公開日 2009年11月26日
更新日 2014年03月23日
平成21年2月県議会における知事の提案理由説明(平成21年2月23日)
(項目)
1 当面する県政の主要な課題について
1 実行元年
2 5つの基本政策に基づく県づくり
(1)経済の活性化
あったか高知雇用創出プラン
安心実現のための高知県緊急融資
産業振興計画の策定と3つの基本方針
(ア 地産地消の推進)
(イ 地産外商の推進)
(ウ 海外販路開拓への挑戦)
(エ 高付加価値化の推進)
(オ すそ野が広い観光産業の戦略的展開)
(カ 生産地の足腰の強化と担い手の育成)
(キ 中山間地域での産業づくり)
(ク 新産業の創出)
(ケ 地域アクションプラン)
(コ 推進体制)
(2)インフラの整備と有効利用
公共交通と物流の仕組みづくり
命の道の整備
(3)教育の充実と子育て支援
教育改革
学力向上対策
放課後改革
体力改革
少子化対策の総合的な推進
(4)地域の防犯、防災の基盤づくり
(5)日本一の健康長寿県づくり
高知型福祉の実現
健康づくり県民運動の展開
高齢者福祉対策
地域を支える医療の確保
高知医療センターの経営問題
高知医療センターの精神科病棟の整備
安芸地域での新たな統合病院の建設
(6)基本政策に横断的に関わる環境対策
3 来年度の組織改正について
4 県政改革について
2 提出議案の説明
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成21年2月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
1 当面する県政の主要な課題について
1 実行元年
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の重要な課題についてご説明申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
私は、県政運営の実質的な初年度となりました平成20年度を「足固めの年」と位置付け、県勢浮揚に向けた様々な仕込みと仕掛けを行ってまいりました。そして、来る平成21年度を、その熟成させた仕込みを存分に生かし、県民の皆様と共に力を合わせ、県勢浮揚に向けて具体的に行動する「実行元年」にしてまいりたいと考えております。
課題は山積しております。未曾有の経済危機の中、県民の皆様の生活を守るために、雇用対策を早急に進めていく必要がありますし、あわせて、「産業振興計画」を実行し、本県の経済体質の抜本的な強化を図っていかなければなりません。
さらに、学力、体力の低下といった教育危機への対応や、中山間地域が多いという本県の実情に即した「高知型福祉」の実現など、思い切った取り組みが求められております。
こうした大きな課題に迅速に対応するため、来年度予算につきましては、力強くアクセルを踏み込み、経済対策には攻めの姿勢を、そして、教育や福祉にはぬくもりを大切にした積極的な予算編成に努めてまいりました。その結果、来年度の予算は、平成11年度以来10年ぶりに前年度の予算規模を上回る4,186億円余りとなっております。
また、本県においては、産業振興から福祉のサービスまで、県民の皆様の生活を支える命の基盤である社会資本の整備が、他県と比べて著しく遅れております。このため、平成8年度以来13年ぶりに前年度を上回る普通建設事業費を予算計上し、社会資本整備を積極的に進めることとしております。
あわせて、来年度予算と一体的に編成しました平成20年度2月補正予算では、地域活性化・生活対策臨時交付金を活用して、これまで十分に取り組めなかった地域のきめ細かなインフラ整備をはじめ、文化施設や都市公園の整備、教育環境の充実など126億円余りの事業を計上し、これまで以上に県民サービスの確保と県経済への配慮を行ったところであります。
他方、県民の皆様が将来に希望の持てる県づくりを進めるためには、思い切った投資と併せて、ブレーキを的確に利かせ、将来にわたる安定的な財政運営を確保するよう努めなければなりません。
このため、歳出面では、職員数の削減や職員給与の抑制、さらには、各事業について、実効性の観点から徹底した精査を行うとともに、国の交付金を活用して将来見込まれる事業の前倒しなどに努めてまいりました。また、歳入面では、国の交付金の活用はもとより、臨時財政対策債を含む実質的な地方交付税の増額や県有財産の処分などによって財源を確保したところであります。
その結果、予算編成前に見込まれておりました財源不足額を145億円余り圧縮するとともに、臨時財政対策債を除く県債残高も減少させるなど、将来的な財政再建にも一定の進展があったと思っております。
予算編成にあたっては、景気の悪化によって県内企業の経営環境が厳しさを増すと予想されるため、県税収入が90億円を超える大幅な減収になると見込まれました。
他方、これまで東京事務所を中心に行ってまいりました国への提案が実を結び、国の二次補正予算において、地域活性化・生活対策臨時交付金や雇用創出のための交付金、さらに、地方交付税の地域雇用創出推進費が有効求人倍率の低い地域に手厚く配分されることとなりました。
地域雇用創出推進費による実質的な地方交付税の大幅な増加と、新たに交付される地方法人特別譲与税によりまして、県税の減収を補う以上の一般財源の総額が確保できたところであります。
これらを受けまして、積極型でありながらも、財政再建を押し進める形で予算を編成できたと思っております。
あわせて、県庁の組織につきましても、産業振興推進部の新設をはじめ、「実行元年」にふさわしい柔軟で機動的な「攻め」の組織づくりに努めました。
財政調整的な基金を取り崩すなど、依然として財源不足の状況にはありますが、危機的な経済状況であるからこそ、前向きな予算と攻めの組織で経済体質の抜本的な強化に向けて取り組み、県勢の浮揚と中期的な財政収支の均衡に向けて取り組んでまいります。
2 5つの基本政策に基づく県づくり続きまして、来年度の予算や体制などにつきまして、五つの基本政策に沿ってご説明申し上げます。
(1)経済の活性化
基本政策の第一は、「経済の活性化」であります。
経済の活性化につきましては、景気が急速に悪化する中で緊急的に対応すべき雇用対策や中小企業の資金繰り対策とともに、「産業振興計画」に基づく本県経済の抜本的な体質強化に取り組むこととしております。
あったか高知雇用創出プラン
まず、緊急に進めるべき対策についてご説明申し上げます。
全国的に経済状況や雇用情勢が悪化し、派遣労働者の雇い止めや新入社員の内定取り消しなどの深刻な問題が生じております。本県におきましても、もともと厳しい雇用情勢の中でさらなる悪化が懸念されており、まずは、働く場の確保を急がなければなりません。
こうした中、緊急かつ短期的な雇用の創出と地域の創意工夫を生かした継続的な雇用の創出を図るための総額81億円の交付金が、国から交付されることとなりました。
これを受けて、県では、これらの交付金を効果的に活用し、今後3年間で3千人の雇用を目標とする「あったか高知・雇用創出プラン」に取り組むことといたしました。このプランを進めるにあたっては、新しい分野や人手不足の分野への雇用を積極的に進めることで、本県経済の体質強化にもつなげてまいりたいと考えております。
このプランに沿って、高齢者や子ども、障害のある方など誰もが集える「あったかふれあいセンター」の設置や、中学校での放課後の学習の場づくりを進めてまいります。さらに、本県の強みである第一次産業の担い手を確保するため、移住を希望される方々への受け皿づくりや、建設業から農林業、福祉の分野への参入支援にも取り組むことにしております。
また、雇用のミスマッチの解消などを図るため、幡多地域にジョブカフェこうちのサテライト施設を設置するとともに、高知労働局と連携して、来月2日に「地域共同就職支援センター」を高知市内に開設し、中高年の方々や地域の求職者の就職を支援してまいります。
こうした総合的な雇用対策を早急に進めまして、3千人の雇用と地域経済の活性化を実現させてまいりたいと考えております。
安心実現のための高知県緊急融資
また、県内中小企業者の資金繰りを支援し、雇用の維持と経営の安定を図ることにも力を注がなくてはなりません。このため、昨年、国の緊急保証制度を活用して、低い金利と保証料で利用できる「安心実現のための高知県緊急融資」を創設したところであります。
県単独の措置として、保証料を大幅に引き下げたことや借換えなどにも柔軟な対応ができるようにしたことから、すでに数多くの中小企業の方々に利用いただき、昨年の県内企業の倒産件数が一昨年と比べて減少するなど、県内企業の倒産防止に寄与しているとの評価もいただいております。
こうした見込みを上回る多くの利用によりまして、年度末までの融資枠の不足が見込まれることから、この1月に県の制度融資の枠を300億円増額するための補正予算を専決処分いたしました。
今後も引き続き厳しい経営環境が見込まれており、来年度予算では、県の制度融資枠を例年の3倍に近い775億円に拡大いたしまして、中小企業者の資金需要に積極的に応えてまいりたいと考えております。
産業振興計画の策定と3つの基本方針
次に、本県経済体質の抜本的な強化を図るための「産業振興計画」についてご説明申し上げます。
私は、知事を志して以来、下降傾向にある県勢を何とかして上昇傾向に転じなければならない、そのためには、本県経済の抜本的な構造改革に正面から取り組まなければならないと考え続けてまいりました。
そして、昨年来、検討委員会及び専門部会の委員の皆様をはじめ、多くの方々のご指導の下、県職員の総力を挙げて、本県の経済の実態を踏まえた経済活性化のためのトータルプラン「産業振興計画」の策定を進め、先日、計画の最終取りまとめの案を検討委員会にお示しし、ご了承いただきました。
計画の策定にあたりましては、検討委員会及び専門部会の委員の皆様や、各産業分野の実践者の方々、県内全市町村長をはじめとする市町村の方々など、数多くの皆様の多大なご尽力を賜り、その参画を得て徹底した議論をし、そしてまた、たくさんのお知恵もいただいたところであります。
「産業振興計画」は、総論と産業成長戦略、地域アクションプランの3部で構成されております。
総論では、本県の弱みを克服し、機会を生かし、「食」「自然と歴史」「人」という強みを生かしきる視点で、改革のため本県が進むべき三つの基本方向、すなわち、「足下を固め、活力ある県外市場に打って出る」「産業間連携の強化」、そして、「足腰を強め新分野へ挑戦」を定めております。
産業成長戦略は、この三つの基本方向を具体化する戦略になります。真に県民の所得の向上につなげるため、本県の実体経済の状況を踏まえ、生産から加工、流通、販売に至る各段階における本質的な課題を明らかにした上で、販売の強化と産業間の連携を大きく意識した総合戦略として取りまとめております。
地域アクションプランは、産業成長戦略に沿って地域が目指す産業の姿を示すとともに、具体的な取り組みとして、産業成長戦略を地域で具現化した事業群と地域発の地域の知恵を生かした事業群で構成されております。
本計画は、かつてない規模となる1,500人を超える県民の皆様の参加と、100件を超えるパブリックコメントを踏まえて練り上げた、真に官民協働型の計画であります。
最終取りまとめ案では、昨年12月県議会でお示ししました中間取りまとめ以降、今月17日に検討委員会でご了承いただくまでの間、特に、次の点について検討を深め、内容を進化させてまいりました。
第一に、県内7ブロックの220を超える取り組みを地域アクションプランとして取りまとめたことであります。第二に、誰が、いつ、何をするのかということを明確にした上で、総額10億円となる「産業振興推進総合補助金」をはじめ計画に掲げた施策について予算措置を講じたことでございます。第三に、地産外商戦略と第一次産業の担い手確保、さらに、輸出の促進や技術人材の育成、観光など、その後の議論を踏まえた事業の追加と内容の大幅な強化であります。
最終取りまとめ案における、改革のための三つの基本方向に則した産業成長戦略についてご説明申し上げます。
(ア 地産地消の推進)
まず、改革のための第一の基本方向は、「足下を固め、活力ある県外市場に打って出る」ことであります。
「地産地消の徹底」と「地産外商の推進」、「海外販路開拓への挑戦」の三つを取り組みの柱とし、新たに創設する総合補助金などを活用し、商品の企画から販売に至るまでの一貫した支援を行ってまいります。
三つの取り組みの柱に共通して大切なことは、「売れるものづくり」を進めることであります。
「売れるものづくり」を進めるためには、まず、限られた地域のみで流通している産品やこれまで活用されていなかった地域資源をあらためて掘り起こすことが必要です。このため、生産者や加工業者の方々などによります地域資源活用共有会議を設置し、地域資源や地場産品の情報を発掘し、商品化に向けた戦略づくりを行ってまいります。
また、商品づくり、加工、磨き上げという過程を県内で行うことによって、県内の所得向上につなげることが重要です。付加価値を生み出す過程を県内で行う仕組み、すなわち、「地産地消でものづくり」を進めていくために、製造業と加工業者とのマッチングや必要な施設の整備を支援してまいります。
さらに、地域資源の商品化にあたりましては、消費者のニーズに合ったマーケットインのコンセプトに基づく商品づくりが大切になります。品質の向上やパッケージ、ネーミングなどの磨き上げのため、産業振興推進アドバイザーを派遣するとともに、アンテナショップ、eコマースなどを活用したテストマーケティングの場を提供し、付加価値が高い、消費者に魅力的な商品づくりを進めてまいります。
また、地産地消を一層推進するためには、県内での販路開拓が必要です。このため、地域の直販所の販売・流通体制の強化に取り組んでまいります。
さらに、大消費地である高知市と生産者とのつながりを強化するため、高知市へのアンテナショップの設置を支援するとともに、「おいしい風土こうちサポーター」の協力を得て、量販店などの売り場の確保を進めてまいりたいと考えております。
(イ 地産外商の推進)
県内市場が人口減少などにより縮小し続けていることを踏まえれば、本県の持つ素材の強みを生かして、活力のある県外の市場を見据えて地産外商を展開していく必要があります。
地産外商の推進には、県外で売れる魅力的なものづくりと併せて、首都圏など巨大マーケットへの販路拡大が大きなポイントになってまいります。
県外向けの販売促進ツールとして、外食・中食業者などへのセールス機能とものづくりのテストマーケティング機能などを持つ首都圏のアンテナショップの設置や、高知の旬の情報を発信するポータルサイトの構築を進めてまいります。さらに、県外の見本市や商談会への出展機会の拡充を図り、販売力の強化につなげてまいりたいと考えております。
また、地産外商を戦略的に展開するため、この1月に各産業分野の方々や有識者の方々などによる「地産外商推進協議会」を設置いたしました。今後、同協議会の助言もいただきながら、「産業振興計画」の地産外商関連施策に基づき、この地産外商を担う新たな官民協働型の組織の設置や首都圏のアンテナショップの具体的な運営方法など、実践的手法の詰めを一層深めてまいります。
なお、新たな官民協働型の組織につきましては、協議会でのご意見も踏まえ、来年度のできるだけ早い時期に、その内容をお示ししたいと考えております。
(ウ 海外販路開拓への挑戦)
全国的に人口の減少が進む中、本県の将来を見据えますと、国内だけではなく海外も視野に入れた地産外商に取り組む必要があります。今後、これまで以上に輸出の促進に力を入れてまいりたいと考えております。
海外への販路の開拓につきましては、これまで海外事務所が中心となって主に現地で個別の企業の相談に応じる形で進めてきましたが、他方で、県内で輸出をコーディネートする仕組みが十分ではなかったとの反省点があります。このため、来年度から新たに、県内に分野別・国別のコーディネーターを配置し、県内企業の輸出ニーズにさらにきめ細かく対応するとともに、県内企業と共同して分野別・国別の輸出戦略づくりを進め、企業の要望に則した海外でのビジネスマッチングにつなげてまいりたいと考えております。
あわせて、商社の優れたネットワーク力を活用したセールス活動を進め、県内企業の輸出拡大をできる限り短期間で実現してまいります。
(エ 高付加価値化の推進)
改革のための第二の方向は「産業間連携の強化」であります。
本県は、強みのある第一次産業から他の産業への経済効果の波及が極めて脆弱であると考えられます。県経済全体の底上げを図るためには、この第一次産業の強みを他の産業へ波及させる分野を伸ばしていく必要があります。
また、高い物流コストや輸送時間、ロットの確保などの課題を克服し、他の地域との競争に打ち勝つためには、高付加価値化を進めていかなければなりません。
こうしたことから、第一次産業の強みを生かした食品加工の分野の育成はもとより、他の産業分野におきましても、高付加価値化を追求していくことに重きを置かなければならないと考えております。このため、高付加価値化に向けた原材料の調達からの一貫した相談支援体制を構築してまいります。
また、工業技術センターを中心に、企業や地域の方々に対する研修を充実し、担い手となる技術人材を育成するとともに、外部の専門家を活用して、企業や生産者が抱える課題にきめ細かく対応するなど、商品開発を技術面から支援してまいりたいと考えております。
(オ すそ野が広い観光産業の戦略的展開)
観光はすそ野が広く、多くの産業に波及効果を与える産業間連携の要であります。滞在型・体験型観光を戦略的に展開して、400万人観光の実現と1千億円産業への飛躍を目指してまいります。
具体的な戦略といたしましては、まず、「花・人・土佐であい博」で芽吹いた数多くの地域イベントの磨き上げを支援するとともに、地域の特色ある土産物づくりを進め、一人あたりの観光消費額の拡大を図ってまいります。
また、日本一の日照時間など光・水・森の恵みを最大限に活用したグリーンツーリズム、ブルーツーリズムの観光商品化をはじめ、新たな観光資源となる四万十・足摺エリア観光圏での活動や世界ジオパークの認証に向けた取り組みを支援してまいります。
二次交通の確保につきましては、龍馬ゆかりの地などを加えた周遊バスの運行体系の強化と新たな定期観光バスやタクシー業界と連携した観光ガイドタクシーの推進などに取り組むこととしております。
さらに、400万人観光の実現のためには、首都圏など巨大な市場をターゲットにして誘客を進めていくことが必要であります。大河ドラマ「龍馬伝」の放送は、県外からの誘客数を飛躍的に伸ばす大きなチャンスであり、放送に合わせて「土佐・龍馬であい博」を開催し、ドラマの効果を県内全域に波及させ、本県観光のビッグバンにつなげてまいりたいと考えております。
「土佐・龍馬であい博」につきましては、一過性に終わらせないこと、観光ツアーを呼べる観光商品づくりを進めること、そして、県内全域をフィールドにすることの3つのコンセプトに基づいて展開することにしております。
このため、公共交通の結節点にあたり、県東部と西部の観光地への起点という優れた立地条件を持ったJR高知駅前の県有地に、県外からの誘客の核となるパビリオンを設置するとともに、県東部や西部などにサテライト会場を設けまして、ドラマの効果を県内全域に広げてまいります。
パビリオンにつきましては、ドラマのライブ感あふれるテーマ館と、県内各地で開催するイベントや地場産品などのコンシェルジュ機能を持った情報発信館を整備してまいりたいと考えております。この情報発信館では、県内各地にもう一歩足を伸ばしていただくため、高知に来なければわからない観光スポットや旬の食べ物など、本県の魅力をきめ細かく発信してまいります。
さらに、ドラマの終了後にも活用することによって、高知ファンの増加と本県のイメージアップ、そして、リピーターとしての来県につなげ、本県の観光振興に向けた新たなステージを築いてまいりたいと考えております。
(カ 生産地の足腰の強化と担い手の育成)
改革のための第三の方向は、「足腰を強め新分野へ挑戦」であります。
本県の強みである第一次産業は、人口の減少や高齢化の進展などによって就業者の減少が続いており、このままでは担い手不足により足下から衰退し、強みが強みでなくなるのではないかと懸念しております。このため、早急に生産地の足腰の強化や担い手の育成に取り組む必要があります。
生産地の足腰の強化につきましては、農業分野では、まとまりによる高いレベルの産地形成に向けて、学びあい、教えあう仕組みづくりを推進するとともに、全県、全品目にIPM技術などの環境保全型農業技術を普及してまいります。あわせて、中山間地域において収益性の高い品目の産地化を図る「こうち型集落営農」を進め、農業者の所得の向上を図ってまいります。
また、林業分野では、「森の工場」による効率的な生産システムの構築と販売力の強化に取り組むとともに、水産業分野では、高知県漁協の流通や販売を支援し、「土佐の魚」の付加価値の向上につなげてまいります。
担い手の確保といたしましては、新たに移住コンシェルジュ制度を設け、県外から移住を希望される方の受け入れをワンストップで進めてまいりたいと考えております。あわせて、就業のための研修、住居、生産手段などを一つのパッケージとして展開することで、第一次産業の担い手の確保を強力に進めてまいります。
特に、農業の担い手の確保につきましては、農業を体験していただくための滞在型市民農園クラインガルテンの整備を進めるとともに、研修手当の引き上げや研修生を受け入れる農家を支援することにしております。さらに、JA出資型の法人の設立をサポートし、新たな就農の形態を創出してまいります。
また、就農する際の初期投資を軽減するため、レンタルハウスの制度を大幅に拡充するとともに、漁業への新規就業者に対しましても、漁船をリースで利用する仕組みを新たに構築してまいりたいと考えております。
(キ 中山間地域での産業づくり)
新分野への挑戦といたしましては、まず、地域の資源や特色のある取り組みを生かしながら、多角的・複合的なビジネスへと展開する「中山間地域での産業づくり」に取り組んでまいります。
産業づくりに向けて一定の段階に達した事業につきましては、今回、地域アクションプランとして取りまとめております。今後、さらなる新しい地域アクションプランの創出に向けまして、地域の実情やプランの成長段階に応じたきめ細かな支援をしてまいりたいと考えております。
(ク 新産業の創出)
新しい分野に挑戦するためには、新しい産業の創出も必要であります。
食品加工や健康福祉、環境など成長が見込まれる分野ごとに研究会を設置し、素材生産者とのマッチングやマーケット調査などを進め、事業化に向けたソフト・ハード両面にわたる総合的な支援を行ってまいります。
特に、福祉分野につきましては、中山間地域が多い本県独自の「高知型福祉」を進展させ、雇用の創出と中山間地域での新たなビジネスにつなげてまいりたいと考えております。さらに、まんがなどのコンテンツビジネスを支援し、産業の幅の拡大に努めてまいります。
(ケ 地域アクションプラン)
地域アクションプランにつきましては、市町村ごとにワーキンググループを設け、住民の皆様の声やニーズをきめ細かく反映するとともに、県内7つのブロックの策定委員会においてご意見を賜り、220を超える具体的な取り組みを盛り込んだ行動計画としてとりまとめております。
これらの取り組みは、地域からの提案を生かしながら、産業成長戦略で示された同じ方向感の下に練り上げられたものです。そして、同じ方向感を持ちながらも決して均一ではない、それぞれが地域地域の個性あふれる取り組みとなっております。
(コ 推進体制)
今後、これらの取り組みに対しまして、事業化への成熟度に応じて、総合補助金などを活用し、生産から販売に至る各段階を重点的に支援してまいります。あわせて、専門的なアドバイザーを派遣し、商品の企画や販売戦略はもとより、事業の継続の可能性やコンプライアンスについても助言してまいりたいと考えております。
その際には、県内各ブロックに「産業振興推進地域本部」を設け、新たに配置する「地域産業振興監」の下、出先機関や地域支援企画員などが連携して取り組む体制を構築し、個別のプランごとに計画づくりから実行までをワンストップで支援することにしております。
これらの支援を通じて、地域アクションプランが地域の産業として育っていく中で、地域に産業の集積・蓄積が進み、さらには、次のステージとして、それぞれの地域の新たな基幹産業へと成長するよう取り組んでまいりたいと考えております。こうした取り組みによって、各地域経済の抜本的な体質強化につなげていきたいと考えているところであります。
以上のような三つの改革の基本方向に則した産業成長戦略を、迅速かつ重点的に実行してまいりますために、来年度予算において84億6千万円余りの予算を計上したところであります。
あわせて、来年度の組織改正では、部局の枠を超えてこの計画を強力に推進するため、私自身を本部長とする「産業振興推進本部」を設け、その強力なエンジンとして、本県経済の実態に合った産業振興全体をコーディネートする「産業振興推進部」を設置しまして、県庁が一丸となって計画を着実に実行してまいります。
「産業振興計画」につきましては、今議会で十分にご説明申し上げ、ご議論やご意見を賜った上で最終のとりまとめとし、3月下旬には、県民の皆様にお示ししたいと考えております。
もとより、計画は作って終わりではありません。計画を着実に実行していくことが何よりも重要であり、今がまさにスタートの時だと思っております。
今後、計画の実行にあたっては、私を含め県庁自身が誰よりも汗をかいてまいりますが、経済活動は民間の皆様が主役であり、官民協働型で実行してこそ、県経済の体質の抜本的な強化につながるものと確信しております。
民間の皆様には、県と手を携え、県勢の浮揚に向けた県民運動として共に取り組んでいただきたいと思っております。県民の皆様並びに議員の皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
(2)インフラの整備と有効利用
公共交通と物流の仕組みづくり
続きまして、基本政策の第二「インフラの整備と有効活用」についてご説明申し上げます。
交通・運輸体系を構築していくためには、今後のハードのインフラ整備と併せて、既存のインフラ体系の中で、いかに県民の皆様のニーズにマッチした交通や物流の仕組みづくりを進めていくかというソフト面の対応も重要となってまいります。
高齢化が進展する中で、特に中山間地域では、生活を支える公共交通の必要性がますます高まっており、将来にわたる地域の公共交通の確保が大きな課題となっております。
また、航空機の路線も全国的な見直しが急激に進められております。滞在型・体験型観光の推進によって利用者の増加を目指すことはもちろん、こうした航空機などにより来県する観光客の利便性の向上を図るため、二次交通の整備に早急に取り組まなければなりません。
さらに、「産業振興計画」の実行をしっかりと支えるためには、物流の効率化・充実に向けた戦略をしっかりと組み立てていく必要があります。
このような様々な課題がある中、他方で、地域における公共交通は、利用者の減少が路線の見直しと利便性の低下を招き、さらに利用者が減少するといった構造的な問題を抱えております。これらを踏まえれば、政策的な取り組みの必要性が増していると認識しております。
これらの交通や物流の課題に真正面から取り組むため、交通運輸政策を統括する専任の理事職を設けますとともに、陸、海、空の交通と物流の総合的な戦略づくりを行う組織を設置することといたしました。
新たな組織では、鉄道、路線バス、コミュニティバスなどの公共交通の連携や、通院、通学、買い物といった日常の移動ニーズへの対応など、地域の公共交通の在り方について検討を進めてまいりたいと考えております。あわせて、公共交通の重要性などの広報活動も戦略的に進めてまいります。
二次交通につきましては、「おもてなし」をキーワードにして、観光客の要望にきめ細かく対応するための様々な周遊コースの設定やタクシーの充実に取り組むこととしております。
また、総合的な物流戦略につきましては、「産業振興計画」をしっかりと底支えするため、既存の物流を支援し、充実させるための仕組みづくりを進めてまいりたいと考えております。まずは、各分野に潜在する物流ニーズをしっかりと調査した上で、事業者のネットワーク化や新たな配送システムの構築などについて、できるだけ速やかに検討してまいります。
命の道の整備
数多くの県民の皆様にご参加いただき、県内すべての市町村で開催いたしました「対話と実行」座談会では、道路に関するご要望を数多く賜り、あらためて県民の皆様の道路に対する関心の高さを実感いたしました。
来年度の国の予算案では、補助事業と交付金事業を合わせた「地方枠」は本年度並みの予算となっておりますが、他方、高規格幹線道路などを整備する国の直轄事業が本年度に比べ1割以上も減少しており、遅れている「四国8の字ネットワーク」の整備に大きな影響を与えるのではないかと危惧しております。
このため、四国4県の知事などの参加による「四国8の字・車座談議」を本県で開催し、直轄事業の予算の確保などについて決議を行い、今月4日に私が直接国に要望してまいりました。地方の道路整備を着実に進めていただきたいという、四国の思いが伝わったのではないかと思っております。
今後とも、地方の道路整備の必要性を定量的に示しながら、県民の皆様の命を守るために最低限必要な道路の整備さえできていない地域があるということを、国や全国の皆様に訴えてまいりたいと考えております。
(3)教育の充実と子育て支援
次に、基本政策の第三「教育の充実と子育て支援」についてご説明申し上げます。
教育改革
誠に残念ながら、本県の教育は、中学校の学力が全国最低の水準に、さらに、体力は小中学校ともに全国最低の水準にあります。特に、中学校の学力につきましては、一定の水準を保障しなければならない義務教育において、看過できない危機的な状況となっております。
この厳しい現実を教育委員会と共に真摯に受け止め、抜本的な改善に向けて緊急かつ全力で取り組む決意であります。
学力向上対策
まず、学力の向上についてご説明申し上げます。
平成20年度は「三つの仕込み」を行いました。一つ目は、学力向上や不登校、暴力行為などに緊急的に対応するため、昨年7月に「学力向上・いじめ問題等対策計画」を策定したことであります。この計画では、平成20年度からの4年間で学力を全国水準にするなどの目標を掲げたところであり、その達成に向けて教育委員会と共に全力を挙げて取り組んでおります。
二つ目は、中学生が主体的に学習し、自らの努力によって目指す高校に入学することができるよう、県立高等学校の入学者選抜制度の改正と通学区域の見直しを行ったことであります。
そして、三つ目は、学力などに大きな課題を抱えている高知市との関係を抜本的に見直し、新たな連携と協働を進めることにしたことであります。
来年度は、計画の目標達成に向けて、具体的な成果を出すための正念場を迎えます。このため、これらの三つの仕込みをテコに、現実に、「授業を変える」、「放課後を変える」取り組みを全力で進めてまいります。
まず、「授業を変える」取り組みについては、これまでの県内全域を対象とした学校改善プランの実施やそれを支える単元テストの実施などに加えて、来年度はさらに、高知市への緊急支援を実施します。
本県の中学生の学力につきましては、全国学力・学習状況調査において、平成19年度、20年度と2年続けて全国水準を大きく下回る全国46位となっております。とりわけ高知市につきましては、学力の問題、生徒指導の問題など極めて厳しい状況となっております。
家庭で学校の宿題を全くしていない中学生の割合は、全国平均の5.7パーセントに対して、県全体の平均は全国平均の2倍近い9.4パーセント、高知市は3倍近い15.7パーセントであります。すなわち、高知市の中学校には、予習や復習などを行う習慣が身に付いていない生徒が非常に多いということであります。
県全体の学力を全国水準並みに引き上げますためには、県内公立中学生の37パーセントを占め、学力が極めて低い水準にある高知市での取り組みが極めて重要であり、早急に強力な対策を講じていかなければなりません。
このため、高知市が行う中学生の学習習慣の確立に向けた総合的な取り組みに対して、異例とも言える重点的な支援を行うことといたしました。
まず、予習、授業、復習を全ての中学校で徹底するための事業に対して、思い切った財政的支援をしてまいります。
また、人的な支援といたしまして、まず、各学校の学力向上への組織的な取り組みを支援するために、2名の学力向上スーパーバイザーを高知市教育委員会に配置することにしております。そして、各学校には、授業中から放課後の補充学習まで終日生徒に関わりながら学習指導を行う学力向上補助員と、午後の授業から放課後までを担う放課後学習支援員、さらに、宿題の点検やテストの採点などを担当する学力向上サポーター、不登校などの生徒に対する学習支援を行う不登校等学習支援員をそれぞれ配置するなど、生徒のおかれた状況や学力の実態に応じてきめ細かな、生徒に寄り添った対応をしていくために、総勢90名を高知市に配置することとしております。
こうした高知市の授業中から放課後までの一貫した取り組みを県が全面的に支援することによりまして、高知市の学力向上に向けた動きをより確かなものとし、高知市の中学生の学力向上、ひいては、県全体の学力向上につなげてまいりたいと考えております。
放課後改革
次に、「放課後を変える」取り組みとしては、子どもたちの放課後の学び場を県内全域に設置することに取り組んでまいります。
放課後の学び場につきましては、小学校での設置をさらに拡大するとともに、新たに、中学校に「放課後学習室」の設置を進めてまいります。
来年度は、特に、学び場における学習活動の質の向上を図るため、図書や教材の整備、学習を指導する講師の配置などを重点的に支援し、学び場の環境づくりを進めることにしております。あわせて、学習活動を行う講師の発掘や登録を行う人材バンクを設け、人材の確保に取り組んでまいります。
こうした取り組みを通じまして、放課後の学習活動の定着が授業も含めた学習サイクルの定着につながり、学力向上はもとより、授業が理解できないことによる不登校や暴力行為の減少にもつながるものと考えております。
また、不登校やいじめ、暴力行為は、中学1年生になってから急増してまいります。学習と生活のガイダンスや集団合宿などを行うことで、小学校から中学校に円滑につなぎ、子どもたちが安心して、落ち着いて学校生活が送れるよう心に寄り添う取り組みを進めてまいります。
来年度は、これらの取り組みを着実に実行して、具体的な成果を出すことで、本県の将来を担う子どもたち一人ひとりの成長を保障してまいります。
体力改革
昨年行われました「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」の結果が先月中旬に公表されました。本県の児童生徒の体力は全国最低の水準にあるという極めて厳しい残念な結果となっております。
児童生徒の健全育成には、知・徳・体のバランスが大切であり、特に体力は、人間の活動の源として、意欲や気力、根気といった精神面の充実にも大きく関わります。本県の将来を担う児童生徒の体力づくりに早急に取り組む必要があります。
このため、教育委員会において、調査結果の詳細な分析を進め、体力・運動能力を全国水準まで引き上げることを目標とした改善プランを今年度中に策定することにしております。さらに、体育指導のあり方について検討を進め、体力向上に向けた授業の指針を作成するなど学校現場での取り組みを支援してまいりたいと考えております。
少子化対策の総合的な推進
少子化対策につきましては、県民の皆様が安心して子どもを生み、健やかに育てることができるよう、県議会の「少子化対策・子育て支援特別委員会」のご提言も踏まえ、実効性のある取り組みを総合的に進めてまいりたいと考えております。
来年度は、子育てをする上で経済的な負担の大きい多子世帯を応援するため、新たに、市町村が行う第3子以降で3歳未満児の保育料の軽減や無料化を支援することにしております。あわせて、乳幼児の医療費につきましても、第3子以降について就学前まで原則無料としてまいります。
また、少子化の大きな要因の一つである未婚化や晩婚化への対策といたしまして、官民が協働して独身の方の出会いを応援する仕組みづくりなどを進めることにしております。来年度は新たに少子対策課を設け、少子化対策の実効性を高め、かつ、広く県民運動として定着するよう取り組んでまいります。
(4)地域の防犯、防災の基盤づくり
次に、基本政策の第四「地域の防犯、防災の基盤づくり」についてご説明申し上げます。
今世紀前半にも発生が懸念される南海地震に備えるため、先般、県が進めるべき対策や目標などを定めた今後6年間の行動計画を策定いたしました。
計画では、平成26年度末までにすべての地域に自主防災組織を立ち上げることや、災害時に特別な援護が必要な方を支援するネットワークづくりを進めるなど、県民の皆様の自助・共助の取り組みを積極的に支援することにしております。
また、津波からの避難路や避難場所の確保と学校や木造住宅の耐震化などのハード対策はもとより、県外からの応援や医療活動などを受け入れるための計画づくりなどのソフト対策にも重点的に取り組んでまいります。
行動計画の初年度にふさわしく、来年度予算では、公立小中学校や県立学校、木造住宅の耐震化に必要な予算を大幅に拡充するとともに、本庁舎や県民文化ホールなどの耐震補強工事にも着手することといたしました。
今後、市町村や関係機関と計画の目標を共有し、お互いが連携・協働した取り組みを進め、県民の皆様の安全・安心の確保につなげてまいります。
また、南海地震が発生した場合に、県庁の全ての職員が応急対策活動の全体像や基本的な事項をしっかりと理解し、災害に迅速かつ的確に対応できるよう、現在、応急対策活動計画の策定を進めております。
来年度中には、各部局が策定する活動マニュアルと併せて計画を取りまとめ、県庁の実践的な災害対応力の向上に努めてまいります。
(5)日本一の健康長寿県づくり
五つの基本政策の最後は、「日本一の健康長寿県づくり」であります。
高知型福祉の実現
中山間地域では、人口の減少や高齢化の進展によりまして、これまで地域が担ってきた支え合いの力も弱まり始めております。こうした中、サービスの利用者が少ないため民間事業所の参入が難しい地域も多く、住み慣れた地域でいつまでも安心して暮らしていくための福祉サービスをいかに確保していくかが大きな課題となっております。
これらの課題を解決するためには、行政が中心となって担うフォーマルなサービスと地域住民による支え合い活動などのインフォーマルなサービスを地域の中で一体化させること、すなわち、これまでの福祉という枠や概念を超えて、住民の方にも参加いただきながら、本県の実情に則した新しい福祉の形となる「高知型福祉」を地域地域で作り上げていくことが極めて重要になります。
このため、国の「ふるさと雇用再生特別交付金」を活用して、来年度から、子どもから高齢者まで年齢や障害にとらわれず誰もが集い、活動し、子育てや生活支援、介護などのサービスを一体的に提供する「あったかふれあいセンター」の設置を進めることといたしました。
高齢者の方々は子どもたちとのふれあいを通じてにぎわいを感じ、また、子どもたちは高齢者の方々から経験に基づく様々な知恵を授かる、「あったかふれあいセンター」がこのようなぬくもりに満ちあふれた空間となりますことを期待して、市町村や関係団体と連携して設置を進めてまいります。
健康づくり県民運動の展開
県民の皆様の健康づくりにつきましては、「よさこい健康プラン21」に基づき、生活習慣病予防対策に重点を置いて、特定健診・保健指導の円滑な実施や、たばこ対策、運動と食育の推進などを進めております。
来年度は、地域ごとに作成したウォーキングマップを活用した健康ウォーキング大会や食育イベントの開催など、地域における健康づくり活動をさらに支援してまいります。
また、低い水準にある特定健診の受診率の向上を目指して、実効性のある普及啓発への取り組みや地域の健康づくり団体による受診の声かけ運動を進めることにしております。あわせて、地域の健康づくり活動を紹介する情報誌を作成するなど、県民の皆様の健康への意識を高め、健康づくりの県民運動につなげてまいりたいと考えております。
高齢者福祉対策
現在、来年度から3年間の「高齢者保健福祉計画及び第4期介護保険事業支援計画」を策定しております。
この計画に基づきまして、増加が見込まれる認知症高齢者とその家族の方々を支援するために様々な相談に対応するコールセンターの設置や、介護サービスの質の向上に向けた人材の育成と確保に取り組むことにしております。
また、できる限り自宅で暮らしたいという高齢者の思いに応えるため、在宅復帰に向けた支援や医療と介護のネットワークづくりなど、高齢者を地域で支える具体的な仕組みづくりを着実に進めてまいります。
地域を支える医療の確保
また、地域の医療を確保するため、産科医などへの分娩手当や医師への救急勤務手当を支給する医療機関を支援し、医師の処遇改善を図ってまいります。さらに、ドクターヘリの導入に向けた検討や脳卒中や急性心筋梗塞などの重要急性疾患を担う医療機関の体制整備を支援し、地域で安心して暮らせるための医療体制を構築してまいりたいと考えております。
高知医療センターの経営問題
高知医療センターにつきましては、本年度末に7億6,200万円の資金不足が見込まれるなど、極めて厳しい経営状況となっており、経営の安定化に向けた対策が急務となっております。
この資金不足につきましては、本県に欠かすことができない基幹病院であります高知医療センターを守るため、今議会に、構成団体である高知市と共に長期の貸付を行うための補正予算案を提案しております。
先月20日に、私と高知市長がオリックス本社を訪ね、高知医療ピーエフアイ株式会社に対しまして、高知医療センターは本県になくてはならない基幹病院であり、その経営改善に向けて何らかの協力ができないかということをお願いいたしました。オリックス本社からも、経費の削減だけではなく、収支全体を見直すことが必要であるとのお話がありました。
こうしたことから、病院企業団と高知医療ピーエフアイ株式会社の双方が原点に立ち返って、PFI事業の在り方について協議を進めていくこととなりました。現在、企業団において、PFI事業契約の法的な検証などを進めております。
構成団体である県といたしましても、来年度には専任の理事職を配置するなど組織体制も整え、高知市と共に、県民の命を守る医療センターの抜本的な経営改善に向けて、これまで以上に積極的に取り組んでまいります。
高知医療センターの精神科病棟の整備
また、高知医療センターへの精神科病棟の設置につきましては、来年度予算において、基本設計に必要な経費を企業団に助成することとしております。
この精神科病棟は、医療センターの機能を生かした合併症の治療や県内で唯一の子ども専門病床の設置など、県全体の精神科医療の向上に大きく貢献するものであります。県民の皆様をはじめ関係の方々からも大きな期待が寄せられているものと感じております。
もとより、医療センターは非常に厳しい経営環境にあります。今後、病棟の収支の見通しや、建設費、運営費に対する県の負担などにつきまして、企業団と十分に協議を重ね、平成24年度の開設を目指して取り組んでまいりたいと考えております。
安芸地域での新たな統合病院の建設
医療センターへの精神科病棟の設置を受けまして、芸陽病院とあき総合病院を統合した新たな病院の建設に向けて取り組んでまいります。
新たな統合病院につきましては、安芸保健医療圏の中核的な病院として、他の医療機関との連携を図りながら、圏域内で救急医療や精神科医療などを含めた二次医療がほぼ完結できる医療体制を構築することを目指して、整備することにしております。
もとより、公立病院にも経営の効率化や採算性が強く求められていることから、整備にあたりましては、新病院が将来にわたって圏域で必要とされる医療を持続的に提供できますよう、医師の確保はもとより、建設コストの適正化や経営の健全性の確保に十分留意してまいりたいと考えております。
(6)基本政策に横断的に関わる環境対策
次に、五つの基本政策に横断的にかかわる環境対策についてご説明申し上げます。
本県は、森林面積の割合が全国第一位であり、このメリットを生かして、これまで協働の森づくり事業や排出量取引地域モデル事業など、全国に先駆けて森林を生かした地球温暖化対策を進めてまいりました。
さらに、こうした取り組みを本格化させるため、来年度から新たに森林吸収量取引モデル事業を実施してまいりたいと考えております。
この事業は、間伐によるCO2の吸収量を協賛いただいた全国の方々に購入していただく仕組みを作るものであり、まさに、国内排出量取引の先駆けとなる事業であります。低炭素社会のトップ・プランナーとして、今後とも、全国に誇れる先進的な取り組みを発信してまいりたいと考えております。
3 来年度の組織改正について
次に、来年度の組織改正についてご説明申し上げます。
来年度は、「実行元年」といたしまして、「産業振興計画」を強力に推進することはもとより、医療、福祉、交通運輸政策などの県政課題に一層スピーディかつきめ細かく対応していかなければなりません。
このため、来年度の組織改正では、柔軟で機動的な「攻め」の組織づくりを目指し、産業振興推進部の新設など部局の大幅な再編をはじめ、抜本的な見直しを行ってまいります。あわせて、県庁組織全体のスリム化を引き続き進める必要がありますことから、全体最適の観点で、職員の配置にメリハリをつけることとしております。
また、「産業振興計画」の実践など関係する部の職員が一体となって取り組むことが必要な業務には、部の枠を超えて職員を兼務させることにより、機動的な対応ができるよう努めてまいります。
農業振興部など各産業分野を担当する部につきましては、産業振興推進部と連携して、生産から販売、流通まで一元的な支援体制を構築することにいたしました。これに伴い、産業技術部を廃止し、各試験研究機関を関係する部に移管することとしております。
健康福祉部は、業務の高度化・多様化への対応と併せて、本県の実情に即した「高知型福祉」を推進するため、保健医療分野を所管する健康政策部と福祉分野を所管する地域福祉部に再編してまいります。
また、総務部を、これまで複数の部に分散しておりました政策の企画調整機能を一元的に所管して、政策の企画と各部局の調整を迅速かつ的確に進める体制とするとともに、現在策定中の「県政改革アクションプラン」に則した透明な県政の実現のため、予算の執行管理機能を強化いたします。
さらに、資源・エネルギーや文化、私学・大学など県民生活に関わりの深い業務を所管する文化生活スポーツ部と、林業振興と環境行政を一体的に推進する林業振興・環境部を設けることとしております。
来年度は、このように大胆に見直した新たな体制の下、私自身が先頭に立ち、経済の活性化に向けた積極的な攻めと、福祉などへのぬくもりを大切に、県庁が一体となって地域に根ざした実効性のある取り組みを進めてまいりたいと考えております。
4 県政改革について
最後に、県政改革についてご説明申し上げます。
県政改革につきましては、「県民から見える県庁づくり」「県民と対話をする県庁づくり」、そして、「県外にも目を向ける県庁づくり」の三つの方向性を柱とした県庁組織と職員の具体的な行動指針「県政改革アクションプラン」の策定を進めております。
まず、「県民から見える県庁づくり」につきましては、県民の皆様に対する情報公開を徹底するための具体的なルールづくりや、特定の個人や団体に利害を及ぼす意思決定に幾重にもチェックがかかる体制づくりなどを検討しております。
そして、「県民と対話をする県庁づくり」では、様々な機会をとらえて県民の皆様と対話する機会を拡充することや、対話におけるルール、公務員としてのモラルを徹底することなどについて検討を進めております。
また、「県外にも目を向ける県庁づくり」では、県外事務所やアンテナショップなどの活用のほか、様々な分野にわたり情報の提供やお知恵を賜るアドバイザーを設置することなどについて検討しているところであります。
今後、アクションプランの案につきまして、今議会でご説明をした上で、3月中旬に開催します「県政改革検証委員会」においてご意見を賜り、年度内にはアクションプランとして取りまとめてまいりたいと考えております。
来年度から、PDCAサイクルに基づく検証や改善も行いながら、アクションプランに則して具体的に取り組んでまいります。私自身がリーダーシップを発揮し、二度とモード・アバンセのような事件を起こさないことはもとより、「対話と実行」を基本に、職員が県民の皆様の期待と信頼に応え、前向きに仕事に取り組める県庁を目指してまいります。
2 提出議案の説明
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成21年度高知県一般会計予算など35件です。
このうち平成21年度の一般会計予算は、先ほど申し上げました緊急雇用対策や「産業振興計画」の実行に必要な経費などを中心に、4,186億円余りを計上しております。
また、平成20年度の一般会計補正予算は、地域活性化・生活対策臨時交付金を活用した単独事業や公共事業を中心に、205億円余りを計上しております。
条例議案は、国の交付金を活用して積み立てます高知県ふるさと雇用再生特別基金条例議案など39件であります。
その他の議案は、包括外部監査契約の締結に関する議案など11件、報告議案は、平成20年度高知県一般会計補正予算の専決処分報告の1件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。
「為せば成る 為さねば成らぬなにごとも 成らぬは人の為さぬなりけり」実行元年。今、まさに、県勢の浮揚に向けて汗をかく、実行すべき時であります。議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をあらためてお願い申し上げまして、私からのご説明とさせていただきます。