公開日 2009年08月10日
更新日 2014年03月19日
平成21年7月高知県議会定例会での知事提案説明 (7月3日)
1 現在の経済状況と対策
・雇用対策
・緊急融資
・公共事業等
・産業振興計画のこれまでの取り組み
・産業振興計画 地産外商戦略
・産業振興計画 であい博
・産業振興計画 二次交通
・産業振興計画 観光客誘致
・産業振興計画 公共交通の維持
・産業振興計画 産業別の取り組み
・産業振興計画 まとめ
2 福祉・健康
・あったかふれあいセンター
・福祉・介護サービスの強化
・児童相談機能の強化
・安心こども基金
・自殺対策
・新型インフルエンザへの対応
・高知医療センターの経営改善対策
3 道路事業
・直轄道路事業の一時凍結について
・四国8の字ネットワークの整備について
・直轄事業の負担金
4 教育改革
・学力・体力向上の取り組み
・教育振興基本計画
・補正予算での対応
・高知工科大学の中期目標
5 議案
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成21年7月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております
かつてない経済危機の中、本県におきましても、依然として厳しい経済状況が続いております。県民の皆様の暮らしと雇用を守り経済の活性化に取り組みますことが、現在、私に課せられた大きな使命だと考えております。
このため、これまでも国の経済対策を最大限活用し、公共事業の追加や雇用対策事業の実施など緊急経済対策に取り組んでまいりました。また、もともと脆弱な本県の経済体質の抜本的な強化を図るため、産業振興計画を策定し、その実行に取り組んでいるところであります。
こうした従来からの取り組みに加えて、今般、国において追加の経済対策が打ち出されましたことから、これを積極的に取り入れ、この時期としては戦後最大の規模となる補正予算案を今議会に提案させていただきました。
これにより、緊急経済対策として経済の底上げや立ち遅れた社会資本の整備を図ることはもちろん、産業振興計画の実行を加速する事業、新型インフルエンザ対策など県民の安全・安心のための事業、また、本県の発展には必要とされながらも厳しい財政事情からこれまでできなかった事業などを着実に実施したいと考えております。
このように歳出面で思い切ってアクセルを踏み込む一方で、財政健全化も図っていかなければなりません。今後必ず必要となる事業を、今回、前倒しして行うことで、景気を刺激するとともに将来の財政負担の軽減を図りますほか、補正予算債の活用や今後見込まれる交付金を考慮した予算編成により、県債の発行残高を抑制し、財政健全化を着実に推進してまいります。
まず、緊急経済対策のうち、雇用を守る取り組みについてご説明申し上げます。
求職者一人に対する求人数を示す有効求人倍率が、この5月で0.37倍となるなど、本県の雇用情勢は依然として厳しい状況にあります。
こうした中、県では雇用対策の基金を活用して、3年間で3千人の雇用を目指す「あったか高知・雇用創出プラン」を策定し、介護現場の体制の充実など、雇用の掘り起こしに努めてまいりました。
さらに、今回の国の経済対策で、基金を積み増すための補正予算が措置され、本県には35億円余りが追加配分されることになりましたことを受けて、これまでの目標をさらに上積みし、3年間で6,500人の雇用を目指して取り組みを進めてまいります。
また、雇用の受け皿となります、県内企業の経営環境も大変厳しい状況が続いております。
このため、昨年10月には国の緊急保証制度を活用して、さらに県単独の措置も加えて、低金利・低保証料の「安心実現のための高知県緊急融資」を創設し、これまで多くの企業にご利用いただきました。ただ、この緊急融資を利用しましても、償還期間が10年では資金繰りの改善が難しいといったケースもありますことから、このたび、15年の償還期間で借り換えができる融資を新たに設けることといたしました。県内企業の皆様が当面の危機を乗り越えられますよう、金融面においてもこれまで以上に支援をしてまいりたいと考えております。
公共事業につきましては、既に予算化しております事業が一日も早く県内経済の活性化や雇用の確保に結びつきますよう、特別の事情があるものを除いて、年度の上半期に91パーセントを発注する目標を掲げております。
こうして上半期に前倒しを行った上で、今回の補正予算でおよそ210億円、当初予算の3割弱に相当する事業費を上積みすることにより、年度を通じて切れ目のない事業の確保を図りたいと考えております。立ち遅れた本県の社会資本の整備を促進する観点から、真に必要な事業を、スピード感を持って実施するとともに、県内経済の浮揚効果をもたらすよう努めてまいります。
次に、産業振興計画についてご説明申し上げます。
この4月から6月にかけて、全庁的な産業振興計画の推進に向けた体制整備を行い、ほぼそれを終えたところでございます。4月1日に私を本部長とする産業振興推進本部を立ち上げ、これまでにも、6月29日、30日に第2回の同本部会議を開催して総合的な進行管理を図るといった取り組みを行いますとともに、同本部の下に県内の7つのブロックそれぞれに配置した地域産業振興監をトップとする産業振興推進地域本部を4月中に発足させました。事業者の皆様や市町村などが実施する地域アクションプランについては、地域本部においてプランの一つひとつに支援チームを設け、具体的な事業実施の検討を始めました。
この地域アクションプランのうち熟度が高い案件から順次、総合補助金の申請があり、既に25の事業が採択をされております。今後、さらにこうした各地の取り組みをサポートするため、財務面で助言を行うアドバイザーを地域本部に配置するなど体制を強化いたします。引き続き、一つでも多くの事業が実行に移されるよう、スピード感を持って取り組んでまいります。
次に、産業振興計画の大きな柱であります、地産外商戦略についてご説明申し上げます。
4月から6月にかけて、県産品の普及拡大を目指して、県外の百貨店や量販店、卸売事業者などに県産品を積極的にアピールしてまいりました。特に、ホテルや飲食店で高知の食材を使っていただく高知フェアは、本県の食材を売り込む有効な手法ですが、こうしたフェアは、この4月以降で、東京、大阪において開催済み又は開催中のものが12件となり、これは昨年度実施した件数を既に超えております。また、今後についても開催予定があるほか、大手量販店やコンビニエンスストアなどからも商談会のご提案をいただいております。
来年の龍馬伝の放送を控えたこの機会を最大限に生かして、県産品の販路開拓、販売拡大の取り組みを大幅にスピードアップして進めてまいります。
次に、地産外商を担う新たな官民協働型の組織についてご説明申し上げます。
この組織は、県内事業者の商品開発や販売活動までを広く総合的に支援して県内産業の底上げを図っていくという公益目的を果たすことを目指しております。このため、収益事業を行いながらも、必ずしも自らの利益を追求しない一般財団法人とすることが望ましいと判断いたしました。
この財団は、今後、首都圏に新しいアンテナショップを開設しました際には、その運営も行うこととなりますので、県産品の販売だけでなく、高知の食文化や観光に関する情報なども幅広く全国に向け発信する役割を担うことになります。このアンテナショップをはじめ本財団が取り扱う商品の選定や事業者の方々との協議などの準備作業を、できるだけ早期に始める必要がございます。
併せて、県内事業者の皆様の営業活動への支援など、アンテナショップ開設前でも実施可能な業務を早期に開始できますよう、今回の補正予算において財団設立及び活動に関する経費を計上いたしております。
今議会でお認めいただければ、準備を整えこの8月にも本財団を設立したいと考えております。
新しいアンテナショップは、国内最大の消費地である首都圏で県内の生産者や事業者の皆様が県外の市場に打って出る機会を提供するとともに、観光情報やふるさと情報など、高知県を丸ごと売り出していくためのセールス拠点としたいと考えております。
このアンテナショップを活用して、県内の事業者の皆様に首都圏でのテストマーケティングの機会を提供することにより、大きな市場で通用する商品への磨き上げ、質的向上を図るための支援を行ってまいります。その上で、店頭販売だけでなく、量販店や外食産業などへの売り込みを図ることによって、県産品の販路の開拓と販売の拡大につなげてまいります。
現在、アンテナショップを設置する場所につきまして、銀座・有楽町エリアを有力な候補として、情報収集と選定作業を進めておりますが、出店の目的を実現するためにも、立地場所や賃貸の条件などを慎重に検討しました上で県民の皆様にお示ししたいと考えております。
次に、産業振興計画の中でも即効性があり、他の多くの産業分野に波及効果のある観光の取り組みについてご説明申し上げます。
NHKの大河ドラマ「龍馬伝」の放送に併せて開催いたします「土佐・龍馬であい博」につきましては、開催期間を平成22年1月16日から翌年の1月10日までと決定いたしました。このであい博は、産業振興計画で示しております観光八策の「400万人観光、1千億円産業」の実現のための大きな柱です。
龍馬伝、であい博を契機に、多くの方々に本県にお越しいただき、食や自然、歴史といった高知の魅力をあまねく感じていただくとともに、それを一過性に終わらせることなく、来ていただいた皆様が本県のファンとなりリピーターとして何度も訪れていただけるよう取り組みを進めてまいります。
このため、先の議会でもご報告いたしましたとおり、県外から多くの観光客の皆様がお越しになるJR高知駅前に、土佐・龍馬であい博のメイン会場となるパビリオンを建設することとし、必要となります機能の検討を行いまして、一昨日、その建設に着手したところでございます。
また、県内3カ所に設置されるサテライト会場も含めて、であい博のすべての施設の名称も決まりますなど、開催に向けた取り組みを着実に進めております。
また、「おもてなし」をキーワードとして、観光客の皆様のご要望にきめ細かく対応する二次交通の整備を進めております。
今回のであい博では、メイン会場やサテライト会場からさらにもう一歩足を伸ばしていただきたいとの思いから、鉄道、バス、タクシーなどの各交通機関を観光客の皆様にとって利用しやすく、楽しんでいただける魅力あるものにしていきたいと考えております。このため、自由に観光地で乗り降りしながら周遊する「MY遊バス」の増発や経路の充実、観光ガイドが乗車する「定期観光バス」の運行、運転手の皆様が観光ガイドとなってご案内する「観光ガイドタクシー」などの取り組みを進めてまいります。
こうした交通手段の確保に加えて、それを利用される皆様に分かりやすい案内や情報を提供することも必要ですので、JR高知駅などへの案内板の設置を進めますほか、であい博の開催期間中は専任の案内スタッフを配置しますなど、二次交通の利用促進の取り組みを進めてまいります。
さらに、最近利用が大きく伸びていますインターネットでの交通検索サイトについて、既存の大手検索サイトの運営会社と連携して的確な交通情報の更新に努めますとともに、県内の観光地や施設までの公共交通機関の種類、所要時間、運賃、地図情報などが検索できる県独自のサイトを整備し、県民の皆様のみならず、全国に向けて、より分かりやすく的確な交通情報を提供し、新たな観光客の誘致にもつなげてまいります。
こうした一連の取り組みを行うことにより、観光客の皆様にスムーズに県内各地を訪れていただき、心に残る土佐の旅を楽しんでいただきますよう努めてまいります。
また、県外からの観光客を増やすためには、旅行業者等への売り込みなど、ソフト面での誘客戦略が必要となります。「土佐・龍馬であい博」に向けて、旅行会社の方々に県内を巡っていただくモニターツアーを実施したり、横浜や大阪での旅行イベントに参加をするなど、旅行商品の企画を行う企業をターゲットとして、本県の観光資源を取り上げていただくための取り組みを行ってまいりました。
これによって本県関連の新たな旅行商品の企画につながる事例が出始めております。今後とも、四国内はもちろんのこと、首都圏や関西圏などへ観光キャラバン隊を派遣したり、旅行雑誌などに取り上げていただくなど、計画的、積極的に観光客誘致活動を実施してまいります。
これまで取り組みの弱かった交通・物流対策につきましては、この4月の組織改正により新たに専任の理事職を置き、先ほど申し上げました二次交通の確保など総合的な交通運輸政策に取り組んでおります。
交通事業者を取り巻く環境は、人口の減少や少子高齢化、昨年以来の景気の急速な悪化、新型インフルエンザによる旅行の手控えなど、事業経営にとって様々なマイナス要因が重なり、非常に厳しいものがあります。
県民の皆様の日常の移動手段として、また、ビジネスや観光の面でも公共交通機関の維持は重要な課題ですが、本県は中山間地域が多く、人口の減少にも直面しておりますので、事業者に対する当面の支援だけでなく、将来を見据えた仕組みづくりも必要です。
このため、中山間地域での生活を支えるため市町村等が行いますコミュニティバスの運行をはじめ、新しい地域交通の仕組みづくりのための実験的な取り組みなどへの支援を行いますほか、高齢者でも安心して公共交通機関を利用できるよう、施設・設備への補助を行ってまいります。
また、高知龍馬空港の発着路線は、ビジネス客をはじめとして利用者が急激に落ち込んでいるところです。加えて、世界的な不況により厳しい経営状況が続く各航空会社は、経営改善のために一定の路線見直しを行わざるを得ない状況にあります。路線が維持できなければ、県民の皆様の利便性が損なわれるとともに、「土佐・龍馬であい博」を控え、観光の面でも大きな痛手となりますので、先手を打って事業者支援を行ってまいります。
次に、各産業分野の取り組みについてご説明申し上げます。
農業分野では、先月末に、高知県園芸農業協同組合連合会と販売戦略を共有し、共に実践していくための「新需要開拓マーケティング協議会」を立ち上げました。今後、この協議会を核として、新しく設立いたします地産外商を担う一般財団法人も活用しながら、本県の強みである環境保全型農業のトップランナーを目指す取り組みをPRし、農産物などの有利販売に向け取り組みを進めてまいります。
また、県農業公社の体制と機能を強化し、就農を希望する方に遊休農地、遊休ハウス等の農地情報や空き家情報を一元的に提供する、担い手の確保の仕組みづくりを進めますほか、農地を再生利用しようとする取り組みに対する支援の充実など耕作放棄地の解消を図る取り組みを進めてまいります。
県内の林業・木材産業は、住宅着工戸数の減少などにより木材需要が縮小し、木材価格の低迷が続くなど非常に厳しい状況が続いております。このため、川上対策であります森林所有者の間伐負担の軽減や作業道などのハード整備を進めますほか、公共施設の木造化や県産木造住宅への支援の強化など、川下対策である木材需要の掘り起こし、拡大にも積極的に取り組んでまいります。
水産業分野では、魚価の向上を目指して高知県漁協自らが入札に参加するとともに、様々な取引先に応じた集出荷体制の構築、そのための人材の育成に取り組んでまいりました。この結果、県内量販店との取引が始まるなど販路の拡大につながっております。
今後、県水産物の流通・販売について、より広範囲な対策を検討するなど、さらなる魚価向上対策の充実強化を図ってまいります。
今回の補正予算では、黒潮牧場を前倒しして整備するとともに、拠点市場であります清水市場の事務所の整備費用を補助いたしますほか、国の漁業緊急保証対策に対応した水産業緊急安定資金を創設することとしております。
商工業分野では、4つの成長が期待される分野、すなわち、食品、天然素材、環境、健康福祉の分野において、新たなビジネスの創出や事業展開を目指す企業を支援するため、分野ごとに企業や産業支援機関、県などで構成する研究会を立ち上げることといたしました。この研究会への参加を募りましたところ、延べ100を超える企業・団体からの参加申込がありました。今後、専門家のアドバイスを得ながら事業化に向けた取り組みを支援してまいります。
また、今回の補正予算には、製造業の企業を定期的に訪問し、経営面のアドバイスを行うための経費を計上していますが、こうしたものづくりの企業の育成にも積極的に取り組んでまいります。
以上、産業振興計画を推進する取り組みに関しましては、当初予算でおよそ85億円を計上しておりましたが、今回、地産外商を推進するための体制整備や食品加工の推進策、「土佐・龍馬であい博」をはじめとした観光八策、二次交通の整備促進などに、新たに31億円を追加し、取り組みを加速化させることといたしました。
県経済の抜本的な体質強化に向け、スピード感を持って、産業振興計画の着実な実行に努めてまいります。
2 福祉・健康
県民の皆様の暮らしを守るためには、子どもやお年寄り、障害者の方々などに対する各種の福祉サービスが確保される必要がありますが、人口減少や少子高齢化が先行する本県の中山間地域では、多様なニーズがありながらも、個別サービスごとの利用者が少ないため、全国一律の制度の中ではこの個別サービスを提供することが困難な状況にあります。
このため、そうした本県の中山間地域の実情を踏まえ、育児や介護、自立支援などのサービスを提供し、子どもからお年寄りまでが年齢や障害の有無にとらわれず、一つの施設の中で触れ合うことのできる小規模多機能型の「あったかふれあいセンター」の設置を推進しております。
こうした取り組みを通じて、高齢の方や子どもたち、障害のある方などを地域全体で支える「高知型福祉」の仕組みをそれぞれの地域の中で作り上げていきたいと考えております。
今年度の当初予算では「ふるさと雇用再生特別基金」を活用し、10カ所の設置を計画し予算化しておりましたが、県内各地域で予想を上回る好評を得まして、これまでに24市町村から30カ所に上る申請をいただいております。地域福祉の推進はもとより、新たな雇用を確保する上でも重要な取り組みですので、このたび、関連予算の増額を提案いたしております。
既に事業の開始を決定されたところでは、新たな職員の雇用や研修、地域の方々への周知など、着々と準備が進んでいます。他の市町村でも、順次、事業実施に向けた手続きを進めておられますことから、県といたしましても市町村や関係団体、住民の皆様と連携して、新しい支え合いの仕組みづくりを進めてまいります。
他方、全国に先行して高齢化が進む本県では、介護にあたる人材の確保や、生活の場となる施設などの整備も大きな課題でございます。このため、国の経済危機対策の交付金を原資に、介護職員の処遇改善やグループホームなどの施設の緊急的な整備を進める基金を造成し、介護人材の安定的な確保と地域の介護基盤の強化に努めてまいります。
また、障害福祉の分野におきましても、専門的な人材の確保や雇用環境を改善することが課題となっておりますことから、障害者の自立を支援する基金の積み増しを行い、福祉・介護職員の処遇の改善を図ってまいります。
子どもを取り巻く社会的な問題が増加傾向にある中で、児童相談所においては、昨年度、職員を増員するとともに、虐待対応の実施手順の見直しなどの機能強化を図りました。さらに児童虐待への対応を強化するため、今年度から中央児童相談所に、新たに児童虐待対応チームを設置いたしました。初期対応はすべてこのチームで行うこととし、今まで以上に専門的かつ迅速な対応ができるようになったところでございます。
また、幡多児童相談所は、幡多地域の子どもの養育に関連した様々な相談に対応する重要な役割を担っておりますほか、療育福祉センターと連携し、聴覚障害や発達障害のある子どもたちへの支援を行っております。
聴覚障害のある子どもには、できるだけ早い段階から適切な支援や訓練を行うことが重要ですが、幡多児童相談所には防音設備や検査機器がないために、幡多地域の保護者の皆様には、頻繁に療育福祉センターまで来ていただいているのが現状です。
こうしたことから、幡多地域の皆様の負担を軽減させるとともに、療育福祉センターの専門的な支援機能を地域で十分に発揮できるようにするため、著しく老朽化している同相談所を防音設備などを備えた施設に建て替えることといたしましたので、今回、国の交付金を活用して実施設計のための経費を計上しております。
本県の重点施策の一つである子育て支援、少子化対策に関しましては、今回の国の経済対策で「安心こども基金」を積み増す措置が行われ、基金の対象となる事業もこれまでの保育所の整備などにとどまらず、地域の子育て力を育む取り組みや、ひとり親家庭、社会的養護への支援などにも拡充されました。
この基金を活用して、認定こども園への支援や母子家庭の経済的な自立に向けた支援、児童養護施設の改修や備品の整備、少子化に関する広報の充実など、子育て支援、少子化対策の一層の強化を図ってまいります。
次に、自殺対策についてご説明申し上げます。
本県では、平成10年以降、毎年200人以上の方が自ら命を絶たれるという、深刻な状況にありますことから、自殺対策を総合的に進めるために、本年4月に「自殺対策行動計画」を策定しますとともに、5月には県の精神保健福祉センター内に、自殺予防情報センターを開設いたしました。
6月に公表された人口動態統計によりますと、本県の平成20年の自殺者数は、この10年間で最も少ない201人となり、自殺死亡率の改善もみられたところですが、経済不況の影響が都市部よりも遅れて現れる本県の傾向を踏まえれば、自殺対策をさらに強化する必要があると考えております。
このため、国の経済対策による交付金を活用し、自殺対策を強化する基金を新たに造成することとし、普及啓発やボランティアなどの育成、さらには遺族の方や民間団体への支援などを積極的に進めてまいります。
次に、新型インフルエンザへの対応についてご説明申し上げます。
県では、WHO(世界保健機関)がフェーズ4を宣言した4月28日から、県内の保健所などに相談窓口を設置するとともに、感染地域からの帰国者に対する健康監視など、県民の皆様の不安解消と県内発生への備えに努めてまいりました。
5月16日には兵庫県で国内初の感染者が確認されたことから、高知県新型インフルエンザ危機管理本部を立ち上げました。これまで、県民生活や経済への影響を最小限に抑えつつ、感染拡大を防ぐとともに、基礎疾患を有する方などを守るといった対応方針を定め、全庁体制で対応を行ってきたところですが、こうした中、先月28日には、県内で初めて新型インフルエンザの感染者が確認され、後発の事例も確認されています。
今回の新型インフルエンザは感染力は強いものの、通常の季節性インフルエンザと類似する特徴を多く持っており、多くの感染者は軽症のまま回復している状況ではありますが、基礎疾患のある方などは重症化する可能性もあります。
このため県では、県民の皆様に正確な情報を迅速に提供するとともに、積極的疫学調査の確実な実施により、感染の拡大をできる限り抑制するよう、全力を挙げて取り組んでいます。
現在、WHOは、世界的大流行を意味するフェーズ6を宣言していますし、今後、季節性のインフルエンザの流行する秋以降に、新型インフルエンザの感染が拡大することが危惧されています。このため、今議会に、その対策に必要な装備品などを追加整備する補正予算を提案いたしております。
県の新型インフルエンザ行動計画や各マニュアルにつきましては、国の動向や本県での状況も見極めながら、適宜見直しを図り、各福祉保健所での相談体制の整備や感染の拡大防止対策、衛生研究所での検査体制の確保など、医療機関や市町村との協力の下、万全の対応を行ってまいります。
次に、高知医療センターの経営改善対策についてご説明申し上げます。
同センターは本県になくてはならない基幹病院であり、その経営改善は県政の重要課題でありますことから、本年1月、私と高知市長が高知医療ピーエフアイ株式会社、いわゆるSPCの親会社であるオリックス本社を訪問して、経営改善に向けての協力を要請いたしました。
以来、病院企業団とSPCの双方が、事業の根本に立ち返って協議を進めてまいりました。また、県といたしましても今年度から専任の理事職を配置して組織体制も整備するなど、高知市と共に医療センターの経営改善に向けて、これまで以上に重点的に取り組んできたところです。
先月になって、SPCからPFI事業の契約を終了する方向で企業団と協議を開始したいとの提案がありました。
提案された内容は、企業団が求める「公立病院改革ガイドライン」での平成23年度における経常収支の黒字化に向けた運営経費の削減は困難であり、SPCとしては、PFI事業の解消により、マネジメント料などの諸経費を削減することで、医療センターの経営改善に協力したいというものでした。
これまでにも企業団は、PFI事業でSPCに支払う諸経費を含めた運営の経費は、自治体が病院運営を行う場合より割高になっていると指摘をしており、PFI事業の解消は経営改善に資すると考えられますことから、県としても提案された方向で協議することを了承いたしました。
今後、契約の終了に向け、協議を進めることになりますが、県民の皆様の医療の確保のことを第一に考え、経営改善につなげていくことを基本に、企業団、県、高知市の三者が一丸となって、しっかりと協議をしてまいりたいと考えております。
また、医療センターの医療活動はこれまでも企業団が行っていますため、PFI事業が終了することは直接医療に影響を及ぼすものではないと考えておりますが、県民の皆様の命を守る本県の基幹病院としての重要な役割を引き続き果たしていくために、SPCが運営から離れた後の業務がスムーズに行えるよう、また早期の経営改善につながりますよう、万全を期してまいりたいと思います。
3 道路事業
次に、国の直轄道路事業における事業凍結についてご説明申し上げます。
3月31日、高知南国道路と地芳道路について、平成21年度の事業の一時凍結が発表されたところでありますが、この発表以来、地元の皆様をはじめ県内の関係者が一体となり、国に対して早期の凍結解除を求める要望活動や署名活動を行ってまいりました。
こうした動きの中、6月18日に、国において事業の再評価を行う「四国地方整備局事業評価監視委員会」が開催されました。この委員会においては、インターチェンジの構造変更などによるコスト縮減だけでなく、本県が強く要請してきた事前通行規制等による通行止め解消や「命の道」としての救急医療へのアクセス向上などの事業の役割、また残事業費の投資効率性の確認なども踏まえて再評価が行われ、高知南国道路と地芳道路の2路線とも「事業を継続することは妥当である」との結論が示されたところです。これを受けて、既に、国土交通省に対しましては、早期に両路線の工事が再開されるよう強く要望をいたしました。
今般の一連の動きを受けて、改めて、地方の道路の実情、「命の道」の重要性を全国にしっかりと訴えていかなくてはならないとの思いを強くしたところであります。
四国8の字ネットワークの整備促進につきましては、6月8日に四国地方整備局長と、さらに12日には国土交通大臣と面談し、整備が遅れている県内の現状を訴えてまいりました。特に、県東部と西南部の高速道路等の未整備区間である「ミッシングリンク」について、奈半利安田道路と北川道路の今年度の調査区間指定、東洋北川道路の調査促進と早期の整備区間指定、佐賀四万十間の環境アセスメント等の促進と早期事業化、窪川佐賀道路の未着手区間の早期の事業着手を強く要望してきたところです。
四国8の字ネットワークをはじめとする「命の道」は、着実に、そして早急に整備しなければなりません。引き続き、関係の皆様と連携して、遅れている本県の道路整備の促進に全力で取り組んでまいります。
次に、現在、全国知事会を中心に制度見直しの議論が行われております直轄事業負担金の問題についてご説明申し上げます。
本県には、最低限のインフラ整備すら未だ十分に整っていないという厳しい現状がありますので、地方として真に必要な負担は行いながらも、着実に事業を進めていくことが必要だと考えております。
その際、県民の皆様への説明責任をきちんと果たしていくことができますよう、現在、負担金のより詳細な情報開示を国に求めているところでございます。
また、地方が納得して負担をしていくことができるよう、事業の実施にあたって国と地方が協議する場を設けるなど、制度の見直しも必要と考えており、こうした考え方について、知事会などの場を通じて訴えてまいりたいと考えております。
4 教育改革
次に、教育分野の取り組みについてご説明申し上げます。
極めて厳しい現状にある本県の小中学生の学力・体力を向上させるため、今年度から、中学生だけでなく小学校4年生から6年生も対象とした算数・数学の単元テストを実施しており、また、重点的支援を行っている高知市の全中学校では、宿題プリントの実施と学習支援員によるサポートなどの具体的な取り組みをスタートしています。これらは、既に、対象となるすべての学校で実施されており、現在は、その質をより高め、子どもたちの基礎学力の定着に確実につながるよう取り組みを進めています。
また、放課後の対策では、小学生を対象とする放課後児童クラブ、放課後子ども教室が、今年度に入り17カ所増えて、県内の約7割の小学校区において合計216カ所で、また中学校でも放課後や夏休みなどに学習支援を行う放課後学習室が23校で開設される見込みとなるなど、地域での取り組みが進んでまいりました。
体力・運動能力の向上では、教員の指導力向上や地域のスポーツ人材の活用などのほか、子どもたちが全国的に知られたトップアスリートに接することで、スポーツへの関心を高め、夢を育む取り組みが進められています。これは、全国で初めて、県として日本サッカー協会から全面的な支援を得て実施しているものであり、その効果に期待をしております。
教育委員会では、このように施策が一段と具体化してきたことや体力づくりの強化の観点を盛り込むため、昨年度に策定した「学力向上・いじめ問題等対策計画」をこの5月に改訂いたしました。そして、その内容をすべての教職員が共有し、PDCAサイクルの徹底を図りながら、実効性のある取り組みを進めることで、着実に成果を出していくこととしています。
この「学力向上・いじめ問題等対策計画」は、中学校の学力問題や生徒指導上の諸課題など、本県の教育危機に緊急的に対応するため策定したものですが、少子高齢化の進行などが続く社会状況を踏まえるとともに、乳幼児期から生涯を見据えた教育の振興を図るため、より幅広い観点で捉えた「高知県教育振興基本計画」の策定が検討されており、この5月には、その中間取りまとめが行われました。
この計画では、具体的な取り組みとして、乳幼児教育の充実、放課後支援、生涯学習の推進などのソフト事業や、県立図書館や教科研究センターの整備などのハード事業について、その取り組みごとに達成すべき目標を掲げています。
また、計画を効果的に推進するため、教育版の「地域アクションプラン」を策定し、市町村と協働して教育施策を実施することとしています。
今後、議会でのご議論や県民の皆様からの幅広いご意見をいただきたいと考えております。
また、今回の国の補正予算を活用し、私立学校が行う授業料免除に対して支援するほか、県立学校の授業料につきましても、減免措置を拡充し、苦しい経済状況にある保護者の方々の負担を軽減することとしております。
さらに、国のスクールニューディール構想に基づく支援策を活用した校舎への太陽光発電設備の設置や校務用パソコンの更新、また質の高い授業の実践につなげる教科研究センターの整備など、教育環境の充実も図ることといたします。
今後とも、教育改革は県の重点施策として、積極的に推進してまいりたいと考えております。
高知工科大学は、本年4月に公立大学法人となり、新たなスタートを切ったところでございます。県は、大学の6年間の業務運営に関する中期目標を定め、大学に指示することになりますので、今議会にその案を提案いたしました。
この中には、県の施策の方向性を踏まえた産業振興や地域の再生につなげるための目標、県内の高校生及び社会人の進学機会の確保に関する目標などを盛り込んでいます。高知工科大学には、この中期目標を受けて、これまで以上に県との連携を強め、地域に貢献する大学として、その役割を果たしていただきたいと考えております。
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成21年度高知県一般会計補正予算など6件です。
このうち一般会計補正予算は、先ほど申し上げました地域活性化・経済危機対策臨時交付金を活用した単独事業や公共事業を中心に、381億円余りを計上しております。
条例議案は、国の交付金を活用して積み立てます高知県介護基盤緊急整備等臨時特例基金条例議案など11件であります。
その他の議案は、公立大学法人高知工科大学に係る中期目標の制定に関する議案など3件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。