公開日 2010年02月25日
更新日 2014年03月19日
平成22年2月高知県議会定例会での知事提案説明 (2月23日)
目次
1 平成22年度の県政運営について
(挑戦の年に向けて)
(平成22年度当初予算について)
2 5つの基本政策に基づく県づくり
(1)経済の活性化
(雇用対策について)
(産業の振興について)
(中心市街地の活性化)
(新資料館)
(2)インフラの充実と有効活用
(社会資本の整備)
(高速道路の無料化)
(総合的な交通体系の仕組みづくり)
(3)教育の充実と子育て支援
(全国学力・学習状況調査)
(学力向上対策等)
(教育版「地域アクションプラン」の推進)
(全国生涯学習フォーラム高知大会)
(私学助成の充実)
(4)県民の安全・安心の確保に向けた地域の防犯、防災の基盤づくり
(南海地震対策)
(陸上自衛隊第50普通科連隊の移駐について)
(5)日本一の健康長寿県づくり
(県民自らが病気を予防し、生涯を健康に暮らす)
(県民とともに医療環境を守り育てる)
(ともに支え合いながら生き生きと暮らす「高知型福祉」の実現)
3 その他
(県の組織改正)
(新行政改革プラン)
4 議案
本日、議員の皆様のご出席をいただき、平成22年2月県議会定例会が開かれますことを厚くお礼申し上げます。
ただ今提案いたしました議案の説明に先立ちまして、当面する県政の主要な課題についてご説明を申し上げ、議員の皆様並びに県民の皆様のご理解とご協力をお願いしたいと思っております。
1 平成22年度の県政運営について
私は、知事に就任以来「対話と実行」を基本姿勢に、経済の活性化、教育の充実など5つの基本政策を中心に全力で取り組みを進めております。
昨年度は県勢浮揚に向けた「足固めの年」として産業振興計画の策定など様々な仕込みを行い、そして、今年度はこうした仕込みを生かし行動する「実行元年」として地産外商戦略の推進、土佐・龍馬であい博の開催、さらには、学力問題をはじめとする教育危機への対応、本県の実情に即した高知型福祉の実現に向けた取り組みなど、具体的な政策を実行してまいりました。
この間、県民の皆様からいただきましたご意見やご提言を生かし、PDCAサイクルによる検証を行うことで施策の実効性の向上も図ってまいりました。この結果、実行のスピードは当初に比べ相当程度加速されたものと考えておりますし、今年に入ってからは大河ドラマ「龍馬伝」の放送もスタートするなど、様々な分野で追い風も吹いております。
私は、来年度をこれまでの取り組みと龍馬伝の追い風を縦横に生かし切って、県勢浮揚につながる具体的な成果を生み出していくための「挑戦の年」と位置付け、引き続き県政の運営に全力であたってまいる覚悟です。
また、今年は、国と地方のあり方について「国と地方の協議の場の法制化」を含む関係法案が今国会に提出されるなど、具体的な制度設計が進むこととなっております。
この国と地方の協議の場の法制化に関しては、私は、この協議の場が単に地方の意見を聞き置くといったものにならないよう、国の政策の企画立案段階から地方が関与する仕組みが必要であり、それには協議のテーマごとに分科会を置くべきだといったことを全国知事会のプロジェクトチームの一員として強く訴えてまいりました。その結果、全国知事会はもとより地方六団体からも広くご賛同をいただき、今回政府が取りまとめる法案にもこのことが反映される見通しとなっております。
一概に地方といっても、人口減少や高齢化のスピードなど、それぞれの地域の置かれた状況や政策課題は大きく異なります。今後の国の様々な制度づくりにあたっては、多様な地域の実情に応じて各地方自治体がより実効性のある政策を実施できるよう、一国多制度的な観点からの議論が必要だと考えます。
このため、引き続き東京事務所を通じて国の情報収集に努めますとともに、全国知事会の活動や国との協議の場などで、本県と同じような政策課題を抱える他県の知事とも緊密に連携し、望ましい国と地方のあり方や全国的にも通じる政策の基準などを積極的に提言してまいります。
(平成22年度当初予算について)
次に、本県の来年度の予算についてご説明申し上げます。
今回の予算編成では、国と地方を通じた税収の大幅な落ち込みが見込まれる中、国の予算編成において地方交付税の取り扱いが焦点の一つとなり、その動向が大きな課題となっておりました。
このため、全国知事会長らと共に地方交付税の確保の提言活動を行ってまいりましたところ、最終的に臨時財政対策債を含む実質的な交付税の総額が前年度に比べ約3兆6千億円増額される結果となり、本県の財政運営にも大きな追い風を得ることができました。
また、国の公共事業費が大幅に削減される中、本県では社会資本の整備が、他県と比べて極端に遅れている状況にあることから、県の単独事業を大幅に拡充し、2年連続で前年を上回る普通建設事業費を確保いたしました。
その結果、来年度の一般会計当初予算は2年連続で前年度を上回る4,282億円余りと、「挑戦の年」との位置付けに沿った積極型の予算として提案をさせていただいております。
他方、こうした積極的な投資と併せて、引き続き将来に向けて安定的な財政運営を行っていく必要があります。
このため、歳出面で人件費の抑制や各事業の徹底した精査を行うとともに、2月補正予算において国の臨時的な交付金を最大限活用して事業の実施を前倒しすることにより、来年度以降の財政負担の軽減を図りました。また、歳入面では緊急雇用創出臨時特例基金などの各種基金の活用や地方交付税の増額などによって、必要な財源を確保いたしました。
こうした結果、本年度当初予算と比べ、財源不足額を約122億円圧縮するとともに、県債残高についても、将来交付税で全額が補てんされる臨時財政対策債を除いて約250億円減少させるなど、本年度当初予算に引き続き、来年度当初予算も財政再建を進める形で編成できたものと考えています。
2 5つの基本政策に基づく県づくり
続きまして、来年度の施策や体制などにつきまして、5つの基本政策に沿ってご説明申し上げます。
(1)経済の活性化
基本政策の第一は「経済の活性化」であります。
まず、緊急雇用対策についてご説明申し上げます。
県内の雇用情勢は、全国的な景気低迷により有効求人倍率の全国順位が上がってきた形になっておりますが、数値自体は直近で0.44倍と依然として低い水準であり、厳しい状況が続いていることに変わりはありません。
本県では、これまで、ふるさと雇用再生特別基金と緊急雇用創出臨時特例基金を活用し、雇用の創出に取り組んでまいりました結果、本年1月末までに2,900人余りの方々に仕事に就いていただくことができました。
さらに、国の第二次補正予算では、緊急雇用対策として、重点分野雇用創造事業が創設され、本県に20億9千万円が追加配分されることになりました。この事業は、介護や農林水産など6つの重点分野での雇用の創出と地域での人材育成を目的としたもので、来年度に集中して実施することが求められています。
これを有効に活用することによって、現在取り組んでおります「あったか高知・雇用創出プラン」において、当初からの3年間で最大7千人の雇用を目指してまいります。
(産業の振興について)
次に、産業振興計画についてご説明申し上げます。
地産外商の実績
まず、本年度「実行元年」の取り組みについてご説明申し上げます。
計画の大きな柱である地産外商の推進については、高知県地産外商公社の設立や県内事業者の皆様の外商機会の確保、首都圏アンテナショップの開設準備など、体制づくりと具体的な外商活動を並行して実施してまいりました。
その結果、展示会や商談会、高知フェアの開催が昨年度の5倍近くの62件に上っており、その中で、国内最大級の量販店であるイトーヨーカ堂や阪急阪神ホールディングスといった大企業と提携した事業も実現するなど、地産外商の機会は飛躍的に拡大してきております。
さらに海外では、現地の百貨店で開催した四国フェアでの商品の定番化や商談会での成約につながるといった成果も得られてきております。
食品加工の実績
食品加工の分野では、地域アクションプランに位置付けられた47件の事業のほかにもいくつかの動きが出てまいりました。生産体制の強化に向けては、ユズをはじめとする農産物や鮮魚の加工施設などの整備が順次着手されるなど、県内各地で食品加工業の生産能力の増強につながる新しい事業の芽出しが進んできております。
また、売れる商品づくりに向け、工業技術センターに配置した特別技術支援員など専門家の技術的な支援を行うことで10件程度の商品化も進められてきております。
第一次産業の実績
第一次産業のうち農業においては、新規就農者が目標を上回る161人、前年度に比べ41パーセントの増となるなど、新たな担い手の確保が進んでおります。また、篤農家の持つ栽培技術を学び教え合う場は県内170カ所に設置され、出荷量が前年に比べ1割以上増加した地域も出てきております。
さらには、東急ストアの関東51店舗で高知フェアを開催するなど、関東地域や関西地域の量販店との提携により、高知野菜の販売の拠点づくりが進んでまいりました。
また、林業・環境分野においては、木質バイオマスを利用するボイラーの導入が前年度に比べて3倍程度となっておりますほか、これまで低炭素社会のトップ・プランナーを目指して森林を生かした地球温暖化対策に取り組んでまいりました。こうした中で、このたび、全国レベルで市場流通が可能となる二酸化炭素吸収量のオフセット・クレジットを県が独自に発行できるプログラム認証を受けることができたところであります。
水産業につきましても、加工面での付加価値を高める取り組みや、流通・販売面での取引の拡大などが進んでおりますとともに、カツオ漁船に生きた餌を供給する態勢の整備や漁獲効率の向上に向けた黒潮牧場の更新の前倒しなど、水揚げ高の確保に向けた取り組みが具体的に進展してまいりました。
商工業の実績
商工業での取り組みといたしましては、食品や天然素材、環境、健康福祉といった成長が期待される分野に対し重点的に支援してまいりました。それぞれの分野の企業研究会に延べ160社の参加をいただき、本年度は4件の事業化プランを認定いたしました。さらに来年度には、21件の事業化の見通しが立ったところであります。
観光の実績
観光の分野におきましては、龍馬伝の放送といった絶好のチャンスを最大限に生かした土佐・龍馬であい博の開催に向け、本県への旅行商品化に向けた旅行会社へのセールス活動や一般のお客様へのPR活動とともに、足元の受入態勢の充実を図るための二次交通等の整備などに、官民協働で全力で取り組んでまいりました。
その結果、先月から始まった龍馬博のパビリオンへの入場者数は順調に推移しておりますほか、開幕からの1カ月の主要観光施設の入込客数が前年同期に比べて50パーセント以上増加するなど、まだ課題は見られるものの、全体としてはその効果が広がっております。
5つの柱による産業振興計画の改定
産業振興計画は、常にPDCAサイクルの視点での検証を行うこととしております。表れ始めた成果をさらに大きな成果につなげていくためにも、これまでの実行段階でいただきました県民の皆様からのご意見やご提言をしっかりと生かしながら、このたび、5本の柱を中心に計画を改定し、さらなる進化を図ることといたしました。
その第一は、地産外商戦略の加速化であります。
昨年8月の高知県地産外商公社の設立などにより、県外や海外への販路開拓、販売拡大の機会が当初の予想を上回るスピードで拡大しております。
この機会を十分に生かすためには、引き続き商談会や展示会などの外商機会を確保することが不可欠であるとともに、商品の魅力の向上や商品を安定的に供給できる生産や流通の体制づくりなどが必要となります。また、バイヤーなどから求められるもう一段高度な生産管理への対応も必要です。
こうしたことを踏まえ、地産外商の体制をさらに強化するなどして、県内の事業者へのアドバイスやフィードバックの充実、本県の強みである農産物の外商戦略のさらなる強化、土佐材展示会の開催、水産物の前処理加工の推進、養殖生産者と県内企業が連携した販売促進活動などを加速してまいります。
地区別に見れば、首都圏においてはこの夏にオープンする首都圏のアンテナショップを拠点に、また関西と中部地区においては活動のワンランクアップを目指し、大阪事務所、名古屋事務所をそれぞれ拠点として、巨大な都市部マーケットでの地産外商を本格的に展開いたします。
あわせまして、テストマーケティングなど消費者や市場の評価を受けて実施する商品の磨き上げに対する補助制度の創設や、高度衛生管理に関する専門家の個別指導などにより、県内の事業者の方々を強力にバックアップしてまいります。
第二は、ものづくりの地産地消の促進です。
県内で所得を生み出し、県内産業の力を底上げしていくためには、機械設備の製造や食品加工などの付加価値を高める工程そのものを県内事業者で行っていくこと、つまり「ものづくりの地産地消」を進める必要がありますが、現在はその仕組みが十分とはいえません。
このために、県が、県内の受発注につながる企業情報、技術情報などを集約し関連団体に提供することで、県内事業者相互の情報共有を図り、事業者間の自主的な商談活動を支援してまいります。
また、県内のものづくり企業の技術力や製品開発力の向上を図るため、県内の製品需要に対応できる機械や装置の試作品の開発を支援するとともに、外部アドバイザーによる商品開発から販売展開までの一貫した支援を行ってまいります。
さらに、農産物のうち、産地の維持や供給過剰などの課題がある品目については、大学や企業との連携により新たな加工需要を創出することや、流通しにくい下級品などを活用した新たな商品づくりを進めてまいります。
第三は、ポスト龍馬博に向けた取り組みです。
土佐・龍馬であい博は、開幕以来多くの皆様をお迎えしており、今年の本県観光に大きな効果があるものと期待していますが、この成果を一過性のものに終わらせることなく、来年以降も定着させていかなければなりません。
このため、東部、中央部、西部の広域ブロックごとにそれぞれ1泊以上滞在できる観光地づくりや、本県観光の強みである歴史を中心とするプロモーションの展開、さらには外国人観光客を誘致する対策の推進など、取り組みの充実を図ってまいります。
また、先日設置しました、県と観光コンベンション協会などの関係者で構成する「400万人観光推進チーム」において、観光地、観光メニューなどの改善の検討や事業効果の検証を行い、現場にフィードバックするなど、観光資源の継続的な見直しを行ってまいります。
龍馬博の成功に向けて万全を期しますとともに、こうした龍馬博後を見据えた観光振興の取り組み、いわゆる「ポスト龍馬博」の取り組みを進めることで、観光分野での大きな目標である400万人観光の実現を目指してまいります。
第四は、地域の取り組みのステップアップの推進です。
地域アクションプランに盛り込んだ221の事業は、県の補助制度や国の支援制度なども活用しながら、着実な進展が図られております。本年度は、43件の取り組みが総合補助金の支援を受けて本格的に動き始めますとともに、新たに地域アクションプランへの位置付けを目指す具体的な事業もいくつか進められています。一方で、事業化には至らないまでも、地域を活性化するための様々な思いやアイデアがそれぞれの地域で新しく出始めていることを、私自身実感しています。
地域産業のすそ野を広げ、県全体の産業振興につなげていくには、こうしたやる気やアイデアを初期段階で後押しすることで取り組みを具体化し、その後に地域アクションプランへと位置付けていくステップアップのための支援が必要です。
このため、地域活動を支える人材の養成と、アドバイザー制度の充実や総合補助金のメニューの拡大など、アイデアや芽出しの段階も含めた熟度に応じた柔軟な支援を行うことといたします。
第五は、地域産業を創造・リードする人材の育成・確保です。
本県産業全体を底上げしていくためには、地域の産業振興の取り組みを継続させていくことが必要であり、このためには、地域の取り組みをリードしていく中核的な人材が不可欠です。
そのため、実践と座学を組み合わせた研修や若手人材が産業関連施策を学ぶ異業種交流研修などにより、新たな価値を創造できる人材の育成に取り組むことといたしました。
さらに、県内各地域の食や環境などの地域資源を生かした農村地域の活性化に向けて、本県の強みである農業の振興などに意欲があるグループや団体に対し、県内外の先進事例研究とワークショップを組み合わせた研修を行うことや、企画書・行動計画書の作成を支援することなどを通じまして、自ら企画立案し、行動できる人材と組織を育成してまいります。
産業振興計画は「実行元年」の取り組みを経て、来年度はいよいよ「挑戦の年」となります。様々な追い風も最大限生かしながら、県民の皆様に成果を実感していただけるよう取り組んでまいりますが、このためにも、今回の計画のバージョンアップは大きな意義を持っております。今後、さらにPDCAサイクルをしっかりと働かせながら、もう一段上のステージを目指して果敢に挑戦してまいります。
(中心市街地の活性化)
次に、県都高知市の中心市街地の活性化に向けた取り組みについてご説明申し上げます。
高知西武百貨店の跡地の問題につきましては、民間事業者が開発計画を断念して以来、この土地のふさわしい活用に向けて何ができるのか、行政による土地の取得や交換なども含め、高知市と共に様々な検討を重ねてまいりました。しかしながら、行政が土地を取得するには価格の問題など、どうしても法的な制限がありますことから、昨年11月に県外の別の民間事業者に所有権が移転するという結果となりました。
ただ、県都の中心部を高齢者や環境にやさしく、また、地域や観光振興に資するようコンパクトで魅力あふれるエリアとしていくことは、県政としても重要な課題であります。とりわけ、はりまや橋周辺から高知城に至る東西のエリアは、藩政時代からの中心部として、多くの歴史、文化、伝統を有しているとともに、多くの商業施設や事業所などが集積するなど、本県の都市機能を担い、日曜市、よさこい祭りなど観光面でも重要な役割を持つ地域であります。
このため、このエリアが全国に誇り得る歴史、文化、食をテーマにまちづくりの青写真を描いていくこととし、昨年11月に、県と高知市の合同チームを設置して、民間の有識者や地元商店街の方々などからもご意見をいただくなど、検討を進めてまいりました。
こうしたまちづくりは、官と民が協働して取り組まなければならない課題であり、継続的な検討を要する点もありますため、来年度以降も検討を深めてまいります。今議会では、こうした検討課題も含めた当面の取り組みについてご説明し、ご議論やご意見をいただいた上で、3月下旬には県民の皆様に来年度に向けたプランをお示ししたいと考えております。
なお、今回のプランにおける具体的施策の中で、すぐに実行できるものについては、来年度予算案に盛り込むとともに、産業振興計画の地域アクションプランにも追加していくなど、高知市との連携の下、必要な措置を講じてまいります。
(新資料館)
次に、山内家資料を核とした新資料館の整備についてご説明申し上げます。
山内家資料は、藩政時代を中心に戦国時代から近代にかけ、400年間にもわたって散逸することなく継承されてきた6万7千点にも及ぶ日本有数の大名家資料群です。
先日、この資料を保存・展示している土佐山内家宝物資料館を改めて訪問しましたが、手狭な上に老朽化が著しいため、資料の展示にも大きな制約を受け、資料の劣化が進むなど、早急に対策を講じなければならない状況にあるとの思いを強くいたしました。
また、今月4日には「山内家資料の保存等検討委員会」からも、新たな資料館の早急な整備が必要だとの提言をいただきました。
このため、可能な限り早期に新しい資料館を整備することで、保存・展示環境の確保のみならず、調査研究機能の充実を図るとともに、あわせて幅広い資料を生かした高知の歴史観光の拠点的な施設にもしたいと考えています。
その整備の場所につきましては、完成時期や施設整備の自由度、中心市街地への誘客効果などから総合的に判断する必要がありますため、来年度に予定しています基本構想策定作業の中で複数の候補地についての比較検討を行い、早期に決定してまいります。
(2)インフラの充実と有効活用
基本政策の第二は「インフラの充実と有効活用」であります。
(社会資本の整備)
まず、本県の社会資本の整備についてです。
政府の来年度予算においては、道路の直轄事業の予算が約2割削減されるなど、社会資本の整備を進める上で大変厳しい状況となっています。
しかしながら、本県のように、人の命を守る最低限のインフラさえいまだに整備できていない地域もあります。同じ国の中で、整備の進んでいる地域と今から整備しなければならない地域とに極端な偏りがあるのは、同じ国民の生活環境としてあってはならないことだと考えております。
このため、限られた公共投資を人の命を守るインフラ整備に集中するといった大胆な選択と集中を、政治主導により実行するよう、国に強く働きかけてまいります。
また、四国8の字ネットワークの中で未整備の部分、いわゆる「ミッシングリンク」を県の東西に抱えている本県としては、新規区間の事業着手が重要な課題であります。引き続き、同じ課題を持つ他の知事とも連携しながら、このミッシングリンクの早期解消に向け、取り組んでまいります。
(高速道路の無料化)
高速道路の無料化実験につきましては、今月2日に全国で37路線50区間が対象区間となったことが公表され、県内では高知インターチェンジから須崎東インターチェンジ間が対象区間となりました。
これにより、通勤や物流面における負担の軽減、また、観光や地域の活性化の面で、一定の効果があるものと考えております。
しかし一方では、JR四国や土佐くろしお鉄道への影響、車の流れの変化による新たな渋滞の発生などが懸念されますため、こうした影響を注視しながら、必要に応じて国への政策提言を行ってまいります。
(総合的な交通体系の仕組みづくり)
公共交通の経営対策
次に、公共交通に関します取り組みについてご説明申し上げます。
公共交通事業は、長期的な乗客の減少に加え、景気の低迷や新型インフルエンザの流行など様々な要因によって、大変厳しい経営状況が続いています。
鉄道、バス、路面電車、中山間のコミュニティバスなど、公共交通は通学や通勤、買い物や通院など県民の皆様の生活や物流を支える社会基盤であり、高齢化が進む本県にとっても、また、低炭素社会の実現に向けても、その果たす役割は非常に大きいと考えています。
このため、公共交通機関全般の実態を踏まえた交通事業の経営対策や行政支援のあり方、さらには実効性のある利用促進策などを検討するため、専門家や住民代表、市町村長、国の関係機関などで構成する「公共交通経営対策検討委員会」を今月設置いたしました。今後、事業者も交えて本格的な検討を進め、具体的な方向性が示されたものから順次実行に移してまいります。
土佐くろしお鉄道への支援
こうした中、早急に取り組むべき対策の一つに、土佐くろしお鉄道中村・宿毛線の経営助成基金の造成があります。
これまで県と関係市町村による基金での支援を行ってまいりましたが、本年度末での基金残高では新年度からの資金計画に不足を生じることが見込まれております。このため、関係市町村とも協議し、先ほど申し上げました公共交通経営対策検討委員会で抜本的な対策を審議いただくとともに、高速道路の窪川までの延伸の影響も見極めるため、その供用が予定されておりますまでの当面3年間に限り、基金を再造成することといたしました。
航空路線の維持対策
また、もう一つの対策は、航空路線の維持であります。
本県路線のうち、名古屋線、福岡線及び伊丹線のジェット便の旅客実績は依然厳しい状況にあります。さらに、日本航空では更生計画の策定が進められていますなど、今後の路線維持は予断を許さない状況にありますため、引き続き支援を継続するための予算を計上いたしました。
また、名古屋空港、福岡空港などでの航空機利用促進キャンペーンを強化しますとともに、本県の観光PRや県産品の販売といった取り組みも引き続き行ってまいります。
(3)教育の充実と子育て支援
基本政策の第三は「教育の充実と子育て支援」であります。
(全国学力・学習状況調査)
教育委員会が高知県教育振興基本計画に基づき、学力や体力の向上に向けた取り組みを進めている中において、子どもたち一人ひとりの成長に向けて施策が有効に働いているかどうかを継続的に検証していくことが重要であります。
そうした検証のための貴重な調査の一つとして平成19年度以降実施されてまいりました全国学力・学習状況調査が、国の来年度予算案では抽出調査として実施されることとなりました。
ただ、抽出対象とならなかった学校につきましても、希望をすれば、抽出調査と同一の問題が提供され、調査を利用できることになっております。このため、本県といたしましては、この制度を活用し、抽出対象とならなかった学校についても調査結果の採点・集計を行い、悉皆的に学力の状況を把握し、教育施策の充実に生かしていくことといたしました。
なお、県内のすべての市町村と学校組合の教育委員会が調査を利用することを希望されており、これまでと同様に調査を実施する体制が整ったものと考えております。
(学力向上対策等)
算数・数学、国語学習の推進
また、小中学生の学力向上対策につきましては、全国学力・学習状況調査の結果から、これまでの宿題の量と質が必ずしも十分でなかったことが明らかとなりました。
このため、算数・数学については、昨年の9月補正予算により、追加的に「算数・数学学習シート」を作成するなどの改善策を講じてきたところであり、来年度におきましても、そうした取り組みを着実に進めてまいります。
国語については、特に、目的や意図に応じて書くことや読むことに課題があることから、優れた文章を書き写すことや短い作文を書くことなどを通じて、漢字や言葉の知識を身に付けるとともに、まとめて書く力を育てる「国語学習シート」を作成、配布することといたしました。
あわせて、児童生徒用の「必読図書リストブック」や指導者用の「学校図書館活動ガイドブック」も作成することにより、学校図書館活動の充実を図り、国語力の向上につなげてまいります。
道徳教育の推進
また、不登校や非行など子どもたちの心の問題にも引き続きしっかりと対応していく必要があります。このため、来年度からは、道徳教育について学校全体で組織的に取り組み、先導的な研究を行う小中学校10校を拠点校として選定し、各地域で道徳教育を推進する中核となる教員を育成することにより、子どもたちへの指導の充実を図ることとしております。
体力向上対策
県内の児童生徒の体力と運動能力については、平成20年度に初めて実施された全国調査で、学力同様に全国最低の水準であることが明らかになりましたことから、全力でその改善に取り組んでまいりました。本年度の調査では、全国順位が38位ないし42位まで改善することができ、その改善率は、小学校、中学校とも全国第1位という成果を得ることができましたが、全国の平均値と比較するとまだまだ差があります。
このため、学校や地域における子どもたちの体力アップのための取り組みを引き続き積極的に推進してまいりますほか、来年度から抽出調査で行われることとなるこの調査についても、これまでどおり悉皆的に調査を行うことができるよう県独自に対応してまいります。
(教育版「地域アクションプラン」の推進)
また、本県の教育課題の解決に向けては、小中学校や幼稚園、保育所などを所管しております各市町村と一体となって取り組むことが不可欠です。
このため、それぞれの地域が抱える課題、教育の実情に応じて、各市町村や学校組合の教育委員会が主体的に取り組む事業のうち、他の市町村の参考となる先導的なものなどを教育版「地域アクションプラン」として位置付けるとともに、このプランに対する補助制度を創設し、市町村ごとの教育の振興策を強力に支援してまいります。
(全国生涯学習フォーラム高知大会)
本年11月20日から3日間開催する「全国生涯学習フォーラム高知大会」では、大会期間中、全国から延べ2万人を超える方々が来県される予定であり、大会までに実施する市町村主催事業を含めて約20万人の参加を見込んでおります。
この大会は、これまで全国で祭典として開催されてきた生涯学習フェスティバルを見直し、生涯学習の具体的な実証の場として新たにスタートするものであります。このため、今回から新たにテーマ別のフォーラムを開催することとし、高知市をはじめ県内4カ所で環境問題や人材育成などをテーマにシンポジウムや実践発表を行うこととしております。
大会を通じて生涯学習に対する県民の皆様の理解を高めることはもちろんのこと、龍馬博とも密接な連携を図りながら、地産外商・食育展を併せて開催するなど、高知の魅力を全国に発信する機会として最大限活用してまいります。
(私学助成の充実)
本県の教育力の向上を図るためには、公立学校の改革を進めるばかりでなく、私立学校にも取り組みを強めていただき、お互いに高め合うことも欠かせないことだと考えています。
県立高校の教育力向上施策を昨年度から充実してきたことにもかんがみ、このたび、私立高校に対しまして、ここ5年間据え置いておりました運営費補助の単価を全国平均並みに引き上げ、一層の教育内容の充実を図っていただくことといたしました。また、これまで行ってまいりました伝統・文化に関する教育の推進など、特色ある教育に対する補助に加えまして、学力向上や進路指導の充実のための取り組みに対して支援をする新たな補助制度も設けたところでございます。
これらによりまして、私立学校におきましても、それぞれの学校の特色をさらに伸ばしながら、教育力の向上を図っていただきたいと考えております。
(4)県民の安全・安心の確保に向けた地域の防犯、防災の基盤づくり
基本政策の第四は「県民の安全・安心の確保に向けた地域の防犯、防災の基盤づくり」であります。
(南海地震対策)
先月12日に政府の「地震調査委員会」から、2010年1月1日を基準日とした発生確率が公表されましたが、この中では今後30年以内に南海地震が発生する確率は60パーセント程度となっております。一昨年が50パーセント程度であったことを考えますと、切迫度が一層高まっていると言わざるをえません。
県では、南海地震による災害から、県民の生命、身体及び財産を守ることを目的として、県や県民、事業者、自主防災組織などが互いに連携しながら南海地震への対策を推進していくために「高知県南海地震による災害に強い地域社会づくり条例」を平成19年度に制定いたしました。
この条例に基づき、昨年2月には、平成26年度までの6年間に取り組むべき対策である「高知県南海地震対策行動計画」を策定いたしました。また、本年度は、南海地震の発災直後から1カ月間の県庁の応急対策活動を迅速かつ的確に行うための「高知県南海地震応急対策活動計画」を策定し、災害対策本部を中心に、各部、各所属それぞれの応急対応や市町村、自衛隊などとの連携を明確にいたしました。
これにより、南海地震対策を推進していくための基本的な計画がほぼ整ったこととなります。今後は行動計画の着実な推進を図るとともに、訓練の実施を通じて応急対策活動計画の検証を行い、より実効性を高めるなどの取り組みを進めてまいります。
(陸上自衛隊第50普通科連隊の移駐について)
陸上自衛隊第50普通科連隊につきましては、いよいよ来月には香川県善通寺市から本県の香南市に移駐されることとなりました。この連隊は高知県の防衛警備や災害派遣などを任務としており、約700人の隊員とその家族の皆様が本県に来られることで、南海地震が発生した際など災害時の応急活動への即応性が増しますとともに、社会経済面でも大きな効果が期待できます。
県といたしましては、この移駐を機にさらに防災関係機関との連携を進め、県民の皆様の安全・安心の確保に取り組んでまいります。
(5)日本一の健康長寿県づくり
基本政策の第五は「日本一の健康長寿県づくり」であります。
健康は、県民誰もの願いであり、また、家族や地域、社会全体にとっても大事な問題です。
県民の皆様が住み慣れた地域で健康に暮らし続けることができる県を目指すため「県民自らが病気を予防し、生涯を健康に暮らす」「県民とともに医療環境を守り育てる」「ともに支え合いながら生き生きと暮らす『高知型福祉』の実現」という3つの政策の方向とそれに沿った具体的な対策を示した「日本一の健康長寿県構想」を取りまとめました。
(県民自らが病気を予防し、生涯を健康に暮らす)
まず、第一に「県民自らが病気を予防し、生涯を健康に暮らす」ための政策についてご説明申し上げます。
周産期の母体管理の取り組み
本県では、直近の5年間で3度も全国ワースト1位となるなど乳児の死亡率が高く、その原因は周産期における胎児の発育の未熟性にある場合が多いと考えられています。このことに関しては、妊娠中の母体管理を適切に行うことで改善が期待できるため、来年度から、この対策を強化する取り組みを進めることとしております。
具体的には、市町村の助産師や保健師が個別訪問等を行うことで、お母さん方に対して妊婦健康診査の受診を促すことや健康状態の相談に乗ることなどの対策を進めます。あわせて、妊娠中のお母さん方だけでなく、周囲のご家族や職場の同僚の方たちにも妊婦健康診査の重要性を理解していただくための広報や啓発活動なども行ってまいります。
3つの疾病対策
本県では、がん、心疾患、脳血管疾患の3つの疾患で亡くなられた方が全体の約6割を占めており、これらの疾病に対する対策が急務となっています。特に40歳代、50歳代における男性の死亡率が全国よりも高いことから、これらの世代の方々に自らの健康状態を定期的に把握し、病状の早期発見、早期治療に努めていただくことが重要となります。
しかしながら、この年代のがん検診や特定健康診査の受診率は全国に比べて低い状況にありますことから、来年度から市町村と連携して、40歳代から50歳代の方々にがん検診や特定健康診査を受診していただくための取り組みを強化してまいります。
がん検診については、日程や場所、検診の重要性などを記載した個別通知を対象者全員に行い、未受診者に対しては、その理由をお聞きするとともに、再度受診を勧めてまいります。
特定健康診査については、国民健康保険の加入者に対し、これまでの個別通知に加えて、電話や個別訪問による直接の働きかけをしてまいります。
さらには、県民の皆様にこれまで以上にご自身やご家族の健康に関心を持っていただけるよう、新聞やテレビ、情報誌などを活用して積極的に広報を行っていくこととしております。
自殺対策
また、本県の自殺死亡率は全国的にも高い水準にあり、特に50歳代、60歳代の自殺者が近年増加しています。自殺の主な要因は、うつ病等の精神疾患によるものや、経済・生活問題といった社会的要因によるものが多いことから、うつ病対策と失業や多重債務等に対する取り組みを強化する必要があります。
このため、自殺に追い込まれる人を一人でも減らせるよう、いのちの電話の24時間体制の確保に向けた支援をはじめ、かかりつけ医から精神科医につなぐ紹介システムの構築、自殺予防情報センターへの心理職の配置による相談体制の強化、傾聴ボランティアの養成等を行ってまいります。
(県民とともに医療環境を守り育てる)
医師確保対策
第二に「県民とともに医療環境を守り育てる」ための政策についてご説明申し上げます。
本県における医療については、医師数の8割以上が中央保健医療圏に集中していること、40歳未満の若手医師が平成10年からの11年間で25パーセントも減少していること、また、特に勤務環境が厳しいといわれる産婦人科や小児科の医師の減少が大きく、診療の維持さえ困難になっている地域があることという、医師の3つの偏在問題を抱え、地域医療の確保の上で大きな課題となっております。
このため、昨年11月県議会でお認めいただきました地域医療再生基金を活用して、高知大学医学部の協力の下、医師確保対策の中核となる「高知医療再生機構」を本年3月に設立することといたしました。
来年度からは県のほか、高知大学医学部、県医師会、市町村、医療機関など関係機関の方々にこの機構に結集していただき、キャリア形成拠点施設の整備や国内外への留学、専門医や認定医の資格取得の支援など、若手医師にとって十分なキャリアを積むことができる魅力のある環境づくりを他県に先駆けて積極的に行い、本県での医師の増加と定着を進めてまいります。
高知医療センターの経営改善と機能強化
本県の高度医療の拠点となります高知医療センターにつきましては、本年度末のPFI事業の終了に向け、先週開催されました病院企業団議会で、PFI契約の解約に伴う関連予算議案が可決されました。
また、喫緊の課題である経営改善に関しましても、同議会において、平成23年度に単年度収支の黒字化を目指す経営改善計画の案が示されたところであります。
今後は、企業長、病院長が強いリーダーシップを発揮され、職員全員が一丸となってこの経営改善計画を着実に実行していただきたいと考えております。
PFI事業の終了によって医療センターの医療活動が影響を受けることはありませんが、なお直営化への移行に際して支障を来すことのないよう十分留意し、県民の皆様が安心して医療を受けられるよう万全を期していただく必要があります。
県としましては、この4月から派遣職員を増員するほか、計画の進捗状況の評価や助言を行うために企業団に設置されます外部有識者による委員会にも参加し、経営改善に向けて積極的に取り組んでまいります。
また、病院企業団においては、経営基盤の強化に併せ、先進医療機器の導入や救命救急の充実など、高度医療機能をさらに充実することにより、医療センターが県の地域医療再生計画における拠点の一つとして役割を果たせるよう取り組んでいただきたいと考えております。
ドクターヘリの導入の推進
ドクターヘリの導入に関しましては、昨年6月に、県内の救急医療の関係者によるドクターヘリ導入検討委員会を設置し検討を進めてまいりましたところ、その中間とりまとめにおきまして、現在の消防防災ヘリに加え、新たに救急医療に活用するドクターヘリの導入が必要とのご意見をいただきました。本年3月末に予定しております最終報告を踏まえ、ドクターヘリの早期導入に向けた準備を迅速に進めてまいります。
(ともに支え合いながら生き生きと暮らす「高知型福祉」の実現)
第三に「ともに支え合いながら生き生きと暮らす『高知型福祉』の実現」のための政策についてご説明申し上げます。
来年度からは「ともに支え合う地域づくり」「高齢者が安心して暮らせる地域づくり」「障害者が生き生きと暮らせる地域づくり」「次代を担うこども達を守り育てる環境づくり」の4つを柱に取り組みを進めてまいります。
ともに支え合う地域づくり
まず「ともに支え合う地域づくり」に関する施策についてご説明申し上げます。
本年度実施しました県民世論調査によれば、約6割の県民の方々が、これまで地域が担ってきた支え合いの力が弱まっていると感じておられます。
また、中山間地域などでは、介護サービスや障害者の自立支援、子育て支援など多様なニーズがありながらも、それぞれのサービスの利用者が少ないために、現行の縦割りの制度では、利用者のニーズに合ったきめ細かいサービスが提供されにくい状況となっております。
このため、本県では、地域の支え合いの仕組みを意図的に作り上げていくこととともに、従来の全国一律の縦割りではなく、地域の実情に沿った小規模多機能型の福祉サービスを推進していくことが極めて重要となっております。
その取り組みの一つとして、現在、小規模でも一カ所で多様なサービスを地域の協力により提供する「あったかふれあいセンター」の整備を進めているところです。
現時点で22市町村28カ所で開設され、76名の新たな雇用にもつながっており、来年度はさらに34市町村44カ所と県内全域に広がり、126人の新規雇用が見込まれております。
また、従来から、民生委員・児童委員の方々に担っていただいておりました地域の見守り活動について、民間事業者の方々からご協力をいただく協定がこれまでに6件締結されております。今後、協定に基づく活動の充実を図ってまいりますとともに、さらに取り組みを広げてまいりたいと考えております。
こうした活動が地域地域に根付き、さらに広がっていくためには、地域の現状や課題をより明らかにし、住民の方々と関係者が一体となって地域福祉を推進する計画を策定し、それぞれの地域の実情に合った取り組みを進めていくことが重要であります。
このため、県としましては、市町村の地域福祉活動を支援する県の「地域福祉支援計画」を来年度に策定するとともに、再来年度までをめどに、市町村の「地域福祉計画」と市町村社会福祉協議会の「地域福祉活動計画」が一体的に策定されるよう支援してまいります。
また、民生委員・児童委員の方々には、地域住民の方々の最も身近な存在として、日常の様々な相談を受けていただいたり、一人暮らしの高齢者への声かけや見守りなど幅広く活動していただいているところであります。
こうした中、今後の「高知型福祉」の推進においても、その活動は極めて重要となってまいりますことから、来年度はさらに県と一体となって、それぞれの地域で十分に活躍していただけるよう、活動助成費の拡充や研修の充実など、民生委員・児童委員の方々が活動しやすい環境づくりを進めてまいります。
高齢者が安心して暮らせる地域づくり
次に「高齢者が安心して暮らせる地域づくり」を進めるためには、介護予防の取り組みが大切となります。このため、本県独自の効果的な介護予防プログラムの開発を進めますとともに、地域で住民の方々が主体となって実践をしていただけるよう支援してまいります。
また、介護が必要な状態になっても安心して暮らすことができるよう、介護と医療との連携強化などによる在宅での生活支援を行うとともに、介護する家族が急に病気になったときなどに対応できる緊急用ショートステイの相談窓口の設置と専用ベッドの確保にも取り組んでまいります。
障害者が生き生きと暮らせる地域づくり
「障害者が生き生きと暮らせる地域づくり」に関しましては、本県の中山間地域では障害福祉サービスの利用者が少ないため、民間事業者の参入が難しい地域も多く、サービスをいかに確保していくかが大きな課題となっています。このため、こうした地域において、新たに送迎付きの障害福祉サービスを開始する事業者に対し、運営費の一部を助成することで事業者の参入とサービスの確保を図り、障害者の皆様がそれぞれお住まいの場所で生き生きと暮らすことができる地域づくりを進めてまいります。
次代を担うこども達を守り育てる環境づくり
「次代を担うこども達を守り育てる環境づくり」に関しましては、特に重要な課題であります虐待への対応について、これまで、児童虐待対応チームの設置や専門職員の採用、研修の充実による職員の専門性の向上等児童相談所の組織、運営力の強化に取り組んでまいりました。
来年度は、虐待対応チームの拡充など、さらに組織体制を強化するとともに、対応の迅速化を図るため、児童相談所の管轄区域の見直しを行うことといたしました。
児童家庭相談の第一義的な窓口として、昨年度末に全市町村で要保護児童対策地域協議会を立ち上げましたが、現状では協議会の活動内容に格差が生じてきております。特に、人口が多い高知市などにおいては、協議会と地域との連携が十分でない面があります。このため、学校や民生委員・児童委員などが連携して虐待の早期発見や見守り活動を行う地域支援者会議を中学校区ごとに設置し、協議会活動の強化を図る取り組みに対して支援してまいります。
3 その他
次に、来年度の組織改正についてご説明申し上げます。
県勢浮揚に果敢に挑戦していくため、全庁的に徹底した業務の見直しを行った上で、必要な組織の整備や体制の強化、重点的な人員配置を行うことといたしました。
産業振興計画の推進に関しては、高知市地域の取り組みを一層進めるため、高知市地域担当の地域産業振興監を専任化いたしますほか、地産外商戦略の加速化や人材の育成・確保などに向けて、産業振興推進部の人員体制の強化と大阪事務所と名古屋事務所の同部への移管を行うことといたします。
また、400万人観光の実現に向けた新たな観光PR・イメージ戦略への対応や、広域観光の組織づくりなど、龍馬博後の本県観光の課題に対応するための人員を増員するほか、県東部と西部に配置している観光担当のチーフを中央部にも配置するなど、観光振興部の体制を強化いたします。あわせて、高知県観光コンベンション協会の県庁内への移転により、県と協会の連携を密にして、さらに実効ある観光振興策を進めてまいります。
このほか、「まんが王国・土佐」のブランド化を図るとともに、まんがを含む本県の様々なコンテンツを産業に生かすコンテンツビジネスの創出に取り組むため、文化生活スポーツ部の体制を強化いたします。
子育て支援に関するものでは、地域での子育て支援やその情報提供に係る業務を教育委員会から地域福祉部に移管し、きめ細やかな対応をしていくことといたします。
また、日本一の健康長寿県構想の推進を強化するため、健康政策部の体制を見直すとともに、医師確保を進めるため設立した高知医療再生機構に職員を派遣することとしております。
(新行政改革プラン)
次に、行政改革の取り組みについてご説明申し上げます。
本県では、平成17年12月に「高知県行政改革プラン」を策定し、知事部局の3,400人体制、業務のアウトソーシングの推進、給与制度の見直しなど、徹底した効率化に取り組んでまいりました。その結果、本年度末までにこれらの目標をほぼ達成できる見通しとなっております。
しかしながら、依然として、本県の財政構造は国の動向に左右される脆弱な体質にあることから、引き続き、徹底した効率化を図り、中長期的な財政の健全性を確保していく必要があります。他方、厳しい県経済への対応など多くの県政課題に取り組むため、必要な人員の確保も図らなければなりません。
こうしたことを踏まえ、本年度、外部有識者で構成する「高知県行政改革検討委員会」からご意見をいただきながら、新たなプランの策定に取り組んできたところであります。
このたび取りまとめたプランの素案では、経済の活性化をはじめとする様々な課題に対して適切な人員配置を図ることと、行政の無駄を省き一層の効率化を進めることの2つの側面を考慮し、5年後の平成27年4月の知事部局における職員数の目標を3,300人としたところであります。
この素案を今議会でご議論いただいた上で、最終的なプランとして確定し、来年度から着実に実行していきたいと考えております。
4 議案
続きまして、今回提案いたしました議案についてご説明申し上げます。
まず予算案は、平成22年度高知県一般会計予算など36件です。
このうち平成22年度の一般会計予算は、先ほど申し上げました産業振興計画のさらなる進化や教育振興基本計画の着実な推進のために必要な経費などを中心に、4,282億円余りを計上しております。
また、平成21年度の一般会計補正予算は、地域活性化・きめ細かな臨時交付金を活用した単独事業を中心に、45億円余りを計上しております。
条例議案は、国の交付金を活用して積み立てます高知県地域活性化・公共投資臨時基金条例議案など19件であります。
その他の議案は、包括外部監査契約の締結に関する議案など8件でございます。
以上をもちまして、議案提出にあたっての私からの説明を終わらせていただきます。
何とぞご審議の上、適切な議決を賜りますようお願い申し上げます。