知事の定例記者会見(平成19年9月議会)

公開日 2007年12月08日

更新日 2014年03月16日

知事の定例記者会見(平成19年9月議会)

平成19年9月13日9時00分から(県庁二階 第二応接室)

(項目)

 ・議案の説明
 ・今後の財政見直し
 ・闘犬センターに係る調停
 ・女子大の議案
 ・県1漁協
 ・社会科学系の学部
 ・政治と金
 ・森づくりの取り組み
 ・県民参加の状況への認識
 ・知事と議会との関係



議案の説明
(知事)
 県議会の9月定例会を9月19日に招集をすることにいたしました。提出をいたします議案は、一般会計補正予算など予算議案が4件、条例その他議案が16件、報告議案が9件、合わせて29件でございます。

 このうち補正予算は、高知女子大学の永国寺キャンパスにあります既存の学部を池キャンパスに再編統合するのに必要な造成などにかかる経費。

 また県1の漁協に向けまして、合併された漁協の経営を支援をするために財務内容の改善に資する利子補給、ならびに合併をされた漁協の情報ネットワークのシステムを開発するための経費。

 さらに、宿毛湾港に企業誘致を進めますために、立地をしてくださる企業が用地を取得する際の助成など、合わせまして58億8,000万円余りを計上することにしています。

 また、このほかに流通団地および工業団地の造成事業特別会計の補正予算といたしまして、南国市と香南市で工業団地の整備を行うのに必要な1億7,000万円余りを計上することにしています。

 条例議案といたしましては、育児休業を取っておりました職員が職場に復帰するときの給与の調整に関しまして、国家公務員に準じた改定を行いますための条例の改正案。

 また、介護サービス情報の公表制度に関しまして、この調査事務手数料などの額を決定するための条例の改正案など9件の条例案、その他議案が7件ございます。

 このほかに報告議案といたしまして、平成18年度の電気事業会計の決算の案件など9件を上げることにしております。
 私からは以上でございます。

(田村:NHK記者)
 各社、お願いします。

今後の財政見直し
(浜田:高知新聞記者)
 今回、女子大の議案を出し直すにあたって、整備費を圧縮したりする努力もされていると思うのですが。その背景にある今後の財政の見通しですが、6月のときからは見直したということで。

 この中には特定目的基金の取り崩しとか、今までたぶん高知県ではそんなにやっていなかったかと思うんですけれども、そういうのとか、あと、遊休財産の処分20億円とか、いろいろあげていて、ここでは、財源不足が解消できるという見通しも示した上で、議会にもご理解願いたいということなんですけれども。

 知事としての今後の財政見通しの認識を示していただきたいと。

 というのは、なぜかというと、6月に出た見通しで、2年後に高知県が新しい財政再建法制下で健全化団体になるんじゃないかということが、ちまたでよく言われていまして。

 今回の知事選とかをめぐっても、高知県はちょっと危ないので、候補者が二の足を踏んでいるんじゃないかということもあるんで。県民に向けても、県はどういう状態なのかということを、知事からちょっとお聞かせいただきたいんですけれども。

(知事)
 財政に関するやや一般論的な意味も含めてお聞きを願いたいと思いますが、財政規律というのは、まず向こう10年間大丈夫ですというふうな言い方をすれば、すぐその規律が緩んでしまって、県民の皆さんのニーズ、またさまざまな組織、団体のニーズというのは数限りなくあるわけですので、これをやろう、あれをやろうということで、やっぱり膨らんでいかざるを得ない。

 そうなったら、それにはとても耐えられる状況ではありませんよと。過去10年、15年の財政状況とはそこらへんは大きく違いますよということで、庁内にも、また県民の皆さんにも厳しさを強調したお話をしております。

 しかし、本当に再建法制に乗っかってくる、すぐにもそういう危機があって、しかも、どういうやりくりをしてもそれから逃れられそうもないというような危機的な状況にあるかといえば、そこは財政の運営を任されている県庁の仕事として断固責任を持って乗り切っていく自信がある、ということを今回の収支見通しでお示しをしたつもりでございます。

 それから、県では企業の株などを持っております。こういうものは、本当に高知県に予想もしないような大きな危機が起きたとき、地震だとかいろんなことがありますけれども、そういう一大事態が起きたときのために、そういうものを取っておいて、なおかつ、今、持っております遊休財産(の処分)なり、さまざまコストの面を縮減し、できるだけの収入を上げていくという手法によって、十分これからの財政運営というものをしていけるという自信を持って示したものでございます。

 ただ、その中でも財源不足額などが、(平成)26年に向けまして、これから4、5年が正念場であると。

 ですから、ここのところを先ほど申し上げましたように、財政規律というものをきちんと県庁の職員も意識をし、またそのことを県民の皆さんにもご説明をして、ある程度我慢をしていただきながら乗り切っていけば、もう目標年次の最終年次(の平成26年)のころには、財源不足が4億、5億という、ほぼ収支均衡の予算で財政運営をしていける、また県政運営をしていけるということになりますので。

 その点は県民の皆さんとしては、ご心配なくいていただきたいということを自信を持って申し上げたいと思います。

(浜田:高知新聞記者)
 その財政規律をきちんと守っていけば、厳しいながらも何とかなると。

 だけど、意中の人として十河さんを挙げたということは、いきなり外から飛び込んできたら、やっぱりこの財政状況下ではなかなか難しいんじゃないかなという思いもあって、十河部長を意中の人に挙げたという側面もあるのでしょうか。

(知事)
 そういう側面もございます。外からとか、いろいろなご支援を頂きながら新しい知事さんが誕生したときに、「こういう事業も、ああいう事業も」といって、そういう思いを持ってさまざまなことに踏み出されると、それは、財政規律という意味からも、今の財政の体力ということからも、厳しくなるのではないかと。

 十河さんという名前が出ましたけれども、少なくとも新しく知事になる方は、こういう厳しい財政環境の中でどういうふうに県民の皆さんに説明をしていくかということの知識と能力を持っておられないといけませんし。

 また、「知事が替わったんだから、こういうことをしよう」「これまでの知事の姿勢をこう変えて、こういうことをやろう」というようないろんな働き掛けというか動きに対して毅然〔きぜん〕とした対応が取れるという方であることが、私は必要だと。

 そういうことがないと、先ほど申し上げたこれから4、5年という大変厳しい時期に、また財政規律が緩んで、あと取り返しのつかないような事態を、ボディブローを、高知県の財政に残すという危険も、それは十分にあるというふうに思います。

闘犬センターに係る調停
(竹内:高知新聞記者)
 闘犬センターの訴訟での和解の件なんですけども。

 内部でどのような検討がなされて、知事は最終的に決断するにあたって、どのような思いからこういう決断に至ったのかと。当初は争う姿勢を見せておったわけなんですけれども。

 裁判所からの提案ということも1つのきっかけになったんでしょうが、こうすることが望ましいというふうに決断されたことについては。

(知事)
 私が知事を辞めることを決断したからうんぬんということではございませんが、もう16年知事を務めてまいりまして、ある程度過去の負の遺産に近いものを清算していく必要性があるということは日ごろから感じておりました。

 負ということではくくれませんけれども、国にかかる訴訟ですとか、民間の方との訴訟ですとか、さまざまなものがございます。

 その中には県の意思では判断できない住民訴訟等も数多くございますけれども、裁判所の勧告または裁判所からのお話によって、県として主体性をもって解決に踏み切れるものもございます。

 今回の場合も、そうした意味で、相手方企業からも同じ意思を頂きましたので、ここは和解という形で収めることによって問題を後送りしないと。先にこういう問題を残さないと。それが自分が16年務めてきた中で、起きたことの処理の責任ではないかというふうに思いました。

(竹内:高知新聞記者)
 具体的には、和解条件とかはこれから煮詰める?

(中澤総務部長)
 専決しています。裁判所の調停を双方が合意したということです。

(竹内:高知新聞記者)
 さっきの国との関係というお話は、統計課のことを指しているんだと思うんですけれども。これもどうですか、任期中にしまいがつきますか。

(知事)
 それは分かりません。
 一般論として、国に関するものも、民間に関するものもございますので、そういうものをなるべく後に引きずらずに解決をつけておくというのも、自分の立場の責任ではないかと。

 何も筋を曲げてすべてを終わらすという趣旨ではございませんけれども、裁判所からのいろんな動き等があれば、そういうことに応じて1つずつの案件を処理をしておくということも、これから新しい県政が始まるにあたって、そういう遺産を残さずに済むのではないかなというふうに判断をしております。

(竹内:高知新聞記者)
 裁判所から具体的なご提案があるような段階ではないんですね。

(知事)
 ではないと思います。

女子大の議案
(田村:NHK記者)
 6月議会で削られた女子大ですが、中身を見直しての提案ということですけれども。

 金額としては、エレベーターの部分とかで削っているとは思うんですけれど、(この提案を)議会から認められる自信というか、もしくはどういうふうに説得していきたいというふうにお考えですか。

(知事)
 認められる自信というよりは、お認めをいただかなければいけないという思いでご説明をしていきたいというふうに思いますし、おととい、きのうと全会派を回らせていただいて、相当の時間も取って、意見交換、やりとりもしながらご意見を聞き、県としての考え方というのも申し述べました。

 ある程度ご理解というかお含み置きをいただいた面も、6月議会よりははるかに広がってきているというふうに思います。

 それから金額の面ですけれども、52億という金額で言うのであれば、もちろんいきなり52億という金額が現金として必要だとことではございません。

 県の事業すべてそうですけれども、一定の元手のもとに起債を打って借金をして、それを何年かの間にお返しをしながら、平準化をし、その分早めにそのサービスを県民の皆さんに提供するという仕組みでございますので、数億(円)しか削減されていないということは、財政収支のシミュレーションの形としてはそれだけが意味を持つわけではなくて、平準化をきちっとしながら今後の借金返しをしていく。

 また、その借金返しに耐えられる財政体力であるということを、(平成)26年までの収支見通しという形でお示しをしたということでございます。

 その点もかなり突っ込んで、年度ごとの返済のシミュレーションを求められる場合もございましたし、そういうことにもきちんとお答えのできる試算をしておりますので、ひとつひとつそうしたご質問に対しては答えていきたいし、それによってご理解を深めていただけるものというふうに思っております。

(畑本:読売新聞記者)
 知事は、議案を説明するために直接会派を回るということがこれまでありましたか。

(知事)
 ええ、ありました。

 ただ、最近では特別職の選任議案だと思いますので、こういう予算議案で会派を回るということは、初めてかもしれません。16年やっていますので初めてとは言い切れませんが。

(畑本:読売新聞記者)
 昔の記事を見ると、(県議会の方からは)「根回しにも来ない」と言われていたから、珍しいのかなと思ったのですが。

(知事)
 根回しということと、県としても責任を持って進めなきゃいけない事業を、トップとして責任を持って説明をしていくということは、違うことだというふうに思いますので。

 「まあ、まあ、目をつぶって認めてや」という根回しというようなことをやっていく時代では、それは私だけではなく、部局長さんも含め、また、全都道府県を含め、そんな時代ではありません。が、今回は、6月に引き続いての補正予算の計上でございますし、前回ああいう僅差〔きんさ〕での判断でございましたので。

 その反面、やはり県として急がれる事業、また、財政的にも自信を持って進めることができる事業だというふうに判断をいたしましたから、今回自分自身も先頭に立ってご説明に回るということをいたしました。

県1漁協
(浜田:高知新聞記者記者)
 県1漁協なんですけど。母数が42だったと思うんですが、海面の19漁協の参加が決まったんですが。ちょっとその数に対して、知事としてはどういうご認識をお持ちかお聞かせいただけますか。

(知事)
 大変微妙な数であったと。ただ、正直を申し上げまして、室戸岬(東漁協)と土佐清水(市漁協)がお入りをいただけたと。まあ、すくも湾漁協はもともとすぐには無理だという情勢にございますので。

 今、申し上げた東西の2つの大きな漁協にお入りをいただけたということで、スタートに踏み切れたというふうに思います。

 ただ、(臨時総会の議決での賛成が)50%を超えながら3分の2に達しなかった6つの漁協がございますけれども、この中で佐賀の漁協がやはり高知県をひとつ代表する漁協であると。

 佐賀だけ取り上げるとまたほかの漁協の方には失礼かと思いますけれども、過半数を得ながらご理解がいただけなかった、田野から佐賀に至るまでの6つの漁協の3分の2以上のご賛成をいただくということを、今、取り組んでいるところでございます。

 42のうちの19をどう見るかといえば、非常に微妙だけれども、そういう東西の大きな漁協にご理解をいただいたので、スタートを切ることができたという数字だと受け止めています。

(浜田:高知新聞記者)
 今後その6つも含めて、参加する漁協が増えれば、利子補給の額というのも変わってくるんでしょうか。

(知事)
 数字的にどうですかね。

(井奥財政課課長補佐)
 変わりません。

 金利が大きく動いて2%を超え、利子補給をしなければいけないような状態になれば、また別途補給しますけれども、一応、各漁協が持っている短期の債務を長期に切り替えないといけない額については、総額8億円という目標額を設定しておりますので、そこの中に入れて(できます)。

(浜田:高知新聞記者)
 市町村合併もそうですけど、あらためて合併っていうのは難しいなと認識されたのかな、という気もするんですけれども。

(知事)
 市町村合併とはまた違った意味合い(があると思います)。それぞれ一票を投じられる組合員の方々の思いとか、さまざまでございますので。
 もともと非常に難しい選択を迫るということは思っておりました。

 ですから、そう簡単に進むものではないし、地域、地域の漁民の皆さんにとってはいわば苦渋の選択を強いることになるということは、これまでもそうですし、これからもそうだと思います。

 ただ、やはりまず経営基盤をきちんとしてこそ、産業関係の組織というのは成り立っていくというふうに思いますので。

 その面からは、今後避けて通れないことですし、そういう守りという意味だけではなくて、まだ経営の部分の支援、また情報のネットワーク構築というような、やっていかなきゃいけない基盤整備までしか踏み切れておりませんけれども、できるだけ早い段階でそれを販売力につなげていくというような、マイナスの面をならしていくだけではなくてプラスの面にこの漁協合併を生かして、それを地域の漁民の皆さんに見ていただくと。

 その成果をどれだけ早く出せるかということが、今後の大きな課題だというふうに思います。

社会科学系の学部
(中田:高知民報記者)
 県立大ですが。県立大改革のもう1本の柱の社会科学系の学部について、今のところなかなか見えてこないわけですけれども。
 短大卒の資格は無理だけれども、社会人の学びを保証していくんだという話を今までずっとされてきて。

 ですが、やっぱりちょっとそこに不安があって、この先、そのまま立ち消えになったりして、社会科学系の学部が。
 大丈夫かなという不安が僕もあるんですけれども。知事も替わっていくという中で、引き継がれていっていただけるのかなという。

(知事)
 そのことは責任を持って引き継いでいきたいと思います。

 また、手続き的にですけれども、これまでのタイムスケジュールより遅れて新しい社会科学系の学部を考えていくということになりますので、その結論が出るまでは、短大はこのまま運営をしながら、次の社会人教育の在り方を考えるということになります。

 今、大学側とも引き続き協議を進めておりますので、その中で、社会科学系の学部の在り方というものも内容として詰めてまいりますし。また、社会人教育の在り方ということもきちんと責任を持って詰めていきたいというふうに思います。

 これまで、現在、短大をご利用していらっしゃる方、またOBの方から頂いたいろんな声ということは県としては十分踏まえて、どういう形になるにしろ、そうしたニーズも含めた社会人の教育、これは働きながら学ぶ方もいますし、生涯学習という意味もありますけれども、さまざまなご要求に応じていけるようなプログラムというものを構えた大学教育を考えていきたい。

 そのことは責任をもって、知事を退任するにあたっては引き継いでいきたいというふうに思っております。

政治と金
(畑本:読売新聞記者)
 ちょっと一般的な話になるんです。安倍内閣の話にもなるんですが、政治と金の問題で、安倍内閣で次々と大臣が知らないところでいろんな動きがあったというようなことがありまして。

 それで質問なんですが、政治家個人がお金の出入りを細かいところまで把握しておかなければいけないという風潮が、今あるわけですが、そういった流れについては、どう思われますか。

(知事)
 それは、現実にはなかなか大変なことですし、自分自身も全くやれておりません。
 ただ、時代の流れとしてそういう方向を政治家も意識しなければいけないし、法手続き上もそういう形になっていくだろうというふうに思います。

 ただ、1円までうんぬんということが現実的かどうかということは、議論したほうがいいとは思います。

 けれども、事務所経費というふうな形で何に使っているか分からないようなものが相当の額に上っていくというようなやり方は、やっぱり改めなければいけない。

 国民の皆さんのそういう意識とのバランスの取れた、それでいてやっぱり政治活動というものを無用に制限しないような在り方というのは、十分議論ができると思いますので。そういう方向を目指すべきであるというふうに思います。自分自身の自戒も含めて、そう思います。

森づくりの取り組み
(畑本:読売新聞記者)
 また、ちょっと別の話なんですが。森づくりの話なんですけども。
 東京のほうの人から聞いたことがあるんですけれども、地元よりも高知の森についての取り組みが注目されているみたいで。

 実際、今のところ、森林環境税を進めていますし、それから、森づくりですよね。

 CO2吸収の話で先進的にやりましたし、今は住友大阪セメントの方で新たな検討も始めていらっしゃいますし、とある人から、将来的にどんなものを考えているんだろう、理想の森というのが何かあるのかなということを聞かれたことがありまして。

 知事の中で「高知をこんな森にしたいんだ」という目標みたいなものが世界中のどこかにあるんでしょうか。

(知事)
 高知の森をこうしたいというのは、目で見える美観的、景観的な意味なのか、それとも、財産価値、環境価値としての森なのかということになりますが。

 見た目の美観、景観でこうした森にしたいというのは個人的にはありますけれども、それはなかなか県政の政策として反映できるものではありません。

 一方で、経済価値、環境価値としての「森というものはこうありたい」ということはある程度、その利用価値としての森をどう位置付けていくかということにはイメージを持って取り組んでおります。

 それは、県産材としてはずっと長い間国産材が外材に押されて成り立たなかったという時代がありますが、今、大きく国際状況が変化をしておりますので。

 そういう中で、国産材、特に県産材が生きていくために、よみがえっていくために必要な仕事をしていくというのは、一方で、地道な事業としてございます。 が、それと併せて、京都議定書が発効し、そこから大きく企業の意識というものも、一歩も二歩も踏み込んだ動きがございますので。

 やっぱりこういう動きを、高知の森を環境的な価値として位置付けていく。それを県民の皆さんの地域力の向上につなげていくということを、さまざまなプログラムで進めていきたいと思います。

 森林環境税というものも、詳しい件数は忘れましたけれども、都道府県でいえば半数以上が導入または導入予定という形になってきておりますし。

 同じように、今、国内では排出権取引、排出量の取引というものが法的に整備がされていないわけですけれども、国際的なそういう取引が行われている現状の中で、今後、国内でもそういう動きが出てくるだろうと思います。

 そういうことを踏まえて、「京都議定書の考え方に基づいた森林を整備した場合のCO2吸収がどれぐらいですか」という吸収量の証書というものを、すでにお出しをしました。

 それから、住友大阪セメントにおいて、化石燃料を燃やす代わりに間伐材を使って、バイオマス燃料を入れる。そのことによって削減されるCO2削減量を、今度は証書としてお出しをするために、今、検討しております。

 こういうことを積み重ねることによって、森林環境税が全国に広がっていったように、こういうCO2吸収証書だとかCO2削減の証書だとかいうものが全国にもっと広がって、それが全国的な一つの基準として意味を持って、排出量取引、排出権取引などにつながっていくということを想定としては描いています。

 そういうときに、いろんな基準づくりというのがあるだろうと。それをやっぱり高知県からスタートさせていけば、ISOの基準をつくった人たちがヨーロッパの都合のいいような基準をつくっていった、という言い方は、ちょっと語弊があるかもしれませんけれども、やはり高知県また地方の森林にとって、ある意味経済的にも還元される、地域力にも還元されるような、意味のある基準づくりというのがあり得るだろうと思いますから。

 そういうリーダーシップを、高知で始め、そして関心を持ってくださるような地方の県と一緒になってやっていけば、大きなうねりがやがてつくれるし、そういう流れが現実に出てきていると思います。

(畑本:読売新聞記者)
 国内、国外問わず、先進的に似たような取り組みをしていて、こういう森づくりのようなシステムに近づけていきたいというビジョンや似たような事例は、今のところないですか。

(知事)
 それはないです。どこかに先進例があって、それをベンチマークをしてということよりも、そんなに居丈高に自慢する話じゃないですけれども、その意味では高知県が先鞭をつけていると思いますので。

 そこは高知県として、ある程度リーダーシップを取って、関心を持って来られる企業なり、また自治体なりとご相談をして輪を広げながら、ということを考えております。

 例の協働の森の事業も、今、19の企業・団体にご参加をいただいていますけれども、こういうネットワークというものも大切にして、それを中心にいろいろな動きを広げるとか。

 また、それぞれの企業は、高知県だけじゃなくてほかの県で植林活動をされるとか、いろんな活動をされておりますので、そういう県と結び付いて次のステップを考えるということは可能ではないかなというふうに思います。

(田村:NHK記者)
 今のお話の、排出権取引という流れの中で、逆に東京都とかは自前で山も持っていて、今、その自前の中でそういう仕組みをつくろうとしているわけですけれど。逆に高知県とかは、そういうのに乗り遅れると、もう都会だけでやられて、地方が置いていかれるという危機感もありますか。

(知事)
 それは特にありません。それは、治水の問題もそうですけれども、この地球環境の問題は、治水以上にその原因が起きているところとその効果を受けるところの距離は無限に広がっていきます。

 何も炭酸ガスは東京都の枠の中だけで動いているわけではございません。

 そういう意味では、それぞれの都道府県が、それぞれの持っている力とか状況に応じていろんな試みをされていくことは意味があると思いますけれども。地方が取り残されるうんぬんということは、全くないと思います。

県民参加の状況への認識
(浜田:高知新聞記者)
 ちょっと話は変わりますが。この定例会が知事としての最後の定例会になると思うんですけれども。

 橋本県政は県民参加ということを大きな目標に掲げて16年間歩んできたということです。

 この定例会に、象徴的だというかどうか分かりませんが、県民参加の促進条例が滑り込みで間に合うのかなという気もしていたんですけれども。ちょっとそれがまあ、提案がなかったということで、今年度中なのかなという気はしているんですが。

 ちょっと大きい話になりますが、16年間を振り返って、県民参加の到達点というのを知事としてどう認識していらっしゃるのか、お聞かせください。

(知事)
 到達点としての何か頂上の目標があったというわけではありません。
 ゼロからとは言いませんけれども、随分低いところから始めたという意識はありますから、その意味では、この県民参加ということは随分進んできたと思っています。

 具体的には、提案理由の中でも少し触れますけれども、今、お話があった森林環境税も、最初の提案は例の地方分権の一括法で、そういう税の手続がしやすくなったということで、県庁内で何かそういうことの対象になるものがあるかということを考えて、産業廃棄物だとかプレジャーボートだとかいろんなアイデアが出てくる中で、森林ということが絞り込まれ、それを今度は行政の範囲で議論し、さらに県民の皆さんに、ということを2年、3年かけながらやってきました。

 そういうことがあったからこそ、税という非常にナイーブで、まず普通であれば簡単には認められないものが、あまりそう大きな対立なく、と言うと、またしかられるかもしれませんけれども、その対立の意見をきちんとのみ込みながら、議会でも、また多くの県民の皆さん方にもご理解をいただけながらスタートできたというふうに思います。

 というように、ああいう手法を見て、県の職員の皆さんも「こういうものに関しては、こういう形で」という意識は非常に強まってきたと思います。
 ですから、その県民参加ということは、かなり土台としては進んできていると思います。

 ただ、何事もそうですけれども、ある一定進んでいきますと、例えば最近よく思うんですが、「パブリックコメントしています」っていっても、ただホームページで「パブリックコメントをお寄せください」なんとかっていうことをやって、それをやっているから県民参加なんだと。

 要は昔の「審議会で聞いていますから」という審議会エクスキューズと同じような、パブリックコメントエクスキューズになる危険性というのはいつも含んでいるので。

 そのことをリーダーである者も、県職員も、いつも意識しながらやっていく必要があると。ただ、山に例えるなら、間違いなく上に向かって進んできていると思います。

知事と議会との関係
(岡村:高知新聞記者)
 知事と議会の関係というのは、どの地方にとっても「どうあるべきか」っていうものを投げかけたと思うんです。

 今回、最後の定例会にあたって、ご自身で、議会と執行部の在り方として、あらためて総括的なものがあるのか。あるいは、自分なりの成果といいましょうか、そういうものがあるのか。所信表明に何かそういうことを読み込まれるのかということを、あればお伺いしたいんですけれど。

(知事)
 所信表明の前段では、その16年を振り返っての、今ご質問があったような県民参加の県政だとか、それからいろんな財政状況の変化だとかいうことについては触れたいと思っております。

 ここは、前例を見てということなんですが、中内さんがお辞めになるときの議会のお話の仕方を見ましたら、提案理由の前段にそういう16年を振り返って、そして、提出議案の説明の最後に、また一言言われております。

 という形で、前段の部分はちょっと自分で書いてみましたが、後段、最後の締めをどういう形でということを、ちょっと何か書かなきゃいけないなと思っております。

 で、今、ご指摘を受けたような議会での最後の場での話ですから、議会との関係で、「こうこう、こうだった」と。「だけど、大変お世話になって」というような締めも確かにあり得るな、ということを思いました。

 何でも人の知恵を盗んではいけませんけれども。それを主軸に書こうという思いはありませんでしたけれども、確かに県民の皆さんから見ても、知事と議会との関係というのは、良くも悪くもこの16年の変化であり、関心の的であったと思いますので、そういう中で「こういう変化がありましたね」ということを触れさせていただくのは意味があるかなと。

 例えば議員提出条例案は、ほとんどゼロの状態から、明らかに増えたということがあります。

 それから、私が知事になったときは、再質問される方は野党の方々ばかりでしたけれども、もう今は、再質問しなきゃいけないと思い込むのもどうかと思うぐらい、全会派の方々が必ず再質問をあらためて構えるぐらいで、それはとてもいいことだと思いますので。

 そういう大きな変化というのが出てきたと思いますから、そういうことを少しきちんと触れさせていただくということも検討したいと思います。
 

(終了)


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