストの話はそれだけにして、経済的な自立以外で自立に向けて大事なポイントは、先ほど木村さんもちょっと触れた都道府県制の枠をどう考えるかということだと思います。岩手の場合には北東北三県連携をもっと進めていって、自立ということを県の枠を越えて実現するということが一つの解決方法ではないかと考えます。

 例えば、先ほど堂本さんが触れました産業廃棄物については、岩手にはご承知のとおりいろんな物が持ち込まれるわけです。これに対しては、県費で処理せざるを得ず、これは大変な事態です。それに対する防御手段として、北東北三県で産廃税などを規定した条例を昨年12月議会で、全く同内容のものを成立させました。

 逆に私どもの方から、実は岩手県からどうしても処理できなくて止むを得ず他県に出しているものもあります。これは、非常に矛盾があるので、できるだけ自分たちのとこで処理せざるを得ない。しかし、非常に有害性が高いけれども量が少ないものはマーケットとして採算性の面でそれを処理するのが成り立たないんのです。

 どうしてもよそに頼らざるを得ない。で、そこで、それが岩手の域内でできなくても、岩手・青森・秋田の三県で共同処理にもっていける可能性が非常に高ければ、三県で、補完的な環境を築き上げることが可能となるわけです。岩手単独でそういったことが完全に処理できない、すなわち自立できなくても、三県では自立できるような形にして、それで、また地域の自立につなげていこうということです。

 ですから、産業的な問題は、非常に地域性も強く、地域の雇用に直結していますので、できるだけ可能なものは岩手県内で、あるいはもっと地域に合った形での産業政策を行う必要があります。しかし行政分野によって、もっと都道府県制の今の枠内を越えて広域で行った方が効果的なものもあります。

 むしろ、そういった広域的な面での行政を進める(指向する)ことによって、最終的に地域の自立を高める。こんなことが私のマニフェストの内容になっております。これを4年間で実現をするということを約束しておりますし、ものによっては前期の2年間で最優先取り組もうとしているものもあります。

 2年後なり4年後にしっかりと成果が判断されて、そこで私がやることが良かったかどうかということがきちっと答が出るということになってます。マニフェスト運動については、私もぜひほかの首長さんなり、もちろん政党に対して大いに働きかけをしていきたいと思いますが、成果については、第一号でありましたから、最初に問われることになります。そういったことで恥ずかしくないようにしていかなければなと思っています。
 

月尾:
ありがとうございました。説明にありましたが、今回の統一地方選挙で、増田知事と神奈川県の松沢知事がマニフェストを明確にされ、新聞などにも取り上げられました。現在の制度では、それを有効に選挙民に訴える方法が制約されているわけですが、第一歩を踏み出していただいたと思います。
ひととおり知事からお話をいただきましたので、北川教授から講評をいただきたいと思います。
 

北川:
 マニフェスト出したらこれぐらいですね、話が出るわけですから。学者の先生は、いろんな理屈はいってマニフェストはどうとか、あれは悪いとか、財源がはっきりしていないとか、こういうことだったもんですから、私、増田さんにいったんです。

 でたらめでいいからつくってくれと、こういった。そして、でたらめでやるとですね、すぐ文句いって、財源がはっきりしてないじゃないかとかね、こういうことをいうぞと、こういった。それだけはやめてくれといったから、それじゃまあ話を変えましてね。あの増田知事でもできたんだからみんなやれと、こういう話になればですね、どんどん入っていくとですね、早速ですね、議会から文句がでますね。ジャーナリストから文句が出ますね。

 学者の先生、あれだめだこれだめだといえば、どんどん進化してという、そういうですね、前例踏襲とかですね、無謬性というような馬鹿げた行政から、どんどん間違っている、間違ってるから直せばいいということでね。ちょっと私が差別をしてですね、素直な増田さんといったら、今片山さんから早速文句が出たでしょ。これがいいと、僕は実は思っておりましてね。

 今度はマニフェストちゅうたら産廃物のずっと追跡物のトレーサビリティーみたいだから、名前変えろつんで、どうぞ皆さん日本語でいいものがあったらですね、考えていただけませんでしょうか。そうしてそれ進化をしていけばですね、どんどんとみんなが北京の蝶々になると、こういうことで、進化論でいけばですね、本当に私はいいんだと、そのように思います。

 今度は公選法のですね、改正をすると。あの政見放送て誰が決めたのか分かりませんが、パネルは出したらいかん、ある一定のレベルからですね、手を上げてはいけんと、あれどっかの選挙管理委員会で選挙したことない人が全部決めたんだと思いますが、全くパフォーマンスのないですね、馬鹿げた、分からそうという意欲じゃなしに、自分たちの責任をですね、

なんとか逃れようということで決まっただけの政権放送なんて、誰が見ますかというようなことをですね、やっぱりおもしろくしてですね、そしてやっていく。あるいはですね、総務省の連中がそこに来てますからあれですが、くるくるくるくる投票に行きましょうとかね、馬鹿なことをいって、誰があんなものを聞いてとみんな馬鹿にしているから、やめろといったら総務省から怒られたというんですね。

 だから、宣伝カー回して来るなら世話ないけれども、本当の意味で、選挙は自分たちが参加するんだと、自分たちが町を決めるんだといえば、必ず上がっていくというふうに変えていかなきゃいけないと、実はそう思っているところなんです。

 したがいまして、マニフェスト、この場をお借りして大分宣伝ができたなと喜んでいるわけですが、契約によってみんなが決まっていくというようなことをする、さらにですね、マニフェストは単なるツールですが、これによって公選法の馬鹿さ加減、あるいはですね、政見放送の馬鹿さ加減、あるいはですね、地方分権ができないというならば、実態ができないならそれを変えようというふうに変えていく。

 あるいは内閣と与党が全く不一致ですから、とんでもないようなことが平気で行われてですね、不一致ということは、何もしないということはだんだん証明されてきたと。よって、選挙前に公約を掲げてというようなことになれば、本当にいいなというようなことを考えているところでございまして。

 これからは教授といたしまして、各県の比較検討をきっちりとさせていただきまして、評価をさせていただいて、この県の序列を私が責任をもってつけて、そして世の魁になるようなことになればと、月尾教授のですね、この方は辞められたんで元教授の、ご相談しながらですね、やっていければなと。全部オープンにして比較検討どんどんして、そしていいものは、進んでいるものが残っていくというようなことに、この会がなればなと、そのように思っております。
 

月尾:
 ありがとうございました。知事は演説の機会が多いので、長く話されるのが得意で、予定していた時間より30分ほど余分にお話いただきました。光栄なことではございますが。残りが30分弱になってしまいましたので、これからは一人3分ぐらいしか時間がありません。

 そこで、どういう順番でお話していただくのが公平かということを考えておりました。先ほど橋本知事が最後の方だから言うことがないといわれましたので、橋本知事に最初に話していただくにはどうしたらいいかと考えた結果、あいうえお順ではなく、イロハ順にすればいいということがヒラメキました。

 これから、イロハ順で3分ずつお話いただきたいと思います。決意表明というか、どのように地域から日本を変えていくかということをお話いただければと思います。もうひとつ、橋本知事に一番をお願いするかという理由があります。橋本知事は、かつて放送局にお勤めで、時間に正確ということです。
 

橋本:
 いろいろな前置きがありましたけども、先ほど、後の方で良かった良かったといった途端に、たぶん月尾さんだから、また僕を最初にする算段を考えるだろうなと思ったら、そのとおりになりました。

 なぜ自立が必要かというのは、もう言わずもがなだろうと思います。このままの依存型のシステムでは国も地方ももたなくなるからだろうと思います。地方の立場からすれば、今国から交付税なり補助金なりをいただいて、いろんな仕事をしていくというやり方は、確かにに非常にやり易いというか、それに慣れた方々からすれば、それが続いていけばそれに越したことはないなという思いもないではありません。

 ただ、現実の問題として、そういうことはもう長続きしないのです。であれば、それに備えた財政的な体質、また役所のシステムをつくっていくことが当然必要になります。

 財政面では、それぞれの県で、それぞれの実力の程度に応じたいろんな工夫がなされていると思いますが、組織の面では、先ほど片山知事もお話になりましたけれども、中央省庁をそのまま雛型にしたような組織ではない組織づくりということを、今本県でも取り組んでおります。

 例えば、海岸の事業だとか、生活排水の処理だとか、様々な省庁別に分かれている事業を、そのまま県のなんとか課やなんとか課で分けてやっている事業がありますが、そういう同種の事業を同じ課にまとめていくというようなことです。そういうことで、今後、国のシステム、地方と国との関係が変わったときに、すぐ対応できる形にしていくことが、今やっていかなければいけないことではないかと思います。

 その面でいえば、財政の面でも、例えば今100いただいているものが70になったとして、30減った分のセイフティーネットをどうするかということは、当然考えなければいけませんけれども、その分、国の規制やしがらみがなくなって、国に向けて費やした多くの労力を、地域に向かって使っていくことができれば、たとえ少ない経費でも、これまでの縦割り行政とは違った、無駄のない総合的な行政が行える、という前向きな受け止め方もできると思います。
 

月尾:
 ありがとうございました。大変正確に3分1秒で終わっていただきました。ご参考までに前回は、浅野知事の計測によりますと9分31秒でございました。次に堂本知事、お願いします。
 

堂本:
 私はやはり、どうやって、本当に県民参加型の県政づくりができるかということが、重要だと思います。今、千葉県では、福祉のことについて、県で何かをつくる前に、企画前に当事者の方に来ていただいています。

 私も、とても感動したのは、盲導犬に引かれて目の見えない方が、そういった企画の段階から来ている、あるいは知的障害者がおかあさんと一緒にやってくるというような方、それから施設で働いている人とか、いろいろですけれども、そういう人たちが参加しながら、政策をつくってきたら、役所で書く、そのワーディング、言葉が変わってきた。

 それだけではなくて、今回、特区として申請し、承認をされたんですが、高齢者、障害者、それから子供が一緒のデイケア、これを滋賀県で私見たんですけども、千葉県では、公的にきちんとした形でそれをやろうということで特区申請をしました。

 千葉方式として、これは本来は縦割りなんですけども、それを縦割りじゃなくやっていくというようなこと、これはあくまでも、参加型の小さな地域だと、そういうようなデイケアの方が便利なんですね。

 お年寄りのとことへ、ちょっと障害のある方もいるんだけど、今日は結婚式だから使ってくださいとか、それから子供の場合でも、小さいお子さんを預かるということができるようなことをやり始めました。それはやはり参加型で意見がいえるということがとても大事だというふうに思っています。

 これをもうちょっと硬い言葉でいわせていただければ、やはり玄人と素人のあり方だと思うんですよね。中央省庁があまりにも玄人になってしまったがゆえに、おそらく永田町、立法府も司法も三権分立といいながらそれがいささか三つの大きさが変わってきてしまっている。大変に中央が大きい。

 それと近い形で、やはり今度は地方に、地方公務員も玄人である、玄人制というのは、ある意味で必要なんですけども、今必要なのは、やっぱり素人の都合なんですね。県民一人ひとりの都合なもんですから、そういった県民の都合をどういうふうにして、実際に行政化していくか、行政で実現していくかということが、大きな課題だと思っています。

 三番瀬でその実験をしておりますけども、あらゆる形でそれをどうやってやるか、私は県民会議というものを開いて、80ある市町村のうちの60ぐらい歩きました。その中で一番大事な投票という義務と、それから責任としての納税はやってくださいといったにもかかわらず、千葉県は全国で最下位の県議会の投票率でした。

 がっかりしました。やはり、一世紀以上あるいはもっと古くから続いてきた日本の官僚制度、この意識改革というのを、県庁だけではなく、県民、それから民間をも含めて改革していくということは、大変なことだと思いますが、そこのところに焦点を当てていくということが、大変大事だというふうに認識しています。
 

月尾:
 ありがとうございました。次は、前回10分4秒お話いただきました片山知事からお願いします。
 

片山:
 前回はすみませんでした。地域の自立を考えるときにですね、自治の一番の主役は、住民の皆さんでありますから、住民の皆さんが自立的に地域の行政をコントロールする、住民の皆さんの意思を地域の行政に反映させる方法を、やっぱり考えなきゃいけないと思うんですね。

 で、そういう意味で、公職選挙法の問題を北川教授が提起されましたけれども、私も公職選挙法は、もうやはり見直さなきゃいけないと、自分の選挙をやってみて思います。また、それ以前に、地方自治法で今いろんなことが決められているわけですが、例えば、議会も、市町村の議会もですね、もっともっと多様性があっていいと思うんです。

 今は全国一律の制度であって、人口の多寡によって定数が何人という、そういう差があるだけで、あとは基本的に同じです。年に何回定例会やれとかですね、常任委員会はいくつかだとかですね、大きなお世話なんですね。そんなことはそれぞれ地域で決めたらいいと思うんです。

 もっといえば、その議員を選ぶ被選挙権なんかもですね、地域で決めたらいいと私は思うんです。例えば学校の先生でも市町村の議会の議員になれるような仕組みをつくったらいいと思うんですね。

 今は全部そういうのを排除してしまって、もう職業としての政治家でないと議員になれないような、そういうシステムになってます。子育ての期間があって、教育課程の子どもをもっていて、もっと地域の教育にものを言いたい人は、仕事をやめて、例えば公務員だったらもう本当に辞職して、民間の企業のサラリーマンでも仕事をやめてそれで市町村の議会の議員になろうとするわけです。

 いったんそういう政治の道に入ってしまったら、もうあとはがんばり続けて落ちないようにしなきゃいけないから、次の選挙のことばっかり考える。というようなことが、今の日本の政治を悪くしていると思うんですね。もっと気楽に、自分が本当に必要と認める子育ての期間中は教育の問題で市町村の議員になる、子育てが終わったら議員をやめて次の人に代わっていくというような、日常生活を送りながら、市町村の行政に参画できるような仕組みにする必要があると思います。

 それから、その選び方もですね、公職選挙法というのは、本当に古色蒼然としていまして、おそらくまあ昭和の初期か大正時代ぐらいの選挙の形態を念頭に置いて、それに対する規制を加えたやり方なんですね。ですから、選挙の運動のやり方、特に有権者の皆さんに対してどうやってアピールするかという訴えかける技術開発がまったくできていないんです。

 これはもう100年近くの間、技術開発のできてないこれ分野ですから、魅力に欠けて投票率が悪いというのは当たり前だと私は思うんですね。自分で選挙をやってみて、有権者にかっこよく訴えかけるには、今のようなやり方をしていてはだめだなとやっぱり思います。

 ですから事前運動の問題だとか、個別訪問の問題だとか、マニフェストを配れないとかですね、技術開発を阻害するような今の仕組みをもう1回点検してみる必要がある。もっと魅力的に選挙が演じられるというような、そういう仕組みにする必要があるということを思いました。何分だったでしょうか。
 

月尾:
 ありがとうございました。次は前回6分36秒の梶原知事からお願いします。
 

梶原:
 私の時計では3分だったんだけど。私は、地域の自立というのは、世界レベルの地域の自立じゃなきゃもうだめだと思うんですね。国家というこのボーンがなくなれば、裸でですね、国際競争の場にさらされるわけですから、地域の産業もすべて国際競争原理でですね、勝負しなきゃいけない。

 行政も同じでですね、教育一つとっても、先ほど申し上げたように、国際標準の教育を子供たちにしてあげないと、将来ですね、世界の舞台で通用しないんですよね。IT教育、あるいは英語の教育等々ございますが、東京の方針に従ってやるという意識はもう完全に放棄しなきゃいけないというふうに思います。

 それで、我々はですね、岐阜県は一つの独立国であると、仮にまあ独立しますとですね、国連では経済規模は43番目です。南米のチリだとか、パキスタンだとか、ニュージーランドと同じくらい、堂々たるもんですよね。いつまでもこんな狭い日本でですね、とらわれておってはいけない。したがって、いろんな分野で、国家としてのランキングですね、ベストテン入りを目指そうと、目標としてですね。

 例えばIT、IT教育。世界で岐阜国ということであれば、ランキング何番だというようなことを指向していこうと。日本で仮に1番でもですね、世界では通用しない場合が大いにあり得るわけです。だからこういう地域の自立もですね、国際感覚を持ってこれから考えていかなきゃいけないと、こんなふうに思います。何分でしたか。以上です。
 

月尾:
 ありがとうございました。次は、前回控えめで4分44秒でございました國松知事お願いします。
 

國松:
 皆さんがうまくしゃべられるんで、私は簡潔にしたんですが。先ほど申し上げたように、日本は今まで追い付き追い越せで、モデルを見てやってきました。それで大成功したんですが、ここから先はモデルがなくなったというときに、それぞれがモデルをつくるんだというところで自立が果たされないと、本当の自立にはならないのではないかと、こう基本的に考えています。

 今までやってきたことでいえば、モデルがあったということと併せて、快適、便利、長生き、こういうことを一生懸命成功させたんですが、見事に自然を壊していたとか、自分のことだけしか考えていなかったとかいうことがあります。

 あとは官と民の協働で、もう一つの生き方を、暮らし、産業、地域づくり、この三つでつくることだと思っていますが、特に協働では官と民とだけではなくて、いわゆる産官学の連携と併せて金融機関がこれをきちっとサポートするということや、産官学金(金融機関)民という形で民が加わるというような形の連携を地域でどうつくっていけるのかということが非常に大事だなと思っていますのと、

もう一つは、世界の智恵を集めないと損だなということを思いますのと、世界に貢献できるモデルになるようなものをつくれるかどうかが地域で問われているというように考えた方が、よりそういうことを考えるのに分かりやすくて力が出せるのではないかと思っています。

 また、滋賀県は近江商人の発祥の地であり、近江商人は特に三方よしということを大事にするということをいいます。売り手よし、買い手よし、世間よしと、こうしたことをいうんですけれども、行政も商人(あきんど)的自治体経営を考えないといけないなと。

 いわゆる顧客をどう満足させるかという話の中で、いわば行政は公的サービスの総合商社であるということ。県庁改革を、職員一人ひとりの意識改革と併せて県庁の分権化、県下に六つの地方振興局をつくってミニ県庁にし、今年からそれぞれの部は専門店、そして地域振興局は総合店ということで、各組織で目標をつくって、その目標を自ら評価し、PDCAサイクルで行こうかという話をしています。

 ともあれ、そういう中でこれからの生き方を、暮らしと産業と地域づくりでモデルづくりできるか、そんなことを目指してみてはどうかと、こんなことを考えています。
 

月尾:
 ありがとうございました。次に、前回最長記録10分42秒の増田知事お願いします。
 

増田:
 はい、猛反省して一言だけにします。NPOとの新たな関係を模索していきたいと思います。いきなり構築というのは難しいと思いますので。特に政策立案の場面で、どれだけそういう人たちと本当の話し合いができるかが重要になってきます。

 行政はまだNPOの人たちと距離があるような気がするんですが、本当に民意を汲むという意味でも、行政のプロの世界だけじゃなくて、NPOの人たちとの関係をとにかく模索していきたいと、こういうことだけを申し上げておきたいと思います。以上です。

月尾:
 ありがとうございました。次に、ご自分の計時では前回5分1秒といわれた浅野知事お願いします。

浅野:
 先程「自立というのは大人」といいました。一人前の大人は悪いことをしてはいけないんですね。そこで、行政の恥部ということについて、二つ申し上げたいと思います。

 一つは談合です。我が宮城県では、県会議員63人のうち現職3人が競売入札妨害事件で逮捕され辞めました。これは我々にとっても大変なショックでした。したがって、公共事業の入札契約制度を改正して、今1,000万円以上の公共事業は全部一般競争入札にしております。

 これは、日本で一番一般競争入札の範囲が広いと思いますけれども、歴然として落札率が落ちました。またその一方で、どう考えても談合をしているとしか思えないケースもまだ残っています。これは地方だけでなく国もそうで、まさに金の問題もあるのですが、こういう恥部を恥部として抱えていては自立もあったものではないだろうと思います。

 もう一つはもっと生々しいのですが、県警とまた今喧嘩をしています。「また」というのは、3年前も情報公開条例の改正をめぐって喧嘩をしたのでそういうのですが、今度はもっと生々しくて、「あなたがたは嘘やっているだろう」といっております。

 記者会見においても、公文書においても、知事が県警に対して「県警の犯罪捜査報償費がきちんと捜査員に渡ってないだろう」というとんでもない暴言、いいがかりをいっており、「なぜ私を名誉毀損で訴えない?」と県警本部長を挑発しているのです。

 ところが、「捜査員に実態を調べさせろ」と私がいっても、県警は「必要ない」とか、「それは捜査員の士気にかかわる」とか、「法律上だめだ」とか、いろいろいっているのです。そういう問題ではないでしょうと思うのですが。知事が「あなたがたはきちんとやっていない」というと、県警は「これは荒唐無稽である」といいました。

 つまり、犯罪捜査報償費1万円とか3万円を路上で捜査に協力した人、いわば一般の国民に渡すような、そんな危ない行為をするなんてことは荒唐無稽でしょうと。

 しかし、この前の3月26日に、東京高裁の判決では、警視庁の銃器対策課の犯罪捜査報償費は架空であると認められました。あれは警視庁だけの問題だといえるのかどうかということです。これは別に警察が憎らしくてやっているのではなくて、世界に冠たるまじめな日本の警察が、一生懸命にせの領収書をつくっているということでいかに恥ずかしい思いをしているか、ということをいいたいのです。

 我が宮城県も、食糧費とか空出張の問題による9億円を77カ月かけ今年3月20日にようやく全部返し終わり、そういう汗と涙と恥辱の歴史をもって今何とか自立しているわけです。

 まさに「行政の自立」というときに、全部例外があってはいけないと思います。情報公開というのも、捜査上の秘密なんていうことでロープを張ってしまうと中で何が行われているかわかりません。これは警察に限らず国でもいえることです。このような恥部を直していくということを、我々は先鞭をつけました。国も一緒にやっていきましょう、ということです。
 

月尾:
 ありがとうございました。いわれなくても分かりますが3分1秒です。最後になりましたが木村知事お願いします。
 

木村:
 実は、今日新聞読んでいましたら、国家公務員の志望者が4年連続して減ったと報じられていました。大体、不景気なときには国家公務員になりたい人が増える傾向にありますが、減ってきたという内容でした。

 昨日、私は、ある国家公務員の人といろいろ話しをしておりましたら、その中で、閉塞感を感じていると話しておりました。それは、何か新しいことやっていこうという感じではなくて、今までのこと守っていこうという意識が強くて、面白くないということでした。

 このような状況のなか、この地域自立戦略会議などの知事連合に期待が高まっていると思っています。そういう期待が集まっているなかで、地方から国を動かす動きにしていこうとしたら、もう一味なんか工夫が必要になると考えています。

 最終的には、それこそ憲法の改正までいかないといけない、そうはいっても、知事の動きだけでは、なかなか憲法の改正まではいかない、そのあたりでどんな仕組みをこれから考えていくのかということが、大事なことであると思います。

 私は、最近の国際情勢を見ていると、国が、国としてしっかりやってもらわないと具合が悪いと思います。はっきりいえば、国は国の仕事を本当思い切り真剣にやってもらって、その代わり生活に関するようなことは、全部自治体に任せてもらうというような国の形にしていかないとやっていけないだろうと強く思っています。あるべき国の形や、地方の形というものを考えていかないといけないと思います。

 それから、県の組織改革に関していえば、和歌山の場合は、かなり地縁血縁というものが濃密な土地柄ですが、そういうものを排し、何かをやると恥かく組織からやらないと恥かく組織になろうと呼びかけたら、ずいぶん職員みんながやる気になってきているんです。

 それを見ると、今、産業再生機構が問題になっておりますが、自治体も、本当は、いわば、自治体再生機構というぐらいなものをつくってやらないとだめだなと思います。それから、いくら大きくて、昔から立派な組織だといわれたような会社でも、かなり硬直化しておかしいと思うようなことが非常に多くなっております。

 一方、うまくいってるといわれるような企業は、例えばキャノンにしても日産にしてもトヨタにしても、やっぱりリーダーの顔が見えるし、リーダーがいわば触媒になって大きな変革に取り組んでいます。自治体もそういうふうな形で、リーダーシップを発揮していくような時代に入ってきていると思っています。だから、「ちょっとやりすぎかな」と思うこともありますが、「やりすぎぐらいでちょうどいい」と思いながら、仕事をしています。
 

月尾:
 ありがとうございました。それでは最後に北川教授から一言お願いします。
 

北川:
 マニフェストですけども、これでですね、本当に契約によって選挙が行われはじめますと、まず二世、三世の議員がですね、削られていきますね。これは私的な財産を残すのに、身内のですね、パターナリズムで、仲間意識で、仲間の利益を温存するのは非常にいいわけですけども、公のですね、タックスペイヤーの立場をまったく無視してるという、このことが本当に変わってこないといけないと思うんです。

 それで身代をかけてですね、財産莫大何億かけてですね、全人格を売ってというようなことは、本当にやめていかなけりゃいけないと思うんです。したがって、例えばイブニングな議会とか、あるいはウィークエンドの議会だとか、いわゆる本当にリーズナブルな形でですね、総選挙資金は100万円で済むとかね。

 そして、偶然うまく通ったらですね、4年間はやると。しかし失敗したら、また県庁へ戻ってくるとか、会社に戻るとか、そういうシステム、根源的にですね、本当に考える、一つの考える材料としてマニフェストをお考えをいただければ、私はありがたいと、こう考えているところでございます。

 さらにですね、国もですね、ずいぶん変わってきていると思います。地方も地域も変わらないと、本当に国に追随だけでですね、それを破ろうとすればですね、寄ってたかってみんなでいじめるというようなことは、本当はやめていかないといけない。だから地域が自立をしてね、内発的にということで、8人の知事さん方の本当に活躍をですね、僕は期待をいたしたいと、そのように思っております。私からは以上です。
 

月尾:
 長時間ありがとうございました。やはり評価をして公開するということは素晴らしいことだと思います。後半は時間を公開しましたら、予定どおり終わり、無事時間までに終えることができました。お聞きいただいた皆様には、いろいろとご感想あると思います。

 それぞれ勝手なことをいってまとまらないと思われた方もあるかと思いますが、これは大事なことです。梶原知事が最初に言われましたが、共倒れにならないことが大事です。共倒れにならないというのはどういうことかというと、お互いに目指すところが様々だということです。

 つまり多様であるということが、これからの社会の中で大事だということです。生物の社会でも多様性は大事ですし、情報も多様性が大事です。この会議は何かをまとめてやろうということを考えているわけではなく、最初にもご説明させていただきましたが、それぞれの地域が新しい方向を目指していくとご理解いただければと思います。

 最後に、今後のことを簡単に紹介させていただきます。予定では、年に4回ほどこの地域自立戦略会議を開き、基本的に完全な公開にします。公開というのは、今回のようなシンポジウム形式ということではなく、知事と学識経験者が情報交換をする会議を4回開き、それを公開でやるということであり、ご関心があれば来ていただければと思います。いつ開催するかについては、この会議のホームページを開設して掲載する予定でいますので、検索システムで探していただけばと思います。

 そのうち1回は東京以外の場所でシンポジウムを開く予定でおります。初回だけは岐阜での開催が決定しており、9月以降に公開のシンポジウムを予定しております。

 本日、知事がそれぞれの立場で決意表明されたように、この日本の状況を何とか変えたいと思っておられる知事や学識経験者が努力しますので、ぜひ応援していただければと思います。長時間ありがとうございました。
 


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