公開日 2008年12月28日
更新日 2014年03月19日
知事の定例記者会見
平成20年12月26日(金曜日) 14時から14時50分まで(第一応接室)
目次
- 地方財政対策と国の予算案について
- 高知工科大学の理事長・学長予定者 (1)
- 当面の雇用対策
- 知事らの給与カット (1)
- 小・中学生の携帯電話
- 吉田茂像の移設決議
- 仕事納め式
- 知事としての1年の総括
- 高知工科大学の理事長・学長予定者 (2)
- 知事らの給与カット(2)
- 学力テストの公表
- 高知工科大学の運営の考え方
- 産業振興計画
- 県庁の変化
- 内閣の政権運営について
- 国に対する県の提案手法
- 国の予算配分
- 高知医療センター
地方財政対策と国の予算案について
(知事)
皆さまこんにちは。まず冒頭、私から3点申し上げさせていただきます。第1が地方財政対策及び国の予算案の決定を受けての私からの今後の対応についてでございます。
今年の地方財政対策におきましては、実質的な地方交付税の総額が別枠で1兆円増額されたというような措置が取られたということもございまして、21兆円ということとなりました。前年度に比べて2.7兆円の増ということでございます。この1兆円の増額のうち、5,000億円につきましては地域雇用創出推進費という形のものが創設されることとなったということでございまして、厳しい雇用情勢の続く本県にとりましても、地方重視また雇用重視という形で一定の評価ができる対策ということになったのではないかというふうに考えております。
さらに今回は2次補正予算におきまして、地域活性化生活対策臨時交付金としまして6,000億円が措置されているわけでございますけれども、このうち、本県への交付額は約115億円超ということでございまして、全国平均の2倍以上という金額が交付されることとなったわけでございます。厳しい雇用情勢の続く本県に対しての、一定の配慮がなされている措置であると、そのように考えております。今後の県経済の浮揚や県民生活の向上に大きな効果が期待できるものと考えております。
今後、本県といたしましても、これらの措置を受けまして21年度の当初予算の編成を行っていくこととなるわけでございますけれども、国の2次補正予算の対応、そして国の21年度当初予算に対する対応、この両者を合わせた形で予算編成を行っていくこととなります。先ほど申し上げました115億円超の交付金につきまして、24日の庁議におきましても、地域の活性化と県民の生活を守る事業。そしてもう一つ、これまで十分にできなかった事業、こちらへの積極的な対応を図っていくということ。そしてもう一つは、平成21年度以降に実施する予定であった事業、これを前倒しで実施することによって早期に経済効果の発現を狙うということ。この3点の方針を示しているところでございます。今後、この方針に従いまして115億円の交付金、こちらの使途と併せ21年度の当初予算編成を行っていくということとなるわけでございます。
ちなみに、今回はこの補正予算への対応ということが新たに加わってまいりますので、予算編成作業はかなり大変になってくるかと思います。今現在、21年度の当初予算の編成に向けて各部局で11月末に示されました予算見積、それに従った財政課との協議を鋭意続けているところでございますけれども、併せましてこの2次補正予算に対する対応ということも図っていかなければなりません。こちらにつきましては1月13日までに、この2次補正予算に関する見積書、こちらのほうを反映した形で提出するようにという指示を出しているところでございます。今回はダブルヘッダーになるということですね。急いだ仕事が求められるということだと思います。
高知工科大学の理事長・学長予定者 (1)
続きまして2点目でございますけれども、高知工科大学の理事長、学長予定者の選任についてお話を申し上げたいというふうに思います。高知工科大学につきましては、来年4月の公立大学法人化に向けて、今、鋭意作業を進めているところでございます。来年1月には、国に対して公立大学法人の設立認可の申請をいたすこととなります。また法人の中期目標、これは6年間のものでございますが、これの検討も法人評価委員会の意見も伺いながら進めていくこととなるわけでございます。併せて大学では中期目標に沿いました中期計画の検討も行っていくこととなります。これらの策定を進めていくにあたりましては、理事長及び学長予定者の意見も十分に聞きながら進めていくことが適当という観点から、このたび、理事長、学長予定者の選任をいたしました。
まず理事長につきましては、このたび、公立大学法人高知工科大学の初代の理事長となるわけですが、最適の方として、岡村甫〔おかむら はじめ〕氏にお願いをすることといたしました。岡村氏は、高知工科大学の設立から大学運営に関与していただき、また工科大学を熟知された方でいらっしゃいます。教育研究部門とともに一体的に大学運営を行っていただくとともに、本県の施策に沿った形での大学運営も行っていただける最適な方として、私のほうから任命をさせていただく、お願いをするということにさせていただいたわけでございます。
また教学面の責任者である学長予定者ということでございますが、こちらは正確には理事長が任命をされるということとなりますけれども、こちらにつきましても早い段階からお決めいただくことが適当であるということで、岡村氏に選任をお願いいたしましたところ、理事長予定者である岡村氏のほうから(現学長の)佐久間健人〔さくま たけと〕氏をご選任いただいたところでございます。今後、経営と教育研究のそれぞれトップとなるお二人が協力して、よりよい大学運営を行っていただきたい。そのように考えておる次第でございます。
当面の雇用対策
続きまして、雇用対策につきまして若干補足的な説明をさせていただきたいと思います。先日〔12月24日〕、県では雇用対策本部会議を開催いたしまして、さまざまな雇用対策について議論を行いました。ジョブカフェでの体験枠の拡大でありますとか、学校出張相談の拡充でありますとか、いろいろな形で施策を取りますとともに、臨時職員の雇用とか直接的な対策についても講じていかなければならないということを議論したわけでございますけれども、併せまして住宅対策についてということでございます。
非正規労働者の解雇などに伴います住宅の斡旋については、ハローワークにおきまして雇用促進住宅の斡旋を行っておられます。県内のハローワークは、昨日までに10件を超えるご相談があったというふうにお聞きしております。入居を具体的に斡旋をするに至るまでの事例というのは、今のところはなかったということでございますけれども、今後とも県内の雇用促進住宅78戸の空き住宅があるわけでございまして、こちらを活用していって、間断のない住居対策というのを進めていくということでございます。
県といたしましても、国では対応しきれない場合には、先ほど78戸と申し上げました、こちらでは対応できないということになった場合には、県の管理する職員住宅などの提供ということも考えていきたいと考えています。国が対応しきれない場合に備えまして、県営住宅、高等技術学校寮、職員住宅の提供を検討するということでございます。県営住宅、今残念ながら空きがないんですけれども、職員住宅につきましては92戸の空きがございます。こちらを活用していくということであります。また高等技術学校寮につきましても11の空きがあります。こちらを活用していきたいと、そのように考えておる次第でございます。冒頭、私からは以上です。
知事らの給与カット (1)
(半田:高知新聞記者)
幹事社から3問ほど質問させていただきます。1点目なんですけれども、職員の給与カットは、今回、県職労に対して1%緩和で提示をされているようですが、そうなりますと三役、知事、副知事らの現行のカット率は30%ですが、来年度どうされるのか。考えが決まっていればお答えいただきたいと思います。
(知事)
職員の給与カットはできれば避けたかったわけでございます。しかしながら、やるべき仕事がたくさんあるという中で、また他方で県税収入の見通しがまだまだ不透明という状況になっているということを考えました時に、まだ県民の皆さま方と痛みを分かち合いながら給与のカットも続けていくということにせざるを得ない、非常に苦しい決断ではございましたが、こちらの決断を下させていただきました。
カットの率ということにつきましては、昨年平均3%のカットということで、今年は2%のカットということで提示をさせていただいておりますが、実際のところ、仕事が今後増えていくという中で、総職員数は100人以上削減をされていく予定となっております。こちらのほうでも人件費の削減がなされるわけです。この職員定数の削減と給与カット、この二つを合わせまして、人件費の削減額はトータルで今年度と同じ21億円程度ということとなるわけでございます。今年度と同じだけの人件費のカットを、事実上2つの施策で行っていく。県民の皆さま方に対する我々の痛みの分かち合いの規模、今年度と同額ということを確保したいと、そのように考えております。
職員に負担を強いるわけでございますので、当然私につきましても給与のカットを継続してまいります。カット率については30%をカットしていきたいと、そのように考えている次第でございます。また、副知事につきましてもカット率15%を引き続き継続させていただきたいと考えております。職員が苦労しているわけですから、私が最も苦労をいたします。
(半田:高知新聞記者)
教育長と監査委員については、これは知事からご発言するのは筋が違うんですか。
(知事)
そうですね。
小・中学生の携帯電話
(半田:高知新聞記者)
2点目ですが、大阪府の橋下知事が最近、小・中学生の学校への携帯電話の持ち込みを禁止する方針を出されました。それから県政情報課が行っている県民世論調査では、これはちょっと設問は違いますけれど、携帯電話を持つことについてどう思うかという設問に対して66%が必要ないというような回答があります。大阪の知事の発言ではありますけれど、知事はこの件についてどのようなお考えをお持ちですか。
(知事)
これはよく教育委員会において議論をしていただく必要があるように思いますね。県民世論調査ですと66%の方が必要ないというご回答ですが、他方で21%の方が、共働きであられて連絡するために携帯電話は必要であるとか、そういうようなご回答をいただいておるわけでございまして、やはり完全に必要ないと言われる方が圧倒的多数という状況にはまだないのではないかなというふうに思います。実際のところは携帯電話を通じたいろいろないじめなども起こっているということもあります。
他方で、もう一つは共働きの方々の必要性ということも本当にあろうかというふうに思います。今後はこういう社会状況とか学校の現状なんかも踏まえました上で、PTAとか市町村教育委員会などと十分協議をしていただいた上で、高知県教育委員会としての方向性というのを出していただきたい。よく議論をしてもらいたいと、そのように思います。
吉田茂像の移設決議
(半田:高知新聞記者)
もう1点ですが、この前の12月県議会で決議案として、吉田茂像の移設の決議が賛成多数でされました。拘束力はありませんし、誰がどこにやれとも決議文には書いてなかったと思いますが、県議会という機関の意思表明ですから、それに対して知事としてはどういうような対応を考えてらっしゃるかをお聞きしたいと思います。
(知事)
県議会の決議ですから重く受け止めたいというふうに思います。結局、より親しみやすく顕彰がよくできる場所というのはどういう場所なのかということ、これはやっぱり広くいろんな方々の、県民の皆さんのご意見というのを聞いてみないといけないと思いますね。そうした上で対応していきたいというふうに思います。
(半田:高知新聞記者)
具体的にどうこうということは考えていないということ?
(知事)
まだ考えていません。
(半田:高知新聞記者)
それでは、各社、ご自由に質問をお願いします。
仕事納め式
(畑本:読売新聞記者)
今日、10年ぶりに知事がお話をする仕事納め式が開かれるんですけども、しばらくやってなかった。去年も確かなかったと思うんですけど、今年やることになったのはどういうお考えがあってのことですか。
(知事)
この1年間、本当に県庁職員の皆さんには苦労をおかけしたと思っています。本当に皆さんにお疲れさまでした。本当によく頑張ってくれましたということを私自身の口から申し上げたい、そのように思ったからです。
知事としての1年の総括
(佐野:NHK記者)
今年は、実質的に知事として初めての1年だったと思うのですが、この1年を総括して振り返っていただいて、どんな1年間でしたか。
(知事)
去年の12月ぐらいの段階というのは、私、本当にある意味、頭を抱えておりました。大変だと、高知県は。知事に就任していろいろデータを勉強したりするにつけ、経済の状況しかり、教育の問題しかり。去年の12月議会、さらには予算編成が開始したという状況でしたから、いろんなことを深く勉強し始めた時期だったわけですけれども、これは大変なことだと、高知県の現状というのは。どうしてここまで大変なことになってしまったかということを本当に思いました。去年の12月の今ごろというのは、私自身も重い気持ちでいましたけども、しかしながらこの1年間を通じて、じゃあ、この高知県を何とかして、県勢を浮揚させていくために何をしなければならないのかということを職員の皆さん、さらには県民の皆さま方、多くの方々と徹底して議論をしてきたつもりでございます。
対話と実行座談会ということで、各市町村を回らせていただきましたし、そしてまた、よく県庁にもおいでを賜って、いろんな懇談会という形で各界の方ともお話をさせていただきました。また産業振興計画の検討委員会の皆さま方、さらには地方、地方の策定委員会の皆さま方、市町村役場の皆さま方、多くの方々に議論を賜ったところでございます。そういう中で産業振興についても、そしてまた教育改革についても、こういうことをしなければならないんだということが、一定程度見えてきたのかなというふうに思います。
去年は本当に私自身も頭を抱えるような思いでございましたけれども、今は非常に希望に満ちております。こうすればいいんだという、その道筋が見えた。そのように思っていますので。年末年始はちょっとゆっくりしたいと思いますが、年明け以降、見定めた方向性に向かって邁進をしていきたいと、そのように思いますね。
高知工科大学の理事長・学長予定者 (2)
(高橋:高知新聞記者)
高知工科大学の理事長任命なんですが、これは高知女子大学の公立大学法人化さらには1法人2大学化を見越した任命とは言えないですか。
(知事)
まだそこまでではありません。
知事らの給与カット(2)
(半田:高知新聞記者)
給与カットの件で補足なんですけれど、職員のほうは1%緩和をした。ご自身の給与は緩和を考えられなかったんですか。
(知事)
考えませんでした。去年は職員が3%なら、その10倍ということで30%にしました。今年は10倍ということであれば20%ということなのかもしれませんが、ただ(給与カットを始めて)4年目がきていて、またさらに1年継続しましたので、その分、10%(上積みして30%カット)です。
学力テストの公表
(内保:共同通信記者)
高知県の話から若干それるんですが、昨日、秋田の寺田知事が学力テストの公表を全国で初めて行いました。これまで知事はことあるごとに、市町村教委の判断に委ねるというスタンスを崩さなかったと思うんですけれど、昨日の寺田知事の対応についてどのような思いをお持ちでしょうか。
(知事)
教育の問題については、やはり多くの方々とともに手を携えていかないといけない。その前提として大切なことは情報公開だというふうに思っているところです。ですから、市町村教委において、やはり説明責任を果たすという観点からどうすべきなのかということを自主的にご判断いただきたいというスタンスには変わりございません。ただ、他方でこの学力テストというのは公表しないということを前提にして実施をしています。そういう一定のルールがあるわけですから、そのルールは守らなければいけないと思いますし、さらに確かに一律に単に公表だけした場合の、ささやかな点数の違いをめぐった意味のない序列化と言いますか、競争と言いますか、そういうことが巻き起こってくることも懸念をされるところであるかなと思っています。でありますから、私が一番望ましいと思っていますのは、住民に対する説明責任を果たすという観点と、先ほど申し上げた懸念という問題がありますが、この両方を加味して最適な結果の公表の仕方はどうなのかということを、もう一度国においてもよくよく議論をしてもらいたい、そのように思っています。そこの議論が足りないから、ルールと関係なく発表するとか、やや迷走したことになっているんじゃないでしょうかね。
高知工科大学の運営の考え方
(岡林:高知新聞記者)
工科大の関係でご説明された中で「本県の施策に沿った形での大学運営」という言葉がありましたけれど、(公立大学法人化の時期が)来年4月ということを考えた時に、運営を具体的にどうやっていくのかということもあるんですが、県民から見た時にどの施策と工科大の運営がどういうふうにリンクしていくのかというものをより見える形で提示する必要があると思うんですけれど、1月以降、法人化までの流れの中で、学長、理事長、それから県との関係性を分かりやすい形で、こういう形でやりますということを提示するお考えはありませんか。例えば来年度の当初予算の編成作業の中でこういう形で分かりやすくしますということがあればお伺いしたいのですが。
(知事)
ご指摘のとおりだと思うんです。一言で言えば、「県の施策と一体となって」といった時に目指すべき目標というのは、地域の活性化、県勢の浮揚にお互い手を携えていきましょうと。そういう中でどういう技術を研究するかということのみならず、例えば人材の育成についてどうかとか、いろいろなことについて連携ができるんだと思いますが、そういう点を定めるのが中期目標だと思うんですよね。中期目標の議論の過程というものは、ぜひともオープンな形で行っていきたいなというふうに思いますけどね。
(岡林:高知新聞記者)
中期目標の中で、県との関係性、これから県が歩もうとする将来像とかリンクしたものが言及されてくるという?
(知事)
そういう方向性を考えていきたいと思いますね。もちろん、学問の自由というのは当然保証されなければなりません。それを大前提として上での話です。
産業振興計画
(伊藤:日本経済新聞記者)
今は不況というぐらい景気が落ち込んでいるんですが、今のこういった状況を踏まえて産業振興計画の方向性を修正されるとか、そういうお考えはありますか。
(知事)
不況、不景気が急速に忍び寄ってきているという状況の中で、これに対する先ほど申し上げたような、例えば雇用対策とか、こういう緊急の対応というのは随時、間断なく打っていかないといけないというふうに思うんです。ただ併せて、厳しい状況になればなるほど、高知県の経済体質の強化を図っていくこと、これもまた極めて重要になってくるのではないか。体質が強くなければ、厳しい時代だからこそ生き残っていけないということではないかというふうに思います。でありますので、基本的に今、体質強化を図ろうとしている産業振興計画の観点、こちらについては修正の必要はないんじゃないかというふうに考えています。
もう一つ、もしこの産業振興計画が外から何かを呼び込んでくる、例えば企業誘致を中心に据えているというような形での、ある意味での一種他力本願的な形で作っているのであれば大幅な修正を余儀なくされるでしょう。しかしながら、この産業振興計画は自分たちの持っている強みというのをいかに磨き上げて、それを外に打って出ていくかという観点で作られていますから、そういう意味において、まず県内にある自らの強みを磨き上げるという方向性、これは外の状況いかんに関わらず必要だと思います。
ただし、非常に細かい観点、例えば今まではこういう分野が好調だったので、この分野に対して売り込みを強化していこうといったものが、今回の不況によって一定程度スピードダウンを余儀なくされるとか、もしくは対象を変えるとか、そういうことは必要になってくるかもしれません。これは特に地域アクションプランについて言えることだと思うんですけども、地域アクションプランについては、1月、2月にかけて策定していくわけでございまして、最新の経済状況も盛り込んでいきながら策定していくことになろうかと思います。
ちなみにさらに長期的なことを言わせていただければ、この産業振興計画、また来年にあたりまして、一定程度、その計画の進捗状況に合わせて、また時々の経済状況の変化に合わせて、果たして見直しが必要かどうかということは議論をしていくということになるというふうに思います。先々にわたってもフレキシブルな対応をするということを否定するものではありませんけれども、現段階では変える必要はない。そのように考えています。
県庁の変化
(畑本:読売新聞記者)
この1年で、知事の中で高知県についての見方が変わったり、あるいは県庁の運営の仕方について考えが変わったり、ターニングポイントになったようなできごとはありますか。
(知事)
県庁の見方が変わったという話について言わせていただければ、やはり7月ぐらいですかね。一番苦労したのは、やはり産業振興計画みたいなものをもう一度根本から作り直さなければならないんだということについての、お互いの納得感ですか、それが得られるまではやっぱり苦労しました。5月、6月と。しかし7月ぐらいになってきて、関係部局長会議を開催するというような形で、お互い各部で持っていた不安感が一定程度、解消の方向に向かっていく中で、必要性をより深く理解されるようになってからの瞬発力は、私はすごかったというふうに思います。一挙に策定に向けて議論は進んでいった、具体化していった。そのように思っています。
私は6月、7月ぐらいというのは一つのターニングポイントではなかったかと。従前より遙かに強い県庁になったと、そういうふうに思っているところです。
内閣の政権運営について
(岡村:高知新聞記者)
知事は、先ほど国の予算を一定評価するとおっしゃいましたけど、一方で内閣支持と言いましょうか、非常に低く低迷してきている。そこでちょっとギャップを感じるんですけれど、今の内閣の政権運営について、知事はどんなふうに評価されますか。麻生内閣そのものをどんなふうに評価されますか。
(知事)
私は従前より申し上げていますように、今回の不景気に対する対応というのは1次補正予算、2次補正予算、そして本予算という形でかなりスピードは早かったと思います。従来、財務省にいた経験からすれば、本格的にひどくなり始めという段階でこういう補正予算を打つというのは、ある意味、考えられないことだというふうに思います。悪くなってから、実需の低迷を見てはじめて議論が始まるというのが従前のパターンではなかったかと。今回非常に足が速かったという点では私は評価をしています。そういう中で残念ながら個別の課題について、いくつか迷走があったのかなと。
定額給付金の給付の所得制限の問題についてもそうですし、さらに道路特定財源の見直し問題についてもそうでした。大枠は私は非常にスピード感もあってよかったですが、ただ個別課題について、結局、残念ながらやや調整不足の段階で言葉が先走りするということがいくつかあって、結果として混乱をきたしてしまっていたということではないかなと。私も自分自身総理官邸におりました時、いろんな対外的な発表をするにしても、調整を済ませて、その中で一定のレンジ、ここの間なら言っても大丈夫ということを見極めていくことは非常に大きな仕事だったわけですが、どうもそこがずれてしまっている感じがします。今、官邸の中がどういう状況になっているのか分かりませんけれども、若干そこには私は残念なところを感じているところです。
しかし、個別課題についての迷走という話と、こういう大枠の予算を組み上げることができた。しかもスピード感を持って組み上げることができたという話、これはどっちを評価するのかという。それはやっぱり大枠がしっかりできているということではないのかなと思うんですけどね。ちょっとその辺りで十分な説明が不足しているんじゃないのかなという気がしますけどね。
(小笠原:高知新聞記者)
定額給付金の話ですけれど、県議会の質問とも重なりますが、改めてその定額給付金に対する知事のお考えというか、そういうところをお聞かせ願えればと思うんですが。
(知事)
あれがもし減税だったらどうでしょうかね。定額減税、定率減税だったら。(スピーディに)効果を発現するために定額給付金という措置を取ったんだと思うんですよ。もう1個、多分違いがあって、減税措置だと法改正をしますよね。時限的な措置になるかならないか、大きな問題になります。定額給付金だと明らかに時限的な措置なわけですよね。ここに大きな違いがあると思います。だからやっぱり一時的なカンフル剤に留まると思います。
私は30兆円の補償枠を作るであるとか、意外に本県なんかで大きいのは高速道路の料金を引き下げるとか、こういう措置なんかのほうがはるかに実があるというふうに思います。あと、もう一つはいろんな生活対策の臨時交付金みたいな話をしましたけれど、ああいう形で地方の実情に合った形で使っていけるような資金であるとか、こちらのほうを私は評価しています。定額給付金というのはやはり一時的なカンフル剤です。
(小笠原:高知新聞記者)
一時的なカンフル剤というのは、つまり肯定的な意味合いでいうのか否定的なところなのか。
(知事)
カンフル剤という意味においては評価します。一時的ということについて言えば、一時の措置であるべきだったのかなという感じはしますね。そこは多分、減税措置を取るのかどうするのかと、さんざん議論があったんじゃないでしょうかね。定額給付金だけちょっと有名になり過ぎているという印象がありますよね。他の問題については余り議論が行われていないじゃないですか。そこのところは、ちょっと残念ですね。
(岡村:高知新聞記者)
今回の予算では、埋蔵金を使うという話になっていますけれど、予算規模も膨らんで、そうすると将来見通しですね。この状態がいつまでも続くとは思えないし、そうすると今は「飴」の段階ですけれど、将来「ムチ」のほうがドンと来るんじゃないかという懸念も当然持っておかないといけないと思うんですけども、その辺の見通しと言うか、個人的には将来へ非常に怖いものを残してしまったという気も感覚としてあるんですけれど、知事はどんなふうに感じておられますか。
(知事)
前から言っていますけれど、90年代の対策に見習わなければいけないんじゃないかなと。落ち始めの時期、特に今回のようにスピードが早い時には、これは早い段階で打っておかないといけない。この段階で小出し小出しにしてしまうと、すごくひどくなって、ひどくなってから打つ対策というのは巨額なものをいくらつぎ込んでも効き目のないということになりかねないと思うんです。結果として財政赤字も大幅に膨らんでしまいました。効き目がなくて財政赤字が大幅に膨らんでしまったという90年代の経験に大きく学ばないといけないというふうに思います。早めに一定規模の効果がでるぐらい。私がいつも言っている「大海に目薬一滴」みたいなことじゃなくて、本当に効果が出るような対策を早めに打っていくということがぜひとも必要だというふうに思いますから、今回はそういう意味においては、私はよかったというふうに思いますよ。
ちなみに埋蔵金の活用ですが、あれは私、(財務省在籍時に)財政投融資特別会計の法改正なんかを立案したりしていまして、金利変動準備金なんかについても財政状況において柔軟に使えるようにすべきだというのを案まで作ったところで、官邸に移ったんですけれどね。ああいう資金というものは、やっぱり機動的な活用という観点に、もし機動的に使う場がなければ国債残高の減ということでしょうけれど、こういうような緊急的な事態においては機動的に活用すべき資金だというふうに思いますけれどね。
今回それを活用した。これは赤字国債もあまり急激に発行し過ぎますと、金利の上昇とかいう形で副作用もどうしても出てくるということもあろうかと思いますから、そういうバランスを考えた時に金利変動準備金とかそういう資金というのを使っていったというのは、一定のバランスある対応というふうに言えるんじゃないでしょうかね。
(岡村:高知新聞記者)
将来、一気に絞られるという懸念はないんでしょうか。
(知事)
それは経済状況を見ながらやっていかないといけないとは思いますけれどね。ただ補正予算で対応してますでしょう。1次補正、2次補正という形で拡大補正をしていって、当初予算も拡大していますけれど、補正予算を打つのか打たないのかというのは、これはまた先々の経済状況いかんによって対応していくんだろうと思うんですよね。
一つあるとすれば、税制の抜本改革プログラムの問題について。あそこで大切なことは、2011年度と明記されてはいますけど、経済状況が3年後、本当に大丈夫かどうかということをしっかりと見て、そこについての一定の余地を持っておくということがぜひとも重要だというふうに思います。決め切ってしまってはいけない。決め切ったら何年後かには増税をされるんだから、今もらったってツーペイ〔too pav。払う方が大きくなる〕じゃないかという話になってしまいますから。経済状況の動向に応じて柔軟に対応するという、一定の幅、余地を持っていないといけないと思いますけれどね。今回、経済状況に応じてということが書かれていますから、その点がしっかりと対応されるようにということを願っています。
国に対する県の提案手法
(畑本:読売新聞記者)
今回の国の2次補正などで導入された有効求人倍率の逆数は、財務省の中に直接、県の職員が入り込んでいって提案してという手法が、今回功を奏していると思うのですが、この手法が、まず一つ、高知県の職員の中にしっかり根付きはじめているという手応えはありますか。
(知事)
あります。間違いなく。(提案していったのは)総務省ですけれど、明らかにそれはあります。
(畑本:読売新聞記者)
それがいつまで、その手法が通用するだろうかということについてお伺いしたいのですが。
(知事)
ずっと先々まで通用すると思いますよ。どういう手法かというと、単に高知県に有利な主張をしたというだけに留まらないからうまくいったんだと思います。全国に通用する理屈、誰が聞いてもそれはそうだと思える理屈、これを提案した。それが結果として、本県のような所に有利に働くような理屈というのを提案したということです。
結局国だってそういう形で計算式を変更すれば、その計算式について説明しないといけませんよね。国会だってどこだって、説明しないといけない。そこで説明ができないといけないわけです。従来は、高知県のために何とかよろしくお願いしますという頼み方をしていたのかもしれない。高知県についてこうすべきだという提言をしていたのかもしれません。けれどそれだけだと「それは高知県さんのご都合でしょう。他の県は同じことを言っていますよ」というだけになってしまう。
今回の提案というのは、全国的にもこれならば、誰でも納得できる一定の理屈であるということを提言し、それが結果として本県にとって有利になるものであったということです。こういうやり方であれば、霞ヶ関でも、その後の国会審議でも十分対応できるというふうに思いますけれどね。
(畑本:読売新聞記者)
先に伺った職員へのこの手法の浸透について、補足があれば。
(知事)
こういう考え方で動くことによって、従来よりも一段上をいっていると思うんですけれど。こういう提案活動というのは今回一定の成果を出せたということもあって、東京事務所をはじめ、自信を持っていただいているのではないのかなと思いますけれども。一定の成果が出たということで、定着度も高まってくるのではないかなと思います。実際に知事室でもよく議論をしますから。そういうことを引き続き、今後もいろんなことで提案していきたいというふうに思います。
道路の評価の問題だって、命の道の評価という話。本県にとって非常に重要な新しい評価方法が加わってくることになったわけですが、あれだって全国どこの地域だって、同様の地域だったら通用する理屈ですよね。本県に道路をというだけじゃなくて、全国に通用する理屈で、結果としては本県にとっても有利に働くようなものを提案してきたということ。あれも一つ成果だと思います。
国の予算配分
(佐野:NHK記者)
それに関連してですが、今回の予算で枠は決まりましたけれど、これから、より高知県に持ってこないといけないという段階になってくるんじゃないかと思うんですが、それに関連してはどのような対応、対策をとられますか。
(知事)
補正予算ですから、国会で早く審議をしていただいて、でき得る限り早く成立をさせていただきたいというふうに思っています。成立されたら、関連法案の成立を待って交付されるということになるわけですけど、今度はこっちの受け手のほうで1月の中旬までにどういう形で使っていくかということを決めていかないといけませんので、こちらが大変です。さっき言った3つの方向性で議論を重ねていきたいと思いますけれど。
(佐野:NHK記者)
それと、来年度の当初予算なんですけども、一定の基準は、高知県提案の基準として国に打ち込めていると思うんですが、それに関連して、それに基づいて予算配分が進む中で、より高知県に持ってこないといけないという状況になりつつあると思うのですが、そういう点に関して何か知事として、こういう手法でというのは考えておられますか。
(知事)
今回の2次補正は生活対策です。雇用情勢の厳しい所にこういう配り方をすれば、みな納得しますよという話ですが、本予算における交付税の配分の問題というのは、いわゆる財政的に足りない部分をどのようにそれぞれ補填をしていくのか。いわゆる財政調整機能をどう発揮していくのかという議論になってくるわけです。
ですから、これは通年どおりのルールで決まってくるだろうと思いますけれど、ただその中で、やはり今回の当初予算についてもその哲学と言いますかね、景気対策をやるんだと。だから特に疲弊している地方を重視するんだと。そういう考えが明確に打ち出されているわけです。それに従った配分がどうなされるべきなのかということについては工夫を重ねていかなければいけない。我々も言うことは言わなければいけないと思います。
もう一つ、さっき言った1兆円のうちの5,000億円というのは雇用対策ということですよね。こちらの配分なんかについても一定程度、議論はしないといけないのかなと思いますけれど。
高知医療センター
(中田:高知民報記者)
医療センターですけども、12月のオリックスとの話で一定の結論が出るということでしたけれど、その後の状況の報告とか何かありますか。
(知事)
一応SPCのほうからは回答が来ているというふうには聞いていますが、詳しい内容はまだちょっと伺ってないと言いますか、現在回答内容というのは、企業団で整理しているふうに伺っていますけれども、少し厳しい内容のようでございます。企業団のほうで今整理してもらっていますので、その整理ができましたら構成団体と企業団で、今後どうしていくのか協議をしていきたいと、そういうふうに思います。
(谷脇企画監(広報担当))
よろしいですか。
では、これで終わります。
(知事)
今年1年、誠にお世話になりました。ありがとうございました。来年もどうぞよろしくお願い申し上げます。皆さん、よいお年をお迎えください。