公開日 2007年12月08日
更新日 2014年03月16日
知事の定例記者会見
平成16年4月1日(木曜日)高知県庁正庁ホール
みなさん、おはようございます。この度は、高知県庁への入庁、誠におめでとうございます。と、お祝いを言った後いきなりで恐縮ですけれども、今私たち公務員を取り巻く、また地方自治体を取り巻く状況は決して楽なものではありませんし、かつてないほどの逆風だという言い方ができると思います。
例えばということで、公務員の仕事のあり方と財政のことについて触れてみたいと思いますが、公務員の仕事のあり方に対していえば、今ほど納税者である県民の皆さん方が公務員に寄せる目が厳しい時代はないと思います。
僕が知事になりましてからの12年余りを振り返ってみても、公務員同士が税金を使ってお酒を飲んだり食事をしたりする官官接待を廃止ということに始まり、決して適切ではなかった様々な事務の改善などを繰り返してきました。
またそうした中で、それならば県庁の仕事そのものをガラス張りにしていこうという情報公開の決定にも努めてきましたし、それは県庁の中の仕事だけではなくて、県の職員に対してこういうことをしてほしい、こんなものを使ってほしい、そんな働きかけも全部公開をしていこうという流れに広がってきました。このようなことを昔に比べて仕事がしにくくなったなと捉えている人もいるんじゃないかと思います。
また財政ということでは、皆さん方もお聞きになった事があると思いますが、三位一体の改革というものが進められる中で、本来の改革のあり方とは無縁の国の財政運営のつけを地方に回していく、地方にしわ寄せをしていくというような流れが強くなってきています。
このため既に数年前から第一次、第二次の財政構造改革に取り組み、また人員の削減など、行政改革にも取り組んできた、更にはこうした流れを予測して去年の夏から各部局ごとに政策協議というものをして、思いきった仕事の見直しをしてきたこの高知県庁でさえ、年が明けて1月になってから急に地方交付税、またそれが足りないときに発行することが認められている地方債の枠を削減をするというような動きになったために、仕事をしていくための財源が不足をするという事態になりました。
それでも今年度、16年度の予算はなんとかしのぐことができましたけれども、この三位一体の改革は3年間の、まだ1年目が始まったばかりですのでこんな調子が続いていけば、17年度 来年度の予算を組むことさえ難しいそんな現状になってきています。
と、いきなり不安の種をいくつか投げてみましたけれども、このうち公務員の仕事のあり方ということに対していえば、私たちは県民、国民の皆さんが納めて下さった税金を使って様々な仕事をしています。
ですから、納税者の目が厳しくなるということは当然のことだと思いますし、また県の職員に対して、こんなことをしてほしい、こんなものを使ってほしいという働きかけも机の下でこっそりするのではなくて、県民の皆さんの目に公開の場でしていくということは当然の流れであると思います。ですから、そういう流れに対して何か仕事がしにくくなったなと思う人がいるとすれば、その方が正しいことだと思います。
また今申し上げたような流れの中で、″羮に懲りてなますを吹く″といったことわざにあたるような不合理なことがでてくるのであれば、まずは自らの襟を正したうえで、それをあまりやりすぎると、こういう不合理がでるということを県民の皆さんにきちんと説明をして、またやり方を変えていくという手続きが必要だと思います。
しかし、財政の問題の方は、今申し上げた仕事の仕方のように割り切って考えることができません。と言いますのも、量的な削減は先ほどもいいましたように、予算を組むのがぎりぎりな、つまり地域のサービスを維持し、地方自治体の経営を維持していくのがぎりぎりのところまできています。
ですから、こうしたサービスを維持するために必要な財源の保障、そのような地方からの主張は、きちんと国に、また国民、世論に訴えていかなければいけないと思っております。
しかしその一方で、量的な削減の問題をある意味では追い風ととらえて、質的な変換につなげていく、つまり仕事の仕方や仕組みを変えていくという発想も、今、地方の側に求められていると思います。
その一つは三位一体の改革に関わることですけれども、三位一体の改革の本来の目的は、これまで国が補助金という形で持っていた財源を地方に渡してしまう、そのことによって補助金ならば、国が地方に補助金を渡すかわりに、こんなことをしてはいけない、またやってくださいというような色んな規制をとっぱらって、地方が自主的な財源をもとに自由にいろいろな仕事をしていくというのがこの三位一体の一番の目的だったはずです。
今のこの改革の流れは本来の目的とあったものにはなってはいません。けれでも、そうした中でも補助金が地方の財源として、一般財源化されたというような事例はいくつかありますので、そういうものを生かして、地方が自由に仕事ができるようになれば、地域住民の方々のサービスが向上した、また柔軟になったという事例を出していく。
そういう知恵と力が、今、地方に求められていると思います。と同時に、これまでは公共的なサービスはすべて行政が担うというのが一つの常識でした。こうした常識を覆して官と民の役割分担を見直していくという考え方も必要だと思います。
具体的には、NPO、地域の方々、住民力というものを生かして公共的なサービスを担っていただき、地域の支え合いの仕組みをつくっていくことが必要ではないかと思います。そういう思いに加えて、今県庁がやっている仕事を少しでも地域の住民の方々とワークシェアをしていくというような考え方も含めて、今、高知県庁では県庁の仕事の30%~50%ぐらいをアウトソーシングしていくという取組を今年の春から始めています。
けれどもこれらを、県が財政的に困ったから地域の方々に下請けをしてもらうというように受け止められてもいけませんし、住民力といってもただお願いするだけで、その力が動き出すわけではありません。ですから、高知県では昨年の4月から7つのブロックに分けて地域の応援団長として、職員を派遣してきました。
けれども、この4月からは地域の応援団長の数を50人増やし、地域につながった職員が住民の方々と力を合わせて、支え合いと仕組みをつくっていくというようなお手伝いをしていこうと思っております。
このように量的な削減というものを意欲や意識の減退、萎縮につなげていくのではなくて、それを転換につなげていく、つまりこれまでのように財政や予算だけで仕事をするのではなくて、人の力と知恵で仕事をしていく県庁に変わっていく、そのことによって仕事のやりがいというものももっと強まっていくと思いますし、またそれが地域の力を強めていく原動力になると僕は信じています。
初日から堅い話をしてしまいましたけれども、高知県を取り巻く話題は決して重苦しい話ばかりではなくて、明るい話題もいっぱいあります。その最たるものは、高知競馬のハルウララの話題ではないかと思います。けれども、あのハルウララの話題も決していきなりでてきた話ではありません。
というのも、高知競馬はここ数年大変財政運営が厳しくて、もう廃止をしなければいけないんじゃないか、そんな存廃のぎりぎりのところまできていました。こうした中で馬主の方、また騎手や厩務員、調教師といった直接馬と関わりを持った仕事の方。さらには馬券を売って下さる従事員の方々。
こういう皆さん方がこれまでの経緯とか取り分というものを捨てて、とにかく今あがった収益の中でやりくりをしていこう、そんな一体感を持った取り組みを続けてこられました。つまり、負けても負けても負けないぞという一体感を持った取り組み。そうした高知競馬全体の取り組みがハルウララという形で魅了するんじゃないか、新しいヒロインを生み出したんではないかと思っています。
振り返って高知県、高知県庁をとりまく現状を考えれば先ほど申し上げたようなことも含めて厳しいことも一杯あります。しかし皆が足を引っ張りあったり、角突き合わせたりするんではなくて、一体感を持って取り組んでいけばハルウララのような形で全国に売っていける。
また地域の皆さん方に納得していただけるような、いい種は一杯あると思っています。是非皆さん方にはそうした思いを、この高知県庁に一体感を持って何か新しい仕事を創り出していくそんな若い人材として育っていただけたらと思います。と同時に今申し上げた競馬ということを例にすれば、今皆さん方にとってはスタートのゲートが開いたということになります。
皆さん方の中には、仕事をしてもしてもなかなかうまくいかないなといってハルウララのように100連敗してしまうと、県庁も動かないかもしれません。けれどもそうやって仕事してもしてもなかなかうまくいかない、だけどそんなことにめげずに頑張って、いい意味で打たれ強くなっていく。そのことによって周りの仲間たちを励ましていけるような、そういう力強い職員にもなってほしいと思います。
最後になりますけれども、皆さん方のご入庁をあらためて心からお慶び申し上げますとともに、皆さん方のこれからの県庁での人生が明るく楽しいものになっていくことを心から願って私のお祝いの言葉とします。おめでとうございます。頑張って下さい。ありがとうございました。