公開日 2007年12月08日
更新日 2014年03月16日
都市と地方の共感を深める「緑の雇用」推進県連合の共同アピール、共同政策提言
三位一体改革の実現に向けての緊急声明
− 分権改革に逆行する税源の移譲の先送りに断固反対する。 −
平成15年5月29日
地方分権研究会
宮城県知事 浅野 史郎
福岡県知事 麻生 渡
鳥取県知事 片山 善博
岐阜県知事 梶原 拓
和歌山県知事 木村 良樹
高知県知事 橋本大二郎
佐賀県知事 古川 康
岩手県知事 増田 寛也
神奈川県知事 松沢 成文
早稲田大学大学院教授 北川 正恭
(要旨)
国民の視点から見れば、三位一体の改革は単なる国と地方との財源再配分の問題ではなく、真の地方分権改革実現への第一歩として位置付けられるきわめて重要な問題である。また、小泉首相が指示した税源移譲の先行実施は、改革の先送りに対する大きな歯止めとなるとともに、地方の自立への責任感を高める契機ともなる。
しかし、地方分権改革推進会議小委員長試案が示した考え方は、小泉首相が指示した三位一体の改革を真っ向から否定するものである。その後の修正意見案についてもこの基本的な姿勢は何ら変わっていない。こうした対応は、徒に混乱と不信を招き、改革の形骸化にもつながるものと強い危機感を覚える。
わたしたちは、税源の移譲の先送りに断固反対するとともに、三位一体の改革を早期に実現することを政府に対し強く求める。
(1) 税源の国から地方への移譲、国庫補助負担金の廃止・縮減、地方交付税制度の見直しを内容とする三位一体の改革は、単なる国と地方との財源の再配分の問題ではない。
(2) 地方分権改革の目的は、住民と自治体が、国の関与と庇護から脱却し、地方のことは自ら決定し自らその責任を負う、自ら調達した財源で自ら立案した政策を実施するという、自立した地方自治を確立することである。
確かに、自己決定責任を負うことは決して生易しいことではない。国と地方を通じた巨額の債務の処理や歳出の抑制という課題に地方も真正面から取り組み、その痛みを覚悟しなければならない。
しかし、地方がその苦しさに打ち勝たなければ、モラルハザードを克服し、中央依存型地方行政から脱却し、ひいては、真の地方分権の確立を成し遂げることなど到底できるものではない。
税源移譲を柱にした三位一体の改革は、まさしく、こうした真の改革実現への第一歩として位置付けられるものであり、改革の礎となるものであることを認識しなければならない。
(3) さらに、国と地方の明確な役割分担による権限の移譲とそれを担保する税財源の移譲とは一体的に検討され実現されるべきものである。
また、国庫補助負担金と地方交付税は、本来、国民が直接自治体に支払うべき税金をいったん国に納め国が地方に配分する制度であり、税源の移譲と切り離して議論できるものではなく、三位一体の改革はそのいずれの一つを欠いても成し得ない。
(4) 4月の経済財政諮問会議で、「税源の移譲を突破口に」とした小泉首相の発言は一見乱暴に見えるが、これを先ず決定し実施に移せば、国庫補助負担金や地方交付税制度の改革の先送りを許さないためのきわめて大きな歯止めとなる。
また、厳しい財政状況の中での税源移譲の決定は、中央依存意識から脱却し自立しなければならないという地方の自覚と責任感を高めるだろう。そうした戦略のもとで考え、発言されたものとすればまさしく卓見である。
(5) しかるに、今回、地方分権改革推進会議小委員長試案が示した考え方は、国庫補助負担金、地方交付税の縮減に言及しつつ税源の移譲を更に先送りするものであり、地方の意向に対峙し、小泉首相が指示した三位一体の改革を真っ向から否定するものとなっている。
三位一体の改革の目的は、国の歳出抑制ではなく、地方が国の財政的統制から脱却し、財政的な自立を確立することである。 こうした議論の本質を見失うことは、地方分権改革の否定にほかならない。
(6) これらの対応が、地方の不信感を増幅し、地方分権への取り組みに混乱を来し、結果、何も変わらないという状況を招くことは火を見るよりも明らかである。
グローバリゼーションが進む二十一世紀、いま、国と地方の役割を純化し、双方の機能をともに強化した真の分権型国家の構築が望まれている。そのような中、首相の諮問機関においてこうした議論が一方的に検討されていることに対して大いなる危機感を覚える。
そこで、わたしたちはここに、税源移譲を先送りすることなく、三位一体の改革を早期に実現することを政府に対し強く求めるものである。