平成18年度 愛媛・高知交流会議

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

平成18年度 愛媛・高知交流会議

平成18年5月15日(月曜日)13時30分から14時40分(坊っちゃん劇場(東温市))


(出席者) 
 加戸守行(愛媛県知事)
 橋本大二郎(高知県知事)



(項目)

開  会
坊っちゃん劇場及び土佐二十四万石博のPR
四万十川の清流保全、四国高速道路8の字ルートの早期完成
大規模災害が発生した場合の連携
四国アイランドリーグの盛り上げ
松山・上海便を活用した国際交流の促進
松山東高校生徒との意見交換
 

【開会】
(藤岡愛媛県企画情報部長)
 ただ今から、平成18年度愛媛・高知交流会議を開催いたします。開会にあたりまして、加戸愛媛県知事からご挨拶を申し上げます。

(加戸愛媛県知事)
 本日は愛媛・高知両県の第7回の交流会議を開催することができまして、橋本知事をはじめ高知県の関係者の方々に、厚く御礼申し上げます。

 今年は夏目漱石の小説「坊っちゃん」が誕生して100年ということで、ちょうどその小説の舞台となりました松山東高の生徒の皆さん400人が、ミュージカル「坊っちゃん!」を観劇した後、引き続いてこの交流会議に参加いただきまして、皆さんの前で開くこととさせていただきました。

 橋本知事と加戸知事の勤務評定を生徒の皆さんから受けるような気分もいたしておりますが、ご協力よろしくお願い申し上げます。

 現在のわが国の経済、皆さん方もご存知のように緩やかな回復傾向であると言われておりますけれども、それは大都市圏の話でありまして、高知・愛媛両県の立場から見ると、まだまだ景気回復の実感がわかないという状況でもございまして、特に財政状況が三位一体改革の名のもとでの地方交付税の大幅削減というようなこともございまして、両県ともに予算を組むのに四苦八苦という厳しい環境下に置かれております。

 そういった中で、高知・愛媛だけでなくて、香川・徳島も含めまして、四国がこの地域全体で力を合わせて難局を乗り切っていかなきゃならない時期かなと思っておりますし、私は四国州という道州制の強固な論者でありますけれども、とにかく四国4県が力を合わせていくことが地域の発展につながる。

 そんな思いで、特に愛媛県と高知県は四国山脈には遮られておりますけど、地図の上で見れば、ほとんど愛媛の南側と高知県の北側は長い区間にわたりましてつながっている。

 言うなれば、実質的には同じ気候・風土の中で同じ産業構成で、特に愛媛県の場合は南の方が農業、一次産業中心でありますけれども、高知県と産業構成が似ているという状況もあります。

 気分はやや違いますけれども、そういった点でこの交流会議を通じていろいろな面で、文化面をはじめとして、交流を重ねることによって、共通の課題を解決していきたいと思っているわけでもございます。
 引き続き広範な高知県と愛媛県の連携を期待しながら開会の挨拶とさせていただきます。

(藤岡愛媛県企画情報部長)
 では、続きまして、橋本高知県知事からご挨拶をいただきたいと思います。

(橋本高知県知事)
 はい。皆様こんにちは。ご紹介をいただいた高知県知事の橋本です。この愛媛県と高知県の知事の対談というか、交流の会議、加戸さんからご提案があって、今回で7回目ということになります。

 いつもはこんなにお客さんがいないで、加戸さんと私が向き合って対談の形式でいろんな提案をし、また提案を受けて意見を述べ合うという形でした。

 今日は松山東高の皆さん方いっぱい会場を埋め尽くす中で、交流会議・対談というよりはむしろパネルディスカッションのような格好ですので、どちらを向いて誰に向けてお話をしたらいいのか、ちょっと難しいなと思いながらこちらに座っています。

 さっき言いましたように7回目ですので、だいたい愛媛と高知の課題だとか、一緒に協力し合うことというのはこれまでの6回の話で出尽くしている感もあります。

 ですけども、今日はなるべく出涸らしにならないように、少しでも皆さん方に興味を持っていただけるような形でお話をしたいと思いますし、また私達の対談・交流会議の後で皆様方のご質問を受けるということになってますが、もっともしご質問があれば、質問の時間を延ばして私達がお答えをしたり、考え方をお話をするというようにしてはどうかななどということを、先ほど一緒にお食事をしながら加戸知事とも話をしました。是非、気軽にフランクな感じで、この会が進めばと思っておりますので、どうか宜しくお願いいたします。ありがとうございます。
 

【坊っちゃん劇場及び土佐二十四万石博のPR】
(加戸愛媛県知事)
 それでは交流会議に入ります。まずPRから始めさせていただきたいと思いまして、橋本知事にご認識いただくと同様に、今日観劇された東校の皆様にもこの坊っちゃん劇場のPRを、オーナーに代わりまして紹介させていただきたいと思います。

 ご承知のように「坊っちゃん」という小説が発表されましたのが今から100年前なんですけれども、正直この「坊っちゃん」というのは、皆さん方の中で読まれたことのある生徒さん。ちょっと手を挙げてみてください。はいありがとう。かなり多くの人が読んでおられますね。

 私は大学に入ってから読んだぐらいですから、さすがに母校を舞台にした本だということで読まれている。関心いたしました。が、読んだらお分かりのように、道後温泉以外はこの愛媛・松山の事をよく書いていないんですね。

 これだけ悪口を書かれていながら愛読するという、いかに愛媛の人は気持ちが優しいのかなという一つの例証だろうと思っていますけれども、ただジェームス三木さんがこの脚本を書かれた時に、愛媛を馬鹿にした小説だけれども、このミュージカルは愛媛の人が坊っちゃんを馬鹿にしたストーリーにしたいというような意味合いもございましたので、やや今日の番組を見てると江戸っ子に対する少しの胸のつかえがおりたような番組だったのかなと思ったりもいたしております。

 もともとはわらび座という劇団が、55年前に秋田県で誕生いたしまして、そこで苦しい中から成長を遂げて、秋田県の田沢湖に芸術村というのを設けております。

 私もかつて文化庁にいましたからよく知ってるんですけど、劇団というのは通常経営は成り立たないんです。多くの役者さん、あるいは舞台の人たち、それから箱としての劇場、いろんな形でまた成り立っていくためには、収入的にはそろばん勘定、通常合わない。

 それを何とかやり繰りしながら、常設劇場を持っているという点では、皆さんご承知の劇団四季以外では、このわらび座ぐらいかなと思っておりました。

 それをたまたま愛媛県のビージョイグループの宮内会長がこのわらび座と連携をして、西日本でただ一つの常設劇場を設けるということで、この4月に坊っちゃん劇場が誕生いたしました。

 ヨーロッパでは別に珍しい事ではありませんけれど、日本では東京にある劇団四季の常設劇場と秋田県にあるたざわこ芸術村と、そして愛媛県のこの坊っちゃん劇場。おそらく私の知る限りでは常設劇場としてこれから成り立つのかどうか厳しい中で頑張っていくことに、愛媛県民としても一生懸命支えてあげたいなという思いもございます。

 そういった点で特にたざわこ村で感心いたしましたのは、全国から高校生がたざわこ村へ訪れて、わらび座のミュージカルをご覧になって、そこへ泊まっていかれる。このことでかなりの客数をつかんでおられる。ある意味で、固定客に近いんですけれども、愛媛県もまずそんな形になってもらえばうれしいなという思いもありまして、特に今日ご協力いただいた松山東校、並びに参加いただいた生徒の皆さんに感謝申し上げたいと思います。

 おそらく今日のミュージカルを見てみて、皆様素晴らしいと思われになったでしょう。多分、1人松山東校の教頭先生だけはおもしろくない顔をされてたんじゃないのかなと。赤シャツのあの場面を見ながら想像をいたしました。教頭先生お許しください。もしおいでになってれば。ということで、高知県からも高校生がこういう形で坊っちゃん劇場に時々訪れていただくとありがたいなという意味も含めて、今日は交流会議をこの場所に設定した次第でありますので、橋本知事、この趣旨をご理解いただきましてよろしくお願い申し上げたいと思います。

(橋本高知県知事)
 十分理解いたしました。夏目漱石の小説を僕が最初読んだのはいくつぐらいか覚えていませんが、「坊っちゃん」そのものも読みましたが、加戸さんもおっしゃったように多分大学に入って間もない頃だと思いますから、もう何十年も前の話でほとんどストーリーを覚えておりませんでした。

 ですから、さっきあのミュージカルの舞台を見ながら、こんなお話だったなあと思い出しながら振り返ったんですけれども、その夏目漱石という人の名前を聞いたのはもっと前のことです。

 というのは僕は東京生まれの東京育ちでしたので、小学校も東京の私立の小学校に通ってました。で、その学校は小学校だけじゃなくて中学高校大学までずっと続いてある学校で、小学校の校長先生以外に学校全体の院長先生という先生がおられました。

 その先生はやはり愛媛県の出身の安倍能成さんという学者さんだったんですけれども、この安倍さんが実は夏目漱石のお弟子さんにあたる方だったんです。

 父親に連れられていくつの時だったか覚えてませんけれども、安倍能成先生のお家に伺ったことがあります。その時、安倍さんから夏目漱石の思い出話をいくつか聞かせていただきました。

 その中に印象に残る話があります。というのは、「あべのうせい」というのはどういう字を書くかと言いますと、安心するという安という字と、一倍二倍倍増するという倍、そして能力があるないの能という字と、成功失敗の成の字、それで安倍能成と。こういう名前です。

 多分本当は「よししげ」とお読みになったんだろうと思いますけれども。そういう字であったために、ある時、夏目漱石が病の床に伏せっていて安倍先生がお見舞いに来たと。そしたら夏目漱石が、「安倍君か、よう来たね」と。

 「おまえが来ると非常に体の調子もいいし、縁起がいい」とこうおっしゃるので、安倍先生が「なぜですか」とこう聞いたら「おまえは自分の名前の漢字を並べてみろ」と。「あんばいよくなると読める。だからおまえが来るとあんばいがよくなるんだ」という話を夏目漱石がしてくれたということをその安倍先生が言っておられました。

 で、その後、夏目漱石という人を知るようになって、小説家で何となく堅い人かなというイメージがありますけれども、非常にそういうユーモアのある、面白い人だなということをその子供時代にそんな安倍先生のお話を聞いて感じたことがあります。

 また、夏目漱石はこの文を書くというだけではなくて、絵を書く技にも長けた人で、よく葉書を書く時に、葉書の半分、上の方に自分で絵を描いて、下に手紙の文章を書くというような、今でいう絵手紙じゃないですけれども、そういうものを出しておりました。

 今高知県に県立の文学館というのがありますが、この文学館の中にも夏目漱石がいろんな知り合いに出した絵のついた葉書が何枚かございます。興味があったら、是非一度、高知の文学館にも来ていただいて、そういうものにも目を通してもらったらいいなと思うんです。

 その文学館で今、実は併せて展示をしているものがあります。それは何かと言いますと、今年NHKの大河ドラマで「功名が辻」という番組が放送されていますが、その「功名が辻」の主人公である土佐藩の初代の藩主、山内一豊とその妻千代さん、この物語の主人公というか、物語のテーマでございます山内家のいろんな宝物資料をこの文学館の方で展示をしています。

 この大河ドラマが放送されるのは、その地域にとっては観光のいいチャンスですので、高知でも「土佐二十四万石博」というふうな形で大河ドラマのいろんな着物などを展示するようなドラマ館に併せて、今申し上げた文学館での宝物資料の展示、そしてお城の中で当時のお城づくりの風景だとか町の風景を模型にしたジオラマなどなどの二十四万石博というイベントをやっています。

 是非こうした機会に、一度皆さん方にも高知市に足を運んでいただく、そして、この坊っちゃん劇場にも高知の高校生も来させてもらうと。そんな交流がこれからこういうことを機会に広まっていくといいなというようなことを今日思いました。

(加戸愛媛県知事)
 ありがとうございました。今NHK大河ドラマの「功名が辻」は日曜日の夜8時から放映されておりますので、ご覧になっている方も多いかと思います。

 この原作は司馬遼太郎さんの作でございます。司馬遼太郎という点では、作品に「坂の上の雲」というのがありまして、これが愛媛を舞台にしたもの。

 この「坂の上の雲」が再来年から大河ドラマの上にスペシャルが付いた、NHKスペシャル大河ドラマとして放映される予定になっておりますので、今「功名が辻」で、高知県が一生懸命PR・宣伝されておりますけれど、このブームが去らないうちに愛媛県松山の方でも「坂の上の雲」ブームが起こればいいなと願っておりますので、「功名が辻」は是非成功していただいて、そのいろんなノウハウを愛媛も学びまして、また2年後以降に大いに活用させていただきたいなと思っております。

(橋本高知県知事)
 はい。ありがとうございます。さっき加戸知事が、「坊っちゃん」を読んだ人はどれぐらいいますかって聞いたらかなり手が挙がりましたね。ですから、「功名が辻」を見てますかと手を挙げてもらおうかと思いましたけど、それより少ないと寂しいと思いましたのでやめました。

 是非毎週日曜日8時からだけではなくて、衛星も入れれば4回放送してますので、是非どっかのところで見てもらったらいいなと思います。ある意味、歴史の勉強にもなりますし、別に受験に役立つとは思いませんけれども、歴史に興味を持つ、日本という国に興味を持つ、そんなきっかけにもなると思いますから、見てもらったらいいな思います。
 

【四万十川の清流保全、四国高速道路8の字ルートの早期完成】
(加戸愛媛県知事)
 先ほど安倍能成先生のお話がありましたけれども、安部能成先生は愛媛県の出身で、愛媛の生んだ偉大な学者の方だということを記憶にとどめておいていただければと思います。

 それと、橋本知事がこの坊っちゃん劇場に来ていただいたのは、さっきの「あんばいよくなる」という言葉に、語呂合わせでひっかけますと、橋本知事の名前は大二郎ですので、来ていただくとお客は大きく二倍になるだろうというふうに理解をしております。

 それでは、少し仕事の話を進めていきたいと思います。愛媛県と高知県、一番接点がありますのは西南地域でありまして、愛媛が四万十の源流と言われていますけれども、このあたりで愛媛西南地域に関して一生懸命熱心に頑張っておられる方があります。

 現在、西予市となりましたけれども、旧野村町の緒方真澄さんという、かつて香川大学で教授をされた方なんですが、今は帰られまして西南の歴史・文化ということを研究会を立ち上げて頑張っておられます。

 おもしろいのは、その緒方さん、橋本知事ご存知だと思いますが、かつて司法権の独立を守ったといわれる大津事件で大審院長をして名を馳せました児島惟謙の生家が緒方家で、そこから児島家に養子に行かれたという、その本家の方なんですが、これも高校生の皆様、知っていただきたいのは、児島惟謙は宇和島の出身で、津田巡査がロシア皇太子を切りつけて、当時の規定では死刑にはできないけれども、明治政府はロシアとの関係を考えて、死刑にするように圧力を加えた。

 言うなれば、国家元首に対する罪と同じように扱えと言われた時にそれをはね返して、死刑の宣告をしなかったという有名な方が愛媛県出身でいらっしゃるということを覚えておいていただければと思います。

 話を元へ戻しますが、西南の歴史・文化研究ということで、あの地域が一体的な文化・歴史を育んできたということがございます。

 と同時に、現下の問題は、橋本知事の方からお話があると思いますが、四万十川という清流を高知県だけではなくて、愛媛県側も努力しなきゃいけないということで、数年前に、高知県が四万十川の清流条例を各市町村で作られたのを、モデルでいただいて愛媛県側も四万十川の源流としての立場で、清流条例を見習って作らせていただいて、協力をしようという体制までは進んできておりますが、最近いろいろと高知県からのお申し出やお考えがあるようでございますので、ちょっとご披露いただきたいと思います。
 
(橋本高知県知事)
 はい。皆さんも四万十川という名前はお聞きになったことがあると思いますが、梼原とか東津野とかそういう津野山という地域を源流にして、一度、窪川というところに行って海の方に出て、もう一度山の方、愛媛県側をずっと回って、旧中村市、今は四万十市になりましたけれども、そこで太平洋に注ぐという、全長が196キロの川です。四万十川はよくダムのない川と言われます。

 実際にはダムにあたるようなものはあるんですけれども、法律的には15メートル以上の高さにならないとダムと呼びませんので、そういう意味で全国では珍しいダムのない川です。

 というのは、日本の川っていうのは、ヨーロッパの川に比べて非常に傾斜の度合いの強い、急流の川が日本の川の特徴ですので、ダムなどで一度せき止めないと洪水になる危険があるということから、日本国中のあちこちにダムが作られました。

 ところが、この四万十川は珍しく流れの緩い川ですので、そういう治水のためだけのダムがない、そういう川としてずっと残ってきました。

 皆さん方で、4月19日に放送されたトリビアの泉というフジテレビ系の番組をご覧になった方があるでしょうか。実はこの番組で、全国名水百選にある名水の中に、大腸菌がいっぱい含まれている水があるんだということで、四万十川もその一つとして紹介をされました。

 僕はその番組そのものは見なかったので、そのトリビアで何へぇ?をこの名水100選の水が汚れているという話がもらったかのかは分かりません。

 けれども、そもそもですね、名水の中に大腸菌がいるという調査地点そのものが、さっき言いました196キロの川の一番下流の河口から9キロのところで、住宅地の真ん中で取ってますので、そういう最終地点の水だけを問題にしていくということも一つ不公正なことだと思いますけれども、そのこと以上に僕はみんなに考えてほしいことがあるんです。

 全国に清流、きれいな川というのは人里離れた山の中であれば美しい渓流はいっぱいあります。ところが、四万十というのはさっき言いましたように、一度海の側に、つまり人がいっぱい住んでいるところまで下りてきて、また山の方に回ってもう一度海の側に下りてくる、というような長い道のりを辿ってきて、その中に、魚を獲る川の漁師さんもいれば、農業もあれば、つまりそういう産業だとか、高知県だけでも10の市町村が関わっていますので、そうした市町村の人々の暮らしがある。

 つまり産業とか人の暮らしと密接に結びつきながら、そういうものと折り合いをつけてきれいな姿と水を保ってきたというところに四万十川の価値があると思っています。

 ですから、ただ単に水がきれいだというようなことではなくて、こういう人の暮らしと一緒になった川として、日本の各地にあったものがもう四万十川ぐらいしか残っていない。それを残していこうというのが、先ほどご紹介のあった四万十川条例というふうな取組みです。

 この取組みには愛媛県の関係する自治体にも入っていただいて、一緒にやっていますが、今、具体的なことで一つ問題になっていますのは、四万十川で旧西土佐村の江川崎というところに流れ込んでいる広見川という愛媛から入ってくる支流があります。

 この広見川の周辺に水田がいっぱいあるんですけれども、田んぼの代かきをする時に、代かきって分かる人と分からない人がいるかもしれませんが、代かきをする時にずうっと愛媛から水を流しっ放しにして田んぼの土をかき混ぜている。そのためにかき混ぜた泥が細かい粒子になってどんどん川に流れ込んで、川の汚れが増加するという現象があります。

 高知県ではどうしているかって言いますと、高知県のお百姓さんは代かきの時にいったん水を止めて代かきをし、そして沈殿をさせて沈殿池を作ってから水を流すというようなことをやっていますが、多分、愛媛の方がいろんな意味で水が豊富だとか様々な理由があったんだろうと思います。

 こういうことをつまり条例だとか科学的な何か検査でできるというようなそういう分野でのお互いの協力というだけではなくて、日々の暮らしの中での今申し上げたような協力ということができると、もっと生活・暮らしと密着をした川の保全ということにつながっていくんじゃないかなと。そういうことがまた地域の魅力になっていくのではないかなということを感じています。

 今、国土交通省が全国の美しい街道というのを募集をして、72ほど手が挙がって、その中にこの南宇和から四万十の街道というのも手を挙げて採用をされています。

 こういうことを本当にもっともっと実のあるものにしていくためにも、そうした生活レベルでのさらに協力というものが。これが高校生のレベルですと、旧大正町にあります四万十高校と北宇和高校とが一緒にいろんな水質の調査などをする。そして、水質改善のための提案をしようということを今やっていますけれども、こういういろんな高校生だとかお百姓さんだとか、様々な立場の人達が一緒にこの川を考えて守っていくということになれば、そのことが地域全体の大きな魅力になっていくんじゃないかとそんなふうに考えております。

(加戸愛媛県知事)
 ありがとうございました。やや愛媛県側にとっては耳の痛い、代かきのお話でございました。どういう形で沈殿池を作ればいいのか、いろいろな技術的な問題はあるのかもしれませんけど、基本的な考え方自体は、橋本知事のおっしゃった方向での愛媛県としての協力できる体制をこれから真剣に取組みたいと思っております。

 このことは高校生の皆様方にも理解していただきたいのですが、常に世の中にあることは自分が何かをしている結果が、よそにどれだけの迷惑をかけているのかということを感じない場合が結構あるんです。

 例えば、今のお話も代かきの結果による濁水が流れているということは、多分上流の広見川流域の人達はご存じなかった。あるいは意識しなかっただろうと思います。

 余談になりますけれども、皆さん方の力で環境問題でできることはいくらでもあるんです。一つは、絶対にごみを捨てないこと。それからグループ活動として、一つ提案をさせていただきたいのは、高知県でもなさっていますが、愛媛県では愛リバー制度というのがございます。

 それは愛媛県が管理している河川のうち、地域の住民団体で5百メートル程度の距離を私たちが責任を持ってきれいにしますと。

 言うなれば、一種の河川里親制度と呼んでおりますけれども、本来ならば愛媛県が税金を出して、人を雇って河川をきれいにする。雑草を抜く。汚れた物が落ちていれば拾うとかということをしなきゃいけないんですけれども、だんだん財政状況も厳しくなりましたので、ボランティアで手を挙げてくださいというこの制度を何年か前にスタートさせました。

 これは川だけじゃなくて、道路や海岸もそうなんですけど、今、愛媛県内では200ほどの団体、延べ人員1万5千人余りの県民が参加していただいております。その中には高等学校のグループもあります。

 どうか松山東校の皆さんもこの話を聞いて、私達石手川のここからここまでの区間は年に何回かきれいにしますという名乗りを上げてもらうとありがたいかなと思っております。

 世の中をきれいにしようと思えば、やれることはいくらでもあるんだという一つの例として申し上げさせていただきました。この話を聞いておられる担任の先生方から、皆様方への呼びかけがいつかかかるかも知れませんけど、その時には気持ちよく参加してもらえればありがたいなと思っております。

 PRを兼ねましたが、西南の問題としては、もう一つ高速道路の問題があります。これは高松から愛媛県の場合には西予市まで高速道路がきています。

 高知県は高松から川之江を経由して高速道路が延びてきていますけれども、今、お話がありました四万十市、宿毛市、愛南町、宇和島市は高速道路が通じていない地域。

 ここの高速道路を連結することが四国西南地域の未来の発展にとっての不可欠の要素だと高知県知事も愛媛県知事も考えておりますし、実際には、国の力、国土交通省の力がなければ、県では膨大な経費がかかる事業でもありますけれども、国への働きかけそしてまた今年も愛媛と高知がスクラムを組んで取組んでいきたいと思います。

(橋本高知県知事)
 そうですね。四国4県が力を合わせて、高速道路を、また高規格の道路で四国を大きな8の字に結んでいこうということを進めています。ただ香川県はほとんどそうした高規格の道路の整備が終わっています。

 それでも一緒にやりましょうとは言ってくれてますが、本当にこれからやっていかないといけないのは、愛媛県と高知県と徳島県の一部も残っているということになりますけども、愛媛県と高知県がそういう問題では大きな課題を抱えてますので、一緒に力を合わせて進めていきたいと思います。

 で、中にはですね、松山なりこの周辺なり都市部に住んでる方からみると、もういい加減田舎に道を作る必要はないだろうというふうに思う方がこの中にもいらっしゃるかも知れません。けれども決してそうではないというふうに思うんです。

 一つはですね、高知には特に大きな課題ですけれども、南海地震という大きな地震がやがて何十年かのうちにこの四国を襲うということは確実なことです。

 その時に逃げる道としても、またいろんな救援の災害の時の応援を求める道としても、従来の国道レベルの道だけだとすぐずたずたになってしまう。

 高速道路ぐらいの高い規格で作った道ですと、中越地震という新潟の地震の時にも一時は中断しましたけれども、もう1日経たずに翌日には開通という形ですぐ救援などに使えることになりました。

 こうした防災に備えるという意味でも必要ですし、それから四国の西南地域、南宇和から四万十の界隈にもっと人が来る。またある意味、これから私達の世代は団塊の世代と言いますが、もうすぐ60歳になってどんどん定年を迎える。

 全国から7百万人の団塊の世代が定年を迎えるということを言われてますが、そういう人達が少し長期に旅行をしようとか、実際に移り住むことはなくとも1年のうち半分は地方で暮らそうというような人を受け入れる地域としては、この四国の西南、愛媛の南宇和側と高知の幡多というのは一番全国でも適した土地だと思っています。

 そういう方々を招き入れる。それによって新しい地域の基盤を作っていく時にも、こうした基幹になる道路というのは絶対に必要なものだというふうに思っておりますので、詳しい制度の問題は別にして、道路を作るための財源をこれからどうしますかというようなことが国の議論としても話題になっていますので、そういう点でも是非、愛媛県と力を合わせて、また頑張っていきたいと思います。
 

【大規模災害が発生した場合の連携】
(加戸愛媛県知事)
 はい。高速道路をテーマとして申し上げさせていただきましたが、橋本知事が今触れられましたようにこういう高速道路がかかっているかどうかということで、一番大きな影響を受けるのは災害対策であります。

 例えば、近い将来必ず発生するだろうと言われています南海地震がもし起こった場合には、道路は寸断されて救援の車も入れなくなる。そういった場合、しっかりした高速道路がそこにあるということは、その地域のあるいは生命にも関わることかと思っております。

 その関連で、実は災害がもし起きた場合に、今まではそれぞれの各県が独立して対応するシステムにはなっておりますけれども、4県協力ということで、四国の場合、どこで災害が起きても4県が共同してそれに対応しようという協定も結ばせていただいておりますし、それに基づいて活動が行われる場合の先ほど申し上げた高速道路は大きな輸送手段になるという点もございます。

 具体的には、災害対応の問題は事務レベルでまた十分詰めさせていただきまして、何かどの地域で何があるという形にはどれだけの協力体制が組まれるのか、私の方が4県知事会議で提案しておりますのは、例えば愛媛県で土木部の職員、あるいは保健所の職員、あるいは病院のドクターその他県内である人達が高知県での災害に派遣する時には、派遣された高知県知事の指揮下に入っていただくと。

 これは愛媛県の職員であっても高知県知事の指揮下に入ってもらう。そんな取り決めをさせていただいておりますけれども、具体的な災害等が現実に発生してみないと、本当に協力体制がうまくいくかどうかっていうのは、かなりの事前の訓練等も必要になるのかな。そんな意味で4県連携の共同災害対応というようなことが、準備をしておくことが必要かとも考えております。

(橋本高知県知事)
 このことはですね。一番最初に加戸知事の方からご提案があったことで、例えば災害が起きた時に、緊急に食料が他から応援が来ない時に、その来ない間何日間か地域の方々が食べていくための食料を保管しています。備蓄をしています。

 こういうものをですね、高知で起きたら高知県の知事が頼めば、すぐ愛媛県の倉庫にあるものを持って来て使っていけるというふうにしたらどうかということを加戸さんがご提案になったのが最初で、そういうようないろんな意味で4県がいざという時に融通を持って取組んでいく姿勢、取組みというのはこれからも非常に重要だと思っています。

 ただその四国4県の中にも実はいろんなご意見があって、緊急の事態っていうのは何も南海地震だけじゃないでしょうと。大雨による被害。集中豪雨による被害というものもあります。

 それから今、国民保護法というふうなことが言われていますが、何か外国で起きているような大きなテロ事件のようなものが起きたらどうするかとか、更には鳥インフルエンザっていうのを皆さんも聞いたことがあると思いますが、そういうような新しい形のインフルエンザ、悪い病気が急に流行したというようなことが四国のどこかの地域で起きた時にどうするか。

 そういうことへの対応も広い意味での危機管理で必要ではないかというようなご意見もあります。確かにその時その時に応援の体制というのは必要になると思います。

 けれども計画の段階であんまりあれもこれもっていって計画を作っていきますと、役所の中のいろんな部署があって、その全てが関わってくる。そして、その全ての分野で何人の人というふうな細かい計画を作っていくと、もう計画作りだけで膨大な時間がかかりますし、結局はいざという時に動かないものになってしまうんじゃないかなということを思います。

 ですから、そういう大きな計画を立てましょうと言ってる方にけちを付けるという意味では全くないんですけれでも、まずやっぱり一番身近で、しかもできることから一つ作ってみてですね、今加戸知事からお話がありましたように、大きな震災などが起きた時には家の点検だとかそういうことで、土木の関係の技術の職員っていうのは必ず必要になります。

 それからけが人またはその後の病気ということもありますから、保健師さん看護師さんお医者さんというふうな資格を持った、技術を持った人も必ず必要になります。

 そういう人を、相手の実際にそういう災害のあった県に多く送っていく。また送っていただいて、そして高知が中心であれば高知の方で受け入れて、高知の県知事の指揮下で動いていくというふうな仕組みを、地震なら地震ということでまず作ってみて、それができて、図上、紙の上でいろんなシュミレーションの訓練をすれば、他のことでも必ず役立つというふうに思いますので、まずできるというか、一番現実性のある課題に対しての対応策というものを考えて、それを発展させるという方向を是非考えていきたいなというふうに思います。
 

【四国アイランドリーグの盛り上げ】
(加戸愛媛県知事)
 はい。四国4県あるいは高知・愛媛両県でできる事は随分いろんな事があります。

 四国4県の最近の話題としては、昨年、四国アイランドリーグというのが石毛さんのイニシアティブでスタートいたしまして、ご承知と思いますが、昨年は高知県の高知ファイティングドッグスがぶっちぎりで優勝しまして、愛媛マンダリンパイレーツは極めて恥ずかしい成績でしたが、今年に入って、愛媛マンダリンパイレーツは健闘しておりまして、高知ファイティングドッグスとは1ゲームの差です。

 去年は手も足も出なかったのが、やっと高知と愛媛が対等に戦えるようになってきましたし、野球王国の愛媛としては、もちろん高知も野球王国ですけれども、ライバル心をいい意味で燃やして、大きな野球ムードの盛り上がりが四国4県の精神的連帯につながればいいなと思っております。

 この高知ファイティングドッグスが昨年優勝したことに関する、橋本知事の自慢話、ご感想と今後の力の入れ方を愛媛県も参考にさせていただきたいと思います。

(橋本高知県知事)
 はい。四国アイランドリーグのお話が出ました。ファイティングドッグスが優勝できたのは、私のせいではないので、それはファイティングドッグスの藤城監督に秘訣を聞かないと分からないんですけれども、僕はこの四国アイランドリーグというのはとてもおもしろい、また、素晴らしい試みだというふうに思っています。

 なぜこの四国アイランドリーグというのを、石毛さんを中心とした野球界の方々が立ち上げようと思ったかと言うと、野球とサッカーとの間には大きな違いがあります。

 何かと言いますと、野球は日本プロ野球連盟というものがあって、パリーグ・セリーグそれぞれ6つのチームが、お互い企業がオーナーになって競い合うという形をとっていますけれども、サッカーの場合には、それぞれの地域が、全国都道府県、今この愛媛FCもありますし、四国だと徳島ヴォルティスというチームもあります。

 こういうような各地域のチームが、地域の代表として、うちのチームだ、おらがチームだというそういう地域同士の戦いとして盛り上げを図るというのがこのJリーグのやり方で、それがプロ野球とは違った大きな裾野になり、今の人気を支える、頂点にある、間もなくワールドカップも始まりますけれども、そうしたチームへの応援につながってきているということを思います。

 それをもう一度野球でも作っていこう。それを四国から立ち上げていこうというのが、この四国アイランドリーグの考え方で、つまりは、今、日本プロ野球連盟でやっている野球の仕組みとは違って、地域とのつながりを持ちながら、みんなの応援でおらが町、おらが県の選手を育てていこうということから始まったものです。

 ですから、ちょっとこれまでの野球とは関わりは違うんですけれども、それだけ各地域でいろんなことが取組めるのではないのかなというふうに思います。

 高知県の中でも、「一俵入魂百勝の会」というような名前でお米や野菜なんかをみんなで応援をしていこうということをやっている人達もいますし、それから、「ファイティング娘」などの応援団を作って各地域に出かけて応援をするというふうなこともやっています。

 ただ経営としてはなかなか厳しい状況ですので、高知県では6月からファンクラブの募集をして、ファンクラブを作って年間を通じて、例えば3千円を出せば試合を見られるとか、いろんな支えていく基礎票を作ろうという取組みをやっていきます。

 野球ということでは四国アイランドリーグですけれども、サッカーでは先ほど言いました愛媛FCやヴォルティスもあります。また、香川ではバスケットのリーグの試合も始まります。それから、高知で言えばフットサルの西日本の大会が開かれました。

 というふうにこの四国の中でもいろんなスポーツの芽が出ています。それを単なるイベントではなくて、地域に根ざした、地域とつながりのあるスポーツとして育てていく。その代表例が四国アイランドリーグですので、そういう目で是非皆さん方もこの四国アイランドリーグの取組みというものを見ていってもらったらいいと思いますし、興味があってできることがあれば応援をしてもらえたら嬉しいなというふうに思います。

(加戸愛媛県知事)
 はい。サッカーも野球もそうなんですけど、こういったスポーツというのはなかなか経営としては非常に成り立ちにくいんです。

 今まで愛媛県の人はサッカーにしても野球にしても、テレビで観戦をするくらいで、実際に自分の目で見るということは、高等学校野球大会、選手権大会とかそういったことしかなかったのじゃないかと思います。

 プロとして成り立つためには、生活をそれに依存しますから、私達にとってできることは、特に皆さん方ができることは、試合を見に行ってあげるということなんです。

 今日おいでいただいた東高生は1年生だそうですから、3年になると受験勉強その他で時間がとりにくくなるかもしれませんけれども、今の時期に愛媛FCでも愛媛マンダリンパイレーツでも、特に高知ファイティングドッグスとの試合は、坊っちゃんスタジアムへ是非見に行くということで、少しでも盛り上げていただくと、こういった何とかこれから持ちこたえようかというプロスポーツっていうのが定着し、成長し、発展し、いずれはふるさとが誇りにできるような全国一流のチームに、長い将来を見ればなっていく。

 その素地づくりを自分達もしたんだという思いを持って、誇りにできるんじゃないかと思いますので、東校の皆さん方にもそういう面でのささやかなご協力をお願いできればと思っております。

(橋本高知県知事)
 ちょっと話はそれるんですけれども、その地域のアイデンティティで思い出したんですが、愛媛県の自動車のナンバープレートというのは愛媛だけですね。なぜこんな話をしたかと言いますと、ドイツは市ごとにナンバープレートがあるわけです。

 で、どこにどういう意識の違いがあるかというと、さっきのサッカーと同じでですね、ドイツの場合には、ほとんど町ごとにサッカーのチームがあって、それがブンデスリーグという形でずっと競技を何段階もやっていく形になってるんですね。

 それが地域の誇りで、みんなが応援してふるさと意識を作っていくということにつながっているわけです。実は、このナンバープレートを日本でもっとたくさん作ろうよということを言い出したのはサッカーと関わりのあった人で、ドイツのある銀行で駐在をしていた時にそういうドイツの状況を見て、そのナンバープレートだけでも地域のアイデンティティにつながっていくんじゃないかと。

 日本のように地方に行けば、1県に一つではなくて、もう少し大きな人口があれば、例えば、宇和島であれば宇和島というふうな形を、高知であれば幡多なら幡多というようなナンバーを作ることによって、地域の人たちのアイデンティティというかふるさと意識につながっていくんではないかということを提案してですね、今そういうことができるようになっております。

 岡山で言えば倉敷というナンバーができるようになっています。たかがサッカーといっても、そういうふうに行政のこととも関わっていけるような連想やアイデアも出てきますので、是非ふるさとのアイデンティティとか、ふるさとらしさを作っていくにはどうするかというようなことを、スポーツでもいいし、いろんなことを通じて、この坊っちゃん劇場もそうなんだけども、考えてもらったらいいなというふうに、今のお話を聞いてちょっと思い出しました。
 

【松山・上海便を活用した国際交流の促進】
(加戸愛媛県知事)
 ありがとうございました。これからはサッカーのスタジアム、坊っちゃんスタジアムは別として、坊っちゃん劇場の駐車場に、高知県のナンバーが何台停まっているか報告を時々求めてみようかなと思います。

 高校生と意見交換に入ります前に、一点だけ私からお願い申し上げたいのは、一昨年、松山・上海便という中国路線がスタートしまして、一昨年は順調だったんですが、昨年は反日デモの関係等もありまして搭乗率がガクッと落ち込んで、路線を維持できるかどうかというシビアな状況になっておりますので、高知からもご協力いただきたいなと思っております。

 東高の生徒さんも中国へ修学旅行に行かれる方もいらっしゃるそうですのでありがたく思いますが、高知県から中国へ修学旅行に行っていただけるかどうかということが一つと、行っていただく場合、通常高知県は関西空港を利用されるでしょうから、おそらく料金的には松山空港経由に比べると、既定料金では2万3千円くらい高くなるはずですから、コストダウンになると思います。

 時間としても乗り継ぎ等を含めれば、そう変わらないのかなと。そういった点で、松山・上海便利用のお願いを申し上げさせていただきました。

(橋本高知県知事)
 高校生の修学旅行は、ほとんど中国向けはないんですけれども、一般の方の利用ということで言いますと、今松山空港で上海便を利用する場合、県外から来て車を停める場合には、駐車場の料金のほうを少し援助するというような取組みをしていただいています。

 この援助を受けた車のナンバープレートを見ますと、90%以上だと思うんですが、高知の車でございますので、個人で中国に行かれる方は相当数この上海便を利用していただいていると思いますので、そういう方々にとってこの上海便がもし50%の搭乗率を切ることによって厳しい状況が続いて、なくなってしまうと大変大きなマイナスになりますので、そういう意味でも高知県として頑張りたいと思います。

 高校生の中国への修学旅行ということですと、高知県の場合、昔の悲しい列車事故の経験がありますので、そういうところが、一部学校関係者の間で気持ちとして引きずっている面もあろうと思いますけれども、すでに十数年の年月が経っておりますし、中国側も新しい時代を迎えていますので、是非、中国への旅行というのも考えていきたいと思っております。

 つい先日、高知県と青島との間、上海のずっと北側の山東省というところにある都市ですけども、観光協定を結びました。青島・上海はもちろん国内便も出ておりますので、そういうふうな形で点と点だけではなくて、点と点を結んでいって三角形、四角形のいろんな地域のつながりというのも上海便を使ってできるのではないかというふうに思いますので、是非前向きに考えさせていただきたいと思います。

(加戸愛媛県知事)
 ありがとうございました。このほかいろいろ高知・愛媛両県間で協力できること、あるいは協力していただきたいというようなこと、たくさんございますが、せっかくの貴重な時間でありますので、残りの時間を、今日ミュージカル劇からずっと引き続いてお座りいただいております東校の生徒の皆様方からテーマ、問題の提起、あるいは質問等を受けてこの交流会議を続けたいと思います。どなたからでも結構です。是非、東高生らしい意欲を持って、手を挙げて発言ください。
 

【松山東高校生徒との意見交換】
(加戸愛媛県知事)
 はい。どうぞ。

(松山東高校生徒)
 最近、ニートなど僕達若者の問題をよく耳にするんですけど、今、僕達が心掛けて取組むべきことについて、何か教えていただけないでしょうか。

(加戸愛媛県知事)
 二人が発言しますが、まず私の方から。ニートというのは、多分意味をご存知でしょうけども、「Not in Employment, Education or Training」要するに仕事に就かない。教育を受けない。訓練も受けない。基本的にはニートの問題っていうのは若者一人一人の気持ちの持ち方の問題だと思います。

 人生の中で自分はどうやって生きていくのかという自活力を持たなきゃいけない。気持ちの問題が一つありますね。もう一つはそれを許しているのは何かと言うと、すねをかじられてもかじられっ放しにしている親の問題だと思います。

 言うなれば、「いいよ。いいよ。まあ、何とかなるだろう。ご飯は食べさせてやるよ」と言う親がいる限り、この問題は解決しないと私は思っています。

 ですから、親が厳しくちゃんと一人で生きていけといえるようなしつけをしてもらっているかどうかということと、本人が目標意識を持って自分の夢が達成するとは限りませんが、可能ならばこの夢、それが叶わなければこの夢とか、こんなことをやりたいとかという思い・気持ちがあるがはずですから、自分の思い・気持ちを大切にするようにすれば、この問題は自ずから解決するだろうと私は思っています。

(橋本高知県知事)
 たまたまですね、最近、高知市内の中学校に行って、授業参観をさせてもらいました。そして、先生と話をしてたら、最近の生徒はすごく昔に比べれば子供っぽくなったということを言っておられました。

 いくつか実例がありますが、少し長くなりますのでそれは省きますが、親の世代、皆さん方のお父さんお母さんをどうのこうのと言うわけじゃないのですが、一般論として、親の世代そのものが子供っぽさを引きずったまま親になっているので、子供達たちが、例えば、「学校で先生がこんなことを言っている」と何か先生の悪口を言った時に、僕達が中学高校生の頃はそんなことを言うと親が「何、甘えたこと言ってるんだ」と言って、ほとんど何も聞かずに怒鳴られたり、叱られたりしたものですけれども、そうじゃなくて「うん、そうだね。それは学校が悪いね」というふうにして、これまた話も十分に話を聞かないうちに同意をしていってしまう。

 それで、子供達が「それでいいんだね」というような思いを持ってしまうという悩みを先生が言っておられました。ちょっとニートそのものと結びつかないかもしれませんけれども、そういう親御さん、また子供達、皆さん方自身も少し昔の世代に比べると子供っぽさを持ってきたということにも大きな関わりがあるんじゃないかなということを一つ思います。

 ニートという言葉の中には、今、加戸知事がご説明になったように、「Employment」仕事、雇用されていないということもありますが、私は仕事の場があるとか仕事に就いているかいないかということとは関わりないんじゃないかなというふうにも思います。

 ニートというのはその仕事だとか教育ということよりも、今日の坊っちゃん劇場で言えば、ある意味文化のない人達ではないのかなと思うんです。というのは、仕事がなくてもある程度文化というものを持って暮らしている人は世の中にいっぱいいます。

 文化というと抽象的ですけれども、自分自身が何かに関心を持つ。やりたいと思うことを持つ。それがあるかないかだと思います。そうした何かに対しての関心だとかやりたいなというふうに思う気持ち。それがなければどれだけ仕事の場があっても、教育訓練の場があっても、自分は育っていきません。

 ですから、皆さん方、是非何でもいいから関心を持つ対象を見つけていく。そのためにいろんな人の話を聞く。また、いろんな先生や友達の話はもちろんだけれども、いろんな人たちとのネットワークを作っていく。そのことによって、何かに関心を持っていくということが一番大切なことではないかなというふうに思います。

(松山東高校生徒)
 今、学力低下って言われていると思うんですが、僕達は学力低下ってささやかれている中で、どうやっていけばいいですか。教えてください。

(加戸愛媛県知事)
 はい。学力低下と言われているのは二つあるんですね。一つは国際的な比較調査で特定の教科、数学と理科だったと思いますが、欧米先進諸国、あるいは他の国よりも少し成績が、昔は上の方だったのが下がってきているという点が一つ。

 国内の問題として、どことどこを比較するかというのはあるんですけれども、一般的なサンプリング調査でそういうことが言われています。

 そのことで文部科学省が全国的な学力調査というのをやるようになっていますけれども、私は正直言うと、学力というのは、サンプリング調査程度ではっきり分かるもんじゃないだろうと思っております。

 ただムードとして言われている以上、全体的な傾向はそうなのかな。ということは、学校で自分の身に付けるべきものが十分付いていない。その相対的な比較が学力低下と言われていますけれども、私個人はそんなには心配しておりません。

 言われるから本当にそうなのかなということなんで。大切なのは、言うなれば、自分が学校において学ぶべきことを、自分である程度習得したと思えるかどうかの意識の問題だろうと思いますから、全体のレベルが上がったか下がったかで心配するのは、むしろ学校側、教える側が、自分達の今までの教え方だったら習得してもらえないのかなという点を考えるんで、生徒の皆さん方は、自分の納得がいけばよろしいんじゃないかと正直思います。

 こんなことを言ったら古い人間と言われますけれど、私達の小中高の学生時代、生徒時代は自分の学力がどうかなんて考えたこともなくて、自分のやりたいものは何なのか、生徒として人間社会、グループ社会の中で生きることに生きがいを感じていましたから、学力が上か下かという意識はあまりしなかったような気がするけれども、関心がそちらの方にちょっと今、集まりすぎているのかなと私は思います。

(橋本高知県知事)
 学力ということがテストを受けて、そこで紙に書き出すアウトプットの力ということで言えばですね、昔とは多分違いが出てきてるんじゃないかと思います。

 というのは、僕らが受験をした時代、まだ共通一次もない時代で、国立大学もそれぞれの一次試験というのをなさっていた時代です。その時にはですね、全部で7科目は最低やらないといけなかったということになります。英・数・国に理科系・社会系をそれぞれ2科目ずつ取る。

 理科の系統であれば物理、科学、生物のうち2科目を取る。社会で言えば日本史、世界史、地理のうちから2科目を取るというふうに、試験科目が非常に多かった。

 だから、途中で数学を捨てるとか、途中で国語を捨てるとか、物理を捨てるとかいうことをできずに、嫌でも何でも大学受験まではそういう勉強を必死にやってきたということが、ペーパーテストという意味では、学力は高かったのではないかと。

 それと国際比較でやっている試験とは違うのかも知れませんけれども、そんなことを感じます。ですから、今のように試験科目が非常に少なくなってきて、また小論文だとか面接だとかいうものを重んじたテストがいくつかの入試の選択肢の中で出てくるという時代では、ある意味、仕方ないのかなということは思います。

 そういう中で、学力低下ということが言われて、自分達はどうすればいいんだろうかというご質問でした。それはですね、僕は自分自身が何をしたいかということに関わると思います。

 さっきのニートのご質問に対しても言いましたけれども、何をしたいか、何をやりたいか、何に関心があるかということから自分自身が身に付けなければいけない知識なり、ある意味、学力というものは、当然要求されるものが決まってくるだろうと思いますので、そういう関心、やりたいというものができた時に、それに必要なものだけやっぱり身に付けないと、その仕事には就けないということに当然なります。

 お医者さんとか看護師さんというふうな資格の必要なものはもちろんそうですし、要は自分達が学力低下と世の中で言われる中でどうすればいいか、それは一般的に、今、加戸さんが言われましたように学力低下というのはそんなに気にする必要はないと思います。

 ご自分自身としては、何をやりたいのか、何に関心があるのかということを、無理やりそんな高校1年の段階で決める必要はないですけれども、大学何年かになるまでに、そういうものを決めていって、その中で必要だと思うことを学校で教わろうが教わるまいが、自分自身で勉強していくということではないかと思います。

(加戸愛媛県知事)
 先ほど、学力低下ということは心配しなくていいと申し上げました。一つだけ申し上げたいのは、国語力の問題です。これは人間として言葉で生きる以上、コミュニケーション、情報の交換、あるいは意思疎通というのは言葉ですから。日本人は日本語です。

 だから、言葉っていうのは正確に身に付けておく必要がある。そういう意味では、たくさん本を読んでほしい。活字文化に接してほしい。漫画が悪いとは言いませんけれども、視覚的に入るものと活字で入るものとは違います。

 ですから、日本語の能力というのは全ての人が身に付けてほしい。このことがこの社会の中でうまく成り立つ大きな一つの要因でもあるし、それからその日本語の能力を、国語力を身に付けておくことが、いろんな多様な文化にも接するチャンスにもなります。

 また、国際的にも外国の方と交流する時に、日本語の知識、基礎的な知識がないと、外国の方に馬鹿にされます。そういう意味で国語力というか、確実に本を読むという習慣は是非身に付けていってほしいと思います。

(松山東高校生徒)
 僕達は四国に住んでいるんで、愛媛がどんなとこだとか、高知がどんなとこだとか知ってると思うんですが、東京や首都圏などに行くと、僕達の四国っていうのはやっぱりマイナーで、あんまり知名度がないんです。

 例えば、高知県だと、高知空港を高知龍馬空港といって、高知県に龍馬ありということをアピールして、こう、地方をアピールしてると思うんです。そういうことについて、両知事の意見を聞きたいんですけど。

(加戸愛媛県知事)
 はい。これは私が知事になって、いろんな愛媛県出身の関東にいらっしゃる方、近畿にいらっしゃる方と話していつも指摘されるのは、愛媛県というのは非常におとなしい。それから情報発信力がない。PR力がない。逆に言うと、控え目であって例えばお遍路文化のように、来たお遍路さんには親切にしてあげるけれども、自分達の宣伝は下手だという意味で言われたと思います。

 そのことが東京の人には、今、四国で知ってる県の名前を挙げれば高知県が一番有名なんです。あと愛媛、香川、徳島っていうのは知名度が高知よりガタッと落ちます。

 これは高知が宣伝上手という意味もあるのかもしれませんが、むしろ坂本龍馬をはじめ明治維新で多くの志士を生んだというような気候、風土から由来する過去の歴史もありますけれども。

 やはり比較的に言うと、愛媛県はPR不足、宣伝不足、もう少しお国自慢をした方がいいということで、人間なかなか生まれ変わらないとそうならないのかな。

 高知に遅れをとっていることは事実であります。その点で、宣伝上手の橋本知事から一つご示唆をいただければと思います。

(橋本高知県知事)
 高知県はですね、坂本龍馬をはじめ高知県から出て行った逸材の名前にある意味すがっているのであって、決して宣伝上手だとは思いません。

 高知が宣伝上手だったらもっともっと強い県になっているだろうなと。非常に商い、商売の下手な県で、宣伝も下手だというふうに思っています。

 今、話がありましたように関東首都圏に行けば、非常に愛媛も高知も四国という地域はマイナーな、あまり知られていないところです。これは笑い話を兼ねてですけれども、高知県はどこですかと話をすると大分の辺りを探していた人がいるというのが当たり前にあると思います。

 ただそれを逆手にとって考えてみると、今、首都圏から四国に観光で旅行に来る人というのは、全国を100にすれば、ほんとの数パーセント、5を切る数パーセントという数字です。

 ですから、そういうパーセントがちょっと伸びるだけでも、ものすごく大勢の方に来てもらえる。それだけのポテンシャルを持っているということになりますので、是非、高知・愛媛連携、そして四国が連携をしてそういうものを売っていければなということを思います。

 で、売っていくものというのは、坂本龍馬とか既に有名な人、また坊っちゃんのような有名な題材というものを使っていくという短期的な視点というか、そういうものももちろん必要ですが、長期的にやはり高知に愛媛に四国に目を向けさせていくというような、取組みも私は必要だと思っています。

 で、この交流会議から一つ出てきているものに、森林環境税という高知県が平成15年に始めた税金があります。これは、森が大変荒れているから、それをまちの方も愛媛であれば松山市の人も関心を持ってもらう。高知県で言えば高知市の人も関心を持って一緒に森づくりをしていこう。

 そのことで地球温暖化の原因になる炭酸ガスを吸収する、閉じ込めるというような森林の機能だとか。水を蓄えて洪水を防ぎ、皆さん方まちの方にも水を提供するというふうな森林の機能。

 こういうものをよみがえらせようということで、森林環境税を始めましたが、全国で最初に高知がやるならばすぐ後をついて行きますと言ってくださったのが加戸さんで、今この森林環境税は全国の16の県で取り入れられています。

 そして、来年度神奈川と和歌山県で導入をされ、さらに19県が導入を検討していますので、まもなく37の都道府県でこの森林環境税というものが導入される見込みです。そして、「山の日」という11月11日の取組みも、高知だけで始めたものを翌年から四国4県の「山の日」ということで取組みを始めました。

 非常に地味な話のように聞こえますが、こういうものが37の都道府県に広がり、そして47全部の都道府県でこの森林環境税、環境というものを考える税というものが導入をされれば、必ず全国的なそれが動きになっていくだろうと。

 その時、その発祥の地は四国なんだということに目がいって、より四国という土地がマイナーな土地からもっともっと全国的にメジャーというか、みんなが関心を持ってくださる地域になっていくのではないかなと。

 そういう取組みを、短期的な坊っちゃんとか坂本龍馬ということに取組みながら、なお長期的な視点で取組んでいくことが私達の仕事ではないかなというふうに思って、そういうことをこれからも加戸知事とも連携をしながら、是非一つでも二つでもそういう取組みを多く増やしていきたいというふうに思っています。
 

【閉会】
(藤岡愛媛県企画情報部長)
 それでは、時間も参りましたのでこれを持ちまして、交流会議を終了いたします。橋本知事をはじめ高知県の方々、交流会議を聴講いただきました松山東高校の生徒さん、地元東温市関係者の皆様、本当にありがとうございました。
 


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