公開日 2008年04月06日
更新日 2014年03月31日
知事講話(県政運営にあたって)
平成20年4月3日(木曜日) 10時から10時35分まで(県庁正庁ホール)
皆さん、おはようございます。
本日は知事講話ということでございますけれども、平成20年度の県政運営を行うにあたりまして、今後の基本的な方針、基本的な姿勢ということについて私なりの考えを述べさせていただき、この20年度、この大切な1年間の県政運営にあたって、職員の皆様との方向感を合わせていく、そういう機会にさせていただきたいと考えております。
4月1日、新体制が発足いたしましてから今日で3日目でございます。まだまだ、皆様、職務に慣れられていない方々もいらっしゃることと思いますけれども、私は、この平成20年度という年は、極めて重要な年だと考えております。
尾﨑県政の実質初年度だから大切だとか、そういう小さなことを申し上げているわけではございません。高知県にとって極めて重要な年だと、私は考えておる次第であります。
今の県勢の現状でございますけれども、私が常々申し上げていることではございますが、人口減少、高齢化の進展ということに留まらず、社会的な人口の減少、その中でも、とりわけ、若い方々の、県外流出が止まらない状況となっております。
高校を卒業して県外に就職する方の割合が、去年の19年度4月1日に就職される方の割合は48%でございましたが、1月末の速報値で20年度は55%に至るという状況であります。
この絶対的な水準。2人に1人、そろそろ止まるかと思ったら、まだまだ加速をしているわけであります。若者たちが、県外にどんどん抜けていってしまっている。しかも、実際に統計をとってみれば明らかでございますけれども、高知県の強みであるところの1次産業、この1次産業の生産地ほど人が減り、若者が減っているという現状でございます。
さらに私は、地域の方々といろいろお話しをさせていただきますが、夜な夜な若者たちが「いかに、この地方都市から抜けていくかということを語り合っているというのが現状だ」というお話も伺ったことがあります。
若者たちがいなくなる。将来を担う若者たちが、この高知県からいなくなるということは、この高知県が、今、県勢が衰えていると言われていますけれども、その衰えが、次の世代も、次の次の世代にも至ってしまうということなのであって、いわば、衰えの再生産、再拡大、そういう悪循環の中に陥ってしまっているのが、本県の現状ではないかと考えております。
今、県勢が厳しいというだけではございません。先々にわたっても、このままでは厳しいことになってしまうのであります。でありますから、私は一言、まず冒頭に申し上げさせていただきたいのですが、県勢が低迷しておると言われる今の現状に慣れてしまっては、絶対にいけません。今の現状がいかに危機的かということについて、よくよく、改めて再認識をしていただいて、危機感を持って仕事をしていただきたいということを、まず冒頭に申し上げさせていただきたいと考えております。
この流れを、変えていかなければなりません。この流れが、今後4年間も、5年間も、6年間も続いたらどうなってしまうでしょうか。本当の意味で、高知県は衰えた、寂しい、高知県で住むことしかできない人しか住めないというような、仕方ないから高知にいるというような、そういう寂しい県になってしまうのではないかと、そういう危機感を抱いているわけであります。
今後の数年間を、漫然と過ごすわけにはいかない。反転攻勢をかけなければならない。そのためには、この20年度という年がなんとしても大切だと、私は考えておる次第でございます。
この1年間、しっかりと危機感を持って仕事をしていきたい。まず、冒頭にその点を申し上げさせていただきたいと考えております。
仕事をするということは、漫然と仕事をするということではないのは、皆様方、大体の方は私より年上の方でいらっしゃいますから、私が申すまでもないことだと思います。大切なことは、しっかりとした目標を持って、それに向けて、その目標を実現するための具体的な政策を練り上げていく。
そして、それを着実に実行し、実行している過程で不備があれば、それをまた改善をしていく。このような具体的、実践的な取り組みをしっかりと行っていくことであります。政策集団に進化し、政策遂行集団に進化していくことが、今、この高知県庁には強く求められていると、私は思っておる次第であります。
このような意味での仕事をしていくにあたり、職員の皆様方にいくつか、私自身が申し上げさせていただきたい点がございます。基本姿勢としての点でございます。
まず、第1点目でございますけれども、常々申し上げてきたことでございますが、仕事をするにあたっては、常に「県民のために」という姿勢を忘れず、「県民のために、今、何をなすべきか」ということを、自ら考えるという姿勢を忘れないでいただきたいと考えております。
上からの指示待ちである。指示がなければ何もしないということでは、今のこの危機的な現状は決して乗り切ることはできません。それぞれの部局、部局で、非常に深刻な課題を抱えておられることと思います。その課題を克服し、さらには、単に直面する課題だけではなくて、この衰えかけている、本当の厳しい状況にある県勢の現状を打開するためには、「何をすべきなのか」ということを、自ら積極的に考えていただきたいと、そのように思います。
知事からの指示待ちではいけません。部長からの指示待ちでもいけません。副部長からの指示待ちでもダメだし、課長からの指示待ちでもダメであります。職員一人ひとりが自ら考える、自ら行動するということを徹底していただきたい。
無作為の失政と、何もしなかったことによる失政ということがあってはいけない。これは一見、日々何も失敗がないように見えることであります。何もしないでいると、何も失敗しないように見えるかもしれませんが、何もしなければ、結果として、大きな失態を県民の皆様に対して晒してしまうことになってしまいますので、自ら考える、自ら行動するという姿勢を、ぜひとも徹底をしていただきたいし、また、ここにいらっしゃる皆様方の部下職員の皆様にも、周知していただければというふうに考えております。
改めて申すまでもないことでございますが、県の財政の状況というのは、極めて厳しい状況にあります。20年度の予算編成によって、当面の極めて危機的な状況はなんとか回避できたかとは思いますけれども、まだまだ、3年後以降につきましては、危機感を持って取り組んでいかなければならないという状況にあります。
県の財政の状況が、どのように厳しいかということ。財政収支の問題もあるかもしれませんが、私は、何よりも、ほとんどの経費が義務的な経費に留まってしまっていて、今後、新たな課題に取り組んでいくための裁量的、政策的な経費の部分というのが極めて少ないというのが、本県の財政の厳しさであろうかと思います。
多めに見積もっても、県の予算全体4,000億円少しのうち、政策的、弾力的に対応できる部分というのは、わずか200億円少ししかありません。変な言い方をしますが、大きなトンネル1本分の事業費相当のお金しかないのであります。
でありますから、いろいろな施策を打っていこうとしたときに、どうしても予算がない、お金がないということが出てくるでしょう。であるから、何もしないということになってしまってはいけません。
お金がなく、財政がなく、予算が少ないと、無いということであれば、「それであっても、何ができるのか」ということを考えていただきたい。知恵を出すということはできるはずであります。話し合って、皆様方の良い知恵を引き出すということはできるはずであります。このことを、まず、冒頭に申し上げさせていただきたいと思うわけであります。
この点、一つ個別具体的な話をさせていただきますが、20年度においては、産業を振興するために、地域別、産業別の振興計画を策定するということを、先の議会でも明確に申し上げさせていただきました。
私は、これは、改めて、県勢浮揚のために、この危機的な状況を打開するために何ができるかということを考える、良い機会であるとも考えているところでございます。この産業別、地域別の振興計画は、まず、産業ごとに何ができるか、何をしていくか。地域ごとに、それぞれの地域で何をするか、ということを考える計画となります。
この計画を考えるにあたって、まず、産業別の分野について言えば、「もう既に、産業別には自分たちは計画を作っているんだから、これでいいんだ」ということではいけません。
既存の計画に拘泥することなく、産業別、例えば、1次産業関係であれば、生産地から流通・加工、そして販売に至るまで、それぞれのプロセスで、改めて「もっとできないのか」「より具体的にできないか」「視野が狭すぎはしなかったか」ということを、根本から考え直していただきたいというふうに考えております。
もう1つ、地域別。おおむね、6ブロックから7ブロックごとの計画づくりということになろうかと思いますけれども、地域別の計画を作るにあたっては、ある地域においては、例えば、ある農業なら農業だけで今までは生きてきたということ、この分野だけで今後もやっていくということなのかもしれません。一定の選択と集中ということが必要であることは、言うまでもないことでございますけれども、ただ、改めて1次産品の素晴らしい素材を作っているところがあるのであれば、そのハネ物があります。ハネ物は、例えば、加工をする。例えば、「商工業の分野で何かできないか」ということにつながるわけですけれども、そして、そのような素晴らしい産品を作っている産地を観光地とか、もしくは、例えば、高知市の小学生の教育の場として使えないかとか、他の分野においても、他の産業分野においても、もっと活用できる点はないのかということを、改めて、この計画づくりを通じて考え直していただきたいと思うわけであります。
高知県の持つ潜在力というものを、産業別に、地域別に、改めて1点から、根本から洗い直していく、考え直していく。そういう良い機会となるのではないかと、私は考えておる次第でございます。
地域別、産業別、振興計画づくり。例えば、これは産業の関係なんだから、教育の分野にたずさわる方々はまったく関係ないかと言うと、そういうことはまったくございません。先ほど申し上げた例で言うように、1次産品の生産地を教育の場として活かすということは、これはまた、産地においては経済振興に資することでもあるわけであります。子どもたちがたくさんやって来るようになり、人が動くようになる。すると、お金が回るようになる。産業は振興していくわけであります。一見、何の関係もないと思われるところに、大きな今後の飛躍のカギが隠れているかもしれないと。そういうつもりで、この計画づくりにたずさわっていただきたいと、私は考えております。
ほんの一部の、計画作成担当の部だけがやるものではありません。これは、全庁が取り組むべき課題であります。ぜひとも、そのことを肝に銘じておいていただければ幸いであります。
「産業を振興したい」という県民の願いには、深刻なものがあります。私も地域、地域に回って、高齢者の女性の方から、これは冗談ではなくて、本当に涙を流しながら「高知県をなんとかしてよ」と握手をされることもあるわけであります。選挙の時だけではありません。いまだに言われます。
また、私宛のいろいろなお手紙やメールが来るにあたっても、「10日前に『高知県をどうするんだ?』というふうに訊いた。10日経っても、何も変わらないじゃないか」と、そういうご意見を伺うこともあります。これくらいの切迫感であります。県民の皆様の切迫感はこれほどのものであるということを念頭に置いて、改めて、この計画づくりに邁進をして、皆さん一生懸命知恵を練っていただきたいと、そのように考える次第であります。
2点目でございますけれども、政策づくりをしていくにあたっては、県民の皆様にとって、本当に実効性の上がるものとなるかどうか。「実効性」ということを、重視をしていただきたいと考えております。
いわゆる、行政の自己満足で終わるような施策展開、これを行っていくことは、ぜひとも、今後はやめていただきたいと考えております。
私は、予算査定の時に、いくつかの部局の方には申し上げさせていただきました。大海に目薬1滴をさしたことをもって、「目薬をさす」ということで、我々は施策を展開していますと、外部には言い訳ができるような、しかし、何ら効果をもたらさないような、このようなことはやめてもらいたいということを、何度か申し上げさせていただいたところでございます。
例えば、「○○振興策を執ります。全県下の○○振興を図るために、このような施策を執ります。ついては、全県下で2件モデルケースを作って、3年かけてそのモデルを育てていきます」、果たしてこれで、本当の意味において県全体の浮揚につながるような施策と言えるでありましょうか。そのような施策ばかりになってしまったら、結局、投じたお金すべてが無駄になってしまったということになりかねないわけであります。
確かに、そのような施策を執れば、「○○施策については、我々は何かをしています」と、議会で一応答弁はできるかもしれません。しかし、県民にとっては、何ら効果をもたらさないということになりかねないわけでございまして、一定の、地域ごとの選択と集中の必要性というものは認めますけれども、ただ、逆に言えば、行政の言い訳となるに過ぎないような施策についてはできるだけやめて、真に効果が上がる施策に、思いきって資源を、財政を投入していくということが、なんとしても重要だと、私は考えているわけでございます。
この実効性をもたらすという観点で、もう1つ、私が重要だと思っておりますのは、やはり、官民協働型ということと、市町村との連携ということの2つの姿勢でございます。
行政の行為というのは、結局、民間のいろいろな活動に働きかけをしていくわけであります。その民間の活動を一番熟知しておられる方々の意見を聞いて、その力を借りることができれば、その行政の施策というのは上手くいくんであろう。これはもう、間違いのないことであろうかと思います。
民間のいろいろな事情に一番精通しておられるのは、民間の方々であります。この民間の方々の知恵を活かす、そして、共に働くと。官民協働型の姿勢というのを、徹底していただきたいと思います。
そしてまた、行政の分野について言っても、市町村、より住民に近いところで行政を展開しておられるのは、市町村行政にたずさわっておられる方々ではないでしょうか。県が、直接県民の方々とふれあう機会も多いわけであります。そうであれば、また出先機関の皆さんも、また住民に近いところで仕事をしておられます。
このような、より住民に近いところで仕事をしておられる行政マンの仕事、話をよく聞いて連携をしていくということ。県が、「やりたい、これはぜひ実行したい」と思ったときに、その当該市町村が「そんなことでは上手くいかない」と言っているものは、やったって意味がないのであります。おそらく、上手くはいきません。
市町村も納得をして、「共にやっていきましょう」ということとなって、初めて、その行政は的確に遂行されていくのではないかと考える次第でございます。私はよく聞きますけれども、最近の市町村の方々はほとんど県をあてにしていない。直接、国なら国に働きかけていく。そういうような話も聞きます。私は、これは一部の声だと信じておりますけれども、そのような声を聞かないわけではございません。
市町村と、そもそもコミュニケーションさえも取れていないという事例があるのではないか、という危機感を持っておるわけであります。コミュニケーションも取らなければ、方向感合わせも、実効性の確認も、できるわけがないのでありまして、ぜひ、市町村と連携をしていくという姿勢を忘れないでいただきたい、徹底をしていただきたいと、そのように考えております。
3点目でございますけれども、政策づくりを行うにあたりましては、ぜひ、全国区の視点を持っていただきたいと考えております。
例えば産業についても、これは競争がつきものであります。高知県は、高知県だけで、今ここにあるわけではなくて、常に他県との、例えば産業について言えば、高知県の産業は、他県との競争にさらされているわけでございまして、ぜひとも、高知の中だけの視点に留まることなく、全国の中での高知県の位置づけというものを、常に意識をして行動をしていただきたい。また全国、他県ではどのようなことが行われているかということを意識して、行動をしていただきたい。政策づくりにあたっていただきたい、というふうに考えております。
抽象的なことから申し上げさせていただければ、高知県の人々が普通のことだと思っていることが、実は、他県から見れば素晴らしいことだということも、多々あろうかと思います。
他方で、高知県の方々が素晴らしいことだと思っていることが、他県から見れば極めて普通のことであることだって多々あろうかと、私は思っております。
高知において新しい産業を興したから、素晴らしいことをやろうとしてるんだから、これは全国に通用するかというと、これは大間違いであります。他県も同じことをやっているかもしれませんし、他県はもっと先を行っているかもしれないわけで、高知県の中で新しい産業を興した。高知県の中で、地場の産業を活かして新しいものを造った。だから、全国に売れるかどうかというのは、まったく保証はないわけでございます。
全国の地方、地方といったときにも、地方の実情はさまざまあります。確かに、高知県のように山が多くて、緑の多いような県もたくさんありますが、そのような県、例えば、首都圏と新幹線で1時間でつながっておったり、高速道路で1時間でつながっておったり、そういう県もたくさんあります。
例えば、同じような自然を活かしていくにしても、「高知県ならでは」ということを、ぜひとも考えていかなければならないのではないかと。「この高知県の自然を活かしているんだから、これならば、全国の人々が素晴らしいと言ってくれるだろう」と。自然を持っている県は他県にもたくさんあるわけであって、長野然り、群馬然り、栃木然り、福島然り、首都圏に極めて近い県ですよね。これらとの競争なんです。
ぜひとも、高知県の中だけでの視点に留まることなく、「他県ではどうであるか?」という視点を忘れないで、仕事をしていっていただければと、私は考えております。ぜひとも、この点を徹底していただきたいと思います。
幸いにして、いろいろな情報を、全国の情報を、インターネットも発達するなか、取りやすい状況になっておるかと思います。ぜひとも、全国に目を向ける。全国の、他県ではどういうことをやっているかということに目を向ける。そのような視野の広さを、元々、土佐人というのはそういう資質を持った、全国的にも優れた県民だと私は信じております。その資質をおおいに発揮していただきたいと、私は考えている次第でございます。
政策づくりに関して4点目、私が申し上げさせていただきたいことでございますけれども、先ほど3点目に申し上げたことと関係をいたしますが、「鎖国をしない」ということでございます。
国に対しても、他県に対しても、例えば、全国知事会に対しても、いろいろな地方公共団体の団体に対しても、ぜひ、積極的な外交を展開するという視点を持っていただきたいと、私は考えております。
私は、地方分権を徹底して推進すべきだと考えております。住民の方々に近いところで、行政というのはできるだけ行われていくべきだ、というのが私の考えであって、地方分権を徹底していく。その中で、高知県においても、ぜひ気概を持って、自主独立の気概でもって行政を展開していくということは、極めて大切だと私は思っております。
しかしながら、「独立をする」ということと、「鎖国をする」ということは、次元の違う、まったく違う話であります。根本的に違う話だと、私は思っております。
むしろ、歴史の例を見ても、世界史の例を見ても分かりますように、ベネチアの例を見ていただければ分かると思いますけれども、小国が尊厳を持って独立していくためには、強力な外交力が必要なのではないかと、私は思います。
小国が鎖国をすれば、江戸末期の日本のような状況になってしまうのではないか。蒸気船が4隻来ただけで大騒ぎになるような、そのようなことになってしまうのではないかと、私は思っております。
鎖国をするということがあってはならない。むしろ、積極的な外交を仕掛けていく。そのような高知県であっていただきたいと、私は思っております。その具体策の1つが、東京事務所の抜本強化でありました。
全国区の風を敏感に取り入れる。全国区で競争できる政策提言力をつけていく。そのためには、情報収集をしっかりする。情報発信を行う。必要な人的ネットワークは養う。そういうことが必要であると。そのための前線基地として、この新しい東京事務所というものを、積極的に活用していただければと考えているわけでございます。
常々申し上げておりますが、今、国は地方に目を転じつつあるというのが、私の認識でございます。しかしながら、国においては、なかなか地方の実状というものを掴みあぐねている。
地方というのは多様であります。多種多様であるだけに、およそ、地方一般をモデルとしたような施策を打とうとしても上手くいかないということに、国は気付き始めている。地方の実状、実状に合った政策を展開するためにはどうすればいいか、ということを悩み、考えているというのが実状だと、私は思っています。
逆に言えば、国において「地方の政策提言というのを受け入れよう」という姿勢が出て来ているのではないか。そういう意味では、今がチャンスであります。
そしてもう1つ、高知県の高齢化率。2005年段階は26%程度でございましたが、日本全体がこの水準に達するのは、約2015年頃であるというふうに推計をされています。今の高知県の少子高齢化の姿、この姿というのは、10年後の日本全体の姿となっていくわけでございます。
高知県において、福祉にしても、教育にしても、産業振興にしても、この少子高齢化の時代において通用するモデルを作っていくということ。そのために必要だと思われる政策を提言していくことは、これは、10年後の日本にも役に立つことなのであります。いずれ、日本全体が考えなければならない政策、それにつながっていくんだろうと考えています。
そういう意味において、高知県が今の実状から悩み苦しんだ上で提言した事項というのは、国にとってもありがたいことであるはずだと、私は思っているところでございます。実際に今までも、社会福祉の分野で、高知県発の提言がいくつか成果を挙げてきているというふうに、私も認識をしております。
そういう意味において、ぜひ、この2つの観点から、国から政策提言を求めてきている姿勢に変わりつつあるという1点。そしてもう1つ、我々の政策提言は、日本全体のためにも役に立つんだという、この2点目。この2点を念頭に置いて、臆することなく、国に積極的な政策提言をしていきたいと考えておるところでございまして、皆様方も、そういう視点を持っていただきたいと考えています。
少し具体的な話をさせていただきますが、今回は、各部の副部長の皆様方には、東京事務所を兼務をしていただいています。この意味するところは何かと言うと、各副部長さんは、庁議メンバーである東京事務所長、そして、東京事務所担当理事の部下であるということでございます。兼務していて、単に情報の交換を共有するためだけに兼務しているわけでは、決してございません。皆様方はラインとして、東京事務所長・東京事務所担当理事の部下なのであります。
東京事務所から新しい情報が取られてきた。これについて、今後どういうふうな対応をするか、ということが投げかけられてこようかと思います。それは、上司からの指示であります。それに対しては、確実な答えを返すようにしていただきたいと、私は考えております。
東京事務所から取ってきた情報、必ずしも耳に触りのいいことばかりではないと思います。さらには、当初は漠然として掴みあぐねるような情報も、多々回ってこようかと思います。しかし、だからといって、それを無視してしまっては絶対にいけない。
また、逆も然り。愛すべき上司なのでありますから、ぜひ、上司をこき使うという視点でもって、副部長さんは、上司に「こういうことをやれ」「ああいうことをやったらどうですか」という提言をしていただきたいというふうに考えております。
とにかく、東京事務所と、この本庁との間で、情報のキャッチボールが確実に行われるように。球を投げっぱなしにするということはない。球は投げたけど、そのあとどうなったかが全然分からないなどということの絶対にないように。ボールを投げました。そのボールは、キャッチボールですから確実に帰って来なければならない。帰って来ないなら、「なぜ帰って来ない?」「なぜ投げ返してこない?」ということを、お互いが、お互いの間で言い合っていただきたい。そのようなことを、しっかりと徹底していただきたいと考えております。
東京事務所においては、ぜひ、そのような意識を持っていただきたいと思いますし、また本庁においても、その意識が必要であります。本庁側において特にそれを担うのは、今回兼務となった副部長さんでいらっしゃいますから、その旨を徹底していただきたいと、私は思っております。
何度も申し上げますけれども、独立をするということと、鎖国をするということは、次元の違う、根本的に違うことでございます。ぜひ、この点を肝に銘じていただきたいと、私は考えております。
以上、政策づくりを行うにあたって、皆様方に、私から申し上げさせていただきたいことを、簡単ではございますけれども、ご説明いたしました。このような視点でもって、できる限り、県民の皆様にお役に立つ、実効的で、実践的な政策を創り上げていくことが大切でありますが、併せて、これを実践していく。そして、実践していく過程で、直すべきは率直に直していく。PDCAサイクルというものを、Plan(プラン)・Do(ドゥ)・Check(チェック)・Action(アクション)の、このサイクルを確実に機能させていくことが大切だと考えています。
政策の作りっぱなしということがよくあります。さらには、実行しっぱなしということがよくあります。皆様方、お仕事の中でもいろいろ経験されたことと思いますが、例えば、部下に指示をした政策、「やっておいてください」と言いました。「やっておいてください」と言うだけではいけません。ときには「やりましたか?」と訊いてみないといけません。「やりましたか?」と訊いてみたことで返ってきた答えによっては、場合によっては新たな指示も出さないといけないということを、皆様方も多々経験してこられたことと思います。
抽象論、精神論の徹底だけではダメなのであって、PDCAサイクルを徹底していくことが大切だと、私は考えております。
私は、「『対話と実行の県政』これが私の県政運営の基本である」ということを、申し上げさせていただいてまいりました。今まで申し上げさせていただいたことというのは、一言で言えば、この一語に集約できるのではないかと、私は思っております。
対話を通じて、本当の県民の皆様の実情を知り、県民の皆様からお知恵を賜り、官民協働型、市町村連携型、国ともしっかり積極的な外交を行うという形で政策を創り上げていく。そして、対話を通じて、そのような創り上げた政策というのを、県庁の職員それぞれに徹底するとともに、また、それを共に行う民間の人々に周知徹底をしていき、ご理解を賜る。そうすることで、速やかな実行というのがなされる。
実行したあとに、それが本当に上手くいっているかどうかを、また、これは政策現場との対話、さらには、住民の皆様との対話を通じて改めて確認をし、必要と考えられるものは、改めて見直していく。対話と実行を通じた県政運営、私自身は、それを心がけたいと考えているところではございますが、正直なところ、県勢のこの厳しさを考えたときに、非常に将来に希望を失いがちな現状であるのも、また然りであろうかと、私自身も悩むときもございます。
しかし、私は思っております。本県が直面する現在の極めて厳しい状況、まず、この厳しさに対する認識を持っていただかなければなりませんけれども、そのうえで申し上げますと、この本県が直面する極めて厳しい状況、大きな流れで言えば、少子高齢化の急速な進展に伴う、極めて厳しいこの現状、これは、いずれ日本全国が直面する課題であります。高知県は、いわば、日本全体の10年先を行っているということではないかと、私は思う次第であります。
希望がないかのように見えますが、私は、将来には希望があると考えております。高知県は、全国の10年先を行っているのです。この少子高齢化が進展している、この高知県において、いろいろな分野において上手くやることができれば、県民の皆様のお役に立つような政策を打ち出すことができれば、そして、高知県が強くなることができれば、高知県は、いずれ10年後の日本全体の先駆けとなる。10年後の日本全体に対して、競争力のある県となれるのではないかと、私は考えております。
今は非常に苦しいかもしれませんが、今の苦しさというのは、将来の栄え、繁栄、これを勝ち取るための試練だと考えて、今の苦しさに真正面からぶつかって、今の課題に真正面からぶつかって、県民の皆様のために働いてまいりたいと、そのように考える次第でございます。
私自身、若輩者ではございますけれども、県民の皆様のためを思う気持ちは、誰よりも負けない気持ちでございます。まだまだ若くて、知恵が足りないところもあろうかと思います。ぜひ、県庁の皆様方、優秀な皆様方、やる気のある皆様方、皆様方のご指導・ご鞭撻を賜って、この1年間の県政運営にあたってまいりたいと考えておる次第でございます。共に力を合わせて、県民のために頑張ってまいりたい、そのように考える次第でございます。ぜひとも、皆様方の奮起をお願いしたいと考えておるところでございます。
長々とご静聴、ありがとうございました。