平成20年7月県議会における知事の提案理由説明

公開日 2009年11月26日

更新日 2014年03月23日

平成20年7月県議会における知事の提案理由説明(平成20年7月7日)

(項目)
 1 当面する県政の主要な課題について
     森林を活用したCO2削減の取組
     ブラジル移住100周年と今後の交流
     骨太の方針2008と国への政策提言
 2 平成20年度の重要課題
     学力向上・いじめ問題等対策計画について
     小中学校の耐震化の促進
     児童虐待致死事件を受けた検証と今後の取組
     産業振興計画
     NHK大河ドラマ「龍馬伝」
     「対話と実行」座談会
     原油価格の高騰と当面の対策
     シカ被害特別対策
     ブロードバンドの整備
     県立大学の改革
     高知工科大学の公立大学法人化
     芸陽病院の整備と中央圏域での精神科病床の整備
     県政改革の検証
 3 議案の説明

 


 本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成20年7月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。

<当面する県政の主要な課題について>
 ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、この際、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。


(森林を活用したCO2削減の取組)
 本日から、主要国首脳会議、北海道洞爺湖サミットが開会いたします。

地球温暖化を主要なテーマとする洞爺湖サミットには、温室効果ガスの削減など、地球温暖化対策の進展に向けた国民の期待も高まっております。

 こうした中で、サミットに先立ち先月発表されました「福田ビジョン」では、国内排出量取引制度を導入するという基本方針が示されました。

 まさに我が国が「低炭素社会」の実現に向けて大きく舵を切ろうとする中、本県が進めております「排出量取引地域モデル事業」が、先般、カーボン・オフセットの基準づくりに向けた国のモデル事業に選定されました。このことは、京都議定書のルールに準拠した本県の先駆的な取り組みが、国に高く評価されたものと受け止めております。

 本県の取り組みが全国のスタンダードになりますことは、本県の環境政策を全国に強くアピールすることはもとより、豊かな森林を活用した排出削減量の商品化という、新たなエコビジネスが生まれる絶好のチャンスであると考えております。

 今後とも、全国に誇れる豊かな森林を最大限に活用し、CO2削減のための仕組みづくりや技術開発を進め、「低炭素社会のトップ・プランナー」として、全国に発信してまいりたいと考えております。


(ブラジル移住100周年と今後の交流)
 今年は、ブラジルへの日本人の移住が始まって100周年という記念の年にあたりますことから、県議会や県民の代表の皆様とともに、先月13日からブラジルを訪問し、現地では温かく親しみに溢れた歓迎をいただきました。

 訪問団一同、幾多の困難を乗り越えてご活躍されておられる県人の方々のこれまでのご労苦をねぎらうとともに、今日の繁栄の喜びを心から分かち合ってまいりました。

 大きな志と勇気を胸に、日本人ブラジル移住の道を切り拓かれた本県出身の先人たちは、今日の私たちにとっても大きな誇りであり、あらためて、その精神とご功績を県民の皆様、とりわけ若い世代の方々にお伝えしなければならないと感じております。

 この秋には、ブラジルをはじめ中南米に移住されました県人会の方々が高知に里帰りされますことから、県を挙げて心から歓迎のおもてなしをいたしたいと考えております。

 さらに、移住者の方々との交流懇談会の開催などを通じまして、県民の皆様と移住者の方々の絆が強まり、その誇るべき歴史が継承され、ひいては、新興経済国となったブラジルと本県との新たな交流のステージが開かれることを期待しております。

(骨太の方針2008と国への政策提言)

 先月末、「骨太の方針2008」が閣議決定されましたが、県では、この4月から、骨太の方針など国の政策への反映を目指し、抜本的に機能を強化した東京事務所を活用して、積極的に政策提言などを行ってまいりました。

 その結果、道路特定財源の一般財源化に際して、必要な道路を着実に整備することや、認定こども園への財政支援措置を充実すること、そして、新たな医師養成のあり方を確立することなどが骨太の方針に盛り込まれました。

 また、この方針では、「歳出・歳入一体改革」を徹底的に進め、2011年度に国と地方の基礎的財政収支を黒字化させるという、これまでの考え方を引き継ぐ中で、本県が強く要望しておりました地方交付税について、地域間の財政力の格差に対応するため、地方再生の考え方に従って財政の厳しい地域に重点的に配分するという方針が盛り込まれております。

 高齢化が全国より10年先行している本県の厳しい実情が相当程度理解され、こうした地方に目を向けた内容が骨太の方針に盛り込まれましたことは、今回の提言活動の成果であると感じております。

 他方、本県の財政状況に目を転じますと、少子高齢化の進展によって社会保障関係費が大幅に増加するなどしている結果、地方が抱える様々な課題に確実に対応していくために政策的・弾力的に使える財源が極めて少なくなっているなど、引き続き楽観視できない状況にあります。

 地方が真に必要な行政サービスを提供していくためには、税収の偏在性が少なく安定的な地方消費税など、地方の税財源をしっかりと確保する必要がありますことから、今後とも、全国知事会とも連携し、この点を国に強く働きかけてまいりたいと考えております。

 さらに、地方交付税につきましても、道路などの社会資本整備が遅れている地域に対する傾斜的な配分など、地域の実情やニーズに応じた配分が行われますよう、議員の皆様や県内の市町村、国会議員の皆様のご協力もいただきながら、今後とも国に提言してまいります。

<平成20年度の重要課題>
 続きまして、新年度に入り取り組んでおります重要課題についてご説明を申し上げます。

(学力向上・いじめ問題等対策計画について)
 まず、教育については、知事に就任以来半年にわたり、教育委員会とともに、これまでの取り組みの徹底的な検証と今後の方向性について検討してまいりました。

 このため、今年度の当初予算編成の時点では教育予算は暫定的なものとし、今回の補正予算であらためて本格的な対策を講じることとしたところであります。

 先般、教育委員会において、子どもたちがこれからの社会を生き抜いていくための学力をしっかりと身につけることと、いじめや不登校などで悩んでいる子どもたちの心に寄り添うことの二つの取り組みが急務であるとの考えの下、「学力向上・いじめ問題等対策計画」が策定されました。

 この計画では、まさに今が本県の教育を大きくレベルアップさせるための本格的なスタートの時であるとし、まずはこの4年間で全国的な教育水準に引き上げることを目標として、緊急に取り組むべき「5つの改革」を掲げているところであり、これを受けて、こうした取り組みに必要な予算案を今議会に提案しております。

 計画においては、すべての学校の全体的な底上げを図るとともに、課題がある学校を集中的・重点的に支援し、さらに、放課後や週末にすべての子どもたちが安心できる学び場を提供するなどすることで、学校・家庭・地域のそれぞれで、本県の将来を担う子どもたち一人ひとりの成長をしっかりと保障することを目指しております。

 まず、第一の改革は「学校・学級改革」です。

 児童生徒の基礎学力の定着と学力の向上のためには、日々の授業を中心に、予習や復習の徹底と定着状況の確認や改善がこまめに行われることが極めて重要となります。

 このため、すべての学校が学力向上のために策定した「学校改善プラン」の下、管理職と教職員が一体となった組織的な取り組みを支援し、すべての学校の全体的な底上げを図ってまいります。さらに、課題がある学校には、学力向上に専念する教員や教科指導を行う教員のOBを新たに配置し、集中的・重点的に支援してまいります。

 また、特に学習の積み上げが必要となります算数・数学では、学習内容の小さなまとまりである単元ごとのテストを行い、その検証と授業への反映などPDCAサイクルを徹底し、基礎学力の確実な定着を図ってまいります。

 第二の改革は「教員指導力改革」です。

 教員の指導力の向上を目指し、小中学校の各教科の中核となる教員を計画的に養成するとともに、学校でOJTを進める管理職とミドルリーダーを育成してまいります。さらに、採用の段階から資質と指導力のある教員を確保するため、県外での採用説明会などを開催することとしております。

 第三の改革は「幼児教育改革」です。

 学力向上の問題を根本的に解決するためには、義務教育の基礎を培う就学前の取り組みが特に重要となります。

 このため、「質の高い保育と教育の提供」や「仕事と子育ての両立支援」の実現に向けて、保護者の就労の有無にかかわらず、すべての子どもを受け入れて保育する機能と、幼稚園の教育機能を併せ持つ認定こども園の設置を促進するための財政支援を行ってまいります。

 また、保育所や幼稚園に子育て支援アドバイザーを派遣し、子どもの成長の道筋や親としてのかかわり方の周知に努め、親の子どもを育てる力を高めてまいります。

 第四の改革は「心の教育改革」です。
 いじめや不登校などの問題に対応するためには、子どもたちの実態をまずしっかりと把握し、それに即して的確に支援することが必要となります。

 このため、学級内の児童生徒一人ひとりの心理状況を客観的に把握し、理解するための仕組みを県内のすべての小中学校に導入して、子どもたちが学級の中で安心し落ち着いて生活できるよう、教員自身のカウンセリング・マインドを高めてまいります。

 また、すべての教職員が、児童虐待やいじめに主体的に対応できる力を身につけるために、児童虐待やいじめに対応するための実践的なガイドラインを策定するとともに、教職員への体系的な研修を行ってまいります。

 さらに、心の教育センターの教育相談体制を強化し、学校現場をきめ細かく支援してまいります。

 第五の改革は「放課後改革」です。

 共働きの世帯が多い本県では、子どもたちの健やかな成長を図るとともに、学習する習慣を定着させるためには、放課後や週末の「学びの場」を確保することが極めて重要であると考えております。
このため、すべての小学校に、学習アドバイザーを配置した「放課後子ども教室」などが設置されるよう支援してまいります。

 さらに、中学校では、特に課題がある学校に、補充学習や家庭学習の点検などを担う学習支援員を配置して、放課後の学びの場を確保することで、学習習慣の定着を図ってまいります。
また、県内18の中学校区に、地域と学校をつなぐコーディネーターを配置した「学校支援地域本部」を設置し、学校・家庭・地域が連携して、地域社会全体で子どもたちを育てる仕組みを構築してまいります。
今は、まさに本県の教育が大きくレベルアップするためのスタートラインであります。今後4年間で全国的な教育水準に、というゴールに確実に到達することを強く決意し、教育委員会とともに全力を挙げて「5つの改革」の実現に取り組んでまいります。

 県民の皆様には、本県の子どもたちの未来のため、共に手を携えて取り組んでいただきますよう、ご支援、ご協力を賜りたいと考えております。

(小中学校の耐震化の促進)
 この度の中国四川省の大地震では、学校施設の倒壊が相次ぎ、数多くの子どもたちが犠牲になりました。あらためて、犠牲になられました方々のご冥福を心からお祈り申し上げます。

 こうした事態を受け、大規模な地震による倒壊の危険性が高い小中学校の耐震化を加速するため、本県が強く要望しておりました国庫補助率の引き上げなどの財政支援措置が、国において新たに講じられることとなりました。

 先月14日に発生した岩手・宮城内陸地震でも、震源地に近い学校では壁が崩れ落ちるなどの被害が発生しています。南海地震に備えて子どもたちの生命を守りますために、小中学校の耐震化に向けて市町村を積極的に支援してまいります。

(児童虐待致死事件を受けた検証と今後の取組)
 今年2月初めに県内で起こりました児童虐待による致死事件は、極めて痛ましく残念な事件であり、あらためて、お亡くなりになった藤岡和輝君のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 
 中央児童相談所や学校など多くの関係機関がかかわりながら、結果として子どもの命を救えなかったことを踏まえて、県では、今年2月に外部の有識者による検証委員会を設置いたしました。

 そして、約4カ月間、関係機関の各段階での対応が適切であったのか、緻密に徹底した検証を行っていただき、先般、問題点や課題の整理と具体的な改善策をまとめた報告書を提出していただきました。

 この報告書では、幅広く様々なご指摘とご提言を頂いております。

 まず、今回の事件の全体的な評価として、児童相談所に対しては、組織的な対応と進行管理に課題があったとのご指摘があり、さらに、学校や南国市などの関係機関については、児童相談所が関与することによって、主体的な意識が欠如し受け身的な対応になったとのご指摘がありました。

 このため報告書では、児童相談所に対し、子どもの安全、最善の利益を最優先にして取り組むという基本姿勢を、そして、すべての関係機関に対しては、自分たちが子どもを守るという基本姿勢を、それぞれ再確認することを強く求めております。

 また、委員会ではこうした基本姿勢の検証に加え、子どもを守ることに直ちにつながる「児童虐待対応の判断と実施手順」についてご意見を頂くなど、実践的な検証も行っていただきました。

 その結果、児童相談所が子どもの安全を最優先に考えて、躊躇することなく一時保護などの権限を適切に実行できるよう、初期の安全確認や調査を複数の職員で実施することや、児童虐待の緊急度を評価するアセスメントシートを改善することなどのご提言を頂いております。

 この事件を受け、県では、この4月からすでに、中央児童相談所の相談体制を強化するためケースワーカーを4名増員するとともに、職員の専門性の向上を図るため、県外の児童相談所への研修派遣や外部の専門家の招へいなど、組織の機能を強化する取り組みにも着手したところです。

 さらに、今般の提言を受けて、できるだけ早い時期に児童福祉司などの職員を増員し、チームによる相談援助活動を充実させるとともに、来年4月には、児童虐待に専門的に対応する児童虐待専従チームを設置してまいりたいと考えております。

 また、教育委員会では、教職員一人ひとりが児童虐待やいじめに主体的に対応できる力を身につけるためのガイドラインを策定し、教職員に対する研修を実施してまいります。

 さらに、心の教育センターの教育相談体制を強化し、来所や電話による相談を充実するとともに、学校からの支援の要請に応じて出張教育相談を行うなど、学校現場をきめ細かく支援してまいります。

 今回の報告書でご提言いただきましたことは、スピード感を持って着実に実行してまいります。また、今後、取り組みの状況の確認と評価のための検証委員会に代わる新たな組織を設置し、提言の確実な実現を目指してまいります。

 児童相談所をはじめすべての関係機関が、子どもの生命を守るという重責を自覚した上で、子どもの安全、最善の利益を最優先に取り組むという基本姿勢を徹底し、このようなことが二度と起きることがないよう全力を挙げて取り組んでまいります。

(産業振興計画)
 次に、産業振興計画について申し上げます。

 県経済の活性化に向けた県勢浮揚の指針となる産業振興計画の策定につきましては、先月6日に、各産業団体を代表する皆様や有識者の方々によります第一回目の検討委員会を開催し、官民協働での産業振興に向けた検討を開始いたしました。

 この検討委員会の議事に先立ち、私自身、「産業別・地域別に本県産業が成長するための戦略を示し、県経済の活性化に具体的に結びつく計画にしていくために、現状をより悉皆的・具体的に分析して徹底的に議論していただき、計画を取りまとめてまいりたい」という、計画に込める思いをお伝えしたところでございます。

 検討委員会では、産業分野を超えた連携のあり方として、農産品と加工業をつなぐ1.5次産業の振興や、農商工の連携が必要であるとのご提案をいただくなど、今後の進め方や検討の視点について活発にご議論いただいております。

 あわせて、具体的な検討をさらに進めていきますために、農業、林業、水産業、商工業、観光の5つの専門部会を立ち上げ、中長期的な視点を持った成長戦略を描くための各産業分野の目標と取り組みの方向性について、検討を進めております。

 また、計画には、各産業分野の成長戦略に加え、地域で具体的に取り組む内容を「地域アクションプラン」という形で盛り込むこととしております。

 このため、県内すべての市町村に関係団体や市町村の実務担当の方々による検討組織を設置し、地域で実践的に活動されている方々のご意見も伺いながら、地域の資源や特色ある取り組みなどの分析や検討を進めてまいります。

 今後、こうした県全体での議論を重ねまして、産業振興という大きな一つの方向に向かい、県民の皆様が心を一つにして取り組める計画にしてまいりたいと考えております。

 本県産業の浮揚のためには、一刻の猶予も許されない状況にありますことから、10月末を目途に各産業分野の成長戦略の中間的な取りまとめを行いまして、その内容を来年度の予算に反映してまいります。

 また、こうした計画づくりに先立ちまして、高知県産業振興センターに「農商工連携基金」を創設するための補正予算を提案しております。来年1月を目途に25億円を積み立て、その運用益を活用し、産業振興計画の柱の一つとなります1.5次産業の推進などを重点的に支援してまいります。

(NHK大河ドラマ「龍馬伝」)
 先月の初めに、再来年のNHKの大河ドラマが「龍馬伝」に決定したという大変嬉しいニュースが飛び込んでまいりました。

 大河ドラマの放送は、本県が全国的な注目を浴び、県外から数多くのお客様に来ていただく絶好のチャンスであり、観光産業はもとより第一次産業から第三次産業まで幅広い分野にわたり、本県経済に大きな波及効果をもたらすものと期待しております。

 滞在型・体験型観光の推進に向けた第一歩である「花・人・土佐であい博」の取り組みを「龍馬伝」につなぎ、県を挙げた盛り上がりとなりますよう、全県下の関係の皆様とともに、このチャンスを確実に活かすための準備をしてまいりたいと考えております。

(「対話と実行」座談会)
 次に、「対話と実行」座談会について申し上げます。

 4月から、「対話と実行」座談会を県内の市町村で順次開催しており、地域の皆様が各分野で熱心に取り組まれているお姿に接し、大変頼もしく心強く感じております。

 また、数多くのご意見やお知恵を賜り、官民協働型の将来に希望が持てる県づくりを進めていく上で極めて有意義な座談会となっておりますことを感謝申し上げます。

 私は、伺ったご意見を決して聞きっ放しにしないことが大切だと思っており、頂いたご意見やご提案は県庁全体で対応を検討し、その結果を速やかにお返しすることはもとより、今すぐ着手できる施策は積極的に取り組むという姿勢で臨んでまいります。

(原油価格の高騰と当面の対策)
 原油価格の高騰については、その歯止めがかからず、県民の皆様の生活はもとより、本県の基幹産業である農林水産業をはじめ産業の各方面に多大な影響を与えており、座談会でも、この問題について数多くのご意見を頂きました。

 今年度の当初予算でも、漁業をはじめ本県の産業を支援するため、一定の原油高対策を計上したところでありますが、さらに、園芸農業の戦略的な品目を守りますために、今回の補正予算において、園芸ハウスの省エネルギー化を緊急的に支援する制度を設けることといたしました。

 さらに、他の産業分野でも今直ちにできる対応策を講じております。

 まず、中小企業への支援として、9月末までとしております県の制度融資に対する償還期限の延長などの緊急支援措置を今年度末まで延長してまいります。

 また、県が発注する土木工事などについては、鋼材類や燃料油の価格に著しい変動が生じた場合に請負代金額の変更ができる「単品スライド条項」を適用することとしております。

 さらに、経営の悪化が深刻な漁業について、国の原油価格高騰への追加対策に呼応し、国に対して、燃油対策の基金の運用改善など実現可能なプランも提案しております。

 今後、関係の皆様のご意見をさらにお聞きした上で、国に対して、補正予算での対応も含めた追加対策の拡充を要請しますとともに、県でも引き続き必要な対応を検討してまいります。

(シカ被害特別対策)
 また、シカによる森林や農産物の食害に対しましては、今年度から「シカ被害特別対策事業」を実施しておりますが、被害はさらに深刻化しており、先の2月県議会でも、さらに抜本的な対策を講ずるべきとのご意見を頂いております。

 こうしたことから、できるだけ短期間でシカの被害を減少させるために、本県のシカの生息頭数を今後3年間で適正頭数の約9,000頭とする抜本的な対策を補正予算として提案しております。

(ブロードバンドの整備)
 県経済の活性化や若者の定住を促進するためには、インターネットなどのブロードバンド環境の整備が不可欠となっております。

 ブロードバンドは、住民の安全・安心な暮らしを守り、地域産品の販路を拡大するなど、地域の活性化のために欠かせない「情報の道」であると考えておりますが、中山間地域では、採算性の面から民間の事業者が整備を進めることが極めて難しくなっております。

 このため、自ら主体となってブロードバンド環境の整備に積極的に取り組む市町村を支援するための新たな制度を設けることといたしました。

 あわせて、市町村が情報通信の基盤を活かし、医療や福祉、ビジネスなどに積極的に活用できますよう、民間事業者と連携して様々な情報提供や技術的な支援を行ってまいります。

(県立大学の改革)
 次に、県立大学の改革について申し上げます。

 県立大学の改革につきましては、これまで、関係の皆様のご意見をお聞きしながら、その方向性について検討を重ねてまいりました。

 その結果、保健・医療・福祉の分野を早急に整備することの必要性に加え、新たに、以下の5つの視点に立脚して本件を検討することが必要であるとの考えに至ったところです。

 まず、第一の視点は、人口減少下における本県の高等教育機関はどうあるべきかとの点を考えたとき、これまでの高知女子大学に限定した改革の方針を根底から改め、県立大学と公立大学法人化を目指す高知工科大学との連携をも視野に入れた見直しを行うことが必要であるということです。

 第二の視点は、若者の県外への流出を防ぐためには、県内の学生の進学希望が多い反面、県内に教育の場が少ない社会・人文科学系の学部の整備が必要であるということです。

 そして、第三の視点は、本県の産業振興のために経営能力がある人材の養成が求められており、そのためには、社会人教育の場を充実する必要があるということです。

 第四の視点は、高知市が進めるコンパクトシティの理念や中心市街地の活性化は県としても重要な課題であり、県立大学の改革についても、この点をも加味しながら、県と高知市が連携して取り組む必要があるということです。

 第五の視点は、厳しい財政状況の中で、財政健全化と県民サービスの確保を両立するためには、大学の改革に伴う財政負担を徹底して軽減することが必要であるということです。

 これらの5つの視点を新たなポイントとして、高知女子大学と高知工科大学の連携を柱とした本県の高等教育が目指す方向性と、そのための三つのキャンパスのあり方について、考えを取りまとめました。

 まず、池キャンパスにおいては、保健・医療・福祉の連携による「健康長寿の拠点」として、隣接する高知医療センターと連携し、日本一の健康長寿県づくりに必要な人材の育成を目指すこととしております。

 次に、永国寺キャンパスにおいては、「社会貢献をする知の拠点」として、人文科学や社会科学系の学部と社会人教育、生涯教育の充実を図り、経営能力の高い人材の輩出を目指してまいります。

 そして、香美市キャンパスにおいては、高知工科大学のこれまでの実績と成果を踏まえた「工学、産業振興の拠点」として、産業の浮揚につながる研究開発や人材の育成を目指すこととしております。

 こうした方向性につきまして、今議会で十分にご説明申し上げ、本県の大学のあるべき姿について、さらに徹底したご議論とご意見を頂いた上で、先月庁内に設置したプロジェクトチームで検討を進めてまいります。

 あらためて、9月県議会には、関連する予算を提案してまいりたいと考えておりますので、議会の皆様のご理解、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。

(高知工科大学の公立大学法人化)
 高知工科大学の公立大学法人化につきましては、この4月から、工科大学と県の代表者によります検討委員会を設置して検討を進めております。

 公立大学法人制度では、県が大学の中期目標を定め、その目標に基づき、大学が中期計画を策定することとなっております。

 工科大学を公立大学法人化する大きな目的の一つは、このことによって、県と工科大学がこれまで以上に連携を強め、県が進める施策の方向性に沿った大学の人材育成や教育・研究活動につながることにあると考えております。

 県が目指す産業の振興や人材育成が、工科大学の計画に、県内学生の進学機会の確保や産業振興計画の実現に向けた産学官の連携という形で反映されることによって、県内への若者の定着や県経済の発展に大きな効果を与えるものと考えております。

 さらに、本県の高等教育の再編成に向けて、県立大学との教育・研究面の役割分担や連携が効果的・効率的に進むことによって、将来にわたり必要な人材を育成し、これまで以上に地域に貢献する大学としての役割が果たせるものと考えております。そして、県内の保護者の皆様にとりましては、教育に係る経済面でのメリットも期待できます。

 今後、議会の皆様のご議論やご意見も踏まえまして、検討委員会での検討と必要な準備を進め、来年4月の公立大学法人化に向けて取り組んでまいりたいと考えております。

(芸陽病院の整備と中央圏域での精神科病床の整備)
 次に、芸陽病院の整備について申し上げます。

 芸陽病院は、建設から30年以上が経過し老朽化が進んでいることや、現在の耐震基準を満たしていないことから早急な対応が必要となっております。

 このため、昨年度から、患者の家族会の方々と医療や行政の関係者によります「芸陽病院のあり方検討委員会」を設置し、県立の精神科病院が果たすべき役割や医療機能などについて検討を進めてまいりました。

 そして、この3月に「中央圏域への移転が望ましい」ことと、あわせて、「安芸圏域の精神保健医療機能の確保に十分な配慮が必要」とのご意見を頂きました。
 
 他方、数多くの県民の皆様から芸陽病院の現地での存続を求める署名や、県東部のすべての市町村議会から移転に反対する意見書を頂いております。

 そして、先の2月県議会で「県立芸陽病院の移転に反対する請願」が採択されましたことを、私自身、大変重く受け止めております。

 安芸圏域には、こうした地元の皆様の思いとともに、芸陽病院に現在入院しておられる方々への対応、さらに、圏域内での精神科を含めた医療の完結という地域の政策課題があり、一方で、県全体を考えますとき、県内の精神科医療の充実という政策課題があります。

 どうすればこれらを共に実現することができるのかということを、あらためて関係の皆様のご意見も伺い、議論を深めてまいりました。

 その結果、今般「芸陽病院整備の基本的な考え方」として、整備についての考えを取りまとめたところです。

 この中では、芸陽病院を将来的にも適切な病床数とした上で、あき総合病院と経営を統合し現地で存続することと、県内全域を対象にした措置入院をはじめ、身体合併症や精神科救急への対応など、精神科医療に対する県の医療政策を強化するために、中央圏域に精神科病床を整備することの二つを柱としております。
 
 中央圏域に整備する精神科病床につきましては、高知医療センターに設置していただくことが最適であると判断いたしまして、高知県・高知市病院企業団に設置を要請しているところでございます。

 今後、この「考え方」について、県議会の皆様をはじめ地域住民の方々や高知県・高知市病院企業団に対しまして、十分にご説明申し上げ、ご議論やご意見を頂きながら、その実現に向けて全力を傾けてまいります。

(県政改革の検証)
 最後に、県政改革の検証について申し上げます。

 協業組合モード・アバンセへの融資事件につきましては、この3月に住民訴訟の和解が成立し、関係しました当時の県の幹部が、損害補填金の一部を支払うこととなりました。

 この訴訟では個人の責任が問われましたが、一連の事件は、特定の団体や個人への対応に行政として主体性を欠いたことなどから生じたものであり、結果として、県民の皆様の信頼を大きく損なうこととなりましたことを、心よりお詫び申し上げます。
 
 県では、これまで事件の反省に立って「県政改革に向けての決意」を表明し具体的な取り組みを進めてまいりましたが、今回の和解を契機に、あらためて、この事件を検証するための検証委員会を設置いたしました。

 委員会では、事件に至った当時の組織体制や意思決定のプロセスに係る問題点とともに、「県政改革に向けての決意」を表明してからすでに6年以上が経過したことを踏まえ、その後の県の対応について検証していただいており、加えて、これらを踏まえて今後の再発防止策などについて検討を進めていただいております。委員会には9月を目途にその結果をご報告いただくこととなっております。

 なお、事件の結果、多額の債権が未回収のまま残らざるを得ない状況となっておりますことから、県庁全体として県民の皆様にお詫びの気持ちを示す趣旨で、幹部職員を中心に始めているカンパの取り組みと併せ、私も知事として給料を減額する条例議案を今議会に提案しております。

<議案の説明>
 続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明を申し上げます。

 まず予算案は、平成20年度高知県一般会計補正予算など5件です。

 このうち、一般会計補正予算は、先ほど申し上げました学力向上に対応するための経費などを中心に、5億2千8百万円余りを計上しております。

 条例議案は、高知県を応援したいという想いの下に頂きました寄附金を有効に活用するための「高知県こうちふるさと寄附金基金」を設置する条例議案など9件です。

 その他の議案は、南国市での工業団地造成のための用地取得に関する議案など4件です。

 報告議案は、平成19年度高知県一般会計補正予算の専決処分報告など3件です。

 以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わります。

 何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。

 

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