知事講話「産業振興計画策定の意義とねらい」(産業振興計画担当者会)

公開日 2008年09月30日

更新日 2014年03月17日

知事講話「産業振興計画策定の意義とねらい」(産業振興計画担当者会)

平成20年9月26日(金曜日) 県庁正庁ホール

 お集まりの職員の皆さんには、この間、産業振興計画の策定をはじめ様々な業務について、ご尽力をいただいています。知事として、深く、感謝をしたいと思います。

また、「対話と実行」座談会は、既に県内19の市町村を回らせていただいていますが、職員の皆さんには地域地域で、存在感を示していただいており、本当に皆さんのおかげで大きく助かっている、という声を伺っています。地域に行政がしっかりと根付いて理解されている姿を見てうれしく思いますし、深く感謝しています。日々の業務でお忙しい中、産業振興計画の業務について、皆さんにご苦労をかけております。

1 なぜ今、産業振興計画を作るのか

それでは一点目に、なぜ今、一見迂遠に見える産業振興計画を進めているのかについて、お話をしたいと思います。

「産業の振興を図るのであれば、すぐさま具体的な取り組みに着手すれば良いのではないか」という意見もあろうかと思います。しかし、私は、余り時間をかけるわけにはいけないが、1年間位かけて、足元を見直して、トータルプランとなる計画を作っていくことがぜひとも必要である、と考えています。

それはなぜなのか。第1に、本県経済の厳しさというのは、われわれ高知県の中にいては分かりにくいですけれども、実際、その厳しさというものは、全国の中でも群を抜いております。この厳しい状況というのを、まず第1に認識しなければならないと思います。

一つのシンボルとなる例としては、高校生の県外就職率は52%で、全国ワースト1位であります。

一人当たり県民所得は、全国第46位、しかも、全国平均の約7割です。本県の県民一人ひとりの豊かさというものは、東京ではなく、全国平均の7割なのです。

製造品出荷額等は全国第46位、しかも第45位の島根県が1兆1,117億円、本県は5,498億円であり、第45位の島根県の半分しかない。そこまでの状況に来ています。

有効求人倍率は0.5、全国平均は0.89。これは東京の話で、地方はどこも同じだろう、というかもしれませんが、四国でも香川県は1を超えていますし、愛媛県、徳島県も0.8位で全国平均程度です。

大事なことは、これまで本県は、全国の経済傾向に連動してきましたが、この6年間は、全く連動できなかったということです。有効求人倍率を30年、 40年の長いスパンで見ていけば分かりますが、本県の絶対水準は低いですが、傾向は全国と同じでした。6年位前に、全国の有効求人倍率は0.5程度になりました。本県も0.5程度でした。しかし、この6年間、国は1まで回復を続けます。しかし、本県は全く上がっておらず、0.5のままです。日本全体の景気回復の波に乗ることができず、全く恩恵を受けることができなかった。

これはどうしてなのか。これは、本県の経済の状態が、一種の鎖国状態であったからです。何でもかんでも本県の経済水準が全国最下位、下から1位、2位だろう、このことに慣れてはいけません。いかに現状が厳しいか、これを認識することが出発点です。

他方で、本県は大きなポテンシャルを持っているのも確かです。『じゃらん』という雑誌の調査では、「地元ならではのおいしい食べ物が多かった」都道府県ランキングで、本県は昨年は全国第1位。今年も全国第2位で、第1位の香川県とほとんど差がなく、実質上の第1位です。カニだとかイカだとか素晴らしい食べ物がある北海道も含めて第1位というのは、素晴らしいことです。旨いものが1位ということは、すばらしい素材があって、それを料理する人がいて、人を楽しくさせる明るい文化があって、はじめて1位になれる。つまり総合力です。2年連続で第1位に近い順位が得られたことで、私は、これはポテンシャルとして、全国に誇っていいものだと思っています。

 しかし、経済指標は全国第46位などの順位になってしまう、その背景としては、第2に、経済構造の根本に関わる問題が横たわっていると思っています。

1次産業については、比較的強みがあることは、皆さんもご承知のとおりです。本県は、農業産出額は1ha当たり全国第5位、漁業生産額(内水面・養殖を除く)は全国第10位、林業は全国第20位です。経済状況は総合では第46位なのですが、1次産業については、こういう形で、比較的優位にあります。

しかしながら、地域におられる皆さんは実感しておられると思いますが、こうした強みを持つ産地ほど、少子・高齢化が急激な勢いで進んでいますし、また、若者の地域外への流出が、新規高卒者の県外への就職率が52%となるなど、止まらないものがあるのではないか。われわれの持つ強みの源泉ほど、足下から崩れているのが今の現状です。このままでは1次産業の強みを活かすといっても、いずれダメになります。

農業産出額は、1ha当たりの収量は全国第5位ですが、農業産出額全体では全国第32位まで落ち込んでいます。茨城県は第4位、千葉県は第3位です。今までは都会は工業、田舎は農業であったわけですが、今からの時代は違います。農業も都会です。首都圏近郊ほど、どんどん消費量が増えています。なぜか。これは若者がどんどん流入しているからです。そういう状況の中で、都会の消費はどんどん伸びています。消費性向が高まっている。

高知県のようなところはどうか。高齢化が進み、人口が減るだけではありません。高齢化が進みお金を使う人が減ってきているという状況にあります。こういう状況ですから、都会周辺では、農業さえも伸びているわけです。われわれが強みと思っていることも、いずれ10年後には、強みが強みでなくなってしまうかもしれない。本県に一体何が残るのか、ということです。

 第3に、今後の問題に触れたいと思います。経済構造に、何年にもわたり積み上がってきた歪みがあるのではないか、と私は危機感を持っています。

県際収支は、高知県内と県外との取引を貿易と捉え、外貨を稼ぐかどうかを考えるものです。1次産業は県際収支の中でも外貨を稼いできています。食品加工という分野については、1次産業の良さを他の産業に結び付ける格好の産業です。

しかし、本県ほど作った素材を県外に売るということに取り組んでこなかった県はない。それは、他の田舎の県も同じようにやってきていない、ということではありません。同じようなタイプの県に比べても、極端に何もしていない。

それは県際収支で分かります。食料品の県際収支は、徳島県、香川県、愛媛県は黒字ですが、本県は唯一赤字、その赤字額は1千億円です。徳島県は1千億円の黒字、本県は1千億円の赤字、つまり、徳島県と本県の間で2千億円もの差がついているわけです。徳島県にかなわなくなるのは当たり前だと思います。

もう一つ、同じような農業産出額の県と比べても、食料品の製造品出荷額等は、本県は極端に低い。実際、農業産出額を分母にして、分子に食料品の製造品出荷額等を取りますと、これも極端に低い第46位であります。いかに取り組んでこなかったか。

産業の就業構造を考えます時に、確かに1次産業に強みはございます。しかしながら、1次産業の就業者数というのは、当然のことながら第3次産業の就業者より少ないわけですから、1次産業を伸ばしていかなければなりませんが、1次産業の効果を他の2次産業3次産業につなげていく、他の産業にも効果が及んでいくような、その道筋、ルートを作っていかなければなりません。

しかし、例えば、その一つの典型的なルートである食品加工は、残念ながら取り組みが進んでまいりませんでした。1次産業が太る、食品加工業が太る、それを流通・販売していく3次産業が太る。そして、1次産業の素材とお土産物を持って帰ってもらう観点から観光業が太る。こういう形で経済全体の底上げが図られるものだと思いますが、残念ながら進んでいません。

次に、第4に、本県経済は、県際収支の赤字額もずば抜けています。これの意味するものは何か。これは、全体としては、県内市場に過度に依存した経済構造であるのではないか。

ご存知のように、人口は減少しております。そして、高齢化が、全国平均に比べて10年先行して進んでいます。2005年段階の本県の高齢化率 25.9%の水準に全国が進むのは2015年と予測されています。人口は減る、余りお金を使わない世代の皆さんが増えている、県内市場はどんどん縮小しています。

われわれに求められているのは、地産地消を徹底したうえで、外に打って出ることだと思います。小さくなる県内市場だけに依存していてはいけないと思います。外に打って出て、外貨を稼いでこないと本県経済の発展はないと思います。

これは実は日本全体でも同じです。今回の景気回復局面といいましても、国内全体は2003年頃以降はどんどん縮小を続けてきました。トヨタも、国内での自動車販売台数は落ちています。外国に出ることで稼いでいるのです。

確かにこれだけ景気は回復してきました。これは有効求人倍率を見れば分かるでしょう。しかしながら、デパートはどうですか。大丸と松坂屋が統合する、三越と伊勢丹も統合する。何百年の暖簾を守ってきたところが、どうしようもなくなって経営統合しているわけです。なぜなら彼らのお客さんは減っているからです。

日本国全体で見れば、外国に打って出なければならない。今回の景気回復局面でも、中国という新しい大市場ができて、アメリカとともに、何とか日本はやりくりをすることができました。そういう中で、本県が国内全体に目を向けなくて良いのか。良い訳がない。本当は世界にも目を向けていきたい。しかし、輸出産業を育てるには、もう少し時間がかかると思います。

しかしながら、何よりも地産地消を徹底しつつも、地産外消、外に打って出ることが必要ではないだろうかと思います。地産外消と外に打って出ることが、これまで本当に徹底されて来たか。そのための、十分なツールをわれわれは持っているでしょうか。

象徴的な数字として申し上げますが、アンテナショップについては、本県は年間約11万人(レジを通った購買客数)です。愛媛県と香川県が共同で持っているアンテナショップは年間約46万人、北海道のアンテナショップは約206万人、沖縄県のアンテナショップは約234万人です。沖縄県と本県では約22 倍の差がついています。

しかも、その差は毎年積み上がっていって、ポテンシャルは、先ほど申し上げたとおり、食べ物がおいしいということで1位なのに、それだけのポテンシャルがありながら、首都圏におけるプレゼンスで、アンテナショップ一つをとっても約22倍の差がついてしまっていることは無念で仕方がありません。正直、歯がゆい思いです。首都圏におけるプレゼンスは、大阪、名古屋ではどうでしょうか。決してプレゼンスがあるとはいえません。

外に打って出ていくためのいろいろな仕組みというものが必要です。厳しい財政状況でもありました。色々な取り組みを縮小せざるを得なかったこともあります。実際、皆さんにもご苦労をおかけして、給与カットも我慢していただいています。しかしながら、今、県内経済の底上げをしていくためには、新たに外に打って出て行く仕組みを作っていかなければならないと思います。

2 生産・企画段階から流通、販売に至る、全てを視野に入れた総合戦略(トータルプラン)を

もう一度、申し上げます。なぜ産業振興計画を作っていかなければならないのか。

第1に、経済の状況の厳しさは群を抜いています。この厳しさを、まず、再認識しなければなりません。いかに厳しいかということを出発点にしなければなりません。

第2に、われわれの強みと思っているものが、放っておけば、10年後には、崩れ去ります。今、足下から崩れんとしております。

第3に、産業の構造に積年の歪みがあります。他の県では当たり前のようにやってきたことができていないところがあります。

第4に、県内市場だけに依拠していてはいけないにもかかわらず、外に打って出る体制ができていません。

これらのことを考えたときに、やはり必要なことは、生産・企画段階から、流通、そして販売の段階に至るまで、全てを視野に入れたトータルなプランを、全ての分野について再検討し、そして、総合的な戦略としてまとめ上げていかなければなりません。そういうことが必要ではないか、と思います。

一部をいじるだけでは、決してうまくいきません。生産地が弱っている時に、いくら首都圏で売り込みをかけても、ロットが揃わない。ロットが揃わなければ、大きな儲けにはなりませんし、もっと言えば、納期までに物を納めることができなければ、取り組みをやっても、信頼を失うだけです。そういうことを考えた時に、一部をいじるのではなく、トータルとしてどう考えていくかということを、考える時間が必要です。

そのために、私自身、何としても県勢浮揚を図りたいということです。昨年12月に知事に就任しまして、多くの方々から「早く具体的なことをしないか」と言われながらも、1年間お許しをいただいて、産業振興計画を作らせていただきたい、もう一度根本から考え直させていただきたい、ということを訴えてきたわけです。日常業務がある中で、いろいろなことで大変だと思われることもあろうかと思いますが、ぜひ、トータルプランの必要性にご理解をいただきたいと思います。

3 なぜ中間取りまとめを行うのか

三点目に申し上げたいことでありますが、では、もう一度、振り返って足下から考え直そうとした場合に、3年も4年もかけて見直すわけにはいきません。やはり足下から考え直すにしても、より急ぐ必要があります。

産業振興計画は産業成長戦略と地域アクションプランとの2本立てで策定を行っているわけですが、産業成長戦略については、11月初旬の第3回検討委員会において中間取りまとめを行います。なぜ中間取りまとめを行うのか。それはその時期に行わなければならないから、平成21年度当初予算編成に間に合わさなければならないからです。平成21年度当初予算から産業振興計画に関する具体的な取り組みを開始したいと思います。

実は、急ぐべきという観点から、平成21年度当初予算から取り組みを開始するという話をしましたが、平成21年度当初から取り組むことが絶好のタイミングであるという思いに至りました。それは、平成22年度にはNHKの大河ドラマ「龍馬伝」が放映されることになって、外に出るに当たり、高知県の存在感、プレゼンスが著しく高まる機会がやってまいります。

本県にも年間約300万人の観光客の皆さんに来ていただいていますが、その数が一定数以上増える、もっと多くの観光客の皆さんに来ていただけることが予想されます。「功名が辻」でも、300万人が322万人になりました。「龍馬伝」はもっともっと多くのお客さんに来ていただかなければなりません。

一種の特需が平成22年に来る、天が与えてくれた絶好の機会です。この機会を何としても活かしていきたい。平成21年度当初から実施していくこと、平成22年の「龍馬伝」につなげていくこと、これで私はホップ、ステップだと思います。次に本当は、ジャンプと行きたいところです。

さらに言えば、観光にしても何にしても、さまざまな投資が必要なことは良く分かります。しかし、投資をして、リターンが得られるだろうか、ということが常に問題になる。それだけに、リターンが得られる時期が平成22年に来るということでもあります。思い切って仕事がしやすい時が来るわけです。ですから、平成21年度当初には何とか、具体的な取り組みをするように考えています。こうしたことから11月初旬には、とりあえず中間取りまとめを行うということです。

4 実効性のある計画づくりを

四点目でございますが、この計画づくりは、先ほど申し上げたような経済の状況です。必ずしも全てがそうだったわけではありませんが、また計画だけ作って、計画倒れに終わらないように、ということです。今回求められていることは、机上の空論ではなく、実効性のある計画を作ることではないかと思います。真に効果をもたらさないといけません。紙の上の計画であってはいけない。実際に経済効果をもたらす計画でなければなりません。

今回うまくいかないと、4年間を無駄にします。先ほど申し上げましたが、10年後には、われわれが唯一持っているかもしれない1次産業の強みが足下から崩れ去るかもしれません。時間がありません。今回、失敗しては絶対にいけません。本県の将来はなくなります。

計画を何としても実効性あるものにして、産業振興につなげていくものにしていこうと思っています。そのために大切なことは何か。それはひとえに、県庁だけで産業の振興ができるわけではないので、大切なことは、官民協働の体制を作り上げることです。皆さんこそ、一番その点は分かっていると思います。

県庁の職員だけ取り組んでも、地域の人が乗ってきてくれなければ、それは実行できないのです。地域の人が「じゃあ一緒にやろうや」という体制をいかに作れるか、ということがポイントの中のポイントであると思っています。

そのために、私も地域の人と話しをしますから良く分かります。「あんな計画なんて、作ってもうまくいくわけがないではないか」、「また机上の空論になるだけではないか」「地域アクションプランの意見を聞く場があったけれど、意見を聞いただけではないか。また口先だけのことを言っていたよ」と、あちこちで言われています。問題は、結果としてそれでいいのか、ということです。

地域地域、高知市においても、本庁と多くの団体との関係においてもそうです。いかに多くの人と手を携えてやっていけるか。もっと言えば、この産業振興計画の下に、産業の振興を図ろうということに、どれだけ多くの人を巻き込めるか。ここがポイントの中のポイントだと思っています。

このためには、多くの人の意見を聞かなければなりません。また、すでに地域のやる気のある取り組みがあるでしょう。それをバックアップして伸ばしていくことが必要でしょう。計画づくりの段階では、いろいろ辛辣なことを言われても、それを受け入れること。飲み込んでいくこと。その上で、実行段階で手を携えていく。そういうことが重要だと思います。

「どうせあいつらがやっているのだろう」、「あいつらにやらせておけばいい」それで本当に良いのか、ということです。ぜったいに良くない。10年後には、大変なことになります。いかに多くの人を仲間にできるか、地域の人を巻き込めるかです。

県庁全体として、いかに多くの人と合意形成ができるかについて、思惟を重ねています。産業振興計画検討委員会の委員の皆さん、JA中央会の会長さん、園芸連の会長さん、森連の会長さん、漁連の会長さん、そして有識者の方々の中でも県外からお出でいただいています。政策投資銀行の藻谷さん、関西学院大学の小西先生にも入ってもらっています。

時々、委員の方は「なぜ団体の長なんですか」と聞かれます。これは計画づくりの段階では、いろいろ議論もあるでしょう。しかし実行する段階では、JA さんも、園芸連さんも、森連さんも、漁連の皆さんも、みんなで手を携えてやっていけるような体制を作りたいと思うからです。

今から、計画づくりの段階から、意見を言っていただく。その上で、実行する段階になった時に、こういう団体の皆さんとともに、手を携えてやっていきたいということです。こういう体制を作っていきたいという、大きな舞台回しの問題です。地域地域でも、そういう体制づくりに心がけていただいていると聞いていますが、実際には苦戦しておられる。それは本庁側の大きな問題もあると思いますが、ぜひ、この点は徹底していただきたいと思います。

5 職員の皆さんの声に応えて

このように、地域地域で多くの人たちを巻き込めるかどうかがポイントとなる時に、ぜひともまずは、出先機関において、地域の皆さんと接しておられる皆さんに、産業振興として今何をしようとしているのかについて、腹に入れてもらいたい。そういう思いで今日の会を開催しています。

もう一つあります。実際に地域の皆さんと接しておられれば、その苦労は並大抵のことではないと思います。本当に、皆さん方を本庁としてバックアップできているのか。そのことについて自己反省もあります。皆さんから多くの意見をもらって、腹を割った話をして、疑問を解消していきたいと思っています。この後で、いろいろな場を設けており、各部長も説明をしますが、まず私自身から話をさせてもらいます。

第1に、「産業成長戦略は本庁の方で作っているが、地域アクションプランとの関係はどうなっているか」という意見についてです。

産業成長戦略でどのような議論をしているかについては、後で各部長から説明をします。それで意識を合わせていただきたいと思います。それでは産業成長戦略を地域地域で実行していくということが一つ重要になります。もう一つ、地域で具体的にやる気を持って取り組んでおられること、これを踏まえて全体としての産業成長戦略を見直していくことも必要です。産業成長戦略の地域での具体版が地域アクションプランになるという側面もあるでしょう。また、地域アクションプランを通じて産業成長戦略全体を見直すということもあるでしょう。産業成長戦略と地域アクションプランは相互に関係している、というのが第1の姿です。

第2に、「多くの人を巻き込め。多くの人と話をして」と言った時に、「では、県として何をするのか。何をやってくれるのか」、「県としての支援策もはっきりしていないのに、どうして話ができるのか」という意見についてです。

これは、もっともなことだと思います。言葉は悪いが、「武器も持たずに戦場へ行け」と言っているようなものだ、と思っています。実は、今回、地域アクションプランを作る際には、普通は、まず産業成長戦略を作って、その後に地域アクションプランを作る、2段階で作るのがオーソドックスだと思います。そうすれば十分、支援策もはっきりした上で、地域に入れる。しかし、先に述べた事情で両者は同時並行でやらざるを得ません。われわれもどんな支援策があるのかについて、後で、説明しますし意見交換の場も設けます。また、不満の点については、後で文書で回答させていただきたいと思います。

大雑把に言いますと、一つは、国の100%補助金も含めて、既存事業の優先採択をするということもあります。農商工連携ファンドは全国で3県選ばれたうちの1県です。真っ先に国の支援制度を取ってきました。また既に県がやっている「高知県元気のでる市町村総合補助金」もあります。とにかく産業振興計画の事業を最優先にしたい。

もう一つは、地域地域で「こういう支援策があれば、うまくいくのではないか」というものがあれば、新たに施策を作ることも考えなければならないと考えています。産業成長戦略を議論する中で、いろいろな新規施策についても検討していこうと思っていますので、また聞いていただきたいと思います。

三つ目は、企画段階、流通段階、首都圏における販売段階、それぞれについて、ソフト・ハードのバックアップをしていくような新たな支援策というものを作ってまいりたいと考えています。県産品ブランド課で既に類似の事業をやっていたかと思いますが、視野をぐっと広げて、大幅な強化をして、新たな体制をつくっていきたいと思います。後で企画調整課長から詳しく説明があります。

第3に、「とにかく計画づくりよりも、地域地域での実践を早くやりたい」と思われたと思います。

なぜ産業成長戦略を作ることが必要なのか、ということは先ほど説明をしました。では、実践についてはどうなのか。今までも地域地域でさまざまな実践をやってきたと思います。どうぞ産業振興計画に、これまで実践してきた取り組みを盛り込んでほしいと思います。

決して産業振興計画と皆さんが普段やっておられる実践とは別のものではありません。皆さんが地域地域で大切に育ててきたものこそ、地域振興のエンジンだと思います。実践で培ってきたものを、地域アクションプランに盛り込めるものは盛り込んでいただきたいと考えています。併せて、計画づくり自体が一つの実践であると考えています。

どんなものでも企画をして実行していくというプロセスをたどると思いますが、地域アクションプランづくり自体が、地域振興の中での企画段階に当たるので、市町村から出てくるもの、地域の団体から出てくるものを、ぜひ取り込んでいっていただきたいと思います。

第4に、「産業振興、経済成長と言うけれども、地域地域の小粒なものの集まりが産業振興、経済成長に本当につながるのか。言葉遣いと実際の取り組みとの間にギャップを感じる」という意見をお聞きしています。

しかしながら、一つには産業別の成長戦略ということで、本県全体を横串にした大きな取り組みを実施してまいります。産業成長戦略の中にいろいろな大玉が入っています。そして、それに加えて、地域発の具体的なやる気のある取り組みを加えていくということです。地域アクションプランに載るものが産業振興の全てではありません。

産業成長戦略という形で大きな本体があり、それに加えて、地域の小粒でもキラリと光る取り組みがある。そういう構造にあるということを、地域で聞かれた時には、答えていかなければならないと思います。

第5に、「地域アクションプランと言った時に、どこまでの熟度を求めていくのか」という意見についてです。

時間がない中で、具体的・実践的に、人の顔が見えてくるほど、どこまで熟度を高めるのかということは簡単なことではないと思います。これについては、熟度はそれぞれで構わないと思います。平成21年度から実践をするということを申し上げましたが、平成21年度に企画を練るということでも構わないと私は思っています。

今、地域地域で実践的にいろいろな取り組みを育てておられるでしょう。今、進行しているもの、今まさに進行せんとしているもの、こういうものは、ぜひ平成21年度に実行するものとして、盛り込んでいただければと思う。しかしながら、ある程度、形は見えたが、どのように具体的に支援していくかが見えないものは、来年度、支援策自体を考えたら良い。

大まかなアイデアはあるが、具体的な企画を詰め切れていないものは、来年度に企画を練ってほしい。実際に取り組みは出てきたけれども、やるかやらないか分からないものは、やるかやらないかも含めて検討する。熟度にはそれぞれあります。

実は、やるかやらないか、どのようにやるかということを詰めるということは、県のような公がバックアップしていかなければならない。企画を練るということで計上してもらって構わない。むしろ、そうした方が良いと思います。

よく「地元の木でオモチャを作った。うちの地元の木だから売れるだろう」という話を聞きます。売れるわけがない。それは生産者側の勝手な論理だと思います。消費者側からすれば、どこの木かは関係ありません。

皆さんご存知のとおり、フィンランドやノルウェーのオモチャは、白い美しい木を使って、3~4万円という値段で飛ぶように売れています。消費者から見たら、世界の木を見て選んでいる。地元のものだから売れるということはない。だから、企画を練るに当たっては、生産者側の論理だけでなく、消費者側の論理というものをしっかり読んで企画していくことが必要です。

アンテナショップは本来、消費者の声を生産者につなぐ役割を担っているのだと思います。残念ながら11万人ではサンプルが少なすぎます。22倍になればサンプルが取れると思います。また、プロとして、そういったことを手がけていらっしゃる方もおります。そういう方の支援も入れていくことも必要かと思います。

この後、部長からも話があると思いますけれども、企画自体に外の目を入れて、消費者の声も入れて、支援することも考えていきたいと思っているところです。

「これから練り上げるというものも、計画に入れてもらって構わない」、こういう熟度ということです。

6 最後に

長くなりましたが、この後、支援策について、今の段階では漠然としていますが、考えているところを説明します。各分野の産業成長戦略も説明します。また地域アクションプランの今後の進め方を説明しますが、一つのモデルとして説明しますので、最後は現場の裁量になります。地域地域でこうやったらいい、という方向で進めてください。今日のこの機会を活かして、意見交換もありますので、疑問に思われることは、率直に声を上げてください。県のために、策定段階では徹底的に声を上げてほしい。実行では力を合わせてほしい。今日お答えできないものは、後で文書で答えを返します。

本庁として皆さんをもっとバックアップをしていかなくてはならない、という思いでこの会を開催しました。皆さんにはご苦労をかけますが、県民のために頑張っていただきたい。ともに力を携えて、進んでいきたいと思いますので、また本庁にも叱咤激励をいただきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。

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